特許第6167497号(P6167497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6167497フィルタープレス用ダイアフラム、及び、固液分離装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167497
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】フィルタープレス用ダイアフラム、及び、固液分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 25/12 20060101AFI20170713BHJP
   F16J 3/02 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   B01D25/12 A
   F16J3/02 A
   F16J3/02 B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-223516(P2012-223516)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-73480(P2014-73480A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一綱
(72)【発明者】
【氏名】水口 卓裕
(72)【発明者】
【氏名】藤原 祥雅
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−111410(JP,A)
【文献】 実開昭58−156510(JP,U)
【文献】 特開2007−075679(JP,A)
【文献】 特開2008−070703(JP,A)
【文献】 特開2008−086959(JP,A)
【文献】 特開昭53−115973(JP,A)
【文献】 特開平09−038419(JP,A)
【文献】 特開昭60−227805(JP,A)
【文献】 特開昭60−109666(JP,A)
【文献】 実開平01−084705(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 25/00
F16J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧搾部と、前記圧搾部の周縁部に設けられ前記圧搾部よりも伸縮性の高い伸縮部と、を有し、
前記圧搾部がポリアルキレン樹脂からなる層を有し、前記伸縮部がクロロプレンゴムからなる層を有し、樹脂材料からなるフィルタープレス用ダイアフラム。
【請求項2】
前記圧搾部の厚みが前記伸縮部の厚みよりも大きい請求項1に記載のフィルタープレス用ダイアフラム。
【請求項3】
前記圧搾部の折り曲げ強度が、前記伸縮部の折り曲げ強度よりも大きい請求項1に記載のフィルタープレス用ダイアフラム。
【請求項4】
前記圧搾部の折り曲げ強度が20.5MPa以上であり、前記伸縮部の折り曲げ強度が13.5MPa以下である請求項3に記載のフィルタープレス用ダイアフラム。
【請求項5】
トナー粒子を含むスラリーの処理に用いられる請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフィルタープレス用ダイアフラム。
【請求項6】
圧搾部と、前記圧搾部の周縁部に設けられ前記圧搾部よりも伸縮性の高い伸縮部と、を有し、前記圧搾部がポリアルキレン樹脂からなる層を有し、前記伸縮部がクロロプレンゴムからなる層を有し、樹脂材料からなるフィルタープレス用ダイアフラムと、
前記伸縮部を支持し、前記伸縮部を支持しない部分に濾過室を形成する凹部が設けられた、対向する一対の濾板と、
前記濾過室における、一方の濾板と前記フィルタープレス用ダイアフラムとの間に配置された一対の濾布と、
前記一対の濾布間にスラリーを注入するスラリー注入手段と、
前記フィルタープレス用ダイアフラムと、前記フィルタープレス用ダイアフラムの濾布と接触する側とは反対側の濾板と、の間に圧搾流体を注入する圧搾流体注入手段と、
前記濾過室における、前記フィルタープレス用ダイアフラムと、前記フィルタープレス用ダイアフラムの濾布と接触する側の濾板と、の間に洗浄液を注入する洗浄液注入手段と、
を備える固液分離装置。
【請求項7】
トナー粒子を含むスラリーの処理に用いられる請求項6に記載の固液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタープレス用ダイアフラム、及び、固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、固液分離装置に用いられるフィルタープレスとしては、より固液分離機能を強化する目的で圧搾式フィルタープレスが広く用いられている。
