特許第6167273号(P6167273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6167273
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】係留気球システム
(51)【国際特許分類】
   B64B 1/50 20060101AFI20170713BHJP
   B64F 1/14 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   B64B1/50
   B64F1/14
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-39364(P2016-39364)
(22)【出願日】2016年3月1日
【審査請求日】2016年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】596134390
【氏名又は名称】株式会社衛星ネットワーク
(73)【特許権者】
【識別番号】516287999
【氏名又は名称】日本無人機開発合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100138357
【弁理士】
【氏名又は名称】矢澤 広伸
(72)【発明者】
【氏名】藤本 健次
(72)【発明者】
【氏名】友井 康人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一則
(72)【発明者】
【氏名】須永 智
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 洋介
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−315695(JP,A)
【文献】 特開2001−239998(JP,A)
【文献】 特開2001−122194(JP,A)
【文献】 特開平03−021592(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0037650(US,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第02669602(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/50− 1/56
B64B 1/66
B64F 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気球本体と係留装置が係留索を介して接続された係留気球システムであって、
前記気球本体は、メインエンベロープと、前記メインエンベロープに取り付けられた第1のサイドエンベロープおよび第2のサイドエンベロープと、前記メインエンベロープ、前記第1および第2のサイドエンベロープの少なくともいずれかに接続された操縦索とを有し、
前記操縦索の張力を制御することによって、前記メインエンベロープと前記第1のサイドエンベローと前記第2のサイドエンベロープの相対的な位置を変更可能である、
ことを特徴とする、係留気球システム。
【請求項2】
前記係留装置は、前記係留索の張力を制御する張力制御装置を有し、
前記操縦索に接続されたモータを有し、当該モータが前記張力制御装置からの指示に従って前記操縦索の張力を調整することによって、前記メインエンベロープと前記第1のサイドエンベローと前記第2のサイドエンベロープの相対的な位置を変更可能である、
請求項1に記載の係留気球システム。
【請求項3】
前記係留装置は、前記係留索の張力を制御する張力制御装置を有し、
前記操縦索が前記係留索を兼ねており、前記操縦索が前記係留装置と接続されており、
前記係留装置が前記張力制御装置からの指示に従って前記操縦索の張力を調整することによって、前記メインエンベロープと前記第1のサイドエンベローと前記第2のサイドエンベロープの相対的な位置を変更可能である、
請求項1に記載の係留気球システム。
【請求項4】
前記気球本体は、風速センサを有し、
前記係留装置は、前記風速センサから得られる風速と前記操縦索の張力とに基づいて、前記操縦索の張力を制御する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の係留気球システム。
【請求項5】
前記係留装置は、風速が弱いほど前記メインエンベロープと前記第1および第2のサイ
ドエンベロープの水平高さが近い位置になり、風速が強いほど前記第1および第2のサイドエンベロープが前記メインエンベロープよりも低い位置になるように、前記操縦索の張力を制御する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の係留気球システム。
【請求項6】
前記係留装置は、風速が弱いほど前記気球本体が水平に近いようになり、風速が強いほど前記気球本体の前方が上向きになるように、前記操縦索の張力を制御する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の係留気球システム。
【請求項7】
前記係留装置は、前記係留索の張力を制御する張力制御装置を有し、
前記メインエンベロープは、1対の尾翼を有しており、
前記尾翼は、操縦索と接続されており、
前記張力制御装置は、前記操縦索の張力を制御することによって前記尾翼も操作する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の係留気球システム。
