(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の接着シートおよび電子部品を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0032】
<接着シート>
図1は、本発明の接着シートの実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、
図1中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0033】
本発明の接着シートの形態について、具体的に例を挙げて説明する。
【0034】
図1に示した接着シート10(10a、10b、10c)は、電極が形成された電極部材同士を電気的に接続する際に用いられるものであり、接着フィルム1と、この接着フィルム1に接合された下地フィルム2(2a、2b、2c)とから各々構成されているものである。
【0035】
ここで、電極が形成された電極部材としては特に限定されないが、例えば、半導体チップ、半導体ウエハ、有機リジッド回路基板、フレキシブル回路基板などの有機回路基板、セラミック回路基板などが挙げられる。
図1(a)に示した接着シート10aの形態では、下地フィルム2aは接着フィルム1側から積層された第一の最外層21と、第1の最外層21の反対側から積層された第2の最外層22の2層から構成されている。
図1(b)に示した接着シート10bの形態では、下地フィルム2bは接着フィルム1側から積層された第1の最外層21と、第1の最外層21の反対側から積層された第2の最外層22、及び、これら2つの層の間に位置する層23の3層から構成されている。
図1(c)に示した接着シート10cの形態では、下地フィルム2cは接着フィルム1側から積層された第1の最外層21と、第1の最外層21の反対側から積層された第2の最外層22、及び、これら2つの層の間に位置する層24、層25、層26の5層から構成されている。
【0036】
なお、本発明において、「第1の最外層」とは、下地フィルムを構成する層のうち、接着フィルムが積層される側の外層を指し、「第2の最外層」とは、下地フィルムを構成する層のうち、上記「第1の最外層」と反対側の外層を指すものである。
【0037】
なお、以下では、電気的に接続すべき電極部材の一例として、半導体チップと回路基板とを用意し、半導体チップが備える端子と、回路基板が有する回路が備える端子とを電気的に接続する場合を一例に説明する。
【0038】
まず、接着シート10を構成する接着フィルム1および下地フィルム2について、順次説明する。
【0039】
<接着フィルム1>
接着フィルム1は、半導体チップと回路基板との間に形成される空隙に充填される封止樹脂として機能する。特に、接着フィルム1がフラックス機能を有するものである場合は、接着フィルム1の加熱時には、回路基板が備える端子、及び、半導体チップが備える端子の少なくとも一方に対応するように設けられた半田バンプが溶融した際に、半田バンプの表面に形成された酸化膜を除去して、溶融状態の半田バンプの濡れ性を向上させる機能を有するものである。
【0040】
この接着フィルム1は、例えば、
(A)エポキシ樹脂(以下、化合物(A)と呼称することがある)と、
(B)硬化剤(以下、化合物(B)と呼称することがある)と、
(C)フラックス機能を有する化合物(以下、化合物(C)と呼称することがある)と、(D)成膜性樹脂(以下、化合物(D)と呼称することがある)と、
を含有する樹脂組成物から形成されるものであることが好ましい。
【0041】
(A)エポキシ樹脂
本発明の接着シートに用いられる接着フィルム1を構成する樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含有することが好ましい。
これにより、上述したような接着フィルム1をより容易に製造することができ、さらに、下地フィルム2との剥離性をより好適な水準とすることができる。
【0042】
エポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、メトキシナフタレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノール型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセンジオール型エポキシ樹脂、及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂を単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0043】
接着フィルム1を形成する樹脂組成物中における上記(A)エポキシ樹脂の含有量としては特に限定されないが、樹脂組成物(接着フィルム1)全体に対して、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、同様に、好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
これにより、接着フィルム1の柔軟性と屈曲性をより効果的に発現させることができる。また、これにより、接着フィルム1のタック力が強くなり、ハンドリング性が低下することをより効果的に防止することができる。
【0044】
(B)硬化剤
本発明の接着シートに用いられる接着フィルム1を構成する樹脂組成物は、上述した(A)エポキシ樹脂とともに、(B)硬化剤を含有することが好ましい。
【0045】
(B)硬化剤としては、例えば、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレリレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォンなどの芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジドなどを含むポリアミン化合物等のアミン系硬化剤、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの脂肪族酸無水物、無水トリトメット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香
族酸無水物等の酸無水物系硬化剤、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ビスフェノールF型ノボラック樹脂、ビスフェノールAF型ノボラック樹脂、フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を含むフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を含むナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビス(モノまたはジtert−ブチルフェノール)プロパン、メチレンビス(2−プロペニル)フェノール、プロピレンビス(2−プロペニル)フェノール、ビス[(2−プロペニルオキシ)フェニル]メタン、ビス[(2−プロペニルオキシ)フェニル]プロパン、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス[2−(2−プロペニル)フェノール]、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス[2−(1−フェニルエチル)フェノール]、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール]、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−(2−プロペニル)フェノール]、4,4’−(1−メチルテトラデシリデン)ビスフェノールなどのフェノール系硬化剤等が挙げられる。
【0046】
これらの中でも、フェノール系硬化剤を用いると、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度を効果的に高めることができる。また、接着フィルム1を硬化させる際のアウトガスとなる成分を低減することができるので、アウトガスにより半導体チップおよび回路基板の支持体の表面を汚染してしまうことをより効果的に防止することができる。
【0047】
接着フィルム1を形成する樹脂組成物中における上記(B)硬化剤の含有量としては特に限定されないが、樹脂組成物(接着フィルム1)全体に対して、好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。また、同様に、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
(B)硬化剤の含有量を上記範囲内とすることにより、機械的接着強度を十分に確保することができ、半田接合部の信頼性、および本発明の半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0048】
(C)フラックス機能を有する化合物
本発明の接着シートに用いられる接着フィルム1を構成する樹脂組成物は、(C)フラックス機能を有する化合物を含有することが好ましい。
これにより、接着シートに用いられる接着フィルム1がフラックス機能を有することができ、回路基板が備える端子および半導体チップが備える端子の少なくとも一方に対応するように設けられた半田バンプの表面に形成された酸化膜を除去、あるいは、回路基板および半導体チップが備える端子の表面に形成された酸化膜を除去することができる。その結果、端子同士を確実に半田接合することができるため、半導体チップと回路基板とを優れた接続信頼性をもって電気的に接続させることができる。
