特許第6167499号(P6167499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167499
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/06 20060101AFI20170713BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20170713BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20170713BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   F16D41/06 E
   F03D80/00
   H02K7/10 C
   H02K7/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-231728(P2012-231728)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2013-238309(P2013-238309A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年9月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-95612(P2012-95612)
(32)【優先日】2012年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 英樹
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−9575(JP,A)
【文献】 特開2008−185131(JP,A)
【文献】 特開2003−56676(JP,A)
【文献】 特開平4−92130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/00− 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力により回転する主軸と、
前記主軸の回転を入力して増速する回転伝達機構と、前記回転伝達機構の回転トルクを出力する出力軸を回転自在に支持するころ軸受とを有する増速機と、
前記出力軸の回転を入力として回転する駆動軸を有するとともに、当該駆動軸と一体回転するロータの回転に伴って発電する発電機と、を備えた発電装置であって、
前記出力軸に一体回転可能に設けられた入力回転体と、
前記駆動軸に一体回転可能に設けられ、前記入力回転体の径方向内側又は径方向外側に同心上に配置された出力回転体と、
前記入力回転体と出力回転体との間に配置され、前記入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を上回る状態で、前記入力回転体と出力回転体とを一体回転可能に接続し、前記入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を下回る状態で、前記入力回転体と出力回転体との接続を遮断する一方向クラッチと、
前記入力回転体と出力回転体とを接続した状態で前記出力軸の回転速度が所定値を超えると、前記入力回転体と出力回転体との接続を遮断する回転速度リミッタと、
前記入力回転体と出力回転体との間に配置され、当該入力回転体及び出力回転体を互いに相対回転可能に支持する転がり軸受と、を備え、
前記一方向クラッチが、内輪外周面及び外輪内周面と、当該内輪外周面と外輪内周面との間に形成された複数のくさび状空間において個別に配置された複数のころと、各ころを一方向に付勢して前記内輪外周面及び外輪内周面に噛み合わせるばねとを有し、前記各ころが前記内輪外周面及び外輪内周面に噛み合うことにより前記入力回転体と出力回転体とを一体回転可能に接続し、その噛み合いを解除することにより前記接続を遮断するものであり、
前記回転速度リミッタが、前記一方向クラッチのころが前記内輪外周面及び外輪内周面に噛み合った状態で、前記出力軸の回転速度が所定値を超えると、遠心力によって前記複数のころを前記ばねの付勢力に抗して移動させてその噛み合いを解除するものであり、
前記一方向クラッチの径方向外側に配置された前記入力回転体又は出力回転体の内周面に、前記一方向クラッチの外輪内周面と、前記転がり軸受を嵌合する嵌合面と、が一体に形成されており、
前記外輪内周面には、前記くさび状空間を形成する外輪カム面が形成され、
前記外輪カム面の最大内径寸法が、前記嵌合面の内径寸法以下に設定されており、
前記一方向クラッチは、前記複数のころを円周方向に沿って所定間隔毎に保持する環状の保持器を有し、
前記転がり軸受は、その軸方向端部に前記一方向クラッチの保持器の軸方向両端面が当接可能に、前記一方向クラッチの軸方向両側にそれぞれ隣接して一対配置されており、
前記転がり軸受は、複数の円筒ころと、この円筒ころの端面が摺接する鍔部とを有する円筒ころ軸受であり、
前記円筒ころ軸受の鍔部に、前記一方向クラッチの保持器の軸方向両端面が当接し、
前記一方向クラッチの内輪外周面は、円筒面とされており、
前記円筒ころ軸受は、前記円筒ころが転動する内輪軌道面を有し、
