(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記点灯対象画素を点灯させるステップでは、前記表示パネルの四隅に位置する4つの第一発光画素に加え、前記表示パネルの外周以外に位置する発光画素を追加の点灯対象画素として設定する
請求項1に記載の有機EL表示装置の製造方法。
前記点灯対象画素を点灯させるステップでは、前記表示パネルの大きさよりも小さい長方形を前記表示パネルの中央に設定した場合に、前記長方形の四隅の少なくとも何れか1点に位置する第二発光画素を前記追加の点灯対象画素として設定する
請求項2に記載の有機EL表示装置の製造方法。
前記点灯対象画素を点灯させるステップでは、前記表示パネルに十字を設定した場合に、前記十字上に位置する任意の第三発光画素を前記追加の点灯対象画素として設定する
請求項2または3に記載の有機EL表示装置の製造方法。
前記相対位置を合わせるステップでは、前記撮像画像において前記点灯対象画素が実際に検出された位置と、前記撮像画像における前記点灯対象画素の検出されるべき位置との間のずれ量が、前記点灯対象画素全体で最小となるように、前記相対位置を決定する
請求項1〜7の何れか1項に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者らは、「背景技術」の欄において記載した、撮像装置と有機ELパネルとの相対位置を合わせること(以下、適宜「アライメント」と称する)に関し、以下の問題が生じることを見出した。
【0014】
例えば、液晶ディスプレイ等では、バックライトを用いることから、発光画素毎の輝度ムラはあまり問題にならないが、有機ELディスプレイ(有機EL表示装置)では、各発光画素に有機EL素子を用いているため、輝度ムラが比較的問題になる傾向がある。
【0015】
図1Aは、有機ELパネルの輝度ムラの一例を示す図である。
図1Aの有機ELパネルは、図面右側の発光量が大きく、図面左側の発光量が比較的小さくなっている。
【0016】
このため、有機ELディスプレイでは、例えば、全ての発光画素の発光量をそろえるための点灯検査を実施している。点灯検査では、上述したように、有機ELパネルの輝度ムラを検出し、全ての発光画素に同じ輝度信号を与えた場合において、全ての発光画素の発光量が同じ量となるように、発光画素別の輝度信号の補正量を求め、有機ELディスプレイに搭載されるIC(Integrated Circuit)に記憶する。
【0017】
ここで、点灯検査では、上述したように、有機ELパネルを撮影することにより、輝度ムラを検出する。
【0018】
有機ELパネルの撮影には、例えば、複数の受光素子を備えるCCD(Charge−Coupled Device)を備えた撮像装置が用いられる。
【0019】
有機ELパネルを良好に撮影するためには、CCDを有機ELパネルに対して適切にアライメントする必要がある。アライメントでは、例えば、有機ELパネルを構成する発光画素のそれぞれに、1個の受光素子を対応させる。言い換えると、1つの受光素子に複数の発光画素が対応しないようにアライメントする。
【0020】
アライメントでは、アライメントマークを検出し、アライメントマークの位置が所定の位置にくるように、CCDの位置を決定している。
【0021】
ここで、従来、アライメントマークとして、有機ELパネル上に形成された特定のパターンが用いられている。しかし、近年、ディスプレイの分野では、有機パネルの額縁部分が小さくなる傾向にあり、特定のパターンを形成する領域が確保できないという問題がある。
【0022】
このため、有機ELパネルを構成する複数の発光画素のうち、四隅に位置する4つの発光画素を点灯対象画素として点灯させてアライメントマークとする方法がある。この場合、実際の発光画素をアライメントマークとして利用することから、有機ELパネル上に特定のパターンを形成する場合よりも高精度にアライメントできると考えられる。
【0023】
ここで、点灯検査は、有機ELパネルの発光量の補正前に、発光量の補正量を求めるための処理で行われるため、点灯対象画素の輝度ムラは解消されていない。さらに、点灯対象画素を用いたアライメントでは、点灯対象画素に対し、大きい電流を流すことは好ましくないため、輝度信号は、輝度値の最大値ではなく、ある程度の大きさの輝度値(例えば、中間値)としている。
【0024】