【0049】
(C)フラックス機能を有する化合物としては、半田表面(半田バンプの表面)の酸化膜を除去する働きがあるものであれば、特に限定されるものではないが、カルボキシル基もしくはフェノール性水酸基のいずれか、または、カルボキシル基およびフェノール水酸基の両方を備える化合物が好ましい。
【0050】
上記(A)エポキシ樹脂の硬化剤として作用する化合物の中には、(C)フラックス機能を有する化合物、が存在する(以下、このような化合物を、フラックス機能を有する硬化剤と呼称することがある)。
例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等は、フラックス作用も有している。本発明では、このような、フラックス機能を有する化合物としても作用し、エポキシ樹脂の硬化剤としても作用するようなフラックス機能を有する硬化剤も好適に用いることができる。
【0051】
なお、カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物とは、分子中にカルボキシル基が1つ以上存在するものであり、その形態は液状であっても固体であっても構わない。
【0052】
また、フェノール性水酸基を備える(C)フラックス機能を有する化合物とは、分子中にフェノール性水酸基が1つ以上存在するものであり、その形態は液状であっても固体であっても構わない。
【0053】
さらに、カルボキシル基およびフェノール性水酸基を備える(C)フラックス機能を有する化合物とは、分子中にカルボキシル基およびフェノール性水酸基がそれぞれ1つ以上存在するものであり、その形態は液状であっても固体であっても構わない。
【0054】
これらのうち、カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物としては、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0055】
上記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る脂肪族酸無水物としては、無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物等が挙げられる。
【0056】
上記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る脂環式酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0057】
上記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る芳香族酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート等が挙げられる。
【0058】
上記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る脂肪族カルボン酸としては、例えば、下記一般式(1)で示される化合物や、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸等が挙げられる。
HOOC−(CH
2)
n−COOH ・・・ (1)
(式(1)中、nは、1以上20以下の整数を表す。)
【0059】
上記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、トルイル酸、ケイ皮酸、サリチル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、浸食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフトエ酸誘導体、フェノールフタリン、ジフェノール酸等が挙げられる。
【0060】
上記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物のうち、(C)フラックス機能を有する化合物が有するフラックス機能の大きさ、接着フィルム1の硬化時におけるアウトガスの発生量、および硬化後の接着フィルム1の弾性率やガラス転移温度等のバランスが良い点で、前記一般式(1)で示される化合物が好ましい。そして、式(1)中のnが3〜10である化合物が、硬化後の接着フィルム1における弾性率が増加するのを抑制することができるとともに、半導体チップ、基板等の支持体と被着体の接着性を向上させることができる点で、特に好ましい。
【0061】
上記一般式(1)で示される化合物のうち、式(1)中のnが3〜10である化合物としては、例えば、n=3のグルタル酸(HOOC−(CH
2)
3−COOH)、n=4のアジピン酸(HOOC−(CH
2)
4−COOH)、n=5のピメリン酸(HOOC−(CH
2)
5−COOH)、n=8のセバシン酸(HOOC−(CH
2)
8−COOH)およびn=10のHOOC−(CH
2)
10−COOH−等が挙げられる。
【0062】
また、上記フェノール性水酸基を備える(C)フラックス機能を有する化合物としては、フェノール類が挙げられる。
具体的には、例えば、フェノール、o−クレゾール、2,6−キシレノール、p−クレゾール、m−クレゾール、o−エチルフェノール、2,4−キシレノール、2,5キシレノール、m−エチルフェノール、2,3−キシレノール、メジトール、3,5−キシレノール、p−ターシャリブチルフェノール、カテコール、p−ターシャリアミルフェノール、レゾルシノール、p−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビフェノール、ジアリルビスフェノールF、ジアリルビスフェノールA、トリスフェノール、テトラキスフェノール等のフェノール性水酸基を含有するモノマー類等が挙げられる。
【0063】
(C)フラックス機能を有する化合物として、上述したようなカルボキシル基またはフェノール水酸基のいずれか、あるいは、カルボキシル基およびフェノール水酸基の両方を備える化合物は、(A)エポキシ樹脂との反応により、反応生成物の分子構造内に三次元的に取り込まれる。
【0064】
そのため、硬化後のエポキシ樹脂の三次元的なネットワークの形成を向上させるという観点からは、(C)フラックス機能を有する化合物としては、フラックス作用を有しかつエポキシ樹脂の硬化剤として作用するフラックス機能を有する硬化剤を用いるのが好ましい。
【0065】
フラックス機能を有する硬化剤としては、例えば、1分子中に、エポキシ樹脂に付加することができる2つ以上のフェノール性水酸基と、フラックス作用を示す芳香環に直接結合した1つ以上のカルボキシル基とを備える化合物が挙げられる。
このようなフラックス機能を有する硬化剤としては、例えば、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(ゲンチジン酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)等の安息香酸誘導体;1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフトエ酸誘導体;フェノールフタリン;およびジフェノール酸等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
これらの中でも、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸、フェノールフタリンを用いるのが好ましい。これらの化合物は、半田表面の酸化膜を除去する効果が高く、エポキシ樹脂との反応性にも優れる点から、フラックス機能を有する硬化剤として好ましく用いられる。
【0067】
(C)フラックス機能を有する化合物の配合量は、接着フィルム1を形成する樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。また、同様に、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%である。
(C)フラックス機能を有する化合物の配合量を上記範囲とすることにより、フラックス機能を向上させることができるとともに、接着フィルム1を硬化させた際に、未反応の(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び、(C)フラックス機能を有する化合物の残存率を低下させることができるため、耐マイグレーション性を向上させることができる。
【0068】
(D)成膜性樹脂
本発明の接着シートに用いられる接着フィルム1を構成する樹脂組成物は、(D)成膜性樹脂を含有することが好ましい。これにより、樹脂組成物をフィルム状に形成するのが容易になるとともに、接着フィルム1の機械的特性を向上させることができる。
【0069】
上記成膜性樹脂(D)としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロン等を挙げることができる。これらは、1種で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、(D)成膜性樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、及び、ポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0070】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、(メタ)アクリル酸およびその誘導体の重合体、又は、(メタ)アクリル酸およびその誘導体と他の単量体との共重合体を意味する。ここで、「(メタ)アクリル酸等」と表記するときは、「アクリル酸またはメタクリル酸等」を意味する。
