(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
遠心塗抹装置に用いられ、液体検体を収容してスライドガラスに対して液体検体中の細胞を遠心力によって塗抹させるようにスライドガラスを着脱可能なチャンバーを収納する密閉回転容器であって、
前記チャンバーを収納可能な本体と、該本体の上面開口部を閉塞する蓋とを備え、
前記蓋の外縁部が水平面となって外方に突出し、外縁部先端を挟み込み前記本体の上面開口部の端面に形成された平面部に載置されるパッキンが取り付けられて、本体の上面開口部の端面との間をシールするシール部が構成され、
シール部の内側には、液体がシール部に飛散しないように、下方に向けて突出してシール部を内側から隠ぺいする飛散保護壁が形成され、
該飛散保護壁は、シール部が設けられている前記外周縁よりも下方に延び、蓋の下方を一周するリング状であって、受けた液体が外側下方に流れるように外側に向けて傾斜して設けられていることを特徴とする密閉回転容器。
【背景技術】
【0002】
例えば、体液、血液及び尿など人体から採取した液体から細胞を遠心分離し、分離した細胞をスライドガラス上に塗抹する遠心塗抹装置が従来より知られている。
特許文献1に、従来からの遠心塗抹装置が開示されている。この従来の遠心塗抹装置を
図12に示す。従来の遠心塗抹装置は、モータ1を備えた基体2と、基体2内に装着してモータ1の駆動により回転する密閉回転容器3とを備える。
密閉回転容器3内には、液体検体を収容するチャンバー4が複数個収納できる。チャンバー4には、ホルダによってスライドガラスが取り付けられる。
【0003】
密閉回転容器3は、本体7と、本体7の上面開口部を覆う蓋8とを有する。本体7の内部は、チャンバー4を載置するためのロータ6が設けられている。
本体7の上端縁部は、外方に突出する平面部9と、平面部9の先端部で上方に突出する突起部5とが形成されている。
蓋8は、外縁部が外方に向けて突出する平面部17と、平面部17の先端部に設けられたゴム等のシール部材18とを有している。
【0004】
本体7に、蓋8を被せると、本体7の上端縁部の平面部9に、蓋8の平面部6が載置される。また蓋8のシール部材18が本体7の突起部5に当接する。これにより、本体7と蓋8との間のシール部を構成し、本体7の内部から外部に液体が漏れることを防止している。
【0005】
ところで、チャンバーは液体を収容する漏斗状の収容部が形成され、この収容部の底部の側面には外方に向けた通路が形成されている。チャンバーを回転させて遠心力をかけた際には、液体検体がこの通路を通って外方に移動する。通路の外方には開口部が形成されており、開口部の外方にはスライドガラスが配置される。
開口部とスライドガラスとの間には、開口部とスライドガラスとの間を密閉するためにゴムパッキンや濾紙が配置される。濾紙を配置した場合には、細胞はスライドガラスに塗抹して液状成分は濾紙よりしみ出るため、液体検体中の限られた浮遊細胞を効率よく採取できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に本実施形態にかかる遠心塗抹装置の側面を示す。
遠心塗抹装置30は、回転駆動手段としてのモータ32を有する基体31と、基体31内に収納される密閉回転容器34とを備える。
図1では、基体31の構成は概略構成として示している。
基体31のモータ32の回転軸には、駒37が取り付けられている。密閉回転容器34は、中央に形成されているハウジング35に駒37が進入するように配置される。モータ32が回転駆動することによって、駒37を介して密閉回転容器34が回転する。
【0017】
図2には密閉回転容器の側面図を、
図3には密閉回転容器の平面図を示す。
図4は、密閉回転容器の本体のみの側面図を示す。
密閉回転容器34は、チャンバー10を収納可能な本体40と、本体40の上面開口部を閉塞して密閉する蓋42とを備える。
本体40は、容器状の部材であり、中央部は、上方に盛り上がって基体31に装着させるハウジング35として形成されている。このため、本体40は、中央部以外の外周部分がリング状の収納部分として機能する。
【0018】
ハウジング35は、基体31のモータ32等が配置されている部分を収納する下段部35aと、上述した駒37が収納される上段部35bとを有している。上段部35bは下段部35aよりも小径である。このため、下段部35aの下端と、上段部35bの上端との間に段差47が形成される。
下段部35aと、上段部35bとは別部材で構成されており、取付ねじ105によって下段部35aと、上段部35bとが取り付けられている。
【0019】
