(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タイヤ(10)が複数の前記スタッド(30)を備え、前記タイヤ内で前記トレッド(20)が、前記第2のゴム組成物から形成された複数の前記第2の部分(202)を備え、各々のスタッド(30)の前記頭部(70)が、前記トレッド(20)の別々の第2の部分(202)内に全体が固定される、
請求項1に記載のタイヤ。
前記タイヤ(10)が複数の前記スタッド(30)を備え、前記タイヤ内で前記トレッド(20)が、前記第2のゴム組成物から形成された単一の前記第2の部分(202)を備え、全ての前記スタッド(30)の前記頭部(70)がこの第2の部分(202)内に固定される、
請求項1に記載のタイヤ。
【背景技術】
【0002】
スタッド付きタイヤは、例えば凍結路での運転など、冬期運転条件における挙動に関して有利であることは否定できない。氷との接触、より具体的にはスタッドが氷の中に突き刺さることで、タイヤのトレッド・パターン要素のグリップの観測される低下が補償される。スタッドは氷を引っかき、氷上で付加的な力を発生させる。
【0003】
スタッド付きタイヤを使用する上での難点の1つは、こうしたタイヤを凍結していない道路上で用いると、道路の路面条件を劣化させ、車道の摩耗を早めるという事実である。そのため、多くの国では、スタッド付きタイヤは禁止されており、又はその使用が特定の型式の車両及び/又は限られた期間に限定されている。
【0004】
スタッドを、半径方向の力がスタッドにかかったときに変形するゴム組成物で作製された支持要素と組み合わせることによりこの問題を軽減することが提案されている(特許文献1を参照)。これらの支持要素を作製するゴム組成物は、その温度が低下したときに変形抵抗が高まるように選択される。タイヤが氷上走行している場合、支持要素の温度は低く、その変形抵抗は高い。その結果、支持要素は、スタッドによって伝達される力に抗し、トレッドから突出し、氷を引っかくようになる。対照的に、凍結していない車道上をタイヤが走行しているとき、支持要素の温度はより高くなり、より低い変形抵抗を有するようになる。その結果、スタッドは、道路と接触するたびにトレッド内に引っ込んで姿を消すようにすることができる。
【0005】
この手法は車道に対するスタッド付きタイヤの悪影響を減らすことを可能にしてはいるが、本出願人は、この提案された解決法ではスタッド付きタイヤの動作点が最適化されていないので、いまだ十分でないことを見いだした。
【0006】
ゴム組成物の立方体の中に入れたスタッドを第1段階で加硫し、この複合体をトレッド内に差し込む又は加硫することも提案されている(特許文献2)。本発明の技術的背景を明らかにする他の文献を知りたいと望む読者は、有益な特許文献3及び特許文献4を参考にされたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の1つは、氷に対する優れたグリップを有し、その一方でアスファルトに与える衝撃が依然として小さい、スタッド付きタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、氷で覆われていることがある路面に沿って走行することが意図されたタイヤによって達成され、このタイヤは、
第1のゴム組成物から形成された、路面と接触する第1の部分と、第1のゴム組成物とは異なる第2のゴム組成物から形成された、第1の部分の半径方向内側に配置された少なくとも1つの第2の部分とを含むトレッドと、少なくとも1つのスタッドとを備え、
この少なくとも1つのスタッドは、最大寸法DTを有し、スタッドをトレッド内に固定することが意図された頭部と、氷と接触することが意図された突起部と、頭部と突起部とを接続し対称軸を有る本体であって、スタッドの頭部と本体とによって形成される組立体が半径方向高さHAを有する本体と、本体の対称軸を通る長手方向軸と、を有し、
この少なくとも1つのスタッドは、その長手方向軸が半径方向に対してほぼ平行となり、スタッドが路面と接触していないとき、スタッドの突起部がトレッドから突出し、スタッドの本体が、トレッドの第1の部分と少なくとも部分的に接触し、スタッドの頭部が、トレッドの第2の部分内に全体が固定されるようにトレッド内に配置され、
