特許第6167669号(P6167669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167669
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】リン酸測定用キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20170713BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20170713BHJP
   G01N 21/78 20060101ALN20170713BHJP
【FI】
   G01N31/00 N
   G01N31/22 122
   !G01N21/78 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-113885(P2013-113885)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-232074(P2014-232074A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】田中 亜依
(72)【発明者】
【氏名】羽毛田 靖
(72)【発明者】
【氏名】里 哲也
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 諭
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第98/003265(WO,A1)
【文献】 実公昭44−012957(JP,Y1)
【文献】 実開昭58−036352(JP,U)
【文献】 実開昭58−054557(JP,U)
【文献】 特開2001−002098(JP,A)
【文献】 特開昭61−290359(JP,A)
【文献】 国際公開第93/025900(WO,A1)
【文献】 特表2000−501191(JP,A)
【文献】 特開2005−249610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00
G01N 31/22
G01N 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に第1開口部を有し、周壁の少なくとも一部が光透過性とされ、周壁から入射した光が対向する周壁から出射可能とされた有底の光学セルと、
前記光学セルの第1開口部を閉塞可能な蓋材と、を備え、
前記蓋材は、前記第1開口部の内側に液密に嵌合可能で、かつ一端に第2開口部を有する有底筒状の収容部を備え、
前記光学セル内にモリブデン酸イオンを含有する酸性溶液が収容され、
前記収容部内に、前記モリブデン酸イオンを含有する酸性溶液とは隔離された状態でアスコルビン酸が収容されているリン酸測定用キット。
【請求項2】
前記第1開口部を介した前記光学セルの内部と前記光学セルの外部との接続、または前記第2開口部を介した前記収容部の内部と前記収容部の外部との接続、の少なくともいずれか一方を遮断することで、前記モリブデン酸イオンを含有する酸性溶液と前記アスコルビン酸とを隔離する隔離部材を有している請求項1に記載のリン酸測定用キット。
【請求項3】
前記隔離部材は、前記蓋材が前記第1開口部を閉塞していない状態で、前記光学セルと前記蓋材に剥離可能に貼着されており、
前記収容部が前記第1開口部の内側に嵌合していない状態で、前記第1開口部と前記第2開口部とを共に封止する請求項2に記載のリン酸測定用キット。
【請求項4】
前記光学セルは、一端に開口部を有し、周壁の少なくとも一部が光透過性とされ、周壁から入射した光が対向する周壁から出射可能とされた有底の第1部材と、
前記第1部材の一端に設けられ、自身を貫通する貫通孔を有する第2部材と、を有し、
前記開口部と前記貫通孔とが連通して前記第1開口部をなし、
前記隔離部材は、前記第1部材と前記第2部材とに挟持されて固定されている請求項2に記載のリン酸測定用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸測定用キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リンは、河川や海洋などの富栄養化の原因物質として知られており、自然環境へ排出する排水においては排出規制が設けられている。そのため、排水中のリンの定量、特にリン酸イオンの定量は、日常的に行われている。
【0003】
水中に含まれるリン酸イオンの定量方法は、JISK0102「工場排水試験方法」(2010)46.1.1に、モリブデン青吸光光度法として規定されている。この測定原理に基づいて、種々の測定方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−99014号公報
