(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
船舶に搭載された燃料タンクと、前記船舶の原動機との間に設けられた燃料供給経路を流れる燃料の流量であって、前記燃料供給経路を流れる燃料を用いてフィルタの洗浄を行うストレーナよりも上流側で計測された燃料の流量の時系列データを取得する流量取得手段と、
前記船舶の燃料消費量と相関するパラメータの時系列データを取得するパラメータ取得手段と、
前記パラメータの時系列データに基づいて、前記洗浄に伴う燃料の流量の増加の影響を低減するように、前記流量の時系列データ又は当該時系列データから特定される燃料の流量を補正する補正手段と
を備える流量計算装置。
船舶に搭載された燃料タンクと、前記船舶の原動機との間に設けられた燃料供給経路を流れる燃料の流量であって、前記燃料供給経路を流れる燃料を用いてフィルタの洗浄を行うストレーナよりも上流側で計測された燃料の流量の時系列データを取得するステップと、
前記船舶の燃料消費量と相関するパラメータの時系列データを取得するステップと、
前記パラメータの時系列データに基づいて、前記洗浄に伴う燃料の流量の増加の影響を低減するように、前記流量の時系列データ又は当該時系列データから特定される燃料の流量を補正するステップと
を備える流量計算方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下の説明で参照する各図において、各部材、各領域等を認識可能な大きさとするために、実際とは縮尺を異ならせている場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る船舶の模式図である。
船舶1は、例えばコンテナ船で、船舶1の本体である船体100と、原動機200と、燃料タンク300と、燃料供給経路400と、コンピュータ装置500と、推進装置600と、船速計700とを備える。
原動機200は、燃料タンク300に貯留された燃料を動力源として、船舶1が推進するための動力を発生させる。燃料タンク300は、液体の燃料(例えば重油)を貯留する。燃料供給経路400は、燃料タンク300と原動機200との間に設けられた燃料供給経路である。
【0016】
推進装置600は、原動機200が発生させた動力を用いて、船舶1の推進力を発生させる。具体的には、推進装置600は、推進軸(プロペラ軸)610と、推進軸610に接続されたプロペラ620と、回転計630とを備える。一般の船舶には、軸馬力計が搭載されていない場合もしばしばある。
図1及び後述する
図5では、船舶1に軸馬力計640が搭載されている場合と、搭載されていない場合とのどちらの場合もありうるという意味で、軸馬力計640を破線で図示している。推進装置600において、原動機200が発生させた動力により推進軸610が回転することにより、船尾側に設けられたプロペラ620が回転する。回転計630は、推進軸610上に設けられ、プロペラ620の単位時間当たりの回転数(以下「プロペラ回転数」という。)を逐次計測し、プロペラ回転数の時系列データをコンピュータ装置500へ出力する。軸馬力計640は、推進軸610上に設けられ、推進軸610のトルクを逐次計測し、このトルクから計算された船舶1の軸馬力の時系列データをコンピュータ装置500へ出力する。
【0017】
コンピュータ装置500は、船員が活動するための居住区501に配置されたコンピュータ装置である。コンピュータ装置500は、回転計630、軸馬力計640、及び船速計700、更には原動機200、及び燃料供給経路400内に設けられた各種の計器からデータを集約する、データロガーとして機能する。
【0018】
船速計700は、船舶1の船速を逐次計測する。船速計700は、例えば、対水船速を計測する対水船速計、及び対地船速を計測する対水船速計を含む。本実施形態では、対水船速と対地船速とを特に区別することなく、「船速」と総称する。対水船速計は、例えば音響式船速計であるが、その方式は音響式に限られない。対地船速計は、GPS(Global
Positioning System)等の衛星測位システムを利用して対地船速を計測するが、その方式は衛星測位システムを利用する方式に限られない。
【0019】
図2は、燃料供給経路400の構成を示す図である。燃料供給経路400は、流量計410、及び2台のストレーナ420を、燃料の流路内に備える。
図2に示す破線の矢印は、燃料が流れる方向を意味する。本実施形態では、燃料供給経路400に直列に2台のストレーナ420が配置されている場合を説明するが、配置されるストレーナ420の数は1個又は3個以上であってもよい。また、燃料供給経路400に複数のストレーナ420が配置される場合に、必ずしもこれら全てのストレーナ420が逆洗を行う機能を有していなくてよく、一部のストレーナ420だけが逆洗を行う機能を有していてもよい。
【0020】
流量計410は、燃料タンク300から流出した燃料の流量を逐次計測し、計測値のデータを、コンピュータ装置500へ出力する。コンピュータ装置500(後述する制御部510)では、流量計410により計測された燃料の流量に基づいて、燃料供給経路400を流れる燃料の単位時間当たりの流量(以下、「燃料流量」という。)が計算される。
