(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る化学蓄熱装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
本実施の形態では、本発明に係る化学蓄熱装置を、車両のエンジンの排気系に設けられる排気浄化システムに備えられる化学蓄熱装置に適用する。本実施の形態に係る排気浄化システムは、エンジン(特に、ディーゼルエンジン)から排出される排気ガス中に含まれる有害物質(環境汚染物質)を浄化するシステムである。本実施の形態に係る排気浄化システムは、触媒のDOC[Diesel Oxidation Catalyst]、SCR[SelectiveCatalytic Reduction]とASC[Ammonia Slip Catalyst]及びフィルタのDPF[Diesel Particulate Filter]を備えている。また、本実施の形態に係る排気ガス浄化システムは、DOCを暖機するための化学蓄熱装置も備えている。本実施の形態には、DOC及び化学蓄熱装置の反応器周辺の構造が異なる4つの実施形態がある。
【0017】
図1を参照して、第1〜第4の実施の形態で共通する排気浄化システム1の全体構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る排気浄化システムの概略構成図である。
【0018】
排気浄化システム1は、エンジン2の排気側に接続された排気管3の上流側から下流側に向けて、ディーゼル酸化触媒(DOC)4、ディーゼル排気微粒子除去フィルタ(DPF)5、選択還元触媒(SCR)6、アンモニアスリップ触媒(ASC)7を有している。なお、これらDOC4、DPF5、SCR6、ASC7が配設される各部分は、配設されない部分の排気管3の径よりも大きくなっている。
【0019】
DOC4は、排気ガス中に含まれるHCやCO等を酸化する触媒である。DOC4の構造については、下記の各実施の形態で詳細に説明する。DPF5は、排気ガス中に含まれるPMを捕集して取り除くフィルタである。SCR6は、インジェクタ6aによって排気管3内の上流側にアンモニア(NH
3)あるいは尿素水(加水分解してアンモニアになる)が供給されると、アンモニアと排気ガス中に含まれるNOxとを化学反応させることによって、NOxを還元して浄化する触媒である。ASC7は、SCR6をすり抜けて下流側に流れたアンモニアを酸化する触媒である。
【0020】
各触媒4,6,7には、環境汚染物質に対する浄化能力を発揮できる温度領域(すなわち、活性温度)が存在する。例えば、DOC4の活性温度の下限は150℃程度である。しかし、エンジン2の始動直後などは、エンジン2から排出された直後の排気ガスの温度は100℃程度と比較的低温である。そこで、エンジン2の始動直後などでも、各触媒4,6,7で浄化能力を発揮させるために、各触媒4,6,7での温度を迅速に活性温度にする必要がある。そのために、排気浄化システム1は、触媒の暖機を行う化学蓄熱装置8も有している。なお、排気浄化システム1には、エンジン2から排出された排気ガスの温度(あるいは、触媒の温度)を検出する温度センサが設けられている。
【0021】
化学蓄熱装置8は、外部エネルギレスで触媒を暖機する化学蓄熱装置である。つまり、化学蓄熱装置8は、通常は排気ガスの熱(排熱)を蓄えておき、必要なときにその熱を使用して触媒を暖機する。特に、化学蓄熱装置8は、排気管3における上流に位置する触媒であるDOC4を外周部から暖機(加熱)する。上流で暖機することによって、暖機で昇温した排気ガスが下流の触媒(SCR6、ASC7)に流れる。化学蓄熱装置8は、反応器9、吸着器10、接続管11、開閉弁12等を備えている。なお、本実施の形態では、DOC4が特許請求の範囲に記載する加熱対象に相当する。
【0022】
反応器9は、DOC4の外周部の全周に設けられ、断面形状がDOC4を囲むドーナツ形状である。この断面ドーナツ形状の断面は、反応器9を排気ガスの流れる方向に対して垂直に切った流路断面である。反応器9は、アンモニア(反応媒体)と化学反応する反応材(蓄熱材)9aを有しており、この反応材9aがケーシング9bに収納されている。反応材9aとケーシング9bとの間に、断熱材等を設けてもよい。反応器9では、アンモニアと反応材9aとが化学反応して化学吸着(配位結合)し、熱を発生させる。また、反応器9では、所定温度以上になると反応材9aとアンモニアとが分離して、アンモニアを放出し始め、それより高い所定温度になるとアンモニアを殆ど放出する。これらの各温度は、反応材9aとアンモニアとの組み合わせによって変わる。
【0023】
