特許第6167265号(P6167265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6167265磁性微粒子の磁気特性評価装置および磁気特性評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167265
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】磁性微粒子の磁気特性評価装置および磁気特性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01Q 60/50 20100101AFI20170713BHJP
【FI】
   G01Q60/50
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-4025(P2013-4025)
(22)【出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2014-134523(P2014-134523A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2016年1月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載アドレス:http://www.magnetism.org/Full_AbstractBook.pdf 掲載開始日 :平成24年12月10日 発表内容 :WEB上の概要集の816頁及び817頁のHC−04に掲載の「AC magnetic field assisted altemating magnetic force microscopy:Imaging of magnetic field response of soft magnetic Fe▲3▼O▲4▼ nano particles」
(73)【特許権者】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095485
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 千賀志
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 準
(72)【発明者】
【氏名】吉村 哲
(72)【発明者】
【氏名】木下 幸則
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/101991(WO,A1)
【文献】 特開平09−218213(JP,A)
【文献】 Jacob W. alldredge et al,Magnetic particle imaging with a cantilever detector,Journal of applied physics,2012年,Vol.112,023905
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q 10/00−90/00
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性微粒子の磁気特性を探針装置により評価する装置であって、
着磁したハード磁性体からなる探針が先端に備えられた探針装置と、
前記探針と前記磁性微粒子との距離を調整する探針試料間位置調整装置と、
前記探針を機械振動させる励振器と、
ベース材に固定された1つまたは複数の前記磁性微粒子に外部交流磁場を与えて、前記磁性微粒子の磁気モーメントの方向または大きさを変化させて、前記磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させる外部交流磁場生成器と、
前記周期変動磁場を振幅変調信号または位相変調信号として含む前記探針の振動を検出する探針振動検出器と、
前記探針振動検出器の検出信号を入力し、当該検出信号から前記磁気モーメントの方向または大きさの変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する復調回路と、
前記復調回路が復調した信号に基づき、前記磁性微粒子の磁気特性を評価する磁気特性評価回路と、
を備えたことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価装置。
【請求項2】
さらに、探針走査装置と画像表示装置とを備えている請求項1に記載の磁性微粒子の磁気特性評価装置において、
前記探針走査装置は、前記ベース材の表面の形状情報を保有しており、前記探針と前記ベース材の表面との距離を一定に保ちつつ前記探針を前記ベース材に対して相対移動させ、
前記画像表示装置は、前記磁気特性評価回路による磁気特性の測定結果を、前記探針の相対移動情報に対応させて表示する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価装置。
