特許第6167175号(P6167175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェイテクト ユーロップの特許一覧

特許6167175自動車のステアリング用のクリアランスを補償する偏心ヨーク
<>
  • 特許6167175-自動車のステアリング用のクリアランスを補償する偏心ヨーク 図000002
  • 特許6167175-自動車のステアリング用のクリアランスを補償する偏心ヨーク 図000003
  • 特許6167175-自動車のステアリング用のクリアランスを補償する偏心ヨーク 図000004
  • 特許6167175-自動車のステアリング用のクリアランスを補償する偏心ヨーク 図000005
  • 特許6167175-自動車のステアリング用のクリアランスを補償する偏心ヨーク 図000006
  • 特許6167175-自動車のステアリング用のクリアランスを補償する偏心ヨーク 図000007
  • 特許6167175-自動車のステアリング用のクリアランスを補償する偏心ヨーク 図000008
  • 特許6167175-自動車のステアリング用のクリアランスを補償する偏心ヨーク 図000009
  • 特許6167175-自動車のステアリング用のクリアランスを補償する偏心ヨーク 図000010
  • 特許6167175-自動車のステアリング用のクリアランスを補償する偏心ヨーク 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167175
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】自動車のステアリング用のクリアランスを補償する偏心ヨーク
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20170710BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   B62D3/12 501F
   F16H19/04 N
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-517819(P2015-517819)
(86)(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公表番号】特表2015-526327(P2015-526327A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】FR2013050898
(87)【国際公開番号】WO2014001663
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】1255987
(32)【優先日】2012年6月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パトリス ブロショ
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−076076(JP,U)
【文献】 特開2010−036610(JP,A)
【文献】 特表2012−507445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 3/00−14
F16H 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面(12)と該外周面に対して偏心した内周面(11)とを有するロータリパッド(10)を備え、
上記ロータリパッドはステアリングケース(2)内にラック(3)の縦軸に平行な回転軸周りに回転可能に据えられ、
上記ロータリパッドの外周面は上記ステアリングケースに据えられた支持部材(13)と一体となったアーチ状の揺りかご状受け台(14)を押圧する一方、上記偏心した内周面はステアリングピニオン(5)の歯部に向かって背面部を押し返すように上記ラックの背面部(9)に当接し、
上記ロータリパッドは該ロータリパッドの径方向アーム(18)に作用するバネ手段を有するクリアランス補償機構(17)によって回転付勢され及び/又は位置が定められる自動車のステアリング用の偏心ヨーク装置であって、
上記クリアランス補償機構は、
回転不能であるが、上記支持部材上を並進運動可能に据えられ、該支持部材又は該支持部材と一体の要素(23)との間に取り付けられたバネ(20)により、上記ロータリパッドの径方向アームを押圧する押圧部材(19)と、
上記押圧部材に形成されたノッチ(26,27)と、
