(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167116
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】光乱反射性フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/02 20060101AFI20170710BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20170710BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
C09J7/02 Z
B32B27/12
B32B27/00 M
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-560848(P2014-560848)
(86)(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公表番号】特表2015-509453(P2015-509453A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】KR2013001448
(87)【国際公開番号】WO2013133558
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年1月27日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0022672
(32)【優先日】2012年3月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511302024
【氏名又は名称】アモグリーンテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ、イン・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ、スン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ヨン・シク
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ユン・ミ
【審査官】
澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−168722(JP,A)
【文献】
特開2013−071456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00− 7/04
D04H 1/00−18/04
B32B 27/00−27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子物質を紡糸方法によって繊維ストランドに紡糸してナノウェブ形態で形成するフィルム層、
前記フィルム層の一面に塗布されるインク層、および
前記フィルム層の他面に紡糸方法によって積層される粘着層を含むことを特徴とする光乱反射性フィルム。
【請求項2】
前記紡糸方法は、一般電気紡糸(electrospinning)、空気電気紡糸(AES:Air−Electrospinning)、電気噴射(electrospray)、電気噴射紡糸(electrobrown spinning)、遠心電気紡糸(centrifugal electrospinning)、フラッシュ電気紡糸(flash−electrospinning)のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の光乱反射性フィルム。
【請求項3】
前記フィルム層は表面に不規則な凹凸が形成されて光を乱反射する光乱反射機能と、指紋が付かない耐指紋機能を同時に有することを特徴とする請求項1に記載の光乱反射性フィルム。
【請求項4】
前記インク層はインク、バインダーおよび溶媒を混合して形成され、前記インクは黒色またはカラー色からなることを特徴とする請求項1に記載の光乱反射性フィルム。
【請求項5】
前記インク層は繊維ストランドの外面を囲むように塗布され、繊維ストランドが互いに交差する部分に塗布されてフィルム層の強度を強化することを特徴とする請求項1に記載の光乱反射性フィルム。
【請求項6】
前記粘着層はフィルム層の表面に積層する第1粘着層と、前記第1粘着層の表面に積層された第2粘着層とを含むことを特徴とする請求項1に記載の光乱反射性フィルム。
【請求項7】