ハウジング35の駒37が収納される上段部35bのさらに上部には、蓋42を装着させる装着部71が形成されている。装着部71の上端部には、蓋42と密着してシール性を確保するためのVリング110が設けられている。
装着部71は、ハウジング35の上段部35bから上方に向けて突出する筒状の立ち上がり部74と、蓋42のつまみ部70(後述する)に設けられた固定用ハブ84(後述する)が挿通される挿通部78とを有している。挿通部78の外壁には、外方に突出する把持部79が形成されている。
【0020】
本体40の中心に把持部79を形成した理由は以下の通りである。
すなわち、密閉回転容器34としては、検体として感染レベルの低いものや、ゴムでシールされたチャンバー10を採用する場合、または検体量の少ない場合には蓋42を装着せずに、遠心塗抹処理を行う場合もある。
このような場合、作業者は、本体40を持って作業する際には、本体40の中心部分に設けられた把持部79を把持して作業を行うことが可能となる。
【0021】
また、本体40内には、複数のチャンバー10を装着できるローター44が着脱可能に配置される。
ローター44は、中央に開口部44aが形成されている。ローター44は、中央の開口部44aにハウジング35の上段部35bを挿入し、開口部44aの周縁が段差47に載置されることで、本体40に取り付けられる。
また、ローター44の開口部44aの周縁には、複数個所につまみねじ49が設けられている。つまみねじ49によって、ローター44の開口部44aの周縁と本体40の段差47とが固定される。
【0022】
ローター44は平面視するとほぼ円盤状の部材39,39が上下方向に所定間隔を開けて2枚設けられているものである。2枚の円盤状の部材39,39には、チャンバー装着用の角穴45が複数形成されている。
それぞれの角穴45は、2枚の円盤状の部材39,39を連通して形成されており、角穴45内に挿入されたチャンバー10は、2枚の円盤状の部材39,39によってその上部と下部が支持され、ローター44に固定される。
また、複数の角穴45は、平面視すると台形に近い形状であって、円盤の径方向に長辺が位置し短辺が周方向に位置する。そして、複数の角穴45は、円盤の中心に対して均等な位置に形成されており、回転時にバランスが保持される。
【0023】
次にチャンバー10について説明する。本発明の遠心塗抹装置で用いるチャンバー10の構造は特に何らかの構造のものに限定するものではなく、公知のものを採用することができる。
図1〜
図3に示したチャンバーは左右で異なる形態のチャンバーを図示しているが、基本的な機能は同一である。
本発明に用いることができる一般的チャンバーとしては、液状検体を収容する収容部11と、スライドガラス19を把持するホルダ12とを備える。
収容部11は、上部に開口した上下流通部13と、ホルダ12側に開口した貯留部14を有する。
【0024】
貯留部14からホルダ12側に開口した開口部15の周囲にはゴム製などのパッキン又は濾紙を配置させることができる(図示せず)。パッキンは開口部15のシール性を確保するためのものである。また、濾紙を配置することにより、液状検体の液状成分を吸い取りながら、液状成分から分離した浮遊細胞をスライドガラス19に塗抹させることができる。
なお、チャンバー10に濾紙を配置したとしても、収容部11内に収容させた液状検体の量が多い場合などには、遠心時に濾紙を経由して密閉回転容器34内に飛散してしまうことがある。そこで、以下に説明する密閉回転容器34の構造により、飛散した液状成分を貯留することができる。
【0025】
密閉回転容器34の本体40は、チャンバー10から飛散した液状成分(以下、単に液体と称する場合がある)を貯留する貯留部46を有している。
貯留部46は、本体40の内側面が外方に向けて突出する(外方に向けて凹となる)ように構成されている。そして貯留部46の壁面は、上下方向に垂直な壁面として構成されている。このため、貯留部46に貯留している液体に遠心力がかかっても液体が上昇する方向に力を受けることはない。
【0026】
貯留部46の上端部には、内方に突出する突起部48が形成されている。この突起部48が形成されていることにより、貯留部46に貯留されている液体が上方へ移動することが抑えられる。
本実施形態の突起部48は、本体40の外側から見るとくびれである。これは本体40を構成する金属製の部材を外側から凹ませることで、内方に突出する突起部48を形成したことによるものである。ただし、本発明の突起部としては、本体40を構成する部材とは別部材のものを貯留部46の上端部に取り付けることにより、突起部48としてもよい。
【0027】
本体40の突起部48の上方には、蓋42を載せるための平面部50が形成されている。平面部50は、外方に向けた水平面である。平面部50の外縁部は上方に向けて折り曲げられた折り曲げ部52である。
