(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167174
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】燃料電池用ガス分配素子、燃料電池、及び燃料電池用ガス分配素子内の可燃性ガスを均質化する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/02 20160101AFI20170710BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20170710BHJP
H01M 8/0202 20160101ALI20170710BHJP
【FI】
H01M8/02 R
H01M8/12
H01M8/02 B
H01M8/02 E
【請求項の数】13
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-515551(P2015-515551)
(86)(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公表番号】特表2015-525447(P2015-525447A)
(43)【公表日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】EP2013062056
(87)【国際公開番号】WO2013186226
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年5月11日
(31)【優先権主張番号】12171563.5
(32)【優先日】2012年6月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507137184
【氏名又は名称】アッシュテセラミックス ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】HTCERAMIX S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウィルマン、ザシャリエ
【審査官】
太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−276532(JP,A)
【文献】
特開2009−158407(JP,A)
【文献】
特表2008−529211(JP,A)
【文献】
特開昭55−130078(JP,A)
【文献】
特表2003−514354(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0207366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/0297
H01M 8/08 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層(1)と、第1の層(2)と、第2の層(3)とを連続して備える燃料電池または電解装置用ガス分配素子(10)であって、前記第1の層(2)と第2の層(3)に、可燃性ガスである第1の反応流体の流体流のパターンを形成するガス分配構造(11)が配置され、前記第2の層(3)は第1の開口(15)を有し、前記第1の開口(15)は幅(29)と該幅(29)よりも大きい長さ(28)とを有するガス分配素子において、
前記第1の層(2)は燃料入口(2b)および燃料出口(2c)を備え、主流体流方向(9)は前記燃料入口(2b)と前記燃料出口(2c)との間を直線方向に延在し、
前記第1の層(2)のガス分配構造(11)は、隣り合うように並べられ、主流体流方向(9)に直線的に延在し、燃料入口(2b)を前記燃料出口(2c)に接続する複数の経路(13)から成り、
経路(13)を横切って延在する前記第1の開口(15)は前記長さ(28)を有し、隣り合うように並べられる少なくとも2つの経路(13)は前記第1の開口(15)によって流体接続されるように配置され、
前記第2の層(3)はカソード・アノード電解質ユニット(5)と接触する接触面(3c)を備え、前記第1の開口(15)は前記接触面(3c)に配置され、第1の開口(15)すべての総表面が前記接触面(3c)の20%以上である、ガス分配素子。
【請求項2】
前記経路(13)は相互に平行に延在し、前記第1の開口(15)は前記経路(13)に垂直に延在する、請求項1に記載のガス分配素子(10)。
【請求項3】
前記経路(13)は放射方向に延在し、前記第1の開口(15)は周方向に延在する、請求項1に記載のガス分配素子(10)。
【請求項4】
前記第1の層(2)の前記経路(13)の少なくともいくつかはバー素子(23)によって遮断され、前記バー素子(23)は間隔をおいて配置されて間に経路(13)を形成する少なくとも2つのバー(2a)を接続しており、前記第2の層(3)は複数の第2の開口(6)を備え、前記第2の開口(6)は前記バー素子(23)の幅よりも大きな長さ(7)を前記主流体流方向(9)に有しており、前記第2の開口(6)は前記バー素子(23)に並んで配置されて前記経路(13)を流体接続し、前記バー素子(23)をバイパスする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス分配素子(10)。
【請求項5】
前記ベース層(1)に並んで配置される支持層(4)をさらに備える請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス分配素子(10)。
【請求項6】
前記支持層(4)は直線方向に延在する複数の経路(20)を備え、前記経路(20)は酸化剤である第2の反応流体を誘導する、請求項5に記載のガス分配素子(10)。
【請求項7】
前記支持層(4)は両側に経路(20、20a、20b)を有する波形シートであり、前記第1の層(1)に面する前記経路(20b)の目的が前記第2の反応流体によって前記第1の層(1)を冷却することであり、反対側の前記経路(20a)の目的が燃料電池ユニットに第2の反応流体を供給することである、請求項6に記載のガス分配素子(10)。
【請求項8】
前記ベース層(1)および前記第1の層(2)、または前記第1の層(2)および前記第2の層(3)は、一体片を形成する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のガス分配素子(10)。
【請求項9】
支持層(4)は前記ベース層(1)または前記ベース層(1)および前記第1の層(2)との一体片を形成する、請求項5〜7のいずれか一項に記載のガス分配素子(10)。
【請求項10】
第1の開口(15)すべての総面積は前記接触面(3c)内の全開口(15、6)の総面積の20%以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のガス分配素子(10)。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のガス分配素子(10)を備える燃料電池。
【請求項12】
燃料電池のガス分配素子(10)内の可燃性ガスを均質化する方法であって、ガス分配素子(10)はベース層(1)と第1の層(2)と第2の層(3)とを連続して備え、前記第1の層(2)は経路(13)を有するガス分配構造(11)を備え、前記第2の層(3)は第1の開口(15)を備え、各経路(13)を流れる前記可燃性ガスは前記第1の開口(15)に入って前記第1の開口(15)内で均質化され、前記第1の開口(15)は接触面(3c)でカソード・アノード電解質ユニット(5)と接触し、前記第1の開口(15)は前記接触面(3c)に配置されることによって、前記可燃性ガスが第1の開口(15)から前記カソード・アノード電解質ユニット(5)に供給され、
前記ガス分配構造(11)は、隣り合うように並べられて、燃料入口(2b)と燃料出口(2c)とを接続する複数の線形延在経路(13)から成り、燃料が経路(13)内で直線的に流方向(9)に流れ、
前記第1の開口(15)は流方向(9)を横切って延在し、隣り合うように並んで配置される少なくとも2つの経路(13)を流体接続し、前記第1の開口(15)内で均質化された前記可燃性ガスの少なくとも一部は前記第1の層(2)の各経路(13)に戻るように流れる、あるいは前記第1の層(2)の各経路(13)間で交換され、
前記可燃性ガスを前記カソード・アノード電解質ユニット(5)に供給する第1の開口(15)すべての総表面が、前記接触面(3c)の20%以上である方法。
【請求項13】
前記第1の開口(15)内の前記可燃性ガスの圧力が均等化されるように、前記第1の開口(15)のうち少なくともいくつかが前記流方向(9)に垂直に延在するため、前記経路(13)内の前記可燃性ガスの圧力が局所的に均等化される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池または電解装置用のガス分配素子に関し、特に反応流体を燃料電池または電解装置の電極に分配するガス分配素子に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気化学反応によって、燃料に蓄えられた化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する電気化学装置である。ほとんどの場合、酸素または酸素イオンは、水素、CO、またはその他の燃料と反応することによって電子流を生成し、結果的に電流と熱を提供する。反応では、燃料電池に連続的に供給される還元剤と酸化剤を反応体として使用し、通常、水素が還元剤として使用され、酸素または酸素を含有する空気が酸化剤として使用される。大抵の場合、燃料電池は電解反応を実行するために逆に使用することができ、その場合、電流とおそらくは熱も提供する必要がある。明瞭化のため、燃料電池動作モードのみを以下に説明する。