前記フィルム層と粘着層との間に積層された無気孔フィルム層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光乱反射性フィルム。
【請求項8】
前記無気孔フィルム層は、気孔のない形態に形成されている、PU(ポリウレタン)やTPU(熱可塑性ポリウレタン)が含まれている高分子物質からなることを特徴とする請求項7に記載の光乱反射性フィルム。
【請求項9】
離型フィルムの表面に粘着物質を紡糸して粘着層を形成する段階、
前記粘着層の表面に高分子物質を紡糸してナノウェブ形態のフィルム層を形成する段階、および
前記フィルム層の一面にインク層を塗布する段階を含むことを特徴とする光乱反射性フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記粘着層を形成する段階は、コレクタと第1紡糸ノズルの間に高電圧静電気力を印加し、第1紡糸ノズルから粘着物質を紡糸して繊維ストランドが蓄積された形態に形成されることを特徴とする請求項9に記載の光乱反射性フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記フィルム層を形成する段階は、コレクタと第2紡糸ノズルの間に高電圧静電気力を印加し、第2紡糸ノズルから高分子物質を紡糸して粘着層の表面に繊維ストランドを蓄積して形成されることを特徴とする請求項9に記載の光乱反射性フィルムの製造方法。
【請求項12】
繊維ストランドを紡糸する時にエアー噴射装置から繊維ストランドにエアーを噴射して繊維ストランドが飛ばされることを防止することを特徴とする請求項9に記載の光乱反射性フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記インク層を塗布する段階はインク、バインダーおよび溶媒を混合したインクをグラビア印刷、コーティングのうちいずれか一つの方法でフィルム層の表面に形成されることを特徴とする請求項9に記載の光乱反射性フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記粘着層を形成する段階は、離型フィルムの表面に粘度が相対的に低い第1粘着層を形成する段階と、
前記第1粘着層の表面に粘度が相対的に高い第2粘着層を形成する段階とを含むことを特徴とする請求項9に記載の光乱反射性フィルムの製造方法。
【請求項15】
離型フィルムの表面に粘着物質を紡糸して粘着層を形成する段階、
前記粘着層の表面にPU(ポリウレタン)やTPU(熱可塑性ポリウレタン)が含まれている高分子物質を紡糸して高分子フィルム層を形成する段階、
前記高分子フィルム層の表面に高分子物質を紡糸してナノウェブ形態のフィルム層を形成する段階、および
前記フィルム層の一面にインク層を塗布する段階を含むことを特徴とする光乱反射性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の光を乱反射する
光乱反射機能(以下、無光機能ともいう)だけでなく、指紋が付かない耐指紋機能を有する
光乱反射性フィルム(以下、無光フィルムともいう)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、無光フィルムは外部の光を乱反射することによって有光フィルムにおける目の疲れおよび包装された中身公開を防止し、製品の優雅さを持たせることができる。したがって、最近は食品包装、本の表紙、ショッピングバッグ、またはラベル用紙などに使用されており、使用用途が順次増加している。
【0003】
特に、無光フィルムは携帯用電子機器の内部に装着されるNFCアンテナの表面に付着してNFCアンテナの保護フィルムとして用いることもできる。
【0004】
既存の無光フィルムは光反射および透明性が高く無光面の粗度が低くてフィルムの表面がきれいではなかった。これに、使用者の欲求を充足するために光反射性と透明性を低くしフィルム外形の優雅さを高めるために無光面の粗度を改善した無光フィルムの開発が必要となった。
【0005】
従来の無光フィルムは、韓国特許公報10−0370265号(2003年01月16日)に記載されているように、ホモポリプロピレン30〜70重量%、高密度ポリエチレン70〜30重量%からなる基材樹脂組成物100重量部に対して、ペルオキシド0.001〜0.1重量部を直接またはマスターバッチ形態で混合し、酸化防止剤0.001〜0.5重量部と滑剤0.001〜0.2重量部を添加して製造した複合樹脂組成物で構成され、無光積層フィルム用複合樹脂組成物を溶融圧出してポリプロピレンフィルム面に一定の厚さで積層して製造された。
【0006】
