(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オーディオドライバのアレイの各オーディオドライバは、レンダラ及び前記再生コンポーネントにより用いられる通信プロトコルに従ってユニークにアドレス可能である、請求項1に記載のシステム。
前記少なくとも1つのオーディオドライバは、サイドファイアリングドライバ及びアップファイアリングドライバのうちの1つを有し、前記少なくとも1つのオーディオドライバは、スピーカ筐体内のスタンドアロンドライバ及び単一スピーカ筐体内の1又は複数のフロントファイアリングドライバの近くに置かれたドライバのうちの1つに更に実装される、請求項2に記載のシステム。
前記聴取環境は、家庭環境を有し、前記レンダラ及び再生コンポーネントは、家庭オーディオシステムの部分を有し、さらに、前記オーディオストリームは、家庭環境での再生のために変換された映画コンテンツ、テレビジョンコンテンツ、ユーザの生成したコンテンツ、コンピュータゲームコンテンツ、及び音楽を有するグループから選択されるオーディオコンテンツを有する、請求項4に記載のシステム。
前記少なくとも1つのドライバへ送信される前記オーディオストリームに関連付けられるメタデータセットは、前記反射に関連する1又は複数の特性を定める、請求項4に記載のシステム。
前記メタデータセットは、空間オーディオ情報のオブジェクトに基づくストリームに関連するメタデータ要素を有する基本メタデータセットを補足し、前記オブジェクトに基づくストリームの前記メタデータ要素は、対応するオブジェクトに基づく音の再生を制御し、音位置、音幅、及び音速度のうちの1又は複数を有する空間パラメータを指定する、請求項6に記載のシステム。
前記メタデータセットは、前記空間オーディオ情報のチャネルに基づくストリームに関連付けられたメタデータ要素を更に有し、各チャネルに基づくストリームに関連付けられた前記メタデータ要素は、前記所定のサラウンドサウンド構成における前記オーディオドライバのサラウンドサウンドチャネルの指定を有する、請求項7に記載のシステム。
前記少なくとも1つのドライバは、前記聴取環境内に配置されるマイクロフォンに関連付けられ、前記マイクロフォンは、前記レンダラに結合される較正コンポーネントへ前記聴取環境の特性をカプセル化する構成オーディオ情報を送信するよう構成され、前記構成オーディオ情報は、前記少なくとも1つのオーディオドライバへ送信される前記オーディオストリームに関連付けられた前記メタデータセットを定め又は変更するために、前記レンダラにより用いられる、請求項6に記載のシステム。
前記少なくとも1つのドライバは、前記聴取環境の床面に対するサウンドファイアリング角に関して調整可能な筐体内の手動調整可能オーディオトランスデューサ、及び前記サウンドファイアリング角に関して自動的に調整可能な筐体内の電気的制御可能なオーディオトランスデューサ、のうちの1つを有する、請求項1に記載のシステム。
前記オーディオドライバのアレイのうちの少なくとも1つのドライバは、フロントファイアリングドライバであり、前記知覚ハイトキューは前記フロントファイアリングドライバに導入される、請求項11に記載のスピーカ。
前記オーディオドライバのアレイのうちの少なくとも1つのドライバは、アップワードファイアリングドライバであり、前記知覚ハイトキューは前記アップワードファイアリングドライバに導入される、請求項11に記載のスピーカ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
頭上スピーカを有しない適応型オーディオシステムで反射音をレンダリングする適応型オーディオシステムのためのシステム及び方法が記載される。本願明細書に記載される1又は複数の実施形態の態様は、ソフトウェア命令を実行する1又は複数のコンピュータ若しくは処理装置を含む、ミキシング、レンダリング、及び再生システムにおいてソースオーディオ情報を処理するオーディオ又はオーディオ−ビジュアルシステムに実装されても良い。記載の実施形態のいずれも、単独で又は任意の組合せで一緒に用いられても良い。種々の実施形態が本願明細書の1又は複数の箇所で議論され又は暗に示され得る従来技術に伴う種々の欠点により動機付けられるが、実施形態は必ずしもこれらの欠点のいずれかを解決するものではない。言い換えると、異なる実施形態は、本願明細書で議論され得る異なる欠点を解決しても良い。幾つかの実施形態は、本願明細書で議論される幾つかの欠点を部分的にのみ又は1つの欠点のみを解決しても良い。また、幾つかの実施形態は、これらの欠点のいずれも解決しなくても良い。
【0012】
この記載の目的のために、以下の用語は関連する意味を有する。用語「チャネル」は、オーディオ信号及びメタデータを意味し、メタデータ内に位置がチャネル識別子、例えば左前又は右上サラウンドとして符号化される。「チャネルに基づくオーディオ」は、関連する名目位置、例えば5.1、7.1、等を有するスピーカゾーンの所定のセットを通じた再生のためにフォーマット化されたオーディオである。用語「オブジェクト」又は「オブジェクトに基づくオーディオ」は、明白なソース位置(例えば、3D座標)、明白なソース幅、等のようなパラメータソース記述を有する1又は複数のオーディオチャネルを意味する。「適応型オーディオ」は、チャネルに基づく及び/又はオブジェクトに基づくオーディオ信号及びメタデータを意味し、オーディオストリーム及びメタデータを用いて再生環境に基づきオーディオ信号をレンダリングし、メタデータ内には位置が空間内の3D座標として符号化される。「聴取環境」は、オーディオコンテンツのみ、又はビデオ若しくは他のコンテンツを有するオーディオコンテンツを再生するために使用でき、家庭、映画館、劇場、公会堂、スタジオ、ゲーム端末、等で実現できる部屋のような任意の開かれた、部分的に閉じられた、又は完全に閉じられた領域を意味する。このような領域は、その中に配置される、音波を直接若しくは乱反射できる壁又はバッフルのような1又は複数の面を有し得る。
【0013】
<適応型オーディオフォーマット及びシステム>
実施形態は、向上した聴衆没入、高い芸術的制御、並びにシステム柔軟性及び拡張性を可能にする、オーディオフォーマット及びレンダリング技術に基づく「空間オーディオシステム」又は「適応型オーディオシステム」として言及され得るサウンドフォーマット及び処理システムと共に動作するよう構成される反射音レンダリングシステムに関する。適応型オーディオシステム全体は、概して、オーディオ符号化分散(distribution)と、伝統的なチャネルに基づくオーディオ要素とオーディオオブジェクト符号化要素との両方を含む1又は複数のビットストリームを生成するよう構成される復号化システムとを有する。このような結合されたアプローチは、別個に用いられるチャネルに基づく若しくはオブジェクトに基づくアプローチに比べて、高いコーディング効率及びレンダリングの柔軟性を提供する。本発明の実施形態と関連して用いられ得る適応型オーディオシステムの一例は、米国仮特許出願番号第61/636,429号、2012年4月20日出願、名称「System and Method for Adaptive Audio Signal Generation, Coding and Rendering」に記載されている。該出願は、参照により全体が本願明細書に組み込まれる。
【0014】
適応型オーディオシステム及び関連するオーディオフォーマットの例示的な実装は、Dolby(登録商標)Atmos(商標)プラットフォームである。このようなシステムは、9.1サラウンドシステム又は同様のサラウンドサウンド構成として実装され得るハイト(上(up)/下(down))次元を組み込む。
図1は、ハイトチャネルの再生のためのハイトスピーカを設けたサラウンドシステム(例えば、9.1サラウンド)内の本発明のスピーカ配置を示す。9.1システム100のスピーカ構成は、床面にある5個のスピーカと、ハイト面にある4個のスピーカと、を有する。通常、これらのスピーカは、聴取環境内で大体正確に任意の位置から発するよう設計される音を生成するために用いられ得る。
【0015】
図1に示すような所定のスピーカ構成は、所与の音源の位置を正確に表現する能力を必然的に制限し得る。例えば、音源は、左のスピーカ自体より更に左にパンできない。これは各スピーカに適用される。したがって、1次元(例えば、左−右)、2次元(例えば、前−後)、又は3次元(例えば、左−右、前−後、上−下)幾何学的形状を形成し、ダウンミックスは制限される。種々の異なるスピーカ構成及び種類は、このようなスピーカ構成で使用できる。例えば、特定の拡張オーディオシステムは、9.1、11.1、13.1、19.4又は他の構成でスピーカを用いても良い。スピーカ種類は、全範囲直接スピーカ、スピーカアレイ、サラウンドスピーカ、サブウーファ、ツイータ、及び他の種類のスピーカを有し得る。
【0016】
オーディオオブジェクトは、聴取環境内の特定の物理位置又は場所から発すると知覚され得る音要素群と考えることができる。このようなオブジェクトは、静的(つまり、止まっている)又は動的(つまり、動いている)であり得る。オーディオオブジェクトは、他の機能と一緒に、所与の時点における音の位置を定めるメタデータにより制御される。オブジェクトが再生されるとき、それらは、必ずしも所定の物理チャネルに出力されるのではなく、存在するスピーカを用いて、位置メタデータに従ってレンダリングされる。セッション中のトラックは、オーディオオブジェクトであり得る。標準パニングデータは、位置メタデータに類似する。このように、スクリーンに配置されるコンテンツは、チャネルに基づくコンテンツと同じ方法で効果的にパンされ得る。しかし、サラウンドに配置されるコンテンツは、必要に応じて、個々のスピーカにレンダリングされ得る。オーディオオブジェクトの使用は離散効果の所望の制御を提供するが、サウンドトラックの他の特徴は、チャネルに基づく環境で効果的に機能しても良い。例えば、多くの環境効果又は反響は、スピーカのアレイに供給されることにより実際に恩恵を受ける。これらはアレイを満たすのに十分な幅を有するオブジェクトとして取り扱うことができるが、特定のチャネルに基づく機能を保持することは有利である。
【0017】
適応型オーディオシステムは、オーディオオブジェクトに加えて「ベッド(beds)」をサポートするよう構成される。ここで、ベッドは効果的なチャネルに基づくサブミックス又はステムである。これらは、コンテンツクリエイタの意図に依存して個々の又は単一のベッドに結合されて最終的な再生(レンダリング)のために供給され得る。これらのベッドは、
図1に示すような5.1、7.1、及び9.1並びに頭上スピーカを含むアレイのような異なるチャネルに基づく構成で生成され得る。
図2は、一実施形態における、適応型オーディオミックスを生成するためのチャネルとオブジェクトに基づくデータとの組合せを示す。処理200に示すように、チャネルに基づくデータ202は、例えばパルス符号変調(pulse−code modulate:PCM)データの形式で提供される5.1又は7.1サラウンドサウンドデータであっても良く、オーディオオブジェクトデータ204と結合されて適応型オーディオミックス208を生成する。オーディオオブジェクトデータ204は、元のチャネルに基づくデータの要素を、オーディオオブジェクトの場所に関する特定のパラメータを指定する関連メタデータと結合することにより生成される。
図2に概念的に示すように、オーサリングツールは、同時にスピーカチャネルグループとオブジェクトチャネルとの組合せを含むオーディオプログラムを生成する能力を提供する。例えば、オーディオプログラムは、任意でグループ(又はトラック、例えばステレオ若しくは5.1トラック)に編成される1又は複数のスピーカチャネル、1又は複数のスピーカチャネルの記述メタデータ、1又は複数のオブジェクトチャネル、及び1又は複数のオブジェクトチャネルの記述メタデータを含み得る。
【0018】
適応型オーディオシステムは、空間オーディオを分配する手段として単純な「スピーカフィード」を超えて効果的に動く。そして、高機能なモデルに基づくオーディオ記述が開発され、リスナに、彼らの個々の必要又は予算に適する再生構成を選択する自由を与え、彼らの個々の選択した構成専用にオーディオをレンダリングさせる。上位レベルでは、4つの主な空間オーディオ記述フォーマットがある。(1)スピーカフィード。オーディオは、名目スピーカ位置に置かれたラウドスピーカ用の信号として記述される。(2)マイクロフォンフィード。オーディオは、所定の構成(マイクロフォンの数及びそれらの相対位置)の現実又は仮想マイクロフォンによりキャプチャされる信号として記述される。(3)モデルに基づく記述。オーディオは、記述される時間及び位置におけるオーディオイベントのシーケンスの観点で記述される。(4)バイノーラル。オーディオは、リスナの2つの耳に到着する信号により記述される。
【0019】
