特許第6167538号(P6167538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6167538地中構造物の構築用の足場構造、及び、地中構造物の構築用の足場の設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167538
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】地中構造物の構築用の足場構造、及び、地中構造物の構築用の足場の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 1/36 20060101AFI20170713BHJP
   E02D 17/04 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   E04G1/36 302Z
   E02D17/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-18699(P2013-18699)
(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2014-148855(P2014-148855A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2016年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】安成 直人
(72)【発明者】
【氏名】丹下 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸和
(72)【発明者】
【氏名】青木 峻二
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−032581(JP,U)
【文献】 特開2010−229627(JP,A)
【文献】 特開2009−185556(JP,A)
【文献】 特開平11−303110(JP,A)
【文献】 特開平11−050653(JP,A)
【文献】 特開平10−159325(JP,A)
【文献】 特開2009−281136(JP,A)
【文献】 特開平09−296600(JP,A)
【文献】 実開昭60−068234(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/36
E04G 3/20
E04G 5/04
E02D 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に行くに従って掘削領域側に寄るように構築された土留壁と、
前記土留壁に前記掘削領域の底部から離間した状態で支持され、前記掘削領域に地中構造物を構築するのに用いられる、複数段に設けられた足場と
を備え
前記足場の幅は、下段から上段にかけて次第に広くなっている地中構造物の構築用の足場構造。
【請求項2】
最上段の前記足場を支持する支持部には補強部材が設けられ、最下段の前記足場を支持する支持部には補強部材が設けられていない請求項1に記載の地中構造物の構築用の足場構造。
【請求項3】
土留壁を下方に行くに従って掘削領域側に寄るように構築して前記掘削領域を掘削し、
前記掘削領域に地中構造物を構築するのに用いる足場を、前記土留壁に前記掘削領域の底部から離間した状態で支持されるように、複数段に設置し、前記足場の幅を、下段から上段にかけて次第に広くする地中構造物の構築用の足場の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中構造物の構築用の足場構造、及び、地中構造物の構築用の足場の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中構造物の構築方法として、地中構造物を構築する領域を囲むように土留壁を鉛直に構築して該土留壁に囲まれた領域を掘削してから、地中構造物を構築するための足場を、土留壁の近傍において掘削底面から上側へと組み上げていき、その後、地中構造物を、掘削底面から上側へと構築していく方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−254753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の地中構造物の構築方法では、足場を掘削底面から上側へと組み上げていくが、掘削底面での配筋やコンクリート打設等の低所での作業に足場は不要であり、低所への足場の設置は、無駄な作業となる。また、その不要な低所の足場を設置するためには、設置スペースを掘削する必要があり、掘削量が無駄に増加する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、地中構造物の構築用の足場を、効率の良い構成にすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の地中構造物の構築用の足場構造は、下方に行くに従って掘削領域側に寄るように構築された土留壁と、前記土留壁に前記掘削領域の底部から離間した状態で支持され、前記掘削領域に地中構造物を構築するのに用いられる、複数段に設けられた足場とを備え、前記足場の幅は、下段から上段にかけて次第に広くなっている。
【0007】
本発明において、最上段の前記足場を支持する支持部には補強部材が設けられ、最下段の前記足場を支持する支持部には補強部材が設けられていないこととしてもよい。
【0008】
また、本発明の地中構造物の構築用の足場の設置方法は、土留壁を下方に行くに従って掘削領域側に寄るように構築して前記掘削領域を掘削し、前記掘削領域に地中構造物を構築するのに用いる足場を、前記土留壁に前記掘削領域の底部から離間した状態で支持されるように、複数段に設置し、前記足場の幅を、下段から上段にかけて次第に広くするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地中構造物の構築用の足場を、効率の良い構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る足場構造を示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る足場構造を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る足場構造100を示す斜視図であり、図2は、該足場構造100を示す立断面図である。これらの図に示すように、足場構造100は、下方に向って掘削領域1側に傾斜するように構築された土留壁10と、土留壁10に掘削領域1の底部から離間した状態で支持され、掘削領域1に地中構造物2(例えば、図示するようにRC造のボックスカルバート)を構築するのに用いられる足場20とを備えている。
