【実施例】
【0046】
グルコシルトランスフェラーゼ(GtfJ)酵素の製造
材料
透析チューブ材料(Spectrapor 25225−226,分画分子量12000)をVWR(Radnor,PA)から入手した。
デキストランおよびエタノールをSigma Aldrichから入手した。ショ糖をVWRから入手した。
Suppressor 7153消泡剤をCognis Corporation(Cincinnati,OH)から入手した。
他のすべての化学製品は、通常利用される供給業者から入手された。
【0047】
種培地
発酵槽のスターター培養物を増殖させるのに使用される種培地は、酵母抽出物(Amberx695、1リットル当たり5.0グラム(g/L))、K
2HPO
4(10.0g/L)、KH
2PO
4(7.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.0g/L)、(NH
4)
2SO
4(4.0g/L)、MgSO
4七水和物(1.0g/L)およびクエン酸鉄アンモニウム(0.10g/L)を含有した。5N NaOHまたはH
2SO
4のいずれかを使用して、培地のpHを6.8に調整し、培地をフラスコ内で滅菌した。滅菌後の添加は、グルコース(50重量%溶液を20mL/L)およびアンピシリン(25mg/mLストック溶液を4mL/L)を含んだ。
【0048】
発酵槽培地
発酵槽において使用される増殖培地は、KH
2PO
4(3.50g/L)、FeSO
4七水和物(0.05g/L)、MgSO
4七水和物(2.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.90g/L)、酵母抽出物(Ambrex695、5.0g/L)、Suppressor7153消泡剤(1リットル当たり0.25ミリリットル、mL/L)、NaCl(1.0g/L)、CaCl
2二水和物(10g/L)、およびNIT微量元素溶液(10mL/L)を含有した。NIT微量元素溶液は、クエン酸一水和物 (10g/L)、MnSO
4水和物合物(2g/L)、NaCl(2g/L)、FeSO
4七水和物(0.5g/L)、ZnSO
4七水和物(0.2g/L)、CuSO
4五水和物(0.02g/L)およびNaMoO
4二水和物(0.02g/L)を含有した。滅菌後の添加は、グルコース(50重量%溶液を12.5g/L)およびアンピシリン(25mg/mLストック溶液を4mL/L)を含んだ。
【0049】
グルコシルトランスフェラーゼ(gtfJ)酵素発現株の作製
大腸菌(E.coli)(DNA2.0,Menlo Park CA)における発現に対して最適化されたコドンを用いて、唾液連鎖球菌(Streptococcus salivarius)(ATCC25975)からの成熟グルコシルトランスフェラーゼ酵素(GtfJ;EC2.4.1.5;GENBANK(登録商標)AAA26896.1、配列番号3)をコードする遺伝子を合成した。核酸産物(配列番号1)をpJexpress404(登録商標)(DNA2.0,Menlo Park CA)にサブクローニングし、pMP52として同定されるプラスミド(配列番号2)を産生した。プラスミドpMP52を使用して、大腸菌(E.coli)MG1655(ATCC47076)を形質転換し、MG1655/pMP52として同定される株を産生した。
【0050】
本明細書で使用される組換えDNAおよび分子クローニング標準技術は当技術分野でよく知られており、Sambrook,J.and Russell,D.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(2001);およびSilhavy,T.J.,Bennan,M.L.and Enquist,L.W.,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1984);およびAusubel,F.M.et.al.,Short Protocols in Molecular Biology,5
th Ed.Current Protocols,John Wiley and Sons,Inc.,N.Y.,2002に記述されている。
【0051】
