(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のコイルの少なくとも1つのコイルの最外周部の少なくとも一部に対面するように、一定の電位が保たれてなる定電位導体を備えてなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のリアクトル。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、軟磁性コアと、軟磁性コアに絶縁セパレータを介して導体箔を巻き回してなる複数のコイルを備え、複数のコイルの内の、2つのコイルの最外周部の少なくとも一部が対面してなり、導体箔の巻き回し方向に交流電流が通電されたときに、2つのコイルにおける最外周の前記導体箔の端部同士の電位差が、前記2つのコイルの最内周の前記導体箔の端部同士の電位差よりも小さいリアクトルの実施形態を取り得る。
【0020】
複数のコイルを有するリアクトルにおけるコイルと外部端子との間の接続には様々な組み合わせが存在し、磁束分布が互いに等価となる組み合わせも存在する。
【0021】
例えば、2つのコイルを有するリアクトルの一方のコイルにおける最内周の導体箔の端部から引出されたリード部と、最外周の導体箔の端部からから引出されたリード部が各々2つの外部端子へ接続される場合、2つの外部端子へのリード部の接続を入れ替えても、導体箔の巻き回し方向を逆転させることで軟磁性コア内部に生じる磁束分布は等価となる。
【0022】
しかし、コイル外周面の電位は上記入れ替えによって変わるため、隣接する2つのコイルの外周面の電位差が小さくなるように最内周の導体箔の端部と最外周の導体箔の端部からの外部端子の接続、コイルの巻き回し方向を設定することにより、2つのコイルにおける最外周の導体箔の端部の電位差を、コイルにおける最内周の導体箔の端部の電位差よりも小さくする組み合わせを選択することができる。
【0023】
この場合、リアクトルのコイル間に寄生する静電容量、すなわち寄生容量を小さくすることができ、リアクトルのインピーダンス周波数特性の低周波側の極大値である共振周波数を高めることで高周波帯域まで使用可能なリアクトルとすることができる。
【0024】
なお、上記実施形態は、2つのコイルにおける最外周の導体箔の端部が互いに導電接続され、2つのコイルにおける導体箔の巻き回し方向が同じ向きであってもよい。
【0025】
例えば上記導電接続がなされた2つのコイルを一方のコイルにおける最内周の導体箔の端部から他方のコイルの最内周の導体箔の端部まで通電する、コイルが互いに直列接続され、2つのコイルが互いに同じ向きに巻かれたリアクトルとして構成することができる。
【0026】
この場合も2つのコイルの最外周の導体箔端部間の電位差は導電接続により非常に小さいものとなり、寄生容量を抑えた構成となる。
【0027】
また、2つのコイルが互いに同じ向きに巻かれていることで、互いに逆向きの磁束が発生し、互いのコイルを周回する磁束により強め合う構成となるため、特に2つのコイルがロの字型コアに装着された構成を取る場合などに高いインダクタンスを得ることができる。
【0028】
また、上記実施形態は、軟磁性コアと、軟磁性コアに絶縁セパレータを介して導体箔を巻き回してなる複数のコイルを備え、複数のコイルの内の2つのコイルの最外周部の少なくとも一部が対面してなり、導体箔の巻き回し方向に交流電流が通電されたときに、2つのコイルにおける一方のコイルの最内周の前記導体箔の端部と最外周の前記導体箔の端部との間の電位差の高低関係が、他方のコイルの最内周の前記導体箔の端部と最外周の前記導体箔の端部との間の電位差の高低関係と一致し、前記一方のコイルの前記導体箔の巻き回し方向と、前記他方のコイルの前記導体箔の巻き回し方向が逆向きとなるリアクトルであってもよい。
【0029】
一方のコイルにおける導体箔の巻き回し方向に対する両端部に加わる各々の電位が、他方のコイルにおける導体箔両端部の各々の電位と近い場合、導体箔の最内周の導体箔の端部と最外周の導体箔の端部から外部端子への接続を入れ替える組み合わせがいくつか存在する。
【0030】
上記組み合わせの中で、一方のコイルの最内周の導体箔の端部と最外周の導体箔の端部の間の電位差の高低関係が、他方のコイルの最内周の導体箔の端部と最外周の導体箔の端部の間の電位差の高低関係と一致するものを採用することで、コイル最外周の導体箔の端部間の電位差を小さくすることができ、寄生容量を抑えることができる。