【0071】
上記化合物(D)の重量平均分子量は、好ましくは1万以上、さらに好ましくは2万以上、特に好ましくは3万以上である。また、重量平均分子量は、好ましくは100万以下、さらに好ましくは90万以下である。
上記化合物(D)の重量平均分子量が上記範囲内であると、接着フィルム1の成膜性をより向上させることができる。
ここで重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラム)により測定することができる。
【0072】
また、上記化合物(D)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して1質量%であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、同様に50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。
化合物(D)の含有量が前記範囲内であると、接着フィルム1の流動性を抑制することができ、接着フィルム1の取り扱いが容易になる。
【0073】
その他の化合物
本発明の接着シートに用いられる接着フィルム1を構成する樹脂組成物は、以上に説明した、
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、
(C)フラックス機能を有する化合物、
(D)成膜性樹脂、
のほか、さらに、(E)硬化促進剤、(F)シランカップリング剤、(G)無機充填材を含有することができる。
【0074】
(E)硬化促進剤としては、(A)エポキシ樹脂や(B)硬化剤の種類等に応じて、適宜その種類を選択することができる。
(E)硬化促進剤としては、例えば、融点が150℃以上のイミダゾール化合物を使用することができる。
使用される硬化促進剤の融点が150℃以上であると、接着フィルム1の硬化が完了する前に、半田バンプを構成する半田成分が、回路基板および半導体チップが備える端子の表面より確実に移動することができ、端子(電極)同士間の電気的接続をより良好なものとすることができる。
【0075】
上記融点が150℃以上のイミダゾール化合物としては、例えば、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4−メチルヒドロキシイミダゾール等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
樹脂組成物全体に対する(E)硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上である。また、同様に、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
これにより、硬化促進剤としての機能をさらに効果的に発現させて、接着フィルム1の硬化性を向上させることができる。また、半田バンプを構成する半田成分の溶融温度における接着フィルム1の溶融粘度が高くなりすぎず、良好な半田接合構造が得られる。また、接着フィルム1の保存性をさらに向上させることができる。
なお、(E)硬化促進剤は、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
(F)シランカップリング剤としては特に限定されないが、例えば、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤等が挙げられる。これらは1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤を含有することにより、半導体チップおよび回路基板に対する接着フィルム1の密着性を高めることができる。
【0078】
(F)シランカップリング剤の配合量は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。また、同様に、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
シランカップリング剤の配合量を上記範囲内とすることにより、上記作用をより効果的に発現させることができる。
【0079】
本発明の接着シートにおいて、接着フィルム1が(G)無機充填材を含有することにより、接着フィルムの線膨張係数を小さくすることができ、その結果、接着フィルム1の信頼性が向上することとなる。また、タック力をより容易に調節することが可能となり、下地フィルム2との剥離性をより好適なものとすることができるとともに、回路基板および半導体チップに対する接着性を特に優れたものとすることができる。
【0080】
(G)無機充填材としては特に限定されないが、例えば、銀、酸化チタン、シリカ、マ
イカ等を挙げることができるが、これらの中でもシリカが好ましい。また、シリカを用いる場合、その形状としては、破砕シリカと球状シリカがあるが、球状シリカが好ましい。
【0081】
また、(G)無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上である、また、好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm以下である。
無機充填材の平均粒径を上記範囲内とすることで、接着フィルム1内での(G)無機充填材の凝集を抑制し、外観を向上させることができる。
【0082】
さらに、(G)無機充填材の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また同様に、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
(G)無機充填材の含有量を上記範囲内とすることにより、硬化後の接着フィルム1と半導体チップおよび回路基板との間の線膨張係数差が小さくなり、熱衝撃の際に発生する応力を低減させることができるため、半導体チップおよび回路基板の剥離をさらに確実に抑制することができる。さらに、硬化後の接着フィルム1の弾性率が高くなりすぎるのを抑制することができるため、半導体チップと回路基板との接合体の信頼性が向上する。
【0083】
かかる構成の接着フィルム1は、上述したような接着フィルム1に含まれる各成分のうち、溶媒に溶解するものを溶媒中で溶解混合し、次いで、溶媒に溶解しないものを混合することにより得られたワニスを、下地フィルム2上に塗工して、その後、所定の温度で、実質的に溶媒を含まない程度にまで乾燥させることにより得ることができる。
【0084】
なお、ここで用いられる溶媒としては、使用される成分に対し不活性なものであれば特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DBE(ニ塩基酸エステル)、EEP(3−エトキシプロピオン酸エチル)、DMC(ジメチルカーボネート)等が挙げられ、これらを単独、または混合溶媒として用いることができる。なお、溶媒の使用量は、溶媒に混合した成分の固形分が10〜60質量%となる範囲であることが好ましい。
【0085】
なお、接着フィルム1の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上である。また、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。
接着フィルム1の厚さが上記範囲内であると、半導体チップと回路基板との間に形成される間隙に樹脂組成物成分を充分に充填することができ、樹脂成分の硬化後の機械的接着強度を充分に確保することができる。
【0086】
なお、本発明の接着シートは、上述したように、フラックス機能を有する接着フィルム1を備えるものの他、接着フィルム1として、
(a)熱硬化性樹脂
(b)成膜性樹脂
(c)硬化促進剤
(d)充填材
を含む、熱硬化性樹脂組成物で構成されるものを有するものであってもよい。
【0087】
以下、熱硬化性樹脂組成物について、詳述する。
(a)熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂組成物の主成分として含まれるものである。
【0088】
このような熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂(ポリイミド前駆体樹脂)、ビスマレイミド−トリアジン樹脂等が挙げられる。
【0089】
これらの中でも、エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂等が好ましく、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、硬化性と保存性、硬化物の耐熱性、耐湿性、耐薬品性に優れるという観点からエポキシ樹脂が好ましい。
【0090】
エポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、メトキシナフタレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノール型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセンジオール型エポキシ樹脂、及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂を単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0091】
熱硬化性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、同様に、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0092】