トレッドの少なくとも1つの第2の部分は、少なくとも1つのスタッドの頭部を取り囲み、かつ、スタッドの頭部の半径方向内側に、スタッドの半径方向で最も内側の点から、スタッドの頭部の最大寸法DTの40%以上である距離DI
(DI≧0.4DT)にわたって延び、スタッドの頭部の半径方向外側に、スタッドの半径方向で最も内側の点から、半径方向高さHAの40%以上である距離DEにわたって延び、スタッドの長手方向軸に対して垂直な全ての方向に、スタッドの長手方向軸から、スタッド(30)の頭部(70)の最大寸法DT以上である距離DPにわたって延び、
第1のゴム組成物の複素弾性率G
*(0℃)は、1.5MPa未満であり、
第2のゴム組成物の複素弾性率G
*は、G
*(5℃)が5MPa以上であってG
*(20℃)が0.5G
*(5℃)以下となるように、温度によって変化する。
【0010】
出願人が行った試験は、この構成が、氷上でのグリップと、スタッドの悪影響(道路の摩耗及び車両内の騒音に関する)との間の妥協点を、かなり実質的に改善することを実証した。
【0011】
少なくとも1つのスタッドと、トレッドの少なくとも1つの第2の部分との間に、第1のゴム組成物から形成されたスキンが配置されていてもよく、スタッドの表面に対して垂直に測定されたスキンの厚さは、1mm以下である。
【0012】
1つの特定の実施形態によると、タイヤは複数のスタッドを含み、このタイヤ内で、トレッドは、第2のゴム組成物から形成された複数の第2の部分を含み、各々のスタッドの頭部は、トレッドの別々の第2の部分内に全体が固定される。この実施形態は、第2のゴム組成物の量を減らすことを可能にし、このことは、このゴム組成物が高価である場合、又は、他の考慮事項からトレッドの深い内部に他のゴム組成物を設けることが望ましい場合には有利であり得る。これは、トレッドの摩耗が進行したときにタイヤが良好なグリップを維持することも可能にする。
【0013】
代替的な実施形態によると、タイヤは複数のスタッドを含み、このタイヤ内で、トレッドは、第2のゴム組成物から形成された単一の第2の部分を含み、全てのスタッドの頭部がこの第2の部分内に固定される。この実施形態は、製造プロセスの複雑さを軽減するので有利である。
【0014】
第1の好ましい選択肢によると、半径方向高さHAは、9mm以上であるが10mm以下である。従って、スタッドは、トレッド内に良好に固定され、摩耗の観点から適切な寿命が得られる。
【0015】
第2の好ましい選択肢によると、スタッド頭部の最大寸法DTは、8mm以上であるが10mm以下である。これらの寸法は、スタッド組み込みの容易さと、トレッド内でのスタッド保持との間の好適な妥協点を実現することを可能にする。
【0016】
第3の好ましい選択肢によると、距離DIは、4mm以上であるが4.5mm以下である。この距離は、クラウン補強部の酸化のリスクを減少させる一方で、妥当なトレッド厚を依然として維持することを可能にする。
【0017】
第4の好ましい選択肢によると、距離DPは、1.5DT以上であるが、2.5DT以下である(1.5DT≦DP≦2.5DT)。より具体的には、DP=2DTであることが好ましい。これにより、第2のゴム組成物の効果が最適化される。
【0018】
第5の好ましい選択肢によると、少なくとも1つのスタッドは、150W/(m・K)以上の熱伝導率を有する材料で作製される。アルミニウム、金、銅、銀、又はダイヤモンドでさえ、全てこのような材料である。
【0019】
好ましくは、第2のゴム組成物は、−25℃以上であるが+20℃未満の(「非常に高いTg」)のガラス転移温度(Tg)を有し、かつ、30phr以上であるが60phr未満の含有量を有する第1のSBR(スチレン−ブタジエンゴム)エラストマーと、さらに、40phr以上であるが70phr未満の含有量を有する少なくとも1つの他のジエンエラストマーとを含む。
【0020】
より好ましくは、前述の第1のSBRエラストマーは、−20℃以上であるが+10℃未満のガラス転移温度(Tg)を有し、さらに、−15℃以上であるが+0℃未満のガラス転移温度(Tg)を有することがより好ましい。
【0021】
好ましくは、前述の他のジエンエラストマーは、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、及びこれらのエラストマーの混合物によって形成される群から選択される。
