(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167114
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】ナノ構造の酸化銀膜使用の水性ボルタンメトリー農薬センサおよびそのセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/48 20060101AFI20170710BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20170710BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20170710BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20170710BHJP
【FI】
G01N27/48 311
G01N27/30 B
G01N27/30 F
B82Y30/00
B82Y40/00
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-553860(P2014-553860)
(86)(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公表番号】特表2015-510584(P2015-510584A)
(43)【公表日】2015年4月9日
(86)【国際出願番号】IN2013000064
(87)【国際公開番号】WO2013114404
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2015年11月19日
(31)【優先権主張番号】0264/DEL/2012
(32)【優先日】2012年1月31日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】508176500
【氏名又は名称】カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パナムピルリル,ヴィアヤンマ,スバ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーゼ,ソーミャ
(72)【発明者】
【氏名】タラシラ,プラサダ,ラオ
【審査官】
櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−091499(JP,A)
【文献】
特開平02−296142(JP,A)
【文献】
特表2003−519726(JP,A)
【文献】
米国特許第04461677(US,A)
【文献】
特開昭63−298051(JP,A)
【文献】
特表2004−512496(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0294662(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
G01N 33/15−33/18
B82Y 30/00,40/00
H01M 10/00−10/48
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造の酸化銀膜を有する多結晶銀電極を備える農薬の検出のためのナノ構造のボルタンメトリーセンサであって、検出限界が3×10-13Mであるナノ構造のボルタンメトリーセンサ。
【請求項2】
前記ボルタンメトリーセンサが、0.32V(vs.Ag/AgCl)で農薬に反応する請求項1のボルタンメトリーセンサ。
【請求項3】
前記センサが、30日間安定している請求項1のセンサ。
【請求項4】
前記センサが、アルカリ、アルカリ土類金属および重金属が存在するなかで、3×10-13Mの検出限界まで農薬を検出する請求項1のセンサ。
【請求項5】
前記センサは、−0.3から+0.5Vの電位範囲においてサイクリックボルタモグラムを記録して、0.32V(vs.Ag/AgCl)でピーク電流を測定することによって、1.0MのNaOH+5.0×10-5MのNa2HPO4媒質において農薬を検知する請求項1のセンサ。
【請求項6】
前記農薬は、エンドスルファンまたはアトラジンまたはメチルパラチオンから選択される請求項1のセンサ。
【請求項7】
請求項1のナノ構造の酸化銀膜の製造の方法であって、
i)等級2/0、3/0および5/0のエメリー紙を用いて各25±5分研磨を行い、続いて、炭によって7−8分研磨し、続いて、アセトンおよび純水においてソノケミカル法によって5分研磨し、
i)多結晶銀電極を、1MのNaOH+5×10-5MのNa2HPO4溶液(pH11.8)中に、15分、定電圧制御された状態で−0.3V(vs.Ag/AgCl)に保持することによって電気化学的調整を行い、
ii)1.0MのNaOH+5.0×10-5MのNa2HPO4溶液(pH11.8)中で、−0.3Vから+0.5V(vs.Ag/AgCl)の電位範囲において、125から150mV/sの走査速度での7−9のサイクリックボルタンメトリー走査により、多結晶銀電極上に酸化銀膜を形成する、ナノ構造の酸化銀膜の製造の方法。
【請求項8】
