(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167240
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】ポリマーからなるフェイスを備えたゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20170710BHJP
【FI】
A63B53/04 C
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-536090(P2016-536090)
(86)(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公表番号】特表2016-528008(P2016-528008A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】US2014044499
(87)【国際公開番号】WO2015026439
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2016年6月15日
(31)【優先権主張番号】13/971,222
(32)【優先日】2013年8月20日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314006455
【氏名又は名称】ナイキ イノヴェイト シーヴィー
(74)【代理人】
【識別番号】100071238
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恒久
(74)【代理人】
【識別番号】100139044
【弁理士】
【氏名又は名称】笹野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】サンダー レイモンド ジェイ
【審査官】
吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−136514(JP,A)
【文献】
特表2013−509909(JP,A)
【文献】
特開2005−287667(JP,A)
【文献】
特開2009−148558(JP,A)
【文献】
特開2013−009735(JP,A)
【文献】
特開2007−117635(JP,A)
【文献】
特開2003−339926(JP,A)
【文献】
特開2010−136736(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0151960(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドにおいて、
フェイスプレート・インサートを受けることができるように窪んだ棚状部に隣接する内壁を有する環状のフェイスサポートを含む本体であって、中央のキャビティの一部を画定している環状のフェイスサポートを含む本体と、
打撃面と、該打撃面とは反対側に位置する背面と、を有するフェイスプレート・インサートであって、該フェイスプレート・インサートの背面が上記棚状部に当接しかつ該フェイスプレート・インサートが上記内壁から離間して該フェイスプレート・インサートと上記内壁との間に接着剤用チャネルを画定するように、上記環状のフェイスサポート内に配置されたフェイスプレート・インサートと、
を備え、
上記接着剤用チャネル内に与えられた接着剤が凹部内へ流入することにより上記フェイスプレート・インサートと上記環状のフェイスサポートとの間の機械的結合を支援することができるように、上記内壁と上記フェイスプレート・インサートのうちの少なくとも一方が、上記接着剤用チャネルと流体的に連通する上記凹部を画定しており、
上記フェイスプレート・インサートは、該フェイスプレート・インサートが上記棚状部に当接していることで上記キャビティの奥まで延在するフィラー入り若しくはフィラーなしの熱可塑性ポリマーからなるポリマー材料を含み、上記ポリマー材料は少なくとも約220MPaの引張強度を有することを特徴とする、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
上記環状のフェイスサポートは、上記フェイスプレート・インサートの一端縁に当接可能に構成された前壁を含み、
上記棚状部に上記フェイスプレート・インサートが当接したときに、上記環状のフェイスサポートの前壁と上記フェイスプレート・インサートの打撃面とが面一になるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