この圧搾式フィルタープレスは、基盤となる濾板の表面にダイアフラムを有した複数の濾板と、濾板に挟まれるように構成される一対の濾布と、ケーキを形成するための濾過室を有してなり、濾過室に原液(スラリー)を供給して濾過を行って形成されたケーキに、該ダイアフラムを裏面より適当な方法で加圧、膨張させることにより、濾過室で形成されたケーキが圧搾、脱水される。
このダイアフラムには、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、天然ゴム、共重合体ゴム等が単体、もしくは複数混合し成形されたものが使用されており、該ダイアフラムをケーキ面に対し平面的且つ均等に押し広げることと、ダイアフラム面の圧力をより高くすることで、圧搾による脱水効果が高まる。
【0003】
引張強度、破断伸び等の機械的強度に優れ、繰り返し行われる変形と復元にも耐え得る耐久性を有するフィルタープレス用ダイアフラムを提供するため、ポリオレフィン系樹脂と、エチレン−プロピレン共重合体ゴムまたはエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴムとを機械的にブレンドした組成、もしくは部分架橋したポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである結晶性熱可塑性合成樹脂からなるフィルタープレス用ダイアフラムであって、弾性基体に基部を残して濾過溝形成用突起を複数個設けると共に、少なくとも基部の球晶の直径が1μm以上40μm以下の範囲であることを特徴とするフィルタープレス用ダイアフラムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、コストパフォーマンスの高いダイアフラムを提供するため、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー10質量%以上70質量%以下と再生されたポリプロピレン系樹脂90質量%以上30質量%以下とを含有する樹脂組成物からなるフィルタープレス用途のダイアフラムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−085018号公報
【特許文献2】特開2000−279709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、圧搾圧の面内ムラの抑制されるフィルタープレス用ダイアフラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
即ち、請求項1に係る発明は、
圧搾部と、前記圧搾部の周縁部に設けられ前記圧搾部よりも伸縮性の高い伸縮部と、を有し、
前記圧搾部がポリアルキレン樹脂からなる層を有し、前記伸縮部がクロロプレンゴムからなる層を有し、樹脂材料からなるフィルタープレス用ダイアフラムである。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記圧搾部の厚みが前記伸縮部の厚みよりも大きい請求項1に記載のフィルタープレス用ダイアフラムである。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記圧搾部の折り曲げ強度が、前記伸縮部の折り曲げ強度よりも大きい請求項1に記載のフィルタープレス用ダイアフラムである。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記圧搾部の折り曲げ強度が20.5MPa以上であり、前記伸縮部の折り曲げ強度が13.5MPa以下である請求項3に記載のフィルタープレス用ダイアフラムである。
【0011】
請求項5に係る発明は、
トナー粒子を含むスラリーの処理に用いられる請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフィルタープレス用ダイアフラムである。
【0012】
請求項6に係る発明は、
圧搾部と、前記圧搾部の周縁部に設けられ前記圧搾部よりも伸縮性の高い伸縮部と、を有し、前記圧搾部がポリアルキレン樹脂からなる層を有し、前記伸縮部がクロロプレンゴムからなる層を有し、樹脂材料からなるフィルタープレス用ダイアフラムと、
前記伸縮部を支持し、前記伸縮部を支持しない部分に濾過室を形成する凹部が設けられた、対向する一対の濾板と、