この平面部50と折り曲げ部52に、蓋42の外縁とパッキン(後述する)が載置されることにより、密閉回転容器34のシール部が構成される。
【0028】
次に、貯留部に設ける偏荷重防止機構について説明する。
密閉回転容器34の設定回転数上には、振動共振点が複数存在する。すなわち、回転開始から最大回転数に至るまでに複数の振動共振点を通過し、また最大回転数から停止に至るまでにも複数の振動共振点を通過することとなる。振動共振点においては、密閉回転容器34がバランスを崩しやすくなり、貯留部46に貯留されている液体が突起部48を乗り越えてシール部に侵入してしまうおそれもある。また、密閉回転容器34がバランスを崩すことによって、密閉回転容器34が基体31内でがたつきながら回転して危険であるという問題も生じる可能性もある。
【0029】
そこで、本実施形態では、特に振動共振点だけではなく、密閉回転容器34がバランスよく回転するために、貯留部46に貯留されている液体が偏荷重しないような構成を採用している。
図4に、偏荷重防止機構を設けた場合の密閉回転容器の側面を示し、
図5に、偏荷重防止機構を設けた場合の貯留部に貯留される液体の様子の概略を示す。
本実施形態では、偏荷重防止機構として、貯留部46の壁面から内方に突出し、上下方向に延びる複数本のリブ55を示す。ここで示すリブ55は、断面四角形状であるが、
図3に示されているように、断面が曲線で形成された山型状に形成されていてもよい。
【0030】
複数本のリブ55は、上下方向に延びているので、貯留部46内に貯留されている液体を周方向に仕切る機能を有する。このため、貯留部46内の液体が周方向に偏りを生じてしまうことを防止することができる。
なお、各リブ55の上下方向の上端部は、少なくとも突起部48の位置まで形成されていることが好ましい。このようにすることで、貯留部46内の液体が突起部48を乗り超えることを防止できる。
【0031】
なお、
図5では、リブ55を4か所に設け、それぞれのリブ55が均等位置に配置されるようなものを示した。しかしながら、リブ55の数は4つに限定するものではなく、他の本数でも良いが、リブ55とリブ55との間隔は均等にあけることが必要である。
【0032】
続いて、偏荷重防止機構の他の実施形態を説明する。
図6には、貯留部46の内壁面の一部分を示している。
この実施形態では、貯留部46の内壁面に細かい凹凸が形成されている。この凹凸によって、貯留部46内の液体と貯留部46の内壁面との間の摩擦抵抗を大きくし、貯留部46内の液体の移動を妨げることで荷重の偏りを防止することができる。ここで示す例としては、深さ1mm幅1mm程度の溝51を、所定間隔ずつあけて、貯留部46の内壁面に上下方向に沿って形成している。このように、上下方向に延びる筋状の凹凸が形成されることで、貯留部46に貯留された液体の偏荷重防止機能を達成することができる。
【0033】
さらに、偏荷重防止機構の他の実施形態を説明する。
図7には、ローター44の外周縁に、外方に突出する仕切り56を複数設けたところを示している。
この仕切り56の径方向の長さは、貯留部46内に進入する長さであるが、貯留部46の壁面には当接しないように形成されている。
仕切り56の上下方向の長さは、貯留部46内に進入可能で、できるだけ長く形成されているとよい。この仕切り56が、貯留部46内の液体内を仕切り、上述したリブ55と同様の機能を奏する。すなわち、仕切り56は、貯留部46内に貯留されている液体を周方向に仕切る機能を有する。このため、貯留部46内の液体が周方向に偏りを生じてしまうことを防止することができる。
【0034】
なお、
図7では、仕切り56を4か所に設け、それぞれの仕切り56が均等位置に配置されるようなものを示した。しかしながら、仕切り56の数は4つに限定するものではなく、他の本数でも良いが、仕切り56と仕切り56との間隔は均等にあけることが必要である。
【0035】
なお、上述したリブ55と、細かい凹凸(溝51)については、密閉回転容器34の本体40に直接形成したものであった。
しかし、リブ55や溝51は、本体40とは別体の別部材として構成してもよい。例えば
図8に示すように、貯留部46内に装着できるように、周方向に複数に分割した筒状の部材58を設け、この部材の内壁面に複数のリブ55を形成するようにしてもよい。
同様に、貯留部46内に装着できるように、周方向に複数に分割した筒状の部材58の内壁面に、貯留部46内の液体と貯留部46の内壁面との間の摩擦抵抗を大きくするための細かい凹凸(溝51)を形成してもよい(図示せず)。
なお、
図8に示す部材58は、貯留部46に装着することができればよく、特に周方向に分割された筒状でなくてもよい。
【0036】