前記出力回転体は、前記入力回転体の径方向内側に配置され、当該出力回転体の外周面に前記一方向クラッチの内輪外周面及び前記円筒ころ軸受の内輪軌道面が形成されていることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記出力回転体は、前記駆動軸に着脱可能に固定されているとともに、前記入力回転体に対して軸方向に移動可能に配置されている請求項に記載の発電装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外力による主軸の回転を増速機により増速させて発電機を駆動する発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風力発電装置として、ブレードにより風力を受けて当該ブレードに接続された主軸を回転させ、その主軸の回転を増速させて発電機を駆動させるために、増速機が用いられるものがある。図9に示すように、この増速機202は、主軸200の回転を入力して増速する遊星歯車機構203と、この遊星歯車機構203により増速された回転を入力して、さらにその回転を増速する高速段歯車機構204と、この高速段歯車機構204の回転トルクを出力する出力軸205とを備えている。
【0003】
遊星歯車機構203は、主軸200と一体回転可能に連結された入力軸203aが回転すると、遊星キャリア203bが回転することによって、遊星歯車203cを介して太陽歯車203dが増速回転し、その回転を高速段歯車機構204の低速軸204aに伝達するようになっている。
高速段歯車機構204は、低速軸204aが回転すると、低速ギヤ204b及び第1中間ギヤ204cを介して中間軸204dを増速回転させ、さらに第2中間ギヤ204e及び高速ギヤ204fを介して出力軸205を増速回転させるようになっている。
増速機202の低速軸204a、中間軸204d及び出力軸205をそれぞれ回転自在に支持する軸受として、ころ軸受206〜211が多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、前記風力発電装置には、台風や突発的な強風等によってブレードに作用する風力が一定値以上になると、ブレードをその軸心回りに回動させて、ブレードの風を受ける面積を減少させることにより、主軸200が一定回転速度以上になるのを規制するブレード調整機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−232186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の風力発電装置では、高速回転する出力軸を支持するころ軸受において、ころの転動面や回転輪の軌道面にスメアリング(表層焼付きが起こる現象)が発生し、ころ軸受の寿命が低下するという問題があった。
また、前記ブレード調整機構が故障した場合には、発電機の駆動軸が高速回転(異常回転)して、発電機のブラシ等の摺動部が異常摩耗したり破損したりするおそれがあった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、増速機の出力軸を支持するころ軸受にスメアリングが発生するのを効果的に抑制することができるとともに、発電機の駆動軸が異常回転するのを防止することができる発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、スメアリングの発生メカニズムについて鋭意研究を重ねた。その結果、風力の低下により主軸の回転速度が急激に低下すると、重量の重い発電機のロータの慣性により、出力軸の回転速度よりも発電機の駆動軸の回転速度が上回ることによっていわゆるトルク抜け(荷重抜け)が発生し、このトルク抜けによって出力軸を支持するころ軸受に作用するラジアル荷重が減少し、ころ軸受のころと回転輪との転がり摩擦抵抗よりも、ころとそれを保持する保持器との摺動摩擦抵抗等が上回ることにより、ころの自転が遅れることを見出した。そして、この状態から風力の増加により主軸の回転速度が急激に増加したときに、増速の慣性トルクが加わり出力軸を支持するころ軸受に作用するラジアル荷重が増加するため、その瞬間にころに高荷重がかかった状態でころが回転輪との接触面で滑り、その接触面が昇温することにより、スメアリングが発生するという知見を得、かかる知見に基づいて本願発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、外力により回転する主軸と、前記主軸の回転を入力して増速する回転伝達機構と、前記回転伝達機構の回転トルクを出力する出力軸を回転自在に支持するころ軸受とを有する増速機と、前記出力軸の回転を入力として回転する駆動軸を有するとともに、当該駆動軸と一体回転するロータの回転に伴って発電する発電機と、を備えた発電装置であって、前記出力軸に一体回転可能に設けられた入力回転体と、前記駆動軸に一体回転可能に設けられ、前記入力回転体の径方向内側又は径方向外側に同心上に配置された出力回転体と、前記入力回転体と出力回転体との間に配置され、前記入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を上回る状態で、前記入力回転体と出力回転体とを一体回転可能に接続し、前記入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を下回る状態で、前記入力回転体と出力回転体との接続を遮断する一方向クラッチと、前記入力回転体と出力回転体とを接続した状態で前記出力軸の回転速度が所定値を超えると、前記入力回転体と出力回転体との接続を遮断する回転速度リミッタと、前記入力回転体と出力回転体との間に配置され、当該入力回転体及び出力回転体を互いに相対回転可能に支持する転がり軸受と、を備え、前記一方向クラッチが、内輪外周面及び外輪内周面と、当該内輪外周面と外輪内周面との間に形成された複数のくさび状空間において個別に配置された複数のころと、各ころを一方向に付勢して前記内輪外周面及び外輪内周面に噛み合わせるばねとを有し、前記各ころが前記内輪外周面及び外輪内周面に噛み合うことにより前記入力回転体と出力回転体とを一体回転可能に接続し、その噛み合いを解除することにより前記接続を遮断するものであり、前記回転速度リミッタが、前記一方向クラッチのころが前記内輪外周面及び外輪内周面に噛み合った状態で、前記出力軸の回転速度が所定値を超えると、遠心力によって前記複数のころを前記ばねの付勢力に抗して移動させてその噛み合いを解除するものであり、前記一方向クラッチの径方向外側に配置された前記入力回転体又は出力回転体の内周面に、前記一方向クラッチの外輪内周面と、前記転がり軸受を嵌合する嵌合面と、が一体に形成されており、前記外輪内周面には、前記くさび状空間を形成する外輪カム面が形成され、前記外輪カム面の最大内径寸法が、前記嵌合面の内径寸法以下に設定されており、前記一方向クラッチは、前記複数のころを円周方向に沿って所定間隔毎に保持する環状の保持器を有し、前記転がり軸受は、その軸方向端部に前記一方向クラッチの保持器の軸方向両端面が当接可能に、前記一方向クラッチの軸方向両側にそれぞれ隣接して一対配置されており、前記転がり軸受は、複数の円筒ころと、この円筒ころの端面が摺接する鍔部とを有する円筒ころ軸受であり、前記円筒ころ軸受の鍔部に、前記一方向クラッチの保持器の軸方向両端面が当接し、前記一方向クラッチの内輪外周面は、円筒面とされており、前記円筒ころ軸受は、前記円筒ころが転動する内輪軌道面を有し、前記出力回転体は、前記入力回転体の径方向内側に配置され、当該出力回転体の外周面に前記一方向クラッチの内輪外周面及び前記円筒ころ軸受の内輪軌道面が形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記のように構成された発電装置によれば、前記一方向クラッチにより、入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を上回るときは、入力回転体と出力回転体とを一体回転可能に接続し、入力回転体の回転速度が出力回転体の回転速度を下回ると、入力回転体と出力回転体との接続を遮断することができる。つまり、外力の低下により主軸を介して出力軸の回転速度が急激に低下しても、発電機のロータの慣性による回転が駆動軸を介して出力軸に伝達されるのを防止することができる。これにより、出力軸を支持しているころ軸受に作用するラジアル荷重の減少及びこれに伴うころの自転遅れを抑制することができる。したがって、この状態から外力変化により主軸の回転速度が急激に増加してころに高荷重がかかったときに、ころが回転輪との接触面で滑りにくくなるため、ころ軸受にスメアリングが発生するのを効果的に抑制することができる。
【0010】
また、前記回転速度リミッタによって、入力回転体と出力回転体とを接続した状態で前記出力軸の回転速度が所定値を超えると、前記入力回転体と出力回転体との接続を遮断することができる。このため、発電機の駆動軸が異常回転するのを防止することができる。
【0011】
また、前記一方向クラッチと回転速度リミッタとを兼用することができるので、別途回転速度リミッタを設ける場合よりも、発電装置の構造を簡素化することができる。
【0012】
また、一方向クラッチの外輪内周面が一体に形成された入力回転体又は出力回転体を、一方向クラッチの外輪として兼用することができるため、装置全体の構造を簡略化することができる。
【0013】
また、外輪内周面に形成された外輪カム面の最大内径寸法が、前記嵌合面の内径寸法以下に設定されているため、外輪カム面を冷間鍛造又は引抜き加工により容易に成形することができる。
また、一方向クラッチのころと内輪外周面及び外輪内周面との噛み合いが解除されたときに、これらの間に隙間が生じることに起因して、入力回転体と出力回転体とが互いに径方向に相対移動するのを、転がり軸受によって防止することができる。したがって、発電装置の運転中に、入力回転体及び出力回転体が径方向にがたつくのを防止することができる。
【0016】
また、一方向クラッチの保持器の軸方向両端面が、一対の転がり軸受の軸方向端部にそれぞれ当接することにより、前記保持器が軸方向両側に移動するのを規制することができる。
【0017】
また、転がり軸受の鍔部を、保持器の軸方向移動を規制する部材として兼用することができるため、転がり軸受の構造を簡略化することができる。
【0018】
また、出力回転体を、一方向クラッチの内輪内周面を有する内輪、及び各円筒ころ軸受の内輪軌道面を有する内輪として兼用することができるため、装置全体の構造を簡略化することができる。
【0020】
前記出力回転体は、前記駆動軸に着脱可能に固定されているとともに、前記入力回転体に対して軸方向に移動可能に配置されていることが好ましい。この場合、出力回転体を駆動軸から取り外して入力回転体に対して軸方向へ移動させれば、入力回転体から出力回転体を取り外すことができる。これにより、一方向クラッチの外輪及び円筒ころ軸受の外輪を同時に取り外すことができるため、一方向クラッチ及び円筒ころ軸受のメンテナンス作業を容易に行うことができる。この際、発電機を移動させる必要がないため、前記メンテナンス作業をさらに容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の発電装置によれば、増速機の出力軸を支持するころ軸受にスメアリングが発生するのを効果的に抑制することができるとともに、発電機の駆動軸が異常回転するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る風力発電装置を示す概略側面図である。
