(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のアンテナと、前記複数のアンテナに対応して設けられた複数の位相変移回路と、送信回路と受信回路と送受信回路とのいずれか1つと前記複数のアンテナ及び前記複数の位相変移回路を結合する結合回路とを有する放射方向可変アンテナ回路を備え、
前記複数の位相変移回路の各々は、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の前記伝達関数転写回路と、
前記位相変移回路の入力端子と出力端子と基準端子との何れかの2端子を含む電流路に、前記伝達関数転写回路の前記第2入力端子と出力端子と増幅減衰利得制御端子を有する可変増幅減衰回路とを備える連動制御型位相変移回路。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
図1は、実施例1の伝達関数転写回路の構成を示す図である。実施例1の伝達関数転写回路は、1つの伝達信号発現回路により発現される伝達関数に比例する伝達信号を、複数の転写先回路に分配転写することにより、リアクタンス素子等の外付け部品の個数を削減することを特徴とする。
【0012】
図1に示す伝達関数転写回路1は、第1入力信号e2を入力する第1入力端子T2と、第1入力端子T2に供給される第1入力信号e2に含まれる周波数成分を少なくとも含む第2入力信号e3を入力する第2入力端子T3と、出力信号e4を出力する出力端子T4とを備える。
【0013】
また、伝達関数転写回路1は、基準信号生成回路5と係数信号合成回路6と伝達信号発現回路7と伝達信号中継回路8と伝達信号合成回路9とを備える。
【0014】
基準信号生成回路5は、第1入力端子T2から端子T5−1に供給される第1入力信号e2(信号e5−1)に基準信号生成処理を施し、端子T5−2から第1基準信号端子T20に第1基準信号e20(信号e5−2)を出力し、端子T5−3から第2基準信号端子T24に第1入力信号e2に比例する第2基準信号e24(信号e5−3)を出力する。
【0015】
係数信号合成回路6は、第2入力端子T3から端子T6−1に供給される第2入力信号e3(信号e6−1)を、端子T20から供給する第1基準信号e20により除算処理(係数信号発現処理)し、得られた係数信号e21(信号e6−3)を端子T6−3から係数信号端子T21に出力する。
【0016】
伝達信号発現回路7は、第2基準信号端子T24から端子T7−1に供給される第2基準信号e24(信号e7−1)に、伝達関数μr(ω)なる伝達信号処理を施し、得られた伝達信号e25(信号e7−2)を出力端子T7−2から伝達信号端子T25に出力する。伝達信号発現回路7は、基因回路又は変換対象回路とも言う。
【0017】
伝達信号中継回路8は、伝達信号端子T25から端子T8−1に供給される伝達信号e25(信号e8−1)に、伝達信号中継処理を施し、得られた中継信号e22(信号e8−2)を、端子T8−2から中継信号端子T22に出力する。
【0018】
伝達信号合成回路9は、係数信号端子T21から端子T9−1に供給する係数信号e21(信号e9−1)と、中継信号端子T22から端子T9−2に供給される中継信号e22(信号e9−2)とに伝達信号合成処理を施し、得られた転写信号e4(信号e9−3)を端子T9−3から出力端子T4に出力する。
【0019】
より具体的には、基準信号生成回路5は、端子T2から端子T5a−1に供給される信号e2(信号e5a−1)に信号分配処理を施し、端子T5a−2から端子T20に第1基準信号e20(信号e5a−2)を分配出力し、端子T5a−3から端子T24に第2基準信号e24(信号e5a−3)を分配出力する信号分配回路5aを有する。
【0020】
係数信号合成回路6は、端子T3から端子T6a−1に供給される信号e3(信号e6a−1)を、端子T20から端子T6a−2に供給する信号e20(信号e6a−2)により除算処理し、得られた信号e21(信号e6a−3)を端子T6a−3から端子T21に出力する除算回路6aを有する。
【0021】
伝達信号発現回路7は、端子T24から端子T7−1に供給する信号e24に、伝達関数μr(ω)なる信号伝達処理を施し、得られた信号e25を端子T7−2から端子T25に出力する回路であり、任意に与えられる伝達関数μr(ω)を有する回路である。
【0022】
伝達信号中継回路8は、端子T25から端子T8−1に供給された信号e25を、端子T8−2から端子T22に出力する。即ち、この場合には、伝達信号中継回路8の入力端子T8−1と出力端子T8−2とは、直結回路からなる。
【0023】
伝達関数信号合成回路9は、端子T21から端子T9a−1に供給される信号e21と、端子T22から端子T9a−2に供給された信号e22とに乗算処理を施し、得られた信号e4を端子T9a−3から出力端子T4に出力する。
【0024】
なお、
図1に示す端子T2と信号源esとの間に接続されている外部回路E1と、端子T3と信号源esとの間に接続されている外部回路E2とは、それぞれ任意に与えられる回路である。
【0025】
次に、このように構成される実施例1に係る伝達関数転写回路1の動作を
図1を参照しながら説明する。
【0026】
除算回路6aは、端子T6a−1に供給される信号e3を、端子T20から端子T6a−2に供給される信号e2(信号e20)により除算処理する。このため、得られた信号e21は、e3/e2となる。
【0027】
また、信号e25は、伝達関数発現回路7の伝達関数μrに依存し、伝達関数μrと信号e2との積となる。従って、信号e3と信号e4の関係は次式で与えられる。
【0028】
数式(1)における信号e3に対する信号e4(転写信号e4)の比は、等価的な伝達関数が伝達信号発現回路7の伝達関数μr(ω)と等しくなることを意味する。この現象は伝達関数μr(ω)が転写されていると見做すことができる。
【0029】
このように実施例1の伝達関数転写回路1は、1つの伝達信号発現回路7により発現される伝達関数に比例する伝達信号を、複数の転写先回路に分配転写することにより、リアクタンス素子等の外付け部品の個数を削減することができる。
【0030】
(実施例2)
図2は、実施例2の伝達関数転写回路の構成を示す図である。実施例2の伝達関数転写回路1は、実施例1の除算回路6aの割算回路の対応ダイナミックレンジの幅を狭くすることを特徴とする。
