特許第6167243号(P6167243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6167243
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】電気二重層キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/68 20130101AFI20170710BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20170710BHJP
   H01G 11/28 20130101ALI20170710BHJP
【FI】
   H01G11/68
   H01G11/42
   H01G11/28
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-543085(P2016-543085)
(86)(22)【出願日】2016年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2016068124
【審査請求日】2016年6月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511188680
【氏名又は名称】TOCキャパシタ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592005294
【氏名又は名称】芳尾 真幸
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】芳尾 真幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 直哉
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−251965(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/106749(WO,A1)
【文献】 特開2010−135316(JP,A)
【文献】 特開2016−054277(JP,A)
【文献】 特開2007−265852(JP,A)
【文献】 特開2012−049142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G11/00−11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
60℃、3.5Vの定電流定電圧連続充電試験において放電容量維持率が80%以上を維持できる時間が1000時間以上である電気二重層キャパシタであって、
正極は正極活物質として黒鉛を含み、
正極側の集電体はアルミニウム材であり、
前記アルミニウム材は非晶質炭素被膜のみによって被覆され、
前記非晶質炭素被膜の厚みが60nm以上、300nm以下、
であることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
負極側の集電体は、非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材、エッチドアルミニウム、及び、アルミニウム材からなる群から選択されたものである
請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記黒鉛は菱面体晶を含む請求項1又は2のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
負極は、負極活物質として活性炭、黒鉛、ハードカーボン、及び、ソフトカーボンからなる群から選択された炭素質材料を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気二重層キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気エネルギーを貯蔵する技術として、電気二重層キャパシタ(例えば、特許文献1参照)や二次電池が知られている。電気二重層キャパシタは、寿命、安全性、出力密度が二次電池よりも格段に優れている。しかしながら、電気二重層キャパシタは、二次電池に比べてエネルギー密度(体積エネルギー密度)が低いという課題がある。
ここで、電気二重層キャパシタに蓄積されるエネルギー(E)は、キャパシタの静電容量(C)と印加電圧(V)を用いてE=1/2×C×Vと表され、エネルギーは静電容量と印加電圧の二乗とに比例する。従って、電気二重層キャパシタのエネルギー密度を改善するために、電気二重層キャパシタの静電容量や印加電圧を向上する技術が提案されている。
【0003】
電気二重層キャパシタの静電容量を向上する技術としては、電気二重層キャパシタの電極を構成する活性炭の比表面積を増大させる技術が知られている。現在、知られている活性炭は、比表面積が1000m/g〜2500m/gである。このような活性炭を電極に用いた電気二重層キャパシタでは、電解液として第四級アンモニウム塩を有機溶媒に溶解させた有機電解液や、硫酸等の水溶液電解液等が用いられている。