微生物培養に適した材料および方法は、当技術分野でよく知られている。以下の実施例で使用するのに適した技術は、Manual of Methods for General Bacteriology(Phillipp Gerhardt,R.G.E.Murray,Ralph N.Costilow,Eugene W.Nester,Willis A.Wood,Noel R.Krieg and G.Briggs Phillips,Eds.),American Society for Microbiology:Washington,D.C.(1994));またはManual of Industrial Microbiology and Biotechnology,3
rd Edition(Richard H.Baltz,Julian E.Davies,and Arnold L.Demain Eds.),ASM Press,Washington,DC,2010に記載されている。
【0052】
発酵
発酵における組換えgtfJの産生
発酵槽における組換えgtfJ酵素の産生は、上記に記載のように作製されたgtfJ酵素を発現することによって開始された。種培地のアリコート10mLを125mL使い捨てバッフル付きフラスコに添加し、20%グリセロール中の上記で調製された大腸菌(E.coli)MG1655/pMP52の培養物1.0mLをそれに接種した。毎分回転数300(rpm)にて3時間振盪しながら、この培養物を37℃で増殖させた。
【0053】
2L振とうフラスコに種培地0.5Lを装入することによって、発酵槽を開始するための種培物を調製した。プレシード培養物1.0mLを無菌的に、フラスコ内の種培地0.5Lに移し、37℃および300rpmにて5時間培養した。上述の発酵槽培地8Lを37℃で含有する14L発酵槽(Braun,Perth Amboy,NJ)に、光学濃度550nm(OD
550)>2にて種培養物を移した。
【0054】
大腸菌(E.coli)MG1655/pMP52の細胞を発酵槽内で増殖させ、培地のグルコース濃度が0.5g/Lに下がった時に、グルコースの供給(MgSO
4・7H
2O 1重量%を含有する50重量%グルコース溶液)を開始した。1分当たり供給物0.36グラム(供給物g/分)にて供給を開始し、各時間で供給物0.42、0.49、0.57、0.66、0.77、0.90、1.04、1.21、1.41、1.63、1.92、2.2g/分に連続的にそれぞれ増加した。その後、グルコース濃度が0.1g/Lを超えたときにグルコース供給を減らすか、または一時的に停止することによって、その速度を一定に維持した。YSIグルコース分析器(YSI,Yellow Springs,Ohio)を使用して、培地のグルコース濃度をモニターした。
【0055】
細胞がOD
55070に達した時に、0.5M IPTG(イソプロピルβ−D−1−チオガラクト−ピラノシド)9mLを添加して、グルコシルトランスフェラーゼ酵素活性の誘導を開始した。溶存酸素(DO)濃度を空気飽和度25%にて制御した。最初にインペラー攪拌速度(400〜1200rpm)によって、後に通気速度(2〜10標準リットル/分、slpm)によって、DOを制御した。pHを6.8で制御した。NH
4OH(14.5%(重量/体積、w/v))およびH
2SO
4(20%(w/v))をpH制御に使用した。背圧を0.5バールで維持した。様々な間隔(20、25および30時間)にて、Suppressor7153消泡剤5mLを発酵槽内に添加し、泡立ちを抑えた。IPTGを添加して8時間後に、遠心分離によって細胞を収集し、−80℃で細胞ペーストとして保存した。
【0056】
細胞ペーストからのgtfJ粗製酵素抽出物の製造
上記で得られた細胞ペーストを50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)に150g/Lで懸濁し、スラリーを調製した。そのスラリーを12,000psiでホモジナイズし(Rannie型装置、APV−1000またはAPV16.56)、ホモジネートを4℃に冷却した。適度に力強く攪拌しながら、細胞ホモジネート1リットル当たり、フロック(floc)溶液(Aldrich番号409138、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)中にて5%)50gを添加した。攪拌を弱めて、15分間軽く攪拌した。次いで、4500rpmにて3時間、5〜10℃で遠心することによって、細胞ホモジネートを清澄化にした。粗製gtfJ酵素抽出物を含有する上清を30キロダルトン(kDa)カットオフ膜で濃縮した(約5倍)。gftJ酵素溶液中のタンパク質の濃度は、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ(Sigma Aldrich)によって4〜8g/Lであると決定された。