4つの記述フォーマットは、以下の一般的レンダリング技術に関連付けられる場合が多い。ここで、用語「レンダリング」は、スピーカフィードとして用いられる電気信号への変換を意味する。(1)パニング。オーディオストリームは、パニング法セット及び知られている又は想定されるスピーカ位置を用いてスピーカフィードに変換される(通常、分配の前にレンダリングされる)。(2)Ambisonics。マイクロフォン信号は、ラウドスピーカの拡張可能アレイへのフィードに変換される(通常、分配の後にレンダリングされる)。(3)WFS(Wave Field Synthesis)。サウンドイベントは、音場を合成するために適切なスピーカ信号に変換される(通常、分配の後にレンダリングされる)。(4)バイノーラル。L/Rバイノーラル信号は、通常はヘッドフォンを通じて、クロストーク除去と関連してスピーカを通じても、L/R耳に分配される。
【0020】
通常、任意のフォーマットは別のフォーマットに変換でき(これはブラインド音源分離又は同様の技術を必要とし得る)、前述の技術のうちの任意のものを用いてレンダリングできる。しかしながら、実際に全ての変換が良好な結果を生じるわけではない。スピーカフィードフォーマットは、単純且つ効率的であるために最も一般的である。最良の音響結果(つまり、最も正確且つ信頼性のある)は、スピーカフィードにミキシングし/モニタし、次にスピーカフィードを直接分配することにより達成される。これは、コンテンツクリエイタとリスナとの間にいかなる処理も必要ないからである。再生システムが予め分かる場合は、スピーカフィード記述は、最高の忠実性を提供する。しかしながら、再生システム及びその構成は事前に分からない場合が多い。対照的に、モデルに基づく記述は最も順応性がある。なぜなら、モデルに基づく記述は、再生システムに関するいかなる仮定も行わず、したがって複数のレンダリング技術に最も容易に適用されるからである。モデルに基づく記述は、空間情報を効率的にキャプチャするが、音源の数が増加するにつれ非常に非効率になる。
【0021】
適応型オーディオシステムは、チャネル及びモデルに基づくシステムの両者の利益を、高音質、同じチャネル構成を用いてミキシング及びレンダリングするときに芸術的意図の最適な再現、レンダリング構成への「下方」適応を有する単一インベントリ(inventory)、システムパイプラインに与える比較的小さな影響、及び精細水平スピーカ空間分解能及び新しいハイトチャネルによる没入の増大を含む特定の利益と結合する。適応型オーディオシステムは、特定の映画レンダリング構成への下方及び上方適応を有する単一インベントリ、つまり遅延レンダリング及び再生環境で利用可能なスピーカの最適な使用と、チャネル間相関(inter−channel correlation:ICC)アーティファクトを回避するための最適なダウンミキシングを含む包み込まれた状態の向上と、スティアスルー(steer−thru)アレイによる空間分解能の向上(例えば、オーディオオブジェクトをサラウンドアレイ内の1又は複数のラウドスピーカに動的に割り当て可能にする)と、高分解能中心又は同様のスピーカ構成によるフロントチャネル分解能の向上と、を含む幾つかの新しい特徴を提供する。
【0022】
オーディオ信号の空間的効果は、リスナに没入経験を提供するのに重要である。閲覧スクリーン又は聴取環境の特定領域から発することが意図される音は、それと同じ相対位置に置かれたスピーカを通じて再生されるべきである。したがって、モデルに基づく記述における音イベントの主要オーディオメタデータは位置であるが、大きさ、方位、速度及び音響分散のような他のパラメータも記述できる。位置を伝達するために、モデルに基づく3Dオーディオ空間記述は、3D座標系を必要とする。送信のために用いられる座標系(ユークリッド、球、円筒)は、通常、便宜又は簡潔さのために選択される。しかしながら、他の座標系がレンダリング処理のために用いられても良い。座標系に加えて、基準のフレームが、空間内のオブジェクトの位置を表すために必要である。種々の異なる環境で位置に基づく音を正確に再現するシステムでは、正しい基準のフレームを選択することが重要であり得る。他者中心的(allocentric)基準フレームでは、オーディオソース位置は、部屋の壁及び角、標準的なスピーカ位置、及びスクリーン位置のようなレンダリング環境内の特徴に対して定められる。自己中心的(egocentric)基準フレームでは、位置は、「私の前」、「少し左」、等のようなリスナの観点に対して表される。空間認知(オーディオ及びその他)の科学的研究は、自己中心的認知が殆ど例外なく用いられていることを示している。しかしながら、映画では、他者中心的基準フレームは、通常、より適切である。例えば、オーディオオブジェクトの正確な位置は、関連するオブジェクトがスクリーン上にあるとき最も重要である。他者中心的基準を用いるとき、聴取位置毎に、及び任意のスクリーンサイズで、音は、スクリーン上の同じ相対位置、例えば「スクリーンの中間の左3分の1」にあると特定される。別の理由は、ミキサが他者中心的表現で考えミキシングする傾向にあること、パニングツールは他者中心的フレーム(つまり、部屋の壁)と共に設計されること、ミキサはそれらがそのようにレンダリングされることを期待すること、例えば「この音はスクリーン上にあるべきである」、「この音はスクリーンから外れているべきである」又は「左の壁から」、等である。
【0023】
映画環境での他者中心的基準フレームの使用にもかかわらず、自己中心的基準フレームが有用であり、より適切であり得る幾つかの例がある。これらは、自己中心的な一様な提示が望ましい非物語世界の音、つまり「物語空間」に存在しない音、例えばムード音楽を含む。別の例は、自己中心的提示を必要とする近接場効果(例えば、リスナの左耳の中でブンブンいう蚊)である。さらに、無限に遠い音源(及びその結果生じる平面波)は、一定の自己中心的位置(例えば、左に30度)から来るように思われる。このような音は、他者中心的表現より自己中心的な表現で容易に記述される。幾つかの例では、名目聴取位置が定められる限り、他者中心的基準フレームを用いることが可能である。一方、幾つかの例は、未だレンダリングすることが出来ない自己中心的表現を必要とする。他者中心的基準はより有用且つ適切であり得るが、特定のアプリケーション及び聴取環境において自己中心的表現を含む多くの新しい特徴がより望ましいので、オーディオ表現は拡張可能であるべきである。
【0024】
適応型オーディオシステムの実施形態は、最適音質のための及び自己中心的基準を用いた拡散する又は複雑な多点源(例えば、スタジアムの観衆、雰囲気)のレンダリングのための推奨チャネル構成、並びに空間分解能及び拡張性の向上を効率的に可能にするために他者中心的なモデルに基づく音記述を含むハイブリッド空間記述アプローチを含む。
図3は、一実施形態における、適応型オーディオシステムで使用する再生アーキテクチャのブロック図である。
図3のシステムは、オーディオが後処理及び/又は増幅及びスピーカ段へ送信される前に、従来のオブジェクト及びチャネルオーディオ復号化、オブジェクトレンダリング、チャネル再マッピング、及び信号処理を実行する処理ブロックを有する。
【0025】
再生システム300は、1又は複数のキャプチャ、前処理、オーサリング及び符号化コンポーネントを通じて生成されるオーディオコンテンツをレンダリング及び再生するよう構成される。適応型オーディオプリプロセッサは、入力オーディオの分析を通じて自動的に適切なメタデータを生成するソース分離及びコンテンツ種類検出機能を有しても良い。例えば、位置メタデータは、チャネル対間の相関入力の相対レベルの分析を通じてマルチチャネルレコーディングから導出されても良い。「スピーチ」又は「音楽」のようなコンテンツ種類の検出は、例えば特徴抽出及び分類により達成されても良い。特定のオーサリングツールは、音響技師の創造的意図の入力及び体系化を最適化して、事実上任意の再生環境での再生に最適化されると、彼に最終的なオーディオミックスを生成させることにより、オーディオプログラムのオーサリングを可能にする。これは、オーディオオブジェクト、及び元のオーディオコンテンツに関連付けられ共に符号化される位置データの使用を通じて達成できる。公会堂のあちこちに音を正確に配置するために、音響技師は、再生環境の実際の制約及び特徴に基づき音が最終的にどのようにレンダリングされるかを制御する必要がある。適応型オーディオシステムは、オーディオオブジェクト及び位置データの使用を通じてオーディオコンテンツがどのように設計されミックスされるかを音響技師に変更させることにより、この制御を提供する。適応型オーディオコンテンツは、オーサリングされ適切なコーデック装置で符号化されると、再生システム300の種々のコンポーネントで復号化されレンダリングされる。
【0026】
図3に示すように、(1)レガシーサラウンドサウンドオーディオ302、(2)オブジェクトメタデータを含むオブジェクトオーディオ304、及び(3)チャネルメタデータを含むチャネルオーディオ306は、処理ブロック310内のデコーダ段308、309に入力される。オブジェクトメタデータは、オブジェクトレンダラ312でレンダリングされる。一方、チャネルメタデータは必要に応じて再マッピングされても良い。聴取環境構成情報307は、オブジェクトレンダラ及びチャネル再マッピングコンポーネントに供給される。次に、ハイブリッドオーディオデータは、Bチェイン処理段316への出力及びスピーカ318を通じた再生の前に、等化器及びリミッタ314のような1又は複数の信号処理段を通じて処理される。システム300は、適応型オーディオのための再生システムの一例を表す。他の構成、コンポーネント、及び相互接続も可能である。
【0027】
図3のシステムは、レンダラが、任意的なチャネルに基づくオーディオコンテンツと関連してオブジェクトに基づくオーディオコンテンツを処理するために、オブジェクトメタデータを入力オーディオチャネルに適用するコンポーネントを有する一実施形態を示す。実施形態は、入力オーディオチャネルが従来のチャネルに基づくコンテンツのみを有し、レンダラが、サラウンドサウンド構成においてドライバアレイへの送信のためにスピーカフィードを生成するコンポーネントを有する例も対象にし得る。この例では、入力は必ずしもオブジェクトに基づくコンテンツではなく、Dolby Digital又はDolby Digital Plus又は同様のシステムで提供されるようなレガシー5.1又は7.1(又は他のオブジェクトに基づかない)コンテンツでも良い。
【0028】
<再生アプリケーション>
上述のように、適応型オーディオフォーマット及びシステムの初期実装は、新規なオーサリングツールを用いてオーサリングされ、適応型オーディオシネマエンコーダを用いてパッケージされ、及びPCM又は独自仕様の無損失コーデックを用いて既存のDCI(Digital Cinema Initiative)分配メカニズムを用いて分配されるコンテンツキャプチャ(オブジェクト及びチャネル)を含むデジタルシネマ(D−cinema)の環境である。この例では、オーディオコンテンツは、没入型空間オーディオシネマ経験を生成するために、デジタルシネマで復号化及びレンダリングされることを意図している。しかしながら、アナログサラウンドサウンド、デジタル多チャネルオーディオ、等のような以前のシネマの進歩と共に、家庭にいるユーザに直接に適応型オーディオフォーマットにより提供される向上したユーザ経験を供給する要請がある。これは、フォーマット及びシステムの特定の特徴がより限られた聴取環境での使用に適応されることを要求する。例えば、家庭、部屋、小さな公会堂、又は類似の場所は、映画館又は劇場環境と比べて削減された空間、音響特性、及び機器能力を有し得る。説明の目的で、用語「消費者に基づく環境」は、家、スタジオ、部屋、操作領域、公会堂、等のような本職の顧客又はプロによる使用のための聴取環境を有する任意の非映画館環境を含むことを意図する。オーディオコンテンツは、単独で調達されレンダリングされても良く、或いは、グラフィックコンテンツ、例えば静止画像、光ディスプレイ、ビデオ、等に関連付けられても良い。
【0029】
図4Aは、一実施形態における、聴取環境で使用する、オーディオコンテンツに基づき映画を適応する機能コンポーネントを示すブロック図である。
図4Aに示すように、ブロック402で、通常動画像サウンドトラックを有する映画コンテンツは、適切な機器及びツールを用いてキャプチャ及び/又はオーサリングされる。適応型オーディオシステムでは、ブロック404で、このコンテンツは、符号化/復号化及びレンダリングコンポーネント及びインタフェースを通じて処理される。結果として生じるオブジェクト及びチャネルオーディオフィードは、次に、406で映画館又は劇場内の適切なスピーカに送信される。システム400では、416で、映画コンテンツも、ホームシアターシステムのような聴取環境での再生のために処理される。聴取環境は、総合的ではなく、或いは、限られた空間、少ないスピーカ数、等によりコンテンツクリエイタにより意図されたサウンドコンテンツの全てを再現する能力がない。しかしながら、実施形態は、聴取環境の減少した能力により課される制約を最小限にするように元のオーディオコンテンツをレンダリング可能にする、並びに利用可能な機器を最大限にするように位置キューを処理可能にするシステム及び方法を対象とする。