しかし、従来の無光フィルムは、複合樹脂組成物を溶融圧出してベースとなるポリプロピレンフィルムの表面に積層する構造であるため、無光フィルムの厚さを薄く作りにくく、無光フィルムの厚さを自由に調節しにくく、製造費用が増加するという問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高分子物質を電気紡糸方法によって超極細繊維ストランドに作り、この繊維ストランドが蓄積されてナノウェブ形態で形成されるので、厚さを薄く作ることができる無光フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、外部の光を乱反射する無光機能だけでなく、指紋が付かない耐指紋機能を有する無光フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、フィルム層の表面にインク層を塗布することによって、無光フィルムの色を多様化することができ、無光フィルムの表面強度を強化して耐スクラッチ性を持つようにする無光フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は上記で言及した技術的課題に限定されず、言及しないまた他の技術的課題は以下の記載から本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかに理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の無光フィルムは、高分子物質を電気紡糸してナノウェブ形態で形成するフィルム層と、前記フィルム層の一面に塗布されるインク層と、前記フィルム層の他面に電気紡糸によって積層される粘着層とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の無光フィルムの製造方法は、高分子物質を電気紡糸してナノウェブ形態のフィルム層を形成する段階と、前記フィルム層の他面に粘着物質を電気紡糸してナノウェブ形態の粘着層を形成する段階と、前記フィルム層の一面にインク層を塗布する段階とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
前記のように、本発明の無光フィルムは、高分子物質を電気紡糸して超極細繊維ストランドに作り、この繊維ストランドが蓄積されてナノウェブ形態で形成されるので、フィルムの厚さを自由に作ることができ、特に厚さを薄く作ることができるという長所がある。
【0014】
また、本発明の無光フィルムは、フィルムの表面に不規則な凹凸を形成して外部の光を乱反射する無光機能だけでなく、指紋が付かない耐指紋機能を有することができるという長所がある。
【0015】
また、本発明の無光フィルムは、フィルム層の表面にインク層を塗布することによって、無光フィルムの色を多様化することができ、無光フィルムの表面強度を強化して耐スクラッチ性を持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施例による無光フィルムの断面図である。
【
図2】本発明の第1実施例による無光フィルムの拡大図である。
【
図3】本発明の第2実施例による無光フィルムの断面図である。
【
図4】本発明の第3実施例による無光フィルムの断面図である。
【
図5】本発明の無光フィルムを製造する電気紡糸装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明による実施例を詳しく説明する。この説明過程で、図面に示した構成要素の大きさや形状などは、説明の明瞭性と便宜のために誇張されて示されることがある。また、本発明の構成および作用を考慮して、特に定義されている用語は使用者や運用者の意図または慣例によって異なる。したがって、このような用語に対する定義は、本明細書全体の内容に基づいて下されるべきである。
【0018】
図1は本発明の第1実施例による無光フィルムの断面図であり、
図2は本発明の第1実施例による無光フィルムの拡大図である。
【0019】
第1実施例による無光フィルムは高分子物質を電気紡糸して超極細繊維ストランドに作り、この繊維ストランドが蓄積されてナノウェブ(nano web)形態で形成されるフィルム層10と、フィルム層10の一面に塗布されるインク層20と、フィルム層10の他面に積層される粘着層30とを含む。
【0020】
フィルム層10は高分子物質を紡糸方法によって超極細繊維ストランド18を作り、この超極細繊維ストランド18が蓄積されて多数の気孔12を有するナノウェブ形態で製造されるので、表面が不規則な形態に形成される。
【0021】
