【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2012年8月21日 ウェブサイト http://jsiam2012.kashi.info.waseda.ac.jp/〜kashi/download/で公開された日本応用数理学会2012年度年会講演予稿集に公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る流体最適化方法及び流体最適化装置の一実施形態についての説明に先立ち、本発明の考え方について説明する。
【0014】
まず、基礎方程式の定式化について説明する。本発明は、流路の入口から供給されて出口に至るまでの流体のエネルギ損失が最小限となる流路形状(最適な流路形状)を短時間で得ることを目的とするものである。本発明では、最適な流路形状を得るために、流体解析の手法として、格子ボルツマン法を用いる。格子ボルツマン法は、ナビエ−ストークス方程式の近似工程式としてボルツマン方程式を格子上で離散化して解く手法である。このような格子ボルツマン法は、計算の過程で収束計算を必要とせず、単純な四則演算のみで数値計算を行うため、ナビエ−ストークス方程式を用いた計算と比較して収束性が良くかつ計算時間も短い。
【0015】
また、本発明では、最適化の過程で流体と固体とを区別するために多孔質媒体モデルを用い、設計変数は多孔質媒体モデルの各位置の空隙率とする。また、本発明では、格子ボルツマン法による非定常計算を1タイムステップ計算するごとに感度解析(感度の計算)を行い、この感度解析に基づいて空隙率を更新する。このため、比較的短時間で最適化計算を終えることができる。なお、非定常計算中に空隙率を更新すると一般的な流体解析では収束性が悪くなることが予測されるが、格子ボルツマン法を用いることで安定して計算を行うことができる。
【0016】
多孔質媒体モデルとしては、例えばブリンクマンモデルを使用する。この場合の流体の支配方程式は、[数1]に示す通りである。なお、[数1]において、εは空隙率、Fは流体に働く外力、pは圧力、uは流体の速度ベクトル、νは粘性係数、αは自由に設定できる定数を示している。
【0018】
これを、格子ボルツマン法を用いて解く場合、[数2]の式にしただって計算すれば良い。なお、[数2]において、fiはi方向の速度分布関数、f
eqiは平衡分布関数、f
coliは便宜上使用している変数、F
iはi方向の外力項、δ
tは時間ステップ幅、e
iはi方向の格子速度ベクトル、w
iは重み係数、τは時間緩和係数、cは格子速度(定数)を示している。
【0020】
なお、多孔質媒体モデルを用いた格子ボルツマン法については、下記文献に詳しく記載されており、ここでの詳細な説明は省略する。
【0021】
Z. Guo and T. S. Zhao, Lattice Boltzmann model for incompressible flows through porous media, PHISICAL REVIEW E, 66 (2002), 036304.
【0022】
続いて、最適化問題の定式化について説明する。本発明では、流れにおけるエネルギ散逸を目的関数として最適化を行う。ここでの最適化問題は、[数3]〜[数6]の式に示すようになる。なお、[数3]に示す目的関数は、[数4]の式及び[数5]の式によって定義される。ここで、[数4]の式すなわち[数3]の式の第一項は粘性項に起因する粘性散逸を示し、[数5]の式すなわち[数3]の式の第二項は多孔質媒体の抵抗に起因する摩擦損失を示す。なお、[数3]において、Dは粘性散逸関数、Cは摩擦損失関数、Tは計算終了時刻を示す。また、[数4]において、pは自由に設定できる定数(例えばp=2〜5程度、Ωは設計領域を示す。また、[数6]において、Vは設計者が指定する規定体積を示す。
【0027】
ここで、最適化問題におけるフローチャートを
図1に示す。
図1に示すように、本発明では、初期化の工程と(ステップS1、ステップS2及びステップS3)と、最適化の工程(ステップS4、ステップS5、ステップS6、ステップS7及びステップS8)とに大別される。
【0028】