【0057】
ポリマーの製造、紡糸溶液、および繊維紡糸装置および手順
図1は、本発明の繊維紡糸プロセスで使用するのに適した装置の概略図である。ウォームギヤドライブ1が、制御速度にて、紡糸セル3内に嵌め込まれたピストン上でラム2を駆動する。紡糸セルは、フィルターアセンブリを含有し得る。適切なフィルターアセンブリは、100および325メッシュのステンレス鋼スクリーンを含む。紡糸パック4は、紡糸口金5と、任意に紡糸口金のプレフィルターとしてステンレス鋼スクリーンを含有する。それから製造された押出しフィラメント6を液体凝固浴7内に誘導する。表1に示すすべての実施例において、フィラメントは紡糸口金から、液体凝固浴に直接押出され、紡糸口金の底部は浴に浸漬された。
【0058】
押出し物は、必要ではないが、前後に動かして、通常Teflon(登録商標)PTFE製のガイド8の間の浴に通すことができる。
図1には浴の1回通過のみを示す。凝固浴7を出ると、急冷されたフィラメント9がその周りに巻き取られる、独立して駆動されるロール10を使用して、急冷されたフィラメント9を任意に、延伸ゾーンに誘導することができる。その急冷されたフィラメントは任意に、延伸浴に誘導され、押出されたフィラメントの更なる溶媒抽出、洗浄または延伸など、さらに処理され得る。このようにして製造されたフィラメントを次いで、トラバース機構12に誘導し、ボビン上の繊維を均一に分配し、巻取装置13を使用してプラスチックボビンに回収する。一実施形態において、このプロセスは、独立して駆動する複数のロールを含む。
【0059】
一実施形態において、駆動ロール10を繊維経路から取り除くが、それにもかかわらず、繊維は延伸浴に浸漬される。その2つは互いに独立している。以下の実施例のすべてにおいて、駆動ロール10は、繊維経路から取り除かれた。
【0060】
一実施形態において、多数のフィラメントが、多口紡糸口金を通して押出され、そのように製造されたフィラメントを集束してヤーンが形成される。更なる実施形態において、そのプロセスはさらに、多数のヤーンを同時に製造することができるように、多数の多口紡糸口金を含む。
【0061】
各実施形態において、製造された繊維の巻取りボビンを、表1に示す液体のバケツに一晩浸した。次いで、このように浸漬された繊維のボビンを少なくとも24時間、空気乾燥させた。次いで、ASTM D2101−82に準拠して、繊維の引張り特性を決定した。
【0062】
紡糸セル、ピストン、連結チューブ材料、および紡糸口金はすべてステンレス鋼製であった。
【0063】
繊維の物理的性質の測定
試験片の長さが10インチであることを除いては、ASTM標準D2101−82に準拠する方法および装置を使用して、テナシティ、伸びおよび初期弾性率などの物理的性質を測定した。報告される結果は、3〜5個の個々のフィラメント試験の平均である。
【0064】
製造されたすべての繊維の物理的性質を決定した。その結果を表1に示す。製造された繊維のデニール、テナシティ(T)(グラム/デニール)(gpd)、破断点伸び(E,%)、および初期弾性率(M)(gpd)などの物理的性質が含まれる。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
実施例1
ポリマーP1の製造
ショ糖(VWR番号BDH8029)1000g、デキストランT−10(Sigma番号D9260)20g、およびホウ酸(Sigma番号B6768)370.98gを水約18L中で合わせることによって、水性溶液20リットルを調製した。4N NaOH(EMD番号SX0590−1)溶液を用いて、pHを7.5に調整した。次いで、さらに水を添加し、総体積を20Lにした。次いで、このように調製された溶液に、上記で製造された酵素抽出物180mlを装入し、周囲温度にて48時間静置した。325メッシュスクリーンを使用して、ブフナー漏斗で40マイクロメーターの濾紙に、得られたポリ(α(1→3)グルカン)固形物を収集した。脱イオン水で濾過ケークを洗浄し、上記のように濾過した。脱イオン水での洗浄をさらに3回繰り返した。最後に、メタノールでさらに2回の洗浄を行い、漏斗上で濾過ケークをプレスし、真空中で室温にて乾燥させた。収量:白色のフレーク状固形物237.68グラム。
【0068】