【0031】
このため、実施例2の基準信号生成回路5−1は、
図1に示す信号分配回路5aの代わりに、逆数処理を施す除算回路5dを設けている。また、信号係数合成回路6−1は、除算回路6aの代わりに、乗算回路6bと低域濾波回路6cとを設けている。
【0032】
図2に示す伝達関数転写回路は、基準信号生成回路5−1、信号係数合成回路6−1を除いて、
図1に示す伝達関数転写回路1の構成と同じである。ここでは、基準信号生成回路5−1、信号係数合成回路6−1のみを説明する。
【0033】
基準信号生成回路5−1は、信号分配回路5bと基準信号出力回路5cと除算回路5dとを備える。信号分配回路5bは、端子T5−1から端子T5b−1に供給された信号e5b−1に、信号分配処理を施し、端子T5b−2から端子T5d−2に信号e5b−2を分配出力し、端子T5b−3から端子T5−3を介して端子T24に信号e5b−3(信号e24)を分配出力する。
【0034】
基準信号出力回路5cは、基準振幅信号enを生成し端子T5c−1から端子T5d−1に出力する。除算回路5dは、端子T5c−1から端子T5d−1に供給される信号enを、端子T5b−2から端子T5d−2に供給される信号e5b−2により、除算処理し、得られた信号e5d−3(信号e20)を端子T5d−3から端子T5−2を介して端子T20に出力する。
【0035】
信号係数合成回路6−1は、乗算回路6bと低域濾波回路6cとを備える。乗算回路6bは、端子T6−1から端子T6b−1に供給された信号e6−1(信号e3)と、端子T20から端子T6−2を介して端子T6b−2に供給された信号e20とに乗算処理を施し、得られた信号e6b−3を端子T6b−3から端子T6c−1に出力する。
【0036】
低域濾波回路6cは、端子T6b−3から端子T6c−1に供給された信号e6b−3に低域濾波処理を施し、得られた信号e6c−2(信号e21)を端子T6c−2から端子T6−3を介して、端子T21に出力する。
【0037】
次に、このように構成された実施例2に係る伝達関数転写回路の動作を
図2を参照しながら説明する。
【0038】
端子T6b−2に供給される信号e20は、信号enを信号e2で除した商信号“en/e2”で与えられる。また、端子T6−3(端子T21)に於ける信号e21は“e3×en/e2”で与えられので、信号e4は次式で与えられる。
【0039】
数式(2)における信号e3に対する信号e4の比は、等価的な伝達関数が、伝達信号発現回路7の伝達関数μr(ω)と、基準信号出力回路5cの出力信号enとの積に等しくなることを意味する。
【0040】
従って、基準信号enの値を、例えば、単位値に設定すれば、伝達関数が転写されることになる。また、低域濾波回路6cの挿入損失等も、基準信号enを適当に設定することにより補償することができる。
【0041】
図2に示す実施例2の除算回路5dのダイナミックレンジは、
図1に示す実施例1の除算回路6aに比べて、ダイナミックレンジを狭くする効果を期待できる。なぜなら、除算を行うべき一方の信号レベルenの値を、例えば、一定値に設定することが可能であるからである。
【0042】
(実施例3)
図3に示す実施例3の伝達関数転写回路1は、実施例2に係る基準信号生成回路5−1に代えて、基準信号生成回路5−2を設けたことを特徴とする。即ち、除算回路5dの代わりに、共役信号生成回路5hを設けることにより、高い周波数での性能劣化を改善することを特徴とする。
【0043】
実施例3の基準信号生成回路5−2は、基準信号出力回路5eと信号振幅基準化回路5f(AGC回路5fとも言う)と信号分配回路5gと共役信号生成回路5hとを備える。
【0044】
基準信号出力回路5eは、信号enを生成し端子T5e−1から端子T5f−2に出力する。信号振幅基準化回路5fは、端子T5−1から端子T5f−1に供給する信号e2(信号e5f−1)に対して、信号enに比例する信号e5f−3を端子T5f−3から端子T5g−1に出力する。
【0045】
信号分配回路5gは、信号e5g−1に、信号分配処理を施し、端子T5g−2から端子T5h−1に信号e5g−2を分配出力し、端子T5g−3から端子T5−3を介して端子T24に信号e5g−3(信号e24)を分配出力する。
【0046】
共役信号生成回路5hは、信号分配回路5gから供給される信号e5g−2の、互いに直交する2つの成分の一方の成分と、他方の成分の符号を反転した成分とを、互いに直交する成分とする信号を生成する処理(複素共軛信号生成処理とも呼ぶ)を施し、得られた信号e5h−2(信号e20)を端子T5h−2から端子T5−2を介して端子T20に出力する。
【0047】
なお、共役信号生成回路5hの変形回路を構成することもできる。この構成例は、実施例4に示す伝達関数転写回路1−1において、端子T2と端子T3とを直結した端子を、共役信号生成回路5hの端子T5h−1とし、更に、伝達信号発現回路7を削除し、端子T24と端子T25とを直結した回路構成における端子T4を共役信号生成回路5hの端子T5h−2としても良い。
【0048】
次にこのように構成された実施例3に係る伝達関数転写回路の動作を
図3を参照しながら説明する。
【0049】
共役信号生成回路5hから出力される信号e20は、直交成分の位相が反転されているので、enの複素共役値となり、係数信号合成回路6から出力される信号e21は、e3とenとの積となる。また、伝達信号中継回路8の信号e22は、伝達関数μrと信号enとの積となる。このため、信号e3に対する信号e4の比は、次式で与えられる。
【0050】
数式(3)における信号e3に対する信号e4の比は、等価的な伝達関数が、伝達信号発現回路7の伝達関数μr(ω)と、信号enの絶対値の二乗との積に等しくなることを意味する。従って、信号enを、例えば、その絶対値を単位値に設定すれば、伝達関数μr(ω)が転写されることになる。また、信号enの値は、低域濾波回路6fの挿入損失等の補償も含めて、等価的に絶対値|en|=1となるように、増幅減衰回路を具備しても良い。
【0051】
このように、
図3に示す実施例3の基準信号生成回路5−2は、
図2に示す実施例2の基準信号生成回路5−1に比べて、除算回路5dを、共役信号生成回路5hと信号振幅基準化回路5fとの組合せに置き換えることにより、容易に高い周波数に対応することができる。