前記濾過室における、一方の濾板と前記フィルタープレス用ダイアフラムとの間に配置された一対の濾布と、
前記一対の濾布間にスラリーを注入するスラリー注入手段と、
前記フィルタープレス用ダイアフラムと、前記フィルタープレス用ダイアフラムの濾布と接触する側とは反対側の濾板と、の間に圧搾流体を注入する圧搾流体注入手段と、
前記濾過室における、前記フィルタープレス用ダイアフラムと、前記フィルタープレス用ダイアフラムの濾布と接触する側の濾板と、の間に洗浄液を注入する洗浄液注入手段と、
を備える固液分離装置である。
請求項7に係る発明は、
トナー粒子を含むスラリーの処理に用いられる請求項6に記載の固液分離装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比較して、圧搾圧の面内ムラの抑制されるフィルタープレス用ダイアフラムが提供される。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、前記圧搾部の厚みが前記伸縮部の厚みと同じか又は小さい場合に比較して、圧搾圧の面内ムラが更に抑制される。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、圧搾部の折り曲げ強度が伸縮部の折り曲げ強度と同じか又は小さい場合に比較して、圧搾圧の面内ムラが更に抑制される。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、圧搾部の折り曲げ強度及び伸縮部の折り曲げ強度が特定の範囲以外である場合に比較して、圧搾圧の面内ムラが更に抑制される。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、圧搾部と前記圧搾部の周縁部に設けられ前記圧搾部よりも伸縮性の高い伸縮部とを有するフィルタープレス用ダイアフラムを備えない場合に比較して、圧搾圧の面内ムラの抑制される固液分離装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の固液分離装置の一構成例を示す概略図である。
図2】脱水ユニット100を示す断面図である。
図3】濾過室140内のケーキがフィルタープレス用ダイアフラム110の圧搾部104により圧搾された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のフィルタープレス用ダイアフラム、及び、固液分離装置の実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の固液分離装置の一構成例を示す概略図である。図1に示す固液分離装置は、スラリーを濾過する濾過器、スラリーの濾過により形成されたケーキを洗浄する洗浄機、及び、ケーキを脱水する脱水機として機能するフィルタープレス10と、スラリーを貯蔵するスラリー貯蔵槽12と、スラリー貯蔵槽12に貯蔵されたスラリーをフィルタープレス10のスラリー注入口に送液配管14を介して注入するスラリー送液ポンプ16と、洗浄液を貯蔵する洗浄液貯蔵槽18と、洗浄液貯蔵槽18に貯蔵された洗浄液をフィルタープレス10の洗浄液注入口に送液配管20を介して注入する洗浄液送液ポンプ22と、圧搾流体の一種である圧搾空気をフィルタープレス10の圧搾空気注入口に圧搾配管24を介して注入する圧搾流体注入ポンプ26と、を備える。
【0022】
本実施形態の固液分離装置により処理されうるスラリーとしては、乳化凝集法等の湿式製法により製造されたトナー粒子を含むスラリーや、有機顔料、金属粉末等が含まれるスラリー等が挙げられる。
【0023】
フィルタープレス10の下方には、フィルタープレス10により脱水されたスラリーの残渣(ケーキ)を解砕機28に搬送するケーキコンベア30が設けられる。解砕機28は搬送されたケーキを解砕して解砕ケーキを作成する。また、フィルタープレス10から排出される濾液は、フィルタープレス10の排出口から濾液排出管32を介して排出される。
【0024】
フィルタープレス10は、濾過室を備える複数の脱水ユニット100が水平方向に並列に配置されて構成される。図2は、脱水ユニット100を示す断面図である。
【0025】
図2に示すように、脱水ユニット100は、圧搾部104と圧搾部104の周縁部に設けられた圧搾部104よりも伸縮性の高い伸縮部102とを有する本実施形態のフィルタープレス用ダイアフラム110を備える。本実施形態で用いられるフィルタープレス用ダイアフラム110は、圧搾部104と伸縮部102とが同じ素材で一体的に成形されており、圧搾部104の厚みが伸縮部102の厚みよりも大きいものとされる。
【0026】
