【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の磁性微粒子の磁気特性評価装置は(1)〜(4)を要旨とする。
(1)
磁性微粒子の磁気特性を探針装置により評価する装置であって、
着磁したハード磁性体からなる探針が先端に備えられた探針装置と、
前記探針と前記磁性微粒子との距離を調整する探針試料間位置調整装置と、
前記探針を機械振動させる励振器と、
ベース材に固定された1つまたは複数の前記磁性微粒子に外部交流磁場を与えて、前記磁性微粒子の磁気モーメントの方向または大きさを変化させて、前記磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させる外部交流磁場生成器と、
前記周期変動磁場を振幅変調信号または位相変調信号として含む前記探針の振動を検出する探針振動検出器と、
前記探針振動検出器の検出信号を入力し、当該検出信号から前記磁気モーメントの方向または大きさの変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する復調回路と、
前記復調回路が復調した信号に基づき、前記磁性微粒子の磁気特性を評価する磁気特性評価回路と、
を備えたことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価装置。
【0008】
本発明において、磁性微粒子は、磁気モーメントが外部磁場により変化する磁性微粒子である。磁性微粒子は、強磁性微粒子や常磁性微粒子または超常磁性微粒子であってもよい。
磁性微粒子は、適宜のベース材(たとえば、合成樹脂等の非磁性材料)に固定される。
磁性微粒子の磁気特性は、たとえば、磁気モーメントの大きさ、磁気モーメントの方向、ヒステリシス曲線、ヒステリシス損失、渦電流損失、磁区構造(磁区が単磁区であるか否か等)、複素磁化率の分布である。
なお、本発明において、「磁性微粒子の磁気特性」は、「磁性微粒子群の磁気特性」をも意味してよい。この場合には、たとえば「磁気モーメント」の大きさ、「磁気モーメントの方向」は、「磁化の大きさ」、「磁化の方向」に置き換えることができる。
【0009】
探針装置は、典型的には先端に探針が形成されたカンチレバーである。カンチレバーの先端の探針が形成されていない側には反射ミラーが形成される。
探針試料間位置調整装置は、後述する探針走査装置と協働して動作することができる。また、探針走査装置が機能の一部に、探針試料間位置調整装置の機能を持つこともできる。
励振器は、典型的には、圧電素子からなる機械振動発生器と、機械振動発生器に電圧を与える励振用交流電源からなる。探針は、通常は、共振周波数で励振される。探針の機械振動周波数は、典型的には、数百kHzのオーダである。
探針振動検出器は、典型的には、レーザ光源とフォトダイオードとからなる。レーザ光源からの光は前述した反射ミラーにより反射されてフォトダイオードにより検出される。
【0010】
外部交流磁場生成器は、磁性微粒子の磁気モーメントを励磁させることができ、典型的には、磁気コイルと外部交流磁場生成用交流電源とから構成できる。磁気コイルは空心コイルでもよいし、鉄心入りコイルでもよい。磁性微粒子の磁気モーメントが、外部交流磁場生成器が生成する外部交流磁場により励磁されることより、磁性微粒子の周囲には周期変動磁場が形成される。外部交流磁場生成用交流電源の周波数は、典型的には、数百Hz〜数kHz程度である。
系を巨視的に見た場合、強磁性微粒子の磁気モーメントは、外部交流磁場生成器が発生する交流磁場によりもとの方向に復帰できる範囲で回転し、または反転する。または、熱擾乱によりランダムに熱振動している常磁性または超常磁性微粒子の微視的な磁気モーメントは、交流磁場生成器が発生する交流磁場により磁場方向に平均として揃えられ、その大きさは磁場にほぼ比例する。
【0011】
復調回路は、アナログフィルタにより構成されたFM復調回路である。復調回路が復調する信号は、「磁気モーメントの方向および/または大きさの変化」である。「磁気モーメントの方向および/または大きさの変化」は、「磁性微粒子が発生する交流磁場の勾配」に反映されるので、復調回路が復調する信号は、「磁性微粒子が発生する交流磁場の勾配」と言い換えることができる。
磁気特性評価回路は、振幅検出および位相検出を行うことができる機能を備えており、たとえば、ロックインアンプ、振幅測定回路および位相測定回路により構成できる。
【0012】
(2)
さらに、探針走査装置と画像表示装置とを備えている(1)に記載の磁性微粒子の磁気特性評価装置において、
前記探針走査装置(前記探針試料間位置調整装置の機能と共用される)は、前記ベース材の表面の形状情報を保有しており、前記探針と前記ベース材の表面との距離を一定に保ちつつ前記探針を前記ベース材に対して相対移動させ、
前記画像表示装置は、前記磁気特性評価回路による磁気特性の評価結果を、前記探針の相対移動情報に対応させて表示する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価装置。
【0013】
(3)
前記磁性微粒子が強磁性微粒子であり、前記外部交流磁場生成器は前記強磁性微粒子の磁気モーメントの方向を変化させ、前記強磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させ、
前記復調回路は、前記探針振動検出器の検出信号を入力し、当該検出信号から前記磁気モーメントの方向の変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する、
ことを特徴とする(1)または(2)に記載の磁性微粒子の磁気特性評価装置。
磁性微粒子が強磁性微粒子の場合には、前記外部交流磁場生成器により生成された外部交流磁場により、磁気モーメントの方向のみが変化し磁気モーメントの大きさは変化しない。
【0014】
(4)
前記磁性微粒子が常磁性微粒子または超常磁性微粒子であり、前記外部交流磁場生成器は前記常磁性微粒子または前記超常磁性微粒子の磁気モーメントの大きさを変化させ、前記常磁性微粒子または前記超常磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させ、