図2では、流量計410によって計測される位置を流れる燃料流量を「C1」と表している。
【0021】
燃料供給経路400は、2台のストレーナ420と原動機200とを経由して燃料が循環するための閉鎖回路CBを、流量計410よりも下流側に構成している。上流側に配置されたストレーナ420に流入する燃料の合計の燃料流量は、C1+C4と表される。「C4」は、閉鎖回路CBを循環して、ストレーナ420の上流側、且つ流量計410の下流側に戻された燃料の燃料流量を表す。ストレーナ420は、フィルタ424によって燃料内の異物を捕捉するとともに、燃料供給経路400において燃料の流れを発生させることでフィルタ424を洗浄する機能を有する。ストレーナ420で行われる洗浄の方法として、例えば、燃料供給経路400の下流側から上流側の方向に燃料の流れを発生させる逆洗がある。フィルタ424の洗浄によって、フィルタ424によって捕捉されていた異物が押し流されて、図示せぬドレンタンクに排出されるため、フィルタ424の目詰まりが低減される。
【0022】
図3は、逆洗を行う機能を有するストレーナ420の構成を示す模式断面図である。
図3に示す破線の矢印は、燃料が流れる方向を意味する。
ストレーナ420は、円筒形状のストレーナ本体420Aと、ストレーナ本体420Aの上部を覆う蓋体421と、ストレーナ本体420Aの底板422と、ストレーナ本体420Aのフィルタ台423と、ストレーナ本体420Aの複数のフィルタ424とを備える。複数のフィルタ424の各々は、網目状の部材で円筒状に構成され、蓋体421及びフィルタ台423によって固定されている。複数のフィルタ424の各々は、その内側の空間が、フィルタ台423に形成された孔4231と通じるように配置されている。孔4231は、複数のフィルタ424の配置に応じて複数形成されているが、その位置や数については特に問わない。フィルタ台423の下方には、上流側から流れてきた燃料が流入する流入口425が形成されている。流入口425からストレーナ本体420Aに流入した燃料は、孔4231を介してフィルタ424の内側(一次側)に流れ込む。フィルタ424は、内側に流れ込んできた燃料内の異物を捕捉するフィルタ処理を行う。このフィルタ処理が行われた後の燃料は、フィルタ424の外側(二次側)へと流れ、流出口426を介してストレーナ420の下流側に流出する。
【0023】
ストレーナ420は、更に、複数のフィルタ424を逆洗する逆洗機構427と、逆洗機構427を回転させる駆動軸428とを備える。逆洗機構427は、複数のフィルタ424の逆洗を行う機構(洗浄機構)で、駆動軸428により回転される逆洗管4271と、逆洗管4271を支える逆洗管基部4272と、逆洗管4271に固定され、逆洗管4271とともに回転するアーム4273と、アーム4273の上部に設けられ、フィルタ台423の下面に密接した状態で回転する摺動部4274と、逆洗された燃料をドレンタンクに排出する逆洗ノズル4275とを備える。逆洗ノズル4275の先端はバルブ429と接続されている。逆洗時にはバルブ429が開状態、逆洗時以外はバルブ429が閉状態となる。駆動軸428は、逆洗機構427に回転力を伝達する。
【0024】
ストレーナ420で逆洗が行われるときには、駆動軸428の回転により逆洗管4271及びアーム4273が回転して、複数のフィルタ424が順次、孔4231を介して逆洗管4271及びアーム4273と接続される。このフィルタ424には、流入口425からの燃料は流入せず、逆洗の対象となる。フィルタ424の逆洗が行われるときには、バルブ429が開状態であるため、フィルタ424の内側と外側との差圧が発生し、ストレーナ本体420A内の燃料がフィルタ424の外側から内側に流入する。この流入した燃料は、フィルタ424の内側に付着した異物を洗い流して除去し、アーム4273、逆洗管4271、及び逆洗ノズル4275を介してドレンタンクに排出される。
【0025】
以上の構成のストレーナ420は、例えば、定期的に、又はフィルタの上流と下流との間の燃料の圧力差(差圧)に応じたタイミングでこの逆洗を行う。後者の場合、ストレーナ420は、差圧を計測し、フィルタの目詰まりを原因として当該差圧が閾値以上になった場合に逆洗を行う。
図2に示す「C5」、「C6」は、2台のストレーナ420の各々からドレンタンクに流れる燃料の燃料流量を表す。
【0026】
図2に戻り、ストレーナ420の各々を通過した燃料は、合流した後、更に下流側の流路に供給される。この合流後の燃料の燃料流量を「C2」とする。そして、この合流後の燃料の一部である燃料流量「C3」の燃料は、原動機200に供給され、残りである燃料流量「C4」の燃料は、ストレーナ420の上流側、且つ流量計410の下流側に戻される。燃料流量「C3」は、原動機200における燃料の消費量によって変化する。
【0027】
図4は、原動機200の構成を示す図である。
図4の破線矢印は、気体の流れを意味する。
図4に示すように、原動機200は、内燃機関210と、過給機(ターボチャージャともいう。)220と、空気冷却機221と、掃気マニホールド222と、排気マニホールド223とを備える。
内燃機関210は、例えばディーゼル機関であり、シリンダ211を備える。