有機電解液は使用できる電圧範囲が広いため、印加電圧を高めることができ、エネルギー密度を向上することができる。
【0004】
電気二重層キャパシタの印加電圧を向上する技術としては、電気二重層キャパシタの原理を利用したリチウムイオンキャパシタが知られている。負極にリチウムイオンをインターカーレート、ディインターカーレートできる黒鉛あるいは炭素を用い、正極に電解質イオンを吸脱着できる電気二重層キャパシタの電極材と同等の活性炭を用いるものは、リチウムイオンキャパシタと呼ばれている。また、正極あるいは負極のいずれか一方に電気二重層キャパシタの電極材と同等の活性炭を用い、もう一方の電極にファラデー反応が起こる電極として、金属酸化物、導電性高分子を用いるものについては、ハイブリッドキャパシタと呼ばれている。リチウムイオンキャパシタは、電気二重層キャパシタを構成する電極のうち、負極がリチウムイオン二次電池の負極材料である黒鉛やハードカーボン等で構成され、その黒鉛やハードカーボン内にリチウムイオンが挿入された電極である。リチウムイオンキャパシタは、一般的な電気二重層キャパシタ、すなわち、両極が活性炭で構成されるものよりも印加電圧が大きくなるという特徴がある。しかし、電極に黒鉛を用いた場合、電解液として、プロピレンカーボネートを用いることができないという課題がある。電極に黒鉛を用いた場合、プロピレンカーボネートが電気分解して、黒鉛の表面にプロピレンカーボネートの分解生成物が付着し、リチウムイオンの可逆性が低下する。プロピレンカーボネートは、低温でも動作可能な溶媒である。プロピレンカーボネートを電気二重層キャパシタに適用した場合、その電気二重層キャパシタは−40℃でも作動することができる。そこで、リチウムイオンキャパシタでは、プロピレンカーボネートが分解し難いハードカーボンが電極に用いられている。しかし、ハードカーボンは、黒鉛に比べて電極の体積当たりの容量が低く、電圧も黒鉛に比べて低くなる(貴な電位になる)。そのため、リチウムイオンキャパシタのエネルギー密度が低くなる等の課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−046584号公報
【特許文献2】特開2010−040180号公報
【特許文献3】特許第5578925号
【特許文献4】特許第4194052号
【特許文献5】特開2014−080685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の正極及び負極の活物質として活性炭を用いた電気二重層キャパシタでは更なる高エネルギー密度化は難しい。これは、活性炭を用いた従来の電気二重層キャパシタでは2.5〜2.7Vの範囲で使用されているが、3.0Vを超えると活性炭に内在する水分や活性炭表面の官能基が分解してガスが発生するため、印加電圧を高めることが難しいからである。
【0007】
また、上述したように低温特性を重視した場合には高容量の黒鉛を負極に使用するのが難しいリチウムイオンキャパシタも同様に、更なる高エネルギー密度化は難しい。また、リチウムイオンキャパシタでは、リチウムイオン電池の負極と同様に集電体に銅箔を用いているために2V以下の過放電をすると、銅が溶出する、あるいは充放電容量が低下する等の課題がある。このため、0Vまで放電できる電気二重層キャパシタに比べると使用方法が限定されている等の課題がある。
【0008】
新しい概念の電気二重層キャパシタとして、活性炭の代わりに黒鉛を正極活物質に用いる疑似容量を利用したキャパシタが開発された(例えば、特許文献2参照)。このキャパシタは正極に疑似容量を用いたキャパシタなので、厳密には電気二重層キャパシタではないが、本発明では広義の意味で電気二重層キャパシタと呼ぶこととした。特許文献2には、正極活物質に活性炭を用いる従来の電気二重層キャパシタでは正極に2.5Vを超える電圧を印加すると電界液の分解が生じてガスが発生するのに対して、正極活物質に黒鉛を用いる電気二重層キャパシタでは3.5Vの充電電圧でも電界液の分解を招来せず、正極活物質に活性炭を用いる従来の電気二重層キャパシタよりも高い電圧で動作できることが記載されている。黒鉛の比表面積は活性炭の比表面積の数百分の1であり、この電解液分解作用の違いはこの大きな比表面積の違いに起因する。
【0009】
このように黒鉛を正極活物質に用いた電気二重層キャパシタは、高いエネルギー密度を実現し得る点が魅力的であり、更なる高エネルギー密度が実現できる可能性も秘めている。
しかしながら、黒鉛を正極活物質に用いる電気二重層キャパシタでは、耐久性が十分ではないため、実用化が阻まれていた。
【0010】
ここで、耐久性の試験は通常、温度を高めて加速試験(高温耐久性試験、充放電サイクル試験)によって行う。その試験はJIS D 1401:2009に記載されている「耐久性(高温連続定格電圧印加)試験」に準じた方法で行うことができる。温度を室温から10℃上昇させると劣化速度が約2倍になると言われている。高温耐久性試験としては例えば、60℃の恒温槽で2000時間、所定の電圧(本発明では、3V以上)で保持(連続充電)し、その後室温に戻して充放電を行ない、そのときの放電容量を測定する試験がある。この高温耐久性試験後に、初期の放電容量に対して放電容量維持率が80%以上を満足することが望ましいと考えられる。