反応材9aは、DOC4の外周面の全周に接するように配設される。反応材9aの排気ガスの流れる方向の長さは、DOC4の長さよりも長く、DOC4の全体を外周部で覆う十分な長さを有している。反応材9aとしては、アンモニアと化学反応して発熱し、触媒の活性温度以上に昇温できる材料を用い、例えば、2価の塩化物(MCl
2)、2価の臭化物(MBr
2)、2価のヨウ化物(MI
2)であり、MはMg、Ni、Co、Fe、Mn、Ca、Sr、Ba、Cu、Cr等が適している。なお、ケーシング9bの構造については、下記の各実施の形態で詳細に説明する。
【0024】
吸着器10は、アンモニアと物理吸着する吸着材としての活性炭が内蔵されている。吸着器10では、アンモニアを活性炭と物理吸着させた状態で貯蔵して、排気ガスの排熱(温まったアンモニア)を蓄えるとともに、アンモニアを活性炭から分離させてアンモニアを放出して、アンモニアを反応器9に供給する。なお、吸着器10には、吸着器10内の圧力を検出する圧力センサ(図示せず)が設けられている。
【0025】
接続管11は、反応器9と吸着器10とを接続し、反応器9と吸着器10との間でアンモニアを移動させる管路である。開閉弁12は、接続管11の途中に配設される。開閉弁12が開弁されると、接続管11を介して反応器9と吸着器10との間でアンモニアの移動が可能となる。なお、この開閉弁12の開閉制御は、エンジン2を制御するECU[Electronic Control Unit](図示せず)等で行われる。
【0026】
それでは、
図2を参照して、第1の実施の形態に係るDOC4、反応器9のケーシング9b及びその周辺の構造について説明する。
図2は、第1の実施の形態に係るDOC及び反応器周辺の側断面図である。
【0027】
DOC4は、円柱形状のハニカム基材4aに酸化触媒が担持された構造である。このハニカム基材4aの材料は、例えば、セラミックである。ハニカム基材4aの外周部には、DOC4の外周面を構成する円筒形状のDOC用排気管13が配設される。DOC用排気管13の内径は、ハニカム基材4aの外径に応じて決まる。DOC用排気管13の排気ガスの流れる方向の長さは、反応器9(ケーシング9bの上流側の側面と下流側の側面間)の長さに応じて決まり、ハニカム基材4aの長さよりも長い。したがって、DOC用排気管13内にハニカム基材4aが配設されると、DOC用排気管13の上流側と下流側の各端部にはハニカム基材4aが配置されない部分が存在する。DOC用排気管13の材料は、排気管3と同じ材料であり、例えば、ステンレス(SUS)である。DOC用排気管13の厚みは、反応器9(反応材9a)とDOC4との間の熱伝導性を高くするために、排気管3の厚み(例えば、数ミリ)より薄く、例えば、コンマ数ミリである。なお、第1の実施の形態では、DOC用排気管13が特許請求の範囲に記載する加熱対象の外周部を構成する配管に相当する。
【0028】
DOC4は、上記したように、上流側や下流側の排気管3よりも大きい径を有している。したがって、DOC用排気管13の径は、上流側や下流側の排気管3の径よりも大きい。そのため、その径の異なるDOC用排気管13と排気管3とを接続するために、DOC用排気管13の上流側には上流側フランジ14が配設され、下流側には下流側フランジ15が配設される。
【0029】
上流側フランジ14及び下流側フランジ15は、DOC4を上流側の排気管3と下流側の排気管3間に配設するための部材である。また、上流側フランジ14及び下流側フランジ15は、反応器9のケーシング9bの一部(側面)を構成する部材である。上流側フランジ14は、DOC用排気管13の上流側の端部(ハニカム基材4aが配置されない部分)の内側に挿入された状態で溶接接合される。また、下流側フランジ15は、DOC用排気管13の下流側の端部(ハニカム基材4aが配置されない部分)の内側に挿入された状態で溶接接合される。上流側フランジ14と下流側フランジ15は、同じ形状を有している。
【0030】
各フランジ14,15は、大径部14a,15a、テーパ部14b,15b、小径部14c,15c、取付部14d,15d、側面ケーシング部14e,15eからなる。大径部14a,15aは、DOC用排気管13に対応した円筒部分であり、DOC用排気管13の内周面に嵌り合う外径を有している。テーパ部14b,15bは、大径部14a,15aと小径部14c,15cとを繋ぐ部分であり、大径部14a,15aの径から小径部14c,15cの径まで変化する径を有している。小径部14c,15cは、排気管3に対応した円筒部分であり、上流側や下流側の排気管3の内径と同じ内径を有している。取付部14d,15dは、上流側や下流側の排気管3の取付部(図示せず)と結合するための部分であり、締結するためのボルト孔を有している。側面ケーシング部14e,15eは、ケーシング9bの側面を構成する部分であり、大径部14a,15aの外周面の全周に垂直に設けられている。フランジ14,15の材料は、排気管3と同じ材料であり、例えば、ステンレス(SUS)である。フランジ14,15(特に、大径部14a,15a)の厚みは、排気管3の厚みと同程度であり、例えば、数ミリである。