図2】前記風力発電装置における増速機のころ軸受を示す断面図である。
図3】前記風力発電装置における増速機の出力軸と発電機の駆動軸との連結部分を示す断面図である。
図4】前記風力発電装置における一方向クラッチを示す断面図である。
図5】前記風力発電装置における増速機の出力軸と発電機の駆動軸との連結部分の他の実施形態を示す断面図である。
図6図5の実施形態における一方向クラッチを示す断面図である。
図7】前記風力発電装置における増速機の出力軸と発電機の駆動軸との連結部分のさらに他の実施形態を示す断面図である。
図8図7の実施形態における一方向クラッチを示す断面図である。
図9】従来の増速機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明の一実施形態に係る風力発電装置を示す概略側面図である。この風力発電装置(発電装置)1は、風力(外力)を受けて回転する主軸2と、この主軸2に連結された増速機3と、この増速機3に連結された発電機4とを備えており、主軸2の回転を増速機3で増速した状態で、発電機4が駆動される。
【0024】
主軸2の先端部には、例えばブレード(図示省略)が一体回転可能に連結されており、このブレードは風力を受けると主軸2とともに回転するようになっている。
発電機4は、増速機3により増速された回転を入力して回転する駆動軸41と、発電機4に内蔵されたロータ42と、図示しないステータ等とを有する。ロータ42は駆動軸41に一体回転可能に連結されており、駆動軸41が回転してロータ42が駆動することに伴って発電するようになっている。
【0025】
増速機3は、主軸2の回転を入力してその回転を増速する歯車機構(回転伝達機構)30を備えている。この歯車機構30は、遊星歯車機構31と、この遊星歯車機構31により増速された回転を入力して、さらにその回転を増速する高速段歯車機構32とを備えている。
遊星歯車機構31は、内歯車(リングギヤ)31aと、主軸2に一体回転可能に連結された遊星キャリア(図示省略)に保持された複数の遊星歯車31bと、遊星歯車31bに噛み合う太陽歯車31cとを有している。これにより、前記主軸2とともに遊星キャリアが回転すると、遊星歯車31bを介して太陽歯車31cが回転し、その回転が高速段歯車機構32の低速軸33に伝達される。
【0026】
高速段歯車機構32は、低速ギヤ33aを有する前記低速軸33と、第1中間ギヤ34a及び第2中間ギヤ34bを有する中間軸34と、高速ギヤ35aを有する出力軸35とを備えている。
低速軸33は、その直径が例えば約1mの大型の回転軸からなり、主軸2と同心上に配置されている。低速軸33の軸方向両端部はころ軸受36a,36bにより回転自在に支持されている。
中間軸34は、低速軸33の上方に配置されており、その軸方向両端部はころ軸受37a,37bにより回転自在に支持されている。中間軸34の第1中間ギヤ34aは低速ギヤ33aと噛み合い、第2中間ギヤ34bは高速ギヤ35aと噛み合っている。
出力軸35は、中間軸34の上方に配置されており、回転トルクを出力するようになっている。出力軸35の軸方向の一端部35b及び他端部(出力端部)35c側は、それぞれころ軸受38,39により回転自在に支持されている。
【0027】
以上の構成により、主軸2の回転は、遊星歯車機構31のギヤ比、低速ギヤ33aと第1中間ギヤ34aとのギヤ比、及び第2中間ギヤ34bと高速ギヤ35aとのギヤ比により3段階に増速されて、出力軸35の出力端部35cから回転トルクが出力される。すなわち、風力による主軸2の回転は、増速機3により3段階に増速されて、発電機4を駆動するようになっている。
【0028】
図2は、出力軸35の一端部35bを支持するころ軸受38を示す断面図である。図2において、ころ軸受38は、円筒ころ軸受からなり、出力軸35に外嵌固定された内輪38aと、ハウジング(図示省略)に固定された外輪38bと、内輪38aと外輪38bとの間に転動可能に配置された複数の円筒ころ38cと、各円筒ころ38cを円周方向に沿って所定間隔毎に保持する環状の保持器38dとを備えている。内輪38a、外輪38b、円筒ころ38cは例えば軸受鋼によって形成されており、保持器38dは例えば銅合金によって形成されている。
【0029】
内輪38aは、その外周の軸方向中央部に形成された内輪軌道面38a1を有している。外輪38bは、内輪38aと同心上に配置されており、その内周の軸方向中央部に形成された外輪軌道面38b1と、この外輪軌道面38b1の軸方向両側に形成された一対の外輪鍔部38b2とを有している。外輪軌道面38b1は、内輪軌道面38a1に対向して配置されている。外輪鍔部38b2は、外輪38bの内周の軸方向両端部から径方向内側に向かって突出して形成されており、この外輪鍔部38b2に円筒ころ38cの端面が摺接するようになっている。
【0030】
円筒ころ38cは、内輪38aの内輪軌道面38a1と外輪38bの外輪軌道面38b1との間に転動可能に配置されている。
保持器38dは、軸方向に離反して配置された一対の円環部38d1と、この円環部38d1の周方向に沿って等間隔おきに配置されて両円環部38d1同士を連結する複数の柱部38d2とを有している。一対の円環部38d1と隣接する柱部38d2との間には、それぞれポケット38d3が形成されており、このポケット38d3内に各円筒ころ38cが配置されている。