【0003】
燃料電池電力システムは概して、1つまたは複数の燃料電池スタックと周辺機器とも称される補助機器という構成要素を備える。燃料電池スタックは、モジュール式に組み合わされ、電気的に接続される個々の反復ユニットから成る。個々の反復ユニットは、上述したような電気化学反応が行われる1つまたは複数のセル膜を含む。反復ユニットは反応体を供給して電気接触または封止等を可能にする構成要素も含む。
【0004】
補助機器は、正確な温度および圧力状態で空気または酸素および燃料を供給する供給流を調整する他、任意の燃料処理装置または燃料改質装置を提供する。さらに、補助機器は燃料電池スタックの正確な動作温度を提供し、電気化学反応によって生成される熱エネルギーを利用して燃料または酸化剤供給流を予熱し、有益な熱をユーザに送達する熱交換器も含んでもよい。このような熱交換器の例は特許文献1に開示されている。補助機器は電気エネルギー管理システムを含んでもよい。
【0005】
セル膜は通常、いずれかの側でアノードおよびカソードと接触する電解質から成る。電解質はイオン伝導体だが電気絶縁体である。燃料電池としての動作時、燃料が連続的にアノード、よって陰極に供給されることによって、酸化剤が連続的にカソード、よって陽極に供給される。電気回路が外部回路を通って各電極との間で電流を行き来させて負荷で作業を実行させるとすぐに、電気化学反応が電極で発生し、電解質を通るイオン電流を生成する。
【0006】
上述したようなセル膜を備える電池ユニットは、板や管状構造などの様々な形状をとることができる。各セル膜は電気的に接触させる必要がある。加えて、反応体ガスを電極表面全体に適切に分配して、反応の効率を最大化させなければならない。これは、たとえば特定形状のガス分配層を電極表面に接触させることによって達成される。したがって、電気伝導もガス分配もいずれも、特定の部分で結合されることが多い。セル膜および追加の個々の要素と共に、このサブアセンブリは燃料電池スタックの1つの反復ユニットを表す。面状セル膜の場合、大抵は、個々の反復ユニットが相互に重ねられてスタックを形成する。
【0007】
この場合、反復ユニットでは、ガス分配層は反応体を電極に輸送するためだけではなく、電流を第1のセル膜のある電極から別のセル膜の第2の電極へと伝達させることによって複数のセルを直列接続するためにも使用される。電池ユニットでは、密な電解質が、燃料と酸化剤ガス流が直接混合されるのを防止する物理的障壁を提供する。面状スタックでは、バイポーラ板は通常、ガス分配層を通じた電気接触を提供しつつ、隣接反復ユニット間のガスの分離を確保する。
【0008】
多数の触媒部位が、電子とイオンの伝導性が混合した領域である、電解質層と電極間の境界面に設けられる。燃料電池膜の性能は、電解質の伝導度を高め、電極触媒作用と反応体の輸送を向上させ、セルが動作できる温度範囲を拡大することによって向上されてきた。
【0009】
通常、電極は多孔性であり、電導性かつおそらくはイオン伝導性の材料で作製される。低温では、ごく少数の比較的希少で高価な材料しか十分な電気触媒作用を提供しないため、このような場合、触媒は多孔電極と電解質間の境界面で少量析出させる。高温燃料電池では、電気触媒作用の向上のおかげで、多数の材料が電極材料に適する。
【0010】
よって、多孔電極は、電気化学反応が行われる面を提供するという主機能を有する。加えて、多孔電極の機能は、電子を3相界面との間でやり取りし、集電と他のセルまたは負荷との接続を提供することである。
【0011】
セル膜の性能は通常は材料の選択、サイズまたは微細構造、結合方法などに依存するが、燃料電池スタックの性能はセル膜上の反応体の分配の質、電極の電気接触、様々な反復ユニット間での反応体流と温度の均質性にも非常に左右される。最後になったが、燃料処理と動作点の選択も燃料電池の性能と寿命に重要な影響を及ぼす。
【0012】
各種燃料電池が開発されており、現在は様々な商業化の段階にある。燃料電池の最も一般的な分類は、固体酸化物燃料電池(SOFC)、高分子電解質燃料電池(PEFC)、アルカリ燃料電池(AFC)、リン酸燃料電池(PAFC)、または溶融炭酸塩燃料電池(MCFC)など、使用される電解質の種類に関連する。
【0013】
高分子電解質燃料電池(PEFC)は、特に良好なプロトン伝導体の特徴を備えたフッ化スルフォン酸高分子など、イオン交換膜として構成される電極を有する。燃料電池に存在する唯一の液体は水であり、燃料は主に水素イオンを提供する炭化水素燃料であり、酸化剤は電気化学反応を実行するために酸素を供給する空気である。膜を水で水和させなければならず、したがって水は生成されるよりも速く蒸発してはならないため、動作温度は通常100℃未満である。よって、好ましくは、動作温度は約60℃〜80℃である。通常、白金電気触媒を伴う炭素電極がアノードとカソードの両方に使用される。バイポーラ板またはセパレータ板は炭素か金属のいずれかで作製される。燃料は少量のCOでも容易に汚染されるためCOを含んではならない。PEFCの重要な商業用途は燃料電池自動車と電解槽である。
【0014】
アルカリ燃料電池(AFC)は、たとえばアスベスト製のマトリクスに保持されるKOH電解質を有し、ニッケル、銀、金属酸化物、スピネル、貴金属など広範な電気触媒を使用することができる。電解質全体の電荷担体はOHイオンである。
【0015】
約85重量%の濃度のKOHが使用される場合、動作温度は通常約250℃であり、KOH濃度が35%〜50%であれば120℃より低くすることができる。電解質と反応してK
2CO
3が生じ電解質を変質させてしまうため、燃料はCOもCO
2も含有してはならない。よって、好ましくは純水素がAFCの燃料として使用される。通常、遷移金属から成る電極が白金電気触媒と共に使用され、アノードとカソードの両方に使用される。バイポーラ板は金属製である。
【0016】
リン酸燃料電池(PAFC)は、たとえば炭化ケイ素製のマトリクスに保持される電解質として高濃度リン酸を使用し、主に白金が電子触媒として使用される。電解質で輸送されるイオンはプロトンである。PAFCの標準的な動作温度は、濃縮リン酸が比較的高温下でも高い安定性を有するため150℃〜220℃である。低温では、リン酸は不良なイオン伝導体であり、白金電気触媒がCOで汚染される。高動作温度では、最大1%の含有量のCOが希釈剤として許容される。通常、炭素から成る電極がアノードとカソードの両方に使用される。バイポーラ板はグラファイト製である。リン酸の腐食性のため、グラファイトなどの高価な材料を使用しなければならない。PAFCの主要使用分野は固定用途である。
【0017】
溶融炭酸塩燃料電池(MCFC)はLiAlO
2のマトリクスに保持される電解質としてアルカリ炭酸塩の組み合わせを使用する。MCFCの標準的な動作温度は約600℃〜700℃であり、その温度範囲でアルカリ炭酸塩が高伝導性の溶融塩を形成し、炭酸塩イオンがイオン伝導を提供する。通常、アノードはニッケルから成り、カソードはニッケル酸化物から成り、相互配線はステンレス鋼またはニッケルで作製される。ニッケル/ニッケル酸化物電極は高動作温度で十分な作用を提供するため、電気触媒は不要である。燃料はCOと炭化水素を含むことができ、さらにCO
2源がカソードで必要とされるが、CO
2源はアノードからの排出によって供給することができる。MCFCの主要使用分野は固定用途である。
【0018】
固体酸化物燃料電池(SOFC)は非多孔性金属酸化物である中実電解質、たとえばY
2O
3によって安定化されるZrO
2である3%〜10%イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、またはSm
2O
3添加CeO
2(SDC)またはGdO
2添加CeO
2(GDC)を使用する。SOFCの標準的な動作温度は電解質の材料に依存し、約500℃〜1100℃であり、酸素イオンがイオン伝導を提供する。アノードとカソードは通常セラミック材料も含む。通常、燃料電極は金属とニッケル−YSZサーメットなどのセラミック形成サーメットとの組み合わせから成る。酸素極は通常、導電性ドープペロプスカイト、またはペロプスカイトとYSZやGDCなどのイオン伝導セラミックとの組み合わせを含む。カソードとして使用される標準的なペロプスカイトはLa、Sr、Co、Fe、Mnの組み合わせを含む。バイポーラ板は通常、ステンレス鋼で作製される。
【0019】
カソード、アノード、電解質、ならびに任意の中間層と触媒用に可能な成分に関する追加情報は、引用により組み込んだ特許文献2に開示される。
燃料は水素やCOに次いで、メタンやアンモニアなどの他の炭化水素も備えることができるが、容易に電気化学的に変換されるのはH
2とCOだけである。他の燃料は間接的に消費される、あるいは変換前に分離ステップを必要とする。さらに、SOFCは、N
2、CO
2、または水蒸気などの不活性ガスによって希釈される燃料に耐え得る。炭化水素の中では、天然ガス、ガソリン、ディーゼル、または生物ガスとすることができる。しかしながら、この種の燃料電池は燃料に含まれる硫黄などの有毒元素、特に1ppm超の濃度では既に毒物とみなされるH
2SおよびCOSに弱い。
【0020】
セル膜のカソード・アノード電解質ユニットは、電解質を挟む2個の多孔性電極で構成される。空気はカソードに沿って流れて酸素分子をカソードに移送する。カソードと電解質の境界面に接触すると、酸素分子はカソードから電子を得る。酸素イオンは電解質材料内に拡散し、セルの反対側へ移動してアノードと接触する。酸素イオンはアノードと電解質のインタフェースで燃料と衝突し、触媒作用で反応することによって水、二酸化炭素、熱、電子を生成する。電気エネルギーを供給するため外部回路に電子が供給される。
【0021】
SOFCの主要分野は固定電源などの固定用途、携帯用電源、車両用補助電源、特殊用途である。SOFCによって得られる電力密度は通常、固定用途では200〜500mW/cm
2の範囲である。
【0022】
SOFCは、1950年代後半に始まる最も長い開発期間を経た燃料電池である。中実電解質が期待されるため、環状、面状、または一体化形状など様々な形状のセル膜を形成することができる。発電効率は使用される燃料に主に左右される。水素を燃料として使用すると、45%〜55%(LHV)の電気効率を達成することができ、反復ユニットのレベルでは最大60%に近づく。メタンを燃料として使用すると、60%のシステム電気効率を達成することができ、スタックの発電効率は70%に近い。さらに、酸性のガスまたはその他の固体の排出量は無視できるほど小さい。
【0023】
酸素と反応ガス、すなわち燃料ガスとの組み合わせによって発電する固体酸化物燃料電池システムの構成が特許文献3に開示されている。固体酸化物燃料電池は、2個の電極間に挟まれた電解質層を備えるスタック構造を有する。一方の電極は動作中に酸素または空気に接し、他方の電極は約500℃〜約1100℃の動作温度で燃料ガスと接する。通常、セルの製造中に支持層が使用されて電極層を含め、セルに機械的安定性を追加する。支持層は集電装置としても機能することができる。
【0024】
カソードはペロプスカイト、ランタン、またはストロンチウムマンガナイト、またはイットリア安定化ジルコニアを備える。酸素イオンはカソードで提供される酸素ガスから形成され、電解質層を通って移動し、アノードで供給される水素ガスと結合する。アノードは、ニッケル安定化ジルコニアまたはイットリア安定化ジルコニアもしくはその両方を備える。アノードでは、水が形成され、電子が提供されて、集電装置で回収される。
【0025】
燃料電池システムの1つの特徴は、効率がほぼサイズに影響されないことである。つまり、数kWの家庭用熱電併給ユニットから低MW容量の発電所まで、小型の比較的高効率な発電所を開発することができる。
【0026】
燃料電池に付随する課題は概して、単独のセル膜が約1V程度のDC電位を生成するが、それが住宅または自動車用途にとっては小さすぎるという事実である。このため、AC電流に効率的に変換し、大部分の商業用途で採用されるのに十分な大きさの電圧を提供するためには、複数のセル膜が直列に電気接続して積層されて結合される。
【0027】
通常のスタックは部分的に直列および並列に接続される数十〜数百のセル膜から成り、数千ものセルを含む設計もある。
したがって、反復ユニットをスタックに組み立てるには、一方ではできる限り小数の組立ステップと、他方では各セル膜の適切な動作状態の確保が必要である。
【0028】
反復ユニットの直列接続のため、単独セル膜での性能の制限は、得られる全電流、ひいては電力を制限するため、スタックの性能全体に重大な結果をもたらす場合がある。
スタックの構造は使用されるセル膜の種類に依存する。第1の主要な種類のスタックは、特許文献4に開示されるような管状セル膜を使用する。
【0029】
第2の種類のスタックは、積層することによって相互接続することができる面状セル膜を使用する。それらの間の主な違いは、燃料と酸化剤の種類と形状、または電極上のガス分配と電気接触の設計にある。
【0030】
たとえば特許文献5に提案される第1のコンセプトは円筒状のスタックである。よって、セル膜は陽極、電解質、陰極(CAEユニット)から成るディスク状のセラミック製3層膜である。燃料は中央経路に供給され、放射方向外側に方向付けられ、酸素含有ガスは周から供給されて中央経路に向けて方向付けられる。
【0031】
特許文献6では、矩形のセル膜に基づくスタックのコンセプトが開示されており、上記膜が燃料入口および出口を有するガス分配ユニットに装着され、酸化剤が上記ガス分配ユニットの周で供給および抽出される。セル膜表面全体を流れるガスの分配を向上させるため、ガス経路が湾曲している。それまでは、セル膜のガス入口および出口管状マニホルドがガス流に対する障害となる結果、セル膜を流れるガスの流が非均質化していた。特許文献6は、障害周囲のガスを障害の背後領域に誘導する湾曲ガス経路を提案している。それによって、より均等なガス流分配が達成され、障害のガス流への悪影響を相殺することができる。
【0032】
特許文献5に開示される解決策の反応体の供給および排出は、特許文献2によると、相互接続板のための比較的複雑な製造手順を必要とする。これを回避するため、面状CAEユニットは、隣接するCAEユニット間に配置される面状金属板として形成される相互接続層を挟んで相互に積層される。燃料と酸化剤それぞれの通路がアノード層およびカソード層に形成される。
【0033】
さらに、CAEユニットの膨張と、CAEユニットに反応体を供給し、そこから離れるように反応体を誘導する構造の影響も考慮に入れなければならない。
また、電極と境界面は、過剰な温度に達するとすぐに劣化しがちである。
【0034】
発熱反応のため、主に空気冷却によって達成され得る電池ユニットの能動的な冷却が必要とされる。CAEユニットおよびガス分配構造における温度勾配と過剰な温度差とを制限するため、電池ユニット内での冷却空気の適切な分配を要する。温度差を制限するには、電気化学反応に必要とされるよりも過剰な量の冷却空気が必要である。この過剰空気は、特に送風装置での消費による周辺機器の追加ロスを意味する。ただし、スタック内の圧力低下が少なければ、つまりスタック内の空気のためのガス分配構造の空気流に対する抵抗が小さければ、こうしたロスは低減することができる。
【0035】
過剰空気を用いるもう1つの欠点は、空気極に毒性物質を持ち込むことである。特に揮発性クロムは、スタックの上流に位置する金属部品から放出され、空気流によってスタックに運ばれることが知られている。揮発性クロムは電気化学反応および化学反応によって空気極に堆積しがちである。具体的には、揮発性クロムは電極に含まれるストロンチウムと瞬時に反応する。さらに、揮発性クロムは電極と電極の境界面にクロム酸化物として電気化学的に堆積し、反応部位の数を減少させる可能性がある。クロムだけでなく、シリコン、硫黄、その他の種も空気極の耐久性に影響を及ぼすことが知られている。
【0036】
従来技術の燃料電池スタックに付随する課題は、通常は平面層を形成する電極表面に現れる局所的温度ピークである。
このような局所的温度ピークが発生する場合、反応動力が変更し、局所的な高温地点が形成される場合がある。このような高温地点は、局所的熱膨張を引き起こすことによって材料に大きな歪みを生じさせ、影響を受けた層材料の反りや変形を招くために望ましくない。電極または電解質のセラミック材料は脆いため、亀裂を生じやすく、大きな局所的温度変動を受けた場合には最終的に割れるおそれがある。
【0037】
このような高温地点の発生は、冷却空気流の増加と、CAEユニットと接触し放熱構造として供する空気分配構造の適切な設計とによって大幅に低減することができる。
熱歪の影響は、原理上は特許文献7に示されるものと類似の構造を有するスタックによって緩和させることができる。よって、複数のCAEユニットが接触板と導電接触し、流体誘導素子が成型シート金属部として形成され、溶接または半田付けによって液密に接触板に接続される。それによって、接触板は、燃料電池ユニットの動作中に可燃性ガスまたは酸化剤が流れる流体チャンバを画定する。成型シート金属部には複数の波形が配置され、波形構造を形成する。波形構造はそれ自体、動作中のCAEユニットおよび流体誘導素子の熱膨張の一部を相殺することができる。しかしながら、電極と波形の山または谷との局所的接触により、流体誘導素子は電極の熱膨張を追随せざるを得ない。流体誘導素子が十分な弾性を有していない場合、熱膨張による歪みが電極に導入される。電極は固体の脆性セラミックから形成される。よって、大きな歪みが電極に導入される場合、亀裂が形成されて、最終的に電極を破壊する場合がある。さらに、流体誘導素子とアノード間の溶接または半田付け接続は構造の剛性に寄与する。具体的には、異なる熱膨張係数の材料が使用される場合、最終的に歪みは電極の損傷につながり、関連するセル膜を損なうおそれがある。具体的には、セル膜が破壊されて自然発火を招く場合、反応体の流れが変化する、あるいは反応体の直接混合を導くことがある。よって、局所的熱膨張を誘発し、局所的応力をさらに増大させる、局所的に高温な地点が生じかねない。
【0038】
熱歪および熱膨張の影響を緩和する別の解決策が特許文献8に開示されている。この解決策は、燃料路を囲む第1および第2の箔状素子の枠を予見している。CAEユニットが第1の箔状素子に装着され、アノードが燃料路の反対側で第1の箔状素子に直接隣接して配置される。燃料は、この目的のために孔を備える第1の箔状素子を横断することによってアノードに達する。第2の箔状素子は液密であり、燃料流を空気などの酸化物含有ガス流から分離する分離素子として供する。良好な電気接触は、燃料路にワイヤメッシュを設け、燃料通路の反対側で第2の箔状素子に別のワイヤメッシュを設けることによって確保される。よって、特許文献8の支持構造は相当自由に膨張し、CAEユニットと箔状素子との接合が放熱構造の役割を果たす。
特許文献9、特許文献10、特許文献11および特許文献12は、ガス分配素子を開示している。そのようなガス分配素子の欠点は、ガスの分配が均質ではないため、カソード・アノード電解質ユニットのある領域で燃料の不足が生じる可能性があり、局所的な過熱のリスクが増加することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】国際公開第2006/048429号
【特許文献2】米国特許第7632586号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/048429号
【特許文献4】国際公開第01/91218号
【特許文献5】欧州特許第1864347号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2011/0269048号明細書
【特許文献7】米国特許第6670068号明細書