まずステップS1においては、初期条件の設定を行う。ここでは、流体の流量や流速の設定、流体の物性値(粘性等)の設定、多孔質媒体モデルの定義(例えば流体の入口位置や出口位置の設定)等を行う。続いて、ステップS2では、ステップS1で設定した初期条件に基づいて格子ボルツマン法を用いて計算を行う。ステップS3では、ステップS2による計算が収束したか否かを判定し、収束していない場合には引き続きステップS2を行う。なお、ステップS3では、ステップS2の計算結果が周期的な流れを示す状態である場合においても収束したと判定する。これらのステップS1、ステップS2及びステップS3とで構成される初期化工程により、多孔質媒体モデルに入口から出口を繋ぐ流路が形成される。
【0029】
なお、本発明において初期化工程は、必ずしも必須の工程ではない。例えば、予め流路が形成された多孔質媒体モデルを利用することによって初期化工程を省略しても良い。また、初期化工程では、格子ボルツマン法以外の手法によって収束計算を行っても良い。
【0030】
上述のステップS3で計算が収束したと判定された場合には、最適化工程に移行する。最適化工程では、初期工程によって流路が形成された多孔質媒体モデルに対して流体が供給されるところから計算が開始される。まず、ステップS4において格子ボルツマン法で非定常流れを1タイムステップのみ計算を行う(流れ場計算工程)。すなわち、ステップS4では、T=1において、[数4]〜[数6]の式に基づいて上述の[数3]の式を解くことにより、流体解析により流れ場を求める。
【0031】
続いてステップS5では感度を計算する(感度計算工程)。ここでは、流れ場の形状を変更(すなわち空隙率を仮に変更)し、[数7]の式を用いて感度を計算する。なお、[数7]の式のうち「数8」で示す部分は感度を示し、[数9]で示す係数は制約条件を満たすための修正係数であり、[数10]で示す部分は制約条件を満たすための修正項である。
【0036】
なお、[数7]を解くにあたり、[数11]で示す式を用いる。
【0038】
また、本発明のように格子ボルツマン法を用いる場合には[数12]となる。なお、[数12]において、f
eqは平衡分布関数、ρは密度、u(太字)は速度ベクトル、e(太字)は格子点での粒子速度、cはc=dx/dtで、dxは格子間距離、dtは時間刻み幅である。αは多孔質媒体モデルでの抵抗に相当し、εの関数である。τは緩和時間係数と呼ばれ、レイノルズ数に依存する定数である。また、βは便宜上使用する変数である。
【0040】
なお、[数11]及び[数12]には、[数13]で示す式が含まれている。
【0042】
この[数13]で示す式は、ナビエ−ストークスの式を用いた場合には陽に解けないので随伴変数法が必要になるのに対して、格子ボルツマン法を用いた場合には陽に解けるので、随伴変数法は不要となる。
【0043】
続いて、ステップS6では空隙率の更新を行う(形状更新工程)。ここでは、[数14]を用いて、εをステップS5で求めたdεだけ更新する。なお、ステップS6では、ステップS5で感度計算した結果、最も感度の高いものに基づいて更新を行う。
【0045】
続いて、ステップS7では、収束判定を行う。ここでは、例えば、求められた目的関数の変動両が予め記憶された基準値を下回った場合に、収束したものとする。ここで、収束していないと判定された場合には、タイムステップを単位時間だけ進め、タイムステップの更新(ステップS8)を行った後、再びステップS4を行う。一方、ステップS7で収束していると判定された場合には、最適化が完了したものとして終了する。
【0046】
次に、上述したような本発明の考え方を実現するための本実施形態の流路形状最適化装置10について説明する。
図2は、本実施形態の流路形状最適化装置10のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。
【0047】
本実施形態の流路形状最適化装置10は、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータによって構成されるものであり、CPU1(演算処理手段)、記憶装置2、リムーバブルメディアドライブ3、入力装置4、出力装置5、及び通信装置6を備えている。
【0048】
CPU1は、記憶装置2、リムーバブルメディアドライブ3、入力装置4、出力装置5、及び通信装置6と電気的に接続されており、これらの各種装置から入力される信号を処理すると共に、処理結果を出力するものである。このCPU1は、流路形状最適化プログラムPに基づいて、流れ場の形状が更新されなくなる状態となるまで収束計算を行う。なお、流れ場の形状が更新されなくなる状態とは、例えば、流れ場が定常状態となった場合や、流れ場の形状変化の程度が予め設定された基準値よりも小さくなった場合を示す。