【0031】
図1において、風力発電装置1は、増速機3の出力軸35に一体回転可能に設けられた入力回転体5と、発電機4の駆動軸41に一体回転可能に設けられた出力回転体6と、入力回転体5と出力回転体6との間に配置された一方向クラッチ7と、一方向クラッチ7の軸方向両側に配置された一対の転がり軸受8とをさらに備えている。前記一方向クラッチ7及び転がり軸受8は、出力軸35の回転を入力回転体5及び出力回転体6を介して駆動軸41に伝達するようになっている。なお、本実施形態の風力発電装置1は、転がり軸受8が一方向クラッチ7の軸方向両側に配置されているが、一方向クラッチ7の軸方向一方側のみに配置されたものであってもよい。
【0032】
図3は、増速機3の出力軸35と発電機4の駆動軸41との連結部分を示す断面図である。図3において、入力回転体5は、出力軸35と同心上に配置されており、円筒部51と、この円筒部51の軸方向他端部(図3の左端部)に形成されたフランジ部52とを有している。
フランジ部52は、円筒部51の外周面よりも径方向外側に延びて形成されており、出力軸35の出力端部35cに着脱可能に固定されている。具体的には、フランジ部52は、出力軸35の前記出力端部35cに形成されたフランジ部35c1に当接した状態で、図示しないボルト・ナットにより当該フランジ部35c1に締結固定されている。前記円筒部51の内周面は円筒面とされている。
【0033】
出力回転体6は、入力回転体5の径方向内側に同心上に配置されており、その軸方向一端部(図3の右端部)から軸方向他端部(図3の左端部)に向けて、フランジ部61、大径部62及び小径部63をこの順に有している。
フランジ部61は、大径部62の外周面よりも径方向外側に延びて形成されており、駆動軸41に着脱可能に固定されている。具体的には、フランジ部61は、駆動軸41に形成されたフランジ部41aに当接した状態で、図示しないボルト・ナットにより当該フランジ部41aに締結固定されている。なお、小径部63の端面と出力軸35のフランジ部35c1の端面との間には、隙間S1が形成されている。
【0034】
入力回転体5の円筒部51における軸方向一端部(図3の右端部)の内周面と、出力回転体6の大径部62の外周面との隙間には、当該円筒部51と大径部62との間の環状空間を密封するための環状のシール部材10が設けられている。なお、入力回転体5の円筒部51の前記一端部側の端面と、この端面に対向する出力回転体6のフランジ部61の端面との間には、隙間S2が形成されている。この隙間S2と前記隙間S1とにより、駆動軸41から出力回転体6を切り離した状態で、出力回転体6は入力回転体5に対して軸方向に移動可能となっている。
【0035】
図4は、一方向クラッチ7を示す断面図である。図3及び図4において、一方向クラッチ7は、外輪71及び内輪72と、この外輪71の内周面71aと内輪72の外周面72aとの間に配置された複数のころ73とを備えている。
外輪71は、入力回転体5の円筒部51の軸方向中央部に内嵌して固定されており、入力回転体5と一体回転するようになっている。出力回転体6における小径部63の軸方向中央部の領域Bは、一方向クラッチ7の内輪72とされている。ころ73は、円柱形状であり、本実施形態では周方向に8つ配置されている。
【0036】
一方向クラッチ7は、各ころ73を円周方向に沿って所定間隔毎に保持する環状の保持器74と、各ころ73を一方向に弾性的に付勢する複数の弾性部材(ばね)75とをさらに備えている。
保持器74は、軸方向に対向する一対の円環部74aと、両円環部74aの間で軸方向に延びかつ周方向等間隔に配列されて当該両円環部74aを連結する複数の柱部74bとを有している。両円環部74aと隣接する柱部74bとの間には複数のポケット74cが形成されており、各ポケット74cに各ころ73が個別に収容されている。
弾性部材75は、圧縮コイルバネからなり、保持器74の各ポケット74cに個別に収容されて柱部74bに取り付けられている。
【0037】
図4において、外輪71の内周面71aにはころ73と同数(8つ)の平坦な外輪カム面71a1が形成されている。各外輪カム面71a1は外輪71の内周面71aの接線Lに対して径方向外方へ所定角度X(例えば7〜10°)傾斜している。また、外輪カム面71a1は、ころ73が時計回り方向に移動した状態(図4に示す状態)で当該ころ73が接触する部分Yを挟んで周方向の両側に一定長さ延びている。以上により、外輪カム面71a1と内輪外周面72aとの間には、くさび状空間Sが周方向に複数(8つ)形成されている。
【0038】
各ころ73は各くさび状空間Sに個別に配置されており、弾性部材75がころ73をくさび状空間Sが狭くなる方向に付勢している。ころ73の外周面は、外輪カム面71a1及び内輪外周面72aに接触する接触面73aとなっており、この接触面73aは幅方向(軸方向)に真っ直ぐに形成されている。なお、一方向クラッチ7は、内外輪72,71間に、基油にエステル、増ちょう剤にウレア系のもの等を用いた温度変化に影響をうけにくい潤滑剤であるグリースが設けられた環境にある。
【0039】
このように構成された一方向クラッチ7では、入力回転体5が増速回転することにより、入力回転体5の回転速度が、出力回転体6の回転速度を上回る場合には、外輪71が内輪72に対して一方向(図4の反時計回り方向)に相対回転しようとする。この場合、弾性部材75の付勢力により、ころ73はくさび状空間Sが狭くなる方向へ僅かに移動して、ころ73の接触面73aが外輪カム面71a1及び内輪外周面72aに圧接し、一方向クラッチ7はころ73が内外輪72,71の間に噛み合った状態となる。これにより、内外輪72,71は前記一方向に一体回転可能となり、入力回転体5と出力回転体6とを一体回転可能に接続することができる。