図1には、シリンダ211が1つだけ示されているが、複数備えられてもよい。シリンダ211は、過給機220から供給される加圧気体を図示せぬ掃気ポートを介して吸気し、燃焼室213において、燃料供給経路400から供給された燃料との混合気を生成し、当該混合気を燃焼させる。シリンダ211の内部には、円柱状のピストン212が設けられている。燃焼室213で混合気が燃焼すると、熱エネルギーが運動エネルギーに変換されて、ピストン212が、シリンダ211の内側を軸方向に沿って往復移動する。ピストン212は、シリンダ211内で図示せぬクランク軸と連結される。
図1で説明した推進軸610は、このクランク軸と直接的又は間接的に連結されることにより回転させられる。
【0028】
過給機220は、ブロア2201とタービン2202とを備え、ブロア2201とタービン2202とは回転軸2203を介して連結される。過給機220は、燃焼室213に加圧気体を供給するとともに、燃焼室213からの排気ガスにより駆動される。過給機回転数センサ250は、例えば回転軸2203上に設けられ、過給機220(回転軸2203)の回転数(以下「過給機回転数」という。)を逐次計測し、過給機回転数の時系列データをコンピュータ装置500へ出力する。
【0029】
空気冷却機221は、過給機220のブロア2201により加圧されて温度上昇した空気を、冷却媒体により冷却する。掃気マニホールド222は、冷却された加圧気体を一時的に貯留した後、掃気ポートを介して燃焼室213に加圧気体を送り込む。排気マニホールド223は、燃焼室213での燃焼によって生成された排気ガスを一時的に貯留した後、過給機220のタービン2202に供給する。
【0030】
燃焼室213には、筒内圧センサ230が配置されている。一般の船舶には、筒内圧センサが搭載されていない場合もしばしばある。
図4,5では、船舶1に筒内圧センサ230が搭載されている場合と、搭載されていない場合とのどちらの場合もありうるという意味で、筒内圧センサ230を破線で図示している。筒内圧センサ230は、燃焼室213における圧力、即ち筒内圧を逐次計測し、筒内圧の時系列データをコンピュータ装置500へ出力する。筒内圧の時系列データは、複数の時点の各時点で計測した筒内圧を、計測日時の順番で並べたデータである。掃気圧センサ240は、例えば掃気マニホールド222と内燃機関210とを接続する導通管内に配置され、過給機220から内燃機関210に送り込まれる加圧気体の掃気圧を逐次計測し、掃気圧の時系列データを、コンピュータ装置500へ出力する。掃気圧の時系列データは、複数の時点の各時点で計測した掃気圧を、計測日時の順番で並べたデータである。
【0031】
なお、
図1,2,4で説明した回転計630、軸馬力計640、船速計700、流量計410、筒内圧センサ230、掃気圧センサ240、及び過給機回転数センサ250の各計器は、計測値の時系列データを、計測日時を特定可能な形式で、コンピュータ装置500へ出力する。これらの各計器は、本実施形態では、計測値のデータを逐次出力(例えばリアルタイムで出力)する。ただし、これらの計器には、所定の期間の計測により得た計測値のデータを蓄積しておき、所定のタイミングにまとめてコンピュータ装置500へ出力する計器が含まれていてもよい。
【0032】
図5は、コンピュータ装置500の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、コンピュータ装置500は、ハードウェア構成として、制御部510と、記憶部520と、表示部530と、通信部540と、操作部550と、インタフェース560とを備える。
制御部510は、演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有するプロセッサである。CPUは、ROM又は記憶部520に記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、コンピュータ装置500の各部を制御する。例えば、制御部510は、流量計410により計測された燃料の流量に基づいて燃料流量を計算する。燃料流量の時系列データは、複数の時点の各時点で計測した燃料流量を、計測日時の順番で並べたデータである。記憶部520は、例えばハードディスク装置で、コンピュータ装置500を動作させるためのプログラム、及びテーブルTを記憶する。
図6に示すように、テーブルTは、計測された燃料流量、プロペラ回転数、筒内圧、掃気圧、船速、過給機回転数、及び軸馬力の時系列データを、それぞれに計測日時と対応づけて格納するテーブルである。なお、軸馬力、及び筒内圧は、船舶1に軸馬力計640が搭載されている場合に、テーブルTに記録される。
表示部530は、例えば液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。通信部540は、例えば、ネットワークと通信するための通信回路及びアンテナを備え、陸上に設置されたコンピュータ装置と当該ネットワーク経由で通信する。操作部550は、例えばキーボード及びマウスを備え、操作者(ここでは船員)が行った操作を受け付ける。インタフェース560は、船舶1に搭載された各計器からデータの入力を受け付ける。