上記フェイスプレート・インサートは、上記ポリマー材料と接触するように配置された金属製の打撃プレートを含み、
上記金属製の打撃プレートは、上記フェイスプレート・インサートの打撃面を形成することを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
上記金属製の打撃プレートは、該金属製の打撃プレートから上記ポリマー材料内まで延在する突起を介して上記ポリマー材料に機械的に結合されているとともに、上記ポリマー材料によってオーバーモールド加工されていることを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
上記フェイスプレート・インサートは、上記ポリマー材料に接するように配置された金属製の後方プレートを含み、
上記金属製の後方プレートは、上記フェイスプレート・インサートの背面を形成し、
上記金属製の打撃プレートは、上記金属製の後方プレートとは上記ポリマー材料の反対側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
上記金属製の打撃プレートは、上記打撃面内まで窪んでいて該金属製の打撃プレートについて凹状の複数の溝を含むことを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
上記中央のキャビティは開放されたキャビティであり、
上記本体とフェイスプレート・インサートとが協働して、上記開放されたキャビティの一部のみを取り囲んでいることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
上記中央のキャビティは閉塞されたキャビティであり、
上記本体とフェイスプレート・インサートとが協働して、上記閉塞されたキャビティの全体を取り囲んでいることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
上記フェイスプレート・インサートの厚さが約2mm〜約6mmであることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
上記ポリマー材料は、ガラス繊維又は炭素繊維のいずれかのフィラー入りのポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
上記凹部は、上記内壁及び上記フェイスプレート・インサートのうちの少なくとも一方の周縁全体に亘って延在していることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
ゴルフクラブヘッドにおいて、
フェイスプレート・インサートを受けることができるように構成された内壁及び窪んだ棚状部を有する環状のフェイスサポートを含む本体であって、中央のキャビティの一部を画定している環状のフェイスサポートを含む本体と、
打撃面と、該打撃面とは反対側に位置する背面と、を有するフェイスプレート・インサートであって、該フェイスプレート・インサートの背面が上記棚状部に当接しかつ該フェイスプレート・インサートが上記内壁から離間して該フェイスプレート・インサートと上記内壁との間に接着剤用チャネルを画定するように、上記環状のフェイスサポート内に配置されたフェイスプレート・インサートと、
を備え、
上記接着剤用チャネル内に与えられた接着剤が凹部内へ流入することにより上記フェイスプレート・インサートと上記環状のフェイスサポートとの間の機械的結合を支援することができるように、上記内壁と上記フェイスプレート・インサートのうちの少なくとも一方が、上記接着剤用チャネルと流体的に連通する上記凹部を画定しており、
上記フェイスプレート・インサートは、上記フェイスプレート・インサートの打撃面を形成している金属製の打撃プレートと接触しているポリマー材料層から形成されたラミネートであり、
上記ポリマー材料層及び上記金属製の打撃プレートの各々は、上記フェイスプレート・インサートの背面が上記棚状部に当接していることで上記中央のキャビティの奥まで延在し、
上記ポリマー材料は、フィラー入り若しくはフィラーなしの熱可塑性ポリマーからなる型成形された熱可塑性材料であり少なくとも約220MPaの引張強度を有することを特徴とする、ゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
上記環状のフェイスサポートは、上記フェイスプレート・インサートの一端縁に当接可能に構成された前壁を含み、
上記棚状部に上記フェイスプレート・インサートが当接したときに、上記環状のフェイスサポートの前壁と上記フェイスプレート・インサートの打撃面とが面一になることを特徴とする請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