図4Aに示すように、映画オーディオコンテンツは、映画−消費者変換器コンポーネント408を通じて処理される。ここで、映画オーディオコンテンツは消費者コンテンツ符号化及びレンダリングチェーン414内で処理される。このチェーンは、ブロック412でキャプチャされ及び/又はオーサリングされた元のオーディオコンテンツも処理する。次に416で、元のコンテンツ及び/又は変換された映画コンテンツは、聴取環境で再生される。このように、オーディオコンテンツ内に符号化された関連空間情報は、家庭又は聴取環境の場合によっては限られたスピーカ構成を用いても、416で、より没入型方法で音をレンダリングするために用いることができる。
【0030】
図4Bは、
図4Aのコンポーネントをより詳細に示す。
図4Bは、オーディオ再生エコシステム全体を通して適応型オーディオ映画コンテンツの例示的な分配メカニズムを示す。
図420に示すように、元の映画及びTVコンテンツは、種々の異なる環境における再生のために、422でキャプチャされ、423でオーサリングされ、427で映画経験を又は434で消費者環境経験を提供する。同様に、特定のユーザにより生成されたコンテンツ(user generated content:UGC)又は消費者コンテンツは、434での聴取環境における再生のために、423でキャプチャされ、425でオーサリングされる。例えば映画環境427における再生のための映画コンテンツは、知られている映画処理426を通じて処理される。しかしながら、システム420で、映画オーサリングツールボックス423の出力は、サウンドミキサの芸術的意図を伝達するオーディオオブジェクト、オーディオチャネル、及びメタデータも有する。これは、再生のための映画コンテンツの複数のバージョンを生成するために用いることができる2階正面席(mezzanine)スタイルのオーディオパッケージとして考えることができる。一実施形態では、この機能は、映画−消費者適応型オーディオ変換器430により提供される。この変換器は、適応型オーディオコンテンツへの入力を有し、それから所望の消費者エンドポイント434のための適切なオーディオ及びメタデータコンテンツを抜き出す。変換器は、分配メカニズム及びエンドポイントに依存して、別個の及び場合によっては異なるオーディオ及びメタデータ出力を生成する。
【0031】
システム420の例に示すように、映画−消費者変換器430は、画像(ブロードキャスト、ディスク、OTT、等)及びゲームオーディオビットストリーム生成モジュール428に音を供給する。これらの2個のモジュールは、映画コンテンツを配信するのに適し、複数の分配パイプライン432に供給できる。複数の分配パイプライン432の全部は、消費者エンドポイントに分配しても良い。例えば、適応型オーディオ映画コンテンツは、Dolby Digital Plusのようなブロードキャスト目的に適するコーデックを用いて符号化されても良く、チャネル、オブジェクト及び関連メタデータを伝達するために変更されても良く、ブロードキャストチェーンを通じてケーブル又は衛星を介して送信され、次にホームシアター又はテレビジョン再生のために家庭で復号化及びレンダリングされる。。同様に、同じコンテンツは、帯域幅の限られたオンライン配信に適したコーデックを用いて符号化され、次に3G又は4Gモバイルネットワークを通じて送信され、次にヘッドフォンを用いたモバイル装置による再生のために復号化及びレンダリングされる。TV、ライブ放送、ゲーム及び音楽のような他のコンテンツソースも、次世代オーディオフォーマットのコンテンツを生成し提供するために、適応型オーディオフォーマットを用いても良い。
【0032】
図4Bのシステムは、ホームシアター(A/V受信機、サウンドバー、及びBluRay(登録商標))、電子メディア(PC、タブレット、ヘッドフォン再生を含むモバイル)、ブロードキャスト(TV及びセットトップボックス)、音楽、ゲーム、ライブサウンド、ユーザの生成したコンテンツ(UGC)、等を含み得る消費者オーディオエコシステム全体を通して拡張されたユーザ経験を提供する。このようなシステムは、全てのエンドポイント装置の聴衆の没入の拡張、オーディオコンテンツクリエイタの芸術的制御の拡張、レンダリングの向上のためのコンテンツ依存(記述)メタデータの改良、再生システムの柔軟性及び拡張性の拡張、音質維持及び整合、並びにユーザ位置及び相互作用に基づくコンテンツの動的レンダリングのための機会を提供する。システムは、コンテンツクリエイタのための新しいミキシングツール、分配及び再生、(異なる構成に適する)家庭内動的ミキシング及びレンダリング、追加スピーカ位置及び設計のための更新された新しいパッケージ及び符号化ツールを含む幾つかのコンポーネントを有する。
【0033】
適応型オーディオエコシステムは、多数のエンドポイント装置及び使用例に渡るコンテンツ生成、パッケージング、分配及び再生/レンダリングを含む適応型オーディオフォーマットを用いて完全に包括的なエンドツーエンド次世代オーディオシステムであるよう構成される。
図4Bに示すように、システムは、多数の異なる使用例から及びそれらのためにキャプチャされたコンテンツに端を発する。これらのキャプチャポイントは、映画、TV、生放送(及び音)、UGC、ゲーム及び音楽を含む全ての関連するコンテンツフォーマットを有する。コンテンツは、エコシステムを通過するとき、前処理及びオーサリングツール、変換ツール(つまり、映画−消費者コンテンツ分配アプリケーションのための適応型オーディオコンテンツの変換)、特定適応型オーディオパッケージング/ビットストリーム符号化(オーディオ基本データを追加メタデータ及びオーディオ再現情報とともにキャプチャする)、種々のオーディオチャネルを通じた効率的な分配、関連分配チャネル(ブロードキャスト、ディスク、モバイル、インターネット、等)を通じた送信、及び空間オーディオ経験の利益を提供するコンテンツクリエイタにより定められた適応型オーディオユーザ経験を再現し伝達するために最終的なエンドポイントを意識した動的レンダリングのための既存の又は新しいコーデック(例えば、DD+、TrueHD、Dolby Pulse)を用いた分配符号化のような幾つかの主要段階を通る。適応型オーディオシステムは、広範囲に変化する数の消費者エンドポイントのためのレンダリング中に用いることができ、適用されるレンダリング技術は、エンドポイント装置に依存して最適化できる。例えば、ホームシアターシステム及びサウンドバーは、2、3、5、7又は9個のスピーカを種々の位置に有しても良い。多くの他の種類のシステムは2個のスピーカのみを有し(TV、ラップトップ、音楽ドック)、殆ど全ての一般的に用いられる装置はヘッドフォン出力を有する(PC、ラップトップ、タブレット、携帯電話機、音楽プレイヤ、等)。
【0034】
サラウンドサウンドオーディオのための現在のオーサリング及び分配システムは、オーディオエッセンス(つまり、再現システムにより再生される実際のオーディオ)の中で伝達されるコンテンツの種類についての限られた知識しか有しないで、所定の及び固定されたスピーカ位置への再現用のオーディオを生成し分配する。しかしながら、適応型オーディオシステムは、固定スピーカ位置専用オーディオ(左チャネル、右チャネル、等)と、位置、サイズ及び速度を含む汎用3D空間情報を有するオブジェクトに基づくオーディオ要素との両者の選択を有する新しいハイブリッドアプローチをオーディオ生成に提供する。このハイブリッドアプローチは、(固定スピーカ位置により提供される)忠実性及び(汎用オーディオオブジェクトを)レンダリングする際の柔軟性のバランスのとれたアプローチを提供する。このシステムは、コンテンツ生成/オーサリングのときにコンテンツクリエイタによりオーディオエッセンスと対にされる新しいメタデータにより、オーディオコンテンツに関する追加の有用な情報も提供する。この情報は、レンダリング中に用いることができるオーディオの属性に関する詳細情報を提供する。このような属性は、コンテンツ種類(会話、音楽、効果、フォーレイ(Foley)、背景/雰囲気、等)、並びに空間属性(3D位置、オブジェクトサイズ、速度、等)のようなオーディオオブジェクト情報及び有用なレンダリング情報(スピーカ位置への素早い動き、チャネル重み、利得、低音管理情報、等)を有しても良い。オーディオコンテンツ及び再現意図メタデータは、コンテンツクリエイタにより手動で生成でき又はオーサリング処理中にバックグラウンドで実行され得る自動メディア知能アルゴリズムの使用を通じて生成でき、そして必要に応じて最終品質制御段階中にコンテンツクリエイタにより見直され得る。
【0035】
図4Cは、一実施形態における、適応型オーディオ環境の機能コンポーネントのブロック図である。
図450に示すように、システムは、ハイブリッドオブジェクト及びチャネルに基づくオーディオストリームの両方を伝達する符号化ビットストリーム452を処理する。ビットストリームは、レンダリング/信号処理ブロック454により処理される。一実施形態では、この機能ブロックの少なくとも一部は、
図3に示すレンダリングブロック312内で実施されても良い。レンダリング機能454は、適応型オーディオのための種々のレンダリングアルゴリズム、並びにアップミキシング、反射音向け処理、等のような特定の後処理アルゴリズムを実装する。レンダラからの出力は、双方向相互接続456を通じてスピーカ458に供給される。一実施形態では、スピーカ458は、サラウンドサウンド又は同様の構成に配置され得る多数の個々のドライバを有する。ドライバは、個々にアドレス可能であり、個々の筐体又は複数ドライバキャビネット若しくはアレイで具現化されても良い。システム450は、レンダリング処理を較正するために用いることができる、聴取環境又は部屋の特性の測定を提供するマイクロフォン460を有しても良い。システム構成及び較正機能は、ブロック462で提供される。これらの機能は、レンダリングコンポーネントの部分として含まれても良い。或いは、これらの機能は、レンダラに機能的に結合される別個のコンポーネントとして実装されても良い。双方向相互接続456は、聴取環境内のスピーカから較正コンポーネント462へのフィードバック信号経路を提供する。
【0036】
<聴取環境>
適応型オーディオシステムの実装は、種々の異なる聴取環境で展開できる。これらは、オーディオ再生アプリケーションの3つの主要な分野、つまりホームシアターシステム、テレビジョン及びサウンドバー、及びヘッドフォンを有する。
図5は、例示的なホームシアター環境における適応型オーディオシステムの展開を示す。
図5のシステムは、適応型オーディオシステムにより提供され得るコンポーネント及び機能の上位集合を示す。特定の特徴は、拡張された経験を提供しながら、ユーザの必要に基づき削減又は除去されても良い。システム500は、種々の異なるキャビネット又はアレイ504の中に種々の異なるスピーカ及びドライバを有する。スピーカは、フロント、サイド及びアップワードファイアリング、並びに特定のオーディオ処理技術を用いるオーディオの動的仮想化を提供する個々のドライバを有する。
図500は、標準的な9.1スピーカ構成で展開される多数のスピーカを示す。これらは、左及び右ハイトスピーカ(LH、RH)、左及び右スピーカ(L、R)、中央スピーカ(変更された中央スピーカとして示す)、並びに左及び右サラウンド及びバックスピーカ(LS、LR、LB及びRB、低周波数要素LFEは示さない)を含む。
【0037】
図5は、聴取環境の中央位置で用いられる中央チャネルスピーカ510の使用を示す。一実施形態では、このスピーカは、変更された中央チャネル又は高分解能中央チャネル510を用いて実装される。このようなスピーカは、スクリーン上のビデオオブジェクトの動きに適合するアレイを通じたオーディオオブジェクトの離散的パンを可能にする個々にアドレス可能なスピーカを有するフロントファイアリング中央チャネルアレイであっても良い。これは、参照することにより全体がここに組み込まれる国際出願番号PCT/US2011/028783号に記載されているような高分解能中央チャネル(high−resolution center channel:HRC)スピーカとして具現化されても良い。HRCスピーカ510は、図示のようにサイドファイアリングスピーカを有しても良い。これらは、HRCスピーカが中央スピーカとしてだけではなくサウンドバー能力を有するスピーカとしても用いられる場合に、起動され使用され得る。HRCスピーカは、オーディオオブジェクトの2次元高分解能パニングオプションを提供するために、スクリーン502の上及び/又は横に組み込まれても良い。中央スピーカ510は、追加ドライバを有し、別個に制御される音ゾーンを有するステアリング可能なサウンドビームを実装し得る。
【0038】
システム500は、着席位置の正面にあるテーブル上のようなリスナの正面右に又は正面近くに配置され得る近接場効果(near field effect:NFE)スピーカ512も有する。適応型オーディオでは、オーディオオブジェクトを部屋の周囲に固定するだけではなく、部屋の中に持ってくることが可能である。したがって、3次元空間を通してオブジェクトをトラバースするというオプションがある。一例は、オブジェクトがLスピーカで生じ、NFEスピーカを通じて聴取環境を通って伝わり、RSスピーカで終わる場合である。種々の異なるスピーカは、無線バッテリ式スピーカのようなNFEスピーカとしての使用に適しても良い。
【0039】