【0011】
ここで、電気二重層キャパシタの低耐久性につながる経時劣化の原因として考えられているメカニズムとしては例えば、以下のようなものがある(例えば、特許文献3参照)。すなわち、電気二重層キャパシタ内には、電解質溶液中の残存水分、組み立て時に混入する水分があり、また、活物質、導電補助剤、バインダーおよびセパレータ等の表面および内部にも物理吸着あるいは化学結合した水分が存在する。これらの水分は、充放電を繰り返し行う間に、水として脱離し、電圧印加により電気分解し、ガスを発生するとともに、電解液の分解を引き起こし、分解物を生成する。これらの分解生成物は活物質の表面を被覆することによって、活性炭の比表面積を低下させ、静電容量の低下を引き起こす。また、これらの分解生成物はセパレータの開口部を閉塞することにより抵抗の上昇も引き起こす、というものである。さらに、活性炭表面の残存官能基、例えばOH基やH基、有機物基等が高電圧時に分解してガスによる内圧上昇や、分解物が活性炭表面を覆う等による影響もある。
このように従来型の電気二重層キャパシタの耐久性を阻む要因は様々存在し、またそれら要因が複雑に絡み合っていると考えられ、耐久性を阻む主要な要因を特定できていなかった。使用する条件に応じて、印加電圧や使用環境温度を規定したり、ガス弁を設けて一定圧力以上に内圧が上昇した場合にガスを放出することでセルの性能を維持しているのが実情である。
高電圧ほど劣化が進みやすいこともあり、耐久性を阻む主要な要因を特定し、それを解決して耐電圧が3V以上の電気二重層キャパシタを実現することは難しいと考えられていた。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、60℃、3.5Vの定電流定電圧連続充電試験において放電容量維持率が80%以上を維持できる時間が1000時間以上である電気二重層キャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意検討した結果、黒鉛を正極活物質に用いた電気二重層キャパシタについて、耐久性を阻む主な要因が集電体の腐食にあることを突き止め、本発明に想到した。
【0014】
本発明は、以下の手段を提供する。
【0015】
(1)60℃、3.5Vの定電流定電圧連続充電試験において放電容量維持率が80%以上を維持できる時間が1000時間以上である電気二重層キャパシタであって、正極は電極活物質として黒鉛を含み、正極側の集電体はアルミニウム材であり、前記アルミニウム材は非晶質炭素被膜で被覆され、前記非晶質炭素被膜の厚みが60nm以上、300nm以下であることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
(2)負極側の集電体は、非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材、エッチドアルミニウム、及び、アルミニウム材からなる群から選択されたものである(1)に記載の電気二重層キャパシタ。
(3)前記黒鉛は菱面体晶を含む(1)又は(2)のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ。
(4)負極は、電極活物質として活性炭、黒鉛、ハードカーボン、及び、ソフトカーボンからなる群から選択された炭素質材料を含む(1)〜(3)のいずれか一つに記載の電気二重層キャパシタ。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐電圧が3V以上の電気二重層キャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】DLC膜厚と定電流定電圧連続充電試験前後での放電容量改善率および放電容量維持率との関係を示すものである。
図2】実施例1および比較例2のコインセルについて定電流定電圧連続充電試験を行った結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した電気二重層キャパシタについて、図面を用いてその構成を説明する。
なお、本発明の効果を奏する範囲で、本明細書に記載した以外の構成を備えてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタは、60℃、3.5Vの定電流定電圧連続充電試験において放電容量維持率が80%以上を維持できる時間が1000時間以上である電気二重層キャパシタであって、正極、負極、電解液、セパレータを備え、正極は電極活物質として黒鉛を含み、正極側の集電体はアルミニウム材であり、アルミニウム材は非晶質炭素被膜で被覆され、非晶質炭素被膜の厚みが60nm以上、300nm以下であることを特徴とする。
【0020】
正極は、集電体(正極側の集電体)上に正極活物質層が形成されてなる。