熱硬化性樹脂の含有量が上記範囲内にあると、端子間の電気的接続強度および機械的接着強度を充分に確保することができる。
【0093】
(b)成膜性樹脂
また、熱硬化性樹脂組成物は、上記(a)熱硬化性樹脂とともに、(b)成膜性樹脂を併用することが好ましい。これにより、25℃において、接着フィルム10を、確実にフィルム形態のものとすることができる。
【0094】
このような(b)成膜性樹脂としては、溶媒に可溶であり、単独で成膜性を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0095】
(b)成膜性樹脂は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれのものも使用することができ、また、これらを併用することもできる。
【0096】
上記(b)成膜性樹脂としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂
、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂が好ましい。
【0097】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸−2−エチルヘキシル等のポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル等のポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリアクリルアミド、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル−α−メチルスチレン共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エチル−アクリロニトリル−N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エチル−アクリロニトリル−N,N−ジメチルアクリルアミドが好ましい。
【0098】
熱硬化性樹脂組成物において、(b)成膜性樹脂の含有量は、使用する熱硬化性樹脂組成物の形態に応じて適宜設定することができる。
【0099】
(b)成膜性樹脂の含有量は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全質量に対して、3質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。また同様に、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。
成膜性樹脂の含有量が上記範囲内にあると、溶融前の熱硬化性樹脂組成物の流動性を抑制することができ、熱硬化性樹脂組成物を容易に取り扱うことができる。
【0100】
(c)硬化促進剤
さらに、熱硬化性樹脂組成物は、(c)硬化促進剤を含むものであることが好ましい。
(c)硬化促進剤を添加することによって、ウエハ200に接着シート100をラミネートした後に、接着シート10に含まれる熱硬化性樹脂組成物を容易に硬化させることができる。
【0101】
このような硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダ
ゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4−メチルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシジメチルイミダゾール等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0102】
硬化促進剤の含有量は、使用する硬化促進剤の種類に応じて適宜設定することができる。
例えば、イミダゾール化合物を使用する場合には、イミダゾール化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全質量に対して、0.001質量%以上であることが好ましく、0.003質量%以上であることがより好ましく、0.005質量%以上であることが特に好ましい。また同様に、1.0質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
イミダゾール化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、熱硬化性樹脂組成物を充分に硬化させることができるとともに、熱硬化性樹脂組成物の保存安定性を確保することができる。
【0103】
(d)充填材
さらに、熱硬化性樹脂組成物は、(d)充填材を含んでも良い。
これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の線膨張係数を小さくすることができるとともに、熱硬化性樹脂組成物の最低溶融粘度を調整することが容易となる。
【0104】
上記(d)充填材としては、例えば、銀、酸化チタン、シリカ、マイカ等を挙げることができるが、これらの中でもシリカが好ましい。また、シリカを用いる場合、その形状としては、破砕シリカ、球状シリカ等があるが、球状シリカが好ましい。
【0105】
上記(d)充填材の平均粒径は、特に限定されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。また同様に、20μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
(d)充填材の平均粒径を上記範囲とすることで、熱硬化性樹脂組成物内における充填材の凝集を抑制し、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の外観を向上させることができる。
【0106】
上記(d)充填材の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。また同様に、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
(d)充填材の含有量を上記下限値以上とするで、硬化後の熱硬化性樹脂組成物と被接着物との間の線膨張係数差が小さくなり、熱衝撃の際に発生する応力を低減させることができるため、被接着物の剥離をさらに確実に抑制することができる。また、(d)充填材の含有量を上記上限値以下とすることで、硬化後の樹脂組成物の弾性率が高くなりすぎるのを抑制することができる。
【0107】
(e)その他の添加剤
また、熱硬化性樹脂組成物には、硬化剤(フラックスとして作用するものを除く)、シランカップリング剤、可塑剤、安定剤、粘着付与剤、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤や顔料等の添加剤がさらに含まれていてもよい。
【0108】
フラックス機能を有する化合物以外の硬化剤としては、フェノール類、アミン類、チオール類等が挙げられる。このような硬化剤は、熱硬化性樹脂の種類等に応じて適宜選択することができる。
例えば、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂との良好な反応性、硬化時の低寸法変化および硬化後の適切な物性(例えば、耐熱性、耐湿性等)が得られる点で硬化剤としてフェノール類を用いることが好ましく、熱硬化性樹脂成分の硬化後の物性が優れている点で2官能以上のフェノール類がより好ましい。
【0109】
このようなフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ビフェノール、ビスフェノールF、ジアリルビスフェノールF、トリスフェノール、テトラキスフェノール、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、溶融粘度、エポキシ樹脂との反応性が良好であり、硬化後の物性が優れている点でフェノールノボラック樹脂およびクレゾールノボラック樹脂が好ましい。
【0110】
熱硬化性樹脂組成物において、上記硬化剤の配合量は、使用する熱硬化性樹脂や硬化剤の種類によって適宜選択することができる。
例えば、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂を使用する場合、その配合量は、熱硬化性樹脂組成物の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。また同様に、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。
フェノールノボラック樹脂の配合量を上記下限値以上とすることにより、熱硬化性樹脂を充分に硬化させることができる。また、上記上限値以下とすることにより、未反応のフェノールノボラック樹脂が残存してイオンマイグレーションが発生するのを抑制することができる。
【0111】
また、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合には、硬化剤として用いるフェノールノボラック樹脂の配合量は、エポキシ樹脂に対する当量比で規定してもよい。
例えば、エポキシ樹脂が有するエポキシ基(Ep)とフェノールノボラック樹脂が有するフェノール性水酸基(OH)との当量比(Ep/OH)は、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.7以上であることが特に好ましい。また同様に、1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましく、0.98以下であることが特に好ましい。