【0049】
記憶装置2は、メモリ等の内部記憶装置及びハードディスクドライブ等の外部記憶装置によって構成されており、CPU1から入力される情報を記憶すると共にCPU1から入力される指令に基づいて記憶した情報を出力するものである。この記憶装置2は、プログラム記憶部2aとデータ記憶部2bとを備えている。
【0050】
プログラム記憶部2aは、流路形状最適化プログラムPを記憶している。この流路形状最適化プログラムPは、所定のOSにおいて実行されるアプリケーションプログラムであり、コンピュータから構成される本実施形態の流路形状最適化装置10に、
図1で示すフローチャートに沿った処理(流路形状最適化方法)を実行させる。
【0051】
データ記憶部2bは、多孔質媒体モデルデータD1、目的関数データD2、計算条件データD3、初期値データD4、計算結果データD5等を記憶する。多孔質媒体モデルデータD1は、上述した多孔質媒体モデルを定義するデータが含まれており、例えば、多孔質媒体モデルの形状データや、特性データが含まれている。目的関数データD2は、例えば、[数3]〜[数5]の式を示すデータである。計算条件データD3は、[数2]、[数6]、[数7]、[数12]及び[数14]の式を示すデータである。初期値データD4は、流体の流量や流速、流体の物性値(粘性等)を示すデータである。これらの多孔質媒体モデルデータD1、目的関数データD2、計算条件データD3及び初期値データD4は、例えば、リムーバブルメディアドライブ3、入力装置4あるいはネットワークN等を介して入力される。なお、計算結果データD5は、CPU1が計算した結果を示すデータであり、最終的な演算結果やその途中で生成される中間データを含む。
【0052】
リムーバブルメディアドライブ3は、DVD(Digital Versatile Disc)やUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のリムーバブルメディアを取り込み可能あるいは接続可能に構成されており、CPU1から入力される指令に基づいて、リムーバブルメディアに記憶されるデータを出力するものである。例えば、リムーバブルメディアに流路形状最適化プログラムPが記憶されている場合には、リムーバブルメディアドライブ3は、CPU1から入力される指令に基づいて、リムーバブルメディアに記憶される流路形状最適化プログラムPを出力する。なお、流路形状最適化プログラムPは、必ずしもリムーバルディスクに格納されている必要はない。例えば、ネットワークNを介して流路形状最適化プログラムPの取得を行い、この取得した流路形状最適化プログラムPを記憶装置2に記憶させるようにしても良い。
【0053】
入力装置4は、本実施形態の流路形状最適化装置10と作業者とのマンマシンインターフェイスであり、ポインティングデバイスであるキーボード4aやマウス4bを備えている。出力装置5は、CPU1から入力される信号を可視化して出力するものであり、ディスプレイ5a及びプリンタ5bを備えている。
【0054】
通信装置6は、本実施形態の流路形状最適化装置10とネットワークNとを電気的に接続し、ネットワークNに接続された他の機器との間においてデータの受け渡しを行うものである。なお、ネットワークNとしては、社内LAN(Local Area Network)やインターネット等が考えられる。
【0055】
このような本実施形態の流路形状最適化装置10は、流路形状最適化プログラムPに基づいて、
図1で示すフローチャートに沿った処理(流路形状最適化方法)を実行する。すなわち、CPU1は、流路形状最適化プログラムPに基づいて、ステップS1〜ステップS8の処理を実行することによって、最適化された流路形状を求める。
【0056】
まずCPU1は、初期条件の設定を行う。ここでは、CPU1は、リムーバブルメディアドライブ3、入力装置4あるいは通信装置6から入力される目的関数、流体の流量や流速の、流体の物性値、多孔質媒体モデルデータ等を、多孔質媒体モデルデータD1、目的関数データD2、計算条件データD3及び初期値データD4としてデータ記憶部2bに記憶させる。続いて、CPU1は、これらのデータを用い、流路形状最適化プログラムPに基づいて、格子ボルツマン法を用いた流体解析を行い、計算が収束あるいは周期的な流れが形成された時点で計算を終了する。これらの工程は、上述した初期化工程に相当し、この工程によって多孔質媒体モデルに対して入口と出口とを繋ぐ流路が形成される。