フィルム層10は紡糸方法によって不織布形態で製造されるので、表面が不規則な凹凸16形状に形成され、この不規則な凹凸16が光を乱反射して無光効果を付与すると共に耐指紋効果を発揮することになる。
【0022】
繊維ストランド18の直径は0.1〜3.0umの範囲とすることが好ましい。
【0023】
ここで、本発明に適用される紡糸方法としては、一般電気紡糸(electrospinning)、空気電気紡糸(AES:Air−Electrospinning)、電気噴射(electrospray)、電気噴射紡糸(electrobrown spinning)、遠心電気紡糸(centrifugal electrospinning)、フラッシュ電気紡糸(flash−electrospinning)のうちいずれか一つを使用することができる。
【0024】
つまり、本発明のフィルム層10および粘着層30は超極細繊維ストランドが蓄積された形態に作ることができる紡糸方法のうち、いずれもの紡糸方法が適用可能である。
【0025】
フィルム層10を形成するために使用される高分子物質としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(ビニリデンフルオライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)、パーフルオロポリマー、ポリ塩化ビニルまたはポリ塩化ビニリデンおよびこれらの共重合体およびポリエチレングリコールジアルキルエーテルおよびポリエチレングリコールジアルキルエステルを含むポリエチレングリコール誘導体、ポリ(オキシメチレン−オリゴ−オキシエチレン)、ポリエチレンオキサイドおよびポリプロピレンオキシドを含むポリオキシド、ポリビニルアセテート、ポリ(ビニルピロリドン−ビニルアセテート)、ポリスチレンおよびポリスチレンアクリロニトリル共重合体、ポリアクリロニトリルメチルメタクリレート共重合体を含むポリアクリロニトリル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート共重合体およびこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
フィルム層10は紡糸方法で製造されるので、高分子物質の紡糸量により厚さが決定される。したがって、フィルム層10を所望の厚さに作りやすいという長所がある。つまり、高分子物質の紡糸量を少なくすればフィルム層10の厚さを薄く作ることができ、紡糸量が少ないので、その分、製造費用を減らすことができる。
【0027】
このように、フィルム層10は電気紡糸方法によって製造されるので、高分子物質の紡糸量によって厚さを自由に調節することができ、既存の無光フィルムに比べてさらに薄いフィルムの製造が可能である。
【0028】
インク層20はインク、バインダーおよび溶媒を一定比率で混合してフィルム層10の表面に塗布される。このとき、インク層20の塗布方法としては、グラビア印刷、コーティング、噴射などを使用することができる。
【0029】
インクは黒色インクやカラーインクが用いられて無光フィルムの色を多様化する役割を果たす。そして、インク層20にはフィルム層10の強度を強化できるバインダーが含まれてフィルム層10の表面強度を強化することによって耐スクラッチ性を有することになる。
【0030】
ここで、インク層20を薄く形成すれば無光機能を遂行するが、インク層20を厚く形成すれば有光機能を遂行する有光フィルムにも製造可能である。
【0031】
つまり、インク層20を厚く形成すれば有光でありながら耐指紋を有する有光耐指紋フィルムが製造される。
【0032】
図2に示されているように、フィルム層10は電気紡糸方法によって製造されて超極細繊維ストランド18が蓄積されたナノウェブ形態であるため、繊維ストランド18の間に気孔12が形成され、インク層20が繊維ストランドの外面に囲まれるようになって繊維ストランドの強度を強化することになる。
【0033】
また、インク層20は繊維ストランド18が互いに接する地点Pに塗布されるので、繊維ストランド間を固定させる役割を果たしてフィルム層10の強度を強化させることになる。したがって、フィルム層10自体の強度を強化すると共に無光フィルムの表面強度を増加させて耐スクラッチ性を持つことになる。
【0034】
このように、インク層20はナノウェブ形態のフィルム層10表面に塗布されるので、無光機能と耐指紋機能を同時に行うことができる。
【0035】
粘着層30はフィルム層10を作る方法と同様の電気紡糸方法によって製造される。つまり、粘着層30は接着剤と溶媒を混合して電気紡糸に適した粘度の粘着物質を作り、この粘着物質を電気紡糸方法でフィルム層10の他面に紡糸して形成される。
