(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記気液ループ流式撹拌混合室の内壁に、前記気液ループ流式撹拌混合室内の混合流体をさらに撹拌混合する凹形状の重撹拌混合部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のループ流式バブル発生ノズル。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のバブル発生ノズルにおいて、カルシウム又は微生物(貝類のプランクトンなどを含む。以下、同様。)などの不純物を比較的多く含む液体(汚泥、海水など)を用いてバブルの発生を行うと、ノズルの気液ループ流式撹拌混合室と気体供給室との間において、キャビテーション(液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅とが起きる物理現象)によるスプラッシュ現象(液体が飛沫する現象)により、カルシウム又は微生物の死骸などの不純物からなるスラッジ(固形物)又は/及びスケール(いわゆる水垢)が析出・付着する場合があった。この場合には、気体供給室から気液ループ流式撹拌混合室への気体供給が阻害され、気体供給量が減少してしまうことがあり、バブル発生効率を徐々に低下させることがあった。また、特許文献1に代表されるバブル発生ノズルにおいては、バブル発生効率のさらなる向上も求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率を低下させることなく、また、バブル発生効率を従来よりも向上することが可能なループ流式バブル発生ノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明のループ流式バブル発生ノズルは、液体及び気体をループ状の流れによって撹拌混合して混合流体とする気液ループ流式撹拌混合室と、前記気液ループ流式撹拌混合室の一端に設けられ、加圧された液体を前記気液ループ流式撹拌混合室に供給する液体供給孔と、気体が流入する1つ以上の気体流入孔と、前記気液ループ流式撹拌混合室の他端側に設けられ、前記気体流入孔から流入した気体を前記液体供給孔の中心軸を中心に周回させながら、周の全部または一部の箇所から前記気液ループ流式撹拌混合室の一端側に向かって前記気液ループ流式撹拌混合室に供給する隙間を有した気体供給室と、前記液体供給孔の中心軸と一致するように前記気液ループ流式撹拌混合室の他端に設けられ、前記液体供給孔の孔径よりも大きな孔径を有し、前記混合流体を前記気液ループ流式撹拌混合室から噴出させる噴出孔と、
前記気体供給室の前記隙間において、前記気体供給室と前記気液ループ流式撹拌混合室との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象によって前記液体が前記隙間内に飛沫しスケール又は/及びスラッジが析出する箇所に設けられ、前記気体供給室の前記隙間の周の全部または一部の箇所に形成された凹形状の気体溜まり部と、前記噴出孔から前記気液ループ流式撹拌混合室の方向に向かって連続的に拡径するように、前記気体供給室の前記隙間
の位置に対して前記隙間の径方向内側に設けられたテーパ部と、を有しており、前記テーパ部の前記気液ループ流式撹拌混合室側の縁部に
おいて、前記縁部を初端として、前記気体溜まり部における前記気液ループ流式撹拌混合室側の端部に対向する位置まで少なくとも1つの切欠き部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記(1)の構成によれば、液体供給孔を介して液体が気液ループ流式撹拌混合室に供給されるとともに、気体供給室を介して気体が気液ループ流式撹拌混合室に供給される。これにより、気液ループ流式撹拌混合室内の混合流体が噴出孔から噴出されると、気液ループ流式撹拌混合室内において、気体を含んだ液体のループ状の流れ(「ループ流れ」又は「ループ流」と表現することがある)が発生される。
【0008】
ここで、ループ流れとは、液体供給孔から噴出孔へ向う液体の流れに沿って流れた後、噴出孔付近で、噴出孔からの外部気体又は/及び外部液体の流入により反転して気液ループ流式撹拌混合室の内壁に沿って流れ、再び、液体供給孔から供給された液体の流れに沿って流れるという一連の流れのことをいう。なお、発生するループ流れの速度は、液体及び気体の供給量及び圧力によって、低速から高速まで、ある程度コントロールすることが可能である。したがって、液体及び気体の供給量および圧力を調整し、さらにループ流れの速度を増加させることで、高速ループ流れを形成することも可能である。
【0009】
気液ループ流式撹拌混合室内の混合流体が噴出孔から噴出されると、気液ループ流式撹拌混合室内が負圧となるので、気体流入孔から気体供給室を介して気体が流入してくるとともに、噴出孔の孔径が液体供給孔の孔径よりも大きく形成されていることから、噴出孔において、噴出孔の内壁と混合流体の周囲との間から、外部気体又は/及び外部液体が気液ループ流式撹拌混合室に流入してくる(外部環境によって、外部気体又は/及び外部液体が流入してくる。)。
【0010】
ここで、(a)気体供給室から気液ループ流式撹拌混合室に供給された気体は、気体供給室と気液ループ流式撹拌混合室との境界で発生した乱流により細分化され、(b)ループ流れにおいて撹拌、剪断されながら、(c)一部が液体供給孔から供給された液体と衝突した際の乱流の発生によりさらに細分化され、噴出孔から噴出される。(d)なお、噴出孔から気液ループ流式撹拌混合室内に流入してくる外部気体又は外部液体によって、ループ流れ中の気体は、さらに細分化されることになる。これらの(a)〜(d)の工程で微細化される気泡発生のメカニズムが、ループ流式バブル発生ノズルの特徴であり、他のノズルにない優れた点である。
【0011】
更に、(e)気体流入孔から流入してきた気体は、気体供給室において液体供給孔の中心軸を中心に周回されながら、周の全部または一部の箇所から気液ループ流式撹拌混合室の一端側に向かって気液ループ流式撹拌混合室内に供給される。この(e)の工程によって、気液ループ流式撹拌混合室内の真空度が向上されるため、気体流入孔から流入してくる気体の量を更に増加させることができて、気泡の発生が促進される。
【0012】
したがって、従来品よりも簡易な構成でありながら、平均直径が100μm未満のバブル、特に、平均直径が20μm前後のマイクロバブル及びナノバブルを含むファインバブルを発生させることができる。また、従来品よりも簡易な構成であるので、従来品よりも小型化することができる。
【0013】