【0022】
好ましい実施形態によると、第2のゴム組成物は、非常に高いTgを有する、30phr以上であるが60phr未満の含有量を有するSBRエラストマーと、5phr以上であるが50phr未満の含有量を有するBR(ポリブタジエン)と、10phr以上であるが60phr未満の含有量を有する天然ゴムとを含む、総含有量が100phrに等しい、エラストマーの混合物を含む。
【0023】
好ましい実施形態によると、第2のゴム組成物は、少なくとも1つのシリカ充填剤と、少なくとも1つのカーボンブラックとを含み、少なくとも1つのシリカ充填剤の含有量は、70phr以上であるが100phr未満であり、少なくとも1つのカーボンブラックの含有量は、1phr以上であるが10phr未満である。
【0024】
別の好ましい実施形態によると、第2のゴム組成物は、少なくとも1つのシリカ充填剤と、少なくとも1つのカーボンブラックとを含み、少なくとも1つのシリカ充填剤の含有量は、10phr以上であるが30phr未満であり、少なくとも1つのカーボンブラックの含有量は、60phr以上であるが80phr未満である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
「半径(方向)/放射状(ラジアル)」という用語を用いるとき、当業者によるこの語のいくつかの異なる用法を区別するべきである。第一に、この表現は、タイヤの半径のことを意味する。この意味で、点P1が、タイヤの回転軸に対して点P2より近くにある場合、点P1は、点P2に対して「半径方向内方」(又は、点P2の「半径方向内側」)にあるといわれる。反対に、点P3が、タイヤの回転軸から点4より遠くにある場合、点P4に対して「半径方向外方」(又は、点P4の「半径方向外側」)にあるといわれる。ある方向が、より小さい(又は、より大きい)半径に向かうものである場合、その方向は、「半径方向内向き(又は外向き)」であるといわれる。半径方向の距離の問題である場合にも、用語のこの意味が適用される。
【0027】
第二に、補強部のスレッド又は補強要素が周方向に対して80°以上であるが90°以下の角度を成すときに、そのスレッド又は補強部は「放射状(ラジアル)」であるといわれる。本文書において、「スレッド」という用語は、もっぱら一般的な意味に理解されるべきであり、スレッドの構成材料、又はゴムに対するスレッドの結合を促進するために施された表面処理に関係なく、モノフィラメント、マルチフィラメント、コード、撚糸又は同等の集成体の形態のスレッドを含むことに留意されたい。
【0028】
最後に、「半径方向断面」又は「半径方向横断面」という用語は、本明細書においては、タイヤの回転軸を含む平面における断面又は横断面を意味するものと理解される。
【0029】
「軸」方向は、タイヤの回転軸に対して平行な方向である。点P5は、タイヤの中心面に対して点P6より近くにある場合は、点P6に対して「軸方向内方」(又は、点P6「の軸方向内側」)にあるといわれる。反対に、点P7は、タイヤの中心面から点P8より遠くにある場合、点P8に対して「軸方向外方」(又は、点P8の「軸方向外側」)にあるといわれる。タイヤの「中心面」は、タイヤの回転軸に対して垂直であり、かつ、各々のビードの環状補強構造体から等距離のところにある面である。中心面がいずれかの半径方向断面においてタイヤを2つの「タイヤの半部分」に分けると述べられている場合、これは、その中心面が必ずしもタイヤの対称面を構成することを意味するものではない。この場合の「タイヤの半部分」という表現は、より広い意味を有しており、タイヤの軸方向幅の半分に近い軸方向幅を有するタイヤの部分を表す。
「周」方向は、タイヤの半径方向及び軸方向の両方に対して垂直な方向である。
【0030】
トレッドの「転がり面」は、本明細書においては、その整備圧力(service pressure)まで膨張した、スタッドの付いていない状態のタイヤが路面に沿って走行するときに、路面と接触することになるトレッド上の全ての点を表す。
【0031】
本明細書では、「ゴム組成物」という表現は、少なくとも1つのエラストマーと、少なくとも1つの充填剤とを含むゴム組成物を表す。
本明細書では、「弾性率(elastic modulus)G’」及び「粘性率(viscous modulus)G”」という用語は、当業者には周知の動的特性を示す。これらの特性は、Metravib VA4000型ビスコアナライザーを用いて、未硬化組成物から成形された試験片に対して測定される。ASTM D 5992(1996)規格(2006年9月に発行された版であるが、最初に認可されたのは1996年)において
図X2.1(円形の実施形態)に記載されているような試験片を用いる。試験片の直径「d」は10mmであり(従って、78.5mm
2の円形断面積を有する)、ゴム組成物の各々の部分の厚さ「L」は2mmであり、「d/L比」は5となる(このASTM規格のX2.4節において言及されているISO2856規格ではd/L値は2を推奨しており、これとは異なる)。
【0032】
周波数10Hzの交流単純せん断の正弦波応力を受けている加硫ゴム組成物の試料の応答を記録する。試験片に対して、その平衡位置に関して対称に、負荷応力(0.7MPa)を用いて10Hzの正弦波せん断で応力をかける。
【0033】
測定の前に、試験片の調節を行う。次に、試験片に、室温にて、100%最高最低振幅変形で、10Hzの正弦波せん断で応力をかける。
【0034】
測定は、材料のガラス転移温度(T
g)を下回る温度T
minから、材料のゴム状プラトーに対応し得る温度T
maxまで、毎分1.5℃ずつ昇温して行われる。走査を開始する前に、試料内部が均一な温度になるように、試料を温度T
minで20分間安定化させる。使用される結果は、選択された温度での(この場合は、0℃、5℃及び20℃での)動的弾性せん断弾性率(G’)及び粘性せん断弾性率(G”)である。
【0035】
複素弾性率G
*は、以下のように、弾性率G’及び粘性率G”の複素和(complex sum)の絶対値として定義される。
【数1】
【0036】
図1は、従来技術によるタイヤ10を概略的に示し、そのトレッド20は、複数のスタッド30を含む。スタッド30は、転がり面の幅全体にわたって、トレッド20のゴム・ブロック40内に配置される。当然、トレッドの中央リブ50にもスタッド30を設けることができる。スタッド30は、タイヤの周囲の回りの多数の位置に配置されており、スタッドがいかなる時点でもタイヤが走行している路面と接触するようになっている。
【0037】
図2は、従来技術によるスタッド30を概略的に示す。スタッド30は、スタッド30をトレッド内に固定することが意図された頭部70を有し、頭部70は、最大寸法DTを有する。スタッド30は、該スタッド30を氷で覆われた路面上を走行するタイヤに取り付けた場合に氷と接触することを意図した突起部60をさらに含む。かなり多くの場合、突起部60はスタッド30の残りの部分の材料とは異なる材料を用いて作製され、そのことにより、非常に高い機械的応力を受けるこの部分のためにより硬い材料を用いることが可能になる。本体80が頭部を突起部に接続する。本体は、対称軸100を有し、これはまた、スタッド30の「長手方向軸」も定める。スタッドの頭部70と本体80とによって形成される組立体は、ここでは9.5mmである、半径方向高さHAを有する。
【0038】
図3は、タイヤ10のトレッド20の一部を概略的に示す。このトレッド20には、キャビティ90が設けられ、各キャビティは、タイヤ10のトレッド20の外側に対して開いた、スタッド30と協働するように設計された円筒形部分を有する。
【0039】
図4は、スタッド30を挿入した後のトレッド20の同じ部分を(その転がり面25と共に)概略的に示す。トレッド20を形成するゴム組成物の弾性により、トレッド20はスタッド30を完全に取り囲み、これをタイヤ内にしっかりと固定する。
【0040】
用いられるスタッドは、必ずしも
図2に示されるスタッド30のような対称軸を有するスタッドである必要はない。
図5に示されるスタッドのような偏心した突起部60を有するスタッド30を用いることも全く可能である。
【0041】
図6は、本発明によるタイヤの部分を示す。ここでは、路面と接触する(参照符号25によって示される転がり面による)第1の部分201と、第1の部分201の半径方向内側に配置された第2の部分202とを含むトレッド20の部分が示されている。トレッド20の第1の部分201は、第1のゴム組成物から形成され、トレッドの第2の部分は、第1のゴム組成物とは異なる第2のゴム組成物から形成される。これらのゴム組成物の性質は、後で説明する。