図5は、ホームシアター環境における没入型ユーザ経験を提供するための動的スピーカ仮想化の使用を示す。動的スピーカ仮想化は、適応型オーディオコンテンツにより提供されるオブジェクト空間情報に基づくスピーカ仮想化アルゴリズムパラメータの動的制御を通じて実現される。この動的仮想化は、L及びRスピーカについて
図5に示される。これは、聴取環境の側面に沿って移動するオブジェクトの知覚を生成するためのものであると考えるのが自然である別個の仮想化器が関連オブジェクト毎に使用され、結合された信号は、複数オブジェクト仮想化効果を生成するためにL及びRスピーカへ送信され得る。動的仮想化効果は、L及びRスピーカ、並びに(2個の独立した入力を有する)ステレオスピーカであることが意図されるNFEスピーカについて示される。このスピーカは、オーディオオブジェクト及び位置情報と共に、拡散又は点源近距離オーディオ経験を生成するために用いられ得る。同様の仮想化効果は、システム内の任意の又は全部の他のスピーカにも適用できる。一実施形態では、カメラは、ミキサの芸術的意図により忠実により感動的な経験を提供するために、適応型オーディオレンダラにより使用され得る追加リスナ位置及び識別情報を提供しても良い。
【0040】
適応型オーディオレンダラは、ミックスと再生システムとの間の空間的関係を理解する。再生環境の幾つかの例では、離散的スピーカは、
図1に示すような頭上位置を含む聴取環境の全ての関連領域で利用可能であっても良い。離散的スピーカが特定の位置で利用可能なこれらの例では、レンダラは、パニング又はスピーカ仮想化アルゴリズムの使用を通じて2以上のスピーカの間のファントム像を生成する代わりに、最も近いスピーカにオブジェクトを「素早く動かす(snap)」よう構成できる。これは、ミックスの空間的表現を僅かに歪めるが、レンダラが意図しないファントム像を回避できるようにする。例えば、ミキシング段の左スピーカの角度位置が再生システムの左スピーカの角度位置に対応しない場合、この機能の有効化は、初期左チャネルの一定のファントム像を有することを回避し得る。
【0041】
しかしながら、多くの場合、及び特に家庭環境で、天井に取り付けられる頭上スピーカのような特定のスピーカは利用可能ではない。この例では、特定の仮想化技術は、既存の床又は壁に取り付けられるスピーカを通じて頭上オーディオコンテンツを再現するためにレンダラにより実装される。一実施形態では、適応型オーディオシステムは、各スピーカのフロントファイアリング能力及びトップ(又は「アップワード」)ファイアリング能力の両方の包含を通じて標準的構成への変更を含む。伝統的な家庭用アプリケーションでは、スピーカ製造者は、フロントファイアリングトランスデューサ以外の新しいドライバ構成を導入しようと試みており、元のオーディオ信号(又はそれらに対する変更)のうちのどれがこれらの新しいドライバへ送信されるべきかを特定しようとする問題に直面している。適応型オーディオシステムでは、どのオーディオオブジェクトが標準的な水平面の上でレンダリングされるかに関する非常に特有の情報が存在する。一実施形態では、適応型オーディオシステムに存在するハイト情報は、アップワードファイアリングドライバを用いてレンダリングされる。同様に、サイドファイアリングスピーカは、雰囲気効果のような特定の他のコンテンツをレンダリングするために用いることができる。
【0042】
アップワードファイアリングドライバの1つの利点は、それらが、天井に位置付けられる頭上/ハイトスピーカの存在をシミュレートするために、堅い天井面から音を反射するのに用いることができることである。適応型オーディオコンテンツの有力な属性は、空間的に多様なオーディオが頭上スピーカのアレイを用いて再現されることである。しかしながら、上述のように、多くの例では、頭上スピーカの設置は、家庭環境では高価であり又は実用的でない。名目上水平面に位置付けられるスピーカを用いてハイトスピーカをシミュレートすることにより、感動的な3D経験が位置付けし易いスピーカにより生成できる。この例では、適応型オーディオシステムは、オーディオオブジェクト及びそれらの空間的再現情報がアップワードファイアリングドライバにより再現されるオーディオを生成するために用いられる新しい方法で、アップワードファイアリング/ハイトシミュレートドライバを用いている。
【0043】
図6は、ホームシアターにおける単一の頭上スピーカをシミュレートするために反射音を用いるアップワードファイアリングドライバの使用を示す。留意すべきことに、複数のシミュレートされたハイトスピーカを生成するために、任意の数のアップワードファイアリングドライバが組み合わされて用いられ得る。代替で、アップワードファイアリングドライバの数は、特定の音強度又は効果を達成するために、天井の実質的に同じ点に音を送信するよう構成されても良い。
【0044】
図600は、通常の聴取位置602が聴取環境内の特定の場所に位置する例を示す。システムは、ハイトキューを含むオーディオコンテンツを送信するいかなるハイトスピーカも有しない。代わりに、スピーカキャビネット又はスピーカアレイ604は、フロントファイアリングドライバと一緒にアップワードファイアリングドライバを有する。アップワードファイアリングドライバは、その音波606を(位置及び傾き角度に関して)天井の特定の点608まで送信するよう構成される。音波は、聴取位置602に反射され戻ってくる。天井は、聴取環境へ音を適切に反射するために適切な材料及び構成を有すると想定される。アップワードファイアリングドライバの関連特性(例えば、サイズ、パワー、位置、等)は、天井の構成、部屋の大きさ、及び聴取環境の他の関連特性に基づき選択されても良い。1つのアップワードファイアリングドライバのみが
図6に示されたが、幾つかの実施形態では、複数のアップワードファイアリングドライバが再現システムに組み込まれても良い。
【0045】
一実施形態では、適応型オーディオシステムは、ハイト要素を提供するために、アップワードファイアリングドライバを用いる。一般的に、知覚ハイトキューをアップワードファイアリングドライバに供給されるオーディオ信号に導入するために信号処理を組み込むことは、仮想ハイト信号の位置決め及び知覚される質を向上する。例えば、ハイトキューフィルタを生成するために、パラメトリック知覚バイノーラル聴覚モデルが開発されている。該モデルは、アップワードファイアリングドライバにより再現されているオーディオを処理するために用いられるとき、再現の知覚品質を向上する。一実施形態では、ハイトキューフィルタは、物理的スピーカ位置(大体、リスナと同じ高さ)及び反射スピーカ位置(リスナより上)の両方から導出される。物理的スピーカ位置について、方向フィルタは、外耳(又は耳介)のモデルに基づいて決定される。次に、このフィルタの逆変換が決定され、物理スピーカからハイトキューを除去するために用いられる。次に、反射スピーカ位置について、第2の方向フィルタは、外耳の同じモデルを用いて決定される。このフィルタは、直接適用され、音がリスナの上にあった場合に耳が受けるキューを基本的に再現する。実際には、これらのフィルタは、単一フィルタが、(1)物理的スピーカ位置からハイトキューを除去するとともに(2)反射スピーカ位置からのハイトキューを挿入できるように、結合されても良い。
図16は、結合フィルタの周波数応答を示すグラフである。結合フィルタは、適用されるフィルタの攻撃性(aggressiveness)又は量に関して特定の調整能力を認めるように用いられても良い。例えば、幾つかの例では、物理的スピーカからの音の一部のみがリスナに直接到着する(残りの部分は天井から反射されている)ので、物理的スピーカハイトキューを完全に除去しない、又は反射スピーカハイトキューを完全に適用しないことが有利であっても良い。
【0046】
<スピーカ構成>
適応型オーディオシステムの主要な検討事項は、スピーカ構成である。システムは、個別にアドレス可能なドライバを用いる。このようなドライバのアレイは、直接及び反射音源の両方の組合せを提供するよう構成される。システム制御部(例えば、A/V受信機、セットトップボックス)への双方向リンクは、オーディオ及び構成データをスピーカへ送信させ、スピーカ及びセンサ情報を制御部に返送させ、積極的な閉ループシステムを生成する。
【0047】
説明を目的として、用語「ドライバ」は、電気オーディオ入力信号に応答して音を生成する単一の電子音響トランスデューサを意味する。ドライバは、任意の適切な種類、ジオメトリ、及びサイズで実装されても良く、ホーン、コーン、リボントランスデューサ、等を有しても良い。用語「スピーカ」は、単一の筐体の中にある1又は複数のドライバを意味する。
図7Aは、一実施形態における、第1の構成の複数のドライバを有するスピーカを示す。
図7Aに示すように、スピーカ筐体700は、筐体内に取り付けられた多数の個別のドライバを有する。通常、筐体は、低音域用スピーカ、中音域スピーカ若しくは高音域用スピーカ、又はそれらの任意の組合せのような1又は複数のフロントファイアリングドライバ702を有する。1又は複数のサイドファイアリングドライバ704も含まれても良い。フロント及びサイドファイアリングドライバは、通常、筐体の側面にぴったりくっついて取り付けられ、それらがスピーカにより定められる垂直面から垂直に出て行く音を発射するように、及びこれらのドライバがキャビネット700内に通常恒久的に固定されるようにする。反射音のレンダリングを特色とする適応型オーディオシステムでは、1又は複数のアップワードチルトドライバ706も設けられる。これらのドライバは、
図6に示したように、それらがある角度で天井へと音を発射し、次に天井で音が跳ね返ってリスナへと戻ってくるように、位置付けられる。傾きの程度は、聴取環境特性及びシステム要件に依存して設定されても良い。例えば、アップワードドライバ706は、フロントファイアリングドライバ702から生成される音波との干渉を最小限にするように、30乃至60度の間で上に傾けられても良く、スピーカ筐体700内のフロントファイアリングドライバ702の上に位置付けられても良い。アップワードファイアリングドライバ706は、固定角度で設置されても良く、或いは傾き角が手動で調整できるように設置されても良い。代替で、アップワードファイアリングドライバの傾き角及び発射方向の自動又は電気制御を可能にするために、サーボ機構が用いられても良い。環境音のような特定の音について、アップワードファイアリングドライバは、所謂「トップファイアリング」ドライバを生成するために、スピーカ筐体700の上面の外側へ一直線に向けて方向付けられても良い。この例では、大きな音成分は、天井の音響特性に依存して、スピーカ上へと反射して戻ってきても良い。しかしながら、多くの例では、
図6に示したように、聴取環境内の異なる若しくは更に中央位置への天井からの反射を通じて音を発射するのを助けるために、通常、特定の傾き角が用いられる。
【0048】
図7Aは、スピーカ及びドライバ構成の一例を示すことを意図する。多くの他の構成も可能である。例えば、アップワードファイアリングドライバは、既存のスピーカと共に使用できるように、自身の筐体内に設けられても良い。
図7Bは、一実施形態における、複数の筐体の中に分散されたドライバを有するスピーカシステムを示す。
図7Bに示すように、アップワードファイアリングドライバ712は、別の筐体710の中に設けられる。別の筐体710は、フロント及び/又はサイドファイアリングドライバ716及び718を有する筐体714に近接して又はその上に配置できる。多くのホームシアター環境で用いられるように、ドライバは、多数の小型又は中型の大きさのドライバが単一水平又は垂直筐体内の軸に沿って配列されるスピーカサウンドバー内に入れられても良い。
図7Cは、一実施形態における、サウンドバー内のドライバの配置を示す。本例では、サウンドバー筐体730は、サイドファイアリングドライバ734、アップワードファイアリングドライバ736、及びフロントファイアリングドライバ732を有する水平サウンドバーである。
図7Cは、単なる例示的構成を意図する。機能の各々−フロント、サイド及びアップワードファイアリング−について任意の実際のドライバ数が用いられても良い。
【0049】
図7A−7Cの実施形態について、要求される周波数応答特性並びにサイズ、電力定格、コンポーネントコスト等のような任意の他の関連制約に依存して、ドライバは任意の適切な形状、サイズ及び種類であっても良いことに留意すべきである。
【0050】
標準的な適応型オーディオ環境では、多数のスピーカ筐体が、聴取環境内に含まれる。
図8は、聴取環境内に配置されるアップワードファイアリングドライバを含む個々にアドレス可能なドライバを有するスピーカの例示的な配置を示す。
図8に示すように、聴取環境800は、それぞれ少なくとも1つのフロントファイアリング、サイドファイアリング、及びアップワードファイアリングドライバを有する4個の別個のスピーカ806を有する。聴取環境は、中央スピーカ802及びサブウーファー若しくはLFE804のようなサラウンドサウンドアプリケーションのために用いられる固定ドライバを有しても良い。
図8から分かるように、聴取環境及び個々のスピーカユニットの大きさに依存して、聴取環境内のスピーカ806の適正な配置は、多数のアップワードファイアリングドライバからの音の天井での反射によりもたらされる豊かなオーディオ環境を提供できる。スピーカは、コンテンツ、聴取環境の大きさ、リスナ位置、音響特性、及び他の関連パラメータに依存して、天井面にある1又は複数の点からの反射を提供することを目的とし得る。