【0031】
また、上記実施形態は、複数のコイルの少なくとも1つのコイルの最外周部の少なくとも一部に対面するように、一定の電位が保たれてなる定電位導体を備えてなるリアクトルであってもよい。
【0032】
定電位導体をコイル最外周面に近接させることで、寄生容量を定電位導体との間の静電容量に置き換え、寄生容量をさらに削減することができる。
【0033】
また、上記実施形態は、定電位導体が、最外周部が対面してなる前記2つのコイルの間に挿入されていてもよい。
【0034】
寄生容量はコイル間に生じるものが主であるため、コイル間に定電位導体を挿入することで大幅な寄生容量の削減を行うことができる。
【0035】
また、上記実施形態は、上記コイルが、絶縁セパレータを介して導体箔を方形に巻き回してなる方形巻きコイルであってもよい。
【0036】
方形巻コイルとすることで、角部の導体箔の層間隔が広がり、コイル内部における導体箔間の静電容量が削減され、共振周波数をより高くすることができる。
【0037】
また、上記実施形態は、コイルが、平坦な外周部が対面するように配置されていてもよい。
【0038】
方形巻コイルとすることで隣接するコイルの外周面間の寄生容量増加が問題となるが、本発明のコイルの最外周面間の電位差を削減する解決手段を適用することで解消される。
【0039】
さらに本発明の実施形態についての詳細を図と共に説明する。
【0040】
(実施形態1)
図1は、本発明におけるリアクトルの実施形態1を示す斜視図である。
【0041】
コイル11、12を図示されないロの字型軟磁性コアに装着し、枠21へ収容し、蓋22により固定している。
【0042】
蓋22には端子台31が取り付けられ、端子台31に設けられた外部端子32は、コイル11、12各々の図示されない最内周の導体箔の端部及び最外周の導体箔の端部と図示されないリード部により導電接続されている。
【0043】
図2は、本発明におけるリアクトルの実施形態1を示す断面図であり、
図1における平面Aの断面を示している。
【0044】
軟磁性コア101、102には、導体箔111、121及び絶縁セパレータ112、122が同じ向きに巻き回されている。
【0045】
また、導体箔111の最内周の端部にリード部1111、最外周の端部にリード部1112が、導体箔121の最内周の端部にリード部1211、最外周の端部にリード部1212が設けられている。
【0046】
また、導体箔111の最外周部における対面部1113と、導体箔121の最外周部における対面部1213は互いに対面している。
【0047】
ここで、導体箔111と導体箔121の間には寄生容量となる静電容量が生じ、対面部1113と対面部1213の間に電界が集中する。
【0048】
さらに、
図2に示されたような絶縁セパレータと導体箔を方形に巻き回した方形巻コイルである場合には、対面部1113と対面部1213の対面する面積が大きくなり、生じる寄生容量も無視できない大きさとなる。
【0049】
図3は、本発明におけるリアクトルの実施形態1を示す等価回路図である。
【0050】
主にリード部1112とリード部1212の間に寄生容量Cが生じることを示している。
【0051】
図4は、本発明におけるリアクトルの実施形態1により、ノーマルモードチョークコイルを構成した場合の使用状態を示す回路図である。
【0052】
電源Vdの一端は、外部端子を介して、コイル11における導体箔111の最内周の端部のリード部1111に導電接続されている。なお、電源Vdの一端とリード部1111の間は回路部品を介して導電接続してもよい。
【0053】
さらに、コイル11、12における導体箔111、121の最外周の導体箔の端部のリード部1112、1212が外部端子を介して互いに導電接続されている。
【0054】
コイル12における導体箔121の最内周の導体箔の端部のリード部1211は外部端子を介して負荷Zoの一端に導電接続され、負荷Zoの他端と電源Vdの他端は互いに導電接続されている。ここで、電源Vdからの電力信号に電気的ノイズが含まれる場合もあるが、本発明のリアクトルによりこのようなノイズを除去するよう構成してもよい。また、負荷Zoとしては、モーター、バッテリー等が例示されるが、電子回路等の軽負荷も含まれる。
【0055】
図4の構成では、寄生容量Cは主にリード部1112とリード部1212の間に生じる。
【0056】