フィルタープレス用ダイアフラム110の伸縮部102は、対向する一対の濾板120及び濾板130により挟み込まれて支持されている。濾板120及び濾板130におけるフィルタープレス用ダイアフラム110の伸縮部102を支持しない部分には、凹部122及び凹部132が設けられており、凹部122及び凹部132により濾過室140が形成される。
【0027】
フィルタープレス用ダイアフラム110の圧搾部104は、濾過室140内において、伸縮部102が伸縮することで濾板120の側から濾板130の方向へ可動とされている。
【0028】
濾過室140における濾板130とフィルタープレス用ダイアフラム110との間には、一対の濾布150及び濾布152が配置されている。濾布150及び濾布152はフィルタープレス用ダイアフラム110と共に濾板120及び濾板130により支持されている。
【0029】
フィルタープレス10のスラリー注入口と接続するスラリー注入経路160は、濾布152を貫通し、濾過室140内における濾布150の濾布152への対向面と濾布152の濾布150への対向面との間にスラリーが供給されるように設けられている。
スラリー貯蔵槽12と送液配管14とスラリー送液ポンプ16とスラリー注入経路160とにより、本実施形態のスラリー注入手段が構成されるが、本実施形態のスラリー注入手段は、当該構成に限定されるものではない。
【0030】
フィルタープレス10の圧搾空気注入口と接続する圧搾空気注入経路170は、濾過室140における濾板120とフィルタープレス用ダイアフラム110との間に圧搾空気が注入されるように設けられている。濾板120は、フィルタープレス用ダイアフラム110の濾布150と接触する側とは反対側の濾板に相当する。
圧搾流体注入ポンプ26と圧搾配管24と圧搾空気注入経路170とにより、本実施形態の圧搾流体注入手段が構成されるが、本実施形態の圧搾流体注入手段は、当該構成に限定されるものではない。また、本実施形態においては圧搾流体として圧搾空気が適用されるが、圧搾空気以外にも、圧搾水等が適用されてもよい。
【0031】
フィルタープレス10の洗浄液注入口と接続する洗浄液注入経路180は、フィルタープレス用ダイアフラム110を貫通し、濾過室140における濾板130とフィルタープレス用ダイアフラム110との間に洗浄液が注入されるように設けられている。濾板130は、フィルタープレス用ダイアフラム110の濾布150と接触する側の濾板に相当する。
洗浄液貯蔵槽18と送液配管20と洗浄液送液ポンプ22と洗浄液注入経路180とにより、本実施形態の洗浄液注入手段が構成されるが、本実施形態の洗浄液注入手段は、当該構成に限定されるものではない。
【0032】
フィルタープレス10の排出口と接続する排出経路190は、濾過室140より発生する濾液が濾過室140外へ濾液排出管32を介して排出されるように設けられている。
【0033】
次に、本実施形態の固液分離装置の動作を説明する。
スラリー貯蔵槽12からスラリー送液ポンプ16により送液配管14を経由してフィルタープレス10のスラリー注入口にスラリーが送液されると、スラリー注入経路160を介して濾過室140内における濾布150の濾布152への対向面と濾布152の濾布150への対向面との間にスラリーが供給される。濾過室140内にスラリーが供給されることで、供給圧力によって濾液が濾布150及び濾布152を通過し、濾過が進行する。
【0034】
濾布150及び濾布152を通過した濾液は、濾過室140からフィルタープレス10の排出口と接続する排出経路190を経由して濾液排出管32を通じて外部に排出される。これにより、濾過室140に供給されたスラリーは濾過され、スラリー中の固形成分はケーキとして濾過室140内に残留する。
【0035】
続いて、圧搾流体注入ポンプ26により圧搾配管24を経由してフィルタープレス10の圧搾空気注入口に圧搾空気が注入されると、圧搾空気注入経路170を介して濾板120とフィルタープレス用ダイアフラム110との間に圧搾空気が注入される。これにより、フィルタープレス用ダイアフラム110の圧搾部104が濾布と接触する側の濾板である濾板130方向に押圧され、濾過室140内のケーキが圧搾されることでケーキが脱水される。図3に、濾過室140内がフィルタープレス用ダイアフラム110の圧搾部104により圧搾された状態を示す。
【0036】
フィルタープレス用ダイアフラム110においては伸縮部102の伸縮性が圧搾部104の伸縮性よりも高いため、フィルタープレス用ダイアフラム110の圧搾部104を濾板130方向に押圧する際に圧搾部104が変形しにくい。そのため、圧搾部104の面内におけるケーキに対する圧搾圧のばらつき(面内ムラ)の発生が抑制される。その結果、ケーキの厚みが均等になる。