ナノ構造の酸化銀膜は、(機械的およびソノケミカル法により)研磨を行い、電気化学的調整を行い、さらに、反復的サイクリックボルタンメトリー走査をした後に、再現することができる請求項7の方法。
【請求項9】
請求項1のセンサを使用する農薬の検出方法において、−0.3から+0.5Vの電位範囲においてサイクリックボルタモグラムを記録する工程と、0.32V(vs.Ag/AgCl)でピーク電流を測定する工程と、校正グラフを基準とする工程とを含む方法。
【請求項10】
請求項9の農薬の検出方法において、農薬が、エンドスルファンまたはアトラジンまたはメチルパラチオンから選択される方法。
【請求項11】
請求項9の農薬の検出方法において、農薬の検出限界が3×10-13Mである方法。
【請求項12】
請求項9の農薬の検出方法において、前記センサが、30日間安定している方法。
【請求項13】
請求項9の農薬の検出方法において、アルカリ、アルカリ土類金属および重金属が存在するなかで、3×10-13Mの検出限界まで農薬を検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書では、特に、発明の本質およびそれが実行される方法について説明する。
【0002】
技術分野
本発明は、ナノ構造の酸化銀膜使用の水性ボルタンメトリー農薬センサおよびそのセンサの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、7桁の広い濃度範囲にわたって超微量のエンドスルファンまたはアトラジンまたはメチルパラチオンを確実かつ精密に検知する(電気化学的調整後の)ナノ構造酸化銀膜の形成の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景および従来技術の説明
銀金属から酸化銀を形成すること[Sieger、米国特許第4,913,781;Urry、米国特許第6,258,132;Budget他、米国特許出願公開第2010/0047689およびKatan他、米国特許第4,461,677]、硝酸銀結晶から酸化銀を経て微多孔性銀元素を構成すること[Sieger、米国特許第4,851,310]、電池用の銀/酸化銀電極[Strauss、米国特許第3,358,138、Balters、米国特許第4,209,578]を参考にすることができる。酸化銀電極を生産する方法[Rampel、米国特許第3,258,362、Langan、米国特許第4,250,234、Glen他、米国特許第4,892,629、Langguth他、米国特許第3,353,998]、ナノサイズの酸化銀パウダーの製造[BerubeおよびBanerjee、米国特許第7,201,888]および酸化銀の処理方法[Borberly、米国特許第4,126,584]を参考にしてもよい。
【0004】
他に、Murry他、Chem.Mater.17(2005)6611の高配向性熱分解グラファイトの電極表面上への電気化学ステップエッジデコレーションによる0.7μmから1.1μmの範囲の直径を持つAg
xO(1<x<2)の生成を参考にしてもよい。
【0005】
また、テンプレートフリーの電気化学ルートによる配向性酸化銀ナノ構造の合成[Wei他、J.Mater.Chem. 21(2011)432]を参考にしてもよい。
【0006】
さらにまた、アルカリ電池用に酸化銀を生成する間に、アルカリ電解質に、金[Davis、米国特許第3,853,623]、水銀、セレン、テルルもしくは鉛もしくは水銀との化合物[Tvarusko、米国特許第3,650,832]、硫化物[Megahed他、米国特許第4,078,127]、硫化鉛[Megahed他、米国特許第4,835,077]、ビスマス[Passaniti他、米国特許第5,589,109]およびニッケル[Berndt他、米国特許第3,630,780]のような添加物を取り込むことを参考にしてもよい。
【0007】
他に、0.2MのNaOHおよび0.2MのNaOH+0.01Mのリン酸ナトリウム(炭水化物および関連化合物を検出するため)[De Mott他、Electroanal. 10(1998)836]と、0.5MのNaOH+0.5MのNaOH+0.01Mのリン酸ナトリウム(アミノ酸の検出のため)[De Mott他、Electroanal.17(2005)599]との間で溶媒の切替を行うフローシステムに銀電極を浸漬することによって、二重パルス電流滴定により酸化銀を形成することを参考にしてもよい。
【0008】
さらにまた、i)8MのKOHからまた45℃の高められた温度で多結晶銀電極上に酸化銀を形成すること(形成の動態に対応する−検知はしない)(HurおよびChung,J.Electrochem.Soc.152(2005)A179−A185)と、ii)酸化還元ピーク強度の減少に基づいてシアン化物およびシアノホスホン酸ジエチルを検出するためにサイクリックボルタンメトリー法によって1MのKOHから多結晶銀電極上に酸化銀を形成すること(Fathi他,Langmuir27(2011)12098)とを参考にしてもよい。
【0009】