寄生容量Cが生じるリード部1112、1212間を導電接続することで、ほぼ同電位とする接続配置とすることにより、寄生容量Cへ加わる電圧がほぼ零となり、
図4の構成におけるリアクトルの共振周波数への寄生容量Cの影響をほぼ無くし、共振周波数を高めることができる。
【0057】
図5は、本発明におけるリアクトルの実施形態1により、ノーマルモードチョークコイルを構成した場合の使用状態を示す回路図の変形例である。
【0058】
図4の構成とは、リード部1112、1212間にインピーダンスZ1を接続している点が異なる。なお、電源Vdの一端とリード部1111の間は回路部品を介して導電接続してもよい。
【0059】
リード部1112、1212間にインピーダンスZ1を接続しても、寄生容量Cへ加わる電圧を最小とする接続配置となるため、
図5の構成におけるリアクトルの共振周波数への寄生容量Cの影響を最小限に抑えることができ、共振周波数を高めることができる。
【0060】
(実施形態2)
図6は、本発明におけるリアクトルの実施形態2を示す断面図であり、実施形態1における
図2の変形例である。
【0061】
実施形態1とは、軟磁性コア101、102に対して導体箔111、121及び絶縁セパレータ112、122が互いに逆向きに巻き回されている点が異なる。
【0062】
図6の構成でも、実施形態1と同様に、寄生容量Cは主にリード部1112とリード部1212の間に生じる。
【0063】
図7は、本発明におけるリアクトルの実施形態2によりコモンモードチョークコイルを構成した場合の使用状態を示す回路図である。
【0064】
電源Vdの両端には、外部端子を介してコイル11、12における導体箔111、121の最内周の端部のリード部1111、1211が導電接続されている。なお、電源Vdとリード部1111、1211の間は回路部品を介して導電接続してもよい。
【0065】
負荷Zoの両端には、外部端子を介してコイル11、12における導体箔111、121の最外周の端部のリード部1112、1212が導電接続されている。
【0066】
ここで、導体箔111、121への通電による電圧降下のため、リード部1111、1211間の電位差よりも、リード部1112、1212間の電位差の方が小さくなる。
【0067】
すなわち、間に寄生容量Cが主に生じるリード部1112、1212を負荷Zoに接続することで、特に負荷Zoのインピーダンスが小さい場合に寄生容量Cへ加わる電圧が最小となり、
図7の構成におけるコモンモードチョークコイルの共振周波数への寄生容量Cの影響を削減し、共振周波数を高めることができる。
【0068】
(実施形態3)
図8は、本発明におけるリアクトルの実施形態3により、ノーマルモードチョークコイルを構成した場合の使用状態を示す回路図である。
【0069】
リード部1111、1211間と、リード部1112、1212間が導電接続されることでノーマルモードチョークコイルを構成し、電源Vdと負荷Zoの間に設けられている。なお、電源Vdとリード部1111、1211の間は回路部品を介して導電接続してもよい。
【0070】
間に寄生容量Cが主に生じるリード部1112、1212を導電接続することで、ほぼ同電位とする接続配置とすることにより、寄生容量Cへ加わる電圧がほぼ零となり、
図8の構成におけるリアクトルの共振周波数への寄生容量Cの影響をほぼ無くし、共振周波数を高めることができる。
【0071】
(実施形態4)
図9は、本発明におけるリアクトルの実施形態4を示す断面図であり、実施形態1における
図2の変形例である。
【0072】
実施形態1とは、導体箔111、121の一部に対面する定電位導体2を設けている点が異なる。ここで、定電位導体としては任意の導体を用いることができるが、特に定電位導体としてアルミニウムを用いるのが望ましく、さらに定電位導体としてのアルミニウム表面に酸化物としてのアルミナ(比誘電率9〜10)を設けることで絶縁性を確保できるため、望ましい。
【0073】
定電位導体2の電位は時間変化せず一定であればどのような電位でも良いが、より安定した接地電位であることが望ましい。
【0074】
図10は、本発明におけるリアクトルの実施形態4を示す等価回路図である。ここで
図10は、定電位導体2が接地電位である場合を示している。
【0075】
リード部1112とリード部1212の間には寄生容量Cが生じる。しかし、定電位導体2を設けることで、寄生容量Cの一部が定電位導体2と導体箔111、121の間の静電容量C1、C2となり、リアクトルの共振周波数へ寄与しなくなることから、共振周波数をより高めることができる。