【0037】
続いて、濾過室140内のケーキが圧搾された状態で洗浄液貯蔵槽18から洗浄液送液ポンプ22により送液配管20を経由してフィルタープレス10の洗浄液注入口に洗浄液が送液されると、洗浄液注入経路180を介して濾過室140内に洗浄液が充填され、濾過室140内に残留するケーキは当該洗浄液により洗浄される。本実施形態においては、脱水ユニット100の下部に配置されている洗浄液注入経路180から洗浄液が濾布150のケーキの存在する側とは反対側の面からケーキ側へ流し込まれる所謂貫通洗浄方式により、ケーキが洗浄される。濾過室140内に充填された洗浄液も、濾過室140からフィルタープレス10の排出口と接続する排出経路190を経由して濾液排出管32を通じて外部に濾液として排出される。
【0038】
固液分離装置におけるケーキの洗浄工程では、上述の貫通洗浄方式の他に、洗浄液を例えばスラリー注入経路160より供給し、濾過室140の上部からケーキへ洗浄液を直接流し込む所謂直接洗浄方式を採用してもよい。
【0039】
なお、直接洗浄方式は濾過室140の上部に配置されているスラリー注入経路160から洗浄水を流し込むため、ショートパス等による洗浄ムラができやすい。一方、貫通洗浄方式は濾布150及び濾布152のケーキの存在する側とは反対側の面からケーキ側へ洗浄液が流し込まれるので、ケーキ全体に洗浄水が行き渡り、ショートパス等による洗浄ムラが無く、均等な洗浄効果が得られる。但し、濾過室140の上部に配置されているスラリー注入経路160の周辺は洗浄廃液が通過できないので、局部的に洗浄が不十分となる場合がある。従って、ケーキの洗浄においては、直接洗浄方式と貫通洗浄方式を組み合わせることが有効である。
【0040】
本実施形態の固液分離装置によれば、フィルタープレス用ダイアフラム110の圧搾部104により圧搾されたケーキの厚みが均等なことから、ケーキを洗浄する際の通水量のばらつきが抑制される。その結果、ケーキの洗浄の程度が均等化される。
【0041】
一方、従来のフィルタープレス用ダイアフラムでは、シート全体が凸形状に膨らむ為、シートの中央部でより圧搾の力が強く、中央部と外周部でケーキの厚みが異なる場合があった。更に、ケーキを圧搾したまま貫通洗浄を行う場合、ケーキの厚みが均等でないと、洗浄水がケーキの相対的に薄い部分を通り抜け、ケーキ内で良く洗浄された場所とあまり洗浄されていない場所が生じる問題があった。
【0042】
続いて、濾過室140内のケーキが圧搾された状態で、例えばスラリー注入経路160を通じて不図示の空気供給ポンプから圧搾空気がケーキに通気され、ケーキがさらに脱水される。
【0043】
脱水後は、濾板120及び濾板130を開枠させることで脱水ユニット100を開放し、ケーキを排出する。
【0044】
脱水されたケーキは、ケーキコンベア30を介して、解砕機28に搬送され、解砕機28によって、粒子状に解砕される。
【0045】
本実施形態のフィルタープレス用ダイアフラムは、圧搾部と、前記圧搾部の周縁部に設けられ前記圧搾部よりも伸縮性の高い伸縮部と、を有するものであれば、フィルタープレス用ダイアフラムを構成する材料については特に限定されない。
【0046】
本実施形態のフィルタープレス用ダイアフラムは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリアルキレン樹脂や、ポリアルキレン樹脂とエチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)等をブレンド又は部分架橋してなるポリアルキレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブテン−1等の合成樹脂、さらにはスチレンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)クロロプレン(CR)等の合成ゴム製等の弾性体で構成されていてもよい。また、圧搾部に金属を用いてもよい。
【0047】
本実施形態のフィルタープレス用ダイアフラムに係る圧搾部と伸縮部との間に伸縮性の差異を発現させる方法は特に限定されるものではない。例えば、圧搾部と伸縮部との厚みに差を持たせたり、圧搾部の折り曲げ強度と伸縮部の折り曲げ強度との間に差を持たせたり、圧搾部を構成する材料及び伸縮部を構成する材料の種類に違いを持たせたりすることで圧搾部と伸縮部との間に伸縮性の差異を発現させてもよい。
【0048】