【請求項8】
前記メインエンベロープ、前記第1および第2のサイドエンベロープはいずれも円筒形状である、
請求項1から7のいずれか1項に記載の係留気球システム。
【請求項9】
前記第1および第2のサイドエンベロープは、前記メインエンベロープよりも長手方向の長さが短く、
前記第1および第2のサイドエンベロープの重心位置は、前記メインエンベロープの重心位置よりも前方に位置する、
請求項8に記載の係留気球システム。
【請求項10】
前記第1および第2のサイドエンベロープは、内部の気体を維持した状態で、前記メインエンベロープから着脱可能である、
請求項1から9のいずれか1項に記載の係留気球システム。
【請求項11】
前記係留装置は、車両に搭載されており、
前記車両には、前記第1および第2のサイドエンベロープの内部の気体を維持した状態で前記気球本体を固定可能な支持部を備える、
請求項1から10のいずれか1項に記載の係留気球システム。
【請求項12】
前記係留装置と、前記気球本体に設けられたセンサから得られるセンサデータを取得し無線通信によりデータ送信装置と、を搭載した車両をさらに有する、
請求項1から11のいずれか1項に記載の係留気球システム。
【請求項13】
前記係留装置と、前記気球本体に搭載されたセンサから取得されるセンサ情報を無線通信により送信する伝送装置と、を搭載した車両を備える、
請求項1から12のいずれか1項に記載の係留気球システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係留気球システムに関し、特に気球の移動を抑制可能な係留気球システムに関する。
【背景技術】
【0002】
観察・広告・無線通信の中継局などを目的として係留気球が使用されている。従来の係留気球は、気球を地上からのロープ(係留索)でつなぎ止めた構成を有し、したがって、係留範囲(気球の浮遊範囲)はロープの範囲に限定される。しかしながら、風の影響により気球が流されて建物に衝突したりするなど事故の原因となることから、強風時には運用が困難であった。
【0003】
特許文献1は、スクープ(気球の姿勢安定のために気球本体下部に取り付けられる幕状部材)を透過率が高い部分と低い部分とから構成することにより、機首を風上に向けるように姿勢の安定化(風見安定)を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−7899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
都市部のような建築物が密集している場所で使う場合や、極狭い範囲の空撮を目的とする場合などは、気球の浮遊範囲をロープによって規定される範囲よりも狭い範囲に限定することが必要となる。特許文献1では気球の風見安定が実現できるとしても、風の影響により気球が流されることは防止できない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、気球の係留位置を制御可能な係留気球システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる係留気球システムは、以下の構成を有することによって、気球本体の係留位置を制御可能とする。本発明にかかる係留気球システムは、気球本体と係留装置が係留索を介して接続された係留気球システムである。
【0008】
気球本体は、メインエンベロープと、前記メインエンベロープに取り付けられた第1のサイドエンベロープおよび第2のサイドエンベロープと前記メインエンベロープ、前記第1および第2のサイドエンベロープの少なくともいずれかに接続された操縦索とを有する。エンベロープは、球皮とも称され、内部にヘリウムや水素などの軽量の気体を密封する。気球本体は、機首が風上を向くように風見安定な構造を有することが好ましい。
【0009】
前記操縦索の張力を制御することによって、前記メインエンベロープと前記第1のサイドエンベローと前記第2のサイドエンベロープの相対的な位置を変更可能である。
【0010】
すなわち、本発明にかかる係留気球システムでは、操縦索の張力制御によって、気球本体の形状を変化させられる。気球の形状変化によって、風が気球本体に与える力を変化させることができる。したがって、風による力および係留索の張力によって気球本体に加えられる力を調整することで、気球本体が移動しないように制御したり、あるいは気球本体
を所望の位置に移動させたりすることが可能である。
【0011】
本発明において、操縦索の張力制御は、機械によって行われてもよいし、人手によって行われてもよい。張力制御を機械によって行う場合には、操縦索の張力を制御する張力制御装置を係留装置が備えることができる。操縦索に実際に張力を印加する装置(モータ等)は、気球側(空中)にあってもよいし係留装置側(地上)にあってもよい。
【0012】
例えば、本発明における係留気球システムは、前記操縦索に接続されたモータを有するように構成できる。この場合、モータが前記張力制御装置からの指示に従って前記操縦索の張力を調整することによって、前記メインエンベロープと前記第1のサイドエンベローと前記第2のサイドエンベロープの相対的な位置を変更可能である。なお、操縦索およびモータは、係留索に接続されていてもよいし接続されていなくてもよい。例えば、係留索の端部と気球本体の複数の異なる位置を接続する複数の操縦索を有し、それぞれの操縦索の張力をモータにより制御することで、気球の形状を変化させられる。あるいは、両端が気球本体に接続された操縦索の張力をモータにより制御することでも、気球の形状を変化させられる。