上記当量比を上記下限値以上とすることにより、未反応のフェノールノボラック樹脂が残存してイオンマイグレーションが発生するのを抑制することができる。また、上記上限値以下とすることにより、エポキシ樹脂の硬化後の耐熱性、耐湿性を向上させることができる。
【0112】
上記シランカップリング剤としては特に限定されないが、例えば、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤等が挙げられる。このようなシランカップリング剤を添加することにより、ウエハと熱硬化性樹脂組成物との密着性を高めることができる。
【0113】
また、このようなシランカップリング剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0114】
熱硬化性樹脂組成物において、上記シランカップリング剤の配合量は、熱硬化性樹脂等の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましい。また同様に、2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0115】
本発明の接着シートを構成する接着フィルムは、80℃における溶融粘度が、好ましくは1Pa・s以上、より好ましくは3Pa・s以上である。また、好ましくは80,000Pa・s以下、より好ましくは60,000Pa・s以下である。
接着フィルムの80℃における溶融粘度を上記範囲内とすることにより、本発明の接着シートを用いて電極部材にラミネートする際に、電極部の凹凸に追従するようにラミネートすることができる。
【0116】
本発明の接着シートを構成する接着フィルムは、下地フィルムの第1の最外層との接合部における、下地フィルムの第1の最外層との25℃における剥離強度が、好ましくは0.3N/m以上、より好ましくは0.5N/m以上である。また、好ましくは250N/m以下、より好ましくは200N/m以下である。
これにより、本発明の接着シートを用いて電極部材にラミネートした後、下地フィルムを除去する際に、接着フィルムから容易に剥離することができる。
なお、この剥離強度は、シリコンウェハに長さ200mm、幅18mmに切り出した本発明の接着シートをラミネートした後、20℃〜28℃の雰囲気下でテンシロンにて下地フィルムを180°方向に引き剥がすピール試験により測定したものである。
【0117】
<下地フィルム2>
下地フィルム2は、
図2に示すように、半導体チップを回路基板上に搭載する場合、複数の個別電極、個別回路が設けられたウエハ200に、接着シート10(接着フィルム1)をラミネートする際に、接着フィルム1の下地層(支持層)として機能するものである。
【0118】
この下地フィルム2は、本発明においては、少なくとも接着フィルム1側から積層された第1の最外層と、第1の最外層の反対側から積層された第2の最外層とを備える積層体であり、第1の最外層の弾性率は、第2の最外層の弾性率よりも高いことを特徴とするものである。
【0119】
本発明においては、この下地フィルムの構成は種々のものがあるが、その一部を
図1(a)〜(c)に示した。以下、詳細に説明する。
【0120】
図1(a)に示した接着シート10aの形態では、下地フィルム2aは接着フィルム1側から積層された第一の最外層21と、第1の最外層21の反対側から積層された第2の最外層22の2層から構成されている。ここで、第1の最外層21の弾性率は、第2の最外層22の弾性率よりも高くなっている。
【0121】
図1(b)に示した接着シート10bの形態では、下地フィルム2bは接着フィルム1側から積層された第1の最外層21と、第1の最外層21の反対側から積層された第2の最外層22、及び、これら2つの層の間に位置する層23の3層から構成されている。こ
こでも、第1の最外層21の弾性率は、第2の最外層22の弾性率よりも高くなっている。なお、層23で用いるものとしては特に限定されるものではないが、例えば、接着層を用いることができる。
【0122】
図1(c)に示した接着シート10cの形態では、下地フィルム2cは接着フィルム1側から積層された第1の最外層21と、第1の最外層21の反対側から積層された第2の最外層22、及び、これら2つの層の間に位置する層24、層25、層26の5層から構成されている。ここでも、第1の最外層21の弾性率は、第2の最外層22よりも高くなっている。なお、層24、層25、層26で用いるものとしてはいずれも特に限定されるものではないが、例えば、層24、層26として接着層、層25として他の樹脂フィルム層を用いることができる。
【0123】
本発明の接着シートにおいては、
図1に例示した10a〜10cのいずれの場合も、第1の最外層21の弾性率は、第2の最外層22の弾性率よりも高いことを特徴とするものである。
図3に示したように、下地フィルム2をかかる構成とすることにより、ウエハ200に、接着シート10(接着フィルム1)をラミネートする際に、ウエハ200が備える端子201同士の間に形成された間隙203内に均一な厚さで充填することができるとともに、端子201が備える半田バンプ202の先端を突出させて、接着フィルム1を充填することができる。かかる理由については後に詳述する。
【0124】
第1の最外層の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、メタクリル・スチレン共重合体、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート、等の樹脂材料が挙げられる。これらの中でも、ナイロンが好ましい。これにより、25℃における好適な弾性率、引張試験における伸び率を有する第1の最外層を構成することができる。
【0125】
また、第2の最外層の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、等の樹脂材料が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンが好ましい。これにより、25℃における好適な弾性率、引張試験における伸び率を有する第2の最外層を構成することができる。
【0126】
そして、第1の最外層の弾性率が第2の最外層の弾性率よりも高くなるように、上記に例示された構成材料を用い、これらを積層することによって、下地フィルムを形成することができる。
【0127】
本発明の接着シートでは、下地フィルムが、第1の最外層と第2の最外層とを備える積層体からなり、接着フィルムと接する第1の最外層の弾性率が、第2の最外層の弾性率よりも高くなっている。
図3には、3層構造の下地フィルム2bと接着フィルム1とが一体化した本発明の接着シートの一例である接着シート10bと回路基板200とを、挟圧部材を用いて加熱・加圧ラミネートし、回路基板表面に形成された回路に接着フィルム1を充填させる過程を模式図で表わしたものである。
【0128】
図3(a)は接着シート10bと回路基板200とをラミネートする前段階を示したものである。回路基板200は、先端に半田バンプ202を有した端子201を複数備えて
おり、複数の端子間には間隙203が存在する。
この回路基板200の端子201側から、接着シート10(
図3(a)においては接着シート10b)を、接着フィルム1が回路基板200の個別回路201が形成された側に向くようにして重ねる。
図3(b)は、
図3(a)で示した構成のものを、挟圧部材51、52により加熱・加圧して回路基板200と接着シート10bとをラミネートし、回路基板200が有する端子201同士の間に形成された間隙203内に、接着フィルム1を均一に充填させた状態を示したものである。
図3(c)は、
図3(b)で示した挟圧部材51、52による加熱・加圧を開放した状態を示したものである。
そして、
図3(d)は、ウエハ200と接着シート10bとをラミネートしたものから、下地フィルム2b(第1の最外層21、第2の最外層22、及び、接着層23から構成されているもの)を除去したものであり、回路基板200が有する端子201間の間隙203に、接着フィルム1が埋め込まれ、換言すれば、間隙203が接着フィルム1によって充填され、かつ、端子201が有する半田バンプ202が突出した状態とすることができている状態を示したものである。
【0129】
一方、例えば、
図4(a)〜(d)に示すように、弾性率が高い単層の下地フィルム102と、接着フィルム101とが一体化した接着シート100と、回路基板200とを、挟圧部材51、52を用いて加熱・加圧しラミネートすると、下地フィルム102の弾性率が高いことから、接着シート100をラミネートした際に、
図4(b)に示すように、接着フィルム101が、ウエハ200の個別回路が備える端子201に対応して形成された半田バンプ202の形状に追従する。そのため、
図4(c)に示すように、接着シート100を回路基板200にラミネートした後、挟圧部材による加圧を開放し、さらに、
図4(d)に示すように、下地フィルム102を除去すると、接着フィルム101を、均一な膜厚(高さ)で回路基板200に転写させることができない。
この結果、回路基板200が有する端子201同士の間に形成された間隙203内に、接着フィルム101を均一に充填させることができなかったり、半田バンプ202上に接着フィルム101が残存したりしてしまうという問題があった。
【0130】
これに対して、本発明の下地フィルムを有した接着シートを用いると、第2の最外層より弾性率の高い第1の最外層によって接着フィルムの平坦性を確保するとともに、弾性率の低い第2の最外層の緩衝効果によって、接着フィルムに均等に荷重が作用することにより、接着シートが備える接着フィルムを、回路部材が備える端子間に形成された間隙内に均一な厚さで充填できる良好な埋め込み性を有し、かつ、端子が備える半田バンプの先端を突出させて充填することができ、その後の工程においても信頼性の高い電気的接合を行うことができる。