上記支持部材又は上記要素に回転可能に据えられた可動ストッパ(21)と、
上記可動ストッパの終端部の一方の区域上に階段状に多数配置され、略平坦な形状だがそれぞれにリリーフ(29)が形成された歯(28)を有する、パイロットギア(24)と、
上記可動ストッパの終端部の他方の区域上に階段状に多数配置され、上記リリーフ(29)を有していない略平坦な形状の歯(30)を有する、他のギア(25)と、
上記ノッチ(26,27)が上記ギアの階段状の歯(28,30)と継続的に協働することにより上記可動ストッパ(21)を上記支持部材又は該支持部材と一体の要素に連結させるねじりバネ(22)とを備えており、
作動状態で、上記パイロットギア(24)のみが上記歯(28)のリリーフ(29)により、上記ノッチ(26,27)の動きを操作するように構成されている
ことを特徴とする自動車のステアリング用の偏心ヨーク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車のステアリング用の偏心ヨーク装置において、
上記パイロットギア(24)の歯(28)は、歯の外側端部に、略三角形のリリーフ(29)を有する
ことを特徴とする自動車のステアリング用の偏心ヨーク装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動車のステアリング用の偏心ヨーク装置において、
上記階段状のギア(24,25)と協働するノッチ(26,27)は、上記階段状のギア(24,25)の2つの継続的な歯(28,30)のそれぞれと協働する二重ノッチである
ことを特徴とする自動車のステアリング用の偏心ヨーク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のラック付ステアリングシステムに関する。特に、ギアの欠陥や摩耗を補償することによりステアリングコラムに連結されるステアリングピニオンに対して噛み合うことでラックを保持する機能を備えたステアリングシステムの「ヨーク」装置に関するものである。さらに、本発明は、ステアリングピニオンとラックとの間のクリアランスの自動補償機構を有するロータリパッド装置である「偏心」タイプのヨーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラック付のステアリングシステムにおいて、ステアリングピニオンはステアリングコラムに回転可能に連結されていて、車両の駆動輪によって操作可能であり、細長い形状のステアリングケース内にスライド可能に据えられたラックと係合する。ラックの両端は、ケースの外側においてそれぞれ車両の左右の車輪に連結されるステアリングロッドに連結される。これにより、一方向への又は他方向への車輪の回転がステアリングコラムによりステアリングピニオンに伝達され、ステアリンロッドによってラックの並進運動に変換されて、右又は左への「方向転換」のための両車輪の方向が定められる。
【0003】
この種のステアリングシステムにおいて、ヨーク装置は、ステアリングピニオンの領域内において、上記ピニオンにラックのギアを強く押しつけるためにラックの背面部に弾性的に作用する。これにより、ギアの接触損失のリスクを防いでいる。ヨーク装置は、通常は摩擦パッドを構成する駆動部を有する「ヨークライン」として配置され、この摩擦パッドは弾性手段によって並進運動を促されて、ラックの背面部側へ付勢される。
【0004】
回転の概念によって、「直線状」ヨークという従来の概念に換わるものとして、「偏心」ヨーク装置というものも知られている。この種のヨーク装置には、円形の外周面と、この外周面に対し少しだけ偏心した円形の内周面とを有する環状、又はアーチ状のロータリパッドが設けられている。ロータリパッドはラックの長手方向に平行な回転軸周りに回転可能にステアリングケースに据えられている。偏心した内周面はラックの背面部に押しつけられている。ロータリパッドは、ラックの背面部に当接する内周面がギアの係合を維持するためにピニオンの歯部に向かってラックの背面部を押し返すことで、回転付勢されるか、又は角度を有する状態に固定される。
【0005】
特に特許文献1又は特許文献2は、上述したような偏心ヨーク装置について記載されており、その中では、クリアランス補償機構は押圧部材を備え、押圧部材は、押圧部材とパッドの支持部材との間、又は押圧部材とこのパッドの支持部材と一体の要素との間に取り付けられた圧縮バネによりロータリパッドの径方向アームを押圧する。上記支持部材又は上記要素に対して回転可能に据えられた可動ストッパは、押圧部材の少なくとも1つのノッチ(切欠、凹み)と協働する少なくとも1つの階段状の歯を有するギアを備えている。可動ストッパは、ねじりバネにより支持部材又は支持部材と一体の要素に連結されている。つまり、ノッチは可動ストッパのギアの階段状の歯と継続的に協働することで、特に摩耗によって発生する機械的なクリアランスを補償する。