【0013】
また、本発明における係留気球システムは、前記操縦索が前記係留索を兼ねており、前記操縦索が前記係留装置と接続されるように構成できる。この場合、係留装置が前記張力制御装置からの指示に従って前記操縦索の張力を調整することによって、前記メインエンベロープと前記第1のサイドエンベローと前記第2のサイドエンベロープの相対的な位置を変更可能である。
【0014】
なお、いずれの場合も、操縦索を一本ずつ個別に張力制御できる必要はなく、適宜の単位で複数本の操縦索の張力をまとめて制御するように構成してもよい。
【0015】
本発明における係留装置は、気球が受ける風の風速や風向と操縦索あるいは係留索の張力とに基づいて、操縦索の張力を制御することが好ましい。気球が受ける風の風速や風向は、気球本体に備えられた風速センサや風向センサによって取得すればよい。どのような風および張力のときに、どのように操縦索の張力を制御すればよいかは、あらかじめ定められた規則に従って判断すればよい。この規則は、力学的な計算に基づいて策定することもできるし、実機またはシミュレーションを用いた機械学習によって策定することもできる。
【0016】
係留装置による操縦索の張力制御は、上記のパラメータ以外に、例えば、気球本体の係留装置に対する相対的な位置、風向きまたは風に対する気球本体の向き、上空(気球本体付近)での気温・気圧、気球本体内の軽量気体の量や浮力、係留装置に対する気球本体の相対的な位置などに基づいて行うことも好ましい。これらの情報は、気球に備えられたセンサから取得したり、あるいは係留装置によって備えられたセンサから取得したりすることができる。
【0017】
本発明における係留装置は、風速が弱いほど前記メインエンベロープと前記第1および第2のサイドエンベロープの水平高さが近い位置になり、風速が強いほど前記第1および第2のサイドエンベロープが前記メインエンベロープよりも低い位置になるように、前記操縦索の張力を制御する、ことが好ましい。また、本発明における係留装置は、風速が弱いほど前記気球本体が水平に近いようになり、風速が強いほど前記気球本体の前方が上向きになるように、前記操縦索の張力を制御する、ことも好ましい。
【0018】
風が弱いときに水平な形状とすることで、安定的な浮遊が可能になり、かつ横風に対する影響を抑制できる。また、強風のときに、機首を上げたり、サイドエンベロープを狭め
て風を抱えるようにしたりすることで、気球本体に対する浮力が増す。この浮力と風の抵抗により気球本体は前進方向に押し出され、さらに係留索を緊張する(または操縦索全体を均等に緊張する)ことでバランスが保たれることから、気球本体の移動を抑制できる。
【0019】
また、本発明において、メインエンベロープが1対の尾翼を有しており、尾翼が操縦索によって前記係留装置と接続されており、張力制御装置が、前記操縦索の張力を制御することによって前記尾翼も操作する、ことも好ましい。尾翼の操作することで、気球本体に係る力をさらに制御することができる。
【0020】
なお、係留装置による操縦索の張力制御によって、気球本体の移動を抑制するだけでなく、気球本体の位置を移動させることができる。さらに、係留装置の直上以外の任意の位置で気球本体の移動を抑制させることができる。
【0021】
本発明において、前記メインエンベロープ、前記第1および第2のサイドエンベロープはいずれも円筒形状とすることができる。さらに、前記第1および第2のサイドエンベロープは、前記メインエンベロープよりも長手方向の長さが短く、前記第1および第2のサイドエンベロープの重心位置は、前記メインエンベロープの重心位置よりも前方に位置する、ようにすることが好ましい。このようにすると、気球本体の前方の浮力が後方の浮力より大きくなり、機首を持ち上げた姿勢を取りやすく、前方からの風に対して空力コントロール性能が向上する。
【0022】
また、本発明において、前記第1および第2のサイドエンベロープは、内部の気体を維持した状態で、前記メインエンベロープから着脱可能である、ことが好ましい。エンベロープ内に導入する軽量気体の投入に時間がかかることや、軽量気体が高価であることから、軽量気体をエンベロープから抜かずに輸送できることが好ましい。気球本体の全体として大きくても、分解して小さくすることで輸送が容易になる。また、輸送後にサイドエンベロープをメインエンベロープに取り付けるだけで、運用開始できる。
【0023】
また、本発明において、係留装置が車両に搭載されており、当該車両は、前記第1および第2のサイドエンベロープの内部の気体を維持した状態で前記気球本体を固定可能な支持部を備えることが好ましい。この支持部には、サイドエンベロープを取り付けられた状態の気球本体も、サイドエンベロープが取り外されたメインエンベロープも、あるいはメインエンベロープから取り外されたサイドエンベロープも固定可能であることが好ましい。車両の支持部に気球あるいはエンベロープを固定することにより、クレーンで機体を持ち上げる必要がなくなり、少人数(数人程度)で気球内のヘリウムガスの補充やメンテナンス、サイドエンベロープの分解結合が容易に行える。
【0024】
また、本発明における係留気球システムは、前記係留装置と、前記気球本体に設けられたセンサから得られるセンサデータを取得し無線通信によりデータ送信装置と、を搭載した車両をさらに有する、ことが好ましい。このようにすれば、気球本体を車両で輸送し、任意の場所での運用が可能となる。気球本体に設けられるセンサは任意のセンサであってよく、例えば、可視光カメラ、サーマルカメラ、温度センサ、気圧センサ、風速センサなどを例示することができる。データ送信装置からセンサデータを無線送信することで、遠隔にある装置で、センサデータの確認が行える。また、遠隔地からの指示により、カメラの撮影方向を変更するなどの、センサの制御を行うことも好ましい。