【特許文献8】国際公開第2004/021488号
【特許文献9】欧州特許出願公開第174228号明細書
【特許文献10】国際公開第96/34421号
【特許文献11】米国特許出願公開第2008/0280177号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第1830426号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
よって、本発明の目的は、既存の燃料電池を改良し、信頼性を高め、安価な製造を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明の目的は、SOFCまたは固体酸化物電解装置と称され、ガス分配素子を有するSOECとも称される固体酸化物燃料電池によって、性能が向上した燃料電池または電解装置用のガス分配素子により達成される。特に、本発明により、燃料電池、特にSOFCまたはSOECの性能にとって有益である、燃料電池陰極での反応ガスの均質な分配が可能になる。さらに、電極、ひいてはカソード−電解質−アノードユニットを備える電池ユニットの温度分布が向上する。
【0042】
本発明による解決策は請求項1の主題である。従属請求項2〜13は本発明の別の有益な構造または実施形態に関する。請求項14は燃料電池または電解装置に関する。請求項15は、燃料電池または電解装置のガス分配素子の動作方法に関する。
【0043】
燃料電池または電解装置用のガス分配素子によって、燃料電池の燃料電極上での反応ガスの適切な分配だけでなく、電極との適切な電気接触も可能になる。よって、本発明はガス分配素子と、燃料電池または電解装置スタックにおけるガス分配素子の構造とに関する。
【0044】
燃料電池は通常、複数の電池ユニットから成る燃料電池スタックとして構成される。よって、電池ユニットは、用途にとって必要な電圧および電力出力レベルを達成するためにモジュール式にこのような燃料電池スタックに組み合わされる。したがって、こうした積層は、導電性の相互配線またはバイポーラ板を介して複数の電池ユニットを直列に接続することを含む。
【0045】
よって、燃料電池、特に固体酸化物燃料電池または電解装置用のガス分配素子は第1の層と第2の層とを備え、前記第1および第2の層にはガス分配構造が配置されて、第1の反応流体、最終的には第2の反応流体の流体流パターンを形成する。
【0046】
第2の層は第1の開口を有する均質化素子であり、第1の開口のうち少なくともいくつかの長さと幅は、長さが幅よりも大きく、長さは主流体流方向9を横切って延在するようになっている。よって、上記パターンは複数の経路を備え、第2の層は主流方向を横切って延在する長さを有する開口を含む。ガス分配構造も開口を備えており、開口は経路構造または経路システムのパターンを形成する。
【0047】
2つの選択肢を結びつけるために「または」という表現が本明細書で使用される場合、両選択肢の組み合わせとも、片方のみの選択肢とも解釈することができる。具体的に燃料電池に言及されていない場合、特徴は燃料電池または電解装置のいずれかに適用することができる。
【0048】
ガス分配素子が燃料電池内で動作する場合、第1の電極はカソードであり、第2の電極はアノードであり、反応流体流はカソードに向けられる。燃料電池または電解装置の場合、複数の反応流体、少なくとも第1の反応流体と第2の反応流体を採用することができる。第1の反応流体は、燃料電池動作モードで発熱反応中にO
2と反応することができる、あるいは電解モードでO
2を形成しつつ吸熱反応中に分離させることができる流体である。第1の反応流体は、一般的には、H
2、N
2、H
2O、CO、CO
2、アンモニア、CH
4、その他任意の炭化水素ガスの任意の混合物である。燃料電池または電解装置のいずれとして使用されるか、および燃料電池の種類に応じて、ガス混合物は変更される。第2の反応流体はO2含有ガス、好ましくは空気である。電解装置の場合、このO2含有ガスの外部供給は必ずしも必要ではない。
【0049】
固体酸化物燃料電池または電解装置の場合、効率を最大限に高め、信頼性の高い動作を保証するため、反応流体が対応する電極に均等に分配および拡散されることが必須である。実質上、このために、経路システムまたは多孔構造として形成されるガス分配構造が、ガス流への均質な抵抗、さらには圧力低下をもたらすことが必要とされる。経路システムの場合、非常に厳密な製造公差を含む極めて正確な形状を要し、それに伴い高コストとなる。
【0050】
均質化素子は第2の開口を備えることができる。具体的には、第2の開口の長さと幅は、長さが幅よりも大きく、幅が流体の主方向を横切って延在するようになっている。これらの第1または第2の開口は、矩形に配列される、あるいは第1の層2に配列される経路に対して傾斜する経路状の構造を形成することができる。これは、第1の層に開口を形成するガス分配構造内を流れる流体が、第1の層に配置されるガス分配構造によって第2の層の開口に向けて方向付けられるという利点を備える。第1および第2の層の開口は流体通路を提供し、よって流体通路がガス分配構造全体に形成される。第1の層のガス分配構造全体を流れるときは常に、反応流体は第1の層のガス分配構造の上方の開口に入り、すなわち、第1の層のガス分配構造の上方の第2の層の開口に入る。第1の開口の長さと幅は、長さが幅よりも大きく、長さが主流体流方向を横切って延在するようになっているため、反応流体は上記ガス分配構造と第1の層の隣接開口の背後に通じる第1の層の経路に分配される。
【0051】
第2の層の第1または第2の開口は、具体的には矩形、正方形、または円形の断面を有する穴として形成される。ガス分配構造は、経路、分断経路、および、たとえばピンなどの突起、グリッド構造、または連続または非連続発泡体構造などの発泡体構造である三次元構造のうちの少なくとも1つを備えることのできる、第1の層の流体流パターンを形成する。これらの構造は中実または多孔金属または導電性セラミックから製造することができる。有利には、単独のシートまたは一対のシートから成り、第2の層または均質化層と共にガス分配素子を形成する経路構造が予想される。
【0052】
ガス分配素子の異なる層間の電気接触は機械的接触、溶接、鑞付け、または薄接触層によって達成される。
第1および第2の層はそれぞれカソードまたはアノードのいずれかとしての役割を果たす。それらの機能は電解質の性質、または燃料電池または電解装置用のガス分配素子の動作に応じて逆にすることができる。第1の反応体は酸素、たとえば空気が豊富である。第2の反応体は元素H
2、CO、CO
2、H
2O、アンモニア、または炭素含有ガスのうち少なくとも1つを含有する。
【0053】
第3の層、具体的にはベース層を設けることができる。さらに、酸素極用のガス分配層として使用される支持層も設けることができる。
ガス分配素子は以下の利点を有する。均質化素子により、第1の層のガス分配構造に存在する形状の瑕疵を矯正することができる。したがって、高品質なガス分配を維持しつつ、第1および第2の層に対して低コストの製造工程を利用できる。加えて、スタックは様々な設置面積を有する様々な構造で作製することができる。燃料電池システムまたは電解装置は、需要に応じて幅広い用途に適応させることができる。設置面積とは、燃料電池スタックの基部の長さおよび幅の寸法全体と理解される。
【0054】
一実施形態では、スイス連邦工科大学(EPFL)での試験において、燃料の低発熱量に基づく65%の電気効率がスタックモジュールで得られた。スタックは水蒸気改質メタン(水蒸気と炭素の比が2)を燃料とし、250mW/cm
2の出力密度で750℃で動作した。
【0055】
このような効率では、SOFC技術を使用するkWサイズのユニットでの広域発電は、最良利用可能な複合サイクルガスタービン(CCGT)を使用するMWサイズの発電所での一極化発電よりも効率的である。
【0056】
固体酸化物燃料電池のいずれかの側に置かれ、2個の金属製相互配線間に挟まれるセラミックガス分布層は、製造がより単純で材料が安価になるためにスタック全体のコストが低減される。
【0057】
よって、それらのユニットは、少なくとも0.5kWのスタック、好ましくは2.5kWのスタックを含む、家庭に電力を供給する別の電気エネルギー源として使用することができる。
【0058】
一実施形態によると、第1の層のガス分配構造は少なくともバー素子によって少なくとも部分的に遮断される。バー素子は第1の層のガス分配構造を通る流体流にとっての障害とみなされる。バー素子は、流体流を主流体流方向の進行から逸脱させる、あるいは流経路の垂直直径を局所的に制限する任意の種類のバリアまたはスロットル素子とすることができる。
【0059】
第2の層の第1または第2の開口の少なくともいくつかは孔、具体的には穴の形状をとることができる。よって、第1および第2の層は少なくとも1つのシート状金属から成るガス分配素子を形成する。ガス分配素子では、少なくとも1つのシート状金属層が多孔層に面する経路構造を形成する。多孔層の特徴は、燃料分配経路に略直角に延在し、近傍環境のいくつかの経路内のガスを流方向に沿って均等な間隔で混合させる一連の細長穴を有する点である。
【0060】
有利なことに、孔の長さはバー素子の幅よりも大きい。したがって、第1または第2の反応流体のいずれかはバー素子によって形成される障害を乗り越えることができるため、流は主流方向から逸脱して、ある経路を流れる流と隣接経路を通過する流とが混じり合うことが可能になる。一実施形態によると、特に孔として成形された開口の一部が幅よりも大きな長さを有し、長さまたは幅が主流体流方向に延在する。具体的には、第1の開口の幅が主流体流方向に延在する、あるいは第2の開口の長さが主流体流方向に延在する。第1の層に配置されるガス分配構造と、第1の開口および第2の開口の少なくとも1つは流体接続する。
【0061】