本実施形態のフィルタープレス用ダイアフラムは、圧搾部の厚みが伸縮部の厚みよりも大きいものであってもよい。圧搾部の厚みを伸縮部の厚みよりも大きくすることで、圧搾部の伸縮性よりも伸縮部の伸縮性が高くなる。これにより、圧搾圧の面内ムラがより抑制される。
圧搾部の厚みと伸縮部の厚みとの差により圧搾部の伸縮性と伸縮部の伸縮性とに差を生じさせる態様は、フィルタープレス用ダイアフラムに係る圧搾部と伸縮部とが同じ素材で成形されている場合に有効である。
【0049】
圧搾部の厚みとしては、6mm以上15mm以下の範囲が望ましく、7mm以上12mm以下の範囲がさらに望ましい。
伸縮部の厚みとしては、3mm以上13mm以下の範囲が望ましく、5mm以上9mm以下の範囲がさらに望ましい。
圧搾部の厚みと伸縮部の厚みとの比は、圧搾部の厚みを1としたときに伸縮部の厚みが0.20以上0.86以下が望ましく、0.45以上0.67以下がさらに望ましい。
【0050】
本実施形態のフィルタープレス用ダイアフラムは、圧搾部の折り曲げ強度が伸縮部の折り曲げ強度よりも大きいものであってもよい。圧搾部の折り曲げ強度を伸縮部の折り曲げ強度よりも大きくすることで、圧搾部の伸縮性よりも伸縮部の伸縮性が高くなる。これにより、圧搾圧の面内ムラがより抑制される。
【0051】
圧搾部の折り曲げ強度は、20.5MPa以上であることが望ましく、28.0MPa以上であることがさらに望ましく、36.5MPa以上であることが特に望ましい。また、圧搾部の折り曲げ強度は、50.0MPa以下であることが望ましい。
伸縮部の折り曲げ強度は、13.5MPa以下であることが望ましく、10.5MPa以下であることがさらに望ましく、8.0MPa以下であることが特に望ましい。また、伸縮部の折り曲げ強度は、5.5MPa以上であることが望ましい。
【0052】
本実施形態において、圧搾部又は伸縮部の折り曲げ強度とは、下記方法により測定された値をいう。
カットまたは積層させた100mm×10mm×9mmの試験片を、スパン64mm、押さえ速度20mm/min、押さえ軸のR=5、n=5の条件で3点曲げテストを行ない、曲げ強度の測定値の平均値を採用した。
【0053】
本実施形態のフィルタープレス用ダイアフラムは、圧搾部がポリアルキレン樹脂を含む層を有し、伸縮部がクロロプレンゴムを含む層を有することが望ましい。圧搾部と伸縮部とを構成する材料の組み合わせとしてポリアルキレン樹脂とクロロプレンゴムとを用いることにより、圧搾圧の面内ムラがより抑制される。
【0054】
本実施形態のフィルタープレス用ダイアフラムの成形は、所望の樹脂を主体とした組成物を、圧縮成形、プレス成形などにより達成される。
例えば前記組成物を該組成物の溶融温度以上に加熱溶融した後、該溶融物を成形用金型に載せ、さらに、所望の圧力で圧縮した後、冷却することにより本実施形態のフィルタープレス用ダイアフラムが得られる。
【0055】
本実施形態のフィルタープレス用ダイアフラムの表面には、速やかに濾液を排出させるために、濾過溝が形成されていてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例に基づき本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
本実施例及び比較例に用いたフィルタープレス用ダイアフラムは以下の方法により作製した。
【0058】
−フィルタープレス用ダイアフラムAの製造例−
プレス用金型に成形後のシート厚みが8mm程度となるようにポリプロピレンを主成分とした樹脂を充填し、25kgf/cmで5分間加圧して厚み7.5mmのシート状成形品Aを得た。次いで、中央部が外周部に対して7mm嵩上げされた凸形状のプレス用金型を準備し、エチレンプロピレンゴムを主成分とした樹脂を、外周部厚みが9mmとなるように充填した後、25kgf/cmで5分間加圧して中央部が凹状で外周部の厚みが9.5mmのシート状成形品Bを得た。さらに、プレス用金型に前記シートBを載上し、その中心部にシートBよりも小型に寸断したシートAを載せ、プレス用熱板を200℃で加熱し、シートを十分溶融させつつ、25kgf/cmで10分間溶融加圧した後、25℃となるまで冷却して、外周部(周縁部)と中央部(圧搾部)との材質が異なるシート厚み9.2mm、サイズ1250mm角のフィルタープレス用ダイアフラムAを得た。
【0059】
−フィルタープレス用ダイアフラムBの製造例−
中央部より外周部が5mm程度高くなるように嵩上げされた凹状のプレス用金型を準備し、これにフィルタープレス用ダイアフラムAの製造例で用いたポリプロピレン樹脂を、シート成形後の中央部厚みが9mmとなるように充填し、次いで、プレス用熱板を200℃で加熱し樹脂を溶融させつつ、25kgf/cmの圧力で10分間溶融加圧した後、27℃となるまで冷却し、シート中央部の厚み9.0mm、シート外周部厚み4.0mm、サイズ1200mm角のフィルタープレス用ダイアフラムBを得た。