【0036】
このとき、粘着層30は粘着物質の紡糸量により厚さを決定する。したがって、粘着層30の厚さを自由に形成することができる。
【0037】
そして、粘着層30は超極細繊維ストランド形態に紡糸されてフィルム層10表面に粘着するが、粘着物質がフィルム層10の気孔12に流入してフィルム層10と粘着層30との間の粘着強度を増加させる。したがって、無光フィルムを製品から分離する時、製品の表面に粘着層が残って汚れる問題を解消することができる。
【0038】
また、粘着層30がフィルム層10の気孔12に流入するに従って、粘着剤の量を増加させることができて、同じ厚さの粘着層30に形成する時に粘着力を増加させることができる。
【0039】
粘着層30の表面には粘着層30を保護するための離型フィルム40が付着する。
【0040】
第1実施例においてはフィルム層10の一面にインク層20を形成して一面だけ無光無指紋機能を有する構造について説明したが、これに加えて、両面が無光無指紋機能を有する構造にも適用可能である。
【0041】
つまり、フィルム層10表面にインク層20が形成された構造を一対にした後、相互合紙すれば両面にインク層が備えられて両面無光無指紋フィルムが製造される。
【0042】
図3は本発明の第2実施例による無光フィルムの断面図である。
【0043】
第2実施例による無光フィルムはフィルム層10の強度が強く求められる部位に用いるためのものであって、紡糸方法によって超極細繊維が蓄積された一定の厚さのナノウェブ(nano web)形態を有するフィルム層10と、フィルム層10表面に積層される第1粘着層32と、前記第1粘着層32の表面に積層される第2粘着層34と、フィルム層10の表面に塗布されるインク層20とを含む。
【0044】
第1粘着層32は粘度が高い粘着層であり、第2粘着層34は第1粘着層32に比べて相対的に粘度が低い粘着層である。
【0045】
フィルム層10表面に粘度が高い粘着層を積層すればフィルム層10に形成される気孔12に吸収される粘着物質の量が相対的に少なくなるため、フィルム層10の形態を維持しやすく、よって、フィルム層10の強度を強くすることができる。
【0046】
したがって、フィルム層10表面に粘度が高い第1粘着層32を積層してフィルム層10の強度を強化する。
【0047】
そして、粘着層の粘度が高ければ粘着力が低下するが、粘着力の低下を防止するために粘度が高い第1粘着層32の表面に粘度が低い第2粘着層34を積層して粘着力を強化する。
【0048】
このような第2実施例による無光フィルムは、フィルム層10の表面には粘度が高い第1粘着層32を積層してフィルム層10の強度を強化させ、第1粘着層32の表面には粘度が低い第2粘着層34を積層して粘着力を強化させる。
【0049】
図4は本発明の第3実施例による無光フィルムの断面図である。
【0050】
第3実施例による無光フィルムは、紡糸方法によって超極細繊維が蓄積された一定の厚さのナノウェブ(nano web)形態を有するフィルム層10と、フィルム層10の一面に積層される無気孔フィルム層42と、無気孔フィルム層42の表面に積層される粘着層44とを含む。
【0051】
無気孔フィルム層42はPU(
ポリウレタン)やTPU(
熱可塑性ポリウレタン)が含まれている高分子物質を電気紡糸方法によって超極細繊維ストランドを蓄積すればPU(
ポリウレタン)やTPU(
熱可塑性ポリウレタン)が溶媒に溶けながら別途の熱処理なしに気孔のない無気孔形態に形成される。
【0052】
つまり、無気孔フィルム層42はPUやTPUなど溶媒に溶けるゴム成分が含まれている粘着物質を使用して電気紡糸すれば、溶媒に溶けながら気孔のない無気孔タイプのフィルムに製造される。
【0053】
フィルム層10表面に無気孔フィルム層42を積層すれば、基材10に形成された気孔12に粘着物質が吸収されないので、基材10の強度を強化することができる。
【0054】
粘着層44は粘着力を高めることができるように粘度の低い粘着層に形成する。
【0055】
このように、第3実施例による無光フィルムは、フィルム層10と粘着層44との間に無気孔フィルム層42を積層してフィルム層10の気孔12に粘着層44の粘着物質が吸収されることを防止して、フィルム層10の強度を強化することができる。
【0056】
図5は本発明の一実施例による無光フィルムを製造する電気紡糸装置の構成図である。
【0057】