追加層を形成する支持層は、第1または第2の反応流体のいずれかを電極に分配するために設けることができる。一実施形態によると、それぞれの反応流体用の複数の入口開口部が第1および第2の層の少なくとも一方に設けられる。複数の入口開口部を設けることによって、より均等な流体流分配を実行することができる。もう1つの利点はより均等に熱を分布させて、CAEユニットの反応面全体をより有効に活用することである。
【0062】
さらに、流体流のパターン、特に第1または第2の開口の少なくともいくつかを形成するガス分配構造は型打ち抜きまたはエッチングによって作製することができる。別の実施形態によると、支持層は第1の層との一体片を形成する。一実施形態によると、第1の層は、孔を有する第1のシートとベース層を形成する第2のシートとを備える。支持層は、ベース層または第1の層の反対側に配置することができる。
【0063】
さらに、本発明は、先行する実施形態のいずれかによるガス分配素子を備える燃料電池または電解装置に関する。
具体的には、第1の開口の総開口面積はカソード・アノード電解質ユニットの陰極の総接触面の20%以上、好ましくは総接触面の約30%以上、最も好ましくは総接触面の約50%以上である。それによって、ガス分配素子を流れるガスの横方向分配が達成され、より均質的な流体分配、ひいてはより均一な流体温度が可能になる。
【0064】
燃料電池または電解装置用のガス分配素子の動作方法は以下のステップを備える。第1の反応流体がガス分配素子の第1の側に沿って流れ、第2の反応流体流がガス分配素子の第2の側に沿って流れ、第1または第2の反応流体がいずれかの側でカソード・アノード電解質ユニットに反応体、電荷担持イオン、および電子を供給することにより、電荷担持イオンが電解質をわたって電気化学反応を実行することができる。ガス分配素子は第1の層と第2の層を備え、第1および第2の層には流体流のパターンを形成するガス分配構造が配置され、第2の層は、長さが幅よりも大きく、第1の開口のうち少なくともいくつかの長さが主流体流方向を横切って延在するような長さと幅を備えた第1の開口または第2の開口を有する均質化素子であることで、均質化素子を流れる流が第2の層の表面全体に均等に分配される。よって、反応面はガス分配素子の表面に主に対応し、電気化学反応は均質化素子の面全体で均等に実行される。
【0065】
FCSOの主要用途は、遠隔発電、広域発電、熱電気複合利用(CHP)、トラック、バス、船舶用の補助電源装置(APU)、携帯用電源、効率的な生物ガス変換などの分野である。
【0066】
本発明のこれらおよびその他の特徴と利点は、添付図面と併せ、本発明の具体的な例示である実施形態の以下の説明を読むことによって、より完全に理解されるであろう。図面において、類似の参照符号は類似の構成要素を指す。燃料電池との組み合わせにおいて本発明を詳細に説明する。本発明は電解装置も対象とすることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図2】本発明の第1の実施形態によるガス分配素子の等測図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態による電池ユニットの断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態による電池ユニットの展開図である。
【
図4B】ガス分配素子の別の実施形態の展開図である。
【
図4C】ガス分配素子の別の実施形態の展開図である。
【
図4D】第2の層である均質化層の別の実施形態を示す図である。
【
図4E】第2の層である均質化層の別の実施形態を示す図である。
【
図5】ガス分配素子の2個の隣接層の部分上面図である。
【
図6A】ガス分配素子の多孔層の部分上面図である。
【
図6D】支持層のない理想的なガス分配素子の
図4の線C−Cに沿った断面の拡大図である。
【
図6E】均質化素子層のないガス分配素子の断面図である。
【
図6F】均質化素子層を備えるガス分配素子の
図4の線C−Cに沿った断面の拡大図である。
【
図6G】ガス分配素子を流れる可燃性ガスの理想的な流状態を示す概略図である。
【
図6H】ガス分配素子を流れる可燃性ガスの実際の流状態を示す概略図である。
【
図6I】別のガス分配素子を流れる可燃性ガスの実際の流状態を示す概略図である。
【
図6K】均質化素子層のないガス分配素子の断面図である。
【
図6L】
図6Kに示すものと類似するが均質化素子層を備えるガス分配素子の断面図である。
【
図7A】燃料電池ユニットのガス分配層を流れる可燃性ガスの理想的な流状態を示す概略図である。
【
図7B】燃料電池ユニットを流れる可燃性ガスの最適に設計された実際の流状態を示す概略図である。
【
図7C】従来技術による燃料電池ユニットを流れる可燃性ガスの流状態を示す概略図である。
【
図7D】
図7Bに示す状態による流を示す燃料電池ユニットのスタックの図である。
【
図7E】
図7Cに示す状態による流を示す燃料電池ユニットのスタックの図である。
【
図8】スタックの燃料電池ユニットの複数の連続層の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1は、本発明による固体酸化物燃料電池(SOFC)システム100を示す。固体酸化物燃料電池システムは、複数の燃料電池ユニット50から成る燃料電池スタック103を含むケース101を備え、ここでは燃料電池ユニットは電池ユニット50とも称される。ケースは基部102に位置する。燃料電池システムまたは周辺機器は、反応体を加熱する熱交換器106と、正確な組成および正確な燃料電池への流量で反応体を供給する図示しない反応体作製ユニットとを含む。スタックには反応体排出素子104および105が配置される。
【0069】
スタックは特許文献2に開示されるように構成され、特定の電極接触およびガス分配構造が適用される。従来技術では、この技術に基づくスタックが、約1kWの遠隔および微細熱電気複合利用(CHP)用途のために開発された。そのスタックは圧力低下が少ないことを特徴とし、約45%の電気効率で1kW/lまたは400mW/cm
2の電力密度を達成できる。スタックには改質天然ガス、改質ガス、または水素で燃料が供給される。このスタックは空気を外部に、燃料を内部に集配し、燃料排気流を回収する。排気流は排気管爆発のために使用する、あるいは改質のために再循環させる(改造された周辺機器の場合)ことができる。特許文献2の利用によりスタックの熱サイクル耐性が向上し、熱サイクルによるさらなる性能低下が回避される。本発明と特許文献2に開示される技術とを組み合わせた最近の2つの試作品を用い、性能の向上が測定された。燃料として水素を用いた場合61%、メタンを用いた場合69%に達する効率で、最大燃料変換94%が達成された。さらに、複合型の短いスタックに大きな損傷を与えることなく、最大50回の熱サイクルが行われた。この結果は、特許文献2に開示されるような反応体流の単独処理に基づく以前の結果を大幅に上回る。
【0070】
反応体ガスの分配のため、
図2に詳細に示すような分配素子10が予測される。ガス分配素子は2個の隣接するカソード・アノード電解質ユニット5間に配置される。電池ユニット50では、ユニットはカソード・アノード電解質ユニット5とガス分配素子10とから成ると理解される。ガス分配素子10は各電極に少なくとも可燃性ガスを供給するために使用される。
【0071】
別の有益な実施形態では、ガス分配素子10は、酸化剤である酸素含有反応体と可燃性ガスである燃料とを各電極に供給するためにも使用される。本実施形態では、ガス分配素子10は、酸素の豊富な第1の反応流体と燃料を含有する第2の反応流体とを各電極に供給するために使用される。
図2に示すガス分配素子10は燃料入口
16と燃料出口
18を備えるため、入口
16から供給された燃料は入口
16から出口
18への直線流方向9でガス分配素子10に流れ込む。
図2では、第1の層2は第2の層3の下方に配置される。
【0072】
電池ユニット50とも称される燃料電池ユニット50として動作する際には、酸素含有反応体が、カソードの役割を果たす正酸素電極51に供給される。
電池ユニット50が電解装置として動作する際には、酸素含有反応体が、アノードの役割を果たす正酸素電極51に供給される。
【0073】
有利な実施形態では、ガス分配素子10は酸素含有反応体をCAEカソード・アノード電解質ユニット5の正酸素電極51に、燃料を含む第2の反応体を陰極53に供給するために使用される。このようなガス分配素子10は好ましくは支持層を備え、支持層4は酸素含有反応体用の流体伝導経路を備える。
【0074】
ほとんどの場合、酸素含有反応体は空気であるが、純酸素または酸素含有ガスもガス分配素子10に供給することができる。第2の反応体である可燃性ガスは、H
2、CO、H
2O、CO2、メタン、アンモニア、その他の炭化水素、または任意の希釈剤の混合物を含む。
【0075】
好適な実施形態では、第2の反応体(燃料)がガス分配素子10内で分配される。CAEカソード・アノード電解質ユニット5の陰極53はガス分配素子10の第2の層3に面している。
【0076】
ガス分配素子10は、PEFC、AFC、またはMCFC燃料電池への使用が予測できるが、その用途はSOFCに限定されない。ガス分配素子10は逆に動作する電解装置に対しても使用することができる。
【0077】
ガス分配素子10は燃料電池スタック103の以下の3つの必須機能を組み合わせる。電極51および53からの集電を実現する機能、反応体、具体的には燃料と好ましくは酸素含有ガスをセル間およびセルに集配する機能、反応体通路を相互に、および環境に対して封止する目的を有するベース素子1を備える機能の3つである。ベース素子1はバイポーラ板とも称する。
【0078】