【0060】
−フィルタープレス用ダイアフラムCの製造例−
フィルタープレス用ダイアフラムAの製造例で用いたエチレンプロピレンゴムを主成分とした樹脂を充填した以外は、フィルタープレス用ダイアフラムBと同様の手順で製造し、シート中央部の厚み9.1mm、シート外周部厚み3.9mm、サイズ1200mm角のフィルタープレス用ダイアフラムCを得た。
【0061】
−フィルタープレス用ダイアフラムDの製造例−
プレス用金型に、フィルタープレス用ダイアフラムAで用いたポリプロピレン樹脂を、成形後厚みが9mmとなるように充填し、次いで、プレス用熱板を200℃で加熱し樹脂を溶融させつつ、25kgf/cmの圧力で10分間溶融加圧した後、25℃となるまで冷却し、シート厚み8.8mm、サイズ1250mm角のフィルタープレス用ダイアフラムDを得た。
【0062】
−フィルタープレス用ダイアフラムEの製造例−
プレス用金型に、フィルタープレス用ダイアフラムAで用いたポリプロピレン樹脂を、成形後厚みが4mmとなるように充填した以外は、フィルタープレス用ダイアフラムDと同様の手順で製造し、シート厚み3.8mm、サイズ1250mm角のフィルタープレス用ダイアフラムEを得た。
【0063】
−フィルタープレス用ダイアフラムFの製造例−
プレス用金型に、フィルタープレス用ダイアフラムAで用いたエチレンプロピレンゴムを主成分とした樹脂を、成形後厚みが9mmとなるように充填した以外は、フィルタープレス用ダイアフラムDと同様の手順で製造し、シート厚み8.9mm、サイズ1235mm角のフィルタープレス用ダイアフラムFを得た。
【0064】
−ダイアフラムGの製造例−
プレス用金型に、フィルタープレス用ダイアフラムAで用いたエチレンプロピレンゴムを主成分とした樹脂を、成形後厚みが4mmとなるように充填した以外は、フィルタープレス用ダイアフラムDと同様の手順で製造し、シート厚み3.7mm、サイズ1200mm角のフィルタープレス用ダイアフラムGを得た。
【0065】
−トナースラリーの調製−
<スチレン/アクリル系樹脂粒子(樹脂粒子分散液)の調製>
スチレン 280質量部
n−ブチルアクリレート 120質量部
アクリル酸 8質量部
ドデカンチオール 8質量部
前記成分(全体で416質量部)を混合溶解して溶液を調製し、他方非イオン性界面活性剤(花王社製、ノニポール400)8質量部、及びアニオン性界面活性剤(テイカ社製、テイカパワーLN2025)12質量部をイオン交換水600質量部に溶解し、前記溶液を加えて攪拌槽で分散し乳化して15分間ゆっくりと攪拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム5質量部を溶解したイオン交換水65質量部を投入した。次いで、系内を窒素で置換した後、ジャケット付反応器で攪拌しながら70℃まで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続して、中心径165nm、ガラス転移温度52℃、重量平均分子量(Mw)31,700の樹脂粒子を含有するスチレン/アクリル系樹脂粒子を得た。
【0066】
<着色剤分散液の調製>
シアン顔料(大日精化社製、銅フタロシアニンB15:3 ) 45質量部
界面活性剤(テイカ社製、テイカパワーLN2025 ) 5質量部
イオン交換水 200質量部
前記成分を混合溶解し、ウルトラタラックス (IKA社製)で30分間分散し、中心径126nmの顔料粒子を含有する着色剤分散液を得た。
【0067】
<離型剤分散液の調製>
パラフィンワックス(日本精蝋社製、HNP0190 、溶融温度85℃) 45質量部
カチオン性界面活性剤(花王社製、サニゾールB50) 5質量部
イオン交換水 200質量部
前記成分を95℃に加熱して、高圧ホモジナイザーで分散処理し、中心径243nmの離型剤粒子を含有する離型剤分散液を得た。
【0068】
<ステアリン酸亜鉛粒子分散液の調製>
ステアリン酸亜鉛(日油製) 45質量部
カチオン性界面活性剤(花王社製、サニゾールB50) 5質量部
イオン交換水 200質量部
前記成分を90℃に加熱して、高圧ホモジナイザーで分散処理し、中心径344nmのステアリン酸亜鉛粒子を含有するステアリン酸亜鉛粒子分散液を得た。
【0069】
<湿潤トナー粒子1の調製>