また、上記(1)の構成によれば、流入孔(テーパ部の気液ループ流式撹拌混合室側の縁部)の切欠き部によって、高速ループ流れにより発生する乱流によって気体を撹拌、剪断し、更に細分化することができる。また、(a)気体供給室と気液ループ流式撹拌混合室との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象により、気液ループ流式撹拌混合室から気体供給室内に入り込んだ飛沫液体、又は/及び、(b)気液境界部近傍のファインバブル、が気液境界部近傍で乾燥、濃縮、又は凝集し、気体供給室の壁部にカルシウムなどのスケール又は/及びスラッジが析出し固着しても、流入孔の切欠き部の部分は空間のまま存在することから、例えば、連続したリング状のスケール又は/及びスラッジとなることはない。また、流入孔の切欠き部は、十分な空間を有しているので、切欠き部の回りの気体供給室内に入り込んだ飛沫液体がスケール又は/及びスラッジとなっても、少なくとも切欠き部の側部に析出し固着したスケール又は/及びスラッジを、今度はキャビテーションの自己崩壊時に発生する衝撃波及びファインバブルの他のものへの衝突時崩壊によって発生する衝撃波によって破壊することができる。したがって、気体供給室がつまらない(切欠き部の空間部分及び切欠き部の少なくとも側部にカルシウムなどが析出し固着することはない)ので、気体供給室からの気体供給が阻害されることを防止することができる。その結果として、上記(1)のループ流式バブル発生ノズルにおいては、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率が低下しない。これにより、気体流入孔から流入した気体は、気液ループ流式撹拌混合室に安定して供給されるので、気液ループ流式撹拌混合室内の高速ループ流れを安定させることができる。
また、気体溜まり部によって、気体流入孔から流入してくる気体の量を更に増加させることができ、気泡の発生が促進される。また、(a)気体供給室と気液ループ流式撹拌混合室との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象により、気体供給室内に入り込んだ飛沫液体、又は/及び、(b)気液境界部近傍のファインバブル、が気液境界部近傍で乾燥、濃縮、又は凝集し、気体供給室の壁部(例えば、気体供給室において気液ループ流式撹拌混合室から数mm程度の位置)にカルシウムなどのスケール又は/及びスラッジが析出しリング状に固着しても、気体溜まり部により十分な空間が確保されているので、気体供給室が閉塞されてしまうことがない。その結果として、上記(1)のループ流式バブル発生ノズルにおいては、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率が低下しない。これにより、気体流入孔から流入した気体は、気液ループ流式撹拌混合室に安定して供給されるので、気液ループ流式撹拌混合室内の高速ループ流れを安定させることができる。
【0014】
(2) 上記(1)のループ流式バブル発生ノズルにおいては、前記切欠き部から前記気体供給室に向かって、
断面が凹状の切欠きが延設されていることが好ましい。
【0015】
上記(2)の構成によれば、さらに、切欠きの空間部分にカルシウムなどが析出し固着することはないので、気体供給室からの気体供給が阻害されることを確実に防止することができる。その結果として、本発明に係るループ流式バブル発生ノズルにおいては、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率が確実に低下しない。これにより、気体流入孔から流入した気体は、気液ループ流式撹拌混合室に安定して供給されるので、気液ループ流式撹拌混合室内の高速ループ流れを確実に安定させることができる。
【0016】
(3) 別の観点として、本発明のループ流式バブル発生ノズルは、液体及び気体をループ状の流れによって撹拌混合して混合流体とする気液ループ流式撹拌混合室と、前記気液ループ流式撹拌混合室の一端に設けられ、加圧された液体を前記気液ループ流式撹拌混合室に供給する液体供給孔と、気体が流入する1つ以上の気体流入孔と、前記気液ループ流式撹拌混合室の他端側に設けられ、前記気体流入孔から流入した気体を前記液体供給孔の中心軸を中心に周回させながら、周の全部または一部の箇所から前記気液ループ流式撹拌混合室の一端側に向かって前記気液ループ流式撹拌混合室に供給する隙間を有した気体供給室と、前記液体供給孔の中心軸と一致するように前記気液ループ流式撹拌混合室の他端に設けられ、前記液体供給孔の孔径よりも大きな孔径を有し、前記混合流体を前記気液ループ流式撹拌混合室から噴出させる噴出孔と、前記気体供給室の
前記隙間において、前記気体供給室と前記気液ループ流式撹拌混合室との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象によって前記液体が前記隙間内に飛沫しスケール又は/及びスラッジが析出する箇所に設けられ、前記気体供給室
の前記隙間の周の全部または一部の箇所に形成された凹形状の気体溜まり部と、前記噴出孔から前記気液ループ流式撹拌混合室の方向に向かって連続的に拡径するように、前記気体供給室の前記隙間
の位置に対して前記隙間の径方向内側に設けられたテーパ部と、を有しており、前記テーパ部の前記気液ループ流式撹拌混合室側の縁部に
おいて、前記縁部を初端として、前記気体溜まり部における前記気液ループ流式撹拌混合室側の端部に対向する位置まで少なくとも1つの切欠き部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
上記(3)の構成によれば、上記(1)のループ流式バブル発生ノズルと同様、従来品よりも簡易な構成でありながら、平均直径が100μm未満のバブル、特に、平均直径が20μm前後のマイクロバブル及びナノバブルを含むファインバブルを発生させることができる。また、従来品よりも簡易な構成であるので、従来品よりも小型化することができる。
【0018】
また、気体溜まり部によって、気体流入孔から流入してくる気体の量を更に増加させることができ、気泡の発生が促進される。また、(a)気体供給室と気液ループ流式撹拌混合室との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象により、気体供給室内に入り込んだ飛沫液体、又は/及び、(b)気液境界部近傍のファインバブル、が気液境界部近傍で乾燥、濃縮、又は凝集し、気体供給室の壁部(例えば、気体供給室において気液ループ流式撹拌混合室から数mm程度の位置)にカルシウムなどのスケール又は/及びスラッジが析出しリング状に固着しても、気体溜まり部により十分な空間が確保されているので、気体供給室が閉塞されてしまうことがない。その結果として、上記(3)のループ流式バブル発生ノズルにおいては、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率が低下しない。これにより、気体流入孔から流入した気体は、気液ループ流式撹拌混合室に安定して供給されるので、気液ループ流式撹拌混合室内の高速ループ流れを安定させることができる。