【0025】
また、本発明は、上記手段の少なくとも一部を含む係留気球システムとして捉えることができる。上記構成および処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、気球本体の係留位置を制御可能であり、例えば、気球本体の係留位置を任意の位置から移動するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、係留気球システムを用いた地上監視システムの概要構成を示す図である。
図2図2(A)〜図2(D)は、気球本体の外観形状を説明する図である。
図3図3(A)〜図3(C)は、気球本体に接続される操縦索を説明する図である。
図4図4(A)、図4(B)は、気球本体に接続される操縦索を説明する図である。
図5図5は、張力制御装置による係留索および操縦索の制御を説明する図である。
図6図6(A)、図6(B)は弱風時において気球本体を定点に固定する制御を説明する図である。
図7図7(A)、図7(B)は強風時において気球本体を定点に固定する制御を説明する図である。
図8図8(A)〜図8(D)は気球本体を旋回させる制御を説明する図である。
図9図9(A)、9(B)は気球本体を後退または前進させる制御を説明する図である。
図10図10(A)〜図10(D)は、車両に搭載される支持部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0029】
<システム概要>
本発明の第1の実施形態は、係留気球システムを用いた地上監視システムである。図1
は、本実施形態に係る地上監視システムの概要構成を示す。地上監視システムは、気球本体100、係留巻取装置201および張力制御装置202を含む車両200、本部300から構成される。気球本体100を例えば都市部の交差点上空に配置し、気球本体100がカメラ120を用いて地上を撮影する。気球本体100によって撮影された画像は、車両200の伝送装置240から本部300の伝送装置310に送信され、本部300において気球設置位置付近の監視が行える。
【0030】
ここで、都市部の上空に気球本体100を配置する場合、風などの影響により気球本体100が大きく移動すると、気球本体100が周囲の建物にぶつかったりして危険である。そこで、本実施形態においては、気球本体100の形状を係留巻取装置201からの張力制御によって可変とし、気球本体100にかかる力を調整することで、気球本体100が流されないように制御する。
【0031】
<気球本体100>
図2(A)〜図2(D)は、気球本体100の構造を示す図である。図2(A)は気球本体100の正面図、図2(B)は気球本体100の上面図、図2(C)は気球本体100の背面図、図2(D)は気球本体100の側面図である。これらの図では、気球本体100のエンベロープ(球皮)の形状を説明することを目的とするため、気球本体100に
接続される操縦索や操縦索固定用のフック、あるいは気球本体100が備えるセンサなどは省略している。
【0032】
図に示すように、気球本体100は、メインエンベロープ110の両脇にサイドエンベロープ120a,120bを備える。それぞれのエンベロープは略円筒形状をしており、気球本体100は円筒が3つ並んだ3連構造を有する。各エンベロープには、ヘリウムガスなどの軽量気体が充填される。
【0033】
メインエンベロープ110の後方下側には、1対の尾翼112a,112bが設けられている。尾翼112(以下、尾翼112aおよび112bを総称して、尾翼112と称する)は、気球本体100の姿勢安定のために、車両200(張力制御装置202)からの張力制御によって、開いたり閉じたりする制御が可能である。
【0034】
サイドエンベロープ120(以下、サイドエンベロープ120aおよび120bを総称して、サイドエンベロープ120と称する)は、メインエンベロープ110よりも長手方向の長さが短く、かつその重心位置がメインエンベロープ110の重心位置よりも前側に配置される。したがって、気球本体100は機首前側の方がヘリウムガスの容積が多く浮力が大きいので、機首前方が上向く姿勢(ピッチアップ姿勢)をとる。ピッチアップ姿勢を取ることで、前方からの風に対する空力コントロール性能が向上する。
【0035】
気球本体100は、正面以外から風を受ける場合に回転モーメントが発生する風見安定の構造を有するので、風を受けた場合に自動的に風上を向く。
【0036】
サイドエンベロープ120a,120bはそれぞれ、接続布(不図示)を介してメインエンベロープ110と接続される。サイドエンベロープ120は、接続布よって規制される範囲内で、メインエンベロープ110に対して移動可能である。典型的には、サイドエンベロープ120はメインエンベロープ110に対して開いたり閉じたりするように相対的に位置を変え、メインエンベロープ110とサイドエンベロープ120がほぼ水平な形状および、サイドエンベロープ120がメインエンベロープ110よりも下方に位置し風を抱え込むような形状をとることができる。
【0037】
メインエンベロープ110とサイドエンベロープ120は、内部にヘリウムガスを充填した状態のままで、互いに脱着可能に構成される。メインエンベロープ110とサイドエンベロープ120の締結構造は特に限定されないが、飛行運用時に耐えられるだけの十分な強度が必要である。3つのエンベロープを分割可能とすることで地上での輸送が容易となる。