上記で得た樹脂粒子分散液、着色剤分散液、離型剤分散液を用いて、以下の手順で湿潤トナー粒子を調整した。攪拌機付反応槽に仕込んだイオン交換水340質量部に、樹脂粒子分散液を136質量部、着色剤分散液を30質量部、離型剤分散液を40質量部加え、反応器に付属した外部循環配管内に設置されたローター・ステ−タ式ホモジナイザーで15分間混合・分散を行った。この混合物(スラリー)に、調節した量の10%のポリ塩化アルミニウム溶液10質量部を加えて、再び10分間混合した後、攪拌しながら52℃に加熱して、各粒子を凝集させた。凝集体の粒径が5.0μmに達した時、新たに樹脂粒子分散液64質量部を追加して外殻を形成させ、更に30分間凝集させた後、1%のNaOHを用いてスラリーのpHを6.0に調整することにより粒子の凝集を停止させた。更に反応器の温度を95℃に上げ、本温度で5時間保持し凝集体を融合させ後、混合物を冷却して、湿潤トナー粒子の分散液(トナースラリー)を調製した。なお、トナーの粒子径は5.9μmであった。
【0070】
[実施例1]
フィルタープレス用ダイアフラムAを具備するフィルタープレス(アタカ大機製)型濾過装置(固液分離装置)の濾過室に、固形分濃度を15質量%に調製されたトナースラリー30kgを供給し、0.5MPaで5分間圧搾した後、濾過室へイオン交換水50kgを5L/minで通水して貫通洗浄を行った。その後、圧搾されたケーキに圧縮空気を5分間通気して脱水し、圧搾エアを放圧して濾板を開枠し、湿潤ケーキAを得た。
【0071】
−ケーキ厚みの均一性の評価−
湿潤ケーキが崩れないよう、濾板を垂直に保った状態で開枠し、湿潤ケーキの上から25mm、240mm、及び、400mm3箇所のケーキ厚みを測定した。得られた結果を表1に示す。
【0072】
−ケーキ各所の洗浄性の評価−
上記3箇所のケーキを、トナー固形分量に対して1%ノニオン性界面活性剤を含んで30℃に調整された100倍量のイオン交換水にリスラリーし、30℃±2℃で制御した恒温槽内で30分超音波震盪したスラリーを濾過して得られた濾液のNa量をイオンクロマトグラフィー(東ソー(株)製、IC−2001)で測定した。得られた結果を表1に示す。
【0073】
[実施例2]
フィルタープレス用ダイアフラムBを用いる以外は、実施例1と同様の固液分離、圧搾貫通洗浄、圧搾貫通ブロー操作を行って、湿潤ケーキBを得た。湿潤ケーキBについて実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0074】
[実施例3]
フィルタープレス用ダイアフラムCを用いる以外は、実施例1と同様の固液分離、圧搾貫通洗浄、圧搾貫通ブロー操作を行って、湿潤ケーキCを得た。湿潤ケーキCについて実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0075】
[比較例1]
フィルタープレス用ダイアフラムDを用いる以外は、実施例1と同様の固液分離、圧搾貫通洗浄、圧搾貫通ブロー操作を行って、湿潤ケーキDを得た。湿潤ケーキDについて実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0076】
[比較例2]
フィルタープレス用ダイアフラムEを用いる以外は、実施例1と同様の固液分離、圧搾貫通洗浄、圧搾貫通ブロー操作を行って、湿潤ケーキEを得た。湿潤ケーキEについて実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0077】
[比較例3]
フィルタープレス用ダイアフラムFを用いる以外は、実施例1と同様の固液分離、圧搾貫通洗浄、圧搾貫通ブロー操作を行って、湿潤ケーキFを得た。湿潤ケーキFについて実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0078】
[比較例4]
フィルタープレス用ダイアフラムGを用いる以外は、実施例1と同様の固液分離、圧搾貫通洗浄、圧搾貫通ブロー操作を行って、湿潤ケーキGを得た。湿潤ケーキGについて実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【符号の説明】
【0080】
10 フィルタープレス
12 スラリー貯蔵槽
14 送液配管
16 スラリー送液ポンプ
18 洗浄液貯蔵槽
20 送液配管
22 洗浄液送液ポンプ
24 圧搾配管
26 圧搾ポンプ
28 解砕機
30 ケーキコンベア
32 濾液排出管
100 脱水ユニット
102 伸縮部
104 圧搾部
110 フィルタープレス用ダイアフラム
120 濾板
122 凹部
130 濾板
132 凹部
140 濾過室
150 濾布
152 濾布
160 スラリー注入経路
170 圧搾空気注入経路
180 洗浄液注入経路
190 排出経路
図1
図2
図3