正極活物質層は、正極活物質と、バインダーと、必要に応じた量の導電材とを含むペースト状の正極材料を、正極集電体上に塗布し、乾燥して、形成することができる。
【0021】
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、アクリル系、オレフィン系、カルボキシメチルセルロース(CMC)系の単独、もしくは2種類以上の混合系を用いることができる。
【0022】
導電材も、正極活物質層の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電材を使用できる。例えば、カーボンブラック、炭素繊維(カーボンナノチューブ(CNT)、VGCF(登録商標)等を含み、カーボンナノチューブに限らない)等を用いることができる。
【0023】
本発明の電気二重層キャパシタで用いる正極活物質は、黒鉛を含むものである。
黒鉛としては、人造黒鉛、天然黒鉛のいずれも用いることができる。また、天然黒鉛としては鱗片状と土状が知られている。天然黒鉛は、採掘した原鉱石を粉砕し、浮遊選鉱と呼ばれる選鉱を繰り返すことで得られる。また、人造黒鉛は例えば、高温度によって炭素材料を焼成する黒鉛化工程を経て製造されるものである。より具体的には例えば、原料のコークスにピッチなどの結合剤を加えて成形し、1300℃付近まで加熱することで一次焼成し、次に一次焼成品をピッチ樹脂に含浸させ、更に3000℃近い高温で二次焼成することで得ることができる。
【0024】
また、黒鉛の結晶構造は大きく分けて、ABABからなる層構造の六方晶と、ABCABCからなる層構造の菱面体晶がある。これらは条件によってそれらの構造単独、あるいは混合状態になるが、いずれの結晶構造のものも混合状態のものも用いることができる。例えば、後述する実施例で用いたティムカル(TIMCAL)社製KS−6(商品名)の黒鉛は菱面体晶の比率が26%であり、大阪ガスケミカル株式会社製の人造黒鉛であるメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)は菱面体晶の比率0%である。
【0025】
本発明で正極活物質として用いている黒鉛は、従来の電気二重層キャパシタで用いられている活性炭とは静電容量の発現メカニズムが異なる。活性炭の場合にはその大きな比表面積を活かし、その表面に電解質イオンが吸脱着するものである。一方、黒鉛の場合は電解質イオンであるアニオンが黒鉛の層間に挿入脱離(インターカーレーション−ディインターカーレーション)することで静電容量を発現する。両者は発現メカニズムが異なり、材料の表面に電解質イオンが吸着し、電気二重層を形成するという電気二重層キャパシタの原理と異なるので、厳密には別の蓄電デバイスに相当するが、本明細書では黒鉛を用いた場合でも静電容量を発現するので、広義の意味で黒鉛を用いた場合でも電気二重層キャパシタと呼ぶことにする。
【0026】
正極側の集電体は、非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材である。
基材であるアルミニウム材としては一般的に集電体用途で使用されるアルミニウム材を用いることができる。
アルミニウム材の形状としては、箔、シート、フィルム、メッシュなどの形態をとることができる。集電体としてはアルミニウム箔を好適に用いることができる。
また、そのアルミニウム材としてプレーンなものの他、後述するエッチドアルミニウムを用いてもよい。
アルミニウム材が箔、シート又はフィルムの場合の厚みは限定されないが、電池自体のサイズが同じ場合、薄いほどセルケースに入れる活物質を多く封入できるというメリットはあるが、強度が低下するため、適正な厚みを選択する。厚みとしては10μm〜40μmが好ましく、15μm〜30μmがより好ましい。厚みが10μm未満の場合、アルミニウム材の表面を粗面化する工程、または、他の製造工程中において、アルミニウム材の破断または亀裂を生じるおそれがある。
【0027】
非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材として、エッチドアルミニウムを用いてもよい。
エッチドアルミニウムは、エッチングによって粗面化処理されたものである。エッチングは一般的に塩酸等の酸溶液に浸漬(化学エッチング)したり、塩酸等の酸溶液中でアルミニウムを陽極として電解(電気化学エッチング)する方法等が用いられる。電気化学エッチングでは電解の際の電流波形、溶液の組成、温度等によりエッチング形状が異なるのでキャパシタ性能の観点で選択できる。
【0028】
アルミニウム材は、表面に不動態層を備えているもの、備えていないもののいずれも用いることができる。アルミニウム材は、その表面に自然酸化膜である不動態膜が形成されている。ダイヤモンドライクカーボン(DLC)層をこの自然酸化膜の上に設けても、また、自然酸化膜を例えば、アルゴンスパッタリングにより除去した後に設けてもよい。
アルミニウム材上の自然酸化膜は不動態膜であり、それ自体、電解液に浸食されにくいという利点がある一方、集電体の抵抗の増大につながるため、集電体の抵抗の低減の観点では、自然酸化膜がない方がよい。