【0052】
(実施例4)
図4に示す実施例4の伝達関数転写回路1−1は、実施例3の伝達関数転写回路1を構成する関連する電流路を流れる信号を、互いに直交する2つの成分であるA成分とB成分とに分けて信号処理を施すことを特徴とする。
【0053】
図4に示す実施例4の伝達関数転写回路1−1は、基準信号生成回路5−3と係数信号合成回路6−2と伝達信号発現回路7と伝達信号中継回路8−1と伝達信号合成回路9−1とを備える。
【0054】
基準信号生成回路5−3は、基準信号出力回路5jと信号振幅基準化回路5kと信号分配回路5mと直交分配回路5nとを備える。
【0055】
基準信号出力回路5jは、端子T5j−1から端子T5k−2に信号enを出力する。信号振幅基準化回路5kは、端子T2から端子T5−1を介して端子T5k−1に供給された信号e2に信号振幅基準化処理を施し、信号enに比例した信号e5k−3を端子T5k−3から信号分配回路5mの端子T5m−1に出力する。
【0056】
信号分配回路5mは、信号e5k−3に信号分配処理を施し、信号e5m−2を端子T5m−2から端子T5n−1に出力し、信号e5m−3(信号e24)を端子T5m−3から端子T5−3を介して端子T24に出力する。
【0057】
直交分配回路5nは、信号e5m−2に直交分配処理を施し、互いに直交する2つの信号e20Aと信号e20Bとの、例えば、一方の信号e20Aを端子T5n−2Aから端子T20Aに出力し、他方の信号e20Bを端子T5n−2Bから端子T20Bに出力する。
【0058】
直交分配回路5nは、信号分配回路5pと位相シフト回路5gとを備える。信号分配回路5pは、端子T5n−1から端子T5p−1に供給された信号e5p−1に信号分配処理を施し、信号e5p−2(信号e20A)を端子T5p−2から端子T5n−2Aを介して端子T5−2Aに分配出力し、信号e5p−3を端子T5p−3から端子T5g−1に分配出力する。
【0059】
位相シフト回路5gは、信号e5p−3に例えば“−90°”なる位相シフトを施し、得られた信号e5q−2(信号e20B)を端子T5g−2から端子T5n−2Bを介して端子T5−2Bに出力する。信号e20Aと信号e20Bとは、互いに直交関係にある信号である。
【0060】
係数信号合成回路6−2は、信号分配回路6fと乗算回路6gと乗算回路6hと低域濾過回路6iと低域濾過回路6jとを備える。
【0061】
信号分配回路6fは、端子T3から端子T6−1を介して端子T6f−1に供給された信号e3に信号分配処理を施し、信号e6f−2を端子T6f−2から端子T6g−1に出力し、信号e6f−3を端子T6f−3から端子T6h−1に出力する。
【0062】
乗算回路6gは、信号e6f−2と信号e6−2A(信号e20A)とに乗算処理を施し、得られた信号e6g−3を端子T6g−3から端子T6i−1に出力する。乗算回路6hは、信号e6f−3と信号e6−2B(信号e20B)とに乗算処理を施し、得られた信号e6h−3を端子T6h−3から端子T6j−1に出力する。
【0063】
低域濾過回路6iは、信号e6g−3に低域濾波処理を施し、得られた信号e6i−2を端子T6i−2から端子T6−3Aを介して端子T21Aに出力する。低域濾過回路6jは、信号e6h−3に低域濾波処理を施し、得られた信号e6j−2を端子T6j−2から端子T6−3Bを介して端子T21Bに出力する。
【0064】
低域濾過回路6iと、低域濾過回路6jと、の機能は必須であるが、これらの機能を、乗算回路6gと、乗算回路6hと、を構成する例えばトランジスタの入出力間の応答遅れ効果を利用することができる場合もある。この場合、2つの低域濾過回路6iと、低域濾過回路6jとは不要である。
【0065】
伝達信号中継回路8−1は、直交分配回路8aを備える。直交分配回路8aは、端子T25から端子T8−1を介して端子T8a−1に供給された信号e8−1に直交分配処理を施し、互いに直交する2つの信号e22Aと信号e22Bの、例えば、一方の信号e8−2A(信号e22A)を端子T8a−2Aから端子T8−2Aを介して端子T22Aに出力し、他方の信号e8−2B(信号e22B)を端子T8a−2Bから端子T8−2Bを介して端子T22Bに出力する。
【0066】
直交分配回路8aは、信号分配回路8bと位相シフト回路8cとを備える。信号分配回路8bは、端子T8a−1から端子T8b−1に供給された信号e8−1に信号分配処理を施し、信号e8b−2(信号e22A)を端子T8b−2から端子T8a−2Aを介して端子T8a−2Aに出力し、信号e8b−3を端子T8b−3から端子T8c−1に出力する。
【0067】
位相シフト回路8cは、信号e8b−3に例えば“+90°”なる位相シフトを施し、得られた信号e8c−2(信号e22B)を、端子T8c−2から端子T8a−2Bを介して端子T8−2Bに出力する。
【0068】
伝達信号合成回路9−1は、乗算回路9dと乗算回路9eと信号加減算回路9fとを備える。乗算回路9dは、信号e21A(信号e9d−1)と信号e22A(信号e9d−2)とに乗算処理を施し、得られた信号e9d−3を端子T9d−3から端子T9f−1に出力する。乗算回路9eは、信号e21B(信号e9e−1)と信号e22B(信号e9e−2)とに乗算処理を施し、得られた信号e9e−3を端子T9e−3から端子T9f−2に出力する。
【0069】
信号加減算回路9fは、信号e9d−3と信号e9e−3とに、加算処理又は減算処理の何れか一方の処理を施し、得られた信号e9f−3(信号e4)を端子T9f−3から端子T9−3を介して端子T4に出力する。
【0070】
加算処理又は減算処理は、位相シフト回路5gと位相シフト回路8cとの位相シフト量が、それぞれ“−90°”又は“+90°”の何れの符号を選択して設定されているか、及び、関連電流路に位相反転増幅回路等が含まれるか否かを考慮して選択するとよい。
【0071】
なお、図示していないが、必要に応じて、増幅減衰回路9gを、例えば、端子T9f−3と端子T4との間に配置するとよい。その目的は、信号加減算回路9fに加減算処理時に必要とする定数0.5の設定処理と、基準信号出力回路5jの出力振幅en(単位振幅を基準とする)の調整処理とを行うためである。
【0072】