他のナノ構造の農薬センサ、つまり、5農薬、ジコホール、シペルメトリン、モノクロトホス、クロルピリホスおよびホサロンの矩形波ストリッピングボルタンメトリー測定のためのポリ3,4エチレンジオキシチオフェン変性ガラス状炭素(GC)[Manisankar他、Anal.Chim.Acta、528(2005)157]、ニッケル(II)フラロシアニン−アシュラムの検出のためのMWCNT変性基底熱分解グラファイト[Siswana他、Anal.Bioanal.Chem.14(2010)1351]、NWCNT−パラチオンの電流測定感知のためのナフィオン変性GC[Li他、Anal.Bioanal.Chem.381(2005)1049]、金ナノ微粒子−パラチオンの線形掃引ボルタンメトリー感知[Zhang他、Microchim.Acta 165(2009)307]、銀ナノ微粒子−メチルパラチオンおよびパラチオンの示差パルスボルタンメトリー感知のためのナフィオン複合物変性GC[Kumaravel&Chandrasekaran,J.Electroanal.Chem.638(2010)231]を参考にしてもよい。
【0010】
また、UV可視分光光度による[Sowbhagya他、Pestic.Sci15(1984)571],[Sreekumaran Nair他、J.Environ.Monit.5(2003)363]、逆相液体クロマトグラフィーによる[Siddiqueetal,J.Liquid.Chromotatography&Related Technologies 26(2003)1069],選択的イオン監視モードにおけるGC−MS−EIによる[Ramesh&Ravi,J.Environ.Monit.4(2002)190],[Ramesh&Vijayalekshmi,Pest Manag.Sci. 58(2002)1048]エンドスルファンの痕跡の測定のためのエンドスルファン定量化も参考にしてもよい。他に、さまざまな電子分析方法、すなわち、エンドスルファンの痕跡の示差パルスポーラログラフィー法[Reviejo他、Anal.chim.Acta 264(1992)141;Reviejo他、Talanta 39(1992)899、Reviejo他、Elecctroanal.4(1992)111]、示差パルス/矩形波ストリッピングボルタンメトリー法[Latha他、Ind.J.chem.37A(1998)1027;Pabhu&Manisankar,Analyst 119(1994)1867;Manisankar他、Int.J.Environ.Anal.Chem.82(2002)331]およびサイクリックボルタンメトリー法[Sunitha&Sushma,Ind.J.Chem.Technol.11(2004)509;Manisankar他、Int.J.Environ.Sci.&Health 39B(2004)89]によるエンドスルファンの痕跡の測定を参考にしてもよい。さまざまなエンドスルファンセンサの感知特性の比較を表1にまとめた。
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の説明から、0.01ppbまたは2.5×10
-11M(最大許容限度)に至るエンドスフファンの迅速、確実かつ精確な測定は実現されていない。これまで報告した分析を用いる方法の他の制限は、マイクロモル範囲でも同様に3−4桁の制限された狭い校正範囲にある。しかし、本発明はこれらの2つの理由に関し有望さを有している。
発明の目的
本発明の主たる目的は、ほとんどの欠点を取り除く、ナノ構造の酸化銀膜使用の水性ボルタンメトリー農薬センサおよびそのセンサを製造する方法を設計および開発することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、機械的およびソノケミカル研磨ならびに電気化学的調整により再現可能な、面対面および円板対円板の多結晶銀電極面を作ることにある。
【0013】
本発明のまた別の目的は、水酸化ナトリウム−リン酸水素二ナトリウム媒質からナノ構造の酸化銀膜を形成することにある。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、農薬用の酸化銀膜使用のボルタンメトリーセンサに再現性を持たせることにある。
発明の概要
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、農薬の検出のためのナノ構造のボルタンメトリーセンサを提供するもので、そのセンサは、ナノ構造の酸化銀膜を持つ多結晶銀電極を備え、検出限界が〜3×10
-13Mである。
【0016】
本発明の一実施の形態では、ボルタンメトリーセンサが、0.32V(vs.Ag/AgCl)で農薬に反応する。
【0017】
本発明の別の実施の形態では、そのセンサは、3×10
-13Mの検出限界を持ち、アルカリ、アルカリ土類金属および重金属の存在するなかで農薬を検出し続ける。
【0018】
本発明のさらに別の実施の形態では、そのセンサは、−0.3から+0.5Vの電位範囲においてサイクリックボルタモグラムを記録し、0.32V(vs.Ag/AgCl)でピーク電流を測定することによって、1.0MのNaOH+5.0×10
-5MのNa
2HPO
4媒質において農薬を検知する。
【0019】
ナノ構造の酸化銀膜使用のセンサの製造方法は、
i)等級2/0、3/0および5/0のエメリー紙を用いて各25±5分研磨し、続いて、炭によって7−8分研磨し、続いて、アセトンおよび純水においてソノケミカルによって5分研磨し、