【0029】
本明細書において、非晶質炭素被膜とは非晶質の炭素膜又は水素化炭素膜であり、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、カーボン硬質膜、a−C膜、a−C:H膜等を含む。非晶質炭素被膜の成膜方法としては、炭化水素系ガスを用いたプラズマCVD法や、スパッタ蒸着法、イオンプレーティング法、真空アーク蒸着法など公知の方法を用いることができる。
なお、集電体として機能する程度の導電性を有することが望ましい。
【0030】
例示した非晶質炭素被膜の材料のうち、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)は、ダイヤモンド結合(SP)とグラファイト結合(SP)の両方が混在したアモルファス構造を有する材料であり、高い耐薬品性を有する。ただ、集電体の被膜に用いるには導電性が低いため、導電性を高めるためにホウ素や窒素をドーピングするのが好ましい。
【0031】
非晶質炭素被膜の厚みは60nm以上、300nm以下である。
非晶質炭素被膜の膜厚は、60nm未満であると薄すぎて非晶質炭素被膜の被覆効果が小さくなり、定電流定電圧連続充電試験での集電体の腐食を十分抑制できず、300nmを超えて厚すぎると非晶質炭素被膜層が抵抗体になって活物質層との間の抵抗が高くなるので、適正な厚みを適宜選択する。
非晶質炭素被膜の厚みは80nm以上、300nmであることが好ましく、120nm以上、300nmであることがより好ましい。
炭化水素系ガスを用いたプラズマCVD法によって非晶質炭素被膜を成膜した場合、非晶質炭素被膜の厚みはアルミニウム材へ注入するエネルギー、具体的には印加電圧、印加時間、温度で制御することができる。
【0032】
本発明の集電体はアルミニウム材の表面に非晶質炭素被膜を有するので、アルミニウム材が電解液に接することを阻止して、電解液による集電体の腐食を防止することができる。
【0033】
負極は、集電体(負極側の集電体)上に負極活物質層が形成されてなる。
負極活物質層は主に、負極活物質、バインダー、及び、必要に応じた量の導電材と、を含むペースト状の負極材料を、負極側の集電体上に塗布し、乾燥して、形成することができる。
【0034】
負極活物質としては、電解質イオンであるカチオンを吸脱着あるいは、挿入脱離(インターカーレーション−ディインターカーレーション)できる材料を用いることができ、例えば、活性炭、黒鉛、ハードカーボン、及び、ソフトカーボンからなる群から選択された炭素質材料を用いることができる。本発明では電解質イオンのカチオンにリチウムイオンを用いていないことも特徴である。
【0035】
負極側の集電体としては公知のものを用いることができるが、非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材、エッチドアルミニウム、及び、アルミニウム材からなる群から選択されたものを用いることができる。非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材を用いた場合、電気二重層キャパシタを高電圧で作動させたときに、高温耐久性能を向上できるので好ましい。
【0036】
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、アクリル系、オレフィン系、カルボキシメチルセルロース(CMC)系の単独、もしくは2種類以上の混合系を用いることができる。
【0037】
導電材も、負極活物質層の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電材を使用できる。例えば、カーボンブラック、炭素繊維(カーボンナノチューブ(CNT)、VGCF(登録商標)等を含み、カーボンナノチューブに限らない)等を用いることができる。
【0038】
電解液には有機溶媒を用いた有機電解液を用いることができる。電解質は、電極に吸脱着可能な電解質イオンを含む。電解質イオンの種類はイオン径ができるだけ小さな方が好ましい。具体的には、アンモニウム塩やホスホニウム塩、あるいはイオン液体等を用いることができる。アンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウム(TEA)塩、トリエチルアンモニウム(TEMA)塩等である。また、ホスホニウム塩としては、二つの五員環を持つスピロ化合物等である。スピロ化合物としてはスピロビピロリジニウム(SBP)等がある。イオン液体の場合はその種類は特に問わないが、電解質イオンの移動のし易さから粘度ができる限り低く、また導電性(導電率)が高い材料が望ましい。イオン液体を構成するカチオンとしては、具体的には、例えばイミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン等が挙げられる。イミダゾリウムイオンとしては、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(1−ethyl−3−methylimidazolium)(EMIm)イオン、1−メチル−1−プロピルピロリジウム(1−methyl−1−propyl−pyrrolizinium)(MPPy)イオン、1−メチル−1−プロピルピペリジウム(1−methyl−1−propyl−piperizinium)(MPPi)イオン等が挙げられる。
