(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一定のパルス幅を有する一定波長の第1のレーザ光と、前記第1のレーザ光よりもパルス幅及び波長の長い第2のレーザ光とを同一の光軸に合成してアモルファスシリコン膜に照射し、アニール処理するレーザアニール方法であって、
前記第2のレーザ光を発生して前記アモルファスシリコン膜に照射する段階と、
前記第1のレーザ光の発生タイミングを前記第2のレーザ光のパルス幅内で調整し、アニール処理に適用されるレーザ光の照射エネルギーを調整して前記アモルファスシリコン膜に照射することにより、前記第1のレーザ光により前記アモルファスシリコン膜の表面を溶融させた後、前記第2のレーザ光により前記アモルファスシリコン膜を深部まで溶融させる段階と、
を行うことを特徴とするレーザアニール方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のアニール装置においては、照射するレーザ光は単一波長の紫外線のレーザ光であったので、レーザ光の照射により例えばアモルファスシリコン膜が溶融すると紫外線のレーザ光の吸収率が低下するという問題があった。したがって、アモルファスシリコン膜の深部まで溶融が十分に行われず、ポリシリコン化が不十分となることがあった。
【0005】
また、1台の光源装置で発生した1つのレーザ光からスポット状の複数のレーザ光を生成して被アニール膜の複数個所を同時にアニール処理できるようにしようとした場合には、レーザ光の照射エネルギーが低下するため、レーザエネルギーのより大きな大型の光源装置が必要となり、アニール装置の製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
これらの問題に対しては、被アニール膜をレーザ光の複数ショットによりアニールすることも考えられるが、アニール処理効率が低下し、アニール処理工程のタクトが長くなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、レーザエネルギーの利用効率を向上してアニール処理を効率よく行い得るようにしたレーザアニール装置及びレーザアニール方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によるレーザアニール装置は、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してアニール処理するレーザアニール装置であって、一定のパルス幅を有する一定波長の第1のレーザ光を発生する第1のパルスレーザと、前記第1のレーザ光よりもパルス幅及び波長の長い第2のレーザ光を発生する第2のパルスレーザと、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光とを同一の光軸に合成する合成手段と、前記第1及び第2のパルスレーザに作用して前記第1及び第2のレーザ光の発生タイミングを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1のレーザ光の発生タイミングを前記第2のレーザ光のパルス幅内で調整
し、アニール処理に適用されるレーザ光の照射エネルギー
を調整
することによって、前記第1のレーザ光により前記アモルファスシリコン膜の表面を溶融させた後、前記第2のレーザ光により前記アモルファスシリコン膜を深部まで溶融可能としたものである。
【0009】
このような構成により、制御手段で第1のパルスレーザを制御して一定のパルス幅を有する一定波長の第1のレーザ光を発生し、第2のパルスレーザを制御して第1のレーザ光よりもパルス幅及び波長の長い第2のレーザ光を発生し、合成手段で第1のレーザ光と第2のレーザ光とを同一の光軸に合成してアモルファスシリコン膜に第1及び第2のレーザ光を照射してアニール処理する。このとき、制御手段で第1のレーザ光の発生タイミングを第2のレーザ光のパルス幅内で調整し、アニール処理に適用されるレーザ光の照射エネルギーを調整する
ことによって、第1のレーザ光によりアモルファスシリコン膜の表面を溶融させた後、第2のレーザ光によりアモルファスシリコン膜を深部まで溶融する。
【0011】
好ましくは、前記第1のパルスレーザは、波長が355nm又は532nmの前記第1のレーザ光を発生し、前記第2のパルスレーザは、波長が1064nmの前記第2のレーザ光を発生するのが望ましい。
【0012】