上記金属製の打撃プレートは、該金属製の打撃プレートから上記ポリマー材料層内まで延在する突起を介して上記ポリマー材料に機械的に結合されているとともに、上記ポリマー材料によってオーバーモールド加工されていることを特徴とする請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
上記ラミネートは、上記ポリマー材料層と接触するように配置された金属製の後方プレートをさらに含み、
上記金属製の後方プレートは、上記フェイスプレート・インサートの背面を形成し、
上記金属製の打撃プレートは、上記金属製の後方プレートとはポリマー材料層の反対側に配置されていることを特徴とする請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
上記金属製の打撃プレートは、上記打撃面内まで窪んでいて該金属製の打撃プレートについて凹状の複数の溝を含むことを特徴とする請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
上記中央のキャビティは開放されたキャビティであり、
上記本体とフェイスプレートとが協働して、上記開放されたキャビティの一部のみを取り囲んでいることを特徴とする請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項18】
上記中央のキャビティは閉塞されたキャビティであり、
上記本体とフェイスプレート・インサートとが協働して、上記閉塞されたキャビティの全体を取り囲んでいることを特徴とする請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項19】
上記フェイスプレート・インサートの厚さが約2mm〜約6mmであることを特徴とする請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項20】
上記ポリマー材料層は、ガラス繊維又は炭素繊維のフィラー入りのポリアミドからなることを特徴とする請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ポリマーからなるフェイスを備えたゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、概して、長細のシャフトの端部に配置されたゴルフクラブヘッドを有する。プレーの際に、地面に置かれているボールに当てることを意図してゴルフクラブが振られると、所望の方向及び所望の垂直方向の弾道を描くようにボールが打ち上げられる。この衝突によって、クラブフェイスに瞬間的な衝撃の力が生じ、この衝撃の力の最大値は、約6520N〜約18000N(約1520lbf〜約4000lbf)の範囲内の大きさとなり得る。
【0003】
ゴルフクラブヘッドを形成する際に、多くの設計パラメータが考慮され得る。設計は、例えば、クラブと地面との間はもちろんのことクラブヘッドとボールとの間の繰り返しの衝撃に耐えるのに充分な構造上の弾力を提示する必要がある。クラブヘッドは、様々なルール設定協会が決める最大の寸法要求に適合するものでなければならない。また、(適用基準に準拠した測定で)予め定められた最大値よりも高い反発係数を有してはいけない。予め定められた特定の設計の制約条件を満たした場合に、特定のロフト(打上げ)用のクラブヘッドの設計は一般に、重心の規模及び位置と、重心及び/又はシャフトの周りのヘッドの慣性モーメントとによって定量される。
【0004】
クラブの慣性モーメントは、クラブの(特には、芯を外した打撃をした際の)回転抵抗に関連し、クラブの「許容(寛容)度」の測定値として認識されることが多い。典型的なクラブ設計においては、ボールを押したりボールの勢いをなくしたりするクラブの傾向を低減させるために、高い慣性モーメントが求められている。高い慣性モーメントは、概して(重心の周りの慣性モーメントを最大にするために)クラブの周縁にできるだけ近づけるように重心を移動させることにより、さらに言えば、(シャフトの周りの慣性モーメントを最大にするために)つま先のできるだけ近くへ重心を移動させることにより実現される。
【0005】
慣性モーメントはクラブヘッドの許容度に影響を与えるが、クラブフェイスの後側の位置(及びソールよりも高い位置)は、概して、所与のフェイス・ロフト角についての弾道に影響を与える。(フェイスからずっと離れている)できるだけ後方かつ(ソール付近の)低い位置に重心があることにより、一般に、重心がより前方かつ/或いは高い位置にあるクラブヘッドと比較して、ボールの弾道が高い放物線を描く。