ピリジニウムイオンとしては、例えば、1−エチルピリジニウム(1−ethylpyridnium)イオン、1−ブチルピリジニウム(1−buthylpyridnium)イオン、1−ブチルピリジニウム(1−buthylpyridnium)イオン等が挙げられる。
アニオンとしては、BFイオン、PFイオン、[(CFSON]イオン、FSI(ビス(フルオロスルホニル)イミド、bis(fluorosulfonyl)imide)イオン、TFSI(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)イオン等が挙げられる。
【0039】
溶媒としてはアセトニトリルやプロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γブチロラクトン、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の単独もしくは混合溶媒を用いることができる。
【0040】
セパレータとしては、正極と負極の短絡防止や電解液保液性の確保等の理由から、セルロース系の紙状セパレータや、ガラス繊維セパレータ等が好適である。
【0041】
なお、本発明の電気二重層キャパシタで用いる非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材からなる正極側の集電体は、活性炭を正極活物質に用いた通常の電気二重層キャパシタにも効果を発揮して、従来よりも高電圧化が可能になる。しかしながら、活性炭は本発明の黒鉛正極の比表面積に比べて二桁から三桁と高いために、電極反応面積が広く電解液の分解や活性炭自身の分解、あるいは活性炭表面の官能基等が分解してガス発生によりセルの内圧を高める等の影響があり、正極活物質としての活性炭と、非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材からなる正極側の集電体との組み合わせだけでは本発明のような効果を得ることはできない。
【実施例】
【0042】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
正極活物質としてティムカル(TIMCAL)社製黒鉛(商品名:KS−6)と、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンが80:10:10wt%の比率になるように秤量後に、N−メチルピロリドンで溶解混合することで得たペーストを、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)でコーティングしたアルミニウム箔(20μm)上にドクターブレードを用いて塗布したものを正極とした。DLCコーティングしたアルミニウム箔(以下、「DLCコートアルミニウム箔」ということがある)は正極側の集電体であり、非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材に相当する。DLCコートアルミニウム箔の製造法としては、純度99.99%のアルミニウム箔に対して、アルゴンスパッタリングでアルミニウム箔表面の自然酸化膜を除去した後、そのアルミニウム表面近傍にメタン、アセチレンおよび窒素の混合ガス中で放電プラズマを発生させ、アルミニウム材に負のバイアス電圧を印加することによりDLC膜を生成させた。ここで、DLCをコーティング(被覆)したアルミニウム箔上のDLC膜の厚みを、ブルカー(BRUKER)社製触針式表面形状測定器DektakXTを用いて計測したところ、135nmであった。
【0044】
次に関西熱化学社製の活性炭(商品名:MSP−20)とアセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンが80:10:10wt%の比率になるように秤量後に、N−メチルピロリドンで溶解混合することで得たペーストを日本蓄電器工業株式会社製エッチドアルミニウム箔(20μm)上にドクターブレードを用いて塗布したものを負極とした。
【0045】
次に、上記正極と負極を直径16mmに打ち抜いたものを150℃で24時間真空乾燥した後、グローブボックスへ移動した。これらを、紙セパレータ(商品名:TF40−30、日本高度紙工業社製)を介して積層し、有機電解液として、1Mのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TEA−BF4)0.1mL加えて、アルゴングローブボックス中で2032型コインセルを作製した。
【0046】
[実施例2]
実施例1の負極側の集電体に、実施例1において正極側の集電体として用いたものと同一のDLCコートアルミニウム箔(20μm)を用いたこと以外は実施例1と同様のコインセルについて、同様の評価を行った。