【0131】
本発明の接着シートにおいて、下地フィルムを構成する第1の最外層は、25℃での弾性率が、好ましくは500MPa以上、さらに好ましくは1000MPa以上である。また、同様に、好ましくは5000MPa以下、さらに好ましくは3000MPa以下である。
上記第1の最外層の25℃での弾性率を上記下限値以上とすることにより、接着シートの取扱性を良好なものとすることができる。また、弾性率を上記上限値以下とすることにより、接着フィルムをラミネートする際の被着体の表面形状に対する追従性を確保することができる。
【0132】
本発明の接着シートにおいて、下地フィルムを構成する第2の最外層は、25℃での弾性率が、好ましく10MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上である。また、同様に、好ましくは1000MPa以下、さらに好ましくは、600MPa以下である。
上記第2の最外層の25℃での弾性率を上記下限値以上とすることにより、接着フィルムをラミネートする際の皺の発生を抑制することができる。また、弾性率を上記上限値以下とすることにより、クッション性を有し、接着フィルムをラミネートする際の圧力を均等に加えることができる。
【0133】
そして、本発明の接着シートにおいて、下地フィルムを構成する第1の最外層の弾性率と、第2の最外層の弾性率との関係は、第1の最外層の弾性率のほうが高ければよいが、第1の最外層の弾性率をA[MPa]とし、第2の最外層の弾性率をB[MPa]としたとき、AとBとの比率[A/B]は、好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.5以上である。また、同様に、好ましくは500以下、さらに好ましくは50以下である。
下地フィルムを構成する第1の最外層と第2の最外層が、このような関係の弾性特性を有したものであることにより、バンプの凹凸に対する接着フィルムの埋め込み性を向上させることができるという効果を発現させることができる。
【0134】
なお、上記弾性率は、引張り試験機を用いて、ASTM D638に準拠して測定されたものである。
【0135】
本発明の接着シートにおいて、下地フィルムを構成する第1の最外層は、25℃の引張試験における伸び率が、好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上である。また、同様に、好ましくは350%以下、さらに好ましくは、320%以下である。
上記第1の最外層の25℃の引張試験における伸び率を上記下限値以上とすることにより、接着フィルムをラミネートする際の被着体の表面形状に対する追従性を確保することができる。また、伸び率を上記上限値以下とすることにより、接着フィルムの切断や亀裂の発生を抑制することができる。
【0136】
本発明の接着シートにおいて、下地フィルムを構成する第2の最外層は、25℃の引張試験における伸び率が、好ましくは50%以上、さらに好ましくは90%以上である。また、同様に、好ましくは900%以下、さらに好ましくは800%以下である。
上記第2の最外層の25℃の引張試験における伸び率を上記下限値以上とすることにより、屈曲性が得られ接着シートの取扱い性を確保ことができる。また、伸び率を上記上限値以下とすることにより、接着フィルムを転写する時などの下地フィルムにテンションが掛かる際に、下地フィルムの過度な伸びを抑制することができる。
【0137】
なお、上記25℃の引張試験における伸び率は、ASTM D638に準拠して測定することができる。
【0138】
本発明の接着シートにおいて、下地フィルムを構成する第1の最外層は、その平均厚さが、好ましくは2.5μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、同様に、好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下である。
上記第1の最外層の平均厚さを上記下限値以上とすることにより、第1の最外層に剛性を付与することができ、被着体へのラミネート後の接着フィルムの平滑性を確保することができる。また、平均厚さを上記上限値以下とすることにより、下地フィルム全体の剛性を抑制することができ、接着フィルムの埋め込み性を確保とすることができる。
【0139】
本発明の接着シートにおいて、下地フィルムを構成する第2の最外層は、その平均厚さが、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。また、同様に、好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
上記第2の最外層の平均厚さを上記下限値以上とすることにより、第2の最外層にクッション性を付与することができ、接着フィルムの埋め込み性を向上させることができる。また、平均厚さを上記上限値以下とすることにより、下地フィルム全体の剛性を維持する
ことができ、接着シートの取扱い性を確保することができる。
【0140】
なお、上記平均厚みは、触針式の膜厚計により測定した値を基に算出したものである。
【0141】
本発明の接着シートにおいて、下地フィルムは第1の最外層と第2の最外層とを備えた積層体であるが、このほかにも、
図1(b)、
図1(c)に示したように、他の層、例えば、樹脂フィルム層、接着層などを備えた構成になっていても差し支えない。
このような樹脂フィルム層としては例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、メタクリル・スチレン共重合体、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体を例示することができる。
また、このような接着層としては例えば、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンを例示することができる。
【0142】
以上に説明した本発明の接着シートを用いて、回路基板上に半導体チップを搭載し、本発明の電子部品を製造する方法について、図面を用いて以下に説明する。
【0143】
<回路基板上への半導体チップの搭載方法>
図2は、本発明の接着シートを用いて、回路基板上に半導体チップを搭載する方法を説明するための斜視図、
図3は、本発明の接着シート(
図1(b)の形態のもの)を用いて、回路基板上に接着シートをラミネートした状態を説明するための縦断面図である。
【0144】
[1]まず、接着シート10と、複数の個別回路210が設けられた回路基板200とを用意し、この接着シート10を、接着フィルム1が個別回路210と対向するようにして配置した後、接着シート10を回路基板200に対してラミネートする(
図2(a)参照)。
なお、
図3(a)においては、接着シート10bを回路基板200にラミネートする直前の状態を、
図3(b)においては、接着シート10bを回路基板200にラミネートした後の状態を各々示している。
図3(a)、
図3(b)においては、挟圧部材51、52により上記ラミネートを行っている場合を例示している。
【0145】
なお、本実施形態では、個別回路210が備える端子201には、予め、各端子201に対応して、それぞれ、半田バンプ202が形成されている。
【0146】
回路基板200上に接着シート10をラミネートする条件は特に限定されないが、接着シート10の貼り付け温度が60〜150℃、接着フィルムに加える圧力が0.2〜1.0MPaであるのが好ましい。
【0147】
また、ラミネートは、雰囲気圧100kPa以下の減圧下で行うのが好ましく、雰囲気圧80kPa以下の減圧下で行うのがより好ましい。
【0148】
[2]次に、接着シート10から下地フィルム2を剥離して、個別回路210側に接着フィルム1が接合されたウエハ200を得る(
図2(b)、
図3(c)参照。)。
【0149】
[3]次に、接着フィルム1が接合されたウエハ200を、ダイシングソー600を用いて、個別回路210毎に個片化することにより、接着フィルム1が接合された半導体チップ300を得る(
図2(c)参照。)。
【0150】
[4]次に、個別回路410を備える回路基板400を用意し、前工程[3]で得られた半導体チップ300を、フリップチップボンダー500を用いて、回路基板400が備える個別回路410の端子と、半導体チップ300が備える回路基板の端子201とが半田バンプ202を介して対向するように位置合わせを行い、回路基板400上に載置する(
図2(d)参照。)。
【0151】
[5]次に、フリップチップボンダー500を用いて、回路基板400と半導体チップ300とをこの状態で、加圧・加熱した後、冷却する(
図2(e)参照。)。
【0152】
この際、本発明の形態では、半田バンプ202の先端が接着フィルム1の上面から突出した状態になっているため、形成された端子−端子接合部間に接着フィルム1が残存(いわゆる、樹脂噛み)し、これに起因して、端子接合部における電気的な接続性を損ねてしまうのを確実に防止することができる。
【0153】
さらに、隣接する接合された端子同士間に形成された空隙には、接着フィルム1に由来する封止樹脂が充填される。この空隙に対する封止樹脂の充填では、前記工程[1]において、各間隙203に対して接着フィルム1が均一な厚さ(高さ)で充填されているため、接合された端子同士間に形成された複数の空隙に対して、高い充填率で封止樹脂を充填することができる。
【0154】