【0038】
気球本体100は、地上を撮影するためのPTZカメラ151およびサーマルカメラ153を備える。PTZカメラ151は、本部300からの指令によってパン・チルト・ズーム制御(PTZ制御)が可能な可視光像を取得するカメラである。サーマルカメラ153は、赤外線画像を取得するカメラである。PTZカメラ151およびサーマルカメラ153は、それぞれ3軸シンバル152および154によってカメラの姿勢が維持される。PTZカメラ151およびサーマルカメラ153によって撮影された画像は、車両200に送られ、車両200から本部300に送られる。
【0039】
気球本体100は、さらに、GPS装置155、風向風速センサ156、気圧センサ157などのセンサを有する。GPS装置155から得られる位置情報、風向風速センサ156から得られる風向風速情報、気圧センサ157から得られる気圧情報は、車両200に送られ、係留巻取装置201の張力制御に利用される。
【0040】
図3(A)〜図3(C)、および図4(A),4(B)を参照して、気球本体に接続される操縦索について説明する。図3(A)は気球本体100の下面図、図3(B)は気球本体100の正面図、図3(C)は気球本体100の背面図、図4(A)および図4(B)は気球本体100の側面図であり、いずれも操縦索と操縦索固定用のフックを省略せずに記載している。
【0041】
メインエンベロープ110には、下面の左右にそれぞれ4個の操縦索固定用のフック118a,118b、および前方および後方に1個ずつのフック118c、118dが取り付けられている。それぞれのフック118a〜118dには、操縦索141a〜141dが接続される。操縦索141a〜141dのもう一方の端部は、サーボモータ130に接続される。サーボモータ130は、車両200の張力制御装置202からの張力制御指示を受け取って、操縦索141a〜141dに印加する張力を調整できる構成となっている。
【0042】
サイドエンベロープ120a、120bの下面外側にはそれぞれ4個の操縦索固定用のフック128a,128bが取り付けられている。それぞれのフック128a,128bには、操縦索142a,142bが接続される。操縦索142a,142bも操縦索141a〜141dと同様に、もう一方の端部がサーボモータ130に接続され、張力が調整可能である。
【0043】
本実施形態に係る係留気球システムでは、地上から操縦索の張力を制御し、メインエンベロープ110の操縦索141とサイドエンベロープ120の操縦索142の張力を変えることで、サイドエンベロープ120を開いたり閉じたりすることができる。また、気球本体100の前方の操縦索141cと後方の操縦索141dの張力を変えることで、気球本体100の機首を上げたり下げたりする制御が可能である。また、操縦索116の張力制御により、尾翼112を開いたり閉じたりもできる。
【0044】
サーボモータ130は、各操縦索の張力を個別に調整可能であってもよいし、複数の操縦索の張力をまとめて調整可能であってもよい。例えば、サイドエンベロープ120aの4つの操縦索142aの張力をまとめて調整可能なように構成できる。同様に、サイドエンベロープ120aの4つの操縦索142aをまとめて張力制御の対象とし、メインエンベロープの8つの操縦索141a,141bをまとめて張力制御の対象とすることができる。サーボモータ130は、必要な数だけ設けられる。
【0045】
サーボモータ130の付近で操縦索141a〜141d、142a,142bはフックでまとめられ、係留索143に接続される。係留索143のもう一方の端部は、車両200の係留巻取装置201に接続される。係留巻取装置201は係留索143を繰り出したり巻き取ったりすることで、気球本体100の全体の高度(係留巻取装置201からの距離)を調整可能である。なお、係留索143に沿って、車両200と気球本体100の間で電気信号を通信するためのケーブル(LANケーブルなど)も存在する。通信用ケーブルと係留索143はまとめて被覆することで絡まりなどを避けることができる。
【0046】
また、メインエンベロープ110の後方には、サーボモータ131a,131bが取り付けられており、サーボモータ131a,131bと尾翼112a,112bが操縦索116a,116bにより接続される。
【0047】
<車両200>
車両200は、係留巻取装置201、張力制御装置202、記憶装置203、伝送装置204を備える。係留巻取装置201は、気球本体100に接続される係留索143を巻き取ったり繰り出したりする制御を行う。係留巻取装置201は、サーボ機構を有し、張
力制御装置202から指示される目標張力が係留索143に印加されるようにモータを制御する。
【0048】
張力制御装置202は、操縦索141,142の張力と、係留索143の張力と、気球本体100の位置や風向、風速や気圧などとに基づいて、操縦索141,142の張力と係留索143の張力を調整する。本実施形態では、目標張力の決定は張力制御装置202が行うが、係留巻取装置201内に張力制御装置を組み込んでも構わない。
【0049】
図5に示すように、係留索143の張力制御の指令は、張力制御装置202から係留巻取装置201に送られる。一方、操縦索141,142の張力制御の指令は、張力制御装置202から通信用ケーブル(係留索143とまとめられている)を介して、サーボモータ130に送られる。
【0050】