【請求項3】
前記磁性微粒子が強磁性微粒子であり、前記外部交流磁場生成器は前記強磁性微粒子の磁気モーメントの方向を変化させ、前記強磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させ、
前記復調回路は、前記探針振動検出器の検出信号を入力し、当該検出信号から前記磁気モーメントの方向の変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の磁性微粒子の磁気特性評価装置。
【請求項4】
前記磁性微粒子が常磁性微粒子または超常磁性微粒子であり、前記外部交流磁場生成器は前記常磁性微粒子または前記超常磁性微粒子の磁気モーメントの大きさを変化させ、前記常磁性微粒子または前記超常磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させ、
前記復調回路は、前記探針振動検出器の検出信号を入力し、当該検出信号から前記磁気モーメントの大きさの変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の磁性微粒子の磁気特性評価装置。
【請求項5】
磁性微粒子の磁気特性を探針装置により評価する方法であって、
ベース材に固定された1つまたは複数の前記磁性微粒子に外部交流磁場を与えて、前記磁性微粒子の磁気モーメントの方向または大きさを変化させて、前記磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させ、
針を機械振動させつつ前記磁性微粒子に接近させて、前記周期変動磁場を振幅変調信号または位相変調信号として含む前記探針の振動を検出し、
前記振動の検出信号から前記磁気モーメントの方向または大きさの変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成し、
前記復調した信号に基づき、前記磁性微粒子の磁気特性を評価する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価方法。
【請求項6】
請求項5に記載の磁性微粒子の磁気特性評価方法であって、
前記探針と前記ベース材の表面との距離を一定に保ちつつ前記探針を前記ベース材に対して相対移動させ、
前記磁気特性の評価結果を、前記探針の相対移動情報に対応させて表示する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の磁性微粒子の磁気特性評価方法であって、
前記磁性微粒子が強磁性微粒子であり、前記強磁性粒子の周囲に周期変動磁場を生成させる際に、前記強磁性微粒子の磁気モーメントの方向を変化させ、
前記探針の振動の検出信号から前記磁気モーメントの方向の変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載の磁性微粒子の磁気特性評価方法であって、
前記磁性微粒子が常磁性微粒子または超常磁性微粒子であり、前記常磁性微粒子または前記超常磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させる際に、当該常磁性または超常磁性微粒子の磁気モーメントの大きさを変化させ、
前記探針の振動の検出信号から前記磁気モーメントの大きさの変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動する探針装置を用いて磁性微粒子(強磁性微粒子、または常磁性微粒子あるいは超常磁性微粒子)の磁気特性を評価する磁気特性評価装置に関する。
特に、本発明は、磁気モーメントがもとの状態に復帰できる強さの外部交流磁場または磁気モーメントが反転する強さの外部交流磁場により強磁性微粒子を励磁し、その応答を検出することで、強磁性微粒子の磁気特性を高感度かつ高精度に観察できる技術、または、外部交流磁場により常磁性微粒子または超常磁性微粒子に磁気モーメントを発生させ、その応答を検出することで、常磁性微粒子または超磁性微粒子の磁気特性を高感度かつ高精度に評価できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、強磁性体試料80の磁気特性は、磁気力顕微鏡8により評価することができる。
磁気力顕微鏡8では、カンチレバー81の先端に形成したハード磁性体からなる探針83を、カンチレバー81に設けられた励振器82によって機械的に周波数ω0で振動させる。探針83の周波数ω0の振動を、磁性体試料80(図5では磁気ヘッド)から発生する周波数ωmの交流磁場により変調する。図5では励振器82の電源をAC1で示し、磁性体試料80に接続された電源をAC2で示す。
【0003】