【0033】
コンピュータ装置500は、燃料供給経路400における燃料流量を計算する流量計算装置として機能する。この燃料流量の計算に関する機能として、制御部510は、流量取得手段511と、パラメータ取得手段512と、補正手段513と、処理手段514とに相当する機能を実現する。
流量取得手段511は、インタフェース560を介して、流量計410により計測された燃料流量の時系列データを取得する手段である。流量取得手段511は、取得した燃料流量の時系列データをテーブルTに記録し、また、テーブルTに記録された燃料流量の時系列データを取得する。
【0034】
パラメータ取得手段512は、インタフェース560を介して、船舶1の燃料消費量と相関するパラメータの時系列データを取得する手段である。パラメータ取得手段512は、取得したパラメータの時系列データをテーブルTに記録し、また、テーブルTに記録されたパラメータの時系列データを取得する。燃料消費量と相関するパラメータは、船舶1の推進力と相関するパラメータを含み、具体的には、プロペラ回転数、船舶1の馬力、船速、原動機200の筒内圧、及び過給機回転数を含む。
【0035】
補正手段513は、パラメータ取得手段512により取得されたパラメータの時系列データに基づいて、流量取得手段511により取得された燃料流量の時系列データを補正する手段である。補正手段513は、この時系列データが示す流量から、当該流量を減じる方向の補正、より具体的には、ストレーナ420におけるフィルタ424の洗浄(本実施形態では逆洗)に伴う燃料の流量の増加の影響を低減する補正を行う。
【0036】
処理手段514は、補正手段513による補正後の燃料の流量の時系列データに基づいて、所定の処理を行う手段である。この処理は、補正後の燃料流量の時系列データが示す単位時間の燃料流量を時間積分した値に基づき、船舶1の燃料消費量を計算する処理を含む。補正手段513による補正が行われた後の燃料の流量を用いることで、原動機200の正味の燃料消費量により近い燃料消費量が計算される。
【0037】
図7は、船舶1により行われた或る航行において、流量計410により計測された燃料流量の時系列データ、及び回転計630により計測されたプロペラ回転数の時系列データの一例を示すグラフである。
図7のグラフにおいて、横軸は時間(×10[s](秒))を表し、縦軸は単位時間当たりの燃料流量、又はプロペラ回転数を表す。このグラフにおいて、燃料流量の単位は[l/min](1分間当たりのリットル量)であり、プロペラ回転数の単位は[rpm](1分間あたりの回転数)である。
図7のグラフにおいて、燃料流量に関する縦軸のスケールと、プロペラ回転数に関する縦軸のスケールは、プロペラ回転数の変化と、当該プロペラ回転数の変化に伴う燃料流量の変化とが概ね同じ長さとなるように調整されている。
図7に示すように、プロペラ回転数の増減と連動して燃料流量は増減する。
【0038】
燃料流量のグラフに着目すると、燃料流量の増加方向の急峻な変化が、複数回現れていることが分かる。この急峻な変化の原因の一つとして、ストレーナ420における逆洗がある。逆洗において逆流される燃料は、原動機200に投入されることなくドレンタンクへ排出される。原動機200には出力に応じた燃料が供給(投入)されなければならないので、燃料タンク300から流出する燃料の流量は、逆洗が行われると、逆洗に用いられてドレンタンクへ排出される流量だけ一時的に増加する。具体的には、閉鎖回路CB内の各部の圧力は、所定の圧力に保たれるため、逆洗により燃料の一部がドレンタンクに流れた場合、閉鎖回路CBよりも上流側(燃料タンク300)から閉鎖回路CBに燃料が移動することにより、流量計410が急な燃料流量の増加を計測する。例えば、流量計410により計測される燃料流量は、燃料流量「C5」或いは「C6」に応じた分だけ増加することになる。
【0039】
しかしながら、燃料流量の同様の変化が、船舶1の推進力の変化による、燃料消費量の一時的な増加を原因として現われる場合がある。例えば、船舶の着桟操船又は離桟操船時において、当該船舶が後進した状態から停止し前進することがある。このとき、船舶の前方方向の推進力を急激に大きくする必要があり、原動機200の出力が上げられ、一時的に燃料消費量が増大する。その結果、流量計410により計測される燃料流量が急峻に増加する。
よって、燃料流量の時系列データのみに基づき、燃料流量の急峻な変化の原因が、ストレーナで行われた逆洗であるか否かを正確に判別することは困難である。また、逆洗が行われる間に原動機200の出力が上げられる場合もある。
【0040】
そこで、コンピュータ装置500は、プロペラ回転数の時系列データを参照して、燃料流量の時系列データが示す急峻な変化のうち逆洗に起因するものを特定する。なお、プロペラ回転数は船舶1の推進力と相関を持ち、従って、燃料流量と相関を持つパラメータである。
図7において、燃料流量に現れている急峻な変化のうち、実線の丸印で囲んだものは、プロペラ回転数がおおよそ一定値で安定している期間に現れている。従って、実線の丸印で囲んだ燃料流量の急峻な変化はストレーナ420における逆洗のみに起因すると推定される。一方で、燃料流量に現れている急峻な変化のうち、破線の丸印で囲んだものは、プロペラ回転数が増加したタイミングの近辺で現れている。従って、一点鎖線の丸印で囲んだ燃料流量の急峻な変化は、逆洗と船舶1の推進力の増加の両方、又は船舶1の推進力の増加のみに起因していると推定される。