【0040】
また、入力回転体5が増速回転後に一定速回転となり、入力回転体5の回転速度が、出力回転体6の回転速度と同一になった場合には、ころ73が内外輪72,71の間に噛み合った状態で保持される。このため、一方向クラッチ7は、内外輪72,71の前記一方向への一体回転を維持し、入力回転体5及び出力回転体6は一体回転し続ける。
【0041】
一方、入力回転体5が減速回転することにより、入力回転体5の回転速度が、出力回転体6の回転速度を下回る場合には、外輪71が内輪72に対して他方向(図4の時計回り方向)に相対回転しようとする。この場合には、弾性部材75の付勢力に抗して、ころ73がくさび状空間Sが広くなる方向へ僅かに移動することにより、ころ73と内外輪72,71との噛み合いが解除される。このように、ころ3の噛み合いが解除されることで、入力回転体5と出力回転体6との接続が遮断される。
【0042】
前記した一方向クラッチ7において、弾性部材75の付勢力は、ころ73が内外輪72,71の間に噛み合った状態で、出力軸35が一定の回転速度を超えると、各ころ73に作用する強い遠心力によって、各ころ73が外輪カム面71a1に沿って内輪外周面72aから離れる方向へ移動するのを許容する値に設定されている。これにより、外輪カム面71a1と協動して一方向クラッチ7に回転速度リミッタ機能を付加している。なお、前記「一定の回転速度」とは、発電機4の駆動軸41を安全に回転させることができる限界値であり、例えば2500〜4000rpmの範囲に設定される。
【0043】
したがって、一方向クラッチ7の各ころ73を内外輪72,71の間に噛み合わせて、発電機4を駆動させた状態で、出力軸35が一定の回転速度を超えると、各ころ73に作用する遠心力によって、各ころ73が弾性部材75の付勢力に抗して外輪カム面71a1に沿って移動して、各ころ73と内外輪72,71との噛み合い状態が解除される。これにより、強風によって主軸2が一定回転速度以上になるのを規制するためのブレード調整機構が、何らかの原因で作動しなかったとしても、発電機4の駆動軸41が許容回転速度を超える高速で回転するのを防止することができる。
【0044】
図3において、一対の転がり軸受8は、入力回転体5の円筒部51と出力回転体6の小径部63との間にそれぞれ配置されており、入力回転体5及び出力回転体6を互いに相対回転可能に支持している。また、各転がり軸受8は、その軸方向端部に一方向クラッチ7の保持器74の軸方向両端面にそれぞれ当接可能に、前記一方向クラッチ7の軸方向両側にそれぞれ隣接して配置されている。
【0045】
転がり軸受8は、外輪81及び内輪82と、外輪81と内輪82との間に転動可能に配置された複数の円筒ころ83とを備えた円筒ころ軸受からなる。
外輪81は、内周に形成された外輪軌道面81aと、この外輪軌道面81aの軸方向両側において径方向内側に向かって突出して形成された外輪鍔部81bとを有している。各外輪鍔部81bの内側面には、円筒ころ83の両端面がそれぞれ摺接するようになっている。また、一方向クラッチ7に隣接する外輪鍔部81bの外側面81b1は、一方向クラッチ7の保持器74の軸方向端面である円環部74aの外側面が当接する当接面とされている。
【0046】
出力回転体6における小径部63の軸方向両端部の領域A及び領域Cは、転がり軸受8の内輪82とされており、この領域A,Cの各外周面が内輪82の内輪軌道面82aとして構成されている。この内輪軌道面82aと外輪軌道面81aとの間には、円筒ころ83が転動可能に配置されている。
【0047】
以上のように構成された風力発電装置1によれば、増速機3の出力軸35とともに一体回転する入力回転体5と、発電機4の駆動軸41とともに一体回転する出力回転体6との間に配置した一方向クラッチ7により、入力回転体5の回転速度が出力回転体6の回転速度を下回ると、入力回転体5と出力回転体6との接続を遮断することができる。つまり、風力の低下により主軸2を介して出力軸35の回転速度が急激に低下しても、発電機4のロータ42の慣性による回転が駆動軸41を介して出力軸35に伝達されるのを防止することができる。これにより、出力軸35を支持しているころ軸受38に作用するラジアル荷重の減少及びこれに伴う円筒ころ38cの自転遅れを抑制することができる。したがって、この状態から風力変化により主軸2の回転速度が急激に増加して円筒ころ38cに高荷重がかかったときに、円筒ころ38cが内輪38aとの接触面で滑りにくくなるため、ころ軸受38にスメアリングが発生するのを効果的に抑制することができる。
【0048】
また、ロータ42の慣性による回転が出力軸35に伝達されるのを防止することにより、増速機3のころ軸受36a,36b,37a,37b,38,39等に作用する負荷を低減することができる。これにより、遊星歯車機構31の各歯車31b,31cや、高速段歯車機構32の各軸33〜35及びころ軸受36a,36b,37a,37b,38,39をいずれも小型化することができるため、増速機3を軽量化することができ、かつ低コストで製造することができる。