探針83の振動(変調振動)は、レーザ光源841とフォトダイオード842からなる振動検出器84により検出される。すなわち、レーザ光源841からの光は、カンチレバー81の先端(探針83とは反対側)に形成されたミラーにより反射され、反射光はフォトダイオード842により検出される。
フォトダイオード842からの信号は復調器85に入射される。
復調器85は、入射信号を復調し、復調信号を磁気特性評価回路86に送出する。
磁気特性評価回路86は、復調器85から受け取った復調信号を解析することで、磁性体試料80の磁気特性(磁化の大きさや方向)を評価することができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2009/101991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5の磁気力顕微鏡8は、強い交流磁場を発生させるソフト磁性材料から構成された磁気デバイス(磁気記録ヘッド等)の測定には適している。しかし、磁気力顕微鏡8による、磁性微粒子(強磁性微粒子、常磁性微粒子、超常磁性微粒子等)の磁区観察には、次の問題がある。
1) 磁性微粒子から発生する磁場が微弱なため、測定感度が低くなる。
2) 1)の問題を改善するために(測定感度を向上させるために)、探針に形成される磁性体の膜厚を厚くすると測定感度は向上する。しかし、探針の先端が鋭くなくなる(鈍る)ため、空間分解能が劣化する。
3) 2)のように探針に形成される磁性体の膜厚を厚くすると、探針から発生する直流磁場が大きくなることで、磁性微粒子の磁気モーメントが乱され、測定精度が低下するおそれがある。
以上に事情により、磁性微粒子を利用した製品(たとえば、医療用の超常磁性微粒子)については、十分な磁区の観察ができない。
このため、磁性微粒子の磁区や磁気モーメントの状態を、高い感度、高い精度で評価する技術が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、
(a)強磁性微粒子を磁気モーメントの方向が磁場印加前の方向に戻ることができる程度に交流励磁し、当該強磁性微粒子の磁気的性質を高感度かつ高精度に評価すること、または、
強磁性微粒子を磁気モーメントの方向が反転する程度に交流励磁し、当該強磁性微粒子の磁気的性質を高感度かつ高精度に観察すること、
(b)常磁性微粒子ならびに超常磁性微粒子を磁気モーメントの大きさが変化する程度に励磁し、当該磁性微粒子の磁気的性質を高感度かつ高精度に評価することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の磁性微粒子の磁気特性評価装置は(1)〜(4)を要旨とする。
(1)
磁性微粒子の磁気特性を探針装置により評価する装置であって、
着磁したハード磁性体からなる探針が先端に備えられた探針装置と、
前記探針と前記磁性微粒子との距離を調整する探針試料間位置調整装置と、
前記探針を機械振動させる励振器と、
ベース材に固定された1つまたは複数の前記磁性微粒子に外部交流磁場を与えて、前記磁性微粒子の磁気モーメントの方向または大きさを変化させて、前記磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させる外部交流磁場生成器と、
前記周期変動磁場を振幅変調信号または位相変調信号として含む前記探針の振動を検出する探針振動検出器と、
前記探針振動検出器の検出信号を入力し、当該検出信号から前記磁気モーメントの方向または大きさの変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する復調回路と、
前記復調回路が復調した信号に基づき、前記磁性微粒子の磁気特性を評価する磁気特性評価回路と、
を備えたことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価装置。
【0008】
本発明において、磁性微粒子は、磁気モーメントが外部磁場により変化する磁性微粒子である。磁性微粒子は、強磁性微粒子や常磁性微粒子または超常磁性微粒子であってもよい。
磁性微粒子は、適宜のベース材(たとえば、合成樹脂等の非磁性材料)に固定される。
磁性微粒子の磁気特性は、たとえば、磁気モーメントの大きさ、磁気モーメントの方向、ヒステリシス曲線、ヒステリシス損失、渦電流損失、磁区構造(磁区が単磁区であるか否か等)、複素磁化率の分布である。
なお、本発明において、「磁性微粒子の磁気特性」は、「磁性微粒子群の磁気特性」をも意味してよい。この場合には、たとえば「磁気モーメント」の大きさ、「磁気モーメントの方向」は、「磁化の大きさ」、「磁化の方向」に置き換えることができる。
【0009】
探針装置は、典型的には先端に探針が形成されたカンチレバーである。カンチレバーの先端の探針が形成されていない側には反射ミラーが形成される。
探針試料間位置調整装置は、後述する探針走査装置と協働して動作することができる。また、探針走査装置が機能の一部に、探針試料間位置調整装置の機能を持つこともできる。