これら2つの処理は、複数の増幅減衰処理の相乗処理があるので、増幅減衰回路9gの動作により、適性値に設定可能である。また、増幅減衰回路9gの機能は、伝達信号発現回路7の伝達処理の定数項等に組み入れることが可能である。その場合、増幅減衰回路9gを省略することもできる。
【0073】
次に、
図5を用いて、周波数10MHzの定常状態での時間領域の数値シミュレーション結果を説明する。伝達信号発現回路(変換対象回路)7は、コイル(10μH)とコンデンサ(25.330296pF)と抵抗(1Ω)との直列共振回路を構成する。その共振周波数は10MHzである。
図5に示す横軸は、時間であり、その範囲は、10μSから10.5μSである。縦軸は、電圧の瞬時値であり、細線Aが、第2入力端子T3の電圧、太線Bが出力端子T4の電圧である。
【0074】
また、第1入力端子T2に入力された信号e2と同じ周波数成分を含む信号e3を第2入力端子T3に供給する任意回路である外付回路E2として、10μHのコイルと1nFのコンデンサからなる低域濾波器を入出力インピーダンス1kΩの終端条件下で接続した。外付回路E1は直結回路とした。
【0075】
以下の2つのシミュレーション結果から、伝達信号発現回路7(変換対象回路)の伝達関数μr(ω)が転写されていることが確認できた。
【0076】
図5に示すように、第2入力端子T3に供給する周波数10MHzの正弦波信号に対する出力端子T4の信号の伝達比は、伝達信号発現回路7の入出力信号比μr(ω)に比例する正弦波信号が同相状態で発現されている。
【0077】
また、図示しないが、第1入力端子T2及び第2入力端子T3に供給する周波数を、9900kHzと、10000kHzと、10100kHzとに変化させた場合に対して、出力端子T4の信号の位相は、進み、同相、遅れ、位相特性を呈し、進みと遅れの場合の出力端子T4の振幅は、同相の場合に対して減衰している。
【0078】
また、任意接続回路として、上記低域濾波器以外の場合にも、伝達信号発現回路7の入出力信号比μr(ω)に比例する出力信号が得られるので、目的とする伝達関数転写処理が実現された。
【0079】
(実施例5)
実施例5では、
図6に示す係数信号合成回路6−3が、実施例4に示した2つの低域濾波回路6i,6jを使用せず、LSI化の時の外付け部品を削減し、且つ立上特性の性能劣化を改善することを特徴とする。
【0080】
実施例5に示す伝達関数転写回路1では、係数信号合成回路6−3の構成のみが
図4に示す実施例4に比べて変形されている。このため、ここでは、係数信号合成回路6−3の構成のみについて説明する。
【0081】
係数信号合成回路6−3は、直交分配回路6kと信号分配回路6pと信号分配回路6gと信号分配回路6rと乗算回路6sと乗算回路6tと信号分配回路6uと乗算回路6vと乗算回路6wと信号加減算回路6xと信号加減算回路6yとを備える。
【0082】
直交分配回路6kは、端子T6−1から端子T6k−1に供給された信号e6k−1(信号e3)に直交分配処理を施し、互いに直交する2つの信号e3Aと信号e3Bとの、例えば、一方の信号e3A(信号e6k−2A)を端子T6k−2Aから端子T3Aを介して端子T6p−1に出力し、他方の信号e3B(信号e6k−2B)を端子T6k−2Bから端子T3Bを介して端子T6g−1に出力する。
【0083】
信号分配回路6pは、信号e6k−2Aに信号分配処理を施し、信号e6p−2を端子T6p−2から端子T6s−1に出力し、信号e6p−3を端子T6p−3から端子T6v−1に出力する。信号分配回路6gは、信号e6k−2Bに信号分配処理を施し、信号e6g−2を端子T6g−2から端子T6t−1に出力し、信号e6g−3を端子T6g−3から端子T6w−1に出力する。
【0084】
信号分配回路6rは、端子T20Aから端子T6−2Aを介して端子T6r−1に供給された信号e20Aに信号分配処理を施し、信号e6r−2を端子T6r−2から端子T6s−2に出力し、信号e6r−3を端子T6r−3から端子T6t−2に出力する。
【0085】
乗算回路6sは、信号e6p−2と信号e6r−2とに乗算処理を施し、得られた信号e6s−3を端子T6s−3から端子T6x−1に出力する。乗算回路6tは、信号e6gー2と、信号e6rー3と、に乗算処理を施した信号e6t−3を端子T6t−3から端子T6y−1に出力する。
【0086】
信号分配回路6uは、端子T20Bから端子T6−2Bを介して端子T6u−1に供給された信号e20Bに信号分配処理を施し、信号e6u−2を端子T6u−2から端子T6v−2に出力し、信号e6u−3を端子T6u−3から端子T6w−2に出力する。
【0087】
乗算回路6vは、信号e6p−3と信号e6u−2とに乗算処理を施し、得られた信号e6v−3を端子T6v−3から端子T6y−2に出力する。乗算回路6wは、信号e6q−3と信号e6u−3とに乗算処理を施し、得られた信号e6w−3を端子T6w−3から端子T6x−2に出力する。
【0088】
信号加減算回路6xは、信号e6s−3と信号e6w−3とに加減算処理を施し、得られた信号e6x−3を端子T6x−3から端子T6−3Aを介して端子T21Aに出力する。信号加減算回路6yは、信号e6t−3と信号e6v−3とに加減算処理を施し、得られた信号e6y−3を端子T6y−3から端子T6−3Bを介して端子T21Bに出力する。
【0089】
直交分配回路6kは、信号分配回路6mと位相シフト回路6nとを備える。信号分配回路6mは、端子T6k−1から端子T6m−1に供給された信号e6k−1に信号分配処理を施し、信号e6m−2を端子T6m−2から端子T6k−2Aを介して端子T3Aに出力し、信号e6m−3を端子T6m−3から端子T6n−1に出力する。位相シフト回路6nは、信号e6m−3に、例えば“90°”なる位相シフトを施し、得られた信号e6n−2を端子T6n−2から端子T6k−2Bを介して端子T3Bに出力する。
【0090】
次に、このように構成された実施例5の係数信号合成回路6−3の動作を
図6を参照しながら説明する。
【0091】
図6より、端子T3Aの信号e3Aは、信号e3に対し同相関係を有し、端子T3Bの信号e3Bは、端子T3の信号e3に対し直交関係を有する。また、
図4より、端子T20Aの信号e20Aは、端子T2の信号e2に対し同相関係を有し、端子T20Bの信号e20Bは、端子T2の信号e2に対し直交関係を有する。