さらに、流入孔(テーパ部の気液ループ流式撹拌混合室側の端部)の切欠き部によって、高速ループ流れにより発生する乱流によって気体を撹拌、剪断し、更に細分化することができる。また、(a)気体供給室と気液ループ流式撹拌混合室との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象により、気液ループ流式撹拌混合室から気体供給室内に入り込んだ飛沫液体、又は/及び、(b)気液境界部近傍のファインバブル、が気液境界部近傍で乾燥、濃縮、又は凝集し、気体供給室の壁部にカルシウムなどのスケール又は/及びスラッジが析出し固着しても、流入孔の切欠き部の部分は空間のまま存在することから、例えば、連続したリング状のスケール又は/及びスラッジとなることはない。また、流入孔の切欠き部は、十分な空間を有しているので、切欠き部の回りの気体供給室内に入り込んだ飛沫液体がスケール又は/及びスラッジとなっても、少なくとも切欠き部の側部に析出し固着したスケール又は/及びスラッジを、今度はキャビテーションの自己崩壊時に発生する衝撃波及びファインバブルの他のものへの衝突時崩壊によって発生する衝撃波によって破壊することができる。したがって、気体供給室がつまらない(切欠き部の空間部分及び切欠き部の少なくとも側部にカルシウムなどが析出し固着することはない)ので、気体供給室からの気体供給が阻害されることを防止することができる。その結果として、上記(3)のループ流式バブル発生ノズルにおいては、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率が低下しない。これにより、気体流入孔から流入した気体は、気液ループ流式撹拌混合室に安定して供給されるので、気液ループ流式撹拌混合室内の高速ループ流れを安定させることができる。
【0019】
(4) 上記(4)のループ流式バブル発生ノズルにおいては、前記気液ループ流式撹拌混合室の内壁に、前記気液ループ流式撹拌混合室内の混合流体をさらに撹拌混合する凹形状の重撹拌混合部を設けたものであってもよい。
【0020】
上記(4)の構成によれば、さらにループ流を形成することができるので、気液ループ流式撹拌混合室内の混合流体をさらに撹拌混合することが可能となる。これにより、さらに効率よくファインバブルを発生させることができる。
【0021】
(5) 他の観点として、本発明のループ流式バブル発生ノズルは、液体及び気体をループ状の流れによって撹拌混合して混合流体とする気液ループ流式撹拌混合室と、前記気液ループ流式撹拌混合室の一端に設けられ、加圧された液体を前記気液ループ流式撹拌混合室に供給する液体供給孔と、気体が流入する1つ以上の気体流入孔と、前記気液ループ流式撹拌混合室の他端側に設けられ、前記気体流入孔から流入した気体を前記液体供給孔の中心軸を中心に周回させながら、周の全部または一部の箇所から前記気液ループ流式撹拌混合室の一端側に向かって前記気液ループ流式撹拌混合室に供給する隙間を有した気体供給室と、前記液体供給孔の中心軸と一致するように前記気液ループ流式撹拌混合室の他端に設けられ、前記液体供給孔の孔径よりも大きな孔径を有し、前記混合流体を前記気液ループ流式撹拌混合室から噴出させる噴出孔と、前記気液ループ流式撹拌混合室の内壁に設けられ、前記気液ループ流式撹拌混合室内の混合流体をさらに撹拌混合する凹形状の撹拌混合部と、
前記気体供給室の前記隙間において、前記気体供給室と前記気液ループ流式撹拌混合室との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象によって前記液体が前記隙間内に飛沫しスケール又は/及びスラッジが析出する箇所に設けられ、前記気体供給室の前記隙間の周の全部または一部の箇所に形成された凹形状の気体溜まり部と、前記噴出孔から前記気液ループ流式撹拌混合室の方向に向かって連続的に拡径するように、前記気体供給室の前記隙間
の位置に対して前記隙間の径方向内側に設けられたテーパ部と、を有しており、前記テーパ部の前記気液ループ流式撹拌混合室側の縁部に
おいて、前記縁部を初端として、前記気体溜まり部における前記気液ループ流式撹拌混合室側の端部に対向する位置まで少なくとも1つの切欠き部が形成されていることを特徴とする。
【0022】
上記(5)の構成によれば、上記(1)のループ流式バブル発生ノズルと同様、従来品よりも簡易な構成でありながら、平均直径が100μm未満のバブル、特に、平均直径が20μm前後のマイクロバブル及びナノバブルを含むファインバブルを効率よく発生させることができる。また、従来品よりも簡易な構成であるので、従来品よりも小型化することができる。さらに、流入孔(テーパ部の気液ループ流式撹拌混合室側の端部)の切欠き部によって、高速ループ流れにより発生する乱流によって気体を撹拌、剪断し、更に細分化することができる。また、(a)気体供給室と気液ループ流式撹拌混合室との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象により、気液ループ流式撹拌混合室から気体供給室内に入り込んだ飛沫液体、又は/及び、(b)気液境界部近傍のファインバブル、が気液境界部近傍で乾燥、濃縮、又は凝集し、気体供給室の壁部にカルシウムなどのスケール又は/及びスラッジが析出し固着しても、流入孔の切欠き部の部分は空間のまま存在することから、例えば、連続したリング状のスケール又は/及びスラッジとなることはない。また、流入孔の切欠き部は、十分な空間を有しているので、切欠き部の回りの気体供給室内に入り込んだ飛沫液体がスケール又は/及びスラッジとなっても、少なくとも切欠き部の側部に析出し固着したスケール又は/及びスラッジを、今度はキャビテーションの自己崩壊時に発生する衝撃波及びファインバブルの他のものへの衝突時崩壊によって発生する衝撃波によって破壊することができる。したがって、気体供給室がつまらない(切欠き部の空間部分及び切欠き部の少なくとも側部にカルシウムなどが析出し固着することはない)ので、気体供給室からの気体供給が阻害されることを防止することができる。その結果として、上記(5)のループ流式バブル発生ノズルにおいては、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率が低下しない。これにより、気体流入孔から流入した気体は、気液ループ流式撹拌混合室に安定して供給されるので、気液ループ流式撹拌混合室内の高速ループ流れを安定させることができる。
また、気体溜まり部によって、気体流入孔から流入してくる気体の量を更に増加させることができ、気泡の発生が促進される。また、(a)気体供給室と気液ループ流式撹拌混合室との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象により、気体供給室内に入り込んだ飛沫液体、又は/及び、(b)気液境界部近傍のファインバブル、が気液境界部近傍で乾燥、濃縮、又は凝集し、気体供給室の壁部(例えば、気体供給室において気液ループ流式撹拌混合室から数mm程度の位置)にカルシウムなどのスケール又は/及びスラッジが析出しリング状に固着しても、気体溜まり部により十分な空間が確保されているので、気体供給室が閉塞されてしまうことがない。その結果として、上記(5)のループ流式バブル発生ノズルにおいては、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率が低下しない。これにより、気体流入孔から流入した気体は、気液ループ流式撹拌混合室に安定して供給されるので、気液ループ流式撹拌混合室内の高速ループ流れを安定させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の