【0042】
タイヤは、スタッドを含み、このスタッドは、スタッド30をトレッド内に固定することが意図された、最大寸法DTを有する頭部70と、氷と接触することが意図された突起部60とを有する。本体80は、頭部70を突起部60に接続する。本体80は、回転対称軸を有する。スタッド30の「長手方向軸」100は、この対称軸と一致する。スタッドの頭部70と本体80とによって形成される組立体は、半径方向高さHA(ここでは9.5mm)を有する。
【0043】
スタッド30は、その長手方向軸100が半径方向に対してほぼ平行となり、スタッドが路面と接触していないときにはスタッド30の突起部60がトレッド20から突出するように(
図6の場合のように)、トレッド20内に配置される。スタッドの本体80は、トレッド20の第1の部分201と少なくとも部分的に接触している。しかしながら、スタッド30の頭部70は、トレッド20の第2の部分202内に全体が固定されている。従って、トレッド20の第2の部分202は、スタッドの頭部70を取り囲み、かつ、スタッド頭部の半径方向内側に、スタッドの半径方向で最も内側の点から距離DIにわたって延びており、距離DIは、スタッド頭部の最大寸法DTの40%以上である
(DI≧0.4DT)。この事例では、DI=4.2mm、DT=9mmである。従って、DIは最大寸法DTの47%に等しい。トレッド20の第2の部分202は、スタッド30の頭部70の半径方向外側に、スタッド30の半径方向で最も内側の点から距離DEにわたって延びており、距離DEは、前述の半径方向高さHAの40%以上である。この事例では、DE=6.5mm、DE/HA=68%である。最後に、トレッド20の第2の部分202は、スタッドの長手方向軸100に対して垂直な全ての方向に、スタッドの長手方向軸から距離DPにわたって延びており、距離DPは、スタッド頭部の最大寸法DT以上である。
図6に示された事例では、DT=9mm、DP=9mmである。DPの方が長く、DTの2倍に相当することが理想的である。
【0044】
ここで、第1のゴム組成物(トレッド20の第1の部分201を形成する)及び第2のゴム組成物(トレッド20の第2の部分202を形成する)に戻る。
【0045】
本発明の基本的な思想は、氷上を走行するスタッド付きタイヤのトレッド内部の不均一な温度分布から利益を得ることである。タイヤに用いられるゴム組成物は、その低い熱伝導率(典型的には、約0.3W/(m・K))によって特色付けられる。これは、スタッドを作製する、例えば軟鋼(46W/(m・K))、Al−SiC(175W/(m・K))又はアルミニウム(237W/(m・K))といった材料の熱伝導率に比べてはるかに低い。スタッドが氷と接触していると、スタッドは急速に氷の温度を帯びるようになり、スタッドを取り囲むゴム組成物との間で(特に、熱交換のための表面積が大きいその頭部において)熱が移動する。従って、スタッドの頭部を取り囲むゴム組成物、即ち、トレッド20の第2の部分202は、トレッドの大部分(特に、トレッド20の第1の部分201)の温度より低い温度になる。しかしながら、氷上でのグリップは、氷と直接接触するトレッド20の第1の部分201によってもっぱら決定される。トレッド20の第1の部分201及び第2の部分202を形成するゴム組成物を慎重に選択することによって、氷に対して優れたグリップを有し、走行する路面の温度に応じて機械的挙動が変化するタイヤを得ることが可能である。低温では剛性であるが、高温ではより軟らかくなる第2のゴム組成物(トレッド20の第2の部分202を形成するゴム組成物)が選択されると、スタッドは、路面が冷たい(タイヤが氷上を走行している)ときにはトレッドから突出したままであり、路面がより暖かい(タイヤが氷で覆われていないアスファルト上を走行している)ときには、スタッドを取り囲むゴム組成物が変形することにより傾斜する傾向を有することになる。出願人は、第1のゴム組成物の複素弾性率G
*(0℃)が1.5MPa未満であり、かつ、第2のゴム組成物の複素弾性率G
*が、G
*(5℃)が5MPa以上であってG
*(20℃)が0.5G
*(5℃)以下となるように温度によって変化するときに、この効果が最適化されることを発見した。
【0046】