【0041】
図7において一点鎖線の丸印で囲んだ燃料流量の急峻な変化が、逆洗と船舶1の推進力の増加の両方に起因しているか、それとも船舶1の推進力の増加のみに起因しているかを判定するために、コンピュータ装置500は、船舶1の停泊中に計測された燃料流量に基づいて、ストレーナ420による逆洗に伴い増加する燃料の流量を推定する。船舶1が停泊中の期間は、プロペラ回転数はゼロとみなせる。コンピュータ装置500は、一点鎖線の丸印で囲んだ部分の燃料流量の増加量を、推定した逆洗に伴い増加する燃料の流量と比較することで、一点鎖線の丸印で囲んだ燃料流量の急峻な変化の原因に逆洗が含まれるか否かを判定する。
コンピュータ装置500は、上記のように燃料流量の時系列データが示す急峻な変化のうち逆洗に起因するものを特定すると、燃料流量の時系列データが示す燃料流量から逆洗に伴い増加する燃料の流量を減じて、船舶1の燃料消費量を計算する。以下に、上述したコンピュータ装置500の処理の具体例を説明する。
【0042】
<A:逆洗に伴い増加する燃料の流量の推定処理>
図8は、コンピュータ装置500が行う、逆洗に伴い増加する燃料の流量の推定処理を示すフローチャートである。
まず、コンピュータ装置500の制御部510は、船舶1が停泊中かどうかを判定する(ステップS1)。制御部510は、インタフェース560を介して、回転計630からプロペラ回転数の時系列データを取得し、プロペラ回転数がゼロである場合は、船舶1が停泊中と判定する。なお、制御部510はプロペラ回転数以外の情報により船舶1が停泊中であるか否かの判定を行ってもよい。例えば、制御部510は、船舶1が停泊中であるか否かの判定を、船速計700により計測された船速の計測データに基づいて行ってもよいし、操船者が操作部550を用いて行った操作の内容に基づいて行ってもよい。
ステップS1で「YES」と判定した場合、制御部510は、船舶1の停泊中に計測された燃料流量の時系列データを、流量計410から取得する(ステップS2)。
【0043】
図9は、船舶1の停泊中に取得された燃料流量の時系列データの一例を示すグラフである。
図9のグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は単位時間当たりの燃料流量を表す。このグラフに示される期間において、プロペラ回転数はゼロとする。なお、
図9に示すグラフでは、P1とP2、P3とP4、のように、短い時間間隔で現れる2つの燃料流量の急峻な変化のペアが、概ね一定の時間間隔で現れている。以下の説明において、短い時間間隔で現れる2回の燃料流量の急峻な変化のペアが1回の逆洗に応じた燃料流量の変化を示すものとする。
なお、
図2のように2台のストレーナ420が直列に設置されている場合、その逆洗のタイミングが微妙にずれることで、短時間の間に燃料流量の急峻な変化が2個現れる場合と、全く同時のタイミングで逆洗が行われることで、2個の燃料流量の急峻な変化が、1つの変化に統合されて現れる場合とがある。また、手動の駆動機構を用いて逆洗が行われる場合は、
図9で示した場合よりも不規則なタイミングで、燃料流量の急峻な変化が現れることになる。仮に逆洗を行うストレーナが3個以上備えられた場合も、燃料流量の急峻な変化が現われる。
【0044】
図8に戻り、コンピュータ装置500が行う処理の説明を続ける。次に、制御部510は、ステップS2で取得した燃料流量の時系列データに基づいて、1回の逆洗に伴い増加する燃料の流量を特定(計算)する(ステップS3)。
図9のグラフを用いて、制御部510がステップS3において行う処理の具体例を説明する。制御部510は、燃料流量の急峻な変化が現れている部分としてP1、P2等を特定する。続いて、制御部510は、特定したP1,P2等の各々に関し、変化部分の燃料流量(単位時間当たりの燃料流量)の時間積分を行い、逆洗に伴い増加する燃料の流量を算出する。制御部510は、例えば、P1に関し、燃料流量(単位は[l/min])を、変化に要した期間Δt(単位は[sec])において時間積分することにより、P1に応じた燃料の流量(単位は[l])を算出する。続いて、制御部510は、P1とP2に関し算出した燃料の流量を加算して、P1とP2のペアに応じた逆洗に伴い増加した燃料の流量を算出する。制御部510は、P3とP4、P5とP6等のペアに関しても同様に、これらのペアに応じた逆洗に伴い増加した燃料の流量を算出する。これにより、制御部510は複数回の逆洗の各々に関し逆洗に伴い増加した燃料の流量を特定する。続いて、制御部510は特定した燃料の流量の平均値を算出する。このように算出される燃料の流量の平均値が、ステップS3において算出される、1回の逆洗に伴い増加する燃料の流量である。
【0045】
次に、制御部510は、ステップS3において計算した1回の逆洗に伴い増加する燃料の流量を、記憶部520に記録する(ステップS4)。なお、船舶1の航行中に行われる逆洗に伴い増加する燃料の流量は、船舶1が停泊中に行われる逆洗に伴い増加する燃料の流量と概ね同じである。従って、ステップS4において記録された燃料の流量は、次に説明する流量計算処理において、船舶1の航行中に計測された燃料流量から逆洗に伴い増加した燃料の流量を除外するために用いられる。