【特許文献2】特開2011−227040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記JIS規格の方法においては、アスコルビン酸を用いてリン酸イオンのモリブデン酸錯体を還元している。しかし、アスコルビン酸は水溶液の状態で長時間保存すると酸化劣化し着色してしまうため、保存温度や保存期間を管理する必要がある。また、測定直前に固体のアスコルビン酸を溶解して水溶液を調製する場合、操作が煩雑となる。そのため、試料である排水等に溶解したリン酸イオンを、簡便に測定可能とする技術が求められていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、試料中のリン酸イオンを、簡便に測定可能とするリン酸測定用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、一端に第1開口部を有し、周壁の少なくとも一部が光透過性とされ、周壁から入射した光が対向する周壁から出射可能とされた有底の光学セルと、前記光学セルの第1開口部を閉塞可能な蓋材と、を備え、前記蓋材は、前記第1開口部の内側に液密に嵌合可能で、かつ一端に第2開口部を有する有底筒状の収容部を備え、前記光学セル内にモリブデン酸イオンを含有する酸性溶液が収容され、前記収容部内に、前記モリブデン酸イオンを含有する酸性溶液とは隔離された状態でアスコルビン酸が収容されているリン酸測定用キットを提供する。
【0008】
本発明の一態様によれば、前記第1開口部を介した前記光学セルの内部と前記光学セルの外部との接続、または前記第2開口部を介した前記収容部の内部と前記収容部の外部との接続、の少なくともいずれか一方を遮断することで、前記モリブデン酸イオンを含有する酸性溶液と前記アスコルビン酸とを隔離する隔離部材を有している構成としてもよい。
【0009】
本発明の一態様によれば、前記隔離部材は、前記蓋材が前記第1開口部を閉塞していない状態で、前記光学セルと前記蓋材に剥離可能に貼着されており、前記収容部が前記第1開口部の内側に嵌合していない状態で、前記第1開口部と前記第2開口部とを共に封止する構成としてもよい。
【0010】
本発明の一態様によれば、前記光学セルは、一端に開口部を有し、周壁の少なくとも一部が光透過性とされ、周壁から入射した光が対向する周壁から出射可能とされた有底の第1部材と、前記第1部材の一端に設けられ、自身を貫通する貫通孔を有する第2部材と、を有し、前記開口部と前記貫通孔とが連通して前記第1開口部をなし、前記隔離部材は、前記第1部材と前記第2部材とに挟持されて固定されている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試料中のリン酸イオンを簡便に測定可能とするリン酸測定用キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のリン酸測定用キットを示す斜視図である。
図2】本実施形態のリン酸測定用キットの断面図である。
図3】本実施形態のリン酸測定用キットを用いたリン酸測定方法を示す説明図である。
図4】蓋材により第1開口部を閉じた状態を示す部分拡大図である。
図5】リン酸測定用キットの変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態に係るリン酸測定用キットについて説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0014】
(リン酸測定用キット)
図1は、リン酸測定用キット1を示す斜視図であり、図1(a)が保存時、図1(b)が使用時の様子を示す図である。
【0015】
本実施形態のリン酸測定用キット1は、光学セル本体(第1部材)2と、蓋ユニット3と、封止材(隔離部材)4と、を有している。光学セル本体2には、後述する第1の試薬5が収容されている。
【0016】
図1(b)に示すように、蓋ユニット3は、光学セル本体2の一端に設けられた基材(第2部材)31と、蓋材32と、基材31と蓋材32とを接続するヒンジ33と、を有している。基材31には、光学セル本体2の内部と接続する貫通孔311aが設けられ、蓋材32には、後述する第2の試薬を収容する収容部321が設けられている。
【0017】
図1(a)に示すように、リン酸測定用キット1は、保存状態において封止材4が基材31と蓋材32とを覆っている。また、図1(b)に示すように、使用時には、封止材4を剥離することで、基材31の貫通孔311aと、蓋材32が有する収容部321の第2開口部321aと、を露出させるように構成されている。
【0018】
図2は、リン酸測定用キット1の断面図である。
【0019】
光学セル本体2は、一端に開口部2aを有する有底筒状の角柱であり、吸光光度法による測定が可能なように、周壁が光透過性を有し、周壁から入射した光が対向する周壁から出射可能に構成されている。光学セル本体2としては、例えば、光路長10mmの角セルを採用することができる。光学セル本体2は、ガラスや石英を形成材料とすることもできるが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル樹脂、ポリスチレンなどの樹脂材料を形成材料としてもよい。また、光学セル本体2の、開口部2aが設けられた部分の外側には雄ねじ2bが形成されている。
【0020】
基材31には雌ねじ31aが形成されており、光学セル本体2の雄ねじ2bにねじ止めされている。また、基材31の貫通孔311aは、光学セル本体2の開口部2aと連通している。本実施形態において、光学セル本体2と基材31とを合わせた構成が、本発明における「光学セル」に該当し、開口部2aと貫通孔311aとが連通して形成された開口部が、本発明における「第1開口部」に該当する。
【0021】
蓋材32は、底部32aと、底部32aの周縁に設けられた閉環状の側壁32bとを有する椀型を呈し、さらに側壁32bの内側に設けられた閉環状の壁部32cと底部32aとで構成された有底筒状の収容部321を有している。後述するように、収容部321は、貫通孔311aに液密に嵌合可能な大きさを有している。