ii)多結晶銀電極を、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4溶液中に、15分、定電圧制御された状態で−0.3V(vs.Ag/AgCl)に保持することによって電気化学的調整を行い、
iii)1.0MのNaOH+5.0×10
-5MのNa
2HPO
4溶液(pH11.8)中で、−0.3から+0.5V(vs.Ag/AgCl)の電位範囲において、125から150mV/sの走査速度で、7−9のサイクリックボルタンメトリー走査により、多結晶銀電極上に酸化銀膜を形成する。
【0020】
本発明の別の実施の形態では、請求項1のセンサは、30日間安定している。
【0021】
本発明のある実施の形態では、ナノ構造の酸化銀膜は、(機械的およびソノケミカル法により)研磨され、電気化学的調整され、さらに、反復的サイクリックボルタンメトリー法の走査がされた後に、再現することができる。
【0022】
したがって、本発明は、上記のセンサを用いて、農薬(エンドスルファンまたはアトラジンまたはメチルパラチオン)の検出方法も提供する。この方法において、工程は、−0.3から+0.5Vの電位範囲においてサイクリックボルタモグラムを記録する工程と、0.32V(vs.Ag/AgCl)でピーク電流を測定する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
添付図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、酸化銀膜使用のエンドスルファンセンサのサイクリックボルタンメトリー法によるプロファイルを示す。
【
図2】
図2は、酸化銀膜使用のアトラジンセンサのサイクリックボルタンメトリー法によるプロファイルを示す。
【
図3】
図3は、酸化銀膜使用のメチルパラチオンセンサのサイクリックボルタンメトリー法によるプロファイルを示す。
【
図4】
図4は、酸化銀膜のX線回折パターンを示す。
【
図5】
図5は、酸化銀膜の走査電子顕微鏡写真を示す。
【
図6】
図6は、酸化銀膜の透過電子顕微鏡写真を示す。
【
図6-1】図表1は、多結晶電極上にナノ構造の酸化銀膜を形成するためのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
したがって、本発明は、「ナノ構造の酸化銀膜使用の水性ボルタンメトリー農薬センサおよびこのセンサを製造する方法」を提供し、この方法は、エンドスルファンまたはアトラジンまたはメチルパラチオンを検出するための電気化学的に変更された電極を構成する方法であって、
a)多結晶銀電極の機械的およびソノケミカル法による研磨および電気化学的調整と、
b)ナノ構造の酸化銀膜の形成と、
c)エンドスルファンまたはアトラジンまたはメチルパラチオンのサイクリックボルタンメトリー法の走査とを含む。
【0025】
本発明は、水性媒質から多結晶銀円板電極上にエンドスルファン検知膜を作る方法を提供する。本発明の顕著な特徴は、
a)多結晶銀電極の機械的およびソノケミカル法による研磨および電気化学的調整
多結晶銀電極の研磨は、機械的およびソノケミカル法による研磨と電気化学的調整との連続するステップを含む(図表1のステップ1)。機械的研磨は、等級2/0、3/0および5/0のエメリー紙を用いて各25±5分研磨し、続いて、炭によって7−8分研磨することによって行われる。これに続いて、上記の機械研磨された多結晶銀電極は、アセトンおよび純水中において5分間研磨される。最後に、機械的およびソノケミカル法により研磨された多結晶銀円板電極は、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4溶液中に、15分、定電圧制御された状態で−0.3V(vs.Ag/AgCl)に保持されることによって電気化学的調整にさらされる。
【0026】
b)ナノ構造の酸化銀膜の形成
ナノ構造の酸化銀膜は、電極を1MのNaOH+5.0×10
-5MのNa
2HPO
4中に浸漬した後に、125から150mV/sの走査速度で、−0.3から+0.5Vの電位範囲において、動電位法の循環(7−9回)を行うことによって、機械的およびソノケミカル法による研磨および電気化学的調整をした多結晶銀電極上に形成される(図表1のステップ2参照)。
【0027】
c)エンドスルファンのサイクリックボルタンメトリー法検知
図1、
図2および
図3は、図表1のステップ3のように、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4溶液にエンドスルファンまたはアトラジンまたはメチルパラチオンを増分添加することに関し、エンドスルファン、アトラジンおよびメチルパラチオンについてそれぞれ描いたサイクリックボルタモグラムを示す。片対数グラフシートに、農薬濃度に対して0.32V(vs.Ag/AgCl)でピーク電流をプロットすることによって、校正プロットが描かれている。
図4は、多量のAg
2OおよびわずかなAgOを示すナノ構造の酸化銀膜のXRDパターンを示す。ナノ構造の酸化銀膜のSEM画像は、
図5に示すように、花のようなナノロッドを示す。
図6のTEM画像は、各ナノロッドが20−90nmの幅を持つことを明確に示している。