よって、ガス分配素子10は、参照符号1、2、3、4で示すような薄い未加工の金属シートを使用して電池ユニット50のガス分配を一体化させることができ、たとえば型打ち抜き、打ち抜き、型押し、またはエッチングによる作製で、高価な構造化バイポーラ板の代わりに安価な製造を可能にする。ベース層1、第1の層2、第2の層3および支持層4の少なくとも一つは、型打ち抜き、型押し、打ち抜き、またはエッチング、またはグラファイトなどの高温圧縮、成形、粉末冶金によって製造することができる。ベース層1、第1の層2、第2の層3、またはそれらの任意の組み合わせが電気接触または封止もしくはその両方のために、溶接、鑞付け、糊付け、反応接合、またはそれらの任意の組み合わせなどの任意の適切な接合技術を用いて接合されるように、ガス分配素子10を製造してもよい。
【0079】
好適な適用によれば、提案する燃料電池スタック103は、16〜5000Wの名目電力に相当する1〜100個の電池ユニット50を含む。
図3に示す実施形態は、本発明の第2の実施形態による、カソード・アノード電解質ユニット5とガス分配素子10とを備える電池ユニット50の断面を示している。
図3に示す第2の実施形態によるガス分配素子10は、ベース層1、第2の層3、第1の層2から成る。第1の層2は開口も含む。ただし、この部分は、開口の切り欠き部が
図3では見えないように構成される。カソード・アノード電解質ユニット5は、第1の電極51、第2の電極53、および第1の電極51と第2の電極53とに挟まれる電解質52から成る。電池ユニット50は、カソード・アノード電解質ユニット5、接触層55、ガス分配素子10の縁部の気密封止のために側方封止31も備える。別の実施形態では、電池ユニット50は、酸素を含有する第1の反応流体を第1の電極51に供給するための支持層4も備えることができる。燃料を含む第2の反応流体は、第1の層2と第2の層3の上方にある第2の電極53に供給される。
【0080】
図4は、本発明の第3の実施形態によるガス分配素子10とカソード・アノード電解質ユニット5の展開図である。カソード・アノード電解質ユニット5は第1の電極51、第2の電極53、および第1の電極51と第2の電極53とに挟まれた電解質52から成る。通常、セラミックガス分配層54および55が電極51および53の両側に配置され、
図4には示さないが、
図8Aにその例を示す。
【0081】
燃料電池50または電解装置用のガス分配素子10は、ベース層1、第1の層2、第2の層3を備える。第1の層2と第2の層3にはガス分配構造11が配置されて流体流のパターンを形成する。
図4に示す第1の層2は隣り合うように並べられる多数の経路13によって流パターンを画定するため、第1の層2に入る可燃性ガスは主流方向9に流れることができる。経路13は好ましくは、入口とも称される入口側2bで第1の層2の一方の側を始端とし、出口とも称される出口側2cで第1の層2の他方の側を終端とすることで、入口側2bが可燃性ガス供給口9aと接続され、出口2cが排ガス出口9bと流体接続される。
図3は、線C−Cに沿ったガス分配素子10の断面図である。第1の層2は、相互に間隔をおいて配置され、その間に経路13を形成する複数の経路バー2aを備える。
図4に示すように、第1の層2は、直線方向に延在し、入口2bと出口2cでそれぞれ経路13と流体接続する経路12および14を備えてもよい。
【0082】
第2の層3は、隣り合うように並ぶ少なくとも2つの経路13を流体接続して、各経路13の流体量を相殺し均等化する開口15を備えた均質化素子である。
図3では、開口15は3個の経路13を流体接続している。第2の層3は、長さ28と幅29とを有する矩形開口部として構成される第1の開口15を有する。長さは幅よりも大きい。長さ28は主流体流方向9を横切って延在する。幅29は主流体流方向9に延在する。第2の層3は長さ7と幅8とを有する第2の開口6も有し、長さ7は幅8よりも大きく、幅8は主流体流方向9を横切って延在する。
【0083】
経路層とも称される第1の層2は複数の入口経路12、複数の連続する経路13、複数の出口経路14を有する。連続する経路12および13はバー素子23によって分離される。連続する経路13および14もバー素子23によっても分離される。バー素子23はバー2aを接続するのに必要である。
【0084】
これらの第2の層3の第2の開口は、特定の矩形に配列される、あるいは第1の層2に配置される入口経路12に対して傾斜する経路状構造をとる。これは
図2に示すように、第1の層2の経路12、13、14内を流れる流体が、第1の層に配置される第1の層2の一部であるバー素子23によって第2の層3の開口6に向けて方向付けられるという利点を備える。よって、開口6はバー素子23に開口6を横断させることによって連続する経路12と13、連続する経路13と13、または連続する経路13と14間の流体通路を形成する。流体がバー素子23上を流れる場合は常に、バー素子23上の開口6に入り、連続する経路13と14に分配される。上記実施形態の1つの利点は、第1の層2と第2の層3が薄金属シートの使用によって非常に安価に製造されることである。
【0085】
有利には、各入口経路12は連続する経路13および出口経路14と連通する。これらの経路12、13、14は同じ断面を有してもよく、それぞれの背後に配置してもよい。有利には、複数の入口経路12、連続する経路13、出口経路14は
図4に示すようなものと予測される。各入口経路12は隣接する入口経路12と平行に配置され、同じことが連続する経路13または出口経路14にも当てはまる。
【0086】
第1の層2と第2の層3は
図4に示すように別々のシートに形成することができるが、単独のシートに結合させてもよい。さらに、第1の層2は、経路12、13、14に対応する孔を有し、経路12、13、14用のベースを形成するベースシート1に並んで配置されるシートとして作製することができる。この解決策は経路の作製にとって有益である。
【0087】
さらに、孔には様々な形状が適用可能である。孔は簡便にシートから打ち抜く、レーザ切断する、あるいは層の鋳造または成形後に除去されるインサートとしてエッチングまたは形成することができる。よって、ベース層1と第2の層3を別々のシートと見越しておくことで、製造が簡易化できる、あるいはより広範な層1、2、3の製造方法が適用できる。
【0088】
さらに、2個の入口開口部16および17が、可燃性ガスである燃料を備える反応体がガス分配素子10に進入できるように設けられる。さらに、2個の出口開口部18および19が、排ガスである流体の反応生成物がガス分配素子10を脱出できるように設けられる。
【0089】
別の実施形態では、支持層4はベース層1の側に配置することができる、あるいはベース層1と接続することができる。好適な1実施形態では、支持層4は第2のガス分配素子の形状を有する。
図4は酸化剤Oの流路である経路20を備えた支持層を示す。
図4Aは、酸化剤Oの流路が2個の流路O1およびO2に分断されることによって各路が支持層4の一方の側に沿って経路20を流れる、支持層4の好適な構造の拡大図である。
【0090】
図4Bはガス分配素子10の別の実施形態を示す。ベース層1と第1の層2は、単独部分から成る流パターンを画定する。本実施形態では、バー2aがベース層1と接続されるためにバー2aを保持するバー素子23の必要がなく、そのため、複数の経路13が相互に直線方向に延在することによって、入口側2bを始端とし出口側2cを終端として、経路が入口側2bと出口側2cとを流体接続する。バー素子23が不要であるため、連続する経路12、13、14を流体接続するための開口6も
図4Bに示すように第2の層3では不要である。
【0091】
図4Cはガス分配素子10の別の実施形態を示す。第1の層2は、金属発泡体片または金属メッシュ片などの多孔構造2dを備え、多孔構造はベース層1に配置される。第1の層2は入口側2bを始点とし出口側2cを終端とする流路を画定し、そのため、多孔構造は入口側2bと出口側2cとを流体接続して直線方向に延在する流路を画定する。
【0092】
図4Dは、第2の層3である均質化素子の別の実施形態を示す。矩形の第2の層3を示す
図4Bの実施形態とは異なり、
図4Dは円形の第2の層3を示す。平行に延在する経路13を有する矩形の第1の層2を示す
図4Bの実施形態とは異なり、
図4Dに示す第2の層3に合わせて変更された第1の層は円形であり、放射方向nに直線的に延在する経路13を備える。この経路13は燃料入口開口部16と同じ位置にある燃料入口2bの中心を始端とし、燃料出口2cが配置される周を終端として、好ましくは第1の層2および第2の層3を完全に囲むため、ガス分配素子10内の可燃性ガス9aは放射方向に流れる。数個の経路13のみを
図4Dに示す。第2の層3は周方向に延在する複数の開口15を備え、開口15は隣接する経路13のいくつかが各開口15によって流体接続されるように経路13を横断する。したがって、
図4Dに示すように第1の層2と第2の層3を備えるガス分配素子10は円形である。円形燃料電池ユニット50を作製するため、円形カソード・アノード電解質ユニット5を第2の層3の上に配置し、支持層4を第1の層2の下方に配置して、
図4に開示されたものと類似した燃料電池ユニット50を達成することができるが、第1の層2の経路13と支持層4の経路20は放射方向に延在している。第2の層3の下に配置される第1の層2はピン、グリッド、メッシュ構造、または発泡体構造などの三次元構造であってもよく、第1の層2は円形であり、流体流9a、9b、9cは放射方向、特に入口2bから出口2cへの直線方向9に延在し、第2の層3の第1の開口15は周方向に延在する。有利な一実施形態では、発泡体構造内に経路が存在しないが、発泡体の多孔構造により流体が発泡体内を流れて、第1の層2内の流体流9a、9b、9cの方向に流れる。
【0093】
図4Eは、周方向に延在する開口15を備える矩形状の第2の層3の別の実施形態を示す。
図4Dに示す第2の層3と異なり、