参考形態]
本発明の第1の
参考形態を
図1及び
図2に基づいて以下に説明する。
図1(a)は、第1の
参考形態に係るループ流式バブル発生ノズル10を示す概略断面図、
図1(b)は、
図1(a)I−Iの矢視断面図、
図1(c)は、
図1(a)のII−II矢視断面図、
図1(d)は、
図1(a)のIII−III矢視断面図である。
図2は、ループ流式バブル発生ノズル10の動作説明図である。
【0025】
(ループ流式バブル発生ノズル10の構成)
図1(a)に示すように、ループ流式バブル発生ノズル10は、断面円形の有底管状の第1の部材としての有底部材1と、有底部材1の他端側に嵌め込まれた第2の部材としての筒状部材2とを有している。そして、有底部材1及び筒状部材2で囲まれた略円柱型の空間が、気液ループ流式撹拌混合室6とされている。
【0026】
有底部材1は、その側部に、ループ流式バブル発生ノズル10の外部と内部とが連通されて、気体が流入される気体流入孔3を有している。なお、気体流入孔3は2つ以上あってもよい。また、有底部材1は、その底部中央に、外部から加圧された液体(圧力が少しでも加えられている状態の液体。以下では、「加圧液体」とすることがある。)が供給される第1液体供給孔5aと第2液体供給孔5bとを有している。外部から供給された加圧液体は、第1液体供給孔5a、第2液体供給孔5bを順に通って気液ループ流式撹拌混合室6に供給される。第1液体供給孔5a及び第2液体供給孔5bの各中心軸は、気体流入孔3の中心軸と交差されている。
【0027】
第2液体供給孔5bは、第1液体供給孔5aから気液ループ流式撹拌混合室6の方向に向かって連続的に拡径されたテーパ状に形成されている。この第2液体供給孔5bは、気液ループ流式撹拌混合室6内において、高速ループ流れを加圧液体の流れとは逆の方向から加圧液体の流れに合流させて、乱流を激しく起こさせる役割を果たしている。
【0028】
筒状部材2は、その中央に、液体及び気体を流入可能な流入孔7と、液体及び気体を噴出可能な第1噴出孔8aと第2噴出孔8bとを有している。流入孔7、第1噴出孔8a及び第2噴出孔8bの各中心軸は、第1液体供給孔5a及び第2液体供給孔5bの各中心軸と一致されている。
【0029】
流入孔7は、第1噴出孔8aから気液ループ流式撹拌混合室6の方向に向かって連続的に拡径されたテーパ状に形成されている。また、流入孔7の気液ループ流式撹拌混合室6側の端面には、複数の切欠き部7aが設けられている。この流入孔7は、気液ループ流式撹拌混合室6内における高速ループ流れを加速させる役割を果たしている。第1噴出孔8aは、一端が流入孔7の一端に接続されると共に、他端が第2噴出孔8bの一端に接続されるように形成されている。第2噴出孔8bは、第1噴出孔8aから気液ループ流式撹拌混合室6の方向とは逆の方向に向かって連続的に拡径されたテーパ状に形成されている。この第2噴出孔8bは、第1噴出孔8aから気液ループ流式撹拌混合室6内に流入してくる外部気体及び/又は外部液体の量を調節すると共に、第1噴出孔8aの外部側周辺の流れ(第1噴出孔8aからの混合流体の噴出、並びに、外部気体又は/及び外部液体の流入)を安定させる役割を果たしている。
【0030】
また、筒状部材2は、気体流入孔3に対向する外周位置に、周方向に連続した溝部4bを有している。そして、溝部4bと有底部材1の内壁面とで囲まれたリング状の空間が、気体供給室4とされている。気体供給室4は、隙間4aによって気液ループ流式撹拌混合室6に連通されている。
【0031】
図1(d)に示すように、気体流入孔3と気体供給室4とは隙間4aによって連通されている。気体流入孔3から流入した気体は、気体供給室4において、第1液体供給孔5aの中心軸を中心に周回されながら、周の全部または一部の箇所から隙間4aを通過して、気液ループ流式撹拌混合室6の一端側に向かって気液ループ流式撹拌混合室6に供給されることとなる。これにより、気液ループ流式撹拌混合室6の内壁に、気体の膜、気泡、又は/及び、マイクロバブルが発生されると共に、高速ループ流れが加速される。
【0032】
なお、有底部材1及び筒状部材2には、SUS304、SUS316などの金属、樹脂、木、ガラス、セラミック、陶磁器などを用いることができるが、固体材料であればどのようなものを用いてもよい。また、部品毎に、適材適所の素材を選択してもよい。なお、樹脂、ガラス、セラミックスなどを選択すれば、腐食に強いので、バブル発生ノズル10を長寿命化することができる。
【0033】
気液ループ流式撹拌混合室6は、第2液体供給孔5bから供給された液体と、気体供給室4から供給された気体とを、ループ状の流れによって撹拌混合する空間である。気液ループ流式撹拌混合室6の一端には第2液体供給孔5bが設けられており、気液ループ流式撹拌混合室6の他端には流入孔7が設けられている。また、気液ループ流式撹拌混合室6の他端側には、気体供給室4と気体流入孔3とが設けられている。なお、気液ループ流式撹拌混合室6の内壁には、凹凸形状(例えば、いわゆる鮫肌、セラミックの溶射肌と同様のもの、又は/及び、単なる突起形状など)が形成されているが、内壁全体に施されている必要はなく、一部に形成されているだけでもよい。この内壁の凹凸形状は、高速ループ流れを加速させ、気液ループ流式撹拌混合室6内の真空度を高くする役割を果たしている。
【0034】
(ループ流式バブル発生ノズル10の動作)
次に、
図2を用いて、ループ流式バブル発生ノズル10の動作について説明する。
図2は、
図1のループ流式バブル発生ノズル10と、ループ流式バブル発生ノズル10の有底部材1の一端側に接続されたホース11と、ループ流式バブル発生ノズル10の筒状部材2の他端側に接続されたシャワーヘッド12と、ループ流式バブル発生ノズル10の有底部材1の気体流入孔3に接続された気体用供給管13と、気体用供給管13への外部気体の流入量を調整する絞り弁14とを示した図である。なお、簡便のため、ループ流式バブル発生ノズル10のみ概略断面図で示している。また、気体用供給管13の一端は外気を取り込めるようになっており、気体用供給管13の内部には、バブルを安定して発生させることができるように、逆止弁13aが設けられている。
【0035】
まず、ホース11から第1液体供給孔5a、第2液体供給孔5bを介して、加圧液体を気液ループ流式撹拌混合室6に供給する。このとき、加圧液体は、