また特に、接着フィルム1がフラックス機能を有するものである場合は、その作用により、半田バンプ202の表面に形成された酸化膜が除去されつつ、半田バンプ202が溶融した後、固化することとなるため、個別回路210の端子201と、個別回路410の端子とが半田接合されて、端子接合が形成される。
【0155】
[6]次に、接着フィルム1の構成材料に熱硬化性樹脂が含まれる場合は、回路基板400と半導体チップ300とを再度、加熱する(
図2(f)参照。)。
これにより、空隙に充填された封止樹脂を確実に硬化させることができる。
このようにして、回路基板400上に半導体チップ300を搭載することができ、本発明の電子部品を得ることができる。
【0156】
なお、本実施形態では、接着シートを用いて電気的に接続する、電極が形成された電極部材として、半導体チップと回路基板とを用いる場合を例に挙げて説明したが、かかる場合に限定されるものではない。
本願発明の形態の接着シートが適用できる電極部材の具体的な組合せとしては、例えば、半導体ウエハと半導体ウエハとの組合せ、半導体ウエハと半導体チップとの組合せ、半導体チップと半導体チップとの組合せ、フレキシブル回路基板と半導体ウエハとの組合せ、リジッド回路基板と半導体ウエハとの組合せ、フレキシブル回路基板と半導体チップとの組合せ、リジッド回路基板と半導体チップとの組合せ、フレキシブル回路基板とフレキシブル回路基板との組合せ、フレキシブル回路基板とリジッド回路基板との組合せ、および、リジッド回路基板とリジッド回路基板との組合せ、などが挙げられる。
【0157】
以上、本発明の接着シートおよび電子部品について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0158】
例えば、本発明の接着シートの各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
【0159】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0160】
(実施例1)
<下地フィルムの製造>
下地フィルム(1)として、
図1(a)に示した形態のものを作製した。
まず、第1の最外層21を構成する樹脂としてナイロン樹脂(宇部興産株式会社製、商品名「UBEナイロン 1022B」)を、第2の最外層22を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ノバテックLL UF240」)を準備した。
【0161】
上記第1の最外層21と第2の最外層22、
図1(a)に示した構成でフィードブロックおよびダイを用いて共押出しして、下地フィルム(1)を作製した。
【0162】
得られた下地フィルム(1)の全体の厚みは、150μmであり、第1の最外層21の厚みは15μm、第2の最外層22の厚みは135μmであった。
【0163】
<接着フィルムの製造>
フェノールアラルキル樹脂(三井化学株式会社製、商品名「XLC−4L」)10.20質量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名「EPICLON 840−S」)22.0質量部と、フラックス機能を有する化合物であるトリメリット酸(東京化成工業株式会社製)8.20重量部と、成膜性樹脂としてフェノキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製、商品名「FX−280S」)9.30重量部と、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチルイミダゾール(四国化成株式会社製、商品名「2P4MZ」)0.05重量部と、シランカップリング剤として3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「KBE−503」)0.25重量部と、シリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「SC1050」)50重量部とを、メチルエチルケトンに溶解、分散し、固形分濃度50%の樹脂ワニスを調製した。
【0164】
<基材付き接着フィルムの製造>
上記で得られた接着フィルム用樹脂ワニスを、基材ポリエステルフィルム(ベースフィルム、帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「ピューレックスA53」)に厚さ50μmとなるように塗布して、100℃、5分間乾燥して、厚さ25μmの接着フィルムが形成された基材付き接着フィルムを得た。
【0165】
<基材付き接着シートの製造>
上記で得られた下地フィルムと、基材付き接着フィルムとを、第1の最外層21と接着フィルムとが接するように、70℃のロール式ラミネーターで貼り合わせることにより接着フィルムを下地フィルムに転写し、基材付き接着シートを得た。
【0166】
(実施例2)
<下地フィルムの製造>
下地フィルム(2)として、
図1(c)に示した形態のものを作製した。
まず、第1の最外層21を構成する樹脂としてナイロン樹脂(宇部興産株式会社製、商品名「UBEナイロン 1022B」)を、第2の最外層22を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ノバテックLD LF441MD」)を準備した。
次に、層24を構成する樹脂として接着性樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「モディック M545」)を、層25を構成する樹脂としてナイロン樹脂(宇部興産株式会社製、商品名「UBEナイロン 1022B」)を、層26を構成する樹脂として接着性樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「モディック M545」)を準備した。
【0167】
上記第1の最外層21、第2の最外層22、層24、層25、層26を、
図1(c)に示した構成でフィードブロックおよびダイを用いて共押出しして、下地フィルム(2)を作製した。
【0168】
得られた下地フィルム(2)の全体の厚みは、150μmであり、第1の最外層21の厚みは15μm、第2の最外層22の厚みは75μmであった。また、層24の厚みは15μm、層25の厚みは30μm、層26の厚みは15μmであった。
【0169】
<接着フィルムの製造>
実施例1と同様にして、固形分濃度50質量%の接着フィルム用樹脂ワニスを調製した。
【0170】
<基材付き接着フィルムの製造>
実施例1と同様にして、厚さ25μmの接着フィルムが形成された基材付き接着フィルムを得た。
【0171】
<基材付き接着シートの製造>
上記で得られた下地フィルムと、基材付き接着フィルムとを、第1の最外層21と接着フィルムが接するように、70℃のロール式ラミネーターで貼り合わせることにより接着フィルムを下地フィルムに転写し、基材付き接着シートを得た。
【0172】
(実施例3)
<下地フィルムの製造>
下地フィルム(3)として、
図1(b)に示した形態のものを作製した。
まず、第1の最外層21を構成する樹脂としてポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱エンジニアプラスチックス株式会社製、商品名「ノバデュラン 5010GT15X」)を、第2の最外層22を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン樹脂(株式会社プライムポリマー製、商品名「ウルトゼックス 1020L」)を、層23を構成する樹脂として接着性樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「モディック M545」)を準備した。
【0173】
上記第1の最外層21、第2の最外層22、層23を、
図1(b)に示した構成でフィードブロックおよびダイを用いて共押出しして、下地フィルム(3)を作製した。
【0174】
実施例3の下地フィルム(3)の全体の厚みは、150μmであり、第1の最外層21の厚みは15μm、層23の厚みは15μm、第2の最外層の厚みは120μmであった。
【0175】
<接着フィルムの製造>
実施例1と同様にして、固形分濃度50質量%の接着フィルム用樹脂ワニスを調製した。
【0176】
<基材付き接着フィルムの製造>
実施例1と同様にして、厚さ25μmの接着フィルムが形成された基材付き接着フィルムを得た。
【0177】
<基材付き接着シートの製造>
上記で得られた下地フィルムと、基材付き接着フィルムとを、第1の最外層21と接着フィルムが接するように、70℃のロール式ラミネーターで貼り合わせることにより接着フィルムを下地フィルムに転写し、基材付き接着シートを得た。
【0178】
(実施例4)
<下地フィルムの製造>
下地フィルム(4)として、
図1(b)に示した形態のものを作製した。
まず、第1の最外層21を構成する樹脂として高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ノバテックHD HF313」)を、第2の最外層22を構成する樹脂として、高密度ポリエチレン樹脂(株式会社プライムポリマー製、商品名「ハイゼックス 3300F」)を、層23を構成する樹脂として接着性樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「モディック M545」)を準備した。
【0179】
上記第1の最外層21、第2の最外層22、層23を、
図1(c)に示した構成でフィードブロックおよびダイを用いて共押出しして、接着フィルムを転写する側の表面をコロナ処理することによって下地フィルム(4)を作製した。
【0180】