図4Eに示す第2の層3の開口15は、同様の寸法を持つ開口15の3つの群9xに配置されることによって、これらの群9xが相互に周方向にずれる。このような開口15の配列により、経路13を通過する燃料の流量の均等化効果が向上する。
図4Eに開示する第2の層3は、第1の層2内の燃料がまず放射方向9uに、次いで方向9vに燃料出口2cまで流れるように、排ガスを燃料出口18/19に集める外周燃料出口2cを備える。
【0094】
図5は、ガス分配素子10の上側から切り取った部分として、第3の実施形態のガス分配素子10の第1の層2および第2の層3を示す部分上面図である。第1の層2の一部の断面図は隣り合うように並べられ経路バー2aによって分離されるいくつかの経路13と、バー素子23によって経路13から分離されるいくつかの連続する出口経路14とを示す。第1の層2は第2の層3の背後に配置される。第2の層3は長さ28と幅29とを有する第1の開口15を含み、本実施形態では長さ28は主流体流方向9を横切って延在する。
【0095】
図6Aは、第1の開口15と下にある経路バー2aとを備える本発明の第1、第2、または第3の実施形態のいずれかによるガス分配層10の第2の多孔層3の部分上面図である。
図6Aの線A−Aに沿った断面図である
図6Bは、カソード・アノード電解質ユニット5、経路バー2aを備える第1の層2、第2の層3、およびベース層1を示す。ベース層1および第1の層2は別々のシートから製造される。
図6Cは
図6Aの線B−Bに沿った断面を示す。
図6Bとの違いとして、一部が一列の開口15を横断するため、第2の層3は開口15によって分断される。さらに、第1の層2において平行に延在する経路13も示される。
【0096】
図6Dは、支持層4のない
図4の線C−Cに沿った断面を詳細に示す。ガス分配素子10は3層から成り、第1の層2が上に配置されるベース層1は、流方向9に平行に延在するバー2aによって分離される複数の経路13を備える流パターンを画定する。均質化層である第2の層3が第1の層2の上に配置される。第2の層3は流方向9に垂直に延在する第1の開口15を備える。図示する実施形態では、第1の開口15は3個の経路13にわたって延在し3個の経路13を流体接続するため、3個の可燃性ガス流9a、9b、9c;9d、9e、9f間で第1の開口15を通じて流体交換9zを行うことができる。
図6Dは理想的なガス分配素子10を示し、経路13のK1〜K6が同一の幅、同一の高さ、同一の流抵抗を有する。そのため、可燃性ガス流9a、9b、9c、9d、9e、9fはそれぞれ略同一の流量、略同一のガス組成、および結果的に生じるカソード・アノード電解質ユニット5への反応体および反応生成物の拡散流量を有し、第1の開口15内でガス流9a、9b、9c;9d、9e、9f間の流体交換9zがほとんどまたは全く行われない。上述したような3個の可燃性ガス流9a、9b、9c;9d、9e、9f間の流体交換9zに加えて、第1の開口15は、カソード・アノード電解質ユニット5に面する第1の開口15内で、流9a、9b、9c;9d、9e、9fを離れるガス成分がカソード・アノード電解質ユニット5に入る前に混合および均質化されるという効果も有する。したがって、ガス成分がカソード・アノード電解質ユニット5に入る前に均質化されることで、たとえガス流9a、9b、9c;9d、9e、9fのうち1つまたは2つが十分なガスを供給しなくても、ユニット5には十分な量の反応ガスが確実に供給される。カソード・アノード電解質ユニット5と第2の層3上に配置される第2のガス接触・拡散層55とは単に概略的に示す。
【0097】
図6Fは、
図4の線C−Cに沿った断面を詳細に示す。理想的なガス分配素子10を示す
図6Dとは異なり、
図6Fは、経路K1〜K6が、たとえば幅が異なるなどのわずかに異なる形状を有し、そのために異なる流抵抗を有することで、ガス流9a、9b、9c、9d、9e、9fが異なる流量を有する一般的な構成を示す。均質化層である第2の層3の利点は、経路K1、K2、K3;K4、K5、K6のいくつかを流体接続する第1の開口15のおかげで、ガス流9a、9b、9c、9d、9e、9f間で流体交換9zが行われて、ガス流9a、9b、9c、9d、9e、9f間の流量差が低減される、すなわちガス流が均等化されてカソード・アノード電解質ユニット5に沿ったガス組成、および、その結果生じる可燃性ガスFの反応体と反応生成物の拡散流量が均質化されることである。
【0098】
図6Eは
図6Fによる実施形態を示すが、第2の層3が存在しない。均質化層が存在しない場合、ガス組成と、その結果生じるカソード・アノード電解質ユニット5に沿った可燃性ガスFの反応体と反応生成物の拡散流量は、経路K1〜K6の様々な形状に応じて大きく変動する場合がある。したがって、第2の層3の均質化層の1つの利点は、ガス流9a、9b、9c、9d、9e、9fの経路幅または経路高もしくはその両方の変動効果を均質化層によって相殺することができることから第1の層2を安価に製造でき、したがって、安価で信頼性の高いガス分配素子10の製造が可能になる点である。
【0099】
図6Gは
図6Dに示すガス分配素子10の上面図であり、6個の経路K1〜K6が平行に延在し、3個の経路K1、K2、K3とK4、K5、K6とが開口15に流体接続され、それによってガス流9a、9b、9c、9d、9e、9fがそれぞれ同じ流量を有する。複数の開口15は流方向9に相互に間隔をおいて配置される。
【0100】
図6Hは
図6Fに示すガス分配素子10の上面図であり、6個の経路K1〜K6が平行に延在し、3個の経路K1、K2、K3;K4、K5、K6が開口15に流体接続され、そのためガス分配素子9に入るガス流9a、9b、9c、9d、9e、9fが異なる流量を有する様子を示す。複数の開口15が流方向9に間隔をおいて配置されることによって、各開口15においてガス流9a、9b、9c;9d、9e、9f間の流体交換9zが行われて、ガス流9a、9b、9c;9d、9e、9f間の流量差が低減される。ガス分配素子10が開口15を備えることで、経路K1〜K6のいずれもガスが枯渇することがなく、カソード・アノード電解質ユニット5は燃料の局所的不足を被らない。したがって、均質化層3は、燃料電池ユニット50の一部領域における可燃性ガス不足による燃料電池ユニット50の損傷を防止するという効果を有する。さらに、開口15では、拡散と体流による成分の均質化が行われる。これにより、経路K1〜K6の1つにたとえば望まない残留物の詰まりが生じた場合でも、可燃性ガスの局所的枯渇によるセル損傷のリスクがさらに低減される。この場合、ガスは開口15を通って経路の閉塞箇所を回避することができ、開口15を通じ閉塞経路の上方へ拡散して電極に到達する。
【0101】
図6Iは平行に延在する6個の経路K1〜K6を示すガス分配素子10の別の実施形態の上面図であり、経路K1、K2、K3;K4、K5、K6が開口15によって流体接続されることで、ガス分配素子に入るガス流9a、9b、9c、9d、9e、9fは異なる流量を有する。
図6Hに示す実施形態と異なり、
図6Iに示す実施形態の開口15は異なる長さ28を有するため、2個、3個、4個、またはそれ以上の平行に延在する経路K1〜K6を流体接続することができる。また、流方向9に間隔をおいて配置される連続開口15は流方向9に対して垂直に変位してもよいし、異なる経路K1〜K6につながる異なる長さ28を有してもよい。
【0102】
図6Lは、
図4Cの線C−Cに沿った、可燃性ガス9が流れる多孔構造2dを備える第1の層2の断面を詳細に示す。経路K1〜K6を備える
図6Fに示すガス分配素子10と異なり、ガス流は
図6Lに示す多孔層においてより広く拡散するため、
図6Lに示すガス流9a、9b、9c、9d、9e、9fが流方向9に流れる燃料流の強度(大きさ)のみを示す。第2の層3の均質化層の効果は、ガス流が異なるガス組成を有する場合、第2の層3がガス流9a、9b、9c、9d、9e、9f間で流体交換9zを行うという点で
図6Fに示す効果と類似する。したがって、第2の層3は、第1の層2の多孔構造における様々なガス流9a、9b、9c、9d、9e、9fの流量を均等化する。したがって、カソード・アノード電解質ユニット5に沿った可燃性ガスFのガス組成と、その結果生じる反応体の拡散流量とは均質化される。
【0103】
図6Kは
図6Lに示す実施形態を示すが、第2の層3が存在しない。均質化層3が存在しないため、カソード・アノード電解質ユニット5に沿った可燃性ガスFのガス組成と、その結果生じる反応体の拡散流量とは、
図6Eに示した効果と同様に、多孔性の第1の層2での流抵抗に応じて大幅に変動する。
【0104】
図7Aは、燃料電池ユニット50のガス分配層を流れる可燃性ガスの理想的な流状態を示す概略図であり、本例の燃料電池ユニット50は隣り合うように並んだ12個の経路13を備え、矢印は各経路13内の可燃性ガスの流量を示す。座標系のx軸は、各経路13における主流方向9の流量を示す。y軸は、
図3に示すように隣り合うように並んで配置される12個の経路K1〜K12の経路番号を示す。
図7Dは10個の燃料電池ユニット50のスタックを示し、各燃料電池ユニット50は12個の経路13を有し、
図7Aおよび7Bに示す経路番号は
図7Dの燃料電池スタックに示される経路に相当する。
図7Bは燃料電池ユニット50を流れる可燃性ガスの最適な実際の流条件を示す概略図であり、ガスマニホルドの建設上の妥協のため、可燃性ガスの流量はケースに近い横方向経路1および12の方が少なく、燃料電池ユニット50のケース近傍の流速が最低値を示す。
【0105】
図7Dは燃料電池ユニット50のスタックを示す図であり、各燃料電池ユニット50は
図7Bに示す状態と同一の流を有する。したがって、10個の燃料電池ユニット50のそれぞれの平均流量F1〜F10は同一である。
【0106】
図7Cは、従来技術による燃料電池ユニットを流れる可燃性ガスの実際の流状態、よって非常に非均質な流速分布を示す概略図である。非均質な流速分布は、たとえば燃料電池ユニット50の製造時の製造公差から生じる。
図7Cは