さらに、入力回転体5と出力回転体6との接続を遮断することにより、発電機4のロータ42は、急激に減速することなく慣性によって回転し続けるため、ロータ42の平均回転速度を上げることができる。これにより、発電機4の発電効率を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態においては、弾性部材75の付勢力を調整するとともに、外輪カム面71a1を、各ころ73が遠心力にて内輪外周面72aから離れるのを許容する形状に形成することにより、一方向クラッチ7に回転速度リミッタの機能を付加しているので、部品点数を増やすことなく当該回転速度リミッタを簡単に構成することができる。
【0050】
また、入力回転体5と出力回転体6との間には、これらを互いに相対回転可能に支持する転がり軸受8が配置されているため、一方向クラッチ7においてころ73と内外輪72,71との噛み合いが解除されることにより、くさび状空間Sでころ73と内外輪72,71との間に隙間が発生したときに、転がり軸受8によって入力回転体5及び出力回転体6が互いに径方向に相対移動するのを防止することができる。したがって、風力発電装置1の運転中に、入力回転体5及び出力回転体6が径方向にがたつくのを防止することができる。
【0051】
また、一対の転がり軸受8を、その軸方向端部に一方向クラッチ7の保持器74の軸方向両端面が当接可能に、一方向クラッチ7の軸方向両側にそれぞれ隣接して配置したので、各転がり軸受8の軸方向端部に前記保持器74の軸方向両端面を当接させることにより、前記保持器74が軸方向両側に移動するのを規制することができる。
また、転がり軸受8の外輪鍔部81bに、一方向クラッチ7の保持器74の軸方向両端面(円環部74aの外側面)を当接させるため、転がり軸受8の外輪鍔部81bを、前記保持器74の軸方向移動を規制する部材として兼用することができる。これにより、転がり軸受8の構造を簡略化することができる。
【0052】
また、出力回転体6の外周面に、一方向クラッチ7の内輪外周面72a及び転がり軸受8の内輪軌道面82aを形成したので、出力回転体6を、一方向クラッチ7の内輪72、及び各転がり軸受8の内輪82として兼用することができる。これにより、風力発電装置1全体の構造を簡略化することができる。
また、出力回転体6は、発電機4の駆動軸41に着脱可能に固定されるとともに、入力回転体5に対して軸方向に移動可能に配置されているため、出力回転体6を駆動軸41から取り外して入力回転体5に対して軸方向へ移動させれば、入力回転体5から出力回転体6を取り外すことができる。これにより、一方向クラッチ7の内輪72及び転がり軸受8の内輪82を同時に取り外すことができるため、一方向クラッチ7及び転がり軸受8のメンテナンス作業を容易に行うことができる。この際、発電機4を移動させる必要がないため、前記メンテナンス作業をさらに容易に行うことができる。
【0053】
図5は増速機の出力軸と発電機の駆動軸との連結部分の他の実施形態を示す断面図であり、図6図5の実施形態における一方向クラッチを示す断面図である。
この実施形態が図3及び図4に示す実施形態と主に相違する点は、出力回転体60を入力回転体50の径方向外側に配置している点であり、図3に示す実施形態と同じ部分については同じ符号を付している。
【0054】
入力回転体50は、図3に示す実施形態における出力回転体6と同じ形状のものを、図5において左右対称に配置し、その軸方向一端部(図5の左端部)のフランジ部51を、出力軸35のフランジ部35c1に着脱可能に固定している。
出力回転体60は、図3に示す実施形態における出力回転体6と同じ形状のものを、図5において左右対称に配置し、そのフランジ部62を、駆動軸41のフランジ部41aに着脱可能に固定している。
【0055】
図5において、一対の転がり軸受8の内輪82は、入力回転体50の小径部53と別の部材で構成されている。
内輪82は、外周に形成された内輪軌道面82aと、この内輪軌道面82aの軸方向両側において径方向外側に向かって突出して形成された内輪鍔部82bとを有している。この内輪82は入力回転体50の小径部53の外周に一体回転可能に嵌合されている。
各内輪鍔部82bの内側面には、円筒ころ83の両端面がそれぞれ摺接するようになっている。また、一方向クラッチ7に隣接する内輪鍔部82bの外側面82b1は、一方向クラッチ7の保持器74の軸方向端面である円環部74aの外側面が当接する当接面とされている。
【0056】
出力回転体60における円筒部61の軸方向両端部の領域A及び領域Cは、転がり軸受8の外輪81とされており、この領域A,Cの各内周面に外輪81の外輪軌道面81aが形成されている。この外輪軌道面81aと内輪軌道面82aとの間には、円筒ころ83が転動可能に配置されている。
【0057】
図6は、一方向クラッチ7を示す断面図である。この一方向クラッチ7の基本的な構成は図4に示す一方向クラッチ7と同じである。すなわち、一方向クラッチ7は、内輪72及び外輪71と、この内輪72の外周面72aと外輪71の内周面71aとの間に配置された複数のころ73とを備えている。
内輪72は、入力回転体50の小径部53の軸方向中央部に外嵌して固定されており、小径部53と一体回転するようになっている。出力回転体60における円筒部61の軸方向中央部の領域Bは、一方向クラッチ7の外輪71とされている。したがって、円筒部71の領域Bの内周面に、前記内周面71aが形成されている。
なお、入力回転体50の大径部52と出力回転体60の左端部の内周との間の環状空間は、シール部材10によって密封されている。
【0058】
このように構成された一方向クラッチ7についても、図3に示す一方向クラッチ7と同じ作用効果を奏することができる。特に、この実施形態においては、出力回転体60の円筒部61の内周面に、一方向クラッチ7の外輪内周面71a及び転がり軸受8の外輪軌道面81aを形成したので、出力回転体60を、一方向クラッチ7の外輪71、及び各転がり軸受8の外輪81として兼用することができる。これにより、風力発電装置1全体の構造を簡略化することができる。