【0092】
信号e2の互に直交する信号であるA信号とB信号とのいずれかの信号と、信号e3の互に直交する信号であるA信号とB信号とのいずれかの信号と、に乗算作用を施した積の信号、例えば、信号e2のA信号と信号e3のB信号とに乗算作用を施した積の信号(AB積信号)は、2倍の周波数成分と零周波数成分(位相成分)とを含む。
【0093】
図6に示す信号加減算回路6xにおいて、端子T6x−1に供給する信号e6x−1には、信号e2の周波数成分と位相成分との合計成分と信号e3の周波数成分と位相成分との合計成分との和の成分を含む信号の符号を反転した信号と、信号e2の周波数成分と位相成分との合計成分と信号e3の周波数成分と位相成分との合計成分との差の成分を含む信号とが入力される。
【0094】
また、端子T6x−2に供給する信号e6x−2には、信号e2の周波数成分と位相成分との合計成分と信号e3の周波数成分と位相成分との合計成分との和の成分を含む信号と、信号e2の周波数成分と位相成分との合計成分と、信号e3の周波数成分と位相成分との合計成分との差の成分を含む信号とが入力される。
【0095】
ここで、信号加減算回路6xの加減算処理の加算又は減算の内、減算を採用すると、端子T6x−3から出力される信号e6x−3は、和周波数信号成分が相殺されて、差信号成分(差周波数信号成分)の2倍の振幅の信号が出力される。これにより、同相成分と直交成分との一方に関する係数信号e21Aが生成される。
【0096】
この動作は、振幅の等しい2つの信号の減算処理を施し、且つ、同相成分と直交成分の位相差が“±90°”であれば成立する。
【0097】
上記の和の成分は、端子T2に入力される周波数の2倍の周波数成分を含む。一方、差の成分は、2倍の周波数成分を含まない。従って、実施例5では、実施例4に示した低域濾波回路6i等は不要となる。この差の成分は、
図1に示した任意な回路である回路E1と回路E2とに依存する周波数依存性を有する。
【0098】
同様に、信号加減算回路6yにより、同相成分と直交成分との他方に関する係数信号e21Bが生成されるが、その説明は省略する。
【0099】
信号加減算回路6xと信号加減算回路6yとのそれぞれの加減算処理の加算又は減算は、信号e20A及び信号e20Bと、信号e22Aと信号e22Bとのそれぞれの位相の符号関係、及び関連電流路に位相反転増幅回路等が含まれるか否かを考慮して選択すればよい。
【0100】
図7を用いて、係数信号合成回路6−3の2つの端子T21Aにおける係数信号e21A及び端子T21Bにおける係数信号e21Bの、時間領域での数値シミュレーション結果を説明する。シミュレーションに当たり、伝達信号発現回路7、外付回路E1およびE2の回路定数は、実施例4の場合と同じである。
【0101】
横軸は、時間であり、その範囲は、0μSから10.5μSである。縦軸は、基準信号出力回路5r(図示せず)の出力信号enを1.4142V(尖頭値)とした場合の、係数A信号端子T21Aの信号e21Aと、係数B信号端子T21Bの信号e21Bとの電圧Vである。これら2つの係数信号は、周波数特性を有する。
【0102】
シミュレーションの結果、10MHzの2倍の周波数成分のリップルは見当たらない。3μS程度までの顕著な過渡現象は、主に、外付回路E1およびE2に起因する現象である。一方、図示していないが、実施例4においては低域濾波回路6hと低域濾波回路6jとの遮断特性の不十分さに起因する残留リップルが見られる。これに対して、実施例5では、残留リップルが見られず、効果が明白である。また、立上特性も改善される。
【0103】
実施例5の係数信号合成回路6−3においては、実施例4に示す2つの低域濾波回路6i,6jを使用せず、互いに直交する2つの係数A信号e21Aと係数B信号e21Bに、端子T2及び端子T3に入力する周波数の2倍の周波数を含まない直流成分のみが現れると言う効果を発揮する。
【0104】
従って、例えば、直交分配回路をデジタル回路ではなくアナログ部品で構成する場合、位相シフト回路を構成するリアクタンス素子以外の意図するリアクタンス素子は不要となる。これにより、LSI化する場合の外付け部品を削減することができる。
【0105】
(実施例6)
図8は、実施例6の分配型伝達関数転写回路の構成を示す図である。
図8に示す分配型伝達関数転写回路100は、伝達関数転写回路1の構成に、基準信号分配回路200と、中継信号分配回路300とを具備する。これにより、複数組の転写先である係数信号合成回路6i及び伝達信号合成回路9iにおいて、互いに相似の転写信号を転写する機能を実現する。
【0106】
ここでは、伝達関数転写回路1の構成の説明は省略する。基準信号分配回路200と中継信号分配回路300についてのみ
図8を用いて説明する。
【0107】
図8に示す分配型伝達関数転写回路100を構成する伝達信号発現回路7には、端子T7−3を設け、この端子T7−3を基準端子に接続する例を示している。しかし、端子T7−3は必ずしも必要ではない。
【0108】
基準信号分配回路200と中継信号分配回路300とを更に具備するために、伝達関数転写回路1の第1基準信号端子T20A、T20B、及び中継信号端子T22A、T22Bを、以下のように、分配送信側と分配受信側とにおいて複数に分割する。
【0109】
説明の簡便さの為に、例えば、基準A信号受信端子T20ARi(i=1,n)を、基準A信号受信端子T20ARiと、(i=1,n)を省略して表記して説明する。即ち、小文字の“i”は、(i=1,n)と繰り返されることを意味する。
【0110】
実施例6に示す分配型伝達関数転写回路100において、基準A信号端子T20Aを、基準A信号送信端子T20ATと、基準A信号受信端子T20ARiとに分割する。基準B信号端子T20Bを、基準B信号送信端子T20BTと、基準B信号受信端子T20BRiとに分割する。中継A信号端子T22Aを、中継A信号送信端子T22ATと、中継A信号受信端子T22ARiとに分割する。中継B信号端子T22Bを、中継B信号送信端子T22BTと、中継B信号受信端子T22BRiとに分割する。これにより、それぞれの端子の信号を分別して定義する。
【0112】