さらに、貯留部46とは別体として偏荷重防止機構を設ける場合、
図8のような部材を本体40内に装着する構成に限定するものではなく、リブ55のみを貯留部46とは別体に構成して、貯留部46内に装着してもよい。
【0037】
次に、
図9に基づいて、蓋の構成について説明する。
蓋42は、本体40の上面開口部を完全に覆って密閉できる構成となっている。蓋42は、強化ガラスや強化プラスチック等の透明な材料で形成することで、内部の様子を観察することができる。
【0038】
まず、蓋のシール部分について説明する。
蓋42には、本体40の平面部50に載置させるためのシール部100が形成されている。シール部100は、蓋42の外縁が水平面となって、外方に突出する部位である。シール部100の先端部(蓋42の外縁部先端)には、蓋42のシール部100を挟み込むように断面コの字状のパッキン102が取り付けられる。パッキン102としてはゴム製である。このように蓋42側にパッキン102を装着することによって、シール部100のシール性の確保とともに、蓋42の着脱の容易性を確保することができる。
パッキン102の厚さは、本体40の平面部50の折り曲げ部52内にパッキン102が収納できる程度の厚さとして形成されている。
【0039】
また、蓋42のシール部100の内側には、シール部100を内側から隠ぺいして液体がシール部100に飛散しないように保護する飛散保護壁120が形成されている。
飛散保護壁120は、蓋42の内壁面から下方に向けて突出し、蓋42の下方を一周するリング状に形成されている。飛散保護壁120は、飛散した液体をシール部100側に侵入させないように保護する機能とともに、受けた液体を下方に流す機能を有している。
【0040】
飛散保護壁120は、外側に向けて傾斜しているとよい。つまり、遠心塗抹処理中に飛散した液体は、飛散保護壁120に当接すると、遠心力によって外方に移動する力が働く。このとき、飛散保護壁120が外側に向けて傾斜しているので、液体は飛散保護壁に沿って外側下方に斜めに落下するようになる。飛散保護壁120の外側斜め下方には、貯留部46が形成されているので、落下した液体は貯留部46に貯留される。
【0041】
次に、蓋のつまみ部について説明する。つまみ部を拡大したところを
図10に示す。
また、本体の装着部とともにつまみ部を拡大したところを
図11に示す。
蓋42の中央に金属製のつまみ部70が設けられている。つまみ部70は、蓋42を作業者が操作する際に把持する機能と、本体40との接続を行う機能の2つの機能を有している。
【0042】
つまみ部70は、平面視円形の外延部80が形成された本体81と、上下動可能な軸部82を備えている。本体の中央には、軸部82が上下動可能に挿入されている挿入孔83が形成されている。本体81の下方には、下方に突出して固定用ハブ84が設けられている。固定用ハブ84は筒状であって、本体81の挿入孔83と連通した中心孔87が形成されている。
軸部82の上端部には、上方に向けて徐々に大径となるつまみ用大径部60が設けられている。
そして、軸部82の下端部は、先端が小径となるテーパ状に形成されており、固定用ハブ84の中心孔87内に挿入されている。
【0043】
固定用ハブ84の側面には、中心孔87と外部とを連通する連通孔89が形成されている。この連通孔89内には、金属球88が孔内を移動可能に設けられている。金属球88が連通孔89内で外方へ移動すると、固定用ハブ84の外側に突出できる。連通孔89は、外方に向けて徐々に小径となっており、金属球88の一部は固定用ハブ84の外部に突出するが、金属球全体は固定用ハブ84の外部には突出しないようになっている。
なお、本実施形態では、連通孔89は互いに均等間隔を開けて3か所に形成しており、それぞれに金属球88が設けられているので、回転時であっても重量バランスが保持される。
【0044】
この金属球88によって、蓋42と本体40が固定される。すなわち、蓋42を本体40に固定する際には、作業者は、軸部82を、本体40の装着部71の挿通部78内に挿入する。
すると、連通孔89に配置されている金属球88に、軸部82のテーパ状の先端部の側面が当接する。作業者が軸部82を押し下げていくと、軸部82の下降に伴って金属球88は、外方へ移動し、一部が連通孔89の外方に突出する。
こうして固定用ハブ84の外方に突出した金属球88は、本体40の装着部71の挿通部78の下端面に当接する。このように、固定用ハブ84の金属球88が挿通部78に当接することによって、蓋42が本体40に固定される。
【0045】
軸部82の上下動の範囲は、軸部82の中途部に形成したフランジ部112によって規制される。