前記復調回路は、前記探針振動検出器の検出信号を入力し、当該検出信号から前記磁気モーメントの大きさの変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する、
ことを特徴とする(1)または(2)に記載の磁性微粒子の磁気特性評価装置。
磁性微粒子が常磁性微粒子または超常磁性微粒子の場合には、前記外部交流磁場生成器により生成された外部交流磁場により、磁場方向の磁気モーメントの大きさが変化する。
【0015】
本発明の磁性微粒子の磁気特性評価装置は(5)〜(8)を要旨とする。
(5)
磁性微粒子の磁気特性を探針装置により評価する方法であって、
ベース材に固定された1つまたは複数の前記磁性微粒子に外部交流磁場を与えて、前記磁性微粒子の磁気モーメントの方向または大きさを変化させて、前記磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させ、
前記探針を機械振動させつつ前記磁性微粒子に接近させて、前記周期変動磁場を振幅変調信号または位相変調信号として含む前記探針の振動を検出し、
前記振動の検出信号から前記磁気モーメントの方向または大きさの変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成し、
前記復調した信号に基づき、前記磁性微粒子の磁気特性を評価する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価方法。
【0016】
(6)
(5)に記載の磁性微粒子の磁気特性評価方法であって、
前記探針と前記ベース材の表面との距離を一定に保ちつつ前記探針を前記ベース材に対して相対移動させ、
前記磁気特性の評価結果を、前記探針の相対移動情報に対応させて表示する、ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価方法。
【0017】
(7)
(5)または(6)に記載の磁性微粒子の磁気特性評価方法であって、
前記磁性微粒子が強磁性微粒子であり、前記強磁性粒子の周囲に周期変動磁場を生成させる際に、前記強磁性微粒子の磁気モーメントの方向を変化させ、
前記探針の振動の検出信号から前記磁気モーメントの方向の変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価方法。
【0018】
(8)
(5)または(6)に記載の磁性微粒子の磁気特性評価方法であって、
前記磁性微粒子が常磁性微粒子または超常磁性微粒子であり、前記常磁性微粒子または前記超常磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させる際に、当該常磁性または超常磁性微粒子の磁気モーメントの大きさを変化させ、
前記探針の振動の検出信号から前記磁気モーメントの大きさの変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価方法。
【0019】
前述したように探針走査装置は、探針試料間位置調整装置として機能することができる。探針走査装置は、従来の磁気力顕微鏡に使用される公知の機構を用いることができる。
画像表示装置は、ディスプレイ付きのコンピュータを用いることができる。コンピュータを使用することで、適宜の周波数での磁性微粒子の磁気モーメントの大きさや方向の空間分布の評価ができる画像を表示することができる。画像表示装置は、磁性微粒子の磁気モーメント(または磁化)の方向を定量的または/および定性的に画像化して評価できることが好ましい。磁性微粒子に外部交流磁場を与えたときの、磁気モーメントの交流磁場応答の分布(複素磁化率の分布)を画像化することができる。
【0020】
本発明において、探針の磁気モーメントは外部交流磁場生成器が発生する交流磁場によっては変化しないものが選択される。
磁性微粒子が強磁性微粒子の場合、外部交流磁場生成器が発生する交流磁場(周波数ω
m)が、磁性微粒子に作用し、強磁性微粒子の磁気モーメントの方向が周波数ω
mで変化する。
磁性微粒子が常磁性微粒子または超常磁性微粒子の場合には磁気モーメントが交流磁場の方向に発生し、その大きさは磁場強度に比例する(その大きさが周波数ω
mで変化する)。
すなわち、本発明では磁性微粒子が強磁性微粒子である場合も、常磁性微粒子または超常磁性微粒子である場合も、磁性微粒子の周囲に周期変動磁場が生成する。
探針からみると、磁気モーメントの方向が周波数ω
0で振動している強磁性微粒子は、交流磁場発生源である。
また、探針からみると、磁気モーメントの大きさが磁場方向に周波数ω
0で変化している常磁性または超常磁性微粒子は、交流磁場発生源である。
【0021】
探針は、通常、その磁気モーメントが観察試料面に垂直な方向に着磁される。探針が単磁極型として振る舞う場合、探針はその振動方向(ここではz方向とする)の磁場勾配∂H
z/∂zを検出する。ここで、磁性微粒子が発生する磁場H
zMFPと比較して、外部交流磁場に原因する磁場H
zEXTは空間的均一性が高い。それにより、外部交流磁場に原因する空間的な磁場勾配(z方向の磁場勾配∂H
zEXT/∂z)は、磁性微粒子の磁化が発生する振動方向の磁場勾配(z方向の磁場勾配∂H
zMFP/∂z)に比べて無視できる。
したがって、復調回路は探針振動検出器を介して磁性微粒子の周囲の磁場勾配を外部交流磁場の影響を受けずに復調し、磁気特性評価回路は、復調回路が復調した信号に基づき、磁性微粒子の磁気特性を評価することができる。
【0022】
磁性微粒子が強磁性微粒子であるときは、磁性微粒子の磁気特性として、たとえば、磁気モーメントの大きさや方向およびヒステリシス曲線が挙げられる。
また、磁性微粒子が常磁性または超常磁性微粒子であるときは、磁性微粒子の磁気特性として、磁場印加方向に生じる磁気モーメントの大きさおよび磁化曲線が挙げられる。
従来の磁気力顕微鏡では、磁性微粒子の磁気モーメントが発生する直流磁場は、その大きさが小さいために検出が困難であったが、本発明の磁性微粒子の磁気特性評価装置を使用することで、磁性微粒子の磁気特性を高感度かつ高精度に評価できる。