図7Bと同じように設計された流場を示すが、たとえば製造公差により設計とは目立った偏差がある。これは従来技術でよく起きる問題である。その偏差は、製造に応じて分配素子間で異なる。
図7Cに示す例では、最低ガス流量の経路は5番だが、別の分配素子では他の経路である可能性がある。この最小流量は局所的な燃料欠乏、ひいては性能の制限、燃料電池スタックの局所的な過熱、さらには電解質、アノードまたはカソード材料の亀裂などを招き、CAEユニット5、おそらくは燃料と酸化剤の混合や寄生燃焼、スタックまたは少なくともその一部の早すぎる深刻な損傷をもたらす場合がある。
【0107】
図7Eは、
図7Cに示すような10個の燃料電池ユニット50を備える燃料電池スタックの図である。個々の燃料電池ユニット50は最小経路流の位置がランダムに変動するため、矢印F1〜F10の長さで示す各燃料電池ユニット50の平均流速もランダムに分布する。こうしたランダムな偏差は以下の2つの影響を有する。第1に、流体流への抵抗が異なるために燃料電池ユニット毎の総流量がユニット50間で変動する。第2に、経路毎の平均流量からの累積偏差(7Aが理想的なケース)がより顕著になる。このため、従来技術では、電池ユニットマニホルドに入る流を矯正する、圧力低下の小さな電池ユニットのバッチを選別する、公差の基準値を増加させる、または燃料変換率を低減して動作リスクを減少させることによって、補正を行わねばならない。これらはすべてスタックの製造コストとシステムの効率に影響を及ぼす。さらに、
図7Eは、従来技術による燃料電池スタックにおいて、隣接する燃料電池ユニット50の流状態と隣接するガス分配素子10の流状態とが大幅に変動する様子を示す。
【0108】
固体酸化物燃料電池のモデル化と実験作業は、いかに燃料分配の均質性と流の配置が燃料電池の性能および信頼性にとって重要であるかを示す。
図7Aは同一方向または反対方向に流れる空気と燃料の理想的なケースを表す。製造工程により、いくらかの妥協が必要とされることはよくあり、その場合結果的に、
図7Bに示すようにガスの分配が理想的なケースとはわずかに異なる。最新の調査では、製造公差または非理想的な成分特性が性能および信頼性に及ぼす影響の研究を盛り込んでおり、所望の性能および信頼性における、産業工程または具体的な設計の妥当性を評価することができる。
【0109】
コルニュ(Cornu)およびウィルマン(Wuillemin)による論文「ランダムな形状歪みがSOFCの性能および信頼性に及ぼす影響(Impact of random geometric distortions on the performance and reliability of an SOFC)、2011年発行、燃料電池(Fuel Cells) 第11巻(第4番)、553〜564ページ」が示すように、燃料分配の質はガス分配構造における経路の深さの誤差に左右される。経路の深さは通常0.2mmから1〜2mmの範囲であり、幅は1〜2mm変動することが非常に多い。0.5mm程度の深さである場合が多い。このような場合、目標値前後0.05mmの深さ変動は流分配に非常に重大な影響を及ぼす。このような偏位の例を
図7Cに示す。0.05の深さ変動が適切な製造技術によって達成できる場合でも、カソード・アノード電解質ユニット5とガス分配素子10との間の間隔は、間に使用される接触層に応じて変動する可能性がある。したがって、有効な経路範囲で累積される深さ変動を、上記の偏位範囲内に納めることは非常に困難である。最後になったが、接触層または経路は時間の経過と共に変形する場合があり、いずれの場合も経年による燃料分配の劣化を招くことがある。
【0110】
電池ユニット50が積層されるにつれ、個々の素子の瑕疵が累積して、
図7Eのケースで示すように動作時の流の偏差がさらに増大する。
完全に同量の燃料が燃料電池スタックのすべての電池ユニット50で変換されて共通の電流の流れが得られるため、燃料変換が増加すると、低燃料流の電池ユニット50は燃料欠乏のリスクにさらされる。高性能に達するには大きな変換が必要であるため、不十分な燃料分配は性能の制限または燃料欠乏による1個の電池ユニットの損傷を招く。
【0111】
燃料電池スタックの一部に燃料が枯渇している前兆は、既に遅すぎるという場合を除いてオペレータにはほとんど分からないため、この種の問題は産業上および操作上の観点から非常に重要である。
【0112】
図8は燃料電池スタック103を形成する複数の連続する燃料電池ユニット50の断面図であり、各燃料電池ユニット50は
図4に示す実施形態によるガス分配素子10と支持層4とを備える。
【0113】
したがって、燃料経路13の断面は、第1の層2と多孔板である第2の層3との経路構造の形状によって与えられ、決定される。第2の層3は均質化素子である。第2の層とカソード・アノード電解質ユニット5間で使用される任意の追加の接触層は流に影響を及ぼさない。さらに、多孔板である第2の層3の穴15の形状によって、いくつかの経路13に沿った流体交換と流体混合が可能になり、経路13は燃料路に沿って隣り合うように並べられているため、それらの位置で経路間に略等圧を生成し、経路13間に適切な平均流量をもたらす。このおかげで、ガス分配素子10内の可燃性ガスの流体流路に沿った経路13の形状偏差は、可燃性ガスを隣接経路13間に流し、反応体と可燃性ガス流体流を均質化する平均化作用を利用することによって補正される。
【0114】
図8Aは、2個のガス分配素子10と対応する支持層4とを示す
図8の詳細断面図である。1個のカソード・アノード電解質ユニット5が
図8Aの中央に示され、支持層4はカソード・アノード電解質ユニット5の上の第1のガス接触・拡散層54に接触しており、均質化層である第2の層3はカソード・アノード電解質ユニット5の下の第2のガス接触・拡散層55に接触している。第2の層3が3個の経路13にわたって延在して3個の経路13を流体接続する第1の開口15を有することで、流体交換9zによりカソード・アノード電解質ユニット5に入る燃焼ガスFが均質化される。
【0115】
支持層4は、酸化剤Oの流路を2個の別々の流路O1およびO2に分割させる波形形状を有し、流路O1はカソード・アノード電解質ユニット5に酸化剤O3を供給する酸化剤である。流路O2は、ベース層1またはカソード・アノード電解質ユニット5もしくはその両方を冷却する冷却剤としての役割を果たす。
【0116】
図8Bは、4個のガス分配素子10、3個のカソード・アノード電解質ユニット5、それらの間の支持層4を備える燃料電池スタック103の概略側断面図である。酸化剤Oがすべての支持層4の一方の側に供給され、その後、分割されて支持層4に沿って2個の別々の流路O1およびO2を形成し、2個の別々の流路O1およびO2は支持層4を離れた後に結合し、すべての支持層4の流路が結合されて燃料電池スタック103を出る単独の流路となる。
【0117】
図4は、長さ3aと幅3bを有するカソード・アノード電解質ユニット5示し、カソード・アノード電解質ユニット5が第2の層3と接触する接触面3cを画定する。第2の層3は同じ接触面3cを備える。第2の層3の第1の開口15は接触面3cに配置される。好適な一実施形態では、第1の開口15すべての総面積は表面3c内の開口15、6およびその他の総面積の20%以上である。接触面3cに沿って可燃性ガスをより一層均等に分配するため、さらに好適な実施形態では、第1の開口15すべての総面積は接触面3cの20%以上、さらに好ましくは約30%以上、最も好ましくは40%〜50%である。
【0118】
開示される第1の開口15は矩形状である。第1の開口15は楕円形などの他の形状をとることもできる。第2の層3も、矩形や楕円形などの他の形状をとる複数の第1の開口15を備えることができる。
【0119】
燃料電池のガス分配素子10内の可燃性ガスを均質化する有利な方法によると、ガス分配素子10が燃料入口2bと燃料出口2cとを接続する第1の層2を備えることにより、燃料が第1の層2を流方向9、特に直線方向に流れ、ガス分配素子10が第1の開口15を備える第2の層3を備え、第1の開口15が流方向9を横切って流れる。そこで、第1の層2を流れる可燃性ガスが第1の開口15に入ることにより第1の開口15内で可燃性ガスが均質化され、第1の開口15がカソード・アノード電解質ユニット5と接触して第1の開口15内の可燃性ガスがカソード・アノード電解質ユニット5に供給される。
【0120】
有利な方法のステップでは、第1の開口15内で均質化された可燃性ガスの少なくとも一部は第1の層2に戻るように流れる。
別の有利な方法のステップでは、第1の層2は、隣り合うように並べられて燃料入口2bを燃料出口2cと接続する複数の経路13と、経路13を横切って延在して隣り合うように並べられた少なくとも2つの経路13を流体接続する第1の開口15とを備え、各経路13を流れる可燃性ガスが第1の開口15に入ることにより、各経路13の可燃性ガスが第1の開口15内で均質化される。
【0121】
有利な方法のステップでは、第1の開口15内で均質化された可燃性ガスの少なくとも一部は第1の層2の各経路13へと戻る、あるいは第1の層2の各経路13間で交換される。
【0122】
別の有利な方法のステップでは、可燃性ガスが第1の開口15を流れるときに流方向を変更できるように、第1の開口15のうち少なくともいくつかが流方向9に垂直に延在する。
【0123】
有益な方法ステップでは、第1の開口15内の可燃性ガスの圧力が均等化されるように第1の開口15のうち少なくともいくつかが流方向9に対して垂直に延在し、それにより、下にある第1の層2または下にある経路13内の可燃性ガスの圧力が局所的に均等化される。
【0124】
この構造は、特許文献2による2つのスタック設計で実現し、動作が実証された。燃料として水素を用いた場合61%、メタンを用いた場合69%に達する効率で、最大燃料変換94%が達成された。この結果は、特許文献2に開示されるような反応体の処理に基づく以前の結果を大幅に上回る。