【0006】
高い慣性モーメントは、クラブヘッドの周縁の重量を増大させることにより得られるが、クラブヘッドの総質量/スウィング(すなわち、重心の規模)の拡大は、クラブヘッドスピードと飛距離に大きな負の影響を与える。換言すれば、クラブヘッドスピード(及び飛距離)を最大にするためには、総質量を小さくすることが要求される。しかし、総質量を小さくすると、概して、クラブヘッドの慣性モーメント(及び許容度)が減少してしまう。
【0007】
スウィングスピード(質量)と許容度(慣性モーメント)を両立させることについて、クラブヘッド全体に亘る特定の位置ごとに変化する質量を付して、特定のゴルファー又は能力レベルに応じてクラブの性能をカスタマイズすることが望ましい。この態様においては、クラブヘッドの総質量は、概して、構造上の質量と、裁量に委ねられた質量と、の2つのカテゴリーに分類され得る。
【0008】
構造上の質量とは、概して、繰り返しの衝撃に耐えるのに必要とされる構造上の弾力を有するクラブヘッドを提供するために要求される材料の質量のことである。構造上の質量は、設計に依存する度合いが高く、具体的な質量分布と比較して、設計上の制御可能な程度が低い。他方で、裁量に委ねられた質量は、ソールがクラブの性能及び/又は許容度をカスタマイズすることを目的として、クラブヘッドの設計に加えられる追加の質量である。理想的なクラブの設計においては、従来のつまり所望のスウィング重量を維持しつつ、クラブの性能をカスタマイズするための大きな能力を設計者に与えるために、構造上の質量が(弾性を犠牲にすることなく)最小限に抑えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
構造上の総質量を最小限に抑えるために、ほとんどのメタル・ウッドは概して、高強度で軽い金属合金から形成された薄い金属面と、中空構造のシェルを採用している。そのような設計は、構造上の質量を減らす効果があるが、複雑な多段階の製造プロセスを要し、進歩し続ける合金のコストの制約があるために、さらなる進歩が制限されているのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ゴルフクラブヘッドが、本体とフェイスプレート・インサートを含む。本体は、フェイスプレート・インサートを受けることができるように窪んでいる棚(シェルフ)状部を有する環状のフェイスサポート(支持部材)を含む。フェイスサポート・インサートは、打撃面と、打撃面の反対側にある背面とを含む。窪んでいる棚状部にフェイスプレート・インサートの背面が当接するように、フェイスプレート・インサートは、環状のフェイス内に配置されている。フェイスプレート・インサートは、キャビティの奥まで亘るように配置されたポリマー材料を含むとともに、少なくとも約220MPaの引張強度を有する。一実施例においては、ポリマー材料は、ガラス繊維、炭素繊維(カーボンファイバ)又はグラファイト繊維で充填されたポリアミドである。
【0011】
一実施例においては、フェイスプレート・インサートは、ポリマー材料と接触するように配置された金属製の打撃プレートから形成されている。この実施例においては、金属製の打撃プレートはその後、フェイスプレート・インサートの打撃面を形成し得る。金属製の打撃プレートは、該金属製の打撃プレートからポリマー材料内まで延在する1つ又は複数の突起を使ってポリマー材料に機械的に結合され、且つ/或いはポリマー材料と一緒に型成形され得る。そのような突起は、例えば、金属製の打撃プレートの背面にポリマー材料を塗布するためのオーバーモールド工程の際に、ポリマー材料層内に埋め込まれ得る。そして、金属製の打撃プレートは、打撃面内まで窪んでいて該金属製の打撃プレートについて凹状の複数の溝を含み得る。
【0012】
一実施例においては、ラミネート(積層)は、ポリマー材料と接触するように配置された金属製の後方プレートをさらに含み、フェイスプレート・インサートの背面を形成する。こうして、金属製の打撃プレートは、金属製の後方プレートとはポリマー材料の反対側に配置され得る(すなわち、様々な層が金属−ポリマー−金属ラミネートを形成する)。
【0013】
一実施例においては、ゴルフクラブヘッドは、開放された中央のキャビティを有するアイアン型式のクラブヘッドである。「開放されたキャビティ」とは、本体とフェイスプレート・インサートとが協働して該キャビティの一部のみを取り囲んでいることによって開放されているキャビティのことである。他の実施例においては、ゴルフクラブヘッドは、閉塞された中央のキャビティを有するウッド型式のクラブヘッド(例えば、メタル・ウッド、ドライバー、フェアウェイウッド、又はハイブリッド(混成型)アイアン)である。「閉塞されたキャビティ」とは、本体とフェイスプレート・インサートとが協働して該キャビティの全体を取り囲んでいることによって閉塞されているキャビティのことである。