【0046】
<B:流量計算処理>
図10は、コンピュータ装置500が行う流量計算処理を示すフローチャートである。流量計算処理は、流量計410により計測された燃料流量を用いて船舶1の燃料消費量を計算する処理である。
コンピュータ装置500の制御部510は、船舶1の燃料消費量の計測期間(例えば、船舶1の航行期間)において、流量計410により計測された燃料流量の時系列データを、インタフェース560を介して取得する(ステップS11)。また、制御部510は、燃料消費量の計測期間において、回転計630により計測されたプロペラ回転数(即ち、燃料消費量と相関するパラメータ)の時系列データを、インタフェース560を介して取得する(ステップS12)。制御部510は、ステップS11において取得した燃料流量の時系列データと、ステップS12において取得したプロペラ回転数の時系列データとを、計測日時と関連付けて記憶部520のテーブルT(
図6)に記録する(ステップS13)。
【0047】
次に、制御部510は、テーブルTに記録した燃料流量の時系列データに基づいて、逆洗を原因とした燃料流量の変化を検出する(ステップS14)。
【0048】
以下に、ステップS14において制御部510が行う処理の具体例を説明する。
図11A及び
図11Bは、燃料流量の時系列データと、プロペラ回転数の時系列データを示したグラフである。
図11Aは、船舶1の加速がなく、プロペラ回転数が概ね一定値で安定している状態において燃料流量に急峻な変化が現れている部分を示している。
図11Bは、船舶1の加速によりプロペラ回転数が増加したタイミングの近辺で燃料流量に急峻な変化が現れている部分を示している。
図11Aに示すように、船舶1に加速等がなく、プロペラ回転数が概ね一定値で安定している場合、制御部510は、燃料流量の時系列変化を示す曲線において、急峻な変化の開始の後、当該変化の開始時点の燃料流量を基準として±α%(αは、ここでは10%)の領域において変曲点が現れた場合、当該変曲点に応じた時点を、急峻な変化の終了時点として特定する。当該±α%の領域において変曲点が現れない場合、制御部510は、曲線が当該±α%の領域から下方に出る時点を、急峻な変化の終了時点として特定する。
【0049】
一方、
図11Bに示すように、船舶1の加速等によりプロペラ回転数が安定していない場合、制御部510は、燃料流量の時系列データを示す曲線において、急峻な変化の開始時点の燃料流量を基準とする±α%の領域を、プロペラ回転数の変化に応じて補正する。即ち、プロペラ回転数の変化量がΔrである場合、制御部510はΔrに応じた燃料流量の変化量として、Δf2=Δr×k(kは係数)を算出し、急峻な変化の開始時点の燃料流量にΔf2を加算した値を基準とする±α%の領域を、補正後の領域として設定する。係数kは、例えば、予め決められた値である。制御部510は、補正後の領域において燃料流量の時系列データが示す曲線に変曲点が現れれば、当該変曲点に応じた時点を、急峻な変化の終了時点として特定する。また、制御部510は、補正後の領域において変曲点が現れなければ、曲線が補正後の領域から下方に出る時点を、急峻な変化の終了時点として特定する。
なお、終了時点として特定される変曲点は、急峻な変化の開始時点の燃料流量を基準した範囲内に含まれていることを条件としなくてもよい。制御部510は、単位時間当たりの燃料流量の変化率を時系列の順番で特定し、変化率の符号が負から正に変化した点を、燃料流量の急峻な変化の終了時点と特定してもよい。
【0050】
続いて、制御部510は急峻な変化の開始点と終了点とを結ぶ直線と、燃料流量の時系列データを示す曲線とにより囲まれる領域Sの面積を算出することにより、当該急峻な変化に応じた燃料流量の増加分(単位は[l])を概算する。なお、1回の逆洗に伴い、
図9のP1とP2のように、燃料流量に2つの連続する急峻な変化が現れる場合、制御部510は、2つの連続する急峻な変化の各々に関し燃料流量の増加分を概算し、概算した値を合算する。制御部510は、概算した燃料流量が、ステップS4において記録した、1回の逆洗に伴い増加する流量の±β%(例えば、β=20%)の範囲内であれば、この急峻な変化が逆洗を原因とした変化であると判定し、範囲外であれば、逆洗を原因とした変化でないと判定する。制御部510は、上述した判定を計測期間の全体に関し行うことで、逆洗を原因とした燃料流量の変化を検出する。以上がステップS14の処理の説明である。
【0051】
制御部510は、続いて、ステップS14において逆洗を原因とした燃料流量の変化が検出されたか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15で「NO」と判定した場合、制御部510は次に説明する燃料流量の補正を行わないで、ステップS17に進む。
ステップS15で「YES」と判定した場合、制御部510は、逆洗による影響を除外するように、燃料流量の時系列データを補正する(ステップS16)。時系列データを補正した場合、制御部510は、テーブルTの燃料流量を示すデータを補正後のデータに書き替える。