励振器は、典型的には、圧電素子からなる機械振動発生器と、機械振動発生器に電圧を与える励振用交流電源からなる。探針は、通常は、共振周波数で励振される。探針の機械振動周波数は、典型的には、数百kHzのオーダである。
探針振動検出器は、典型的には、レーザ光源とフォトダイオードとからなる。レーザ光源からの光は前述した反射ミラーにより反射されてフォトダイオードにより検出される。
【0010】
外部交流磁場生成器は、磁性微粒子の磁気モーメントを励磁させることができ、典型的には、磁気コイルと外部交流磁場生成用交流電源とから構成できる。磁気コイルは空心コイルでもよいし、鉄心入りコイルでもよい。磁性微粒子の磁気モーメントが、外部交流磁場生成器が生成する外部交流磁場により励磁されることより、磁性微粒子の周囲には周期変動磁場が形成される。外部交流磁場生成用交流電源の周波数は、典型的には、数百Hz〜数kHz程度である。
系を巨視的に見た場合、強磁性微粒子の磁気モーメントは、外部交流磁場生成器が発生する交流磁場によりもとの方向に復帰できる範囲で回転し、または反転する。または、熱擾乱によりランダムに熱振動している常磁性または超常磁性微粒子の微視的な磁気モーメントは、交流磁場生成器が発生する交流磁場により磁場方向に平均として揃えられ、その大きさは磁場にほぼ比例する。
【0011】
復調回路は、アナログフィルタにより構成されたFM復調回路である。復調回路が復調する信号は、「磁気モーメントの方向および/または大きさの変化」である。「磁気モーメントの方向および/または大きさの変化」は、「磁性微粒子が発生する交流磁場の勾配」に反映されるので、復調回路が復調する信号は、「磁性微粒子が発生する交流磁場の勾配」と言い換えることができる。
磁気特性評価回路は、振幅検出および位相検出を行うことができる機能を備えており、たとえば、ロックインアンプ、振幅測定回路および位相測定回路により構成できる。
【0012】
(2)
さらに、探針走査装置と画像表示装置とを備えている(1)に記載の磁性微粒子の磁気特性評価装置において、
前記探針走査装置(前記探針試料間位置調整装置の機能と共用される)は、前記ベース材の表面の形状情報を保有しており、前記探針と前記ベース材の表面との距離を一定に保ちつつ前記探針を前記ベース材に対して相対移動させ、
前記画像表示装置は、前記磁気特性評価回路による磁気特性の評価結果を、前記探針の相対移動情報に対応させて表示する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価装置。
【0013】
(3)
前記磁性微粒子が強磁性微粒子であり、前記外部交流磁場生成器は前記強磁性微粒子の磁気モーメントの方向を変化させ、前記強磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させ、
前記復調回路は、前記探針振動検出器の検出信号を入力し、当該検出信号から前記磁気モーメントの方向の変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する、
ことを特徴とする(1)または(2)に記載の磁性微粒子の磁気特性評価装置。
磁性微粒子が強磁性微粒子の場合には、前記外部交流磁場生成器により生成された外部交流磁場により、磁気モーメントの方向のみが変化し磁気モーメントの大きさは変化しない。
【0014】
(4)
前記磁性微粒子が常磁性微粒子または超常磁性微粒子であり、前記外部交流磁場生成器は前記常磁性微粒子または前記超常磁性微粒子の磁気モーメントの大きさを変化させ、前記常磁性微粒子または前記超常磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させ、
前記復調回路は、前記探針振動検出器の検出信号を入力し、当該検出信号から前記磁気モーメントの大きさの変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する、
ことを特徴とする(1)または(2)に記載の磁性微粒子の磁気特性評価装置。
磁性微粒子が常磁性微粒子または超常磁性微粒子の場合には、前記外部交流磁場生成器により生成された外部交流磁場により、磁場方向の磁気モーメントの大きさが変化する。
【0015】
本発明の磁性微粒子の磁気特性評価装置は(5)〜(8)を要旨とする。
(5)
磁性微粒子の磁気特性を探針装置により評価する方法であって、
ベース材に固定された1つまたは複数の前記磁性微粒子に外部交流磁場を与えて、前記磁性微粒子の磁気モーメントの方向または大きさを変化させて、前記磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させ、
前記探針を機械振動させつつ前記磁性微粒子に接近させて、前記周期変動磁場を振幅変調信号または位相変調信号として含む前記探針の振動を検出し、
前記振動の検出信号から前記磁気モーメントの方向または大きさの変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成し、