本発明の電気紡糸装置は、接着物質と溶媒を混合して貯蔵する第1高分子物質と溶媒を混合して貯蔵する第1ミキシングタンク(Mixing Tank)50と、高分子物質と溶媒を混合して貯蔵する第2ミキシングタンク52と、高電圧発生器が連結され第1ミキシングタンク50と連結されて超極細繊維ストランド14を噴射して粘着層30を形成する第1紡糸ノズル54と、高電圧発生器と連結され第2ミキシングタンク52と連結されて超極細繊維ストランド18を噴射してフィルム層10を形成する第2紡糸ノズル56と、第1紡糸ノズル54および第2紡糸ノズル56から紡糸される超極細繊維ストランド14、18が蓄積されるコレクタ58とを含む。
【0058】
第1ミキシングタンク50には粘着剤と溶媒を均等に混合すると共に粘着物質が一定の粘度を維持するようにする第1撹拌機62が備えられおり、第2ミキシングタンク52には高分子物質と溶媒を均等に混合すると共に高分子物質が一定の粘度を維持するようにする第2撹拌機64が備えられている。
【0059】
コレクタ58は第1紡糸ノズル54と第2紡糸ノズル56から紡糸される超極細繊維ストランドが捕集されるものであって、コンベヤーに形成されて第1紡糸ノズル54によって形成された粘着層30を第2紡糸ノズル56に移動して粘着層30の表面にフィルム層10を積層する。
【0060】
コレクタ58と紡糸ノズル54、56の間に90〜120Kvの高電圧静電気力を印加することによって超極細繊維ストランド14、18が紡糸される。
【0061】
ここで、第1紡糸ノズル54、第2紡糸ノズル56は複数に配列されており、一つのチャンバー内部に順次に配置することができ、それぞれ異なるチャンバーに配置することもできる。
【0062】
第1紡糸ノズル54と第2紡糸ノズル56にはそれぞれエアー噴射装置60が備えられて紡糸ノズル54、56から紡糸される繊維ストランド14、18にエアーを噴射して繊維ストランド14、18が飛ばされずにコレクタ58に円滑に捕集されるようにする。
【0063】
コレクタ58の前方には離型フィルム40が巻かれた離型フィルムロール70が配置されてコレクタ58に離型フィルム40が供給される。
【0064】
コレクタ58の一側にはフィルム層10と粘着層30を加圧して一定の厚さに作る加圧ローラ72が備えられ、加圧ローラ72を通過しながら加圧されたフィルム層10および粘着層30が巻かれるフィルムロール74が備えられる。
【0065】
このように構成される電気紡糸装置を利用して無光フィルムを製造する工程を以下に説明する。
【0066】
離型フィルムロール70からコレクタ58に離型フィルム40を供給する。
【0067】
そして、コレクタ58と第1紡糸ノズル54の間に高電圧静電気力を印加することによって第1紡糸ノズル54からコレクタ58の上面に粘着物質を超極細繊維ストランド14に作って紡糸する。そうすれば、離型フィルム40の表面に超極細繊維ストランドが捕集されて粘着層30が形成される。
【0068】
このとき、第1紡糸ノズル54に設けられたエアー噴射装置60から繊維ストランド14を紡糸する時、繊維ストランド14にエアーを噴射して繊維ストランド14が飛ばされずにコレクタの表面に捕集および集積されるようにする。
【0069】
そして、粘着層30の製造が完了すると、コレクタ58が駆動されて粘着層30は第2紡糸ノズル56の下部に移動し、コレクタ58と第2紡糸ノズル56の間に高電圧静電気力を印加することによって第2紡糸ノズル56から粘着層30の表面に高分子物質を超極細繊維ストランド18に作って紡糸する。そうすれば、粘着層30の表面に超極細繊維ストランドが捕集されてナノウェブ形態のフィルム層30が形成される。
【0070】
このとき、同様に第2紡糸ノズル56に設けられたエアー噴射装置60から繊維ストランド18にエアーを噴射して繊維ストランド18が飛ばされずに粘着層10の表面に捕集および集積されるようにする。
【0071】
このように、完成されたテープは加圧ローラ72を通過しながら一定の厚さに加圧された後、フィルムロール74に巻かれることになる。
【0072】
そして、フィルム層10の表面にインク層20を塗布すると無光フィルムの製造が完了する。
【0073】
ここで、インク層20はインク、バインダーおよび溶媒を一定比率で混合して形成され、インク層20の塗布方法としてはグラビア印刷、コーティング、噴射などが用いられる。
【0074】
以上、本発明を特定の望ましい実施例を例にあげて説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない範囲内で当該発明の属する技術分野で通常の知識を有する者によって多様な変更と修正が可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0075】