また、本発明によるレーザアニール方法は、一定のパルス幅を有する一定波長の第1のレーザ光と、前記第1のレーザ光よりもパルス幅及び波長の長い第2のレーザ光とを同一の光軸に合成してアモルファスシリコン膜に照射し、アニール処理するレーザアニール方法であって、前記第2のレーザ光を発生して前記アモルファスシリコン膜に照射する段階と、前記第1のレーザ光の発生タイミングを前記第2のレーザ光のパルス幅内で調整
し、アニール処理に適用されるレーザ光の照射エネルギーを調整して前記アモルファスシリコン膜に照射する
ことにより、前記第1のレーザ光により前記アモルファスシリコン膜の表面を溶融させた後、前記第2のレーザ光により前記アモルファスシリコン膜を深部まで溶融させる段階と、を行うものである。
【0013】
好ましくは、前記第1のレーザ光は、波長が355nm又は532nmであり、前記第2のレーザ光は、波長が1064nmであるのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1のレーザ光の照射によりアモルファスシリコン膜が溶融して該第1のレーザ光の吸収率が低下しても、該第1のレーザ光よりも波長の長い第2のレーザ光を吸収してアモルファスシリコン膜の溶融が進行し、アモルファスシリコン膜を深部までアニール処理することができる。したがって、従来技術における紫外線のレーザ光のみを使用する場合よりも、レーザエネルギーの利用効率を向上することができ、アニール処理を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明によるレーザアニール装置の実施形態を示す正面図である。このレーザアニール装置は、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してアニール処理するもので、光源装置1と、照明光学系2と、制御手段3とを備えている。
【0017】
上記光源装置1は、基板4上に成膜されたアモルファスシリコン膜5をアニール処理するためのレーザ光を生成するものであり、第1のパルスレーザ6と、第2のパルスレーザ7と、合成手段8とを含んで構成されている。
【0018】
ここで、上記第1のパルスレーザ6は、例えばパルス幅W
1が20nsecで波長λ
1が355nm又は532nmの第1のレーザ光L
1を発生するもので、例えば非線形光学結晶を用いて波長が1064nmの基本波から波長変換して生成する公知のYAGレーザである。なお、以下の説明においては、第1のレーザ光L
1がλ
1=355nmのレーザ光である場合について述べる。また、第1のパルスレーザ6は、YAGレーザに限られず、短波長のレーザ光を発生するものであれば、例えばエキシマレーザー等であってもよいが、ここでは、YAGレーザの場合について説明する。
【0019】
上記第2のパルスレーザ7は、第1のレーザ光L
1よりもパルス幅及び波長の長い第2のレーザ光L
2を発生するもので、例えばパルス幅W
2が350nsec、波長λ
2が1064nmのレーザ光を生成するYAGレーザである。なお、第2のパルスレーザ7は、YAGレーザに限られず、長波長のレーザ光を発生するものであれば、例えばCO
2レーザ等であってもよいが、ここでは、YAGレーザの場合について説明する。
【0020】
より詳細には、第2のパルスレーザ7は、
図2に示すように、共振器9と、光増幅器10と、レーザ用アッテネータ11と、を第2のレーザ光L
2の進行方向上流から下流に向かってこの順に配置して備えている。
【0021】
上記共振器9は、レーザ光を往復させて定在波を発生させるものであり、共振器ミラーとしてのフロントミラー12及びリアミラー13の間に、図示省略のフラッシュランプによって励起されてレーザ光を発生するレーザ媒質としての例えばND:YAGロッド14と、該ND:YAGロッド14の後方に配置され、偏光素子としての偏光ビームスプリッタ15、λ/4波長板16及びポッケルスセル17から成るQスイッチ18と、を備えて構成されている。
【0022】
この場合、上記ポッケルスセル17に対する印加電圧は、別に設けた図示省略の制御部によって漸減するように制御され、第2のレーザ光L
2のパルス幅を拡大することができるようになっている。
【0023】
これについて説明すると、