【0051】
ホームシアター又は類似の聴取環境のための適応型オーディオシステムで用いられるスピーカは、既存のサラウンドサラウンド構成(例えば、5.1、7.1、9.1等)に基づく構成を用いても良い。この例では、多数のドライバが、知られているサラウンドサウンド習慣により設けられ定められ、アップワードファイアリングサウンドコンポーネントのために追加ドライバが設けられ定められる。
【0052】
図9Aは、一実施形態における、反射オーディオのための複数のアドレス可能なドライバを用いる適応型オーディオ5.1システムのスピーカ構成を示す。構成900では、LFE901、中央スピーカ902、L/Rフロントスピーカ904/906、及びL/Rリアスピーカ908/910を有する標準的な5.1ラウドスピーカ設置面積は、8個の追加ドライバを設けられ、合計14個のアドレス可能なドライバを与える。これらの8個の追加ドライバは、各スピーカユニット902−910内の「フォワード」(又は「フロント」)に加えて「アップワード」及び「サイドワード」と示される。直接フォワードドライバは、高度な指向性を有するよう設計される適応型オーディオオブジェクト及び任意の他のコンポーネントを含むサブチャネルにより駆動され得る。アップワードファイアリング(反射)ドライバは、更に全方向性の又は指向性のないサブチャネルコンテンツを有し得るが、これらに限定されない。例は、背景音楽又は環境音を有し得る。システムへの入力がレガシーサラウンドサウンドコンテンツを有する場合、このコンテンツは、方向及び反射サブチャネルに知的に織り込まれ、適切なドライバへ供給され得る。
【0053】
直接サブチャネルのために、スピーカ筐体は、ドライバの中央軸が「スイートスポット」又は聴取環境の音響的中心を二等分するドライバを有し得る。アップワードファイアリングドライバは、ドライバの中央軸と音響的中心との間の角度が45乃至180度の範囲内の特定の角度になるよう、位置付けられ得る。ドライバを180度に位置付ける例では、背面ドライバは、背面の壁からの反射により音拡散を提供し得る。この構成は、アップワードファイアリングドライバを直接ドライバと時間的に整合した後に、早く到着する信号成分がコヒーレントであり、一方、遅く到着する成分が聴取環境により提供される自然拡散からの恩恵を受けるという音響原理を利用する。
【0054】
適応型オーディオシステムにより提供されるハイトキューを達成するために、アップワードファイアリングドライバは、水平面から上方に傾けられ、本例では一直線に発し、平坦な天井のような1又は複数の反射面又は筐体の直ぐ上に配置された音響拡散器から反射するよう位置付けられ得る。追加の指向性を提供するために、中央スピーカは、高分解能中央チャネルを提供するためにスクリーンに渡り音をステアリングする能力を有する(
図7Cに示すような)サウンドバー構成を用い得る。
【0055】
図9Aの5.1構成は、標準的な7.1構成と類似の2個の追加背面筐体を追加することにより拡張され得る。
図9Bは、このような一実施形態における、反射オーディオのための複数のアドレス可能なドライバを用いる適応型オーディオ7.1システムのスピーカ構成を示す。構成920に示すように、2個の追加筐体922及び924は、既存のフロント及びリアのペアの間の中間で天井から跳ね返るよう設定されるフロント筐体及びアップワードファイアリングドライバと同様に、サイドスピーカが側壁の方を向いている「左サイドサラウンド」及び「右サイドサラウンド」位置に配置される。このような増加的追加は、必要なだけ何回でも行うことができ、追加ペアは側壁又は後壁に沿ったギャップを満たす。
図9A及び9Bは、聴取環境のための適応型オーディオシステム内でアップワード及びサイドファイアリングスピーカと共に用いることができる拡張サラウンドサウンドスピーカレイアウトの可能な構成のうちの幾つかの例のみを示す。多くの他の構成も可能である。
【0056】
上述のn.1構成の代替として、より柔軟なポッド(pod)に基づくシステムが用いられても良い。これにより、各ドライバは自身の筐体に入れられ、都合の良い場所に取り付けることができる。これは、
図7Bに示すようなドライバ構成を用い得る。これらの個々のユニットは、同様の方法でn.1構成にクラスタ化されても良く、或いは聴取環境内に個々に散らばっても良い。ポッドは、必ずしも聴取環境の端に配置されることに限定されず、聴取環境内の任意の面(例えば、コーヒーテーブル、本棚、等)に配置され得る。このようなシステムは、拡張が容易であり、更に没入型経験を生成するために時間の経過と共にユーザが更に多くのスピーカを追加できるようにする。スピーカが無線である場合、ポッドシステムは、再充電目的でスピーカをドッキングする能力を有し得る。この設計では、ポッドは一緒にドッキングされ、おそらくステレオ音楽を聴くために、それらが再充電している間、それらが単一のスピーカのように動作するようにし、次に、ドッキングから外され、適応型オーディオコンテンツのための聴取環境内に位置付けられ得る。
【0057】
アップワードファイアリングアドレス可能ドライバを用いて適応型オーディオシステムの設定可能性及び精度を拡張するために、多数のセンサ及びフィードバック装置が、レンダリングアルゴリズムで用いられ得る特性をレンダラに知らせるために、筐体に追加され得る。例えば、各筐体内に設置されるマイクロフォンは、システムが、三角測量及び筐体自体のHRTFのような機能を用いて、スピーカの互いに対する位置と共に、聴取環境の位相、周波数、及び反響特性を測定できるようにし得る。慣性センサ(例えば、ジャイロスコープ、コンパス、等)は、筐体の方向及び角度を検出するために用いられ得る。光及び視覚センサ(例えば、レーザに基づく赤外線レンジファインダ)は、聴取環境自体に対する位置情報を提供するために用いられ得る。これらの代表は、システム内で用いられ得る追加センサのほんの少数の可能性であり、他のセンサも可能である。
【0058】
このようなセンサシステムは、ドライバの位置及び/又は筐体の音響変更因子を電子機械サーボにより自動的に調整可能にすることにより更に拡張できる。これは、壁及び他のドライバに対する聴取環境内のドライバの位置決めを適合させるために、ドライバの指向性を実行時に変更させ得る(「アクティブステアリング」)。同様に、(バッフル、ホーン、又は導波管のような)任意の音響変更因子は、任意の聴取環境構成における最適な再生のための正しい周波数及び位相応答を提供するために調整され得る(「アクティブチューニング」)。アクティブステアリング及びアクティブチューニングの両者は、初期聴取環境構成の間(自動EQ/自動部屋構成システムと共に)、又はコンテンツがレンダリングされるのに応答して再生中に実行され得る。
【0059】
<双方向相互接続>
一旦構成されると、スピーカは、レンダリングシステムに接続されなければならない。伝統的な相互接続は、通常、2種類ある。つまり、パッシブスピーカのためのスピーカレベル入力と、アクティブスピーカのためのラインレベル入力である。
図4Cに示すように、適応型オーディオシステム450は、双方向相互接続機能を有する。この相互接続は、レンダリング段454と増幅器/スピーカ458及びマイクロフォン段460との間の物理及び論理接続のセット内に実装される。各スピーカキャビネット内の複数のドライバをアドレスする能力は、音源とスピーカとの間のこれらの知的相互接続によりサポートされる。双方向相互接続は、音源からスピーカ(レンダラ)への信号の送信が制御信号とオーディオ信号の両方を含むことを可能にする。スピーカから音源への信号は、制御信号とオーディオ信号の両方を有する。ここで、この例におけるオーディオ信号は、任意的な内蔵マイクロフォンから調達されるオーディオである。電力は、少なくともスピーカ/ドライバが別個に電力供給されない例では、双方向相互接続の部分として供給されても良い。
【0060】
図10は、一実施形態における、双方向相互接続の組成を示す
図1000である。音源1002は、レンダラ及び増幅器/サウンドプロセッサチェーンを表しても良く、相互接続リンク1006及び1008の対を通じてスピーカキャビネット1004に論理的及び物理的に結合される。音源1002からスピーカキャビネット1004内のドライバ1005への相互接続1006は、各ドライバの電子音響信号、1又は複数の制御信号、及び光パワーを有する。スピーカキャビネット1004から音源1002へ戻る相互接続1008は、マイクロフォン1007又はレンダラの較正若しくは他の同様のサウンドプロセッシング機能のための他のセンサからのサウンド信号を有する。フィードバック相互接続1008は、相互接続1006を介してドライバに設定される音信号を変更又は処理するために、レンダラにより用いられる特定のドライバ定義及びパラメータも有する。
【0061】
一実施形態では、システムのキャビネットの各々の中の各ドライバは、システムセットアップ中に識別子(例えば、数値割り当て)を割り当てられる。各スピーカキャビネット(筐体)は、ユニークに識別できる。この数値割り当ては、どのオーディオ信号がキャビネット内のどのドライバへ送信されるべきかを決定するために、スピーカキャビネットにより用いられる。割り当ては、スピーカキャビネット内で適切なメモリ装置に格納される。代替で、各ドライバは、ローカルメモリに自身の識別子を格納するよう構成されても良い。更なる代替では、ドライバ/スピーカがローカル記憶能力を有しない例のように、識別子は、レンダリング段又は音源1002内の他のコンポーネントに格納され得る。スピーカ発見処理中、各スピーカ(又は中央データベース)は、そのプロファイルについて音源により問い合わせられる。プロファイルは、スピーカキャビネット又は他の定められたアレイ内のドライバの数、各ドライバの音響特性(例えば、ドライバ種類、周波数応答、等)、スピーカキャビネットの前面中心に対する各ドライバの中心のx、y、z位置、定められた面(例えば、天井、床、キャビネット垂直軸、等)に対する各ドライバの角度、並びにマイクロフォンの数及びマイクロフォン特性を含む特定のドライバ定義を定める。他の関連ドライバ及びマイクロフォン/センサパラメータも定められても良い。一実施形態では、ドライバ定義及びスピーカキャビネットプロファイルは、レンダラにより用いられる1又は複数のXML文書として表現されても良い。
【0062】
1つの可能な実装では、インターネットプロトコル(IP)制御ネットワークは、音源1002とスピーカキャビネット1004との間に生成される。各スピーカキャビネット及び音源は、単一ネットワークエンドポイントとして動作し、初期化又は電源を入れられるとリンクローカルアドレスを与えられる。ゼロコンフィギュレーションネットワーキング(zeroconf)のような自動発見機構は、音がネットワーク上の各スピーカに調達されるようにするために用いられても良い。ゼロコンフィギュレーションネットワーキングは、手動のオペレータ介入又は専用構成サーバを有しないで使用可能なIPネットワークを自動的に生成する処理の一例である。他の同様の技術が用いられても良い。知的ネットワークシステムが与えられると、複数のソースは、スピーカとしてIPネットワーク上に存在しても良い。これは、複数のソースが、「マスタ」オーディオソース(例えば、伝統的なA/V受信機)を通じて音をルーティングすることなく、スピーカを直接駆動できるようにする。別のソースがスピーカをアドレス指定しようとする場合、どのソースが現在「アクティブ」であるか、アクティブであることが必要か否か、及び制御を新しい音源に移すことができるか否か、を決定するために、通信は全てのソース間で実行される。ソースは、それらの分類に基づき製造中に優先度を予め割り当てられても良い。例えば、通信ソースは、娯楽ソースより高い優先度を有しても良い。標準的な家庭環境のような複数の部屋の環境では、環境全体の中の全てのスピーカは、単一のネットワーク上に存在しても良いが、同時にアドレスされる必要はない。セットアップ及び自動構成中、相互接続1008を介して戻される音レベルは、どのスピーカが同じ物理空間内に配置されているかを決定するために用いることができる。この情報が決定されると、スピーカはクラスタにグループ化されても良い。この例では、クラスタIDが割り当てられ、ドライバ定義の部分を成す。クラスタIDは、各スピーカに送られる。各クラスタは、音源1002により同時にアドレスされ得る。
【0063】
図10に示すように、任意的なパワー信号は、双方向相互接続を介して送信できる。スピーカは、パッシブ(音源からの外部電力を必要とする)又はアクティブ(電気コンセントからの電力を必要とする)であっても良い。スピーカシステムが無線サポートを有しないアクティブスピーカを有する場合、スピーカへの入力は、IEEE802.3に準拠した有線Ethernet(登録商標)入力を有する。スピーカシステムが無線サポートを有するアクティブスピーカを有する場合、スピーカへの入力は、IEEE802.3に準拠した無線Ethernet(登録商標)入力、又は代替でWISA組織により策定された無線規格を有する。パッシブスピーカは、音源により直接提供される適切な電力信号により供給されても良い。