【0014】
本発明の上記の特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、添付の図を参照しつつ発明を実施するための形態の詳細な説明を読むことにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】ゴルフクラブ本体を概略的に示す前方斜視図。
【
図3】ゴルフクラブ本体を概略的に示す後方斜視図。
【
図4A】ポリマー製のフェイスプレートを有しかつ開放されたキャビティを有するゴルフクラブの第1の実施例を概略的に示す断面図。
【
図4B】ポリマー製のフェイスプレートを有しかつ開放されたキャビティを有するゴルフクラブの第2の実施例を概略的に示す(例えば
図1の線4−4に沿って切り出された)断面図。
【
図4C】ポリマー製のフェイスプレートを有しかつ開放されたキャビティを有するゴルフクラブの第3の実施例を概略的に示す(例えば
図1の線4−4に沿って切り出された)断面図。
【
図5A】ポリマー製のフェイスプレートを有しかつ閉塞されたキャビティを有するゴルフクラブの第1の実施例を概略的に示す(例えば
図1の線4−4に沿って切り出された)断面図。
【
図5B】ポリマー製のフェイスプレートを有しかつ閉塞されたキャビティを有するゴルフクラブの第2の実施例を概略的に示す断面図。
【
図5C】ポリマー製のフェイスプレートを有しかつ閉塞されたキャビティを有するゴルフクラブの第3の実施例を概略的に示す断面図。
【
図6】ゴルフクラブヘッドの本体とフェイスプレートとの間のインタフェイスの一部を拡大して概略的に示す(例えば
図4Cの領域Aから切り出された)断面図。
【
図7】
図6のゴルフクラブヘッド一部を拡大して概略的に示す断面図であって、本体とフェイスプレートとの間に配置された結合材料を含む図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
各図に亘って同様の参照符号は同一の或いは互いに対応する構成要素を示す。
図1は、アイアン型式のゴルフクラブヘッド10(すなわち「クラブヘッド10」)を概略的に示す斜視図であり、ゴルフクラブヘッド10は概して、フェイスプレート12と本体部14(すなわち「本体14」)を含む。
図1に概略的に示されているように、クラブヘッド10は長細のシャフト16の端部に取り付けられており、このシャフト16をユーザが握ってスウィングすると、クラブヘッド10が弧を描くように動く。
【0017】
クラブヘッド10のフェイスプレート12は概して、通常のスウィングの際にゴルフボールと接触する打撃(ヒット)面18を画定する。打撃面18は、フェイスプレート12内まで概ね凹状に窪んでいる複数の溝20を含む。打撃面18は、実質的に平面である場合もあれば、クラブヘッド10から突き出るように少し凸状つまり弧を描くように湾曲している場合もある。一般に認識されているように、打撃面18は、クラブがニュートラル(中立的)な打撃位置にあるときに、垂直面に対してある角度となるように配置され得る。この角度は一般に、ロフト角と呼ばれ、つまりはクラブの傾斜のことである。ウッド型式のクラブヘッド(ハイブリッド・ウッドを含む)のロフト角は、典型的には、約8.5°〜約24°であり、アイアン型式のクラブのロフト角は、典型的には、約18°〜約60°であるが、他のロフト角を採用することも可能であり実際に市販されているものもある。
【0018】
クラブヘッド10の本体14は、一般に、フェイスプレート12を支持するとともに、フェイスプレート12と長細のシャフト16との間の接続手段を提供するように構成されている。引き続き
図1を参照すると、本体14は、概して、低位部22(すなわち「ソール22」)、ホーゼル24、かかと部26及びつま先部28を含み得る。ホーゼル24は、かかと部26付近に配置され、ヘッド10を受け、且つ/或いは長細のシャフト16にヘッド10を繋ぐように構成され得る。軸30は、クラブヘッド10の方向に関連した部分を更に画定し、これらの方向は、フェイス14を貫通している前方−後方軸32(概して、クラブヘッド10の前後に延びる部分/方向を指し示す)と、前方−後方軸32と直交する方向に延びている鉛直方向軸34と、前方−後方軸32及び鉛直方向軸34との両方に直交する方向に延びているつま先−かかと軸36と、を含む。
【0019】
図2及び
図3は概して、本体14を概略的に示す斜視図であり、前方から見た図(すなわち、
図2の外観40)と、後方から見た図(すなわち、