張力制御によって、気球本体100の形状を変えたりして気球本体100に加わる力を調整することで、気球本体100を定点に留まるようにしたり、あるいは所望の位置に移動させたりする。
【0051】
張力制御装置202は、各操縦索や係留索の現在の張力を張力センサから取得する。操縦索の張力は、サーボモータ130に設けられたセンサによって取得され、通信用ケーブルを介して張力制御装置202に送られる。また、係留索の張力は係留巻取装置201に設けられたセンサによって取得され、張力制御装置202に送られる。また、張力制御装置202は、気球本体100の相対位置を、気球本体100に設けられたGPS装置155から得られる位置情報と車両200に設けられたGPS装置(不図示)から得られる位置情報の差分により取得する。また、張力制御装置202は、気球本体100が受ける風の影響や上空における気圧を気球本体100に設けられた風向風速センサ156や気圧センサから取得する。
【0052】
なお、操縦索や係留索の張力制御は、予測される気球内のヘリウムガスの量や浮力の変化を考慮して行うことが好ましい。したがって、張力制御装置202は、気球内のヘリウムガスの量や浮力の変化の予測も行う。
【0053】
係留巻取装置201および張力制御装置202が、どのような状況においてどのように張力制御を行うかの詳細は、後ほど詳しく説明する。
【0054】
係留巻取装置201は、係留索を均一に保つためのアームを備えており、係留索のたわみを抑制し巻取ドラムにきれいに巻き取ることを可能にしている。係留巻取装置201は、係留索をきれいに巻き取りおよび繰り出すためのケーブル均等装置を備えており、頻繁に係留索を出し入れしても絡まることがないように世決定されている。
【0055】
係留巻取装置201は、車両200の荷台に設けられた回転台座(不図示)上に設置され、気球本体100の旋回に合わせて回転する。これにより、気球本体100が旋回しても係留索が絡まることを防止できる。
【0056】
制御装置202は、車両200内の各機能部の全体的な制御を行う。具体的には、係留巻取装置201の張力制御、気球内のヘリウムガスや不良の変化の推定、気球内のカメラの制御、気球から送られる画像データの取得および送信などを行う。
【0057】
記憶装置203には、気球内のPZTカメラ151やサーマルカメラ153が撮影した画像データが格納される。伝送装置204は、記憶装置203に格納された画像データを本部の伝送装置301へ送信するための送信機である。通信方式として、無線LANや携
帯電話通信、衛星通信など任意の方式を利用可能である。なお、車両200と本部300との間の通信は、無線通信であっても有線通信であっても、これらの組み合わせであっても構わない。
【0058】
車両200の荷台には、気球本体100を固定可能な支持部210が備えられる。図10(A)および図10(A)に支持部210の構成を示す。支持部210は、本実施形態では、車両200の荷台に設けられた4本の支持部材211〜214から構成される。支持部材211〜214は、車両200の前後方向に平行であり、中央の2本の支持部材211および212は、外側の2本の支持部材213および214よりも高さが低い。支持部材211〜214は、ヘリウムガスが充填された状態のメインエンベロープ110下面の形状とほぼ一致するように構成される。また、支持部材211〜214全体の高さは、サイドエンベロープ120が取り付けられた状態の気球本体を固定したときに、サイドエンベロープが地上に届かず、かつ、地上からの作業に適した位置に気球本体が位置するような高さとする。
【0059】
図10(C)は、サイドエンベロープ120が取り付けられた状態の気球本体を支持部210に固定したときの様子を示す図である。図10(D)は、サイドエンベロープ120が取り付けられた状態の気球本体(メインエンベロープ110)を支持部210に固定したときの様子を示す図である。
【0060】
サイドエンベロープ120が取り付けられた状態の気球本体を支持部210に固定できるので、この状態でヘリウムガスの充填、エンベロープの分解および取り付け、その他のメンテナンス作業を行うことができる。従来の気球システムでは、クレーンで気球を持ち上げたりして作業を行っているので、手間や人手が大量に必要であったが、本実施形態によれば数人程度の少人数で各種の作業が可能となる。
【0061】
また、サイドエンベロープ120は、メインエンベロープ110から取り外し可能であるため、車両200を3台用意すれば、エンベロープ内のヘリウムガスを抜くことなく、車両での気球の輸送が可能となる。分解が必要となるのは、車両での輸送の際には、気球が車両幅よりも大きくならないようにする必要があるためである。本実施形態に係る気球は、エンベロープごとに分解可能なのでヘリウムガスを充填したままの輸送が可能である。
【0062】
<本部300>
本部300は、伝送装置301を備え、気球本体100から送信される画像データを取得する。本部300は、受信した画像データを表示するための表示装置や、気球本体100あるいはそのカメラに対する指令を送信するための入力装置も備える。
【0063】
<張力制御>
次に、操縦索および係留索の張力制御と、気球本体100の形状の変化や気球本体100に加わる力の変化などとの関係について説明する。なお、図6図9は張力制御を説明するための図であり、気球本体や操縦索などの構成を正確に示すものではない点に留意されたい。
【0064】