移動相として3.0%LiCl(Aldrich,Milwaukee,WI)と共に、J.T Baker,Phillipsburg,NJから入手したDMAcを用いて、Zorbax PSM Bimodalシリカカラム2個(Agilent,Wilmington,DE)を備えたGPCV/LS2000(商標)(Waters Corporation,Milford,MA)クロマトグラフを使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分子量を決定した。LiCl5.0%と共にDMAcに試料を溶解した。数平均および重量平均分子量(MnおよびMw)はそれぞれ、139,000および279,000ダルトンであることが分かった。
【0069】
実施例1 紡糸溶液
250mL広口ガラス瓶にポリマーP1 25g、5重量%水酸化ナトリウム225gを装入した。次いで、CS
2(7.5g)をシリンジで添加した。容器はキャップおよびセプタムを備えており、ポリプロピレン製攪拌棒は、セプタムを通して取り付けられていた。内容物を攪拌棒で手作業で混合し、次いで室温にて一晩静置した。翌日、一部溶解した溶液(透明であるが、少量の目に見える粒子を含有する)を、紡糸セルおよび100および325メッシュステンレス鋼スクリーンをなどのピストン含有スクリーンパックに移した。ピストンは、粘性混合物の上に嵌め込まれた。次いで、13サイクルを通して、電動式ウォームギヤー駆動ラムを使用して、1/4インチのステンレス鋼管材料製のカップラーを介して第1セルと接近して連結された同様に装備された紡糸セル内に混合物を前後にポンプ注入した。
【0070】
実施例2〜4:繊維紡糸
実施例1の溶液を調製して約20時間後に、このように調製された溶液を、
図1を参照して上述の紡糸装置に供給した。20穴の紡糸口金に溶液を供給し、各穴は直径0.003インチ、長さ0.006インチの円形断面を特徴とする。表1は、実施例2〜4で製造された繊維に用いられた紡糸条件を示す。上述のように
図1に図示される装置は、実施例1〜3におけるフィラメント経路から、駆動ロール10を除去することによって修正された。示される紡糸延伸は、噴射速度よりも速い巻取りを行うことによって達成された。実施例1の溶液は、100および325メッシュスクリーンからなるフィルターアセンブリを有する紡糸パックを通じて、表1に示す速度にて紡糸口金に計量供給された。H
2SO
48重量%、Na
2SO
423重量%、およびZnSO
40.5重量%を含有する水凝固浴内に紡糸口金を浸した。フィラメントを直接、表1に示す温度で垂直に急冷浴内に押出した。長さ6フィートの凝固浴内での更なる滞留時間は、示すように4.1または11フィーとの総浸漬距離に対して、更なるガイドピン(8)上に繊維を誘導することによって増加した。実施例2および3において、凝固浴から取り出すと、このように凝固されたフィラメントは、表1に示す巻取り速度にて横断ガイド(traversing guide)を有する、速度制御された巻取装置に向けられた。実施例4において、表1に示す長さおよび温度のメタノールの第2浴に、凝固フィラメントが誘導された。各実施例において、数百フィートの繊維がボビンに巻き取られた。巻き取りに続いて、実施例2〜4の繊維ボビンを、それぞれ5%NaHCO
3、MeOH、およびH
2O浴にそれぞれ約4時間の間、逐次浸漬した。物理的測定にかける前に繊維を空気乾燥させ、物理的性質を決定した;その結果を表1に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
実施例5〜11
ポリマーP2の製造
pH調整ショ糖/デキストラン/ホウ酸溶液に、酵素抽出物180mlの代わりに酵素抽出物200mlを添加したことを除いては、実施例1におけるポリマーP1の製造に使
用された材料および手順を用いて、ポリ(α(1→3)グルカン)ポリマーを合成し、洗浄し、単離した。収量:白色のフレーク状固形物246.08グラム。
【0075】
ポリマーP1のMnおよびMwは、それぞれ129,000および270,000であると決定された。
【0076】
実施例5:紡糸溶液
250mL広口ガラス瓶にポリマーP2 18g、4.5重量%水酸化ナトリウム225gを装入した。次いで、CS
2(2.7g)をシリンジで添加した。容器はキャップおよびセプタムを備えており、ポリプロピレン製攪拌棒は、セプタムを通して取り付けられていた。内容物を攪拌棒で手作業で混合し、次いで室温にて一晩静置した。72時間後、一部溶解した溶液を紡糸セルおよび325メッシュステンレス鋼スクリーンを含むピストン含有スクリーンパックに移した。ピストンは、粘性混合物の上に嵌め込まれた。次いで、13サイクルを通して、電動式ウォームギヤー駆動ラムを使用して、1/4インチのステンレス鋼管材料製のカップラーを介して第1セルと接近して連結された同様に装備された紡糸セル内に混合物を前後にポンプ注入した。