【0064】
<システム構成及び較正>
図4Cに示すように、適応型オーディオシステムの機能は、較正機能462を有する。この機能は、
図10に示されるマイクロフォン1007及び相互接続1008リンクにより有効にされる。システム100の中のマイクロフォンコンポーネントの機能は、全体的なシステム応答を得るために、聴取環境内の個々のドライバの応答を測定することである。複数のマイクロフォントポロジは、この目的のために用いることができ、単一のマイクロフォン又はマイクロフォンのアレイを含む。最も単純な例は、聴取環境の中心に位置付けられた単一の全方向性測定マイクロフォンが、各ドライバの応答を測定するために用いられる場合である。聴取環境及び再生条件が更に精細な分析を保証する場合、代わりに複数のマイクロフォンを用いることができる。複数のマイクロフォンにとって最も都合の良い場所は、聴取環境内で用いられる特定のスピーカ構成の物理的スピーカキャビネット内である。各筐体内に設置されたマイクロフォンは、システムが聴取環境内の複数の位置で各ドライバの応答を測定できるようにする。このトポロジの代替は、聴取環境内のリスナの位置に大体位置付けられた複数の全方向性測定マイクロフォンを用いることである。
【0065】
マイクロフォンは、レンダラ及び後処理アルゴリズムの自動構成及び較正を有効にするために用いられる。適応型オーディオシステムでは、レンダラは、1又は複数の物理スピーカ内で、ハイブリッドオブジェクト及びチャネルに基づくオーディオストリームを、特定のアドレス可能ドライバのために設計された個々のオーディオ信号に変換する。後処理コンポーネントは、遅延、等化、利得、スピーカ仮想化、及びアップミキシングを有しても良い。スピーカ構成は、オーディオコンテンツの最適な再生を提供するために、レンダラコンポーネントがハイブリッドオブジェクト及びチャネルに基づくオーディオストリームを個々のドライバ毎オーディオ信号に変換するために用いることができる、重要情報を表す場合が多い。システム構成情報は、(1)システム内の物理スピーカの数、(2)各スピーカ内の個々のアドレス可能なドライバの数、(3)聴取環境形状に対する、各個々にアドレス可能なドライバの位置及び方向、を有する。他の特性も可能である。
図11は、一実施形態における自動構成及びシステム較正コンポーネントの機能を示す。
図1100に示すように、1又は複数のマイクロフォンのアレイ1102は、構成及び較正コンポーネント1104に音響情報を提供する。この音響情報は、聴取環境の特定の関連特性をキャプチャする。次に、構成及び較正コンポーネント1104は、この情報をレンダラ1106及び任意の関連後処理コンポーネント1108に供給し、最終的にスピーカへ送られるオーディオ信号が聴取環境のために調整され最適化されるようにする。
【0066】
システム内の物理スピーカの数及び各スピーカ内の個々にアドレス可能なドライバの数は、物理的スピーカ特性である。これらの特性は、スピーカから双方向相互接続456を介してレンダラ454へ直接送信される。レンダラ及びスピーカは、共通発見プロトコルを用いる。したがって、スピーカが接続される又はシステムから切断されるとき、レンダラは変化を通知され、相応してシステムを再構成できる。
【0067】
聴取環境のジオメトリ(大きさ及び形状)は、構成及び較正処理において必要な情報項目である。ジオメトリは、多数の異なる方法で決定できる。手動較正モードでは、聴取環境の最小境界立方体(bounding cube)の幅、長さ及び高さは、レンダラ又は適応型オーディオシステム内の他の処理ユニットへの入力を提供するユーザインタフェースを通じてリスナ又は技師によりシステムに入力される。種々の異なるユーザインタフェース技術及びツールがこの目的のための用いられても良い。例えば、聴取環境ジオメトリは、聴取環境のジオメトリを自動的にマッピング又はトレースするプログラムによりレンダラへ送信され得る。このようなシステムは、コンピュータビジョン、ソナー、及び3Dレーザに基づく物理的マッピングの組合せを用いても良い。
【0068】
レンダラは、聴取環境ジオメトリ内のスピーカの位置を用いて、直接及び反射(アップワードファイアリング)ドライバの両者を含む各個々にアドレス可能なドライバのオーディオ信号を引き出す。直接ドライバは、それらの拡散パターンの大部分が、(床、壁又は天井のような)1又は複数の反射面により拡散される前に、聴取位置と交差するよう意図されたドライバである。反射ドライバは、それらの拡散パターンの大部分が、
図6に示したような聴取位置と交差する前に、反射されるよう意図されたドライバである。システムが手動構成モードである場合、各直接ドライバの3D座標は、UIを通じてシステムに入力されても良い。反射ドライバでは、一次反射の3D座標がUIに入力される。レーザ又は類似の技術は、聴取環境の面上に拡散ドライバの拡散パターンを視覚化するために用いられても良い。したがって、3D座標が測定でき、システムに手動で入力できる。
【0069】
ドライバ位置及び照準は、通常、手動又は自動技術を用いて実行される。幾つかの例では、慣性センサは、各スピーカに組み込まれても良い。このモードでは、中央スピーカは、「マスタ」として設計され、そのコンパス測定は、基準として考えられる。次に、他のスピーカは、それらの個々にアドレス可能なドライバの各々の拡散パターン及びコンパス位置を送信する。聴取環境ジオメトリと結合して、中央スピーカの基準角と各追加ドライバとの間の差分は、ドライバが直接又は反射であるかをシステムが自動的に決定するのに十分な情報を提供する。
【0070】
スピーカ位置構成は、3D位置(つまり、Ambisonic)マイクロフォンが用いられる場合、完全に自動化されても良い。このモードでは、システムは、各ドライバへテスト信号を送信し、応答を記録する。マイクロフォン種類に依存して、信号は、x、y、z表現に変換される必要があっても良い。これらの信号は、主要な最初の到来のx、y、z成分を見付けるために分析される。聴取環境ジオメトリと結合して、これは、通常、全てのスピーカ位置の3D座標、直接又は反射をシステムが自動的に設定するのに十分な情報を提供する。聴取環境ジオメトリに依存して、スピーカ座標を構成する3つの記載の方法のハイブリッドな組合せは、1つのみの技術を単独で用いるよりも一層効率的であり得る。
【0071】
スピーカ構成情報は、レンダラを構成するために必要な1つの成分である。スピーカ較正情報も、後処理チェーン、つまり遅延、等化、及び利得を構成するために必要である。
図12は、一実施形態における、単一マイクロフォンを用いる自動スピーカ較正を実行する処理ステップを示すフローチャートである。このモードでは、遅延、等化及び利得は、聴取環境の中央に置かれた単一の全方位測定マイクロフォンを用いてシステムにより自動的に計算される。
図1200に示すように、処理は、ブロック1202で、各単一のドライバ単独の部屋インパルス応答を測定することにより開始する。次に、ブロック1204で、各ドライバの遅延は、直接キャプチャされる電気インパルス応答を有する(マイクロフォンによりキャプチャされる)音響インパルス応答の相互相関のピークのオフセットを見付けることにより計算される。ブロック1206で、計算された遅延は、直接キャプチャされた(基準)インパルス応答に適用される。次に、ブロック1208で、処理は、広帯域及び帯域毎利得値を決定する。広帯域及び帯域毎利得値は、測定されたインパルス応答に適用されると、測定されたインパルス応答と直接キャプチャされた(基準)インパルス応答との間の最小差分を生じる。これは、測定された及び基準インパルス応答の窓関数を掛けたFFTを行い、2つの信号間のビン毎の大きさの比を計算し、ビン毎の大きさの比にメジアンフィルタを提供し、1つの帯域内に完全に含まれるビンの全部について利得を平均化することにより帯域毎の利得値を計算し、全ての帯域毎利得の平均を取ることにより広帯域利得を計算し、帯域毎利得から広帯域利得を減算し、狭い部屋のX曲線(2kHzより上の−2dB/オクターブ)を適用することにより、行うことができる。ブロック1208で利得値が決定されると、処理は、ブロック1210で、最小遅延を他者から減算することにより、システム内の少なくとも1つのドライバが常にゼロ追加遅延を有するように、最終遅延値を決定する。
【0072】
複数のマイクロフォンを用いる自動較正の例では、遅延、等化、及び利得は、複数の全方向性測定マイクロフォンを用いてシステムにより自動的に計算される。処理は、単一のマイクロフォン技術と実質的に同じであり、マイクロフォンの各々について繰り返され、結果が平均化されることを受け入れる。
【0073】
<代替アプリケーション>
聴取環境又は劇場全体に適応型オーディオシステムを実装する代わりに、テレビジョン、コンピュータ、ゲーム端末、又は類似の装置のような、より局所的なアプリケーション内で適応型オーディオシステムの態様を実装することも可能である。この例は、事実上、閲覧スクリーン又はモニタ表面に対応する平坦な面内に配列されるスピーカに依る。
図13は、例示的なテレビジョン及びサウンドバー使用例における適応型オーディオシステムの使用を示す。概して、テレビジョン使用例は、空間分解能の点で制限され得る(つまり、サラウンド又はバックスピーカを有しない)、削減される場合の多い機器(TV、スピーカ、サウンドバースピーカ、等)品質及びスピーカ位置/構成に基づく没入型オーディオ経験を生成することの挑戦を提供する。
図13のシステム1300は、標準的なテレビジョンの左及び右位置(TV−L及びTV−R)並びに左及び右アップワードファイアリングドライバ(TV−LH及びTV−RH)にあるスピーカを有する。テレビジョン1302は、サウンドバー1304又はある種のハイトアレイのスピーカも有しても良い。通常、テレビジョンスピーカのサイズ及び品質は、単独の又はホームシアタースピーカと比べて、コスト制約及び設計選択により削減される。しかしながら、動的仮想化の使用は、これらの欠点を克服するのを助ける。
図13で、動的仮想化効果は、TV−L及びTV−Rスピーカについて示される。したがって、特定の聴取環境1308内にいる人々は、水平面内で個々にレンダリングされる適切なオーディオオブジェクトに関連する水平要素を聞くだろう。さらに、適切なオーディオオブジェクトに関連するハイト要素は、LH及びRHドライバにより送信される反射オーディオを通じて正しくレンダリングされる。テレビジョンL及びRスピーカにおけるステレオ仮想化の使用は、可能な没入型動的スピーカ仮想化ユーザ経験が適応型オーディオコンテンツにより提供されるオブジェクト空間情報に基づくスピーカ仮想化アルゴリズムパラメータの動的制御を通じて可能であるL及びRホームシアタースピーカと同様である。この動的仮想化は、聴取環境の側面に沿って移動するオブジェクトの知覚を生成するために用いられても良い。
【0074】
テレビジョン環境は、サウンドバー1304内に示すようなHRCスピーカも有しても良い。このようなHRCスピーカは、HRCアレイを通じてパニングを可能にするステアリング可能なユニットであっても良い。スクリーン上のビデオオブジェクトの動きに適合するアレイを通じたオーディオオブジェクトの離散的パンを可能にする個々にアドレス可能なスピーカを有するフロントファイアリング中央チャネルアレイを有することにより、(特により大きなスクリーンで)有利である。このスピーカは、サイドファイアリングスピーカを有するとして示される。これらは、スピーカがサウンドバーとして用いられる場合に起動され使用され得る。したがって、サイドファイアリングドライバは、サラウンド又はバックスピーカの欠如によるより多くの没入を提供する。動的仮想化の概念は、HEC/サウンドバースピーカについて示される。動的仮想化は、フロントファイアリングスピーカアレイの最遠側面にあるL及びRスピーカについて示される。再び、これは、聴取環境の側面に沿って移動するオブジェクトの知覚を生成するために用いられても良い。この変更された中央スピーカは、より多くのスピーカを有し、別個に制御される音ゾーンを有するステアリング可能なサウンドビームを実装し得る。
図13の例示的実装にも示されるように、NFEスピーカ1306は主聴取位置1308の前に置かれる。NFEスピーカの包含は、聴取環境の前から離れリスナに近付くよう音を移動することにより、適応型オーディオシステムにより提供される更なる没入を提供し得る。
【0075】
ヘッドフォンレンダリングに対して、適応型オーディオシステムは、HRTFを空間位置に適合することによりクリエイタの元の意図を維持する。オーディオがヘッドフォンにより再現されるとき、バイノーラル空間仮想化は、頭部伝達関数(Head Related Transfer Function:HRTF)の適用により達成できる。HRTFは、オーディオを処理し、標準的なステレオヘッドフォンを介してではなく三次元空間で再生されているオーディオの知覚を生成する知覚キューを追加する。空間再現の精度は、レンダリングされているオーディオチャネル又はオブジェクトの空間位置を含む幾つかの要因に基づき変化し得る適切なHRTFの選択に依存する。適応型オーディオシステムにより提供される空間情報の使用は、再現経験を大幅に向上するために3D空間を表現する1つの又は連続的に変化する数のHRTFの選択をもたらし得る。