【0047】
[実施例3]
実施例1の正極活物質として、大阪ガスケミカル株式会社製人造黒鉛(商品名:MCMB6−10)を用いたこと以外は実施例1と同様のコインセルについて、同様の評価を行った。
【0048】
[実施例4]
DLCコーティング条件(印加電圧や印加時間、温度)を変化させることで得た、DLC膜厚が0nmから420nmのDLCコートアルミニウム箔(20μm)を用いたこと以外は実施例1と同様のコインセルについて、同様の評価を行った。なお、DLC膜厚が0nmのアルミニウム箔を用いた場合は本発明の実施例ではなく、後述する比較例1にあたる。
DLC膜厚と定電流定電圧連続充電試験前後での放電容量改善率および放電容量維持率との関係を図1に示した。なお、放電容量改善率は、充放電試験装置(ナガノ社製、BTS2004)を用いて、60℃の恒温槽中で0.4mA/cmの充電電流、3.5Vで2000時間の連続充電試験(定電流定電圧連続充電試験)を行い、定電流定電圧連続充電試験開始前の放電容量に対して定電流定電圧連続充電試験後の放電容量維持率が80%以下になった充電時間を寿命とし、比較例1(DLC膜厚が0nm(DLC膜なし))の寿命になった時間を100と規格化して評価したものである。
【0049】
[比較例1]
厚みが20μmのプレーンのアルミニウム箔を正極側の集電体に用いたこと以外は実施例1と同様のコインセルについて、同様の評価を行った。
【0050】
[比較例2]
厚みが20μmの日本蓄電器工業株式会社製エッチドアルミニウム箔を正極側の集電体に用いたこと以外は実施例1と同様のコインセルについて、同様の評価を行った。
【0051】
[比較例3]
厚みが20μmのプレーンのアルミニウム箔を負極側の集電体に用いたこと以外は実施例2と同様のコインセルについて、同様の評価を行った。
【0052】
[比較例4]
実施例1の活性炭(商品名:MSP−20)を負極活物質に用いた負極を正極にも用いた(すなわち、活性炭を正極活物質にも負極活物質にも用いた場合)こと以外は実施例1と同様のコインセルについて、同様の評価を行った。
【0053】
[比較例5]
厚みが20μmの日本蓄電器工業株式会社製エッチドアルミニウム箔を正極側の集電体に用いたこと以外は実施例3と同様のコインセルについて、同様の評価を行った。
【0054】
<評価(エネルギー、放電容量)>
得られたセルについて、充放電試験装置(ナガノ社製、BTS2004)を用いて、25℃の恒温槽中で0.4mA/cmの電流密度で0〜3.5Vの範囲で充放電を行い、得られた放電容量と平均放電電圧よりエネルギー(Wh)を算出した結果を表1に示す。表1においては、実施例1のエネルギーと放電容量を比較例4で規格化した値、実施例3のエネルギーと放電容量を比較例4で規格化した値を示した。この際、比較例4の数値を100として規格化した。
なお、印加電圧の上限について、黒鉛を正極活物として用いた実施例1及び3では3.5Vまで印加できたが、活性炭を正極に用いた比較例4では、2.5Vまでで測定した。
【0055】
【表1】
【0056】
従来の活性炭を正極活物質に用いた比較例4に対して、黒鉛を正極活物質に用いた実施例1と実施例3のエネルギー(放電容量と放電平均電圧の積)はそれぞれ、4.2倍、3.1倍になり、高エネルギー化を図ることができた。これは、黒鉛はその層間に電解質イオンを挿入脱離することができ、電解質イオンを細孔表面で吸脱着する活性炭に比べて放電容量を大きくできるためと考えられる。実際、放電容量について、比較例4に対して実施例1の場合は3倍、実施例3の場合は2.2倍にすることができた。また、黒鉛を正極活物質に用いた場合、活性炭を正極活物質に用いた場合に比べて、電圧を高くできたこともエネルギーを向上できた要因である。
【0057】
実施例1と実施例3の違いは正極活物質の黒鉛の種類が異なるだけであるが、エネルギー及び放電容量で表1に示す通りの違いがある。
ティムカル(TIMCAL)社製黒鉛(商品名:KS−6)は菱面体晶が26%含まれる(従って、六方晶は76%)のに対して、大阪ガスケミカル株式会社製のメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)は菱面体晶が含まれていない。
菱面体晶はABCABCからなる層構造であり、六方晶はABABからなる層構造であり、結晶構造の違いが上記の性能に影響していると考えられる。すなわち、菱面体晶の方が六方晶よりも、イオンの挿入に伴う構造の変化が大きいため、イオンの挿入が起きにくいことが影響しているものと考えられる。
表1に示した結果に基づくと、エネルギー及び放電容量の観点では、正極活物質の黒鉛としては菱面体晶が含まれることが好ましい。
【0058】
<評価(放電容量改善率)>
得られたセルについて、充放電試験装置(ナガノ社製、BTS2004)を用いて、60℃の恒温槽中で0.4mA/cmの充電電流、3.5Vで2000時間連続充電試験(定電流定電圧連続充電試験)を行った。定電流定電圧連続充電試験開始前の放電容量に対して定電流定電圧連続充電試験後の放電容量維持率が80%以下になった充電時間を寿命とし、比較例での寿命になった時間を100として規格化して、放電容量改善率として表2に示した。すなわち、比較例1のプレーンのアルミニウム箔や比較例1及び5のエッチドアルミニウム箔を正極側の集電体に用いた場合を100として規格化した。