分配型伝達関数転写回路100は、第1入力端子T2と、係数信号生成回路6iの入力端子T3iと、伝達信号合成回路9iの出力端子T4iと、基準信号分配回路200と係数信号合成回路6iと中継信号分配回路300と伝達信号合成回路9iとを備える。
【0113】
基準信号分配回路200は、分配回路200Aと分配回路200Bとを備える。中継信号分配回路300は、分配回路300Aと分配回路300Bとを備える。
【0114】
分配回路200Aは、端子T20ATから端子T200−1Aを介して端子T200IAに供給される係数A信号e20ATに分配処理を施し、得られた信号e200OAiを、端子T200OAiからT200−2Aiに出力し、端子T20ARiを介してi番目の信号係数合成回路6iの端子T6−2Aiに分配供給する。
【0115】
分配回路200Bは、端子T20BTから端子T200−1Bを介して端子T200IBに供給される係数B信号e20BTに分配処理を施し、得られた信号e200OBiを、端子T200OBiからT200−2Biに出力し、端子T20BRiを介してi番目の信号係数合成回路6iの端子T6−2Biに分配供給する。
【0116】
係数信号合成回路6iは、端子T3iに供給された信号e3iと、端子T6−2Aiと端子T6−2Biとにそれぞれ供給された信号e200OAiと信号e200OBiと、に係数信号合成処理を施し、得られた信号e21Aiを端子T6−3Aiから端子T21Aiに出力し、信号e21Biを端子T6−3Biから端子T21Biに出力する。
【0117】
分配回路300Aは、端子T22ATから端子T300−1Aを介して端子T300IAに供給される係数A信号e22ATに分配処理を施した信号e300OAiを、端子T300OAiからT300−2Aiに出力し、端子T22ARiを介してi番目の信号係数合成回路9iの端子T9−2Aiに分配供給する。
【0118】
分配回路300Bは、端子T22BTから端子T300−1Bを介して端子T300IBに供給される係数B信号e22BTに分配処理を施した信号e300OBiを、端子T300OBiからT300−2Biに出力し、端子T22BRiを介してi番目の伝達信号合成回路9iの端子T9−2Biに分配供給する。
【0119】
伝達信号合成回路9iは、端子T9−1Aiに供給された信号e21Aiと、端子T9−1Biに供給された信号e21Biと、端子T9−2Aiに供給された信号e22ARiと、端子T9−2Biに供給された信号e22BRiとに係数信号合成処理を施し、得られた信号e4iを端子T9−3iから端子T4iに出力する。
【0120】
分配回路200Aと分配回路200Bとは、基準信号分配回路200を構成する。分配回路300Aと分配回路300Bとは、中継信号分配回路300を構成する。
【0121】
分配回路200Aと分配回路200Bと分配回路300Aと分配回路300Bは、それぞれ同じ構成である。このため、分配回路200Aの構成のみを説明し、他の分配回路の説明は省略する。
【0122】
分配回路200aAは、信号分配回路200aAと緩衝回路200bAiとを備える。
【0123】
信号分配回路200aAは、端子T200IAから端子T200aA−1に入力された信号e20ATに1:nの信号分配処理を施し、得られた信号e200aA−2iを端子T200aA−2iから端子T200bA−1iに出力する。
【0124】
緩衝回路200bAiは、端子T200aA−2iから端子T200bA−1iに入力された信号e200aA−2iに逆方向減衰処理を施し、得られた信号e200bA−2iを端子T200bA−2iから端子T200OAiに出力する。
【0125】
緩衝回路200bAiは、意図しない閉ループ利得に減衰処理を施すことにより異常発振を防止する。従って、少なくとも意図する信号の流れ方向と逆方向の信号を減衰させる。緩衝回路200bAiは、一般的緩衝増幅回路、又はアイソレータ、サーキュレータ、又は、双方向に減衰を与える減衰回路であってもよい。
【0126】
また、分配回路200aAiと、分配回路200aBiと、及び、分配回路300aAiと、分配回路300aBiとは、実用的な設計上の選択の一つとしては、互いに振幅が等しく且つ互いの位相が直交する成分であるので、更に、振幅補償回路と、位相補償回路とを個々に具備しても良い。また、分配配線の配線長の違いによる遅延時間の補償が必要な場合には遅延時間補償回路を個々に具備しても良い。
【0127】
各組を構成する信号配線は、2つの信号配線からなる単一駆動、又は4つの信号配線からなる差動駆動の何れであっても良い。また、三次元構造によるツイスト・ペアー配線であってもよい。
【0128】
このように実施例6に係る分配型伝達関数転写回路100によれば、一つの伝達信号発現回路7により発現される伝達関数を複数(n)組の、係数信号合成回路6iと伝達信号合成回路9iとに分配供給する。その結果、このことは、複数(n)組の、i番目の第2入力端子T3iと、出力端子T4iと、の両端子間(転写先)に、一つの伝達関数発現回路7により発現される伝達関数信号が分配出力される。即ち、伝達関数信号が転写される。
【0129】
次に、実施例1から実施例5までの伝達関数転写回路1と、及び実施例6の分配型伝達関数転写回路100との変形例について説明する。
【0130】
実施例1から実施例6までの実施例の説明では、アナログ処理を想定して説明を行った。しかし、本発明の開示する技術は、アナログ処理のみならず、デジタル処理であっても良い。
【0131】
更に、実施例を詳しく説明する。実施例1から実施例5までの伝達関数転写回路1、及び実施例6の分配型伝達関数転写回路100の、少なくとも1つの入力端子に供給される信号と、少なくとも1つの出力端子から出力される信号との何れの信号もアナログ信号であるとする。
【0132】
更に、それらを処理する回路として、アナログ回路又はアナログ素子を組み合わせることを想定する実施例を用いて説明した。これらアナログ回路又はアナログ素子の組合せ部分はデジタル処理であっても良い。この場合、例えば、少なくとも1つの入力端子に供給されるアナログ信号をそれぞれの端子に接続されるADコンバータがデジタル信号に変換する。デジタル処理後の少なくとも1つのデジタル信号を少なくとも1つの端子に接続されるDAコンバータがアナログ信号として出力端子から出力する。デジタル処理は、実施例1から実施例5までの伝達関数転写回路と、及び実施例6の分配型伝達関数転写回路とのそれぞれの処理に等価なデジタル処理であればよい。