【0076】
図11は、本発明におけるリアクトルの実施形態4を示す断面図であり、
図9の変形例である。
【0077】
図9とは、定電位導体2を導体箔111、121における対面部1113、1213の間に設けている点が異なる。
【0078】
寄生容量が最も多く生じる対面部1113、1213の間に定電位導体2を設けることにより、寄生容量のほとんどが定電位導体2と導体箔111、121の間の静電容量となり、寄生容量のほとんどがリアクトルの共振周波数へ寄与しなくなることから、共振周波数をさらに高めることができる。
【実施例】
【0079】
図12は、本発明におけるリアクトルの通電周波数に対するインピーダンス特性を示す図である。
【0080】
ここで、実施形態1における
図4の構成とした場合のリード部1111とリード部1211の間のインピーダンス特性を示したのが
図12における実施例1である。ここで、磁性コアとしてはアモルファス箔を積層したU字型コアを2つ組み合わせたものを用い、実効透磁率は約800、磁路長は約260mm、軟磁性コアの実効断面積は約1200mm
2であった。また、導体箔111、121及び絶縁セパレータ112、122の巻き数は80であった。
【0081】
また、実施例1の構成からリード部1111、1211間を導電接続し、電源Vdをリード部1112へ、負荷Zoをリード部1212へ繋ぎ変えた場合のリード部1112とリード部1212の間のインピーダンス特性を示したのが
図12における比較例1である。
【0082】
図12より、比較例1よりも実施例1のほうが高い共振周波数となっていることが確認された。
【0083】
図13は、本発明におけるリアクトルの通電周波数に対するインピーダンス特性を示す図である。
【0084】
ここで、実施形態2における
図7の構成とし、負荷Zoを0.3mΩとした場合のリード部1111とリード部1211の間のインピーダンス特性を示したのが
図13における実施例2である。ここで、磁性コアの形状、実効透磁率導体箔111、121及び絶縁セパレータ112、122の巻き数は実施例1と同じであった。
【0085】
また、実施例2の構成から、負荷Zoをリード部1111、1211へ繋ぎ変え、リード部1112とリード部1212の間のインピーダンス特性を示したのが
図13における比較例2である。
【0086】
図13の結果からも、比較例2よりも実施例2のほうが高い共振周波数となっていることが確認された。
【0087】
図14は、本発明におけるリアクトルの通電周波数に対するインピーダンス特性を示す図である。
【0088】
ここで、実施形態1における
図4の構成として、さらに実施形態4における
図9の配置で定電位導体2を近接させた場合のインピーダンス特性を示したのが
図14における実施例3である。
【0089】
また、実施形態1における
図4の構成として、さらに実施形態4における
図10の配置で定電位導体2をコイル間に挿入した場合のインピーダンス特性を示したのが
図14における実施例4である。
【0090】
図14の結果から、実施例1よりも実施例3、さらには実施例4の構成を取ることでさらに高い共振周波数となっていることが確認された。
【0091】
なお、実施例3、4は共振周波数より高周波側での信号をカットする特性を有し、共振周波数より高周波側で実施例1よりも高いインピーダンスを示しているが、これはリアクトルへの通電電流が定電位導体に流れ込むことによりインピーダンスが高く見えていることによるものである。
【0092】
図15は、本発明におけるリアクトルの通電周波数に対するインピーダンス特性を示す図である。
【0093】
ここで、実施形態2における
図7の構成とし、負荷Zoを0.3mΩとして、さらに実施形態4における
図9のように定電位導体2をコイルへ近接させた場合のインピーダンス特性を示したのが
図15における実施例5である。
【0094】
また、実施形態2における
図7の構成とし、負荷Zoを0.3mΩとして、さらに実施形態4における
図10のように定電位導体2をコイル間に挿入した場合のインピーダンス特性を示したのが
図15における実施例6である。
【0095】
図15の結果からも、実施例2よりも実施例5、さらには実施例6の構成を取ることでさらに高い共振周波数となっていることが確認された。