【0076】
システムは、誘導三次元バイノーラルレンダリング及び仮想化を追加するのも助ける。空間レンダリングと同様に、新しい変更されたスピーカ種類及び位置を用いると、三次元HRTFの使用を通じて、水平面及び垂直軸の両方から来るオーディオの音をシミュレートするためのキューを生成することが可能である。チャネル及び固定スピーカ位置情報レンダリングのみを提供する前のオーディオフォーマットは、更に限定されている。適応型オーディオフォーマット情報により、バイノーラル三次元レンダリングヘッドフォンシステムは、オーディオのどの要素が水平及び垂直面の両方でレンダリングするのに適切かを指示するために用いることができる詳細且つ有用な情報を有する。特定のコンテンツは、より大きな包み込みの感覚を提供するために、頭上スピーカの使用に頼っても良い。これらのオーディオオブジェクト及び情報は、ヘッドフォンを使用するときリスナの頭上にあると知覚されるバイノーラルレンダリングのために用いることができる。
図14は、一実施形態における、適応型オーディオシステムで使用する3次元バイノーラルヘッドフォン仮想化経験の簡略表現を示す。
図14に示すように、適応型オーディオシステムからのオーディオを再現するために使用されるヘッドフォンセット1402は、標準的なx、y平面内の並びにz平面内のオーディオ信号1404を有する。したがって、特定のオーディオオブジェクト又は音に関連するハイトは、それらがx、y起源の音の上又は下から出ているかのうように再生される。
【0077】
<メタデータ定義>
一実施形態では、適応型オーディオシステムは、元の空間オーディオフォーマットからメタデータを生成するコンポーネントを有する。システム300の方法及びコンポーネントは、従来のチャネルに基づくオーディオ要素及びオーディオオブジェクト符号化要素の両方を含む1又は複数のビットストリームを処理するよう構成されるオーディオレンダリングシステムを有する。オーディオオブジェクト符号化要素を含む新しい拡張層が定められ、チャネルに基づくオーディオコーデックビットストリーム又はオーディオオブジェクトビットストリームのうちの1つに追加される。このアプローチは、既存のスピーカ及びドライバ設計又は個々にアドレス可能なドライバ及びドライバ定義を利用する次世代スピーカと一緒に使用するために、拡張層を含むビットストリームがレンダラにより処理できるようにする。空間オーディオプロセッサからの空間オーディオコンテンツは、オーディオオブジェクト、チャネル、及び位置メタデータを有する。オブジェクトは、レンダリングされるとき、位置メタデータ及び再生スピーカの位置に従って1又は複数のスピーカを割り当てられる。追加メタデータは、再生位置を変更するために、或いは再生のために使用されるべきスピーカを限定するために、オブジェクトに関連付けられても良い。メタデータは、空間パラメータ(例えば、位置、速度、強度、音質、等)を制御し並びに聴取環境内のどのドライバ若しくはスピーカが公開中に個々の音を再生するかを指定するレンダリングキューを提供するための技師のミキシング入力に応答して、オーディオワークステーション内で生成される。メタデータは、空間オーディオプロセッサによるパッケージング及び転送のためにワークステーションにおいて個々のオーディオデータに関連付けられる。
【0078】
図15は、一実施形態における、聴取環境のための適応型オーディオシステムで使用する特定のメタデータ定義を示すテーブルである。テーブル1500に示す用に、メタデータ定義は、オーディオコンテンツ種類、ドライバ定義(数、特性、位置、発射角)、アクティブステアリング/チューニングのための制御信号、及び部屋及びスピーカ情報を含む較正情報、を有する。
【0079】
<特徴及び能力>
上述のように、適応型オーディオエコシステムは、コンテンツクリエイタがミックスの空間的意図(位置、大きさ、速度、等)をメタデータによりビットストリーム内に埋め込むことを可能にする。これは、オーディオの空間的再現における驚くべき量の柔軟性を可能にする。空間レンダリングの観点から、適応型オーディオフォーマットは、オーサリングシステムと同一でない再生システムのジオメトリにより引き起こされる空間的歪みを回避するために、コンテンツクリエイタが聴取環境内のスピーカの正確な位置にミックスを適応できるようにする。スピーカチャネルのオーディオのみが送信される現在のオーディオ再現システムでは、固定スピーカ位置以外の聴取環境内の位置について、コンテンツクリエイタの意図は不明である。現在のチャネル/スピーカの枠組みでは、分かっている情報は、特定のオーディオチャネルが聴取環境内の所定の位置を有する特定のスピーカへ送信されるべきであることのみである。適応型オーディオシステムでは、生成及び分配パイプラインを通じて伝達されるメタデータを用いて、再現システムは、コンテンツクリエイタの元の意図に合致するようにコンテンツを再現するためにこの情報を使用できる。例えば、異なるオーディオオブジェクトについて、スピーカ間の関係が分かっている。オーディオオブジェクトの空間位置を提供することにより、コンテンツクリエイタの意図が分かり、これは、スピーカの位置を含むスピーカ構成にマッピングできる。動的レンダリングオーディオレンダリングシステムにより、このレンダリングは、追加スピーカを追加することにより更新され向上できる。
【0080】
システムは、誘導三次元バイノーラルレンダリングを追加するのも可能にする。新しいスピーカ設計及び構成の使用を通じて、一層の没入型オーディオレンダリング経験を生成する多くの試みがなされている。これらは、バイポール及びダイポールスピーカ、サイドファイアリング、リアファイアリング及びアップワードファイアリングドライバの使用を含む。前のチャネル及び固定スピーカ位置システムでは、オーディオのどの要素がこれらの変更されたスピーカへ送信されるべきかの決定は、比較的困難である。適応型オーディオフォーマットを用いると、レンダリングシステムは、オーディオのどの要素が新しいスピーカ構成へ送信されるのに適するかの詳細且つ有用な情報を有する。つまり、システムは、どのオーディオ信号がフロントファイアリングドライバへ送信されるべきか、及びどれがアップワードファイアリングドライバへ送信されるべきかについての制御を可能にする。例えば、適応型オーディオ映画コンテンツは、一層大きな包み込みの感覚を提供するために、頭上スピーカの使用に大いに依存する。これらのオーディオオブジェクト及び情報は、同様の効果を生成するよう聴取環境内の反射オーディオを提供するために、アップワードファイアリングドライバへ送信されても良い。
【0081】
システムは、再現システムの正確なハードウェア構成にミックスを適応するのも可能にする。テレビジョン、ホームシアター、サウンドバー、ポータブル音楽プレイヤドック、等のような、レンダリン機器における多くの異なる可能なスピーカ種類及び構成が存在する。これらのシステムがチャネル固有オーディオ情報(つまり、左及び右チャネル、又は標準的な多チャネルオーディオ)を送信するとき、システムは、レンダリング機器の能力に適切に適合するためにオーディオを処理しなければならない。標準的な例は、標準的なステレオ(左、右)オーディオが2以上のスピーカを有するサウンドバーへ送信されるときである。スピーカチャネルのオーディオのみが送信される現在のオーディオシステムでは、コンテンツクリエイタの意図は不明であり、場合によっては拡張機器により可能になる一層の没入型オーディオ経験は、ハードウェアでの再現のためにオーディオをどのように変更するかを推測するアルゴリズムにより生成されなければならない。これの一例は、チャネルに基づくオーディオを元のチャネルフィード数より多いスピーカに「アップミックス」するためにPLII、PLII−z、又は次世代サラウンドを使用することである。適応型オーディオシステムでは、生成及び分配パイプライン全体を通して伝達されるメタデータを用いて、再現システムは、コンテンツクリエイタの元の意図により厳密に合致するようにコンテンツを再現するためにこの情報を使用できる。例えば、幾つかのサウンドバーは、包み込みの感覚を生成するためにサイドファイアリングスピーカを有する。適応型オーディオでは、空間情報及びコンテンツ種類情報(つまり、会話、音楽、環境効果、等)は、適切なオーディオのみをこれらのサイドファイアリングスピーカへ送信するようTV又はA/V受信機のようなレンダリングシステムにより制御されるとき、サウンドバーにより使用できる。
【0082】
適応型オーディオにより伝達される空間情報は、スピーカの存在の位置及び種類を意識したコンテンツの動的レンダリングを可能にする。さらに、1又は複数のリスナのオーディオ再現機器に対する関係についての情報は、いまや潜在的に利用可能であり、レンダリングで使用できる。殆どのゲーム端末は、聴取環境内の人の位置及び同一性を決定できるカメラ付属物及び知的画像処理を有する。この情報は、リスナの位置に基づきコンテンツクリエイタの創造的意図を一層正確に伝達するようレンダリングを変更するために、適応型オーディオシステムにより使用されても良い。例えば、殆ど全ての場合に、再生のためにレンダリングされるオーディオは、多くの場合各スピーカから等距離であり且つコンテンツ作成中にサウンドミキサが居たのと同じ位置である理想的な「スイートスポット」にリスナが位置すると想定する。しかしながら、多くの場合、人々がこの理想的な位置に存在せず、彼らの経験はミキサの創造的意図に合致しない。標準的な例は、リスナが椅子又はソファの上で聴取環境の左側に座っているときである。この例では、左にあるより近いスピーカから再現されている音は、より大きく、オーディオミックスの空間的知覚が左に歪んで知覚されるだろう。リスナの位置を理解することにより、システムは、オーディオミックスのバランスを取り戻し知覚的に正しくするために、左スピーカで音レベルを下げ且つ右スピーカで音レベルを上げるよう、オーディオのレンダリングを調整し得る。スイートスポットからリスナまでの距離を補償するためにオーディオを遅延することも可能である。リスナ位置は、カメラ、又はリスナ位置をレンダリングシステムにシグナリングする組み込み式シグナリングを有する特定の変更されたリモートコントロールの使用を通じて検出される。
【0083】
標準的なスピーカ及びスピーカ位置の使用に加えて、聴取位置をアドレスするために、リスナ位置及びコンテンツに依存して変化する音場「ゾーン」を生成するようビームステアリング技術を用いることも可能である。オーディオビームフォーミングは、スピーカのアレイ(通常、8乃至16個の水平方向に間隔をあけられたスピーカ)を用い、及びステアリングサウンドビームを生成するために位相操作及び処理を用いる。ビームフォーミングスピーカアレイは、選択的処理により特定の音又はオブジェクトを特定の空間位置へ向けるために使用できる、オーディオが主として可聴であるオーディオゾーンの生成を可能にする。明らかな使用例は、会話増強後処理アルゴリズムを用いてサウンドトラック内の会話を処理し、そのオーディオオブジェクトを聴覚障害ユーザに直接向けることである。
【0084】
<行列符号化及び空間アップミキシング>
幾つかの例では、オーディオオブジェクトは、適応型オーディオコンテンツの所望の成分であっても良い。しかしながら、帯域幅の制限に基づき、チャネル/スピーカオーディオ及びオーディオオブジェクトの両方を送信できなくても良い。過去に、行列符号化は、所与の分配システムで可能なより多くのオーディオ情報を伝達するために使用されてきた。例えば、これは、多チャネルオーディオがサウンドミキサにより生成されたがフィルムフォーマットはステレオオーディオを提供するだけだった映画の初期における場合である。行列符号化は、多チャネルオーディオを2つのステレオチャネルに知的にダウンミックスするために使用された。これは、次に、ステレオオーディオから多チャネルミックスの厳密な近似を再生成するために特定のアルゴリズムにより処理された。同様に、オーディオオブジェクトを基本スピーカチャネルに知的にダウンミックスすること、並びに適応型オーディオメタデータ及び高機能な時間及び周波数に敏感な次世代サラウンドアルゴリズムを通じて、オブジェクトを抽出しそれらを適応型オーディオレンダリングシステムで正しく空間的にレンダリングすることが可能である。
【0085】
さらに、オーディオのための送信システム(例えば3G及び4G無線アプリケーション)の帯域幅制限があるとき、個々のオーディオオブジェクトと一緒に行列符号化された空間的に多様性のある多チャネルベッドを送信することから利益を得る。このような送信方法の1つの使用例は、2つの異なるオーディオベッド及び複数のオーディオオブジェクトを有するスポーツ放送の送信である。オーディオベッドは、2つの異なるチームの屋外観覧席部分でキャプチャされた多チャネルオーディオを表し得る。オーディオオブジェクトは、一方の又は他方のチームに共感する異なるアナウンサーを表し得る。標準的な符号化を用い、2以上のオブジェクトと一緒の各ベッドの5.1表現は、送信システムの帯域制限を超過し得る。この例では、5.1ベッドの各々がステレオ信号に行列符号化された場合、元々5.1チャネルとしてキャプチャされた2つのベッドは、5.1+5.1+2又は12.1チャネルの代わりに、オーディオの4個のチャネルのみとして、2チャネルベッド1、2チャネルベッド2、オブジェクト1、及びオブジェクト2として送信され得る。