【0006】
さらには、前述構成により表される実施形態において、可動ストッパは、ロータリパッド近傍の終端に、階段状の歯を有する少なくとも2つのギアを有し、この階段状の歯は、直径方向において対向配置されてそれぞれが180°の区域を占めており、それらのギアは押圧部材に形成された複数のノッチ(切欠、凹み)と協働する。最小限2つの可動ストッパのギアは、理論的には同一のものであり、特に歯についてはほとんどが略三角形状をしていて、これにより全てのギアが同時に同じように動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許発明2951797号明細書
【特許文献2】国際公開2011/048328号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし実際には、可動ストッパが複数のギアを備える場合、他のギアが1つ前の歯を既に押圧部材の対応するノッチに係合させている間に、クリアランスが許容される最大値に近づいたとき、製造欠陥により特定の歯の区域が可動ストッパの回転を妨げてしまうことがある。これはクリアランス補償機構の部品の異常且つ早期の摩耗や当該機構の不規則な動作を引き起こしかねず、そのような場合、もはや要求される範囲では接触しなくなる。
【0009】
本発明の目的は、これら欠点を抑制し、ギア部分で、クリアランス補償機構が完璧な偏心ヨーク装置を提供することによって、この機構及びヨーク装置部品の優れた操作性と長寿命とを確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、自動車のステアリング用偏心ヨーク装置を対象とし、このヨーク装置は、外周面と外周面に対して偏心した内周面とを有するロータリパッドを備え、このロータリパッドはステアリングケース内にラックの縦軸に平行な回転軸周りに回転可能に据えられ、ロータリパッドの外周面はステアリングケースに据えられた支持部材と一体となったアーチ状の揺りかご状受け台を押圧する一方、上記偏心した内周面はステアリングピニオンの歯部に向かって背面部を押し返すように、このラックの背面部に当接し、上記パッドはロータリパッドの径方向アームに作用するバネ手段を有するクリアランス補償機構によって回転付勢され及び/又は位置が定められる自動車のステアリング用の偏心ヨーク装置であって、
上記クリアランス補償機構は、
回転不能であるが、上記支持部材上を並進運動可能に据えられ、支持部材又は支持部材と一体の要素との間に取り付けられたバネにより、ロータリパッドの径方向アームを押圧する押圧部材と、
上記支持部材又は上記要素に回転可能に据えられた可動ストッパと、
上記可動ストッパの終端部に多数配置された階段状の歯を有し、上記押圧部材に形成されたノッチと協働する少なくとも2つのギアと、
上記ノッチを上記ギアの階段状の歯と継続的に協働することにより上記可動ストッパを支持部材又は支持部材と一体の要素に連結させるねじりバネとを備えており、
上記階段状の歯を有するギアは、一方の区域上の、それぞれにリリーフを有し且つ略平坦な歯を有する、パイロットギアと呼ばれるギアと、他の区域に位置してリリーフを有さずに略平坦な形状の歯を有する少なくとも1つのギアとを備えることを特徴とするものである。
【0011】
つまり、本発明の基本的な考え方は、可動ストッパの少なくとも2つの区域に、平坦な歯だけでなくリリーフを有するパイロットギアと、平坦歯のみを有しリリーフや他の形態を有していない少なくとも1つのギアといった、それぞれ異なる形態の階段状のギアを設けることである。
【0012】
本発明の実施形態では、パイロットギアの歯は、例えば歯の外側端部に、略三角形状のリリーフを有する。
【0013】
このように形成されるパイロットギアの歯は、特許文献1に定義されている通り、最小クリアランス値J1と最大クリアランス値J2とを保証する。その区域において、平坦な形状の歯は、クリアランス補償機構の中心軸周りに適切に分散した力を吸収するために、パイロットギアの歯と同時にノッチに押しつけられる。これにより、リリーフを有するパイロット区域の歯のみが、ねじりバネによって発生する可動ストッパの変位を止めたり、可能にしたりすることができ、他の領域に設けられたギアは単純に力を吸収する役割を有する。これにより、異常なノッチ経路となるギアの矛盾した動きを防止している。
【0014】