【0059】
図7は増速機の出力軸と発電機の駆動軸との連結部分のさらに他の実施形態を示す断面図であり、図8図7の実施形態における一方向クラッチを示す断面図である。
この実施形態が図3及び図4に示す実施形態と主に相違する点は、一方向クラッチ7の構成が異なる点であり、図3に示す実施形態と同じ部分については同じ符号を付している。
【0060】
図7及び図8において、一方向クラッチ7の外輪71は、その径方向外側に配置された入力回転体5の内周面5aと一体に形成されている。外輪71の内周面71aには、くさび状空間Sを形成する外輪カム面71a1が形成されている。
外輪カム面71a1の最大内径寸法d1(接線Lに対して径方向外方に最も離れている点における内径寸法)は、入力回転体5の内周面5a(転がり軸受8の外輪81が圧入される面)の内径寸法d2以下に設定されている。
【0061】
上記寸法に設定された外輪カム面71a1は、冷間鍛造又は引抜き加工により成形することができる。例えば、冷間鍛造により入力回転体5を成形する際は、内周面5a及び外輪71を一体成形した後、内周面5aの内径寸法d2以下に形成されたパンチを、入力回転体5の一端側から内周面5aに沿って挿入する。これにより、外輪71の内周面71aに、複数の外輪カム面71a1を同時に成形することができる。したがって、外輪71の内周面71aに外輪カム面71a1を1個ずつ切削する必要がないので、外輪カム面71a1を容易に成形することができる。
【0062】
図8において、外輪71の内周面71aには、弾性部材75の一端部をころ73に当接させた状態で、弾性部材75の他端部が当接する当接部76が一体に形成されている。当接部76は、外輪カム面71a1の周方向一端部から連続して形成されるとともに、径方向内方に突出して形成されている。当接部76は、弾性部材75の前記他端部が当接する当接面76aと、この当接面76aに当接している弾性部材75が遠心力によって径方向外方へ移動するのを規制する規制面76bとを有している。これにより、弾性部材75は、その両端部を外輪71の内周面71aところ73との間に当接した状態で保持される。したがって、この実施形態の一方向クラッチ7は、図3に示す弾性部材75を取り付けるための保持器74を備えていない。
【0063】
なお、この実施形態では、図3に示す実施形態の変形例として説明したが、図5に示す実施形態の変形例としてもよい。この場合、出力回転体60の領域Bの内周面に形成される外輪カム面71a1の最大内径寸法を、出力回転体60の領域A,Cの内周面の内径寸法以下に設定すればよい。
また、この実施形態では、一方向クラッチ7の弾性部材75を外輪内周面71aに形成された当接部76により保持されているが、図4に示す実施形態のように、保持器74により保持されていてもよい。
【0064】
このように構成された一方向クラッチ7についても、図3に示す一方向クラッチ7と同じ作用効果を奏することができる。特に、この実施形態においては、一方向クラッチ7の外輪内周面71aを入力回転体5の内周面5aに一体に形成したので、入力回転体5を一方向クラッチ7の外輪71として兼用することができる。これにより、装置全体の構造を簡略化することができる。
また、外輪カム面71a1の最大内径寸法d1が、入力回転体5の内周面5aの内径寸法d2以下に設定されているため、上述のように外輪カム面71a1を冷間鍛造又は引抜き加工により容易に成形することができる。
また、一方向クラッチ7の外輪内周面71aには、弾性部材75の一端部をころ73に当接させた状態で弾性部材75の他端部が当接する当接部76が形成されているため、弾性部材75をころ73と当接部76との間で保持することができる。これにより、弾性部材75を保持するための保持器が不要になるため、装置全体の構造をさらに簡略化することができる。
【0065】
なお、本発明は、前記の実施形態に限定されることなく適宜変更して実施可能である。例えば、本実施形態においては、入力回転体及び出力回転体が、それぞれ出力軸及び駆動軸に対して別部材として設けられているが、それぞれ出力軸及び駆動軸と一体に形成されていてもよい。
また、入力回転体と出力回転体との間に配置される転がり軸受は、出力回転体を軸方向へ移動させるために円筒ころ軸受としているが、出力回転体を軸方向へ移動させない場合には玉軸受としてもよい。
【0066】
さらに、本実施形態の発電装置は、外力として風力を用いる場合について例示したが、水力や火力等の他の外力を用いて発電する発電装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1:風力発電装置(発電装置)、2:主軸、3:増速機、4:発電機、5:入力回転体、6:出力回転体、7:一方向クラッチ、8:転がり軸受(円筒ころ軸受)、30:歯車機構(回転伝達機構)、35:出力軸、38:ころ軸受、41:駆動軸、42:ロータ、50:入力回転体、60:出力回転体、71a:内周面(外輪内周面)、71a1:外輪カム面、72a:外周面(内輪外周面)、73:ころ、74:保持器、75:弾性部材(ばね)、76:当接部、81a:外輪軌道面、81b:外輪鍔部、82a:内輪軌道面、82b:内輪鍔部、83:円筒ころ、d1:最大内径寸法、d2:内径寸法、S:くさび状空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9