前記復調した信号に基づき、前記磁性微粒子の磁気特性を評価する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価方法。
【0016】
(6)
(5)に記載の磁性微粒子の磁気特性評価方法であって、
前記探針と前記ベース材の表面との距離を一定に保ちつつ前記探針を前記ベース材に対して相対移動させ、
前記磁気特性の評価結果を、前記探針の相対移動情報に対応させて表示する、ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価方法。
【0017】
(7)
(5)または(6)に記載の磁性微粒子の磁気特性評価方法であって、
前記磁性微粒子が強磁性微粒子であり、前記強磁性粒子の周囲に周期変動磁場を生成させる際に、前記強磁性微粒子の磁気モーメントの方向を変化させ、
前記探針の振動の検出信号から前記磁気モーメントの方向の変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価方法。
【0018】
(8)
(5)または(6)に記載の磁性微粒子の磁気特性評価方法であって、
前記磁性微粒子が常磁性微粒子または超常磁性微粒子であり、前記常磁性微粒子または前記超常磁性微粒子の周囲に周期変動磁場を生成させる際に、当該常磁性または超常磁性微粒子の磁気モーメントの大きさを変化させ、
前記探針の振動の検出信号から前記磁気モーメントの大きさの変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成する、
ことを特徴とする磁性微粒子の磁気特性評価方法。
【0019】
前述したように探針走査装置は、探針試料間位置調整装置として機能することができる。探針走査装置は、従来の磁気力顕微鏡に使用される公知の機構を用いることができる。
画像表示装置は、ディスプレイ付きのコンピュータを用いることができる。コンピュータを使用することで、適宜の周波数での磁性微粒子の磁気モーメントの大きさや方向の空間分布の評価ができる画像を表示することができる。画像表示装置は、磁性微粒子の磁気モーメント(または磁化)の方向を定量的または/および定性的に画像化して評価できることが好ましい。磁性微粒子に外部交流磁場を与えたときの、磁気モーメントの交流磁場応答の分布(複素磁化率の分布)を画像化することができる。
【0020】
本発明において、探針の磁気モーメントは外部交流磁場生成器が発生する交流磁場によっては変化しないものが選択される。
磁性微粒子が強磁性微粒子の場合、外部交流磁場生成器が発生する交流磁場(周波数ωm)が、磁性微粒子に作用し、強磁性微粒子の磁気モーメントの方向が周波数ωmで変化する。
磁性微粒子が常磁性微粒子または超常磁性微粒子の場合には磁気モーメントが交流磁場の方向に発生し、その大きさは磁場強度に比例する(その大きさが周波数ωmで変化する)。
すなわち、本発明では磁性微粒子が強磁性微粒子である場合も、常磁性微粒子または超常磁性微粒子である場合も、磁性微粒子の周囲に周期変動磁場が生成する。
探針からみると、磁気モーメントの方向が周波数ω0で振動している強磁性微粒子は、交流磁場発生源である。
また、探針からみると、磁気モーメントの大きさが磁場方向に周波数ω0で変化している常磁性または超常磁性微粒子は、交流磁場発生源である。
【0021】
探針は、通常、その磁気モーメントが観察試料面に垂直な方向に着磁される。探針が単磁極型として振る舞う場合、探針はその振動方向(ここではz方向とする)の磁場勾配∂Hz/∂zを検出する。ここで、磁性微粒子が発生する磁場HzMFPと比較して、外部交流磁場に原因する磁場HzEXTは空間的均一性が高い。それにより、外部交流磁場に原因する空間的な磁場勾配(z方向の磁場勾配∂HzEXT/∂z)は、磁性微粒子の磁化が発生する振動方向の磁場勾配(z方向の磁場勾配∂HzMFP/∂z)に比べて無視できる。
したがって、復調回路は探針振動検出器を介して磁性微粒子の周囲の磁場勾配を外部交流磁場の影響を受けずに復調し、磁気特性評価回路は、復調回路が復調した信号に基づき、磁性微粒子の磁気特性を評価することができる。
【0022】
磁性微粒子が強磁性微粒子であるときは、磁性微粒子の磁気特性として、たとえば、磁気モーメントの大きさや方向およびヒステリシス曲線が挙げられる。
また、磁性微粒子が常磁性または超常磁性微粒子であるときは、磁性微粒子の磁気特性として、磁場印加方向に生じる磁気モーメントの大きさおよび磁化曲線が挙げられる。
従来の磁気力顕微鏡では、磁性微粒子の磁気モーメントが発生する直流磁場は、その大きさが小さいために検出が困難であったが、本発明の磁性微粒子の磁気特性評価装置を使用することで、磁性微粒子の磁気特性を高感度かつ高精度に評価できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、磁性微粒子が強磁性微粒子であるときは、磁性微粒子の磁気モーメントの大きさや方向および交流磁場応答性を、高感度かつ高精度に評価できる。