【0028】
本発明の顕著な特徴は以下のものを含む。
【0029】
i)銀多結晶電極へのAgO
x膜の形成
ii)エンドスルファンまたはアトラジンまたはメチルパラチオン農薬の測定
iii)再現性の確認
iV)合成試料の分析
V)実試料の分析
i)銀多結晶電極へのAgO
x膜の形成
実施例1−6に示す手順の後にAgO
x膜が銀多結晶電極に形成される。
【0030】
ii)エンドスルファンまたはアトラジンまたはメチルパラチオン農薬の測定
1×10
-3MのNa
2HPO
4および20MのNaOHの各1mlが20mlに希釈されて電気化学セルに移される。AgO
x膜が、項目i)より下で説明されるように形成される。
【0031】
10
-13から10
-6Mの濃度のエンドスルファンが追加され、サイクリックボルタンメトリー曲線が描かれ、構成グラフが、片対数グラフシート上に[エンドスルファン]について0.32V(vs.Ag/AgCl)でのピーク電流によってプロットされる。
【0032】
そのエンドスルファンの濃度の未知の試料が上記の校正グラフを基準にして得られる。アトラジンまたはメチルパラチオンの測定のために類似の手順がその後に行われる。
【0033】
iii)再現性
10
-12Mのエンドスルファンのためのエンドスルファンセンサの膜対膜の再現性は、5の異なるAgO
x膜を用いて5の連続的な測定を行うことによって決定された。平均値および相対標準偏差が、それぞれ、1.03×10
-12Mおよび0.12%になることが判明した。
【0034】
iV)合成多成分系混合物の分析
10
-12Mのエンドスルファンにアルカリおよびアルカリ土類金属イオン(Na
+、K
+、Ca
2+およびMg
2+)の各々が加えられた0、10
-6および10
-2Mの合成混合物の分析により得られた成果物を表2に示す。その表から分かるように、エンドスルファンの回収率は、アルカリおよびアルカリ土類金属の混合物の10
10倍の量が存在していても定量的である。
【表2】
表3は、10
-12Mのエンドスルファンに、混合物として、重金属イオン(Cu
2+、Pb
2+、Hg
2+およびTI
+)の各々を0、10
-6、10
-5および10
-4M添加したことによるエンドスルファン回収物を試験することによって得た結果を表3に示す。許容可能な回収物が、重金属イオン混合物の10
-5M以下の濃度で得られた。
【表3】
表4は、陰イオンの多成分混合物(Cl
-、NO
3-、ClO
4-およびSO
42-)(0、10
-6および10
-4M)が添加された10
-12Mのエンドスルファンの回収率を示す。添加10
-4Mの陰イオン混合物の添加に関して重大な干渉が存在するが最大10
6倍まで許容することができるであろう。
【表4】
V)実試料の分析
自然水の分析のための手順
水試料の適量のアリコート(10ml)に、各1mlの1×10
-3MのNa
2HPO
4および20MのNaOHおよび2mlのxMのエンドスルファン(x=0、10
-12、10
-11、10
-10、10
-8および10
-6M)が添加されて最大20mlになった。電気化学セルに移され、サイクリックボルタンメトリー曲線が描かれ、エンドスルファン濃度が項目ii)の校正グラフを基準にして推定された。表5からわかるように、エンドスルファンの回収物は定量的であり、エンドスルファンの濃度は検出限界より低いということがわかった。
【表5】
【実施例】
【0035】
実施例
本発明の説明に関し、以下の実施例は、多結晶銀円板電極にナノ構造の酸化銀膜を作る方法を説明するためのものである。
【0036】
実施例1
多結晶銀電極上のナノ構造の酸化銀膜は、最初に、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4溶液において15分間、−0.3Vで電気化学的調整を行い、次に、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4溶液に浸漬した後に、125mV/sの走査速度で、−0.3から+0.5V(vs.Ag/AgCl)の電位範囲において7回サイクリックボルタンメトリー走査を行うことによって作製される。
【0037】
実施例2
多結晶銀電極上のナノ構造の酸化銀膜は、最初に、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4において15分間、−0.3V(vs.Ag/AgCl)で電気化学的調整を行い、次に、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4溶液に浸漬した後に、125mV/sの走査速度で、−0.3から+0.5V(vs.Ag/AgCl)の電位範囲において8回サイクリックボルタンメトリー走査を行うことによって作製される。
【0038】
実施例3
多結晶銀電極上のナノ構造の酸化銀膜は、最初に、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4において15分間、−0.3V(vs.Ag/AgCl)で電気化学的調整を行い、次に、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4溶液に浸漬した後に、125mV/sの走査速度で、−0.3から+0.5V(vs.Ag/AgCl)の電位範囲において9回サイクリックボルタンメトリー走査を行うことによって作製される。
