特許第6167589号(P6167589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167589
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】アスファルト合材付着防止剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
   C09K3/00 R
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-59176(P2013-59176)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-185199(P2014-185199A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】江花 寛厚
(72)【発明者】
【氏名】水田 元就
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−127761(JP,A)
【文献】 特開2006−182859(JP,A)
【文献】 特開2007−302710(JP,A)
【文献】 特開平10−121028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される化合物(A)と、炭素数が8〜18の炭化水素基またはアシル基を有し、かつスルホン酸塩または硫酸塩を有するアニオン性界面活性剤(B)とを含有し、(A)および(B)の各質量比が(A)90〜98質量%、(B)2〜10質量%であるアスファルト合材付着防止剤。
1O−(EO)m(PO)n−R ・・・(1)
(Rは炭素数が1〜4の炭化水素基であり、Rは水素原子または炭素数が1〜4の炭化水素基である。EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基である。mはオキシエチレン基の平均付加モル数、nはオキシプロピレン基の平均付加モル数であり、m+nは2〜25である。EOとPOの各含有量の合計に対するEOの含有量の割合は40〜100質量%である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラック等の荷台でのアスファルト合材を傾斜角度の低い状態でも滑落させ易く、荷台の接触面が汚れ難く、荷台での液の残存性に優れ、水で希釈後も常温ないし低温下での安定性に優れるアスファルト合材付着防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト合材の製造工場やアスファルト合材を取扱う道路舗装現場では、装置や機器へのアスファルト合材の付着を防止することが作業性を低下させないために重要である。その中でアスファルト合材の運搬に使用されるダンプトラック等の荷台(以下、単に「荷台」とも言う。)はアスファルト合材が付着しやすく、付着量が多いと作業効率の低下を招く。さらに舗装現場で荷台を傾けてアスファルト合材を落とす場合、住宅地や市街地の舗装現場では、電線や看板などの障害があることが多いので、荷台を充分に大きく傾けるスペースが無いこともある。したがって、アスファルト合材が荷台に付着し難いことのみならず、低傾斜角度でも速やかに荷台から滑落することが重要である。
【0003】
従来は、軽油や重油を、アスファルト合材を積載する前に、あらかじめ荷台に散布することでこれら問題を解決していた。しかし、軽油や重油を使用すると散布した油が荷台外に一部流出することがあり、散布量相応の付着防止効果が得られず、また環境上の問題も生じていた。さらに、これらの油はアスファルトを溶解するので、アスファルトの溶解分で荷台の接触面が汚れるといった問題もあった。そのため、軽油や重油と同等以上の性能で、環境上の問題が生じ難く、外部へ流出し難いアスファルト合材付着防止剤が望まれている。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために、特許文献1には、アルキル硫酸エステルナトリウムと、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウムと、ヤシ油を混合してなる加熱アスファルト合材の付着防止剤が開示され、特許文献2には、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類の非イオン性界面活性剤および動植物油脂を含有する水溶性潤滑油組成物がアスファルト混合物付着防止剤として利用できることが開示されている。
しかし特許文献1および特許文献2の付着防止剤は、水で希釈直後は付着防止性に優れ、傾斜角度が低くても速やかに滑落するものの、経時で油水分離が生じて、水希釈液タンク内の上下層で濃度勾配が生じ易い。そのため、濃度が低い層が散布された場合は、付着防止性に優れず、低傾斜角度で滑落し難くなるという問題があった。さらに、溶解したアスファルトで荷台が汚れるといった問題も軽油や重油と同様に生じていた。
【0005】