図3(a)に示すように、ポッケルスセル17に対する印加電圧を急激に引き下げる通常の制御に対して、同図(b)に示すようにポッケルスセル17に対する印加電圧を漸減するよう制御した場合には、パルス幅が例えば10nsから70nsへと拡大される。これは、共振器9内での発振において、Qスイッチ18からの戻り出力エネルギーが時間軸で徐々に増加すると共に通常のエネルギーよりも低いため、ND:YAGロッド14内のエネルギーの取り出しもゆっくりとなり、Qスイッチ18内でのパルス発振時間が伸びて、出力されるパルス幅が長くなったのである。
【0024】
さらに、ポッケルスセルに対する印加電圧の漸減勾配に、
図4に示すような、少なくとも1回の変曲点が生じるように印加電圧を制御すれば、パルス幅をさらに拡大することができる。このように、ポッケルセル17に対する印加電圧を制御することにより、パルス幅W
2が350nsecの第2のレーザ光L
2を生成することができる。
【0025】
また、上記共振器9の下流には、光増幅器10が設けられている。この光増幅器10は、レーザ光のパルスエネルギーを増幅して出力するもので、例えばND:YAGロッドが使用される。
【0026】
さらに、上記光増幅器10の下流には、レーザ用アッテネータ11が設けられている。このレーザ用アッテネータ11は、第2のレーザ光L
2のエネルギーを低減するもので、
図5に示すように、第2のレーザ光L
2の光路上にクロスニコルに配置された偏光素子としての第1及び第2の偏光ビームスプリッタ19A,19Bと、該第1及び第2の偏光ビームスプリッタ19A,19Bの間に、入射する直線偏光(例えばP偏光)に対して光学軸が45°を成すように配置され、電圧の印加により内部を通過するレーザ光の偏光面を回転させる電気光学素子としてのポッケルスセル20と、該ポッケルスセル20に対する印加電圧値及び印加タイミングを制御する制御部21と、を備えて構成されている。
【0027】
本実施形態において使用するポッケルスセル20は、一例として最大−3.6kVの電圧印加によりλ/4波長板の効果が得られるものであり、第1及び第2のポッケルスセル20A,20Bを直列に並べて配置すると共に印加電圧を最大−3.6kVで並列制御することによって、第1及び第2のポッケルスセル20A,20Bの組合せでλ/2波長板の効果が得られるようになっている。この場合、第1及び第2のポッケルスセル20A,20Bの印加電圧を、例えば0kV〜−3.6kVまで変化させたとき、レーザ用アッテネータ11の光透過率は0%〜100%まで変化することになる。
【0028】
また、上記レーザ用アッテネータ11は、ポッケルスセル20の印加電圧を時間により制御することにより、1パルスのレーザ光の包絡線をならし、レーザエネルギーを時間軸に沿って均一にすることができる。例えば、レーザ用アッテネータ11に、
図6(a)に示すような時間t
n内に過大なパルスエネルギーを放出するロングパルスの第2のレーザ光L
2が入力する場合、例えばこのパルスエネルギーを50%低減しようとするときには、時間t
n内の第1及び第2のポッケルスセル20A,20Bへの印加電圧を−1.8kVとし、時間t
n経過後は、−3.6kVに制御する。
【0029】
これにより、最初の時間t
n内にレーザ用アッテネータ11を透過する第2のレーザ光L
2の透過率が50%に低減され、時間t
n経過後は、透過率が100%となる。したがって、
図6(a)に示すロングパルスの第2のレーザ光L
2は、最初の時間t
n内のレーザ強度が50%低減され、時間t
n経過後のレーザ強度は、元の強度がそのまま維持されることになる。その結果、
図6(b)に示すように1パルス内のレーザ強度が全幅に亘って略一定になる。
【0030】
なお、
図2において、符号22は、偏光ビームスプリッタであり、符号23は、レーザビームの径を拡張するビームエキスパンダであり、符号24は、反射ミラーである。
【0031】
上記第1のパルスレーザ6の光路と上記第2のパルスレーザ7の光路との合流点には、合成手段8が設けられている。この合成手段8は、第1のレーザ光L
1と第2のレーザ光L
2とを同一の光軸に合成するものであり、例えばλ
1=355nmの第1のレーザ光L
1を透過し、λ
2=1064nmの第2のレーザ光L
2を反射させるダイクロイックミラーである。
【0032】
上記光源装置1の下流側には、照明光学系2が設けられている。この照明光学系2は、基板4上のアモルファスシリコン膜5の予め定められた被アニール領域にレーザ光を照射させるものであり、レーザ光の進行方向上流から下流に向かって、第1のフライアイレンズ25と、第1のコンデンサレンズ26と、第2のフライアイレンズ27と、ビームスキャナ28と、第2のコンデンサレンズ29とを備えて構成されている。