図6(A)、図6(B)は、弱風時に気球本体100を定点に固定する制御を説明する図である。なお、「定点に固定」というのは、気球本体100が完全に静止することを意味するわけではなく、気球本体100が許容範囲より外に移動しないようにすることを意味する。本実施形態においては、気球本体100は上下方向にはどれだけ移動してもよいものとし、水平方向には係留巻取装置201から5度の範囲での移動を許容する。ただし、上下方向に対しても移動を制限するようにしてもよいし、5度よりも大きい範囲、例え
ば10度以内や15度以内の移動を許容するようにしてもよい。
【0065】
弱風時には、図6(A)に示すように、メインエンベロープ110とサイドエンベロープ120がほぼ水平な形状(以下、サイドエンベロープ120が開いた形状ともいう)を取るように、張力制御装置202は操縦索の張力制御を行う。具体的には、操縦索118aと118bの張力を緩めることでサイドエンベロープ120が開くように制御し、操縦索118cと118dにほぼ同一の張力を印加することで気球本体100が水平になるように制御する。張力制御装置202は、または、操縦索116を緩めて、尾翼112が下方向を向くように制御する。
【0066】
エンベロープの三連構造を水平にすることで、機首から尾翼に風が抜けて安定的な浮遊が可能になる。また、横風を受ける面積が減ることから、横風の影響を少なくできる。また、尾翼を下方向にすることで、気球本体100をより水平に保てる。
【0067】
係留巻取装置201は、風力に応じた緊張力で係留索143を引っ張ることで、気球本体100に係る浮力と緊張力を合成した力(推進力として示されている)が、風が気球本体100を後方に押す力と釣り合うようにする。これにより、気球本体100は、定点に留まる。
【0068】
図7(A)、図7(B)は、強風時に気球本体100を定点に固定する制御を説明する図である。強風時には、図7(A)に示すように、サイドエンベロープ120がメインエンベロープ110よりも下側に位置する形状(以下、サイドエンベロープ120が閉じた形状ともいう)を取るように、張力制御装置202は操縦索の張力制御を行う。具体的には、操縦索142a,142bの張力が操縦索141a〜141dの張力よりも大きくなるように制御する。張力制御装置202はまた、操縦索141cの張力を操縦索141dの張力よりも大きくして気球本体100の前方が上向きになるように制御する。張力制御装置202はまた、操縦索116の張力を大きくして尾翼112が弱風時よりも上方向を向くように制御する。
【0069】
サイドエンベロープ120を閉じることで、風を抱え込むようにできる。正面からの風はメインエンベロープ110付近に集められ後方に抜ける。これにより気球本体100の浮力を増すことができる。また、気球本体100は前方が軽量であることと操縦索141c、141dの張力制御により上向きの姿勢をとり、さらに尾翼112を上向きとしていることから気球本体100は上向きの姿勢でより安定する。なお、操縦索141c、141dの張力制御に頼らずに風の力のみによって気球本体が上向きを取るようにしてもよい。気球本体100を上向きの姿勢とすることで、気球本体100にかかる浮力が大きくなり、気球本体100の高度を変えずにより強い緊張力で係留索全体を引っ張ることができる。したがって、浮力と緊張力を合成した力(推進力として示されている)を大きくすることができ、強風によって気球本体100が後方に押される大きな力と釣り合いを取ることができる。これにより、気球本体は、強風時にも定点に留まる。
【0070】
次に、気球本体100の係留点(定点)を移動させる際の制御について説明する。図8
8(A)、図8(B)は、気球本体100を風向きとは異なる方向に向かせるための制御を説明する図である。上述したように、気球本体100は風見安定により、通常は機首が風上の方向を向く。
【0071】
機首を左旋回させる場合には、左側の尾翼112aを下向きにし、右側の尾翼112bを上向きにすればよい。具体的には、操縦索116aを緩め、操縦索116bを巻き取るように制御する。こうすることで、正面から風を受けた場合に気球本体100が左方向の回転モーメントを受けるようにできる。これにより、気球本体100は左旋回し、斜め(
右前方向)からの風と釣り合う向きに機首を向かせることができる。機首を右旋回させる場合には、同様に、右側の尾翼112bを下向きにし、左側の尾翼112aを上向きにすればよい。
【0072】
気球本体100の機首を所望の方向に向けた状態で、気球本体100を前または後ろに移動させることで、気球本体100を所望の位置に移動させることができる。図9(A)は気球本体100を後退させる場合の制御、図9(B)は気球本体100を前進させる場合の制御を示す。基本的には、係留索全体の緊張力を弱めることで、推進力が減り、気球本体100が後退する。逆に、係留索全体の緊張力を強めることで、推進力が増加し、気球本体100が前進する。この際、気球本体100の上下方向の移動を抑制できるように、気球全体の傾斜を制御して浮力を調整するとよい。
【0073】
定点を所望の位置に移動させた後は、張力制御装置202は、気球本体100が当該定点から移動しないように張力制御を行えば、気球本体100を新たな定点に固定することができる。すなわち、本実施形態においては、気球本体100を所望の定点に固定させることができる。
【0074】
以上の制御は、各操縦索および係留索の張力、係留巻取装置201と気球本体100の相対位置、気球本体100が受ける風の向きと力、気圧などに基づいて張力制御装置202が行うことができる。具体的には、気球本体100に加わる力が所定の向きと量になるように、予め定められた制御を行えばよい。制御モデルは、例えば、シミュレーションや実機を用いた機械学習によって生成することもできる。
【0075】