また、特許文献3および特許文献4には、テルペン系化合物とノニオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤を含有する付着防止剤が開示されている。
しかし特許文献3および特許文献4の付着防止剤では、荷台の汚れは低減されるものの、それでも汚れは残るという問題があった。また、油水分離を発生し、濃度が低い層が散布された場合は、やはり低傾斜角度ではアスファルト合材が滑落し難く、安定した付着防止効果は得られなかった。
【0006】
さらに、特許文献5には、ポリオキシアルキレングリコール誘導体を含有する付着防止剤が開示され、特許文献6には、オレフィン・マレイン酸共重合体と、アルキルベタイン等の界面活性剤と、水溶性の多価アルコールとからなるアスファルト付着防止剤組成物が開示されている。
しかし特許文献5の付着防止剤では、水で希釈後も経時での分離はなく安定した付着防止効果が得られ、荷台の汚れも少ないものの、希釈直後でも合材が低傾斜角度では滑落し難いという問題があった。特許文献6の付着防止剤組成物も同様に、水で希釈後も経時での分離はなく安定した付着防止性が得られ、荷台の汚れも少ないものの、希釈直後でも低傾斜角度では合材が滑落し難かった。
【0007】
特許文献7には、水溶性多糖類、アルキルベタイン等の界面活性剤、水溶性の多価アルコールを用いたアスファルト合材付着防止剤が開示されている。
しかし特許文献7の付着防止剤では、散布表面への液の残存性は改善されるものの、一方で、低傾斜角度では合材が滑落し難いという問題があった。
【0008】
したがって、低傾斜角度でもアスファルト合材を荷台から速やかに滑落させることができ、水溶性で経時での分離がし難く安定して付着防止効果が得られ、荷台を汚し難く、荷台からの液の流出を低減するアスファルト合材付着防止剤は得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−121028号公報
【特許文献2】国際公開第2003/035809号
【特許文献3】特開2006−182859号公報
【特許文献4】特開2009−144030号公報
【特許文献5】特開平8−127761号公報
【特許文献6】特開2011−063787号公報
【特許文献7】特開2012−211248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、その目的は、ダンプトラック等の荷台でのアスファルト合材を傾斜角度の低い状態でも滑落させ易く、荷台の接触面が汚れ難く、荷台での液の残存性に優れ、水で希釈後も常温ないし低温下での安定性に優れるアスファルト合材付着防止剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定のアルキレンオキシド誘導体と特定のアニオン性界面活性剤を含有するアスファルト合材付着防止剤が、傾斜角度が低い状態でも速やかにアスファルト合材が滑落し、荷台の接触面が汚れ難く、液の残存性に優れ、水で希釈後も常温ないし低温下での安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下に示すアスファルト合材付着防止剤である。
式(1)で示される化合物(A)と、炭素数が8〜18の炭化水素基またはアシル基を有し、かつスルホン酸塩または硫酸塩を有するアニオン性界面活性剤(B)とを含有し、(A)および(B)の各質量比が(A)90〜98質量%、(B)2〜10質量%であるアスファルト合材付着防止剤。
1O−(EO)m(PO)n−R ・・・(1)
(Rは炭素数が1〜4の炭化水素基であり、Rは水素原子または炭素数が1〜4の炭化水素基である。EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基である。mはオキシエチレン基の平均付加モル数、nはオキシプロピレン基の平均付加モル数であり、m+nは2〜25である。EOとPOの各含有量の合計に対するEOの含有量の割合は40〜100質量%である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明のアスファルト合材付着防止剤は、ダンプトラック等の荷台でのアスファルト合材を傾斜角度の低い状態でも滑落させ易く、荷台の接触面が汚れ難く、荷台での液の残存性に優れ、水で希釈後も常温ないし低温下での安定性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明のアスファルト合材付着防止剤は、(A)成分および(B)成分を含有する。なお、(A)成分および(B)成分の各質量比の合計は100質量%である。まず、式(1)で示される(A)成分について説明する。
【0015】
〔(A)成分〕
本発明で用いられる(A)成分は式(1)で示される化合物である。
【0016】
1O−(EO)m(PO)n−R ・・・(1)
【0017】
式(1)で示される化合物において、Rは炭素数が1〜4の炭化水素基であり、Rは水素原子または炭素数が1〜4の炭化水素基である。炭素数が1〜4の炭化水素基は、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基である。Rはメチル基が好ましく、Rは水素原子が好ましい。