上記ギアと協働するノッチは全ての区域で同一のものであり、それぞれがパイロットギアの歯と他のギアの歯のどちらとも協働する。ノッチは単純なノッチ、又は階段状のギアの2つの連続的な歯のそれぞれと協働する二重ノッチのどちらでもよい。これにより、可動ストッパの変位による利得を減らすことなく機械的な抵抗を増大させている。
【0015】
特にクリアランス補償機構の動作を改良すると同時に、本発明により得られる解決策が単純さとコスト効果を維持したままであるという点は注目すべきところである。特にこの解決策の利点は、1つの部分にある一組の歯の工夫を必要とする一方で、他の部分の他のギアの形状は簡単化されていることである。結果的に、クリアランス補償機構の構成要素の製造とその製造に必要な装置の設計作業とが簡単化される。
【0016】
いずれにせよ、本発明は自動車のステアリング用のクリアランス補償付偏心ヨークの実施形態の一例を示す添付の図面を参照し、以下の説明を読むことで、より良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の偏心ヨーク装置を備えるパワーアシストステアリングを示す外観図である。
図2】偏心ヨーク装置及びその周辺を示す、図1のII−II線断面図である。
図3】ヨーク装置を示す分解斜視図である。
図4】ヨーク装置のクリアランス補償機構を示す分解斜視図である。
図5】可動ストッパに形成されたパイロットギアを示す斜視図である。
図6】パイロットギアを示す側面図である。
図7】可動ストッパの他のギアを示す側面図である。
図8】ノッチ付押圧部材を示す斜視図である。
図9】二重ノッチを示す押圧部材を示す断面図である。
図10】クリアランス補償機構を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、(この例では)ステアリングピニオンに作用するアシスト機能を備えた自動車用パワーアシストステアリングを示している。ステアリングは長手方向に沿って伸びるステアリングケース2を備えている。ステアリングケース2にはラック3がスライド可能に据えられ、ステアリングケース2の外に突出したラック3の端部はステアリングロッド(図示せず)に結合されている。アシストパワーモータ4は、減速ギアによって、ラック3のギア6(図2に示す)に係合するステアリングピニオン5に結合されている。ステアリングピニオン5は入力シャフト7に連結され、ステアリングピニオン5には、自動車の駆動輪を操作するステアリングコラム(図示せず)が結合される。
【0019】
組立品の中で符号8のフレーム部分によって示されたヨーク装置は、ラック3のギア6をステアリングピニオン5に押圧するために、ステアリングピニオン5の近くに設けられている。ヨーク装置8については図2で示すとともに以下で詳細に説明する。
【0020】
ヨーク装置8はラック3の背面部9側、つまりラック3のギア6の反対側であって、ステアリングピニオン5の反対側に配置され、ステアリングケース2の対応する場所に収容されている。
【0021】
「偏心」タイプのヨーク装置8はロータリパッド10を備え、このロータリパッド10は丸みのある部分と、特に、「角」を含むアーチ状の部分とを有する。ロータリパッド10は、円形の一部である円弧状をなす外周面12に対して偏心した、同じく円弧状をなす内周面11を有する。偏心して配置された、ロータリパッド10の内周面11は、ステアリングピニオン5の歯部にラック3のギア6を押し返すために、ラック3の背面部9に当接する軸受面を形成している。
【0022】
ロータリパッド10は、支持部材13に据えられ、この支持部材13にガイドされるとともに、ステアリングケース2内に据えられている。支持部材13の構成は図3に明確に示されている。この支持部材13はアーチ状の揺りかご状受け台14を備え、揺りかご状受け台14の上にはロータリパッド10の外周面12がスライド可能に支持されている。支持部材13の一端部には、ステアリングケース2と一体の凹部16(図2に示す)と係合する楕円形状の凸部15を有する。
【0023】
ロータリパッド10は、クリアランス補償機構17によりロータリパッド10に設けられた径方向アーム18に発揮される押圧荷重の作用により、回転可能に支持部材13に設置される。クリアランス補償機構17は、図4とともに以下で明確に示すが、主に押圧部材19、圧縮バネ20、可動ストッパ21、ねじりバネ22及び軸受23を備えている。
【0024】
略円筒形状の押圧部材19は支持部材13に並進運動を促され、且つ回転不能にされている。この押圧部材19は圧縮バネ20の付勢によりロータリパッド10の径方向に延びるアーム18に当接する。圧縮バネ20は押圧部材19と軸受23との間に取り付けられ、軸受23は支持部材13と一体になっている。