【0033】
上記第1のフライアイレンズ25は、レーザ光の横断面内の強度分布を均一にすると共に、レーザ光の光束を拡大するビームエキスパンダの機能を果たすものであり、同一平面内に複数の凸レンズを並べて備えたものである。
【0034】
光軸上にて上記第1のフライアイレンズ25の後焦点に前焦点を合致させて第1のコンデンサレンズ26が設けられている。この第1のコンデンサレンズ26は、第1のフライアイレンズ25を射出した後、発散するレーザ光の光束を後述の第2のフライアイレンズ27に入射するように絞るためのものである。
【0035】
上記第2のフライアイレンズ27は、レーザ光の横断面内の強度分布を均一にするためのものであり、同一面内に複数の凸レンズを並べて備えた1対のレンズアレイを対応する凸レンズの中心軸が合致するように対向配置した構成となっている。
【0036】
上記ビームスキャナ28は、互いに垂直な方向に偏向動作を行う角柱状の第1及び第2の電気光学結晶素子30,31、及び該第1及び第2の電気光学結晶素子30,31間にレーザ光の偏光面を90°回転して第2の電気光学結晶素子31の結晶軸に合わせるλ/2波長板32を備えて構成されており、第1及び第2の電気光学結晶素子30,31の光軸に平行な対向面に夫々1対の電極33A,33Bが設けられている。この場合、第1の電気光学結晶素子30の1対の電極33Aと第2の電気光学結晶素子31の1対の電極33Bとは、取付け位置が光軸を中心に互いに90度ずれた関係をなしている。
【0037】
上記第2のコンデンサレンズ29は、上記第2のフライアイレンズ27の光軸上の後焦点位置に前焦点を合致させて設けられており、基板4上に照射するレーザ光を平行光にする機能を果たす。
【0038】
上記光源装置1の第1のパルスレーザ6と、第2のパルスレーザ7とに電気的に接続して制御手段3が設けられている。この制御手段3は、第1及び第2のパルスレーザ6,7に作用して第1及び第2のレーザ光L
1,L
2の発生タイミングを制御するもので、詳細には、第1のレーザ光L
1が第2のレーザ光L
2のパルス幅W
2内の予め定められたタイミングで発生するように第1のパルスレーザ6を制御するようになっている。
【0039】
より詳細には、制御手段3は、第1のパルスレーザ6を制御して第1のレーザ光L
1の発生タイミングを第2のレーザ光L
2のパルス幅W
2内で調整できるようにしている。これにより、アモルファスシリコン膜5に照射するレーザ光の照射エネルギーを適宜調整することができる。
【0040】
次に、このように構成されたレーザアニール装置の動作について説明する。
先ず、表面にアモルファスシリコン膜5を成膜した基板4を上面に載置した図示省略のステージが、その上面に平行な面内を二次元方向に移動されて基板4上の被アニール領域の中心が照明光学系2の光軸に合致される。
【0041】
次に、第2のパルスレーザ7のポッケルスセル17の印加電圧の漸減勾配が図示省略の制御部によって予め定められた漸減勾配となるように制御され、例えばパルス幅W
2=350nsec、波長λ
2=1064nmのロングパルスの第2のレーザ光L
2が生成される。
【0042】
この第2のレーザ光L
2は、後続の光増幅器10によって一定レベルまで増幅された後、レーザ用アッテネータ11の第1及び第2のポッケルスセル20A,20Bの印加電圧を並列制御することによって、予め実験により確認されたアニール処理に必要十分なエネルギー強度まで低減される。また、同時に、
図7(b)に示すように1パルス内のレーザ強度が全幅に亘って略一定にされる。そして、第2のレーザ光L
2は、合成手段8のダイクロイックミラーで反射して後段の照明光学系2に入射する。
【0043】
一方、制御手段3により制御されて第1のパルスレーザ6が第2のパルスレーザ7の駆動から一定時間遅れて駆動され、例えばパルス幅W
1=20nsec、波長λ
1=355nmの、例えば
図7(a)に示すようなショートパルスの第1のレーザ光L
1が生成される。そして、この第1のレーザ光L
1は、合成手段8のダイクロイックミラーを透過して、第2のレーザ光L
2と同一の光軸に合成されて照明光学系2に入射する。
【0044】
上記合成された第1及び第2のレーザ光L
1,L
2は、照明光学系2によりビーム径が拡大され、強度分布が均一にされた後、ビームスキャナ28によって基板4表面上を二次元方向に偏向されて照射位置が調整される。これにより、第1及び第2のレーザ光L
1,L