【0018】
EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基である。mはオキシエチレン基の平均付加モル数、nはオキシプロピレン基の平均付加モル数である。両平均付加モル数の総和(m+n)は2〜25であり、好ましくは6〜10である。m+nが2未満であるとアスファルト合材が滑り出す傾斜角度(以下、滑り出し角度ともいう。)が大きくなるおそれがあり、また水希釈後の安定性が悪くなるおそれがある。m+nが25を超えると滑り出し角度が大きくなるおそれがある。
【0019】
EOとPOの各含有量の合計に対するEO含有量の割合は40〜100質量%であり、好ましくは100質量%である。EO含有量の割合が40質量%未満であると、荷台の接触面の汚れが多くなったり、水希釈後の安定性が悪くなったりするおそれがある。EOとPOの配列順序は特に限定がなく、EOとPOがブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよいが、ランダム状に付加していることが好ましい。
【0020】
式(1)で示される化合物は、公知の方法で製造することができ、例えば、炭素数1〜4の一価アルコールに所定量のエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを付加重合することによって得られる。
【0021】
なお、一価アルコールにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを付加重合する段階においては、上述のとおり、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとがランダム状に重合していても、ブロック状に重合していても良い。また、オキシエチレン基(EO)やオキシプロピレン基(PO)の各平均付加モル数、EOとPOの各含有量の合計に対するEO含有量の割合は、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの各使用量を調整することによって、適宜設定することができる。
【0022】
本発明のアスファルト合材付着防止剤における(A)成分の含有率は、90〜98質量%であり、好ましくは93〜95質量%である。90質量%未満または98質量%を超えると滑り出し角度が大きくなるおそれがある。
【0023】
〔(B)成分〕
本発明で用いられる(B)成分は、炭素数が8〜18の炭化水素基またはアシル基を有し、かつスルホン酸塩または硫酸塩を有するアニオン性界面活性剤である。アスファルト合材からの熱による安定性の面から、好ましくはスルホン酸塩である。
(B)成分は、具体的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アシルイセチオン酸塩、アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンの平均付加モル数が1〜5であるポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアシルアミドエーテル硫酸塩等がある。その中でも、滑落性、希釈液の残存性の面から、アミド基を有するポリオキシエチレンアシルアミドエーテル硫酸塩、アシルメチルタウリン塩が好ましく、さらにアスファルト合材からの熱による安定性の面から、アシルメチルタウリン塩が好ましい。
【0024】
(B)成分のアニオン性界面活性剤における炭化水素基またはアシル基の炭素数はいずれも8〜18であり、好ましくは10〜14である。炭化水素基およびアシル基は、混合脂肪酸由来のアシル基を含んでいてもよい。
炭化水素基およびアシル基は、具体的には、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、イソオクタデシル基、ヤシ油アルキル基、2−エチルヘキサノイル基、イソオクタノイル基、ノナノイル基、3,5,5−トリメチルヘキサノイル基、デカノイル基、イソデカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、イソヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル基、オクタデセノイル基、イソオクタデカノイル基、ヤシ油アシル基が挙げられ、好ましくはドデシル基、ドデカノイル基、ヤシ油アルキル基、ヤシ油アシル基である。
【0025】
(B)成分の塩を形成する対イオンは、例えば、アルカリ金属またはアルカノールアミン等である。具体的には、アルカリ金属ではリチウム、ナトリウム、カリウム等であり、アルカノールアミンではモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等である。好ましくは、滑落性、液の残存性の面から、トリエタノールアミンである。
(B)成分のアニオン性界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