【0057】
CPU1は、上述のように多孔質媒体モデルに対して流路が形成されると、この流路形状の最適化を行う。ここでは、CPU1は、まず流路形状最適化プログラムPに基づいて、格子ボルツマン法を用いた流体解析で非定常流れを1タイムステップのみ流れ場の計算を行う。CPU1は、この計算を、多孔質媒体モデルデータD1、目的関数データD2、計算条件データD3及び初期値データD4を用いて行ない、その計算結果を計算結果データD5としてデータ記憶部2bに記憶させる。さらにCPU1は、流路形状最適化プログラムPに基づいて、上述のステップS5で説明した感度の計算及びステップS6で説明した空隙率の更新を行うことで流路形状(流れ場の形状)を変化させ、解が収束するまでタイムステップの進行を行いながら、格子ボルツマン法による流体解析、感度の計算及び空隙率の更新を続ける。そして、CPU1は、解が収束すると、その流路形状(流れ場の形状)を最適解とする。
【0058】
以上のような本実施形態の流路形状最適化装置10及び流路形状最適化方法によれば、流れ場が非定常状態のうちに流れ場の計算と、流れ場の形状を変更した場合の感度計算と、感度に基づく流れ場の形状の更新とを繰り返す。このため、最終的に解が収束して流れ場の形状が更新されなくなる状態となったときには、最適な流れ場の形状(すなわち流路形状)を得ることができる。このような本実施形態の流路形状最適化装置10及び流路形状最適化方法によれば、最適化工程において1度の収束計算によって流路の最適形状を得られるため、流体解析による流路形状の最適化に要する時間を極めて短縮することができる。
【0059】
また、本実施形態の流路形状最適化装置10及び流路形状最適化方法によれば、格子ボルツマン法を用いた流体解析を行うことによって流れ場を計算している。格子ボルツマン法を用いた流体解析は、単純な四則演算のみで数値計算をおこなうため、ナビエ−ストークス方程式を用いた流体解析と比較して収束性が良くかつ計算時間も短い。このため、本実施形態の流路形状最適化装置10及び流路形状最適化方法によれば、安定してかつ短時間で流路形状の最適化を行うことが可能となる。
【0060】
また、本実施形態の流路形状最適化装置10及び流路形状最適化方法によれば、各位置における空隙率を設定可能な多孔質媒体モデルを用い、この多孔質媒体モデルの内部に流れを形成し、感度に基づいて空隙率を更新することによって流れ場の形状を更新している。このため、空隙率の更新により容易に流れ場の形状を変化させることができる。
【0061】
なお、
図3〜
図10を参照して、上記実施形態に即した本発明の実施例について説明する。
【0062】
(第1実施例)
図3(a)は、本実施例で用いた二次元多孔質媒体モデルを示す模式図である。この図に示すように、本実施例においては、左辺全域が流体の入口とされ、右辺の中央が流体の出口とされた多孔質媒体モデルを用いている。また、本実施例では、レイノルズ数を10としている。
図3(b)は、本実施例におけるタイムステップと流体損失(目的関数の計算値)との関係を示すグラフである。
図3(b)において、「D」は粘性散逸関数に基づくグラフであり、「C」は摩擦損失関数に基づくグラフであり、「total」は粘性散逸関数と摩擦損失関数とに基づく(すなわち目的関数に基づく)グラフである。また、
図4は、タイムステップ(図中Step)が0、100、200、300、400、500、700、1000のときの流路形状を可視化した図である。なお、
図4においては、黒く示している部分が流路である。
【0063】
本実施例においては、
図3(b)及び
図4から分かるように、450ステップまでは物理的に意味のある解を探索し、その後細部の最適化に移行している。また、本実施例において計算が破綻することはない。このような本実施例における計算時間は30.1秒であった。一方、従来手法(流路形状を変更するたびに収束計算を行う手法)で同様の最適化をおこなったところ、計算結果は同じであったが、計算時間は約5分であった。このことから、本発明が極めて短時間で最適化を完了できることが確認された。
【0064】
(第2実施例)
図5(a)は、本実施例で用いた二次元多孔質媒体モデルを示す模式図である。この図に示すように、本実施例においては、左辺の中央及び下辺の左寄りの部位が流体の入口とされ、上辺の左寄りの部位が流体の出口とされた多孔質媒体モデルを用いている。また、本実施例では、レイノルズ数を10としている。