基材31と蓋材32とは、ヒンジ33で接続されている。
【0022】
蓋ユニット3(基材31、蓋材32およびヒンジ33)は、樹脂材料で一体に形成されている。蓋ユニット3は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレンなど、光学セル本体2と同じ材料を用いて形成されていてもよく、異なる材料を用いて、形成されていてもよい。また、蓋ユニット3は遮光性を有していることが好ましい。
【0023】
封止材4は、例えばアルミニウムのような金属材料を形成材料としており、必要に応じて表面に樹脂被膜が形成されていてもよい。封止材4は、例えばシート状または膜状の部材であり、収容部321が貫通孔311aの内側に嵌合していない状態で、貫通孔311aの端部(第1開口部)と第2開口部321aとを共に封止するように貼着され、且つ剥離可能に設けられている。封止材4により、貫通孔311aを介した光学セル本体2の内部と外部との接続、第2開口部321aを介した収容部321の内部と外部との接続が遮断され、保存中から使用前までの期間において、第1の試薬5と第2の試薬6とが隔離されている。また、封止材4により、保存中から使用前までの期間において第1の試薬5および第2の試薬6が外気と触れないようになっており、第1の試薬5および第2の試薬6の劣化を防いでいる。
【0024】
第1の試薬5は、モリブデン酸イオンを含有する酸性溶液である。本発明の「モリブデン酸イオンを含有する酸性溶液」としては、モリブデン酸イオンを含み、溶液のpHが酸性のものであれば用いることができる。モリブデン酸イオンを含有する酸性溶液を調整する際、モリブデン酸イオンの供給源としては、モリブデン酸塩を用いることができる。溶液の酸性度を調整するための酸としては、例えば硫酸を用いることができる。また、後述する呈色反応において強く発色させるために、酒石酸アンチモニルカリウムを含むこととするとよい。
【0025】
このような「モリブデン酸イオンを含有する酸性溶液」としては、例えば、モリブデン酸、硫酸、酒石酸アンチモニルカリウムの混合水溶液を示すことができる。また、モリブデン酸イオンを含有する酸性溶液として、JISK0102「工場排水試験方法」(2010)46.1.1に規定されたモリブデン酸アンモニウム溶液を用いることもできる。第1の試薬5は、既知の量が光学セル本体2に収容されている。
【0026】
第2の試薬6は、固体状のアスコルビン酸である。アスコルビン酸の形態としては、粉末状、細粒状、顆粒状など種々の形態を採用することができるが、後述する操作においてアスコルビン酸を溶解する必要があることから、粒度は小さい方が好ましい。第2の試薬6は、後述する還元反応における必要量に対して過剰量が、収容部321内に収容されている。
【0027】
(リン酸測定方法)
図3は、本実施形態のリン酸測定用キット1を用いたリン酸測定方法を示す説明図である。
【0028】
まず、図3(a)に示すように、リン酸測定用キット1から封止材4を剥離し、貫通孔311aおよび第2開口部321aを露出させる。その後、貫通孔311aを介して、光学セル本体2内に測定対象である排水等の試料7を注入する。注入する試料7は、予め量が規定されており、ピペット等を利用して規定量を注入する。これにより、第1の試薬5と試料7とが混合される。第1の試薬5と試料7との混合液においては、第1の試薬5中のモリブデン酸イオンと、試料7中のリン酸イオンと、が錯体を形成する。
【0029】
次いで、図3(b)に示すように、ヒンジ33を曲げ、蓋材32の収容部321を貫通孔311aに嵌合させる。これにより、蓋材32は、収容部321の内側を光学セル本体2の内部に向けた状態で貫通孔311a(第1開口部)を閉塞する。
【0030】
次いで、蓋材32により貫通孔311aを密閉した状態で、光学セル本体2および蓋ユニット3の全体を振り混ぜることで、第1の試薬5と試料7との混合液8を収容部321の内側に収容された第2の試薬6に接触させ、第2の試薬6を溶解し、例えば5分間静置する。第2の試薬6が溶解した混合液8においては、モリブデン酸錯体をアスコルビン酸が還元し、青色に呈色する。この青色の強度は、試料7中のリン酸イオン濃度に比例する。
【0031】
ここで、図4は、蓋材により貫通孔311aを閉じた状態を示す部分拡大図である。図4(a)は、収容部321を有さない蓋材132を備えたリン酸測定用キット100を想定した場合に、蓋材132を用いて貫通孔311aを閉じた場合を示す。図4(b)は、本実施形態の蓋材32で貫通孔311aを閉じた場合を示す。
【0032】
まず、図4(a)に示すように、収容部321を有さない蓋材132を備えたリン酸測定用キット100を想定した場合、蓋材132に第2の試薬6を収容させると、蓋材132を閉じ振り混ぜることで、第2の試薬6を光学セル本体2内の混合液に溶解することは可能である。しかし、このような構成の蓋材132においては、貫通孔311aと蓋材132の側壁との間の空間(図中αで示す)に、溶け残った第2の試薬6や測定対象である混合液が溜まるおそれがあり、測定値が変動する要因となる。
【0033】