【0052】
図12A及び
図12Bは、ステップS16の燃料流量の補正処理の一例を説明する図である。
図12のグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は単位時間当たりの燃料流量を表す。
図12A,Bに示すように、制御部510は、ステップS14において検出した逆洗を原因とする急峻な燃料流量の変化の各々に関し、変化の開始点と終了点とを直線で結ぶ線形補完により、燃料流量の時系列データを補正する。仮に、逆洗が行われなかった場合、これらの燃料流量の急峻な変化は現われなかったと推定されるため、この補正により、燃料流量の時系列データが示す値は、原動機200の正味の燃料消費量により近い値を示すものとなる。
図13は、
図7に示すグラフの燃料流量の時系列データがステップS16において補正される様子を示したグラフである。
図13に示すように、ステップS16の補正処理により、逆洗に伴い増加した燃料の流量が除外され、原動機200の正味の燃料消費量により近い燃料流量を示す時系列データが得られる。
【0053】
次に、制御部510は、燃料消費量の計算を含む処理を実行する(ステップS17)。ここでは、制御部510は、補正後の燃料流量の時系列データに基づいて、燃料流量(単位は[l/min])を時間積分した値に基づいて、計測期間における燃料消費量(単位は[ton])を計算する。更に、制御部510は、計算した燃料消費量の情報や、補正後の燃料流量の時系列データを示すグラフ(
図13参照)を、表示部530に表示させてもよい。また、制御部510は、計算した燃料消費量の情報や燃料流量の時系列データを、記憶部520に記録したり、通信部540を介して陸上のコンピュータ装置に送信したりしてもよい。
【0054】
以上説明した実施形態によれば、ストレーナ420において逆洗が行われる場合において、原動機200に供給される燃料の正味の流量(燃料消費量)がコンピュータ装置500により算出され、船舶1の操船者等に提供される。
【0055】
上述した実施形態は本発明の一実施形態であって、様々に変形されてもよい。以下に、上述した実施形態の変形例を示す。なお、以下に示す変形例は適宜、組み合わされてもよい。
(変形例1)
燃料流量の補正処理は、上述した線形補完を用いた方法に限られない。
例えば、プロペラ回転数の変化に応じた曲線により補完が行われてもよい。
図14はこの変形例において補完に用いられる曲線を例示した図である。
図14に示すように、ここでは、期間t3、t2、t1の順でプロペラ回転数が高く、このプロペラ数が高い順で補正処理により減じられる燃料流量が小さい。換言すると、プロペラ数が低い順で補正処理により減じられる燃料流量が大きくなっている。
【0056】
(変形例2)
上述した実施形態では、コンピュータ装置500は、船舶1の停泊中に計測された燃料流量の時系列データを用いて、1回の逆洗に伴い増加する燃料の流量を計算していたが、船舶1が航行中であって、プロペラ回転数が安定している期間に計測された燃料流量の時系列データを用いて、1回の逆洗において用いられる燃料の流量を計算してもよい。
また、1回の逆洗に伴い増加する燃料の流量が算出されなくてもよい。例えば、逆洗が概ね一定時間間隔で行われる場合、逆洗が行われたと推定される期間における燃料流量の時系列データが示す値を、逆洗に伴い増加する燃料の流量の時系列データが示す値だけ減じることで、流量計410により計測される燃料流量の時系列データの補正が行われてもよい。
【0057】
(変形例3)
コンピュータ装置500が、船舶1の推進力と相関するパラメータとして、プロペラ回転数以外のパラメータを用いる場合も、上述した実施形態で説明した処理によって、燃料流量の時系列データを補正することができる。船舶1の馬力、船速、及び原動機200の筒内圧、過給機回転数の各パラメータも、船舶1の推進力と正の相関のあるパラメータである。船舶1の馬力が大きいほど、船速が大きいほど、原動機200の筒内圧が大きいほど、又は過給機回転数が多いほど、船舶1の推進力は増大し、燃料消費量も増大する。制御部510は、プロペラ回転数、船舶1の馬力、船速、原動機200の筒内圧、及び過給機回転数のうちの一つ以上に関し、時系列データを取得して、燃料流量の補正を行えばよい。
ただし、パラメータの時系列データに変化が現れるタイミングと、燃料流量に変化が現れるタイミングとに時間差が現われる場合もあり得るので、制御部510は、この時間差を考慮して、各処理を行ってもよい。
【0058】
また、船舶1の推進力と相関するパラメータは、プロペラ回転数、船舶1の馬力、船速、原動機200の筒内圧、及び過給機回転数のうちの一つ以上から算出されたパラメータであってもよい。
更に、船舶1の推進力と相関するパラメータは、前掲のパラメータ以外のパラメータであってもよい。船舶1の推進力と相関するパラメータは、例えば、内燃機関210の負荷(主機負荷)、即ち、内燃機関210の単位時間当たりの仕事量であってもよい。この場合、コンピュータ装置500は、掃気圧センサ240によって計測される掃気圧の時系列データを用いて、燃料流量の時系列データを補正する。