そうすると、他の点灯対象画素に比べて暗い点灯対象画素がある場合、点灯対象画素の全てに同じ輝度信号を与えた場合、撮像装置から出力される撮像画像において、検出できない点灯対象画素(非検出画素)が生じる場合がある。例えば、四隅に位置する4つの発光画素を点灯対象画素として点灯させる場合、
図1Aでは、左上および左下の2つの点灯対象画素の発光量が不足しており、当該2つの点灯対象画素を検出できない場合がある。
【0025】
撮像画像から点灯対象画素を検出できない場合、アライメントを適切に行うことができなくなるという問題がある。
【0026】
このような問題を解決するために、本開示の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、発光素子を備えた複数の発光画素を有する表示パネルを備えた有機EL表示装置の製造方法であって、前記複数の発光画素のうちの一部に設定された点灯対象画素を点灯させるステップと、撮像装置を用いて前記表示パネルを撮影し、前記撮像装置から撮像画像を受け付けるステップと、前記撮像画像を用いて前記点灯対象画素の検出を行うステップと、前記点灯対象画素の検出結果を用いて、前記点灯対象画素に、検出できない非検出画素が含まれるか否かを判定するステップと、前記非検出画素が含まれると判定された場合に、前記点灯対象画素の検出を行うステップにおいて検出される発光量となるように前記非検出画素の発光量を増大させるステップと、前記点灯対象画素の前記検出結果を用いて、前記有機EL表示装置と前記撮像装置との相対位置を合わせるステップとを含む。
【0027】
上記構成の有機EL表示装置の製造方法では、検出できない点灯対象画素である非検出画素がある場合、当該非検出画素の発光量を、撮影画像上で検出できる発光量となるように増加させる。これにより、全ての点灯対象画素を検出することが可能になり、アライメントを良好に行うことが可能になる。
【0028】
さらに、上記構成の有機EL表示装置の製造方法では、アライメントを良好に行うことができるため、表示装置における輝度値の補正をより適切に行うことが可能になり、表示装置の映像品質の向上が期待できる。
【0029】
例えば、前記点灯対象画素を点灯させるステップでは、前記表示パネルの四隅に位置する4つの第一発光画素に加え、前記表示パネルの外周以外に位置する発光画素を追加の点灯対象画素として設定してもよい。この場合において、例えば、前記点灯対象画素を点灯させるステップでは、前記表示パネルの大きさよりも小さい長方形を前記表示パネルの中央に設定した場合に、前記長方形の四隅の少なくとも何れか1点に位置する第二発光画素を前記追加の点灯対象画素として設定してもよいし、前記点灯対象画素を点灯させるステップでは、前記表示パネルに十字を設定した場合に、前記十字上に位置する任意の第三発光画素を前記追加の点灯対象画素として設定してもよい。
【0030】
例えば、一般的に、撮像装置のレンズには収差(例えば、歪曲収差)がある。
【0031】
図1Bは、レンズ収差の一例を示す図である。
図1Cは、レンズ収差の一例を線画で示した図である。
図1Bおよび
図1Cに示す例では、有機ELパネルの四隅に位置する発光画素について、撮影画像上の実際の検出位置と検出されるべき位置との間に位置ずれが生じていない場合でも、有機ELパネルの中央部分では、位置ずれが生じている可能性がある。近年、大型の有機ELパネルが製造されるようになってきているが、大型の有機ELパネルでは、撮像装置のレンズ収差の影響が、比較的小型の有機ELパネルに比べてより大きくなる。
【0032】
なお、従来は、有機ELパネルの四隅に位置する発光画素のみを点灯対象画素としており、中央部分の位置ずれについては考慮されていなかった。このため、有機ELパネルの中央部分において位置ずれが生じる場合があるという問題があった。
【0033】
これに対し、上記構成の有機EL表示装置の製造方法では、表示装置の中央の領域についても、点灯対象画素を設定するので、レンズ収差に対応してアライメントをより良好に行うことが可能になる。
【0034】
例えば、前記判定するステップでは、前記撮像画像における輝度値が所定の閾値以下である点灯対象画素を、前記非検出画素であると判定してもよい。
【0035】
上記構成の有機EL表示装置の製造方法では、閾値を適切に設定することにより、点灯対象画素を適切に検出することができる。
【0036】
例えば、前記非検出画素の発光量を増大させるステップでは、前記非検出画素の輝度値を予め定められた一定量増加させ、前記判定するステップにおいて前記非検出画素がないと判定されるまで、前記発光量を増大させるステップと前記撮像画像を受け付けるステップと前記点灯対象画素を検出するステップと判定するステップとをこの順に繰り返し実行してもよい。