図2の第1液体供給孔5a、第2液体供給孔5bと、流入孔7及び第1噴出孔8aとを結ぶ線上に沿って流れた後、その大半が第1噴出孔8aから拡がりながら噴出すると共に、第2噴出孔8bから第1噴出孔8aを介して外部気体及び/又は外部液体の流入によって、その一部が高速ループ流れ(
図2の気液ループ流式撹拌混合室6内の略楕円状部分)を形成する。このとき、加圧液体の一部によって、高速ループ流れの速度が更に増加される。
【0036】
また、気液ループ流式撹拌混合室6内は負圧となっているので、気体用供給管13から気体供給室4を介して、気液ループ流式撹拌混合室6内に気体が流入してくる。
【0037】
ここで、気体供給室4から気液ループ流式撹拌混合室6内に供給された気体は、(a)気体供給室4と気液ループ流式撹拌混合室6との境界で発生した乱流により細分化され、(b)流入孔7及び第2液体供給孔5bによって加速された高速ループ流れにおいて撹拌、剪断され、(c)気液ループ流式撹拌混合室6の内壁の凹凸形状と衝突し、(d)途中で一部が第1液体供給孔5aから供給された加圧液体と衝突した際に発生した乱流により更に細分化され、(e)第1噴出孔8aにおいて、流入してきた外部気体及び/又は外部液体と衝突して、更に微細化され、バブル又は/及びマイクロバブルなどのファインバブルを含む混合流体として第2噴出孔8bから噴出される。
【0038】
更に、(f)気体流入孔3から流入してきた気体は、気体供給室4において第1液体供給孔5aの中心軸を中心に周回されながら、周の全部または一部の箇所から気液ループ流式撹拌混合室6の一端側に向かって気液ループ流式撹拌混合室6内に供給される。これにより、気液ループ流式撹拌混合室6内の真空度が向上されるため、気体流入孔3から流入してくる気体の量を更に増加させることができて、気泡の発生が促進される。
【0039】
これらのような一連の動作によって、バブル又は/及びマイクロバブルなどのファインバブルが、次から次へと連続的に発生する。
【0040】
また、テーパ状に形成された流入孔7によって、高速ループ流れが加速されると共に、第2液体供給孔5bによって激しい乱流が起こされるため、気液ループ流式撹拌混合室6内の気体を更に細分化することができる。
【0041】
また、流入孔7の複数の切欠き部7aによって、高速ループ流れにおける気体を撹拌、剪断し、更に細分化することができる。また、(a)気体供給室4と気液ループ流式撹拌混合室6との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象により、隙間4a内に入り込んだ飛沫液体、又は/及び、(b)気液境界部近傍のファインバブル、が気液境界部近傍で乾燥、濃縮、又は凝集し、隙間4a内の筒状部材2の外表面又は/及び有底部材1の内表面にカルシウムなどのスケール又は/及びスラッジが析出しリング状に固着しても、流入孔7の複数の切欠き部7aの部分は空間のまま存在することから、例えば、連続したリング状のスケール又は/及びスラッジとなることはない。また、切欠き部7aは、十分な空間を有しているので、切欠き部7aの回りの気体供給室4内に入り込んだ飛沫液体がスケール又は/及びスラッジとなっても、少なくとも切欠き部7aの側部に析出し固着したスケール又は/及びスラッジを、今度はキャビテーションの自己崩壊時に発生する衝撃波及びファインバブルの他のものへの衝突時崩壊によって発生する衝撃波によって破壊することができる。したがって、気体供給室4がつまらない(切欠き部7aの空間部分及び切欠き部7aの少なくとも側部にカルシウムなどが析出し固着することはない)ので、気体供給室4からの気体供給が阻害されることを防止することができる。その結果として、本
参考形態に係るループ流式バブル発生ノズル10においては、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率が低下しない。これにより、気体流入孔3から流入した気体は、気液ループ流式撹拌混合室6に安定して供給されるので、気液ループ流式撹拌混合室6内の高速ループ流れを安定させることができる。
【0042】
また、テーパ状に形成された第2噴出孔8bによって、第1噴出孔8aから気液ループ流式撹拌混合室6内に流入してくる外部気体及び/又は外部液体の量が調節されていると共に、第1噴出孔8aの外部側周辺の流れ(第1噴出孔8aからの混合流体の噴出、並びに、外部気体又は/及び外部液体の流入)が安定されている。
【0043】
また、気液ループ流式撹拌混合室6が略円柱型の空間であるので、高速ループ流れを容易に形成することができ、上述の動作を容易に得ることができる。そして、気液ループ流式撹拌混合室6の内壁には、凹凸形状が形成されているので、高速ループ流れをしている液体と気体との混合流体が凹凸形状に衝突することによって、気液ループ流式撹拌混合室6内の気体を更に細分化することができると共に、高速ループ流れを加速させ、気液ループ流式撹拌混合室6内の真空度を高くすることができる。
【0044】
上記の構成のループ流式バブル発生ノズル10によれば、上述したような動作が行われるので、従来と同等以下(20μm前後)の径のマイクロバブルなどのファインバブルを発生させることができる。
【0045】
なお、上述したループ流式バブル発生ノズル10の動作では、加圧液体を第1液体供給孔5a、第2液体供給孔5bを順に通って気液ループ流式撹拌混合室6に供給した場合について説明したが、これに限られず、不純物を含んだ汚泥水若しくは海水、又は水道水を供給しても、マイクロバブルなどのファインバブルを発生させることができる。
【0046】
[第1の実施の形態
]
次に、本発明の第1の実施の形態
に係るループ流式バブル発生ノズルについて説明する。
図3は、第1の実施の形態
に係るループ流式バブル発生ノズル20を示す概略断面図である。
【0047】
(ループ流式バブル発生ノズル20の構成)
図3(a)に示すように、ループ流式バブル発生ノズル20は、断面円形の有底管状の第1の部材としての有底部材21と、有底部材21の他端側に嵌め込まれた第2の部材としての筒状部材22とを有している。そして、有底部材21及び筒状部材22で囲まれた略円柱型の空間が、気液ループ流式撹拌混合室26とされている。
【0048】
筒状部材22は、気体流入孔23に対向する外周位置に、周方向に連続した溝部24bを有している。そして、溝部24bと筒状部材22の内面とで囲まれたリング状の空間が、気体供給室24とされている。気体供給室24は、隙間24aによって気液ループ流式撹拌混合室26に連通されている。また、隙間24aの気液ループ流式撹拌混合室26側には、凹形状の気体溜まり部24cが隙間24aの周の全部に沿って設けられている。
【0049】