図5(b)は、本実施例におけるタイムステップと流体損失(目的関数の計算値)との関係を示すグラフである。
図5(b)において、「D」は粘性散逸関数に基づくグラフであり、「C」は摩擦損失関数に基づくグラフであり、「total」は粘性散逸関数と摩擦損失関数とに基づく(すなわち目的関数に基づく)グラフである。また、
図6は、タイムステップ(図中Step)が0、1000、2000、3000、4000、5000、6000、6800のときの流路形状を可視化した図である。なお、
図6においては、黒く示している部分が流路である。
【0065】
本実施例においては、
図5(b)及び
図6から分かるように、3000ステップまでは物理的に意味のある解を探索し、その後細部の最適化に移行している。また、本実施例においては部分的に乱流になり、目的関数が振動した。このような本実施例における計算時間は195.5秒であった。
【0066】
(第3実施例)
図7(a)は、本実施例で用いた二次元多孔質媒体モデルを示す模式図である。なお、
図7(a)における矢印が流れのベクトルを示しており、本実施例では多孔質媒体モデルの左辺全域が入口、右辺全域が出口とされ、上辺と下辺にも境界条件として流れ(外部流れ)が与えられている。つまり、この図に示すように、本実施例においては、二次元多孔質媒体モデルが流れの中に晒されている。また、本実施例では、レイノルズ数を0.1としている。
図7(b)は、本実施例におけるタイムステップと流体損失(目的関数の計算値)との関係を示すグラフである。
図7(b)において、「D」は粘性散逸関数に基づくグラフであり、「C」は摩擦損失関数に基づくグラフであり、「total」は粘性散逸関数と摩擦損失関数とに基づく(すなわち目的関数に基づく)グラフである。また、
図8は、タイムステップ(図中Step)が0、300、500、700、1000、1300、1500、2500のときの流路形状を可視化した図である。なお、本実施例では、
図8において黒く示している部分が流路であり、
図8(a)に描かれている円形の物体が、形状の初期状態として多孔質媒体モデルとして与えられており、この物体の形状が計算の過程で変化する。
【0067】
本実施例においては、600ステップまでは体積制約を満たす解を探索し、その後細部の最適化に移行している。このような本実施例における計算時間は72.6秒であった。
【0068】
(第4実施例)
図9(a)は、本実施例で用いた二次元多孔質媒体モデルを示す模式図である。この図に示すように、本実施例においては、左辺の中央が流体の入口とされ、右辺の中央が流体の出口とされ、さらに中央に円部を有する多孔質媒体モデルを用いている。なお、本実施例では、円部は回転される円柱等を模擬しており、回転速度Urotで時計回りに回転されている。また、本実施例では、レイノルズ数を100としている。
図9(b)は、本実施例におけるタイムステップと流体損失(目的関数の計算値)との関係を示すグラフである。
図9(b)において、「D」は粘性散逸関数に基づくグラフであり、「C」は摩擦損失関数に基づくグラフであり、「total」は粘性散逸関数と摩擦損失関数とに基づく(すなわち目的関数に基づく)グラフである。また、
図10は、タイムステップ(図中Step)が0、1000、2000、3000、4000、5000、6000、9500のときの流路形状を可視化した図である。なお、
図10においては、黒く示している部分が流路である。
【0069】
本実施例においては、8000ステップまでは全領域で乱流化している。また、流体領域と目的関数とが振動し、最終的にはほぼ層流になって安定した。このような本実施例における計算時間は266.7秒であった。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0071】
例えば、上記実施形態においては、最適化工程において格子ボルツマン法を用いた流体解析を行う構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、収束性の低下について許容できるのであれば、最適化工程において他の流体解析手法を用いても良い。
【0072】
また、上記実施形態においては、空隙率を変化させることによって流路の形状を変化させる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の方法にて流路の形状を変化させる構成を採用することも可能である。