【0037】
上記構成の有機EL表示装置の製造方法では、全ての点灯対象画素が検出できる、言い換えると、非検出画素が無くなるまで、一定の幅で輝度信号を増加させるので、検査装置の装置構成(プログラムの構成)を簡素化することが可能になる。
【0038】
例えば、前記相対位置を合わせるステップは、前記判定するステップにおいて前記非検出画素がないと判定された後に実行してもよい。
【0039】
上記構成の有機EL表示装置の製造方法では、全ての点灯対象画素が検出された後にアライメントを行うので、アライメントを良好に実行することが可能になる。
【0040】
例えば、前記相対位置を合わせるステップでは、前記撮像画像において前記点灯対象画素が実際に検出された位置と、前記撮像画像における前記点灯対象画素の検出されるべき位置との間のずれ量が、前記点灯対象画素全体で最小となるように、前記相対位置を決定してもよい。
【0041】
上記構成の有機EL表示装置の製造方法では、撮影画像上における点灯対象画素の実際の検出位置と検出されるべき位置との間のずれ量が、点灯対象画素全体で最小となるように相対位置を合わせるので、適切なアライメントが可能になる。
【0042】
なお、点灯対象画素全体で最小となるように相対位置を合わせるとは、例えば、点灯対象画素の実際の検出位置と検出されるべき位置との間のずれ量が、全ての発光画素で同じになる、あるいは、点灯対象画素の実際の検出位置と検出されるべき位置との間の2乗平均誤差が最小となるように、有機ELパネルに対する撮像装置の位置を決定する等である。
【0043】
例えば、さらに、前記非検出画素の発光量を増大させるステップにおいて発光量が最大値まで増大された後に、前記判定するステップにおいて検出できないと判定された前記非検出画素について、代理の点灯対象画素を設定するステップを含み、前記代理の点灯対象画素に対し、前記発光量を増大させるステップと前記撮像画像を受け付けるステップと前記点灯対象画素を検出するステップと判定するステップとを実行してもよい。
【0044】
このように構成すれば、非検出画素が点灯しない不点灯画素である場合でも、アライメントを精度良く行うことが可能になる。
【0045】
このような問題を解決するために、本開示の一態様に係る有機EL表示装置の検査装置は、発光素子を備えた複数の発光画素を有する表示パネルを備えた有機EL表示装置の検査装置であって、前記複数の発光画素のうちの一部に設定された点灯対象画素を点灯させる信号生成部と、撮像装置を用いて前記表示パネルを撮影し、前記撮像装置から撮像画像を受け付ける撮像部と、前記撮像画像を用いて前記点灯対象画素の検出を行い、前記点灯対象画素の検出結果を用いて、前記点灯対象画素に、検出できない非検出画素が含まれるか否かを判定する点灯対象画素検出部と、前記点灯対象画素の前記検出結果を用いて、前記有機EL表示装置と前記撮像装置との相対位置を合わせるアライメント部とを備え、前記信号生成部は、前記点灯対象画素検出部において前記非検出画素が含まれると判定された場合に、前記点灯対象画素検出部において検出される発光量となるように前記非検出画素の発光量を増大させる。
【0046】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0047】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0048】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0049】
(実施の形態)
実施の形態の有機ELディスプレイ(有機EL表示装置)の製造方法および検査装置について、
図2〜
図7を基に説明する。
【0050】
本実施の形態では、有機ELディスプレイの製造方法を、特に、有機ELディスプレイの複数の製造工程のうち、有機ELディスプレイを構成する部品である有機ELパネル(表示パネルの一例)の点灯検査に適用する場合について説明する。
【0051】
点灯検査では、点灯対象画素を用いて撮像装置のアライメントを行うアライメント処理と、アライメント処理後、発光画素の発光量を均一にするための輝度信号の補正量を求める補正処理とが実行される。これにより、有機ELディスプレイの組み立て後の製品における輝度ムラを低減することが可能になる。
【0052】