本発明のアスファルト合材付着防止剤における(B)成分の含有率は、2〜10質量%であり、好ましくは5〜7質量%である。2質量%未満であると滑り出し角度が大きくなったり、液の残存性が低下したり、荷台の接触面の汚れが多くなるおそれがあり、10質量%を超えると滑り出し傾斜角度が大きくなるおそれがある。
【0027】
本発明のアスファルト合材付着防止剤において、(A)成分および(B)成分を有効成分として含有させることによって、傾斜角度が小さい状態でのアスファルト合材の滑落や接触面の汚れの防止を達成することができる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、(A)成分と(B)成分を混合したアスファルト合材付着防止剤は、まず、ダンプ荷台等の表面のみならず、アスファルト合材の表面を速やかに被覆し、ダンプ荷台等の表面とアスファルトの間に液膜を形成する。その際、(B)成分はアスファルト合材表面に速やかに吸着して表面をアニオン化し、(A)成分の被膜を促進する。
本発明のアスファルト合材付着防止剤は、アスファルト合材を取り扱う150℃程度の高温でも液膜を保持し、かつ適度な粘性を有して滑落性を発現すると推察される。その際に、本発明のアスファルト合材付着防止剤は、鉱物油や油脂等とは異なり、液膜がイオン化して極性が高くなっており、極性の低い油性成分であるアスファルトの溶出を防ぐことができるので、荷台の接触面を汚し難いと推察される。また本発明のアスファルト合材付着防止剤は、散布時に速やかに泡を発生し、流動性を抑えることができるので、液の残存性を向上させることができると推察される。
【0028】
〔アスファルト合材付着防止剤〕
本発明のアスファルト合材付着防止剤は、上述のとおり、表面で泡が多く存在することで流動性が減少し、荷台での液の残存性を向上させると推察される。したかって、通常の散布方法、例えばPETボトル等の散布でも泡が発生し、液の残存性を向上させることができるが、泡噴射器等を使用して積極的に泡を発生させる条件で散布するのが好ましい。
本発明のアスファルト合材付着防止剤は、原液で使用しても良いが、通常は水で希釈して使用する。希釈倍率は原液に対して水で3〜100質量倍、好ましくは5〜20質量倍である。
【0029】
本発明のアスファルト合材付着防止剤は、ダンプトラック等のアスファルト合材運搬車両における荷台、フィニッシャー、マカダムローラー、タイヤローラー等の舗装機器に使用することができる。また、アスファルト合材工場におけるホッパー、スキップエレベータ等の工場内設備に使用することもできる。
なお、アスファルト合材は、アスファルトを結合材として、骨材(砂利や砂、一部融解スラグ等)やフィラーを混合した混合材料であり、道路等の舗装に使用される。
【0030】
本発明のアスファルト合材付着防止剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール、有機または無機塩類、pH調整剤、殺菌剤、キレート剤、色素、香料などを含有してもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例において、EOはオキシエチレン基、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレンである。
【0032】
(A)成分、(B)成分および他の成分を用いてアスファルト合材付着防止剤を調製し、下記の試験を行なった。実施例および比較例に使用した(A)成分を表1に示す。また、実施例の付着防止剤の組成と結果を表2に、比較例の付着防止剤の組成と結果を表3にそれぞれ示す。全ての試験において「○」および「◎」の評価の付着防止剤を合格とした。
【0033】
(1)アスファルト合材滑り試験および汚れ試験
200mlビーカー中にて、各アスファルト合材付着防止剤を10ml秤量し、90mlの水で10倍に希釈し、スターラーチップを用いて25℃で10分間攪拌した。その後、希釈液を100mlスクリュー管に50ml入れて、吸い込みノズルがスクリュー管の底部に届くようスプレー噴射口を取り付けた。
10倍に希釈した付着防止剤1gをSS400鋼板(寸法80cm×50cm)に噴霧した後、その噴霧した面に、150℃に加熱したストレートアスファルト合材(密粒度アスファルト合材、ストレートアスファルト:6質量%、ストレートアスファルト針入度60〜80:JIS K 2207)500gを積載して放置し、80℃になった時点で鉄板を傾斜させ、アスファルト合材が滑り出す傾斜角度(滑り出し角度)を測定した。
また、アスファルト合材が滑落した後の鋼板表面の外観を確認した。
アスファルト合材付着防止剤の希釈液は、希釈直後の液と、25℃で1週間静置した後の液とを用いて各々試験を行った。付着防止性の評価は、下記の評価基準に従い行なった。
【0034】
(滑落性評価基準)
◎:40°以下で全て落下する。
○:40°より大きく50°以下で全て落下する。
△:50より大きく80°以下で全て落下する。
×:80°より大きい角度で全て落下する、あるいは80°より大きい角度でも落下しない。
【0035】
(汚れ防止性評価基準)