【0077】
実施例6〜11:紡糸
表1に示す条件下にて、上記の実施例2〜4の繊維の手法で実施例5の紡糸溶液から、実施例6〜11の繊維を紡糸した。実施例6〜9において、5%H
2SO
4(水溶液)を含有する凝固浴に直接、フィラメントを押出した。実施例10では、氷酢酸を含有する凝固浴に直接、繊維を押出した。実施例11では、50/50(体積比)酢酸/水内で、総浸漬距離3、4.3、または4.5フィート間で更なるガイドピン(8)上に繊維を誘導することによって、凝固浴内での更なる長さが得られた。実施例6ではなく、実施例7〜11において、このように凝固されたフィラメントを凝固浴から取り出すと、表1に示す長さおよび温度でメタノールの第2浴(11)にそれを通した。実施例6の繊維は、巻取り装置に直接誘導された。表1に示す巻取り速度にて、第2浴から、実施例7〜11の凝固繊維を巻取り装置に誘導した。繊維のボビンを実施例2〜4と同様に浸漬した。
【0078】
物理的性質を決定した;その結果を表1に示す。
【0079】
実施例12〜15
実施例12 紡糸溶液
250mL広口ガラス瓶にポリマーP2 20g、4.5重量%水酸化ナトリウム180gを装入した。次いで、CS
2(3.0g)をシリンジで添加した。容器はキャップおよびセプタムを備えており、ポリプロピレン製攪拌棒は、セプタムを通して取り付けられていた。内容物をプラスチック製攪拌棒で手作業で混合し、次いで2日間置した。2×100メッシュ、1×325メッシュおよび2×20メッシュのステンレス鋼を備えた300mLステンレス鋼シリンダーに、その一部溶解した溶液を移した。ピストンは、粘性混合物の上に嵌め込まれた。次いで、13サイクルを通して、電動式ウォームギヤー駆動ラムを使用して、1/4インチのステンレス鋼管材料製のカップラーを介して第1セルと接近して連結された同様に装備された紡糸セル内に混合物を前後にポンプ注入した。
【0080】
実施例13〜15:紡糸
表1に示す条件下にて、上記の実施例2〜4の繊維の手法で実施例12の紡糸溶液から、実施例13〜15の繊維を紡糸した。表1に示す温度で5%H
2SO
4(水溶液)に直接、繊維を押出した。凝固浴から取り出すと、このように凝固された繊維を表1に示す巻取り速度で巻取り装置に誘導した。実施例14および15の凝固繊維を最初に、表1に示す第2浴に通した。繊維のボビンを実施例2〜4と同様に浸漬し、乾燥させた。
【0081】
物理的性質を決定した;その結果を表1に示す。
【0082】
実施例16
ポリマーP3の製造
pH調整ショ糖/デキストラン/ホウ酸溶液に、抽出物180mlの代わりに酵素抽出物200mlを添加したことを除いては、実施例1におけるポリマーP1の製造に使用された材料および手順を用いて、ポリ(α(1→3)グルカン)ポリマーを合成し、洗浄し、単離した。収量:白色のフレーク状固形物228.52グラム。M
nは132,000ダルトンであり;M
wは301,000ダルトンであった。
【0083】
実施例16 紡糸溶液
250mL広口ガラス瓶にポリマーP3 18g、4.5重量%水酸化ナトリウム225gを装入した。容器はキャップおよびセプタムを備えており、ポリプロピレン製攪拌棒がセプタムを通して取り付けられていた。内容物を攪拌棒で手作業で混合し、次いで室温で一晩静置した。翌朝、シリンジで次にCS
2(5.4g)を添加した。CS
2を添加した後、一部溶解した溶液をすぐに、325メッシュステンレス鋼スクリーンを含むピストン含有スクリーンパックに移した。ピストンは、粘性混合物の上に嵌め込まれた。次いで、13サイクルを通して、電動式ウォームギヤー駆動ラムを使用して、1/4インチのステンレス鋼管材料製のカップラーを介して第1セルと接近して連結された同様に装備された紡糸セル内に混合物を前後にポンプ注入した。
【0084】
実施例17〜23 繊維紡糸
表1は、実施例17〜23で製造された繊維に使用された紡糸条件を示す。上記の
図1に詳述される装置は、フィラメント経路から駆動ロール10を取り除くことによって変更された。紡糸延伸は、噴射速度よりも速い巻取りを行うことによって達成された。このようにして調製された紡糸溶液は、100および325メッシュスクリーンからなるフィルターアセンブリを有する紡糸パックを通じて、表1に示す速度にて、直径0.003インチ、長さ0.006インチの穴を有する20穴紡糸口金に計量供給された。表1に示す凝固浴温度にて、実施例17〜19については5%H