[1.ドライバ実装後の有機ELパネルの構成]
図2は、ドライバ実装後の有機ELパネル(部品)の一例を示す図である。
図2に示すように、本実施の形態の有機ELパネル10は、行列状に配置された複数の発光画素Pを備えている。発光画素Pは、それぞれ、例えば、R(赤)G(緑)B(青)の3原色に対応している。なお、対応する色は、3原色に限られるものではない。
【0053】
有機ELパネル10には、ドライバ20として、データ線駆動回路21および走査線駆動回路22が形成されたCOF(Chip on Film)が接続されている。なお、ドライバは、COFに限るものではない。
【0054】
データ線駆動回路21は、入力された輝度信号に応じた値の電圧をデータ線SLに印加する。
【0055】
走査線駆動回路22は、発光画素Pの選択および非選択を設定するための電圧を走査線GLに印加する。
【0056】
図3は、発光画素Pの構成の一例を示す図である。
図3に示すように、発光画素Pは、本実施の形態では、有機EL素子OELと、選択トランジスタT1と、駆動トランジスタT2と、容量素子C1とを備えている。
【0057】
選択トランジスタT1は、発光画素Pの選択および非選択を切り替える。選択トランジスタT1は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)であり、ゲート端子が走査線GLに、ソース端子がデータ線SLに、ドレイン端子がノードN1にそれぞれ接続されている。
【0058】
駆動トランジスタT2は、データ線SLの電圧値に応じた駆動電流を有機EL素子OELに供給する。駆動トランジスタT2は、薄膜トランジスタであり、ゲート端子がノードN1に、ソース端子が有機EL素子OELのアノード電極にそれぞれ接続され、ドレイン端子に電圧VTFTが供給されている。
【0059】
有機EL素子OELは、駆動電流に応じて発光する発光素子である。駆動電流は、駆動トランジスタT2から供給される。有機EL素子OELは、アノード電極が駆動トランジスタT2のソース端子に接続され、カソード電極が接地されている。
【0060】
容量素子C1は、一端がノードN1に、他端が駆動トランジスタT2のドレイン端子に接続されている。
【0061】
ドライバ20実装後の有機ELパネル10の点灯検査は、有機ELパネル10のドライバ20に接続された検査装置30(
図4参照)によって実行される。
【0062】
[2.検査装置]
図4は、検査装置30の構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、検査装置30は、画像処理部31と、信号生成部35と、撮像部36と、アライメント部37と、撮像装置40と、パネル移動機構50と、撮像装置移動機構60とを備えている。
【0063】
画像処理部31は、点灯対象画素検出部32と、光量検出部33と、補正量算出部34とを備えている。画像処理部31の詳細な動作については、後述する。
【0064】
信号生成部35は、有機ELパネル10のドライバ20と通信を行うインターフェースである。信号生成部35の詳細な動作については後述する。
【0065】
撮像部36は、撮像装置40の制御(撮影および画像取得要求)を行う。撮像部36の詳細な動作については、後述する。
【0066】
アライメント部37は、パネル移動機構50および撮像装置移動機構60を制御して、有機ELパネル10に対する撮像装置40のアライメントを行う。アライメント部37の詳細な動作については、後述する。
【0067】
撮像装置40は、本実施の形態では、複数の受光素子を備えるCCDである。なお、撮像装置40は、CCDに限られるものではない。
【0068】
図5は、撮像装置40および有機ELパネル10の位置関係および移動方法を示す模式図である。
図5では、説明のため、X軸Y軸Z軸が垂直に交差するように記載しているが、必ずしも直交していなくてもよい。
【0069】
撮像装置40は、
図5の場合、初期状態では、有機ELパネル10の上方に、レンズに直交する軸がZ軸に平行となる状態で、有機ELパネル10側にレンズを向けて配置されている。
【0070】
パネル移動機構50は、検査装置30に載置された有機ELパネル10を移動させる機構である。
図5に示すように、パネル移動機構50は、有機ELパネル10をXY平面に水平に維持した状態で、X軸方向およびY軸方向に移動させることができる。さらに、パネル移動機構50は、有機ELパネル10を、XY平面の方向上で回転させることができる。アライメント部37は、X軸方向およびY軸方向の移動量、および、角度θxyを決定し、パネル移動機構50に出力する。