図3の外観42)である。図示されているように、本体14は概して、中央のキャビティ46を画定する環状のフェイスサポート44を含むとともに、フェイスプレート12を受けて支持するように構成された段状の内面48(すなわち、「窪んでいる棚状部48」)を含む。この態様においては、クラブは、「キャビティ・バック」型式のクラブであると考えられ、この「キャビティ・バック」型式のクラブにおいては、クラブの中央領域にボイドつまり「キャビティ」46を残していることにより、クラブヘッドの質量が外周縁の方に寄せられている。
【0020】
本体14は、一般に、鋳造又は上述したプロセスのいずれかを用いて適切な形状に形成された金属又は金属合金である。適切な金属合金の例としては、スチール(例えば、AISI型番1020又はAISI型番8620のスチール)、ステンレススチール(例えば、AISI型番304又はAISI型番630のステンレススチール)又はチタン(例えば、Ti−6Al−4Vのチタン合金)があるが、当技術分野で周知の他の金属合金、アモルファス金属合金、及び/又は非金属材料も同様に使用され得る。
【0021】
図4A、
図4B及び
図4Cは、
図1に示したヘッド10と同様のゴルフクラブヘッド10の3つの実施例50,52,54(
のそれぞれ)を概略的に示す断面図である。特には、各実施例50,52,54はそれぞれ、金属製の本体14に固着されたフェイスプレート12を示す。高価な金属合金を使うことなくフェイスプレート12の構造上の質量を減らすために、各実施例におけるフェイスプレート12は、ボールとの衝撃で繰り返し受ける応力に耐えるのに充分な強度が得られるポリマー材料から形成された層を含むとよい。そのような材料の例としては、ある種のポリアミド、ポリイミド、ポリアミド−イミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート、エンジニアリングポリウレタン、及び/又は他の同様の材料がある。概して、ポリマー材料は、熱可塑性の場合もあれば熱硬化性の場合もあり、何も充填されてない場合もあれば、ガラス繊維、炭素繊維又はグラファイト繊維で充填されている場合もある。また、強度の増大を促進するために、他の繊維(ファイバ)、粒子状充填剤などの他の適切な充填剤
(フィラー)を含む場合もあれば、添加剤を含む場合もある。一実施例においては、適切な材料が少なくとも約180MPaの引張強度(伸長強度)を有する一方で、他の実施例においては、少なくとも約200MPa又は少なくとも約220MPaの引張強度を有する。
【0022】
図4Aに概略的に示されるゴルフクラブヘッド10の一実施例50においては、フェイスプレート12の全体がポリマー材料/複合材料から形成されている(以下「全ポリマー製」のフェイスプレート60という)。全ポリマー製のフェイスプレート60は、例えば、射出成形、圧縮成形、熱成形又は同様のプロセスを用いて、熱可塑性材料又は熱硬化性材料から形成されている。型成形プロセスは、フェイスプレート12の前方の打撃面内に一体的に複数の溝20を形成し得る。
【0023】
図4Bに概略的に示されるゴルフクラブヘッド10の一実施例52においては、フェイスプレート12は、金属製の打撃プレート64に融合されたポリマーからなるベース層62を含む。そのような設計においては、全ポリマー製のフェイスプレートの設計60と比較して、スクラッチ(引っ掻くこと)及び/又は他の面摩擦に対してフェイスプレート12の耐性が高い。金属製の打撃プレート64を形成するのに使用され得る材料の例としては、ステンレススチール(例えば、AISI型番304又はAISI型番630のステンレススチール)又はチタン(例えば、Ti−6Al−4Vのチタン合金)があるが、当技術分野で周知の他の金属合金、アモルファス金属合金、及び/又は非金属材料も使用され得る。
【0024】
図4Bに示される実施例52においては、例えば、最初に金属製の打撃プレート64が製造され、打撃プレート64の後側を覆うようにポリマーのベース層62が型成形される。この結果、金属製の打撃プレート64にポリマーのベース層62が機械的及び/又は化学的に結合され得る。機械的結合の例としては、オーバーモールド工程の際に、打撃プレート64からポリマーのベース層62内まで延在する1つ又は複数の機械的固定具66を埋め込むことがある。そのような機械的固定具66としては、例えば、打撃プレート64の背面68から延在する1つ又は複数のタブ、ポスト、フック、あり継ぎのほぞ、又は同様のインターロッキング機能部がある。これらの機械的固定具66は、ポリマーでオーバーモールド加工されると、ポリマー層62内に埋め込まれるように捕捉されることにより、機械的結合を支援する。
【0025】