なお、上述した実施形態及びこの変形例で説明した船舶1の推進力と相関するパラメータのうち、燃料流量の補正に使用されないパラメータについては、制御部510はこれを取得しなくてもよいし、また、これを取得するための計測が行われなくてよい。
【0059】
(変形例4)
本発明において、ストレーナにおけるフィルタの洗浄は、逆洗以外の方法で行われてもよい。本発明において、例えば、燃料供給経路を流れる燃料の一部を高圧でジェット噴射することにより、フィルタが洗浄されてもよい。意図的に燃料の流れを発生させてフィルタに付着した異物を押し流すことで、当該フィルタを洗浄する洗浄機構が採用された場合に、上述した実施形態で説明した理由と同様の理由により、流量計で計測される燃料の流量が増えることがあるからである。
【0060】
(変形例5)
本発明の船舶は、電動推進を行う船舶であってもよい(例えば客船)。この場合の船舶の原動機は、電動機を含む。この船舶では、ピストンの運動エネルギーが電気エネルギーに変換されて蓄電池に蓄えられる。そして、原動機は、この蓄電池から取り出した電気エネルギーを力学的エネルギーに変換して、推進装置が備える推進軸を回転させることにより、船舶の推進力を発生させる。
【0061】
(変形例6)
本発明の流量計算装置は、船上のコンピュータではなく、陸上のコンピュータで実現されてもよい。本発明の流量計算装置は、これら以外にも様々なコンピュータ装置で実現しうる。
【0062】
(変形例7)
コンピュータ装置500の制御部510(補正手段513)は、船舶1の燃料消費量と相関するパラメータの時系列データに基づいて、流量計410により計測された燃料流量の時系列データから特定される燃料の流量、例えば原動機200の燃料消費量を補正してもよい。制御部510は、この時系列データから特定される燃料の流量から、流量を減じる方向の補正、より具体的には、ストレーナ420におけるフィルタ424の洗浄(逆洗)に伴う燃料の流量の増加の影響を低減する補正を行う。一例として、制御部510は、燃料流量の時系列データの時間積分値から、1回の逆洗に伴い増加する燃料の流量に対して計測期間において検出された逆洗の回数を乗じた値を減じる補正を行うことによって、計測期間における原動機200の正味の燃料消費量を算出してもよい。
【0063】
(変形例8)
コンピュータ装置500の制御部510が、プロペラ回転数(又は、その他の船舶1の推進力と相関するパラメータ)の時系列データにより推定される、原動機200の正味の燃料消費量の時系列データを、燃料流量の時系列データから減じることにより、主として逆洗に伴う燃料の流量の増加のみを示す時系列データを生成し、更に、生成した当該時系列データに基づき、逆洗を原因とした燃料流量の変化を検出する構成が採用されてもよい。例えば、
図7に例示のケースでは、上述したように、プロペラ回転数の増減と連動して燃料流量も増減する。このため、制御部510は、計測期間内における個々の時点に関し、プロペラ回転数の時系列データが示す値に係数kを乗じた値を燃料流量から減じることで、主として逆洗に伴う燃料の流量の増加のみを示す時系列データを生成し、生成した時系列データを用いて、逆洗を原因とした燃料流量の変化を検出すればよい。
【0064】
(変形例9)
上述した実施形態のコンピュータ装置500の制御部510が実現する各機能は、1又は複数のハードウェア回路により実現されてもよいし、1又は複数のプログラムを実行することにより実現されてもよいし、これらの組み合わせにより実現されてもよい。制御部510の機能がプログラムを用いて実現される場合、このプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク(HDD(Hard Disk Drive)、FD(Flexible Disk))等)、光記録媒体(光ディスク等)、光磁気記録媒体、半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供されてもよいし、ネットワークを介して配信されてもよい。また、本発明は、流量計算方法として把握することも可能である。
本願の発明は、上述した実施形態に限定されることなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
コンピュータ装置(500)は、船舶(1)に搭載された燃料タンク(300)から船舶(1)を推進させるための動力を発生させる原動機(200)に至る燃料供給経路(400)を流れる燃料の流量を計算する。燃料供給経路(400)に設けられた流量計(410)は、燃料供給経路(400)を流れる燃料を用いてフィルタ(424)の洗浄(例えば逆洗)を行うストレーナ(420)よりも上流側で、燃料の流量を計測する。コンピュータ装置(500)は、流量計(410)によって計測された燃料の流量の時系列データを取得し、更に、船舶(1)の燃料消費量と相関するパラメータとしてプロペラ(620)の回転数の時系列データを取得する。そして、コンピュータ装置(500)は、取得したプロペラ回転数の時系列データに基づいて、取得した燃料の流量の時系列データが示す燃料の流量から、ストレーナ(420)で行われたフィルタ(424)の洗浄に伴い増加した燃料の流量を減じる補正を行う。