2SO
4、実施例20〜23については10%H
2SO
4内に、フィラメントを直接押出した。凝固浴から取り出すと、表1に示す長さおよび温度にて、このように凝固されたフィラメントをメタノールの第2浴(11)に通し、そこから巻取り装置に誘導した。実施例17、20、および21のフィラメントは直接、巻取り装置に誘導された。実施例23の場合の第2浴は水で満たされた。繊維紡糸は、二硫化炭素を添加して8時間以内に完了した。
【0085】
繊維ボビンを5%NaHCO
3に15分間浸漬し、次いで水に一晩浸漬した。次いで、ボビンを取り出し、物理的測定にかける前に空気乾燥させた。
【0086】
実施例24
紡糸溶液
250mL広口ガラス瓶にポリマーP3 32.9g、5重量%水酸化ナトリウム220gを装入した。容器はキャップおよびセプタムを備えており、ポリプロピレン製攪拌棒がセプタムを通して取り付けられていた。内容物を攪拌棒で手作業で混合し、次いで室温で一晩静置した。翌朝、シリンジで次にCS
2(9.9g)を添加した。CS
2を添加した後、一部溶解した溶液をすぐに、325メッシュステンレス鋼スクリーンを含むピストン含有スクリーンパックに移した。ピストンは、粘性混合物の上に嵌め込まれた。次いで、11サイクルを通して、電動式ウォームギヤー駆動ラムを使用して、1/4インチのステンレス鋼管材料製のカップラーを介して第1セルと接近して連結された同様に装備された紡糸セル内に混合物を前後にポンプ注入した。
【0087】
実施例25〜31
繊維紡糸
表1は、実施例25〜31で製造された繊維に使用された紡糸条件を示す。上記の
図1に詳述される装置は、実施例25〜27ではフィラメント経路から駆動ロール10を取り除くことによって変更された。紡糸延伸は、噴射速度よりも速い巻取りを行うことによって達成された。このようにして調製された紡糸溶液は、100および325メッシュスクリーンからなるフィルターアセンブリを有する紡糸パックを通じて、表1に示す速度にて、直径0.003インチ、長さ0.006インチの穴を有する20穴紡糸口金に計量供給された。表1に示す凝固浴温度にて、実施例25〜30については10%H
2SO
4、実施例31については氷酢酸内に、フィラメントを直接押出した。凝固浴から取り出すと、表1に示す長さおよび温度にて、このように凝固された実施例26、27、および30のフィラメントを水の第2浴(11)に通し、そこから巻取り装置に誘導した。実施例25、28、29、および31のフィラメントは直接、巻取り装置に誘導され、第2浴には通さなかった。繊維紡糸は、紡糸溶液に二硫化炭素を添加して8時間以内に完了した。
【0088】
繊維ボビンを5%NaHCO
3に一晩浸漬し、次いで水にさらに1日浸漬した。次いで、ボビンを取り出し、物理的測定にかける前に空気乾燥させた。
【0089】
実施例32〜44、および比較例A〜W
36種類の溶液を調製して、溶解パラメーターを定義し、その結果、繊維紡糸に適した溶液が得られた。実施例32〜44および比較例A〜Wそれぞれに関して、表2に示す水性アルカリ金属水酸化物を40mlガラスバイアルに装入した。アルカリ金属水酸化物溶液の濃度(重量%)およびそのアルカリ金属水酸化物の量も表2に示す。次いで、ポリマーP1 2gを各バイアルに添加した。表2に示す量で二硫化炭素(CS
2)を添加し、バイアルはセプタムを備えており、ポリプロピレン攪拌棒がそのセプタムを通して取り付けられていた。内容物をプラスチック製スターラーで手作業で混合し、次いで間欠的に混合しながら室温で少なくとも12時間静置した。目視検査によって、表2に示す溶解性の等級を決定した。透明な溶液は完全に溶解しているとみなされ;一部溶解している溶液は、さらに激しく混合すれば完全に溶解することができると考えられるため、いくつかの小粒子が浮遊している溶液もまた、溶解しているとみなされた。大きな未溶解の粒子を含む混濁した溶液は、溶解していないとみなされた。
【0090】
【表6】
【0091】
【表7】
【0092】
実施例45:NMR分光法を用いたグルカンキサンテートの形成および分解の決定