気球本体100の制御には、浮力の把握も重要である。気球本体100のヘリウムガスの量や浮力の変化は、ヘリウムガスを充填してからの経過時間と気候の影響を受けて変化する。制御装置202は、ヘリウムガスや浮力の変化を、経過時間(滞空時間)と気候状況(気圧や気温)と気球素材の透過率とを入力パラメータとするシミュレーションによって推定する。制御装置202は、推定された気球本体100の浮力も考慮して、張力制御を行うことが好ましい。
【0076】
係留巻取装置201は、また、特に突風時や緊急時には特別な制御を行うことも好ましい。例えば、突風時には、許容される範囲内で気球本体100を泳がせ、風が弱くなった時点で係留索を巻き取ったり、気球本体100を移動させたりして、気球本体100を定点(係留位置)に戻す制御を行ってもよい。また、緊急時(非常時)には、係留巻取装置201は、係留索の強制巻取をおこない緊急帰着させることが好ましい。
【0077】
<実施形態の有利な効果>
本実施形態によれば、地上の車両200(張力制御装置202)からの操縦索の張力制御によって、気球本体100の形状を可変としている。これにより、気球本体100が風から受ける力を制御することができ、係留索の緊張力の制御と合わせて、気球本体100を上空の係留位置(定点)に留めることが可能となる。気球本体の浮遊範囲を限定することで、建物などの障害物が多い都市部などの環境においても、気球を運用することができるようになる。
【0078】
また、サイドエンベロープ120をメインエンベロープ110よりも前方に配置することで、前方の浮力を大きくし、ピッチアップ姿勢を取るようにしている。これにより、前方からの風に対して空力コントロール性能が向上する。
【0079】
また、サイドエンベロープ120をメインエンベロープ110から脱着可能としているので、高価なヘリウムガスを抜くことなく気球本体を分解して、個別に輸送することがで
きる。また、輸送後はヘリウムガスの再充填を行う必要なく、サイドエンベロープ120をメインエンベロープ110に取り付けるだけで運用を開始できる。
【0080】
<変形例>
上記の実施形態は、本発明の実施するための例示的な一実施例であり、本発明を上記の実施形態に限定するものではない。
【0081】
操縦索の張力調整は、上記以外の構成によっても達成できる。上記の例では、操縦索と係留索がフックを介して接続されているが、操縦索と係留索は気球本体を介して接続されていてもよい。すなわち、係留索の一端が気球本体に接続され、操縦索は両端が例えばメインエンベロープとサイドエンベロープと接続されてもよい。このような構成によって、操縦索の張力制御によって、サイドエンベロープを閉じたり開いたりできる。
【0082】
また、操縦索の張力を調整するモータは、気球本体100付近に設けなくてもよい。例えば、個々の操縦索を車両200まで延ばして、車両200に設けられたモータによって操縦索の張力を調整してもよい。この場合、まとめて張力制御の対象とする操縦索については、複数を1つにまとめても構わない。なお、操縦索を車両200(係留巻取装置201)に接続する構成では、操縦索が係留索を兼ねるようにもできる。すなわち、操縦索全体を繰り出したり巻き取ったりすることで、気球本体の高度を調整可能である。
【0083】
また、操縦索の張力制御は必ずしも機械によって行われる必要はなく、人手によって張力の制御が行われてもよい。上記のように操縦索を車両200まで垂らす構成では、操縦者が操縦索を直接操作して、気球本体の姿勢や位置などを制御することができる。
【0084】
例えば、係留気球システムの用途は、都市部における地上の監視に限定される分けではない。例えば、農地における農作物の監視にも適用できる。あるいは、広告目的や、無線通信の中継局(基地局)としても利用可能である。係留気球システムの用途は特に限定されない。
【0085】
また、気球本体として、円筒形状のエンベロープが3個連なった形状を例に説明したが、係留索を用いて気球の形状を変えられる構造であれば、上記の構造に限る必要はない。特に、気球本体が、水平な形状と、風を抱きかかえられるような上側に膨らんだ形状をとることができれば、本発明の目的を達成することができる。気球本体は、例えば、円筒形のエンベロープが4個以上連なった形状としてもよいし、円筒形以外のエンベロープが複数個連なった形状としてもよい。
【符号の説明】
【0086】
100:気球本体
110:メインエンベロー
112a,112b:尾翼
120a,120b:サイドエンベロープ
201:係留巻取装置
202:張力制御装置
【要約】
【課題】気球の係留位置を制御可能な係留気球システムを提供する。
【解決手段】気球本体と係留装置が係留索を介して接続された係留気球システムであって、前記気球本体は、メインエンベロープと、前記メインエンベロープに取り付けられた第1のサイドエンベロープおよび第2のサイドエンベロープを有し、前記係留装置は、前記係留索の張力を制御する張力制御装置を有し、前記操縦索の張力を制御することによって、前記メインエンベロープと前記第1のサイドエンベローブと前記第2のサイドエンベロープの相対的な位置を変更可能であることを特徴とする。前記係留装置は、風速が弱いほど前記気球本体が水平に近いようになり、風速が強いほど前記気球本体の前方が上向きになるように、前記係留索の張力を制御することが好ましい。前記メインエンベロープ、前記第1および第2のサイドエンベロープはいずれも円筒形状とすることができる。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10