最後に、
図4Cに示されるゴルフクラブヘッド10の一実施例54においては、フェイスプレート12は、金属製の打撃プレート64と金属製の後方プレート72との間に配置されたポリマー層70を含む(すなわち、打撃プレート64と後方プレート72は、ポリマー層70の両側に配置されている)。
図4Bにおいて説明した実施例52と同様に、金属製の打撃プレート64は、スクラッチ(引っ掻き)及び/又は他の面摩擦に対するフェイスプレート12の耐久性を増大させる。この実施例54においては、打撃プレート64と後方プレート72との間に、2つのプレート64,72間の機械的結合を形成する1つ又は複数の支柱74が延びている。2つのプレート64,72間にポリマー層70が射出成形されると、(ポリマー層の)材料が1つ又は複数の支柱を取り囲むことにより該ポリマー層70を所定の位置にしっかりとロックする。これは、そのようなラミネートを構築する一態様であるが、ポリマー層と1つ又は複数の金属層との間の安定的な結合を得るために、他の方法も同様に使用され得る。そのような方法としては、機械的な相互接続を支援するために、金属層上の粗面仕上げを使用すること、エポキシ樹脂等の化学的接着剤を使用すること、及び/又はそれぞれの層間に圧力荷重を加え得るクリップ/固定具を使用することがある。
図4Bと
図4Cは、フェイスプレート12用の2つの互いに異なる金属ポリマーのラミネート構成を示しているが、他のラミネート構成とすることも同様に可能であり、他のラミネート構成においては、金属製の後方プレート72に加えて、ポリマーの打撃面18、及び/又はポリマー層内に埋め込まれた1つ又は複数の金属製の支持プレートを備え得る。
【0026】
図4A、
図4B及び
図4Cにさらに示されるように、棚状部48は、環状のフェイスサポート44の前面76からフェイスプレート12の幅とほぼ同じ距離だけ窪んでいる。この態様においては、フェイスプレート12が環状のフェイスサポート44内に配置されて、窪んでいる棚状部48に当接したときに、フェイスプレート12の打撃面18が、環状のフェイスサポート44の前面76とほぼ面一となる。一実施例においては、フェイスプレート12は、約2mm〜約6mmの外端付近の幅(すなわち、種々の溝を除外している)を有するが、さらに幅の広いフェイスプレート12又はさらに幅の狭いフェイスプレート12も同様に使用され得る。
【0027】
フェイスプレート12内にポリマー層を使用することにより、フェイスプレートの質量が最大で約30gも減少し得る。必要に応じて、この質量は、裁量に委ねられた(すなわち、クラブの設計者の裁量で特別に配置された)ウェイトとしてクラブ本体14に亘って再分布され得る。例えば、この質量は、クラブヘッド10の慣性モーメントを大きくするために、本体14の周縁に分布され得る(すなわち、フェイスプレートから外側の環状のフェイスサポート44寄りに質量が片寄っている)。或いは、クラブヘッド10の重心を変えたり動かしたりするために(例えば、ソール22(すなわち、低位部)、つま先部28、及び/又はフェイスプレート12から後方寄りに重心を移すために)、特定の位置に質量を集中させてもよい。例えば、
図4A、
図4B及び
図4Cに示されるように、ウェイト78が、埋め込まれているか、或いはソール22の後方部80に寄せてクラブヘッド10の本体14に固着されている。ウェイト78は、例えば、他の金属と比較して高い材料密度(すなわち、質量/体積)を有するタングステンなどの金属のウェイトである。一実施例においては、ウェイトは、選択的に取り外し可能に形成されており、例えば所定の位置に螺入される。他の実施例においては、クラブヘッド10を傷つけることなく取り出すことはできないようにウェイトの全体がクラブ内に一体化されている。
【0028】
図1〜
図4Cは、アイアン型式のクラブヘッド10(すなわち、「開放されたキャビティ」を有するクラブヘッド)に関するポリマー製のフェイスプレート構造を示しているが、これらのポリマーのフェイスプレートの設計は、
図5A、
図5B及び
図5Cの実施例102,104,106に概略的に示されている「閉塞されたキャビティ」を有するウッド型式のクラブヘッド100にも同様に使用され得る。本明細書中で言及される閉塞されたキャビティを有するクラブヘッドは、フェイスプレート12と本体14とが協働してキャビティの一部のみが取り囲まれている開放されたキャビティを有するクラブヘッドとは異なり、キャビティ全体が取り囲まれているものである。
【0029】
図4A、
図4B及び
図4Cに示したアイアンの実施例50,52,54と同様に、
図5Aは、全ポリマー製の構造を有するフェイスプレート108を備えたクラブヘッドの実施例102を示し、