【0059】
【表2】
【0060】
正極活物質である黒鉛が菱面体晶を含み、かつ、正極側の集電体がDLCコートアルミニウム箔(DLC膜が135nm)であった実施例1では、2000時間の定電流定電圧連続充電試験後に放電容量維持率は82%であった。また、正極活物質である黒鉛が菱面体晶を含まず、かつ、正極側の集電体がDLCコートアルミニウム箔(DLC膜が135nm)であった実施例3では、2000時間の定電流定電圧連続充電試験後に放電容量維持率は80%であった。
本発明の電気二重層キャパシタによって、3V以上の電圧、60℃で2000時間の定電流定電圧連続充電試験後の放電容量維持率80%以上という規格を満足することができるようになった。
【0061】
これに対して、正極活物質である黒鉛が菱面体晶を含み、かつ、正極側の集電体がプレーンのアルミニウム箔であった比較例1では、61時間で放電容量維持率が80%以下になった。
また、正極活物質である黒鉛が菱面体晶を含み、かつ、正極側の集電体にエッチドアルミニウム箔を用いた比較例2では、65時間で放電容量維持率が80%以下になった。
また、正極活物質である黒鉛が菱面体晶を含まず、かつ、正極側の集電体にエッチドアルミニウム箔を用いた比較例5では、77時間で放電容量維持率が80%以下になった。
【0062】
表2に示した通り、本発明のDLCコートアルミニウム箔を正極側の集電体に用いた実施例1や実施例3では、正極側の集電体がプレーンのアルミニウム箔やエッチドアルミニウム箔である比較例に対して大幅に耐久性を改善できた。
この結果は、耐久性を阻む主な要因が集電体の腐食にあることを示すものである。
【0063】
<非晶質炭素被膜の膜厚の影響>
実施例4として、DLC膜の膜厚を変えて上述の定電流定電圧連続充電試験を行った結果、膜厚が40nmの場合、305時間で放電容量維持率が80%以下になり、膜厚が60nmの場合、1340時間で放電容量維持率が80%以下になり、膜厚が80nmの場合、1525時間で放電容量維持率が80%以下になった。一方、膜厚が120nm以上の場合(最大、330nmまで測定)には、2000時間後(定電流定電圧連続充電試験後)も放電容量維持率が80%を維持していた。
【0064】
以上の通り、DLC膜の膜厚が60nm以上であれば、60℃、3.5Vの定電流定電圧連続充電試験で1000時間以上、放電容量維持率80%を維持できることがわかった。また、DLC膜の膜厚が80nm以上であれば、60℃、3.5Vの定電流定電圧連続充電試験で1500時間以上、放電容量維持率80%を維持できることがわかった。また、DLC膜の膜厚は120nm以上であれば、印加電圧3.5Vで上述の定電流定電圧連続充電試験後に放電容量維持率80%を維持できる。
【0065】
上述の通り、定電流定電圧連続充電試験において、比較例1の寿命は61時間であった。
図1は、比較例1の寿命である61時間を100と規格化して評価したものである。
図1から、DLC膜の膜厚が60nmを超えると、DLC膜がない場合(DLC膜が0nm)に比べて、放電容量改善率が大幅に向上していることがわかる。
一方、DLC膜の膜厚がさらに増加し、120nmを超えると、高い放電容量改善率を維持できるが、300nmを超えるとDLC膜と電極活物質層との間の電気抵抗が大きくなるために、放電容量維持率が低下する。
従って、本発明の電気二重層キャパシタでは、DLC膜の膜厚は60nm以上、300nm以下の範囲である。
【0066】
図2に、実施例1(正極集電体がDLCコートアルミニウム箔、負極集電体がエッチドアルミニウム箔の場合)のコインセルと、比較例2(正極集電体及び負極集電体のいずれもエッチドアルミニウム箔の場合)のコインセルについて、充放電試験装置(ナガノ社製、BTS2004)を用いて、60℃の恒温槽中で0.4mA/cmの充電電流、3.5Vで連続充電試験(定電流定電圧連続充電試験)を行った結果を示す。
グラフは、試験開始前の放電容量を100とし、試験開始後、各充電時間経過後の放電容量を、その100の放電容量に対する割合で示したものである。
【0067】
比較例2のコインセルについては、264時間後に放電容量は既に10%になり、432時間後に放電容量は0%であったのに対して、実施例1のコインセルについて放電容量は、264時間後、432時間後にそれぞれ、92%、90%であり、1000時間経過後でも86%であった。
【要約】
この電気二重層キャパシタは、60℃、3.5Vの定電流定電圧連続充電試験において放電容量維持率が80%以上を維持できる時間が1000時間以上である電気二重層キャパシタであって、正極は正極活物質として黒鉛を含み、正極側の集電体はアルミニウム材であり、前記アルミニウム材は非晶質炭素被膜で被覆され、前記非晶質炭素被膜の厚みが60nm以上、300nm以下である。
図1
図2