図3(a)に示すように、気体流入孔23と気体供給室24とは隙間24aによって連通されている。気体流入孔23から流入した気体は、気体供給室24において、第1液体供給孔25aの中心軸を中心に周回されながら、周の全部または一部の箇所から隙間24aを通過して、気液ループ流式撹拌混合室26の一端側に向かって気液ループ流式撹拌混合室26に供給されることとなる。これにより、気液ループ流式撹拌混合室26の内壁に、気体の膜、気泡、又は/及び、マイクロバブルが発生されると共に、高速ループ流れが加速される。また、気体供給室24の近傍の気体溜まり部24cによって、気体流入孔23から流入してくる気体の量を更に増加させることができ、気泡の発生が促進される。また、(a)気体供給室24と気液ループ流式撹拌混合室26との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象により、隙間24a内に入り込んだ飛沫液体、又は/及び、(b)気液境界部近傍のファインバブル、が気液境界部近傍で乾燥、濃縮、又は凝集し、隙間24a内の筒状部材22の外表面又は/及び有底部材21の内表面にカルシウムなどのスケール又は/及びスラッジが析出しリング状に固着しても、気体溜まり部24cにより十分な空間が確保されているので、隙間24a(気体供給室24)が閉塞されてしまうことがない。その結果として、本変形例に係るループ流式バブル発生ノズル20においては、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率が低下しない。これにより、気体流入孔23から流入した気体は、気液ループ流式撹拌混合室26に安定して供給されるので、気液ループ流式撹拌混合室26内の高速ループ流れを安定させることができる。
【0050】
その他の構成及び動作は、第1の
参考形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0051】
(
上記各形態の概要)
以上のように、
上記各形態のループ流式バブル発生ノズル10,20は、液体及び気体をループ状の流れによって撹拌混合して混合流体とする気液ループ流式撹拌混合室6、26と、気液ループ流式撹拌混合室6、26の一端に設けられ、加圧された液体を気液ループ流式撹拌混合室6、26に供給する第1液体供給孔5a、25a及び第2液体供給孔5b、25bと、気体が流入する1つ以上の気体流入孔3,23と、気液ループ流式撹拌混合室6、26の他端側に設けられ、気体流入孔3,23から流入した気体を第1液体供給孔5a、25aの中心軸を中心に周回させながら、周の全部または一部の箇所から気液ループ流式撹拌混合室6、26の一端側に向かって気液ループ流式撹拌混合室6、26に供給する気体供給室4、24と、第1液体供給孔5a、25aの中心軸と一致するように気液ループ流式撹拌混合室6、26の他端に設けられ、複数の切欠き部7a、27aを有する流入孔7、27と、混合流体を気液ループ流式撹拌混合室6、26から噴出させる第1噴出孔8a、28a及び第2噴出孔8b、28bとを有する構成にされている。
【0052】
上記の構成によれば、第1液体供給孔5a、25a及び第2液体供給孔5b、25bを介して液体が気液ループ流式撹拌混合室6、26に供給されると共に、気体供給室4、24を介して気体が気液ループ流式撹拌混合室6、26に供給される。これにより、気液ループ流式撹拌混合室6、26内の混合流体が第2噴出孔8b、28bから噴出されると、気液ループ流式撹拌混合室6、26内において、気体を含んだ液体のループ状の流れ(「ループ流れ」又は「ループ流」と表現することがある)が発生される。
【0053】
気液ループ流式撹拌混合室6、26内の混合流体が第2噴出孔8b、28bから噴出されると、気液ループ流式撹拌混合室6、26内が負圧となるので、気体流入孔3,23から気体供給室4、24を介して気体が流入してくると共に、第1噴出孔8a、28aの孔径が第1液体供給孔5a、25aの孔径よりも大きく形成されていることから、第1噴出孔8a、28aにおいて、第1噴出孔8a、28aの内壁と混合流体の周囲との間から、外部気体又は/及び外部液体が気液ループ流式撹拌混合室6、26に流入してくる。
【0054】
ここで、気体供給室4、24から気液ループ流式撹拌混合室6、26内に供給された気体は、(a)気体供給室4、24と気液ループ流式撹拌混合室6、26との境界で発生した乱流により細分化され、(b)流入孔7、27及び第2液体供給孔5b、25bによって加速された高速ループ流れにおいて撹拌、剪断され、(c)気液ループ流式撹拌混合室6、26の内壁の凹凸形状と衝突し、(d)途中で一部が第1液体供給孔5a、25aから供給された加圧液体と衝突した際に発生した乱流により更に細分化され、(e)第1噴出孔8a、28aにおいて、流入してきた外部気体及び/又は外部液体と衝突して、更に微細化され、バブル又は/及びマイクロバブルを含む混合流体として第2噴出孔8b、28bから噴出される。これらの(a)〜(e)の工程で微細化される気泡発生のメカニズムが、ループ流式バブル発生ノズル10、20の特徴であり、他のノズルにない優れた点である。
【0055】
更に、(f)気体流入孔3、23から流入してきた気体は、気体供給室4、24において第1液体供給孔5a、25aの中心軸を中心に周回されながら、周の全部または一部の箇所から気液ループ流式撹拌混合室6、26の一端側に向かって気液ループ流式撹拌混合室6、26内に供給される。この(f)の工程によって、気液ループ流式撹拌混合室6、26内の真空度が向上されるため、気体流入孔3、23から流入してくる気体の量を更に増加させることができて、気泡の発生が促進される。
【0056】
したがって、平均直径が100μm未満のバブル、特に、平均直径が20μm前後の従来と同等以下の径のマイクロバブルを発生させることができる。また、流入孔7、27の複数の切欠き部7a、27aにより、高速ループ流れにおける気体が撹拌、剪断し、更に細分化されるので、気体供給室4、24と気液ループ流式撹拌混合室6、26との境界である気液境界部において、従来よりもバブル又は/及びマイクロバブルの発生効率を向上させることができる。また、気体供給室4、24と気液ループ流式撹拌混合室6、26との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象により、飛沫液体が発生し、この飛沫液体が隙間4a、24a内に入り込んで乾燥され、隙間4a、24a内の筒状部材2、22の外表面又は/及び有底部材1、21の内表面にカルシウムなどのスケール又は/及びスラッジとなって析出し、リング状に固着することがある。しかしながら、切欠き部7a、27aによってスケール又は/及びスラッジが析出しない部分を設けたり、気体溜まり部24cにより十分な空間を確保したりしているので、隙間4a、24aが閉塞されてしまうことがない。その結果として、
上記各形態に係るループ流式バブル発生ノズル10、20においては、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率が低下しない。また、気体流入孔3、23から流入した気体は、気液ループ流式撹拌混合室6、26に安定して供給されるので、気液ループ流式撹拌混合室6、26内の高速ループ流れを安定させることができる。