本発明によれば、磁性微粒子が常磁性または超常磁性微粒子であるときは、磁場印加方向に生じる磁気モーメントの大きさおよび交流磁場応答性を、高感度かつ高精度に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は本発明の磁気特性評価装置を示す説明図である。
図2図2は、ベース材の表面形状の検出をするときの、距離測定装置の動作説明図である。
図3図3(A)は磁性微粒子が固定されたベース材の表面を探針で走査するときの様子を示す図であり、図3(B)は交流磁場によりベース材に固定された磁性微粒子の磁気モーメントの方向が可逆的に変化する様子を示す図である。
図4図4(A)は、強磁性微粒子(Fe34のナノ微粒子)の交流磁場の極性(強磁性微粒子から発生する交流磁場の、交流磁場励磁源の電圧に対する位相)を観察した結果を示す図であり、図4(B)は図4において、符号Aで示される黒点と白点の位置での強磁性微粒子の磁気モーメントの方向の可逆的な変化および強磁性微粒子から発生する交流磁場の方向を示す図である。ここでは、試料面に垂直方向での磁場の極性(方向)が強磁性微粒子の左右の両端で上向き・下向きと逆方向になっている。また、図4(C)は符号Bで示される白点・黒点・白点の位置にある強磁性微粒子の磁気モーメントの方向の可逆的な変化および強磁性微粒子が発生するから発生する交流磁場の方向を示す図である。ここでは、試料面に垂直方向での磁場の極性(方向)が上向き・下向き・上向きの順に反転している。
図5図5は磁気力顕微鏡の従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の磁気特性評価装置を示す説明図であり、磁気特性評価装置1は、磁性微粒子51の磁気特性を探針装置により評価することができる。
磁気特性評価装置1は、探針装置11、探針試料間位置調整装置12、励振器13、外部交流磁場生成器14、探針振動検出器15、復調回路16、磁気特性評価回路17、探針走査装置18および画像表示装置19とを備えている。
探針装置11は、探針111とカンチレバー112からなり、カンチレバー112の先端に探針111が備えられている。探針111は、着磁したハード磁性体からなる。本実施形態では、探針111は、シリコン探針にFePtを被覆して形成される。
探針試料間位置調整装置12は、探針111と磁性微粒子が固定されたベース材50との距離を調整する。本実施形態では、探針走査装置18の機能が探針試料間位置調整装置12の機能に共用されている。また、ベース材50の表面情報は、後述するように画像表示装置19(コンピュータ)が保有している。
励振器13は、たとえばピエゾ振動子131と交流信号源132から構成できる。ピエゾ振動子131は、カンチレバー112の基部に設けられ、探針111を高速で(たとえば数百kHzで)機械振動させることができる。探針111は機械振動しつつ、ベース材50の表面に固定された磁性微粒子51に接近させることができる。磁性微粒子51は、本実施形態ではFe34である。
【0026】
外部交流磁場生成器14は鉄心入り電磁コイル141と交流電源142とからなり、ベース材50に固定された磁性微粒子51に外部交流磁場(z軸方向の成分Hz)を与え、磁性微粒子51の磁気モーメントMの方向を変化させる。この方向変化により、磁性微粒子51の周囲には周期変動磁場HzCYCLEが生成される。
探針振動検出器15は、周期変動磁場HzCYCLEを振幅変調信号または位相変調信号として含む探針111の振動を検出することができる。
復調回路16は、探針振動検出器15の検出信号を入力し、当該検出信号から磁気モーメントの方向の変化から生じる交流磁場を復調した信号を生成することができる。
磁気特性評価回路17は、ロックインアンプ171、振幅測定回路172、位相測定回路173および磁気特性情報生成回路174から構成される。磁気特性評価回路17は、復調回路16が復調した信号に基づき、磁性微粒子の磁気特性を評価することができる。
探針走査装置18は、xyzアクチュエータから構成され、探針111がベース材50の表面との距離を一定に保ちつつ(z制御しつつ)、ベース材50と探針111とを相対移動する(xy制御する)。
画像表示装置19は、コンピュータから構成される。画像表示装置19は、ベース材50の表面の形状情報を保有しており、磁気特性評価回路17による磁気特性の評価結果を、探針走査装置18の走査位置情報(本実施形態では、xy座標情報またはxyz座標情報)に対応させて二次元表示または三次元表示する。
【0027】
まず、磁気特性評価装置1を距離測定装置2として使用するときの当該距離測定装置2の動作を図2により説明する。