すなわち、固定用ハブ84の中心孔87の所定箇所には、フランジ部112が移動可能な大径部114が形成されている。軸部82を下降させた際は、大径部114の下面にフランジ部112が当接してこの位置が最大下降位置となり、軸部82を上昇させた際は、大径部114の上面にフランジ部112が当接してこの位置が最大上昇位置となる。
【0046】
続いて蓋のつまみ部に空気穴を形成した構造について説明する。
塗抹処理の終了後、本体40から蓋42を取り外そうとしても、外れないという事態が生じる場合がある。これは、密閉回転容器34使用後に、熱湯による殺菌又は蒸気滅菌処理を行い、その後温度が下がっていない状態で蓋42を本体40に固定してしまった場合に、内部が負圧になってしまうことによるものである。
【0047】
このように、密閉回転容器34内部が負圧になってしまったときに、蓋42を本体40から容易に取り外すべく、本実施形態では、以下のような構成を採用している。
つまり、つまみ部70の軸部82を持ち上げた(上方へ移動させた)際に、密閉回転容器34の内部と外部とが連通するような機構にしている。具体的には、
図12に示すように、蓋42の取り外すためにつまみ部70の軸部82を持ちあげた際に、密閉回転容器34の内部と外部が連通する空気穴90を軸部82に形成している。
【0048】
軸部82の空気穴90は、軸部82を持ち上げた状態のときにつまみ部70の本体81の上面より上方位置に形成された外開口部92と、軸部82を持ち上げた状態のときにつまみ部70の本体81の下方(密閉回転容器34の内部)に位置する内開口部94とを連通して形成されている。
外開口部92は、軸部82の側面の複数個所に形成され、内開口部94は、軸部82の下側の側面に形成されている。外開口部92と内開口部94を連通するように、空気穴90は軸部82の中心軸に沿って形成されている。
そして、軸部82を上昇させたときに、軸部82の内開口部94と連通する連通孔104が、固定用ハブ84の大径部114に形成されている。連通孔104は、Vリング110の中央開口部の内壁側に開口している。
【0049】
このような空気穴90を形成したことによる作用は、以下の通りである。
塗抹処理開始前に、蓋42を本体40に装着する際に、作業者がつまみ用大径部80を押して軸部82を下降させると、外開口部92はつまみ部70の本体81の挿入孔83内に入り込んで外部からは隠される。このため、空気穴90は閉塞されて密閉回転容器34の内部が密閉される。
【0050】
塗抹処理終了後、作業者がつまみ用大径部80を引っ張る(上昇させる)と、軸部82に形成された外開口部92が挿入孔83から外部に露出する。これにより、外開口部92、空気穴90、内開口部94、連通孔104を介して密閉回転容器34の外部から内部へ空気が導入される。
したがって、密閉回転容器34の内部が負圧になったとしても、蓋42の取り外し時には、外部から空気を導入させることができるので、内部の負圧を解消し、蓋42を容易に取り外すことができる。
【0051】
また、軸部82の外周にはOリング96を装着するとよい。
Oリング96の装着位置は、常にOリング96がつまみ部70の本体81の挿入孔83内に配置される位置である。すなわち、軸部82を持ち上げた状態のとき及び軸部82を押し下げた状態のときに、Oリング96と挿入孔83との間で生じる抵抗力が軸部82に与えられる。
また、このOリング96による軸部82の摺動抵抗力により、作業者が軸部82を保持していなくても、重力によって軸部82が勝手に下降せずにその位置に保持される。
【0052】
このように、つまみ部70の軸部82にOリング96を設けることによって、ワンプッシュ(1回だけ軸部82を押圧するだけ)で蓋42と本体40とが固定される。すなわち、軸部82に何ら抵抗力が無い状態であると、作業者が軸部82を持っていない時は、軸部82は重力によって下降した状態になってしまっており、軸部82を再度上昇させないと軸部82を押し込んで本体40と固定することができなかった。
しかし、本実施形態のように、軸部82にOリング96を設けたことで、蓋42を取り外した後であっても本体40への固定が容易に行われる。
【0053】
なお、蓋42と本体40との固定のために軸部82をワンプッシュで押し下げできる構成としては、軸部82の外周にOリング96を装着する以外にも、例えばスプリングを軸部82と挿入孔83の内壁面との間で付勢力を付与するように設けることも考えられる。
しかしながら、スプリングによって軸部82に摺動抵抗力を付与するようにすると、密閉回転容器34が振動した場合に、スプリングのわずかな反力によって軸部82が浮き上がり、蓋42と本体40の固定が解除されてしまうおそれがある。したがって、軸部82を挿入孔83内で摺動抵抗を付与するためには、スプリングよりもOリングの方が好ましい。