◎:鋼板面に褐色の付着物がほとんど見られない。
○:鋼板面のアスファルト合材が接触していた部分に褐色の付着物が点々もしくは斑状に見られる。
×:鋼板一面に茶褐色の付着物が見られる。
【0036】
(2)希釈液の残存性評価試験
各アスファルト合材付着防止剤を水で10倍に希釈した液を、20cm×15cmのSS400鋼材に泡噴射器で約1gスプレーした後、鋼材を45°の角度に傾斜させ、10分後の希釈液の残留量を測定した。
残存率(%)を以下の計算式で求め、残存率から以下のように判定した。
残存率(%)={(塗布量−10分後の残存量)/塗布量}×100
【0037】
(残存性評価基準)
◎:残存率が95%以上である。
○:残存率が95%未満、90%以上である。
×:残存率が90%未満である。
【0038】
(3)希釈液の外観
各アスファルト合材付着防止剤を水で希釈した液を−5℃、25℃の恒温槽に1週間静置した後、次の3段階の基準で外観を評価した。
○:均一かつ透明で、分離は見られない。
△:一部分離が見られる。
×:分離が見られる。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
本発明に係る実施例1〜13のアスファルト合材付着防止剤は、式(1)で示される化合物(A)、炭素数が8〜18の炭化水素基またはアシル基を有し、かつスルホン酸塩または硫酸塩を有するアニオン性界面活性剤(B)を含有しているので、傾斜角度が低い状態でもアスファルト合材が滑落し、荷台の付着面が汚れ難い上に、1週間後もこれらの効果は変わらず、荷台での液の残存性に優れ、水希釈液が常温ないし低温下で安定であった。
【0043】
一方、(A)成分の代わりに、オキシエチレンの付加モル数が1であるエチレングリコールモノブチルエーテルを含有した付着防止剤(比較例1)は、液の残存性は良好であるが、水希釈安定性が良好でなく、滑落性、汚れ防止性が不良であった。
(A)成分の代わりに、オキシエチレンの付加モル数が45であるポリエチレングリコールモノメチルエーテルを含有した付着防止剤(比較例2)は、汚れ防止性、液の残存性、水希釈安定性が良好であるが、滑落性が良好でない。
(A)成分の代わりに、オキシエチレンのモル数が5であるポリエチレングリコールを含有する付着防止剤(比較例3)は、汚れ防止性、液の残存性は良好であるが、水希釈安定性、滑落性が良好でない。
(A)成分の代わりに、グリセリンを含有する付着防止剤(比較例4)は、汚れ防止性、液の残存性、水希釈安定性が良好であるが、滑落性が良好でない。
【0044】
(B)成分の代わりに、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノベタインを含有する付着防止剤(比較例5)は、汚れ防止性、液の残存性、水希釈安定性が良好であるが、滑落性が良好でない。
(B)成分の代わりに、ドデカノイルリン酸ナトリウム塩を含有する付着防止剤(比較例6)は、汚れ防止性、液の残存性、水希釈安定性が良好であるが、滑落性が良好でない。
(B)成分の代わりに、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリドを含有する付着防止剤(比較例7)は、汚れ防止性、水希釈安定性が良好であるが、滑落性、液の残存性が不良であった。
【0045】
大豆油、パーム油とポリエチレングリコール(30モル)ソルビット脂肪酸テトラオクタデセネートを含有する付着防止剤(比較例8)、(A)成分の代わりにd−リモネンとソルビタンモノオクタデセネート、(B)成分であるスルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩を含有する付着防止剤(比較例9)、(A)成分であるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、(B)成分の代わりにd−リモネン、1−デセン、オクタデセン酸ジエタノールアミン塩を含有する付着防止剤(比較例10)は、いずれも、希釈直後の滑落性は良好であるものの、1週間静置後は分離が発生し良好な結果が得られていない。また希釈直後の鋼板の汚れ防止性、液の残存性、水希釈後の安定性が不良であった。なお、1週間静置後の鋼板の汚れ防止性が「○」となっている理由は、液が分離して濃度が低い層が散布されたためと推察される。
【0046】
(A)成分であるPOP(10)POE(9)モノブチルエーテル(EO41質量%)を含有し、(B)成分を含有しない付着防止剤(比較例11)、(A)成分の代わりにPOE(7)POP(17)POE(7)ブロックコポリマー(EO40質量%)を含有し、(B)成分を含有しない付着防止剤(比較例12)は、いずれも、汚れ防止性、水希釈安定性が良好であるが、滑落性が良好でなく、液の残存性が不良であった。
(A)成分の代わりにグリセリンを含有し、(B)成分の代わりにヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノベタイン、さらにキサンタンガムを含有する付着防止剤(比較例13)は、汚れ防止性、液の残存性、水希釈安定性が良好であるが、滑落性が不良であった。