図2は、ベース材50の表面形状の検出をするときの、距離測定装置2の動作説明図である。図2は、図1の磁気特性評価装置1に位置制御回路21を付加したものであり、表面形状の検出に使用しない磁気特性評価装置1の構成ブロックは破線で示してある。
図2に示すように、探針111を励振器13により共振周波数で振動させ、探針走査装置18の機能と探針試料間位置調整装置12の機能とを用いて、探針111をベース材50の表面に近づける。
位置制御回路21は、振動振幅が一定となるように制御することで、探針111とベース材50との距離dを一定にできる。具体的には、大気雰囲気中では、dは数オングストローム程度である。
これにより、ベース材50の表面形状を測定できる。測定された表面形状情報DATASFは、画像表示装置19内のメモリ191に記憶(保有)される。
【0028】
次に、図3(A)に示すように、磁性微粒子51が固定されたベース材50の表面を探針111で走査する。
このとき、探針走査装置18は、探針試料間位置調整装置12の機能を用いて、探針111の先端とベース材50の表面との間隔が一定になるように、メモリ191に記憶(保有)されているベース材50の表面形状情報を参照して探針111の位置制御を行う。
励振器13は探針111を探針装置11の固有振動数または固有振動数に近い周波数f0(本実施形態では、f0=300kHz程度)で励振している。
【0029】
探針111の直下のベース材50の位置には交流磁場HEXTが与えられている。本実施形態では、交流磁場HEXTの周波数fEXTは150Hzである。
この交流磁場HEXTにより、図3(B)に示すように、ベース材50に固定された磁性微粒子51の磁気モーメントのベース材に対する角度(磁気モーメントの方向)が磁場印加前の初期角度を中心として交流磁場の周波数で可逆的に増減を繰り返す。
これにより、磁性微粒子51周囲に周期変動磁場HCNGが生成される。
周波数f0で振動する探針111には、磁性微粒子に印加する交流磁場HEXTと磁性微粒子から発生する周期変動磁場HzMFPとが加わる。ここで、探針は磁場勾配が大きなほど、磁場から磁気力を受けるが、外部交流磁場は磁性微粒子から発生する磁場と比較して空間的一様性が高いので、探針111では、∂HzMFP/∂zによって大きな変調を受け、∂HEXT/∂zによって受ける変調の大きさは∂HzMFP/∂zによって受ける変調の大きさに比べて無視できる。
探針111の振動は、探針振動検出器15により検出され、復調回路16により復調される。
ロックインアンプ171の出力から、振幅測定回路172は周期変動磁場∂HzMFP/∂zの振幅を検出できるし、位相測定回路173は周期変動磁場∂HzMFP/∂zの位相を検出できる。
【0030】
外部交流磁場生成器14が生成する交流磁場HEXT強度が小さな範囲では、磁性微粒子51が強磁性微粒子である場合、その磁気モーメントの向きは必ずしも磁場方向を向かないが、磁性微粒子51が常磁性微粒子あるいは超磁性微粒子である場合、交流磁場HEXTの強度によらず、磁気モーメントは磁場方向に常に生じるので、強磁性微粒子と常磁性微粒子あるいは超磁性微粒子との割合の評価が可能になる。これにより、磁性微粒子の品質の評価ができる。
また、外部交流磁場生成器14が生成する交流磁場HEXT強度が増加すると、磁性微粒子51の磁気モーメントの交流磁場応答に時間遅れが生じるのが一般的である。たとえば単磁区構造の強磁性微粒子に対して、この交流磁場応答の時間遅れから複素磁化率を評価することにより、磁性微粒子51を交流磁場により誘導熱源として使用するときの発熱量を評価することもできる。
【0031】
図4(A)は、磁性微粒子(Fe34のナノ微粒子)から発生する交流磁場の極性(強磁性微粒子から発生する交流磁場の、交流磁場励磁源の電圧に対する位相)を観察した結果を示す図である。図4(A)において、符号Aで示される黒点と白点は、図4(B)に示すように、磁気モーメントの方向が表面に水平な方向(探針111が振動する方向に垂直)を向いている強磁性微粒子が発生する交流磁場の試料面に垂直な成分の極性を示している。
また、図4(A)において、符号Bで示される白点・黒点・白点は、図5(C)に示すように、磁気モーメントの方向が表面に垂直な方向を向いている強磁性微粒子が発生する交流磁場の試料面に垂直な成分の極性を示している。
【符号の説明】
【0032】
1 磁気特性評価装置
2 距離測定装置
11 探針装置
12 探針試料間位置調整装置
13 励振器
14 外部交流磁場生成器
15 探針振動検出器
16 復調回路
17 磁気特性評価回路
18 探針走査装置
19 画像表示装置
21 位置制御回路
50 ベース材
51 磁性微粒子
111 探針
112 カンチレバー
131 ピエゾ振動子
132 交流信号源
141 電磁コイル
142 交流電源
171 ロックインアンプ
172 振幅測定回路
173 位相測定回路
174 磁気特性情報生成回路
191 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5