【0039】
実施例4
多結晶銀電極上のナノ構造の酸化銀膜は、最初に、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4において15分間、−0.3V(vs.Ag/AgCl)で電気化学的調整を行い、次に、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4溶液に浸漬した後に、125mV/sの走査速度で、−0.4Vから+0.5V(vs.Ag/AgCl)の電位範囲において8回サイクリックボルタンメトリー走査を行うことによって作製される。
【0040】
実施例5
多結晶銀電極上のナノ構造の酸化銀膜は、最初に、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4において15分間、−0.3V(vs.Ag/AgCl)で電気化学的調整を行い、次に、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4溶液に浸漬した後に、125mV/sの走査速度で、−0.35Vから+0.5V(vs.Ag/AgCl)の電位範囲において8回サイクリックボルタンメトリー走査を行うことによって作製される。
【0041】
実施例6
多結晶銀電極上のナノ構造の酸化銀膜は、最初に、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4において15分間、−0.3V(vs.Ag/AgCl)で電気化学的調整を行い、次に、1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4溶液に浸漬した後に、150mV/sの走査速度で、−0.3Vから+0.5V(vs.Ag/AgCl)の電位範囲において8回サイクリックボルタンメトリー走査を行うことによって作製される。
【0042】
多結晶銀電極上のナノ構造酸化銀膜を使用するエンドスルファンの測定のための実験手順
実施例7
1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4(pH=11.8)の適当な量のエンドスルファン(1×10
-13から10
-6M)を20mlの電気化学セルに取り、次に、3電極システムをセルに取り付け、そこでは、作用電極が多結晶銀電極上のナノ構造の酸化銀膜であり、また、Pt薄片およびAg/AgClがそれぞれ対向電極および基準電極である。サイクリックボルタモグラムが、150mV/sの走査速度で−0.3から+0.5Vの電位範囲において走査することによって記録された。未知の濃度のエンドスルファンが、エンドスルファン濃度に対し0.32Vでピーク電流をプロットすることによって校正グラフを基準にして測定された。
【0043】
多結晶銀電極上のナノ構造酸化銀膜を使用するアトラジンの測定のための実験手順
実施例8
1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4(pH=11.8)の適当な量のアトラジン(1×10
-13から10
-6M)を20mlの電気化学セルに取り、次に、3電極システムをセルに取り付け、そこでは、作用電極が多結晶銀電極上のナノ構造の酸化銀膜であり、また、Pt薄片およびAg/AgClがそれぞれ対向電極および基準電極である。サイクリックボルタモグラムが、150mV/sの走査速度で−0.3から+0.5Vの電位範囲において走査することによって記録された。未知の濃度のアトラジンが、アトラジン濃度に対し0.32Vでピーク電流をプロットすることによって校正グラフを基準にして測定された。
【0044】
多結晶銀電極上のナノ構造酸化銀膜を使用するメチルパラチオンの測定のための実験手順
実施例9
1MのNaOH+5×10
-5MのNa
2HPO
4(pH=11.8)の適当な量のメチルパラチオン(1×10
-13から10
-6M)を20mlの電気化学セルに取り、次に、3電極システムをセルに取り付け、そこでは、作用電極が多結晶銀電極上のナノ構造の酸化銀膜であり、また、Pt薄片およびAg/AgClがそれぞれ対向電極および基準電極である。サイクリックボルタモグラムが、150mV/sの走査速度で−0.3から+0.5の電位範囲において走査することによって記録された。未知の濃度のメチルパラチオンが、メチルパラチオン濃度に対し0.32Vでピーク電流をプロットすることによって校正グラフを基準にして測定された。
【0045】
本発明の利点
1)設計および開発された酸化銀膜使用の水性ボルタンメトリーエンドスルファンセンサ
2)発明されたセンサは、選択された農薬の迅速、確実、正確かつ高感度の検出および定量化を提供する。
【0046】
3)発明されたセンサは、自然水、野菜等における10
-12から10
-6M、つまり、6桁の広い濃度範囲にわたるエンドスルファンまたはアトラジンまたはメチルパラチオンに反応する。
【0047】
4)農薬分析信号の再現性の観点からのセンサの再生が、本発明に関して説明した、慎重に設計された機械的およびソノケミカル法による研磨および電気化学的調整の手順を介して保証される。