2の干渉縞なく基板4上にレーザ光を照射することができる。その結果、該被アニール領域のアモルファスシリコン膜5は、溶融再結晶化してポリシリコンに相変化する。
【0045】
ここで、第1及び第2のレーザ光L
1,L
2によるアニール処理について、より詳細に説明する。
図8に示すように、一般に、シリコン(Si)は、レーザ光の波長が長くなるほど光吸収率が低下することが知られている。したがって、一般に、アモルファスシリコン膜5をアニール処理する場合には、光吸収率の高い、例えば波長が355nm等の紫外線のレーザ光が使用されている。
【0046】
一方、溶融したシリコンは、紫外線の吸収率が低いことも知られている。したがって、紫外線レーザ光の照射エネルギーが十分に高くない場合には、紫外線レーザ光の照射によりアモルファスシリコン膜5の表面が溶融すると、その後の紫外線レーザ光の吸収率が低下してアモルファスシリコン膜5の深部まで十分に溶融させることができない場合が起こり得る。それ故、アモルファスシリコン膜5を深部まで十分にポリシリコン化することができない場合もあり得る。
【0047】
これに対して、
図8に示すように、長波長の例えば1064nmのレーザ光は、シリコンに吸収され難いため、一般には、レーザアニール処理に使用されることがない。しかし、長波長のレーザ光は、溶融したシリコンには吸収され易くなることも知られている。
【0048】
そこで、本発明においては、先ず、短波長の第1のレーザ光L
1によりアモルファスシリコン膜5を溶融させた後、長波長の第2のレーザ光L
2によりアモルファスシリコン膜5を深部まで溶融させるようにしたものである。
【0049】
詳細には、
図9(a)に示すように、第2のレーザ光L
2を発生してアモルファスシリコン膜5に照射した後、該第2のレーザ光L
2のパルス幅W
2内にて一定のタイミング、例えば第2のレーザ光L
2の発生時刻(パルスの立ち上がり時刻)からt=100nsec後のタイミングで第1のレーザ光L
1を発生させる。この場合、第1のレーザ光L
1が照射されるまでは、アモルファスシリコン膜5は第2のレーザ光L
2を吸収しないため、アモルファスシリコン膜5は溶融しない。しかし、第1のレーザ光L
1の照射により、アモルファスシリコン膜5が一旦溶融すると、その後は、アモルファスシリコン膜5は第2のレーザ光L
2を吸収してより深く溶融する。この場合、第1及び第2のレーザ光L
1,L
2において、アモルファスシリコン膜5のアニール処理に適用されるエネルギーは、同図(a)の斜線を付した領域のエネルギーである。
【0050】
本発明においては、第1のレーザ光L
1の発生タイミングを第2のレーザ光L
2のパルス幅W
2内で適宜調整することによって、レーザ光の照射エネルギーを調整することができるようになっている。例えば、
図9(b)に示すように、第2のレーザ光L
2の発生と同時に第1のレーザ光L
1を発生させた場合には、アモルファスシリコン膜5のアニール処理に適用されるエネルギーは、同図(b)の斜線を付した領域のエネルギーとなり、同図(a)に比べて照射エネルギーを増やすことができる。当然ながら、その逆も可能である。
【0051】
なお、上記実施形態においては、アモルファスシリコン膜5上の1箇所の被アニール領域をアニール処理する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、例えば照明光学系2の第2のコンデンサレンズ29の光射出側に、複数の被アニール領域に対応して複数のマイクロレンズを並べて備えたマイクロレンズアレイを配置し、1つの合成レーザ光から複数の合成レーザ光を生成して複数の被アニール領域を同時にアニール処理できるようにしてもよい。この場合、レーザエネルギーの利用効率が従来技術に比して高いため、使用するパルスレーザは従来技術よりもパワーの小さいものを適用することができる。
【0052】
また、基板4を上記マイクロレンズの並び方向と交差する方向に一定速度で搬送しながら、事前に撮像手段により撮影して複数の被アニール領域を検出し、該被アニール領域が検出されてから基板4が一定距離移動して上記複数の被アニール領域がマイクロレンズアレイの複数のマイクロレンズの真下に達したときに、第1及び第2のレーザ光L
1,L
2を発生させるように第1及び第2のパルスレーザ6,7を制御してもよい。これにより、基板4の搬送方向と交差する方向の列状の複数の被アニール領域を一括アニール処理すると共に、基板搬送方向に順繰りにアニール処理して基板4の全面に亘ってアニール処理することができる。