【0071】
撮像装置移動機構60は、撮像装置40を移動させる機構である。
図5に示すように、撮像装置移動機構60は、撮像装置40を、Z軸に垂直な方向に移動させることができる。さらに、撮像装置移動機構60は、XZ平面に水平な方向(θxzの方向)、および、YZ平面に水平な方向(θxzの方向)に傾ける(回転させる)ことができる。アライメント部37は、Z軸方向の移動量、角度θxzおよび角度θyzを決定し、撮像装置移動機構60に出力する。
【0072】
なお、検査装置30の各構成要素(画像処理部31、信号生成部35、撮像部36、および、アライメント部37)は、専門のハードウェアによって構成されてもよい。あるいは、検査装置30の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)またはプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0073】
[3.ドライバ実装後の有機ELパネルの点灯検査]
ドライバ20実装後の有機ELパネル10の点灯検査(有機ELディスプレイの製造方法)について、
図6を基に説明する。
【0074】
図6は、上述した有機ELパネルの点灯検査の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図6において、S10〜S15がアライメント処理であり、S16〜S19が、有機ELパネル10の光量を均一にするための補正処理である。
【0075】
また、本実施の形態では、検査装置30は、大型の有機ELパネル10の場合、大型の有機ELパネル10の発光画素Pを、約同じ大きさの9つ(3×3)の長方形の領域に分割する。そして、検査装置30は、各領域を順次処理対象の領域に設定して、処理対象の領域に対し
図6に示す処理を実行する。
【0076】
点灯検査が開始されると、検査装置30の信号生成部35は、点灯対象画素を点灯させるためのアライメント用信号を有機ELパネル10のドライバ20に出力する(S10)。初期のアライメント用信号は、全ての点灯対象画素で同じである。なお、アライメント用信号の初期値は、有機EL素子OEL(
図3)に流れる電流量の観点から、最大値ではなく、例えば、取り得る輝度値の範囲の中央値等とする。
【0077】
本実施の形態では、点灯対象画素として、有機ELパネル10の四隅に位置する4つの発光画素P1を点灯対象画素としている。さらに、本実施の形態では、有機ELパネル10の外周以外に位置する発光画素Pを追加の点灯対象画素として設定している。
【0078】
図7は、点灯対象画素の設定の一例を示す図である。
図7では、説明のため、有機ELパネル10全体ではなく、処理対象の領域を示している。
図7では、処理対象の領域の四隅に位置する4つの発光画素P1と、長方形の四隅に位置する発光画素P2と、十字状に並ぶ発光画素P3とが点灯対象画素に設定されている。発光画素P2およびP3が追加の点灯対象画素である。
【0079】
より詳細には、発光画素P2は、有機ELパネル10の大きさよりも小さい長方形L2を有機ELパネル10の中央に設定した場合に、長方形L2の四隅に位置する4つの発光画素である。
【0080】
発光画素P3は、中心が有機ELパネル10の中心に一致する十字L3を設定した場合に、当該十字L3が通過し有機ELパネル10の枠に接する4つの発光画素と、十字L3と長方形L2とが通過する4つの発光画素とで構成されている。
【0081】
発光画素P1、P2、P3のように点灯対象画素を設定し、それぞれの画素が、対応するCCDの受光素子とのずれ量が最小となるようにアライメントすることで、撮像装置40のレンズ収差の影響を低減することが可能になる。
【0082】
なお、複数の長方形が設定されるように構成してもよいし、複数の十字が設定されるように構成してもよい。撮像装置に搭載されるレンズの種類等に応じて、適切に点灯対象画素を設定する。
【0083】
撮像部36は、撮像装置40を制御して、有機ELパネル10を撮影する(S11)。撮像部36は、有機ELパネル10を構成する複数の発光画素Pのうち、処理対象の複数の発光画素P全体を撮影する。また、撮像部36は、点灯対象画素の点灯中、つまり、信号生成部35によるアライメント用信号の出力中に、撮像装置40に有機ELパネル10を撮影させる。撮像部36は、撮像装置40から撮像画像を受け付けると、点灯対象画素検出部32に撮像画像を出力する。