【0025】
可動ストッパ21は略円筒形状で、円筒の中心で芯が突出している。そして可動ストッパ21は軸受23に回転可能に据えられている。可動ストッパ21の中央の凹部に収容されたねじりバネ22は、所定の方向に回転し可動ストッパ21を付勢することにより、可動ストッパ21を軸受23に接続している。
【0026】
可動ストッパ21は、軸受23から最も遠い、つまりロータリパッド10に最も近い側の終端に、階段状の歯を有する2つのギア24,25を有し、それらのギアは互いに対向する180°の範囲に沿って周囲に分布している。可動ストッパ21の2つのギア24,25は、押圧部材19の一端に形成され、直径方向において対向配置された2つのノッチ26,27のそれぞれと協働する。ねじりバネ22により、摩耗が増大した場合でも、2つのノッチ26,27は2つのギア24,25の段付歯と断続的に協働する。
【0027】
本発明によると、可動ストッパ21の階段状の歯を有する2つのギア24,25は、図5から図7に示すように、異なる形状を有している。
【0028】
パイロットギアと呼ばれるギア24は、略平坦な形状の階段状の歯28を有し、この階段状の歯28には略三角形状のリリーフ29が設けられ、このリリーフ29は図5及び図6に示すようにギア24の外側端部に形成される。
【0029】
他のギア25は略平坦な形状の階段状の歯30を有し、この階段状の歯30は図7に示すようにパイロットギア24の歯28と類似しているが、リリーフは有していない。
【0030】
図8、特に図9に示すように、押圧部材19の2つのノッチ26,27は、好ましくは二重ノッチ、すなわち、それぞれパイロットギア24又は他のギア25の断続的な歯28,30と協働することが可能な2つの軸方向のオフセット領域を有するノッチである。2つのノッチ26,27は、ここでは同一形状であり、2つのギア24,25に対向している。
【0031】
基本的な動作としては、図10に模式的に示すように、クリアランス補償機構17は押圧部材19の各ノッチ26,27が可動ストッパ21のギア24,25の歯28,30の歯面に接触するように構成されている。圧縮バネの押圧力Fは、押圧部材19に付加される。この押圧部材19は、ラック3とステアリングピニオン5との接触状態が維持されるように、上記押圧力Fをロータリパッド10の径方向アーム18へ伝達する。この作動状態では、クリアランス値Jは、最小クリアランス値J1と最大クリアランス値J2との間に維持される。
【0032】
パイロットギア24の階段状の歯28と、特に歯28のリリーフ29とは最小クリアランス値J1と最大クリアランス値J2とを保証する形状と大きさとを有している。つまり、リリーフ29の頂点と各リリーフに対応した歯28の平坦な表面との間の寸法(軸方向計測)が最小クリアランス値J1に対応する。歯28の平坦な部分と1つ前の歯28のリリーフ29の頂点との間の寸法(軸方向計測)が最大クリアランス値J2に対応する。
【0033】
作動状態では、パイロットギア24のみが、歯28のリリーフ29により、1つ前の歯の上に位置するようにノッチ26,27の動きを操作する。これにより、クリアランス値Jが最大クリアランス値J2を超えると、可動ストッパ21が変位する。他のギア25の平坦な形状の歯30は、負荷を拡散及び吸収するために、可動ストッパ21の変位を操作することなく、同時にパイロットギア24の歯28のように押し進む。
【0034】
既に知られているように、本発明は上述したクリアランス補償付偏心ヨークの形態のみに限られるものではない。つまり、全ての別の実施形態や同じ原理に関する代替品を包含する。すなわち、以下のものは、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0035】
詳細な形状を変更したもの、特にパイロットギアの歯のリリーフ部分の形状の詳細変更によるもの。
【0036】
パイロットギア以外の階段状のギアの数を増加したものであり、全てのギアは対応する区域において可動ストッパの周囲に分けて配置されるもの。
【0037】
押圧部材の役割と可動ストッパとの役割を入れ替えたもの、つまり、押圧部材に階段状のギアを形成し、可動ストッパにノッチを形成したもの。
【0038】
マニュアルステアリング、パワーアシストステアリング、液圧補助ステアリングなどの、ステアリングシステムの様々な点に作用する補助機能を有する全種類のステアリングシステム用の同じ偏心ヨークを意図するもの。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10