対して、図4(b)に示す本実施形態のリン酸測定用キット1においては、蓋材32が収容部321を有し、収容部321が貫通孔311aに液密に嵌合して、貫通孔311aを閉塞する。これにより、収容部321内に収容されている第2の試薬6は、光学セル本体2の内部に面し、光学セル本体2および蓋ユニット3の全体を振り混ぜることで、第2の試薬6の全量を容易に溶解させることができる。そのため、確実に第2の試薬6の全量を用いて測定対象の混合液を調整することができ、測定値が安定する。
【0034】
次いで、図3(c)に示すように、第1の試薬5と第2の試薬6と試料7との混合液9について、吸光光度法による測定を行う。測定は、通常知られた吸光光度計を用いることができ、490nm〜700nmの波長の光を用いて行う。また、光学セル本体2内に純水を注入したブランク試験用のサンプルを別途用意しておき、同様に測定を行って補正値を求める。このようにして混合液9について測定した吸光係数から、ブランク試験用サンプルについて測定した吸光係数の補正値を差し引き、混合液9についての真の吸光係数を求める。
【0035】
予めリン酸イオン濃度に対する吸光係数の関係を示す検量線を作成しておくことで、検量線を参照して、求められた混合液9についての真の吸光係数から、試料7中のリン酸イオン濃度を求めることができる。
【0036】
以上のような構成のリン酸測定用キット1によれば、保存中は固体状のアスコルビン酸が収容部321に封入されているため、酸化劣化を防ぐことができる。また、ヒンジ33で接続された蓋材32を閉じ、光学セル本体2および蓋ユニット3の全体を振り混ぜるだけの簡便な操作により、固体状のアスコルビン酸を溶解して測定用の混合液を調整することができる。そのため、リン酸測定用キット1によれば、試料中のリン酸イオンを簡便に測定することができる。
【0037】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0038】
例えば、本実施形態においては、蓋ユニット3を構成する基材31と蓋材32とがヒンジ33で接続されていることとしたが、ヒンジ33がなく基材31と蓋材32とが独立した構成を採用することもできる。
【0039】
また、本実施形態においては、光学セル本体2と基材31とが別体に構成され、それぞれ形成された雄ねじ2bと雌ねじ31aとを用いてねじ止めされている構成であることとして説明したが、光学セル本体2と基材31とが透明樹脂で一体成型されている構成であってもよい。
【0040】
また、本実施形態においては、光学セル本体2の周壁が光透過性を有することとしたが、必ずしも光学セル本体2の周壁全体が光透過性を有する必要はない。対向する周壁の一部が光透過性を有し、周壁から入射した光が対向する周壁から出射可能に構成されていれば、他の周壁は光透過性を有しない構成であっても構わない。
【0041】
また、本実施形態においては、封止材4が、貫通孔311aと第2開口部321aとを共に封止するように貼着され、且つ剥離可能に設けられていることとしたが、この構成に限らない。
【0042】
図5は、本実施形態の変形例に係る説明図であり、図2に対応する図である。
図5(a)に示すリン酸測定用キット11においては、上記実施形態で説明した封止材4の代わりに、貫通孔311aの光学セル本体2側の端部において開口部2aを封止する第1封止材(隔離部材)41と、第2開口部321aの端部(収容部321の端部)を封止する第2封止材(隔離部材)42と、を有している。第1封止材41は、光学セル本体2と基材31とに挟持されて固定されている。このようなリン酸測定用キット11においては、第1封止材41と第2封止材42により、貫通孔311aと第2開口部321aとが個別に封止されている。
【0043】
リン酸測定用キット11の使用時には、第1封止材41に孔を開け、形成した孔を介して排水等の試料7(図3参照)を光学セル本体2内に入れる。一方で第2封止材42を剥離した後に、蓋材32を閉じ、リン酸測定用キット11の全体を振り混ぜることで、青色に呈色した混合液を調整し、得られる混合液の吸光係数を測定する。
【0044】
このような構成のリン酸測定用キット11では、第1封止材41と第2封止材42とにより第1試薬と第2試薬とが隔離された状態で、蓋材32を閉じ、貫通孔311aを閉塞して保管することができる。そのため、保管時や移送時に、蓋材32同士が干渉することによる破損を抑制することができ、また、狭い保管場所でも多くのリン酸測定用キット11を効率的に保管することができる。
【0045】
なお、リン酸測定用キット11においては、第1開口部を介した光学セル本体2の内部と外部との接続、または第2開口部321aを介した収容部321の内部と外部との接続、の少なくともいずれか一方を遮断することができればよく、例えば第2封止材42を備えない構成としてもよい。その場合、保管中における第2の試薬6の劣化を抑制するため、リン酸測定用キット11の保管中には、蓋材32を閉じ、第2の試薬6と空気との接触を防ぐこととするとよい。
【0046】
また、図5(b)に示すリン酸測定用キット12のように、貫通孔311aの一端を封止する第1キャップ(隔離部材)43と、第2開口部321aの端部を封止する第2キャップ(隔離部材)44と、を有する構成としてもよい。第1キャップ43および第2キャップ44は、例えばゴム製のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1…リン酸測定用キット、2…光学セル本体、2a…開口部、3…蓋ユニット、4…封止材、32…蓋材、33…ヒンジ、311a…貫通孔、321…収容部、321a…第2開口部
図1
図2
図3
図4
図5