【0084】
点灯対象画素検出部32は、撮像部36から撮像画像を受け付けると、当該撮像画像から点灯対象画素を検出する(S12)。具体的には、点灯対象画素検出部32は、例えば、撮像画像から、撮像画像における各画素の輝度値を求め、輝度値が所定の閾値よりも大きい発光画素P(検出画素)を特定する。
【0085】
点灯対象画素検出部32は、非検出画素があるか否かを判定する(S13)。非検出画素があるか否かの判定は、例えば、検出画素の個数が、設定された点灯対象画素の個数と一致するか否かにより行う。
【0086】
非検出画素があると判定した場合(S13で「有り」)、点灯対象画素検出部32は、非検出画素を特定し、当該非検出画素の情報を信号生成部35に出力する。
【0087】
非検出画素の特定は、例えば、以下の方法により行う。点灯対象画素検出部32は、予め、撮影画像上における点灯対象画素の検出されるべき位置を示す情報を取得しておく。点灯対象画素検出部32は、例えば、撮影画像における検出画素の位置から、検出画素がどの点灯対象画素に対応するかを特定する。具体的には、例えば、検出されるべき位置のうち、特定対象の検出画素から最も近い位置にある検出されるべき位置に対応する点灯対象画素を、現在の特定対象の検出画素に対応する点灯対象画素として特定してもよい。あるいは、検出されるべき位置から所定の範囲内にある検出画素を、当該検出されるべき位置に対応する点灯対象画素に対応する検出画素として特定してもよい。
【0088】
点灯対象画素検出部32は、点灯対象画素のうち、対応する検出画素がないと判定された点灯対象画素を非検出画素とし、当該非検出画素を特定する情報、例えば、当該非検出画素の有機ELパネル10上の座標等の情報を信号生成部35に出力する。
【0089】
信号生成部35は、非検出画素の位置情報を受け付けると、当該非検出画素の発光量を増大させるように、アライメント用信号を補正する(S14)。これにより、有機ELパネル10の非検出画素の発光量が増大することになる。なお、発光量の増大量は、本実施の形態では、一定量である。言い換えると、アライメント用信号の輝度値の増加幅が一定である。
【0090】
アライメント用信号の補正の後、有機ELパネル10の撮影(S11)に移行する。ステップS13において、非検出画素が無いと判定されるまで、有機ELパネル10の撮影(S11)、点灯対象画素の検出(S12)および非検出画素の判定(S13)を繰り返し実行する。
【0091】
点灯対象画素検出部32は、非検出画素がないと判定した場合(S13で「無し」)、アライメント部37に対し、アライメントを行うために必要な情報を出力する。アライメントを行うために必要な情報は、例えば、全ての点灯対象画素の撮像画像上における位置情報である。
【0092】
アライメント部37は、CCDの位置を調整する(S15)。アライメント部37は、例えば、撮像画像において実際に検出された点灯対象画素の位置と検出されるべき位置との間のずれ量が、全ての発光画素Pで均一になるように設定する。より詳細には、アライメント部37は、例えば、距離のピーク値が最小となるように、あるいは、距離の2乗平均誤差が最小となるように、CCDのZ軸方向の位置、角度θxzおよび角度θyz、および、有機ELパネル10の回転角度θxy、X軸方向およびY軸方向の位置を求める。そして、撮像装置移動機構60およびパネル移動機構50に、CCDおよび有機ELパネル10を移動させるための情報を出力する。
【0093】
信号生成部35は、アライメント後、有機ELパネル10に対し、有機ELパネル10の光量を測定するための検査用信号を出力する(S16)。
【0094】
撮像部36は、信号生成部35により検出用信号が出力されると、撮像装置40に有機ELパネル10を撮影させ、撮像画像を取得する(S17)。撮像部36は、撮像装置40から撮像画像を受け付けると、光量検出部33に撮像画像を出力する。
【0095】
光量検出部33は、撮像画像を受け付けると、撮像画像を用いて、有機ELパネル10を構成する発光画素Pそれぞれの光量の算出する(S18)。具体的には、撮像画像の各画素の輝度値を、各画素に対応する発光画素Pの発光量として求める。なお、1つの発光画素Pに複数の画素が対応している場合には、平均値あるいは中央値等を発光量として求めてもよい。
【0096】
補正量算出部34は、発光量情報を用いて輝度信号の補正量を求める(S19)。