【0133】
以下に、実施例を更に詳しく説明する。
【0134】
実施例1から実施例5は、第1アナログ・デジタル変換回路と第2アナログ・デジタル変換回路と第1デジタル・アナログ変換回路とを含む伝達関数転写回路1であればよい。第1アナログ・デジタル変換回路は、第1入力端子T2に供給するアナログ信号にアナログ・デジタル変換を施す。第2アナログ・デジタル変換回路は、第2入力端子T3に供給するアナログ信号にアナログ・デジタル変換を施す。第1デジタル・アナログ変換回路は、伝達信号合成処理を施したデジタル信号にデジタル・アナログ変換を施し、(第1)出力端子T4に出力する。
【0135】
実施例6は、第1アナログ・デジタル変換回路と複数の第2iアナログ・デジタル変換回路と複数の第1iデジタル・アナログ変換回路とを含む分配型伝達関数転写回路100であればよい。
【0136】
第1アナログ・デジタル変換回路は、第1入力端子T2に供給するアナログ信号にアナログ・デジタル変換を施す。複数の第2iアナログ・デジタル変換回路は、複数の第2i入力端子T3iに供給するアナログ信号にアナログ・デジタル変換を施す。複数の第1iデジタル・アナログ変換回路は、複数の伝達信号合成回路9iにより伝達信号合成処理を施したデジタル信号にデジタル・アナログ変換をそれぞれ施したそれぞれのアナログ信号をそれぞれの(第1i)出力端子T4iに出力する。
【0137】
次に、伝達関数発現回路7の処理をアナログ処理にて行う場合には、例えば、第2デジタル・アナログ変換回路と第3アナログ・デジタル変換回路とを含む実施例1から実施例5の伝達関数転写回路1及び実施例6の分配型伝達関数転写回路100であればよい。
【0138】
第2デジタル・アナログ変換回路は、端子T7−1に供給されるデジタル信号をアナログ信号に変換する。第3アナログ・デジタル変換回路は、伝達関数発現回路7により伝達関数発現処理を施したアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0139】
又は、実施例1から実施例5の伝達関数転写回路1及び実施例6の分配型伝達関数転写回路100が第3アナログ・デジタル変換回路を含んでもよい。第3アナログ・デジタル変換回路は、第1入力端子T2に供給するアナログ信号をアナログ的に分配した信号に、伝達関数発現回路7により伝達関数発現処理を施し、得られたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0140】
(実施例7)
図9は、実施例7の連動制御型位相変移回路の構成を示す図である。実施例7の連動制御型位相変移回路は、実施例6に示した分配型伝達関数転写回路100を利用したもので、例えば、アンテナの放射方向を可変とする回路に利用する放射方向可変アンテナ回路500からなる。
【0141】
図9を用いて放射方向可変アンテナ回路500を説明する。放射方向可変アンテナ回路500は、位相変移回路50iを有する。この位相変移回路50iは、アンテナANTiに直列に接続される抵抗素子R57iと、シャント枝路に等価的な誘導性素子58iとをそれぞれ一つ配置する。
【0142】
説明の簡便さの為に、例えば、アンテナANTi(i=1,n)の(i=1,n)を省略して、アンテナANTiと表記する。
【0143】
放射方向可変アンテナ回路500は、n個のアンテナANTiと、個々の位相変移量を互いに関連付けて制御するn個の位相変移回路50iと、n個の位相変移回路50iと一つの送受信装置とに分配結合処理を施す(n対1)の結合回路70と、送信機、受信機、又は送受信機が接続される入出力端子T80とを備える。
【0144】
位相変移回路50iは、端子T51iと、端子T52iと、基準端子T53と、インピーダンス素子値制御端子T54iと、利得制御端子T55iと、帰還インピーダンス素子値制御端子T56iとを備える。
【0145】
また、位相変移回路50iは、インピーダンス素子57iと等価インピーダンス回路58iとを備える。インピーダンス素子57iは、一方の端子を端子T51iに接続し、他方の端子を、接続点T61iを介して端子T52iと端子T62iとに接続し、端子T54iから供給される信号に応じてインピーダンス値Rsiを可変させる。等価インピーダンス回路58iは、端子T62iに供給された信号e62iに等価インピーダンス素子処理を施す。
【0146】
等価インピーダンス回路58iは、回路60iとして、実施例6の分配型伝達関数転写回路100を含む。等価インピーダンス回路58iの基準端子は、基準端子T53に接続される。
【0147】
等価インピーダンス回路58iは、可変増幅減衰回路59iと回路60i(分配型伝達信号転写回路100)と可変増幅減衰回路59iと帰還インピーダンス回路61iとを備える。
【0148】
可変増幅減衰回路59iは、端子T62iから接続点T63iを介して端子T59−1iに供給された信号に、端子T55iに供給された信号に応じて増幅減衰率A0なる増幅減衰処理を施した信号e59−2iを端子T59−2iから端子60−1i(端子T3i)に出力する。
【0149】
回路60iは、端子60−1i(第2入力端子T3i)に供給された信号e59−2iに等価伝達関数μr(ω)なる等価伝達関数処理を施した信号e4iを端子60−2i(端子T4i)から帰還インピーダンス素子61iの一方の端子に出力する。
【0150】
帰還インピーダンス回路61iは、信号e4iに端子T56iに供給された信号に応じてzfiなる帰還インピーダンス処理を施し、他方の端子から接続点T63iに出力する。分配型伝達関数転写回路100の第1入力端子T2は、例えば、端子T80に接続すればよい。
【0151】
なお、可変増幅減衰回路59iとして、互いに位相反転する入力端子と出力端子とを有する可変増幅減衰回路を用いても良い。この可変増幅減衰回路は、互いに位相関係が反転する2つの反転接続帰還ループを構成し、反転接続帰還ループの一方に伝達関数発現回路60iと帰還インピーダンス回路61iとを配置し、他方の反転接続帰還ループに設けられた外部調整端子を有する第2の帰還回路64i(図示せず)の回路定数値を調整する。これにより、帰還回路全体の伝達関数の分母の“1”を小さくすることができる。
【0152】