【0086】
<位置及びコンテンツ依存処理>
適応型オーディオエコシステムは、コンテンツクリエイタが、個々のオーディオオブジェクト生成し、再現システムへ伝達できるコンテンツに関する情報を追加することを可能にする。これは、再現の前にオーディオの処理において多くの柔軟性を可能にする。処理は、オブジェクト位置及び大きさに基づき、スピーカ仮想化の動的制御を通じて、オブジェクトの位置及び種類に適応され得る。スピーカ仮想化は、仮想スタイラスがリスナに知覚されるように、オーディオを処理する方法を表す。この方法は、多くの場合、ソースオーディオがサラウンドスピーカチャネルフィードを有する多チャネルオーディオであるとき、ステレオスピーカ再現のために用いられる。仮想スピーカ処理は、サラウンドスピーカチャネルオーディオを変更して、ステレオスピーカで再生されるとき、サラウンドオーディオ要素がリスナの横及び後ろに仮想化され、まるでそこに仮想スピーカが配置されているかのようにする。現在、サラウンドスピーカの意図される位置が固定されているので、仮想スピーカ位置の位置属性は静的である。しかしながら、適応型オーディオコンテンツでは、異なるオーディオオブジェクトの空間位置は、動的であり異なる(つまり、各オブジェクトに対してユニークである)。仮想スピーカ仮想化のような後処理は、各オブジェクトのスピーカ位置角度のようなパラメータを動的に制御し、次に幾つかの仮想化オブジェクトのレンダリングされた出力を結合してサウンドミキサの意図をより厳密に表現するより一層の没入型オーディオ経験を生成することにより、より一層情報に基づく方法で制御できる。
【0087】
オーディオオブジェクトの標準的な水平方向の仮想化に加えて、固定チャネル及び動的オブジェクトオーディオを処理し及びノーマル、水平面、位置にあるステレオスピーカの標準的な対からオーディオのハイト再現の知覚を得る知覚ハイトキューを用いることが可能である。
【0088】
特定の効果又は拡張処理は、適切な種類のオーディオコンテンツに慎重に適用できる。
【0089】
例えば、会話増強は、会話オブジェクトのみに適用されても良い。
会話増強は、会話の可聴性及び/又は明瞭度が増大され及び/又は向上されるような、会話を含むオーディオを処理する方法を表す。多くの例では、会話に適用されるオーディオ処理は、非会話オーディオコンテンツ(つまり、音楽、環境効果、等)には不適切であり、好ましくない可聴アーティファクトを生じ得る。適応型オーディオにより、オーディオオブジェクトは、コンテンツ片の中に会話のみを含み、相応してラベル付けできる。したがって、レンダリングソリューションは、会話コンテンツにのみ会話増強を選択的に適用し得る。さらに、オーディオオブジェクトが会話のみである場合(及び会話と多のコンテンツとの混合ではない、よくある場合)、会話増強処理は、もっぱら会話を処理できる(それにより、任意の多のコンテンツに対して実行される任意の処理を制限する)。
【0090】
同様に、オーディオ応答又は等化管理も、特定のオーディオ特性に合わせることができる。例えば、特定のオブジェクトを対象とするそれらの種類に基づく低音管理(フィルタリング、減衰、利得)である。低音管理は、特定のコンテンツ片の中の低音(又は低い)周波数のみを選択的に分離し処理することを表す。現在のオーディオシステム及び分配機構では、これは、全てのオーディオに適用される「ブラインド」処理である。適応型オーディオでは、低音管理が適切である特定のオーディオオブジェクトは、適切に適用されるレンダリング処理及びメタデータにより識別される。
【0091】
適応型オーディオシステムは、オブジェクトに基づくダイナミックレンジ圧縮も実現する。伝統的なオーディオトラックは、コンテンツ自体と同じ期間を有する。一方、オーディオオブジェクトは、コンテンツの中の限られた時間量の間、生じ得る。オブジェクトに関連付けられたメタデータは、その平均及びピーク信号振幅並びにその(特に、遷移素材の)開始若しくは立ち上がり時間に関するレベル関連情報を有しても良い。この情報は、コンプレッサがその圧縮及び時間制約(立ち上がり、リリース、等)をコンテンツに良好に適合するよう良好に適応することを可能にし得る。
【0092】
システムは、自動ラウドスピーカ−部屋等化を実現する。ラウドスピーカ及び聴取環境音響は、可聴彩色(coloration)を音に導入し、それにより再現される音の音質に影響を与えるのに重要な役割を果たす。さらに、音響は、聴取環境反射及びラウドスピーカ指向性変動により、並びにこの変動により知覚される音質が異なる聴取位置で有意に変化するために、位置に依存する。システム内に設けられるAutoEQ(automatic room equalization)機能は、自動ラウドスピーカ−部屋スペクトル測定及び等化、自動時間遅延補償(適正な画像及び場合によっては相対的スピーカ位置検出に基づく最小二乗を提供する)、及びレベル設定、ラウドスピーカ上部空間能力に基づく低音リダイレクト、並びにサブウーファーを有する主要ラウドスピーカの最適な継ぎ合わせを通じて、これらの問題の幾つかを軽減するのを助ける。ホームシアター又は他の聴取環境では、適応型オーディオシステムは次のような特定の追加機能を有する。(1)再生部屋−音響に基づく自動目標曲線計算(これは、家庭聴取環境における等化についての研究の公の問題である)、(2)時間−周波数分析を用いたモーダル減少制御の影響、(3)包み込み/広大さ/ソース幅/明瞭度を支配する測定から導出されるパラメータの理解、並びに最良の可能な聴取経験を提供するためのこれらの制御、(4)フロント及び「他の」ラウドスピーカの間の音質を整合するためのヘッドモデルを組み込む指向性フィルタリング、及び(5)リスナに対する離散的セットアップにおけるラウドスピーカの空間的位置の検出、及び空間再マッピング、である。ラウドスピーカ間の音質の不整合は、基本的に、フロント−アンカラウドスピーカ(例えば、センタ)とサラウンド/バック/ワイド/ハイトラウドスピーカとの間でパンされる特定のコンテンツについて明らかになる。
【0093】
概して、適応型オーディオシステムは、幾つかのオーディオ要素の再現される空間位置がスクリーン上の画像要素に合致する場合、特に家庭環境における大きなスクリーンサイズで、感動的なオーディオ/ビデオ再現経験を可能にする。一例は、映画又はテレビ番組中の会話を、スクリーン上で話している人又はキャラクタと空間的に一致させることである。通常のスピーカチャネルに基づくオーディオでは、スクリーン上の人又はキャラクタの位置と一致するよう、会話が空間的に位置付けられるべき場所を決定する容易な方法が存在しない。適応型オーディオシステムで利用可能なオーディオ情報により、この種のオーディオ/ビジュアル位置合わせは、従来より大きなサイズのスクリーンを特色とするホームシアターシステムにおいても、容易に達成され得る。視覚位置及びオーディオ空間位置合わせは、車、トラック、アニメーション、等のような非キャラクタ/会話オブジェクトにも使用され得る。
【0094】
適応型オーディオエコシステムは、コンテンツクリエイタが、個々のオーディオオブジェクト生成し、再現システムへ伝達できるコンテンツに関する情報を追加することを可能にすることにより、拡張コンテンツ管理も可能にする。これは、オーディオのコンテンツ管理における驚くべき量の柔軟性を可能にする。コンテンツ管理の観点から、適応型オーディオは、コンテンツファイルサイズを縮小する及び/又はダウンロード時間を削減するために会話オブジェクトを置換するだけで、オーディオコンテンツの言語を変更するような様々なことを可能にする。フィルム、テレビジョン、及び他の娯楽プログラムは、通常、国際的に分配される。これは、コンテンツ片の中の言語が、コンテンツが再現される場所に依存して変化されることを要求する(フランスで見られるフィルムではフランス語、ドイツで見られるTV番組ではドイツ語、等)。今日、これは、多くの場合、各言語毎に、完全に独立なオーディオサウンドトラックが生成され、パッケージされ、分配されることを必要とする。適応型オーディオシステム及びオーディオオブジェクト特有のコンセプトにより、コンテンツ片の会話は、独立なオーディオオブジェクトであり得る。これは、音楽、効果、等のようなオーディオサウンドトラックの他の要素を更新又は変更することなく、コンテンツの言語を容易に変更できるようにする。これは、外国言語にのみ適用されるのではなく、特定の聴衆にとって不適切な言語、目標広告、等にも適用される。
【0095】
本願明細書に記載のオーディオ環境の態様は、適切なスピーカ及び再生装置を通じたオーディオ又はオーディオ/ビジュアルコンテンツの再生を表し、映画館、コンサートホール、屋外劇場、家庭又は部屋、視聴室、車、ゲーム端末、ヘッドフォン若しくはヘッドセットシステム、場内放送(public address:PA)システム、又は任意の他の再生環境のような、リスナがキャプチャされたコンテンツの再生を経験する任意の環境を表しても良い。実施形態は、主に、空間オーディオコンテンツがテレビジョンコンテンツに関連付けられるホームシアター環境での例及び実装に関して記載されたが、実施形態は他のシステムでも実装され得ることに留意すべきである。オブジェクトに基づくオーディオ及びチャネルに基づくオーディオを有する空間オーディオコンテンツは、任意の関連するコンテンツ(関連するオーディオ、ビデオ、グラフィック、等)と関連して用いられても良く、或いは、スタンドアロンオーディオコンテンツを構成しても良い。再生環境は、ヘッドフォン又は近距離モニタから狭い若しくは広い部屋、車、野外アリーナ、コンサートホール、等まで、任意の適切な聴取環境であっても良い。
【0096】
本願明細書に記載のシステムの態様は、デジタル又はデジタル化されたオーディオファイルを処理する適切なコンピュータに基づくサウンド処理ネットワーク環境で実装されても良い。適応型オーディオシステムの部分は、コンピュータ間で送信されるデータのバッファリング及びルーティングを供する1又は複数のルータ(図示しない)を含む任意の所望の数の個々の機械を有する1又は複数のネットワークを有しても良い。このようなネットワークは、種々の異なるネットワークプロトコルに基づき構築されても良く、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)又はそれらの任意の組合せであっても良い。ネットワークがインターネットを有する一実施形態では、1又は複数の機械は、ウェブブラウザプログラムを通じてインターネットにアクセスするよう構成されても良い。
【0097】
コンポーネント、プロセス、又は他の機能的コンポーネントのうちの1又は複数は、システムのプロセッサに基づくコンピューティング装置の実行を制御するコンピュータプログラムを通じて実装されても良い。理解されるべきことに、本願明細書に記載の種々の機能は、ハードウェア、ファームウェアの任意の数の組合せを用いて、及び/又は種々の機械可読若しくはコンピュータ可読媒体に具現化されるデータ及び/又は命令として、それらの動作、レジスタ転送、ロジックコンポーネント、及び/又は他の特性の観点で記載され得る。このようなフォーマット化されたデータ及び/又は命令が具現化され得るコンピュータ可読媒体は、光、磁気又は半導体記憶媒体のような種々の形式の物理(非一時的)不揮発性記憶媒体を含むが、これらに限定されない。
【0098】
文脈上特に断らない限り、説明及び請求の範囲を通じて、語「有する(comprise、comprising)」等は、包含的意味であると見なされるべきであり、排他的若しくは網羅的意味ではなく、つまり「を含むが、限定されない」の意味である。単数又は複数の数を用いる語は、複数又は単数の数をそれぞれ含み得る。さらに、語「本願明細書で(herein)」、「以下では(hereunder)」、「上述の(above)」、「以下の(below)」、及び同様の意味の語は、本願を全体として表し、本願の任意の特定の部分を表すものではない。語「又は、若しくは(or)」が2以上の項目のリストを参照するのに用いられるとき、その語は、語の次の解釈のうちの全部を含む。リスト内の項目のうちの任意のもの、リスト内の項目のうちの全部、リスト内の項目の任意の組合せ。
【0099】
1又は複数の実装が例として及び特定の実施形態の観点から記載されたが、1まtの実装は開示の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。むしろ、当業者に明らかなように種々の変更及び同様の配置を包含することを意図する。したがって、添付の請求項の範囲は、このような変更及び同様の配置の全ての包含するよう広義に解釈することがふさわしい。
【0100】
[関連出願の参照]
本願は、米国仮特許出願番号61/695,893、出願日2012年8月31日の優先権の利益を主張する。該米国仮特許出願は参照されることにより本願明細書に組み込まれる。
【0101】
[関連出願]
本願明細書で言及される公報、特許、及び/又は特許出願は、参照により、各々個々の公報及び/又は特許出願が具体的に及び個々に参照により組み込まれるべきであると示されるように、それらの全体が本願明細書に組み込まれる。