【0097】
[4.効果等]
上記実施の形態の有機ELディスプレイの製造方法では、撮像装置のアライメントにおいて、点灯対象画素が検出できない場合に、当該点灯対象画素の輝度信号(アライメント用信号)を発光量が増大するように補正するので、点灯対象画素をより良好に検出することが可能になる。
【0098】
また、点灯対象画素が検出できるまで、発光量を順次増大させるように構成すれば、より確実に点灯対象画素を検出することが可能になる。
【0099】
さらに、上記実施の形態の有機ELディスプレイの製造方法では、点灯対象画素を、処理対象の領域の四隅だけでなく、長方形L2の四隅、および、十字L3上にも設定したので、撮像装置40のレンズ収差の影響を低減することが可能になる。
【0100】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、撮像装置40および有機ELパネル10を位置決めした後(S15)、有機ELパネルの点灯(S16)〜輝度信号の補正(S19)を実行しているが、これに限るものではない。アライメント後(S15)、再度、点灯対象画素のみを点灯させて有機ELパネル10を撮影し、アライメントが正常に行われたかを確認するように構成してもよい。
【0101】
(2)上記実施の形態では、有機ELパネル10の発光画素Pを3×3の9つの領域に分割し、各領域について
図6に示す処理を実行したが、これに限るものではない。分割数は、有機ELディスプレイの大きさに応じて任意に設定してよい。
【0102】
また、有機ELパネルの発光画素Pを分割せず、撮像装置40が1度の撮影で全ての発光画素Pを撮影するように構成してもよい。この場合、撮像装置40として、解像度(受光素子の数)が、検査装置30で検査できる最大の精度を持つ有機ELパネル10の発光画素Pの数よりも多い撮像装置が選択される。これにより、1度の撮影で、有機ELパネル10の全ての発光画素Pを検査することが可能になる。
【0103】
さらに、上記実施の形態において、長方形L2の四隅の少なくとも一つは、例えば、複数サイズの有機ELパネルの点灯検査を行うことが可能な場合に、最大サイズを除く他のサイズの有機ELパネル10の四隅の一つの位置に合わせて設定されてもよい。
【0104】
例えば、60インチの有機ELパネル10と、50インチの有機ELパネル10とを検査可能な場合、50インチの有機ELパネル10の左上の発光画素Pと、長方形L2の左上とが一致するように設定してもよい。同様に、50インチの有機ELパネル10の右上、左下、右下の発光画素Pと、長方形L2の右上、左下、右下が一致するように、長方形L2の大きさおよび位置を設定してもよい。
【0105】
(3)上記実施の形態では、(a)四隅の発光画素Pと(b)小さい長方形の四隅の発光画素Pと(c)十字状に並んだ発光画素Pとを、同時に撮影しアライメント(S10〜S15)したが、順次、撮影およびアライメントを実行するように構成してもよい。つまり、(a)四隅の発光画素Pに対する撮影からアライメント(S10〜S15)までの処理の後、(b)小さい長方形の四隅の発光画素Pあるいは(c)十字状に並んだ発光画素Pに対する処理を実行してもよい。
【0106】
(4)上記実施の形態では、点灯検査におけるアライメントについて例示したが、これに限るものではない。例えば、滅点の検査等、点灯検査前(発光量の補正前)に行われる製造工程であって、撮像装置を用いる他の製造工程に適用してもよい。
【0107】
(5)上記実施の形態において、
図6に示す点灯検査では、非検出画素が無くなるまでステップS11〜S14を繰り返し実行した。
【0108】
ここで、例えば、アライメント用信号が最大値に設定された場合でも非検出画素が生じる場合等には、代理の点灯対象画素を設定してもよい。代理の点灯対象画素は、例えば、非検出画素の隣接画素であってもよい。
【0109】
この場合、代理の点灯対象画素に対し、ステップS11〜S14を繰り返し実行しても良い。また、複数の代理の点灯対象画素を用意してもよい。この場合、検出可能な発光画素が見つかるまで、優先順位に従って代理の点灯対象画素を順次選択するように構成してもよい。
【0110】
(6)なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0111】
以上、一つまたは複数の態様に係る有機EL表示装置の製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。