【0057】
また、テーパ状に形成された流入孔7、27によって、高速ループ流れが加速されると共に、第2液体供給孔5b、25bによって激しい乱流が起こされるため、気液ループ流式撹拌混合室6、26内の気体を更に細分化することができる。
【0058】
また、テーパ状に形成された第2噴出孔8b、28bによって、第1噴出孔8a、28aから気液ループ流式撹拌混合室6、26内に流入してくる外部気体及び/又は外部液体の量が調節されていると共に、第1噴出孔8a、28aの外部側周辺の流れ(第1噴出孔8a、28aからの混合流体の噴出、並びに、外部気体又は/及び外部液体の流入)が安定されている。
【0059】
また、気液ループ流式撹拌混合室6、26の内壁に凹凸形状が形成されているので、高速ループ流れをしている液体と気体との混合流体が凹凸形状に衝突することによって、気液ループ流式撹拌混合室6、26内の気体を更に細分化することができると共に、高速ループ流れを加速させ、気液ループ流式撹拌混合室6、26内の真空度を高くすることができる。
【0060】
[第2の
参考形態]
本発明の第2の
参考形態を
図4に基づいて以下に説明する。
図4は、第2の
参考形態に係るループ流式バブル発生ノズル30を示す概略断面図である。
【0061】
(ループ流式バブル発生ノズル30の構成)
図4(a)に示すように、ループ流式バブル発生ノズル30は、断面円形の有底管状の第1の部材としての有底部材31と、有底部材31の他端側に嵌め込まれた第2の部材としての筒状部材32とを有している。そして、有底部材31及び筒状部材32で囲まれた略円柱型の空間が、気液ループ流式撹拌混合室36とされている。
【0062】
筒状部材32は、その中央に、液体及び気体を流入可能な流入孔37と、液体及び気体を噴出可能な第1噴出孔38aと第2噴出孔38bとを有している。流入孔37は、第1噴出孔38aから気液ループ流式撹拌混合室36の方向に向かって連続的に拡径されたテーパ状に形成されている。また、流入孔37の気液ループ流式撹拌混合室36側の端面には、複数の切欠き部37aが設けられ、このうち適数箇所に切欠き部37bが、切欠き部37aから気体供給室34に向かって延設されている。この流入孔37は、気液ループ流式撹拌混合室36内における高速ループ流れを加速させる役割を果たしている。また、流入孔37の複数の切欠き部37a及び37bは、高速ループ流れにおける気体を撹拌、剪断し、更に細分化する役割を果たしている。また、気体供給室34と気液ループ流式撹拌混合室36との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象により、隙間34a内に入り込んだ飛沫液体が乾燥、濃縮、又は凝集し、隙間34a内の筒状部材32の外表面又は/及び有底部材31の内表面にカルシウムなどのスケール又は/及びスラッジが析出しリング状に固着しても、複数の切欠き部37a及び37bの部分は空間のまま存在する(切欠き部37a及び37bの空間部分にカルシウムなどが析出し固着することはない)ので、隙間34aが閉塞されてしまうことがない。その結果として、本
参考形態に係るループ流式バブル発生ノズル30においては、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率が低下しない。これにより、気体流入孔33から流入した気体は、気液ループ流式撹拌混合室36に安定して供給されるので、気液ループ流式撹拌混合室36内の高速ループ流れを安定させることができる。
【0063】
その他の構成及び動作は、第1の
参考形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0064】
[第2の実施の形態
]
次に、本発明の第2の実施の形態
に係るループ流式バブル発生ノズルについて説明する。
図5は、第2の実施の形態
に係るループ流式バブル発生ノズル40を示す概略断面図である。
【0065】
(ループ流式バブル発生ノズル40の構成)
図5(a)に示すように、ループ流式バブル発生ノズル40は、断面円形の有底管状の第1の部材としての有底部材41と、有底部材41の他端側に嵌め込まれた第2の部材としての筒状部材42とを有している。そして、有底部材41及び筒状部材42で囲まれた略円柱型の空間が、気液ループ流式撹拌混合室46とされている。
【0066】
筒状部材42は、気体流入孔43に対向する外周位置に、周方向に連続した溝部44bを有している。そして、溝部44bと筒状部材42の内面とで囲まれたリング状の空間が、気体供給室44とされている。気体供給室44は、隙間44aによって気液ループ流式撹拌混合室46に連通されている。また、気体供給室44の近傍には、気体溜まり部44cが設けられている。
【0067】
図5(a)に示すように、気体流入孔43と気体供給室44とは隙間44aによって連通されている。気体流入孔43から流入した気体は、気体供給室44において、第1液体供給孔45aの中心軸を中心に周回されながら、周の全部または一部の箇所から隙間44aを通過して、気液ループ流式撹拌混合室46の一端側に向かって気液ループ流式撹拌混合室46に供給されることとなる。これにより、気液ループ流式撹拌混合室46の内壁に、気体の膜、気泡、又は/及び、マイクロバブルが発生されると共に、高速ループ流れが加速される。また、気体供給室44の近傍の気体溜まり部44cによって、気体流入孔43から流入してくる気体の量を更に増加させることができ、気泡の発生が促進される。また、気体供給室44と気液ループ流式撹拌混合室46との境界である気液境界部において発生するキャビテーションによるスプラッシュ現象により、隙間44a内に入り込んだ飛沫液体が乾燥、濃縮、又は凝集し、隙間44a内の筒状部材42の外表面又は/及び有底部材41の内表面にカルシウムなどのスケール又は/及びスラッジが析出しリング状に固着しても、気体溜まり部24cにより十分な空間が確保されているので、隙間44aが閉塞されてしまうことがない。その結果として、本変形例に係るループ流式バブル発生ノズル40においては、不純物を含む液体を用いてもバブル発生効率が低下しない。これにより、気体流入孔43から流入した気体は、気液ループ流式撹拌混合室46に安定して供給されるので、気液ループ流式撹拌混合室46内の高速ループ流れを安定させることができる。
【0068】
その他の構成及び動作は、第1の
参考形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0069】
[第2の実施の形態の変形例
1]
次に、本発明の第2の実施の形態の変形例
1に係るループ流式バブル発生ノズルについて説明する。
図6は、第2の実施の形態の変形例
1に係るループ流式バブル発生ノズル40を示す概略断面図である。
【0070】
(ループ流式バブル発生ノズル50の構成)
図6(a)に示すように、ループ流式バブル発生ノズル50は、上述の本発明の第2の実施の形態の変形例