無光フィルムは食品包装、本の表紙、ショッピングバッグ、またはラベル用紙などに使用されており、携帯用電子機器の内部に装着されるNFCアンテナの表面に付着してNFCアンテナの保護フィルムとしても使用されるものであり、本発明の無光フィルムは厚さを薄く作りながら性能を向上させることができるので、多様な分野に適用可能である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 高分子物質を紡糸方法によって繊維ストランドに紡糸してナノウェブ形態で形成するフィルム層、
前記フィルム層の一面に塗布されるインク層、および
前記フィルム層の他面に紡糸方法によって積層される粘着層を含むことを特徴とする無光フィルム。
[2] 前記紡糸方法としては、一般電気紡糸(electrospinning)、空気電気紡糸(AES:Air−Electrospinning)、電気噴射(electrospray)、電気噴射紡糸(electrobrown spinning)、遠心電気紡糸(centrifugal electrospinning)、フラッシュ電気紡糸(flash−electrospinning)のうちいずれか一つを使用することを特徴とする上記[1]に記載の無光フィルム。
[3] 前記フィルム層は表面に不規則な凹凸が形成されて光を乱反射する無光機能と、指紋が付かない耐指紋機能を同時に有することを特徴とする上記[1]に記載の無光フィルム。
[4] 前記インク層はインク、バインダーおよび溶媒を混合して形成され、前記インクは黒色またはカラー色からなることを特徴とする上記[1]に記載の無光フィルム。
[5] 前記インク層は繊維ストランドの外面を囲むように塗布され、繊維ストランドが互いに交差する部分に塗布されてフィルム層の強度を強化することを特徴とする上記[1]に記載の無光フィルム。
[6] 前記粘着層は接着剤と溶媒を混合して紡糸するのに十分な粘度の粘着物質を電気紡糸方法で紡糸することを特徴とする上記[1]に記載の無光フィルム。
[7] 前記粘着層はフィルム層の表面に積層する第1粘着層と、前記第1粘着層の表面に積層する第2粘着層とを含み、
前記第1粘着層は第2粘着層に比べて相対的に粘度が高く形成されることを特徴とする上記[1]に記載の無光フィルム。
[8] 前記フィルム層と粘着層との間に積層する無気孔フィルム層をさらに含むことを特徴とする上記[1]に記載の無光フィルム。
[9] 前記無気孔フィルム層はPU(Polyurethane)やTPU(Thermoplastic polyurethane)が含まれている高分子物質を紡糸方法によって気孔のない形態に形成することを特徴とする上記[8]に記載の無光フィルム。
[10] 離型フィルムの表面に粘着物質を紡糸して粘着層を形成する段階、
前記粘着層の表面に高分子物質を紡糸してナノウェブ形態のフィルム層を形成する段階、および
前記フィルム層の一面にインク層を塗布する段階を含むことを特徴とする無光フィルムの製造方法。
[11] 前記粘着層を形成する段階は、コレクタと第1紡糸ノズルの間に高電圧静電気力を印加し、第1紡糸ノズルから粘着物質を紡糸して繊維ストランドが蓄積された形態に形成されることを特徴とする上記[10]に記載の無光フィルムの製造方法。
[12] 前記フィルム層を形成する段階は、コレクタと第2紡糸ノズルの間に高電圧静電気力を印加し、第1紡糸ノズルから高分子物質を紡糸して粘着層の表面に繊維ストランドを蓄積して形成されることを特徴とする上記[10]に記載の無光フィルムの製造方法。
[13] 繊維ストランドを紡糸する時にエアー噴射装置から繊維ストランドにエアーを噴射して繊維ストランドが飛ばされることを防止することを特徴とする上記[10]に記載の無光フィルムの製造方法。
[14] 前記インク層を塗布する段階はインク、バインダーおよび溶媒を混合したインクをグラビア印刷、コーティングのうちいずれか一つの方法でフィルム層の表面に形成されることを特徴とする上記[10]に記載の無光フィルムの製造方法。
[15] 前記粘着層を形成する段階は、離型フィルムの表面に粘度が相対的に低い第1粘着層を形成する段階と、
前記第1粘着層の表面に粘度が相対的に高い第2粘着層を形成する段階とを含むことを特徴とする上記[10]に記載の無光フィルムの製造方法。
[16] 離型フィルムの表面に粘着物質を紡糸して粘着層を形成する段階、
前記粘着層の表面にPU(Polyurethane)やTPU(Thermoplastic polyurethane)が含まれている高分子物質を紡糸して高分子フィルム層を形成する段階、
前記高分子フィルム層の表面に高分子物質を紡糸してナノウェブ形態のフィルム層を形成する段階、および
前記フィルム層の一面にインク層を塗布する段階を含むことを特徴とする無光フィルムの製造方法。