実施例4の下地フィルム(4)の全体の厚みは、150μmであり、第1の最外層21の厚みは15μm、層23の厚みは15μm、第2の最外層の厚みは120μmであった。
【0181】
<接着フィルムの製造>
実施例1と同様にして、固形分濃度50質量%の接着フィルム用樹脂ワニスを調製した。
【0182】
<基材付き接着フィルムの製造>
実施例1と同様にして、厚さ25μmの接着フィルムが形成された基材付き接着フィルムを得た。
【0183】
<基材付き接着シートの製造>
上記で得られた下地フィルムと、基材付き接着フィルムとを、第1の最外層21と接着フィルムが接するように、70℃のロール式ラミネーターで貼り合わせることにより接着フィルムを下地フィルムに転写し、基材付き接着シートを得た。
【0184】
(比較例1)
<下地フィルムの製造>
下地フィルム(5)として、ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名「ユーピレックス−S75(厚み75μm)」を用いた。
【0185】
<接着フィルムの製造>
実施例1と同様にして、固形分濃度50質量%の接着フィルム用樹脂ワニスを調製した。
【0186】
<基材付き接着フィルムの製造>
実施例1と同様にして、厚さ25μmの接着フィルムが形成された基材付き接着フィルムを得た。
【0187】
<基材付き接着シートの製造>
上記で得られた下地フィルムと、基材付き接着フィルムとを、下地フィルムと接着フィルムとが接するように、70℃のロール式ラミネーターで貼り合わせることにより接着フィルムを下地フィルムに転写し、基材付き接着シートを得た。
【0188】
(比較例2)
<下地フィルムの製造>
下地フィルム(6)として、低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ノバテックLD LF441MD」)を用いて厚み120μmの接着フィルムを成形し、接着フィルムを転写する側の表面をコロナ処理することによって下地フィルム(6)を作製した。
【0189】
<接着フィルムの製造>
実施例1と同様にして、固形分濃度50質量%の接着フィルム用樹脂ワニスを調製した。
【0190】
<基材付き接着フィルムの製造>
実施例1と同様にして、厚さ25μmの接着フィルムが形成された基材付き接着フィルムを得た。
【0191】
<基材付き接着シートの製造>
上記で得られた下地フィルムと、基材付き接着フィルムとを、下地フィルムと接着フィルムとが接するように、70℃のロール式ラミネーターで貼り合わせることにより接着フィルムを下地フィルムに転写し、基材付き接着シートを得た。
【0192】
(物性評価)
上記実施例、比較例で得られた下地フィルムならびに接着シートについて、以下の手法により各項目の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0193】
【表1】
【0194】
<25℃での弾性率>
実施例における下地フィルムの第1の最外層と第2の最外層、比較例における下地フィルムについて、30mm×5mmの短冊状に切り出して試料を作製し、25℃での弾性率を、引っ張り試験機(TAインスツルメント株式会社製、動的粘弾性測定装置RS3A)を用いて、ASTM D638に準拠して測定した。
【0195】
<25℃での引張試験における伸び率>
実施例における下地フィルムの第1の最外層と第2の最外層、比較例における下地フィルムについて、ASTM D638に準じて得られたダンベル試験片を、引張試験機(株式会社オリエンテック製、RTA−100)を用いて、ASTM D638に準拠して測定した。
【0196】
<平均厚さ>
実施例における下地フィルムの第1の最外層と第2の最外層、比較例における下地フィルムについて、110mm×110mmに切り出すことによって試料を作製し、触針式膜厚計(株式会社ミツトヨ製、ミューチェッカM−413)を用いて10mm間隔で厚みを100箇所測定し、平均厚みを算出した。
【0197】
<80℃における溶融粘度>
実施例ならびに比較例で得られた接着フィルムを積層することによって厚み100μmの測定用サンプルを作製し、粘弾性測定装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「MARS」)を用いて、パラレルプレート20mmφ、ギャップ0.05mm、周波数0.1Hz、昇温速度10℃/分の条件にて測定し、80℃における接着フィルムの溶融粘度を測定値とした。
【0198】
<下地フィルムと接着フィルムとの界面での25℃における剥離強度>
実施例における下地フィルムの第1の最外層と接着フィルムとの剥離強度、比較例における下地フィルムと接着フィルムとの剥離強度について、ステンレス(SUS304製)板に長さ200mm、幅25mmの両面テープを貼り、実施例または比較例の接着シートを両面テープのステンレス板と反対側の面と接着フィルム面とが接するように貼ることによって試料を作製した。得られた試料の下地フィルムを、引張試験機(株式会社オリエンテック製 RTC−1250A)を用いて、25℃において180度の角度で剥離させ、下地フィルムと接着フィルムとの界面での25℃における剥離強度を測定した。
【0199】
<半導体チップ上のバンプ間の接着フィルムの充填性>
実施例及び比較例において得られた接着シートをラミネートした後の半導体チップ上のバンプ間の接着フィルムの充填性について、以下の手順で評価した。
半導体チップとして、サイズ5mm×5mm、厚さ0.15mmのものを用い、これに、接着シートの接着フィルム側を積層し、真空加圧式ラミネーターを用いて、温度80℃でラミネートし、接着フィルムをラミネートした半導体チップを得て、これを測定試料とした。
半導体チップ上のバンプ間の接着フィルムの充填性は、半導体チップ上の凹凸部(バンプの周囲)のボイドまたは空隙の有無を金属顕微鏡で観察することによって評価した。
評価結果を示す記号の意味は、下記の通りである。
○:凹凸部の周辺にボイドまたは空隙が観察されなかった。
×:凹凸部の周辺にボイドまたは空隙が観察された。
【0200】
<半導体チップ上のバンプの突出性>
実施例及び比較例において得られた接着シートをラミネートした後の、半導体チップ上のバンプの先端部分の接着フィルム層からの突出性について、以下の手順で評価した。
上記<半導体チップ上のバンプ間の接着フィルムの充填性>の評価で用いた接着フィル
ムをラミネートした半導体チップを試料とし、各実施例および各比較例において、半導体チップ上のバンプの先端部分の接着フィルム層からの突出性を、3D測定レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製、LXT OLS4000)を用い、バンプの先端部がバンプの先端部の周囲の接着フィルムの埋め込み部より1μm以上突出しているか否かによって評価した。
評価結果を示す記号の意味は、下記の通りである。
◎:全てのバンプの先端部が周囲の接着フィルムの埋め込み部よりも1μm以上突出している。
○:一部のバンプの先端部が周囲の接着フィルムの埋め込み部よりも1μm以上突出していない。
×:全てのバンプの先端部が周囲の接着フィルムの埋め込み部よりも1μm以上突出していない。
【0201】
<樹脂噛みの有無>
半田バンプ(Sn―3.5Ag、融点221℃)を有する半導体チップ1(サイズ5mm×5mm、厚さ0.15mm)に、実施例または比較例で得られた接着シートの接着フィルムを真空ロールラミネーターで、100℃でラミネートして、接着フィルム付きの半導体チップを得た。
次に、最表面が金層、その下層にニッケル層が形成された銅電極を有する半導体チップ2(サイズ7mm×7mm、厚さ0.15mm)の電極部と、上記半導体チップ1の半田バンプとが当接するように位置合わせを行いながら半導体チップ1と半導体チップ2とをフリップチップボンダー(澁谷工業株式会社製)を用いて100℃、30秒間で仮圧着した。次いで、フリップチップボンダー(澁谷工業株式会社製)を用いて235℃、30秒間加熱して、半田バンプを溶融させて半田接続を行った。さらに、180℃、60分間加熱して、接着フィルムを硬化させて、半導体チップ1と、半導体チップ2とが接着フィルムの硬化物で接着された半導体装置を得た。
この半導体装置を断面研磨することによって、半田接続部を20カ所を電子顕微鏡で観察し、半田接続部における接着フィルムの構成成分である樹脂成分の噛み込みの有無を評価した。
評価結果を示す記号の意味は、下記の通りである。
◎:半田接続部の断面において、バンプの幅に対して10%以下の長さの樹脂の噛み込みのある半田接続部が5カ所以下である。
○:半田接続部の断面において、バンプの幅に対して10%以下の長さの樹脂の噛み込みのある半田接続部が6カ所以上10カ所以下である。
×:半田接続部の断面において、バンプの幅に対して10%以下の長さの樹脂の噛み込みのある半田接続部が11カ所以上である。
【0202】
上記評価の結果、実施例1〜4はいずれも、下地フィルムを構成する第1の最外層の弾性率が第2の最外層の弾性率よりも高いものであり、半導体チップ上のバンプ間の接着フィルムの充填性、半導体チップ上のバンプの突出性に優れ、樹脂噛みの有無においても良好な結果が得られた。
一方、比較例1は弾性率の高い下地フィルムを単層で用いたものであるが、半導体チップ上のバンプ間の接着フィルムの充填性、半導体チップ上のバンプの突出性に劣り、樹脂噛みの有無においても樹脂噛みのある半田接続部が11カ所以上存在し接続性に劣るという結果となった。
また、比較例2は弾性率の低い下地フィルムを単層で用いたものであるが、○半導体チップ上のバンプ間の接着フィルムの充填性、半導体チップ上のバンプの突出性に劣り、樹脂噛みの有無においても樹脂噛みのある半田接続部が11カ所以上存在し接続性に劣るという結果となった。