1に係るループ流式バブル発生ノズル40とほぼ同様の構成であるが、気液ループ流式撹拌混合室56内の混合流体をさらに撹拌混合する撹拌混合部55cが設けられている点で異なる。
【0071】
撹拌混合部55cは、第2液体供給孔55bの途中において、中心軸を略同一としたリング状に設けられた凹形状の溝である。この撹拌混合部55cにおいて、気液ループ流式撹拌混合室56内で発生するループ流に比べてミニサイズのループ流を生じさせることで、さらに気液ループ流式撹拌混合室56内の混合流体を撹拌混合し、気泡を効率よく発生させる。
【0072】
その他の構成及び動作は、第1の
参考形態及び第2の実施の形態
と同じであるため、その説明を省略する。
【0073】
(
上記各形態の概要)
以上のように、
上記各形態のループ流式バブル発生ノズル30、40、50は、液体及び気体をループ状の流れによって撹拌混合して混合流体とする気液ループ流式撹拌混合室36、46、56と、気液ループ流式撹拌混合室36、46、56の一端に設けられ、加圧された液体を気液ループ流式撹拌混合室36、46、56に供給する第1液体供給孔35a、45a、55a及び第2液体供給孔35b、45b、55bと、気体が流入する1つ以上の気体流入孔33、43、53と、気液ループ流式撹拌混合室36、46、56の他端側に設けられ、気体流入孔33、43、53から流入した気体を第1液体供給孔35a、45a、55aの中心軸を中心に周回させながら、周の全部または一部の箇所から気液ループ流式撹拌混合室36、46、56の一端側に向かって気液ループ流式撹拌混合室36、46、56に供給する気体供給室34、44、54と、第1液体供給孔35a、45a、55aの中心軸と一致するように気液ループ流式撹拌混合室36、46、56の他端に設けられ、複数の切欠き部37a、47a、57a及び37b、47b、57bを有する流入孔37、47、57と、混合流体を気液ループ流式撹拌混合室36、46、56から噴出させる第1噴出孔38a、48a、58a及び第2噴出孔38b、48b、58bとを有する構成にされている。
【0074】
上記の構成によれば、第1液体供給孔35a、45a、55a及び第2液体供給孔35b、45b、55bを介して液体が気液ループ流式撹拌混合室36、46、56に供給されると共に、気体供給室34、44、54を介して気体が気液ループ流式撹拌混合室36、46、56に供給される。これにより、気液ループ流式撹拌混合室36、46、56内の混合流体が第2噴出孔38b、48b、58bから噴出されると、気液ループ流式撹拌混合室36、46、56内において、気体を含んだ液体のループ状の流れ(「ループ流れ」又は「ループ流」と表現することがある)が発生される。また、第1の
参考形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(
上記各形態の変形例)
以上、
各形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0076】
例えば、
各形態及び各変形例において、ループ流式バブル発生ノズルは、表面が樹脂で被覆された部材からなるもの、若しくは、樹脂だけで成形されたものであってもよい。これにより、汚泥水又は海水などの劣悪な環境中においても、部材表面が樹脂で被覆されている、若しくは、ループ流式バブル発生ノズル自体が樹脂で成形されているので、腐食を防止できる。その結果として、使用寿命が長く、安価なループ流式バブル発生ノズルを提供することができる。
【0077】
また、
各形態及び各変形例において、ループ流式バブル発生ノズルは、気体流入孔を有する構成にされているが、液体供給孔から供給される液体に気体が溶け込んでいる場合には、気体流入孔を有しない構成であってもよい。この場合、液体に溶け込んだ気体は、気液ループ流式撹拌混合室内で気泡化される。
【0078】
また、
各形態のループ流式バブル発生ノズルにおいて、気体流入孔を有する有底部材が、気液ループ流式撹拌混合室の周面に、気液ループ流式撹拌混合室の周面の接線と平行な方向に開口されて外部と連通する外部連通孔を更に有していてもよい。これによれば、外部連通孔から外部液体及び/又は外部気体が気液ループ流式撹拌混合室内に流入してくるので、ループ流の他に、気液ループ流式撹拌混合室における周面に沿って流れる旋回流を発生させることができて、液体供給孔から供給される液体の供給方向に対して、ループ流の流れ方向を傾斜させることができる。その結果として、ループ流の一周当りの距離を長くすることができることから、ループ流により発生する乱流によって気体の剪断の機会が多くなるので、より気液ループ流式撹拌混合室内の気体を細分化することができる。
【0079】
また、気液ループ流式撹拌混合室又は流入孔の切欠き部の形状は、
各形態及び各変形例において示したものに限られない。気液ループ流式撹拌混合室の形状は、略角筒型、略三角錐型、断面が五角形又は六角形などの多角形のもの、又は、断面が星形などの複雑な形状(規則的でない形状のものを含む)のものであってもよい。
【0080】
また、
各形態及び各変形例において、気体流入孔は、噴出孔寄りに形成されていてもよい。
【0081】
また、
各形態及び各変形例において、気体溜まり部は筒状部材の表面に形成してもよい。また、
各形態及び各変形例において、気体溜まり部は、隙間の周の全部に沿って凹形状(リング状)に形成されているが、これに限られず、隙間内の筒状部材の外表面又は/及び有底部材の内表面において、従来ならスケール又は/及びスラッジが析出しやすい一部の箇所のみに凹形状を形成し、気体供給が阻害されないようにしてもよい。
【0082】
また、
各形態及び各変形例において、第2の実施の形態の変形例
1のループ流式バブル発生ノズル50に設けた撹拌混合部55cと同様のものを、気液ループ流式撹拌混合室内のどの部分に設けてもよい。また、撹拌混合部55cは、リング状の凹形状としたが、これに限られず、気液ループ流式撹拌混合室内の混合流体をさらに撹拌混合することができるのであれば、単なる凹形状(窪みなど)が1つ以上形成されていても、螺旋状に形成された溝(凹部)であってもよい。
【0083】
本発明のバブル発生ノズル/ループ流式バブル発生ノズルは、大型のものから小型のものまで製作することができる。大型のバブル発生ノズル/ループ流式バブル発生ノズルについては、工業的分野、下水道などの汚水処理、河川及び海水などの浄化、アオコなどの除去、魚介類の蘇生・繁殖・養殖、水田の稲育成用及び除草作用など、小型のバブル発生ノズル/ループ流式バブル発生ノズルについては、水槽・イケスの浄化、水耕栽培の育成用、マイクロバブル風呂、洗浄機、携帯用超小型マイクロバブル発生器、温度上昇が望ましくない場合の小型の水槽内など、マイクロバブルを利用することができるもの全てに適用することができる。また、医療関係への利用も検討されている。さらに、本発明のバブル発生ノズル/ループ流式バブル発生ノズルにおいては、脱色、殺菌にも利用することが可能である。