表Iは、このような性能を得るための第1及び第2のゴム組成物の配合を一例として与える。配合は、phr(「ゴム100部当たり」)、つまり、ゴム100重量部当たりの重量部で与えられる。対応する複素弾性率も示す。
表I
【0047】
表I内の注釈は、以下の通りである。
(1)16%のスチレンユニット及びブタジエン部分の24%の1,2−ユニットを有する、SBR溶液(T
g=−65℃)、
(2)4%の1,2−ユニット及び93%のシス−1,4−ユニットを有する、ポリブタジエン(T
g=−160℃)、
(3)天然ゴム、
(4)44%のスチレンユニット及びブタジエン部分の41%の1,2−ユニットを有し(T
g=−12℃)、エラストマー鎖の末端にシラノール官能基を持つ、SBR溶液(T
g=−12℃)、
(5)Rhodia社製「Zeosil 1165 MP」シリカ(「HDS」(高分散シリカ)タイプ)、
(6)TESPTシランカップリング剤(Evonik社製「S169」)、
(7)ASTM N234等級カーボンブラック(Cabot社製)、
(8)MESオイル(Shell社製「Catenex SNR」)、
(9)C5/C9樹脂(Exxon Mobil社製「Escorez ECR−373」)、
(10)Flexsys社製、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
(11)ジフェニルグアニジン(Flexsys社製「Perkacit DPG」)、
(12)N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Flexsys社製「Santocure CBS」)
【0048】
ゴム化合物は、少なくとも1つのジエンエラストマーと、少なくとも1つの補強充填剤と、少なくとも1つの架橋系とに基づくものであることが好ましい。
【0049】
「ジエン」エラストマー(又はゴム)という用語は、知られている通り、ジエンモノマー、即ち、共役であるかどうかに関わらず2つの炭素−炭素二重結合を持つモノマーから少なくとも部分的に得られるエラストマー(即ち、ホモポリマー又は共重合体)を意味するものと理解される。用いられるジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ブタジエン−イソプレン共重合体(BIR)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体(SBIR)及びこれらのエラストマーの混合物によって形成される群から選択されることが好ましい。
【0050】
好ましい実施形態は、「イソプレン」エラストマー、即ち、イソプレンホモポリマー又は共重合体、つまり、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレン共重合体、及びこれらのエラストマーの混合物によって形成される群から選択されるジエンエラストマーを用いることにある。
イソプレンエラストマーは、天然ゴム、又はシス−1,4型の合成ポリイソプレンであることが好ましい。これらの合成ポリイソプレンの中でも、シス−1,4結合を(mol%で)90%より多く、より好ましくはさらに98%より多くの量で有するポリイソプレンを用いることが好ましい。他の好ましい実施形態によると、ジエンエラストマーは、可能であれば別の例えばBR型のエラストマーと混合された、例えばSBRエラストマー(E−SBR又はS−SBR)などの別のジエンエラストマーで、全体的又は部分的に構成することができる。
【0051】
ゴム組成物はまた、タイヤの製造用に意図されたゴムマトリックスにおいて従来用いられている添加剤、例えば、補強充填剤、例えばカーボンブラック、又はシリカなどの無機充填剤;無機充填剤を結合するためのカップリング剤;老化防止剤;酸化防止剤;可塑剤又はエキステンダ油(後者は、芳香族性であるか非芳香族性であるかにかかわらない(特に、30℃を上回る高いT