【0012】
土留壁10は、下方に向って掘削領域1側に傾斜するように構築された鋼矢板壁であり、複数の鋼矢板12が掘削領域1の外縁に沿って直線的に並んで連結されると共に、鉛直面Vに対して所定の傾斜角度(例えば、10°)で下方に延びる構成となっている。ここで、複数の鋼矢板12は、互いに隣り合ってジョイント12Jで連結される物同士が、平面視において複数の連結点が直線的に並ぶように打設されている。
【0013】
足場20は、複数段の単管足場であり、足場20の各段は、足場板22と、横方向に延びる横パイプ23からなる手摺24と、手摺24の底部に設置された幅木26と、足場20の各段を土留壁10に支持する複数段の支持部30とを備えている。
【0014】
各段の支持部30は、土留壁10に固定された複数の形鋼32を備えている。この複数の形鋼32は、足場板22の下に足場板22の長手方向に沿って配されており、各形鋼32は、各縦パイプ21毎に設けられ、土留壁10から水平方向に突出している。各形鋼32には、縦パイプ21及び足場板22が固定されており、足場20の各段は、各段の複数の形鋼32により土留壁10に支持されている。
【0015】
最上段の支持部30は、複数の補強鋼材34を備えている。各補強鋼材34は、各形鋼32毎に設けられた斜材であって、一端は土留壁10に固定され、他端は形鋼32の下部に固定されており、各形鋼32を補強している。ここで、補強鋼材34は、足場20の各段の幅や積載荷重等に応じて、強度計算上必要であれば設置すればよい。
【0016】
縦パイプ21は、鉛直に配されており、その縦パイプ21と、上方に向って掘削領域1の反対側へ傾斜した土留壁10との間に、足場20の各段が設けられている。そのため、足場20の各段の幅は、下段から上段にかけて次第に広くなっており、形鋼32の長さは、下段から上段にかけて次第に長くなっている。また、本実施形態では、鉄筋や型枠材等が足場20の最上段に積載されることから足場20の最上段の積載荷重が大きくなっている。従って、最上段の形鋼32は、長いと共に大きな力を受けるが故に強度計算上、補強鋼材34が必要となっているのに対して、下側の形鋼32は補強鋼材34が不要となっている。
【0017】
土留壁10と地中構造物2との間隔は、足場20を設置して足場20上で配筋やコンクリート打設や防水処理等の作業を実施でき、作業者が昇降できるように設定されている。ここで、土留壁10と地中構造物2との間隔は、下方に向って次第に狭くなっており、掘削領域1の底部では、土留壁10が地中構造物2の近傍に位置し、土留壁10と地中構造物2との間隔が、既製品の足場の最小幅よりも狭い600mm以下とすることが可能になっている。
【0018】
以上のような構成の足場構造100は、まず、土留壁10を下方に向って掘削領域1側に傾斜するように構築して掘削領域1を掘削し、その後、足場20を、土留壁10に掘削領域1の底部から離間した状態で支持されるように設置することによって構築する。足場20を設置する際には、まず、形鋼32及び補強鋼材34をボルトにより土留壁10に溶接等により固定し、その後、横パイプ23を形鋼32に金具を用いて固定し、横パイプ23と縦パイプ21とを金具を用いて組み上げ、足場板22と幅木26とを形鋼32に固定する。なお、横パイプ23と縦パイプ21との固定方法は、溶接でもボルトによる締結でもよい。
【0019】
以上説明したように、本実施形態に係る足場構造100では、土留壁10が下方に向って掘削領域1側に傾斜するように構築され、地中構造物2を構築するのに用いられる足場20が、土留壁10に掘削領域1の底部から離間した状態で支持されている。ここで、掘削領域1の底部での配筋やコンクリート打設等の作業に足場は不要であるところ、本実施形態に係る足場構造100によれば、掘削領域1の底部から足場20を組み上げるのではなく、掘削領域1の底部から離間した高さから足場20を組み上げることによって、配筋やコンクリート打設等の作業に必要な範囲に限って足場20を設置することができ、足場20を効率の良い構成にすることができる。
【0020】
また、掘削領域1の底部から足場を組み上げる場合には、不要な低所の足場を設置するための掘削が必要になり、掘削量が無駄に増加するところ、本実施形態に係る足場構造100によれば、その無駄な掘削を不要にでき、掘削量を低減できる。特に、本実施形態に係る足場構造100では、掘削領域1の底部において土留壁10が地中構造物2の近傍に位置するように、土留壁10を構築したことによって、掘削量をさらに低減できる。
【0021】
また、本実施形態に係る足場構造100では、下方に向って掘削領域1側へ傾斜した土留壁10を構築して、その土留壁10に足場20を支持させているため、土留壁10の背面側の地盤によっても、足場20の荷重が受け止められる。従って、支持部30や土留壁10による足場20の荷重の負担が軽減されるため、形鋼32や補強鋼材34の剛性を抑えて材料のコストを低減することができる。
【0022】
また、本実施形態に係る足場構造100では、土留壁10を下方に向って掘削領域1側へ傾斜するように構築したことによって、足場20の幅、即ち足場20の土留壁10からの突出量が、上側から下側へかけて次第に狭く(小さく)なっている。これによって、下側の形鋼32の長さを補強が不要な長さにまで短くすることができ、下側の支持部30の補強鋼材34を不要にして材料のコストを低減することができる。
【0023】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、土留壁10を鋼矢板壁としたが、鋼管矢板壁や親杭横矢板壁やソイルセメント柱列壁等の他の土留壁にしてもよい。また、上述の実施形態では、土留壁10を直線的に下方に延びる構成としたが、曲線的に湾曲しながら下方に延びる構成としてもよい。また、上述の実施形態では、土留壁10を、鋼矢板12が掘削領域1の外縁に沿って直線的に並んで連結されるように構成したが、曲線的に並んで連結されるように構成してもよい。さらに、上述の実施形態では、足場20を単管足場としたが、枠組足場等の他の足場にしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 掘削領域、2 地中構造物、10 土留壁、12 鋼矢板、12J ジョイント、20 足場、21 縦パイプ、22 足場板、23 横パイプ、24 手摺、26 幅木、30 支持部、32 形鋼、34 補強鋼材、100 足場構造
図1
図2