図5Bは、ポリマーからなるベース層112に固着された金属製の打撃面110を有するフェイスプレートを備えたクラブヘッドの実施例104を示し、
図5Cは、金属の打撃面110と金属製の後方プレート116との間に配置されたポリマー層114を有するフェイスプレートを備えたクラブヘッドの実施例106を示す(すなわち、ポリマー層114の両側に打撃プレート110と後方プレート116が配置されている)。
【0030】
図6及び
図7は、
図4Cに示した実施例54の領域Aと同様のクラブヘッド10の一部を拡大して概略的に示す断面図である。特には、
図6及び
図7は、概して、エポキシ樹脂の接着剤、シアノアクリレートの接着剤、他の樹脂系の硬化可能材料(一般に、「結合材料」といわれる)を使用することなどにより、クラブ本体14にフェイスプレート12を固着させる態様を示している。
【0031】
図6に概略的に示されるように、フェイスプレート12は、ある距離120だけ環状のフェイスサポート44の内壁122から離間しているとよい。この距離120は、比較的短いが、結合材料126の薄い層を収容することが可能なチャネル124を形成するのに充分であるとよい(
図7を参照)。一実施例においては、この距離120は、例えば約0.1mm〜約0.5mmであるが、これに限定しない。結合材料126の単なるせん断強度を超えた強度にまでフェイスプレート12と本体14との間の結合強度を高めるために、チャネル124はさらに、機械的結合を支援するように構成されているとよい。例えば、第1の凹部128が、環状のフェイスサポート44の内壁122内に配置されており、第2の凹部130が、チャネル124の反対側の位置にあるフェイスプレート12内に配置されている。他の実施例においては、機械的結合を支援する単一の凹部130がフェイスプレート12内にのみ存在する(すなわち、本体14内に凹部128がない)場合もある。
【0032】
図7に概略的に示されるように、クラブヘッド10の本体14にフェイスプレート12を固定するために、フェイスプレート12と環状のフェイスサポート44との間のチャネル124が、樹脂からなる結合材料126で充填され得る。結合材料126は、第1の凹部128及び第2の凹部130の両方を充たし、(固化後に)結合の保持強度を増大させる(すなわち、結合材料126の単なるせん断強度を超えた強度にする)機械的インターロックを形成し得る。第1の凹部128及び第2の凹部130の断面のみが示されているが、これらの凹部は、フェイスプレート12及び環状のサポート44の一部だけに延在している場合もあれば、周縁全体に亘って延在している場合もある。
【0033】
本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の範囲内において本発明を実施するための様々な別の設計及び実施例があることを理解されよう。本明細書に記載されている事項のすべて及び添付の図は、図示するためのものであり、限定することを意図するものではない。
【0034】
なお、「1つの」、「少なくとも1つの」及び「1つ又は複数の」という語句は互換性があるものとして使用されており、少なくとも1つ該物品が存在することを意味する。特に明示の記載がない限り、複数のこれらの物品が存在し得る。本明細書及び特許請求の範囲において、(例えば、量や条件の)パラメータのすべての数値は、数値の前に「約」という語句が実際にあるか否かに拘わらず、すべての状況において「約」という語句によって修飾され得るものとして理解されたい。「約」という語句は、記載した数値が若干正確でないこと(正確な値に近づいていること、理論的な値に近いこと、又は近似)があっても、これを許容し得ることを示す。或いは、「約」という語句によって与えられる不正確性が当技術分野で許容されない場合にも、本明細書中における「約」との語句は、通常の測定方法及び測定のパラメータを使用することに起因する変動が生じ得ることを示す。加えて、開示された範囲には、範囲内のすべての値及び更に分割された範囲が含まれ得る。
本発明の説明において、便宜上、「ポリマー」と「樹脂」との語句は、樹脂、オリゴマー、及びポリマーを含むものとして交換可能に用いられている。「備える」、「備えている」、「含む」及び「有する」の語句は包含することを意図し、従って、記載した物品の存在を特定するが、他の物品の存在を除外することを意図していない。本明細書中で使用される「や」という語句は、1つ又は複数の列挙された種々の物品のすべての組合せを含み得る。換言すれば、「や」は、「及び/又は」を意味する。第1の、第2の、第3の、などの語句が様々な物品を互いに区別するために使用されている場合、これらの指定は単に便宜上の表示であり、物品の序列を限定するものではない。