gを有する樹脂を可塑化する、例えばナフテン系又はパラフィン系などの、高粘度又は好ましくは低粘度を有する、非芳香族性又はごくわずかに芳香族性の油、MES又はTDAE油));未熟成(green state)組成物の加工をより容易にする加工助剤;粘着付与樹脂;硫黄若しくは無硫黄加硫剤(sulphur donor)のいずれかに基づく架橋系、及び/又は過酸化物に基づく架橋系;促進剤;加硫活性剤又は遅延剤;加硫戻り防止剤;メチレン受容体及び供与体、例えば、HMT(ヘキサメチレンテトラミン)又はH3M(ヘキサメトキシメチルメラミン);補強樹脂(レゾルシノール又はビスマレイミドなど);並びに、例えば金属塩、特にコバルト塩又はニッケル塩タイプの既知の接着促進系、の全て又はいくつかを含むこともできる。
【0052】
組成物は、適切な混練機の中で、当業者には周知の2つの連続的な調製段階、即ち、110℃から190℃までの間、好ましくは130℃から180℃までの間の最高温度に達する高温での第1の熱機械加工又は混練段階(「非生産的(non−productive)」段階と呼ばれる)と、それに続く、典型的には110℃未満の、より低い温度に達し、その仕上げ段階の間に架橋系が配合される、第2の機械加工段階(「生産的(productive)」段階と呼ばれる)を用いて製造される。
【0053】
一例を挙げれば、非生産的段階は、数分間(例えば、2分間と10分間との間)続く単一の熱機械工程で行われ、その間に、架橋系又は加硫系を除く全ての必要な基本成分及びその他の添加剤が標準的な密閉式混練機のような適切な混練機内に導入される。このようにして得られた混合物が冷却された後、次に、低温(例えば、30℃と100℃との間)に維持された開放型二本ロール機のような外部混練機内で加硫系が配合される。その後、全ての原料を(生産的段階の間に)数分間(例えば、5分間と15分間との間)混練する。
【0054】
このようにして得られた最終組成物は、次にカレンダー加工して、例えば特性決定のためにシート又はプラーク形状にされるか、さもなければ、押出加工して、本発明によるタイヤで用いられる外側トレッドを形成するようにされる。
【0055】
次に、加硫(又は硬化)を既知の方法で、一般的には130℃と200℃との間の温度で、好ましくは圧力下で、十分な時間、特に硬化温度、採用される加硫系、及び問題の組成物の加硫速度に依存して例えば5分間と90分間との間で変化し得る時間にわたって、行うことができる。
【0056】
図6に示す実施形態は、各スタッドの頭部が、トレッドの別々の第2の部分内に全体が固定されている場合に対応する。この実施形態は、第2のゴム組成物の量を減らすことを可能にし、このことは、このゴム組成物が高価である場合、又は、他の考慮事項からトレッドの深い内部に他のゴム組成物を設けることが望ましい場合には有利であり得る。
【0057】
しかしながら、他の有利な実施形態がある。具体的には、トレッド20は、第2のゴム組成物から形成された単一の第2の部分202を含むことが可能であり、全てのスタッド30の頭部70は、この第2の部分202内に固定される。
図7に概略的に示されるこの実施形態は、製造プロセスの複雑さを軽減する限りにおいて有利である。これは、第2の部分202をタイヤのクラウン補強部上に単に配置することによって施工することが可能であることによる。
【0058】
図8に概略的に示すように、スタッド30とトレッドの第2の部分202との間に、第1のゴム組成物から形成されたスキン2010が配置されることがあることを指摘しておくべきであろう。これは、実のところ望ましい構成ではないが、トレッド内にキャビティを成形することにより、キャビティの成形のために設けられた要素が未硬化のトレッドを貫通して、第1のゴム組成物の少量の部分をキャビティの下部に向かってクリープさせたときに、生じることがある。このクリープは、従ってスタッドとトレッドの第2の部分との間に第1のゴム組成物から形成された薄いスキンの形成をもたらしかねないが、スタッドの表面に対して垂直に測定したスキンの厚さが1mm以下であるならば、本発明によるタイヤの性能に顕著な影響を与えない。
【0059】
出願人は、Audi(アウディ)A4車両に装着した205/55 R16サイズのタイヤを用いて、氷上及びアスファルト上で比較試運転を行った。
図7に示す型式のタイヤ(表Iのゴム組成物を使用)を、トレッド20の第2の部分202をトレッドの第1の部分201と同じ組成物、つまり表Iの第1のゴム組成物から作製したことが唯一の違いである、同等のタイヤと比較した。
表II
【0060】
これは、本発明によるタイヤが、道路の摩耗に全く影響を及ぼすことなく、より良好な氷上でのグリップを有することを示す。