水性水酸化ナトリウム(4.5重量%)25mlにポリ(α(1→3)グルカン)2gを溶解した。溶解が完了した後、二硫化炭素0.6gを添加し、その結果形成された混合物を次いで、機械的に攪拌し、シリンジおよび針を使用して、New Era Enterprises,Incから販売されている外径4.1mmの特殊な試料チューブにすぐに移した。チューブをキャップし、NMRロック溶媒(lock solvent)としてD2O60μLを含有する、標準7インチ、5mm NMRチューブ内に下げた。これらの同心円チューブを小さなベンチトップ型遠心機に入れ、数分間回転させて、試料を内管の底に集め、試料からすべての気泡を除去した。NMRチューブを遠心機から取り出し、z勾配を有する5mmCPDUL凍結探針を備えたBruker 500MHz Avance II分光計の磁石に置いた。ポリ(α(1→3)グルカン)の形成および分解を調べるために、一連の連続した実験を開始する前に、プローブを調整し、磁石をシム調整した。各実験は、スペクトル幅33333.3Hz(265.0ppm)、送信器オフセット160ppm、取得時間0.4916秒間に32768の時間領域ポイントと共に、Brukerzgigパルス系列を使用して獲得された。パルス間で3秒の遅れが使用され、各実験に対して3000スキャンが獲得され、各実験で合計時間2時間56分となった。
【0093】
ベースラインロールを抑え、かつより良いピーク積分を得るために、各実験からのデジタルデータをアナログデータに変換し、その結果、後退線形予測(backward linear prediction)を実施することができた。各データセットの最初の12ポイントは、最初の1024データポイントに基づくBruker's線形予測デー
タ処理を用いて、置換された。変換される前に2.0Hz指数関数を、自由誘導減衰(Free Induction Decay)に掛けた。キサンテート置換の程度を決定するために、232.5ppmで中央に位置する、キサンテート炭素の積分領域は、内部較正として使用された95.6〜100.9ppmでのグルカンC1アノマー炭素の積分領域(1.00に設定)と比較された。このシリーズの実験のどのポイントにおいても、遊離CS
2の
13Cのシグナル(193.7ppm)が確認されなかったのに対して、トリチオ炭酸ナトリウム(269.4ppm)と炭酸ナトリウム(168.4ppm)のシグナルが、時間の経過によるグルカンキサンテート分解の副生成物として存在した。結果を表3に示す。
【表8】
【0094】
以上、本発明を要約すると下記のとおりである。
1.水性アルカリ金属水酸化物0.75〜2モルおよび固形分5〜20質量%のキサンテート化ポリ(α(1→3)グルカン)を含む溶液であって;前記キサンテート化ポリ(α(1→3)グルカン)の数平均分子量が少なくとも10,000ダルトンであり;かつ前記ポリ(α(1→3)グルカン)のキサンテート化度が0.1〜1の範囲である、溶液。2.キサンテート化ポリ(α(1→3)グルカン)の前記固形分が、7.5〜15%である、上記1に記載の溶液。
3.前記アルカリ金属水酸化物がNaOHである、上記1に記載の溶液。
4.NaOHの前記濃度が、1.0〜1.7モルである、上記3に記載の溶液。
5.前記キサンテート化ポリ(α(1→3)グルカン)において、グルコース反復単位間の結合の100%が、α(1→3)グリコシド結合である、上記1に記載の溶液。
6.前記キサンテート化ポリ(α(1→3)グルカン)の数平均分子量が、40,000〜100,000ダルトンの範囲である、上記1に記載の溶液。
7.水性アルカリ金属水酸化物0.75〜2モル中に、CS
2、および得られる溶液の全質量に対して、少なくとも10,000ダルトンの数平均分子量を特徴とするポリ(α(1→3)グルカン)を5〜15質量%溶解することによって溶液を形成する工程と、前記溶液を紡糸口金を通して流し、それによって繊維が形成される工程と、前記繊維を酸性液体凝固剤と接触させる工程と、を含む方法であって、CS
2とポリ(α(1→3)グルカン)の質量比が0.1〜1.0の範囲である、方法。
8.ポリ(α(1→3)グルカン)7.5〜15質量%が前記溶液に溶解される、上記7に記載の方法。
9.前記アルカリ金属水酸化物がNaOHである、上記7に記載の方法。
10.NaOHの前記濃度が1.0〜1.7モルである、上記7に記載の方法。
11.前記ポリ(α(1→3)グルカン)において、反復単位の100%がグルコースであり、かつ反復単位間の結合の100%がα(1→3)グリコシド結合である、上記7に記載の方法。
12.紡糸前に、前記溶液を1〜8時間静置しておくことをさらに含む、上記7に記載の方法。
13.前記ポリ(α(1→3)グルカン)が、40,000〜100,000ダルトンの範囲の数平均分子量を特徴とする、上記7に記載の方法。
14.前記CS
2が最後に添加される、上記7に記載の方法。