結合回路70は、分配端子T70diと、共通端子T70cとの全ての端子間をスター状に接続する複数のインピーダンス素子からなる。また、この結合回路70は分波回路であっても合波回路であっても良い。
【0153】
端子T70cは2分割され、入力端子80Iと出力端子80Oを介して、送信器、受信機、或は、送受信機に接続されてもよい。
【0154】
また、分配型伝達関数転写回路100を構成する伝達信号発現回路7の構成例としては、端子T7−1と端子T7−2の両端子間に抵抗素子値Rを接続し、端子T7−2と基準端子T7−3(図示せず)との間に容量性素子値を接続することにより、1+(ωτ)×(ωτ)の逆数の伝達関数が得られる。ここにτは、抵抗素子値と容量性素子値との積で与えられる。
【0155】
また、その容量値と抵抗値との両方又は一方、例えば、容量性素子の素子値を、制御端子T7−4(図示せず)に供給される信号に応じて、外部制御することにより、時定数τを外部可変としてもよい。
【0156】
次に実施例7のシミュレーション結果について説明する。伝達信号発現回路7の回路形式と回路定数とは、以下のように設定した。伝達信号発現回路7の端子T7−1と端子T7−2との間に、10Ωの抵抗を接続し、端子T7−2と基準端子に接続する端子T7−3との間に、容量値可変のコンデンサを接続し、その値を53pFから50pFまで変化させた。抵抗素子57iの抵抗値は10Ωとした。可変減衰増幅回路59iの減衰増幅率A0はパラメータとして、−2、−1.3333、−1.1428、−1.0667とした。
【0157】
シミュレーション結果を
図10に示す。
図10の横軸は、時定数を“μs”を単位としている。縦軸は、位相変移量を“°”を単位としている。動作周波数は1GHzである。縦軸の値が大きい時に見られる、若干の飽和現象は、例えば、抵抗素子57iの抵抗値を制御することにより補正可能である。
【0158】
図10の縦軸の正負の符号は、例えば伝達信号発現回路7に位相反転回路を挿入することにより、位相変移の可変方向を反転させることが可能である。なぜなら、端子T3iと端子T4iと、の間に発現する等価インダクタンスの値を、負の値にも、正の値にも、設定可能であるからである。
【0159】
又、位相変移回路50iとしては、ALLPASSフィルタ回路iの一部の回路素子の素子値を、3i端子と4i端子に置き換えた回路であっても良い。
【0160】
複数のアンテナと複数の位相変移回路と少なくとも一つの送信又は受信回路、或は、送受信回路とを結合する結合回路とを含む回路であってもよい。
【0161】
また、位相変移回路は、位相変移回路の入力端子と出力端子と基準端子との何れかの2端子を含む電流路に、伝達関数転写回路1の第2入力端子T3i(i=1,n)と出力端子T4i(i=1,n)と増幅減衰利得制御端子を有する可変増幅減衰回路とを含むことを特徴とするフェーズド・アレイ回路であってもよい。
【0162】
次にこのように構成された実施例7の動作を説明する。端子T51iと、端子T52iとの間の位相差は、次式で与えられる。
【0163】
数式(4)の分母は、帰還インピーダンス値zfiとインピーダンス素子57iのインピーダンス値Rsiと増幅減衰率A0iとの選定により、時定数τの依存性を、任意に設定できることを意味する。従って、この分母の、zfiと、Rsiと、A0iとの選定を、例えば、ANT1、・・、ANTi、・・、ANTnに対して例えば整数倍に設定することもできる。この場合、数式(4)のτを可変することにより、τの整数比に比例して、関連する複数の位相変移回路50iの位相を連動して可変であると言う特徴を有することになる。
【0164】
周波数ωに対しての時定数τの設定は、この値を幾分小さく選べば、(ωτ)の二乗の項の影響は急速に少なくなる。この値が同等以上の場合でも、周波数ωとして比較的狭い範囲の利用が大多数であるので、このような実用的な場合においても、上記効果が期待できる。
【0165】
位相変移回路50iの端子T51iと端子T52iとに接続される周辺インピーダンスを任意に与えても、上記効果が同様に得られる特徴を有する。また、位相変移回路50iは、これを複数段従属接続しても、入出力反転して従属接続しても同様の効果を得られる。
【0166】
アンテナのビームをX軸方向およびY軸方向の2次元方向に独立に可変するには、例えば、X軸方向に対応したアンテナにX軸方向に対応する位相変移回路50iを、Y軸方向に対応したアンテナにY軸方向に対応する位相変移回路50jを、それぞれ具備し、2組の位相変移回路50iと位相変移回路50jとを、それぞれ独立に連動制御すればよい。この独立な制御に関連を持たせることにより、XY面の任意の方向にビームを可変できる。
【0167】
位相変移回路50iは、双方向性機能回路である。即ち、端子51iと端子52iとの何れの一方の端子を入力端子とし、他方を出力端子としても位相変移回路として機能することが特徴である。更に、位相変移回路50iは、双方向性回路であるので、端子51iと端子52iとのそれぞれにおけるインピーダンス整合を適当に行うことにより、送信受信共用回路の構成回路として組み入れることが可能である。
【0168】
このように、放射方向可変アンテナ回路500に、分配型伝達関数転写回路100を用いることにより、位相の増加又は減少の同じ方向に連動して位相を変移する複数の位相変移回路に用いられるリアクタンス部品点数を削減し、回路を簡略化することができる。また、複数の位相変移量を連動して制御する際の、互いの位相差の精度管理を高精度に簡便に実現することができる。
【0169】
実施例7に示した放射方向可変アンテナ回路500は、n個のアンテナと一つの送受信回路との場合で説明したが、送受信回路の個数は複数個であっても良い。即ち、放射方向可変アンテナ回路500は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)構成であってもよい。
【0170】
以上の説明では、分配型伝達関数転写回路100を放射方向可変アンテナ回路500に利用する例を示したが、分配型伝達関数転写回路100は放射方向可変アンテナ回路500以外にも利用できる。即ち、インピーダンス整合回路、分波回路、合波回路、アンテナの電気長可変回路等の相似な回路が繰り返される回路に利用することができる。また、リアクタンス素子の個数を削減でき、LSI化を行う時の外付け部品点数を削減することができる。