【0031】
大径部14a,15aの先端部分は、嵌合部14f,15fとなっている。嵌合部14f,15fは、DOC用排気管13の端部の内周側に嵌り合う部分である。嵌合部14f,15fは、その外周面がDOC用排気管13の内周面に接触した状態で挿入されている。そして、DOC用排気管13の各端部の外周面とフランジ14,15の側面ケーシング部14e,15eの内側面との間が全周の溶接W,Wによって接合され、DOC用排気管13の各端部に各フランジ14,15が取り付けられている。このような構造とすることにより、嵌合部14f,15fとDOC用排気管13の各端部とは、重なり合う部分(オーバラップ部分)ができる。特に、嵌合部14f,15fは、先端が触媒4のハニカム基材4aに接触しないように挿入されており、先端とハニカム基材4aの側端面との間には隙間G,Gができる。この隙間G,Gができるように、DOC用排気管13の長さ及びハニカム基材4aの長さに基づいて、大径部14a,15aの外周面に側面ケーシング部14e,15eを設ける位置が調整される。
【0032】
オーバラップ部分を設ける理由について説明する。反応器9内では、圧力が数Mパスカル程度まで高くなる。特に、反応器9内の隅の部分の圧力が特に高くなる。しかし、DOC用排気管13は、熱伝導性を高くするために薄い。そこで、嵌合部14f,15fとDOC用排気管13の各端部とをオーバラップさせて、厚い嵌合部14f,15fで薄いDOC用排気管13の各端部(反応器9内の隅の部分)を下側から支持することによって、反応器9内で発生する高い圧力に耐えうる十分な耐圧性能を持たせている。また、薄いDOC用排気管13が、溶接によって接合される。そこで、その溶接箇所においては薄いDOC用排気管13に厚い嵌合部14f,15fを重なり合わせることによって、薄いDOC用排気管13での溶接を可能としている。ちなみに、溶接によって薄いDOC用排気管13に穴があいたとしても、嵌合部14f,15fがあるので、問題ない。
【0033】
隙間Gを設ける理由について説明する。排気ガスの温度が高くなると、フランジ14,15やハニカム基材4aは各熱膨張係数に応じて膨張する。特に、ステンレス等で形成されるフランジ14,15のほうが、セラミック等で形成されるハニカム基材4aよりも膨張する。排気ガスの温度が高くなって、嵌合部14f,15fが熱膨張で伸びると、嵌合部14f,15fの先端がハニカム基材4aの側端面に接触し、ハニカム基材4aを損傷させる可能性がある。そこで、隙間G,Gを予め設けておくことになり、排気ガスの温度が高くなっても、嵌合部14f,15fの先端がハニカム基材4aの側端面に接触しないようにしている。隙間G,Gの長さは、フランジ14,15及びハニカム基材4aの各熱膨張係数を考慮して、排気ガスの温度が高くなった場合でも嵌合部14f,15fの先端がハニカム基材4aに接触しない十分な長さに設定される。また、隙間G,Gの部分については薄いDOC用排気管13が厚い嵌合部14f,15fで支持されていないので、隙間G,Gが長すぎると、反応器9内の圧力によってDOC用排気管13が変形するおそれがある。そこで、このような変形がないように、隙間G,Gの長さは、長くなり過ぎないように設定される。
【0034】
反応器9のケーシング9bは、各フランジ14,15の側面ケーシング部14e,15e間に円筒形状の上面ケーシング部16が配置されて接合されることによって構成される。このケーシング9b内に、DOC用排気管13の外周面に沿って全周に反応材9aが収納される。DOC用排気管13の外周面の全周に接するように配設された反応材9aは、薄いDOC用排気管13を介してDOC4全体を直接暖機できる。この加熱対象であるDOC4も、DOC用排気管13の内周面の全周に接するように配設されている。
【0035】
以上のように構成した化学蓄熱装置8の動作を説明する。車両停止中(エンジン2が停止中)は、開閉弁12は閉じられている。したがって、吸着器10において活性炭からアンモニアが分離していても、接続管11を介してアンモニアが反応器9に供給されない。
【0036】
エンジンが始動後に、エンジン2から排出された排気ガスの温度が所定温度(触媒の活性温度に基づいて設定された温度)より低いときには(エンジン2の始動直後など)、ECUによる制御によって開閉弁12が開かれ、接続管11を介してアンモニアが反応器9に供給される。このとき、吸着器10の圧力が反応器9の圧力よりも高く、アンモニアが反応器9側に移動する。反応器9では、供給されたアンモニアと反応材9aとが化学反応して化学吸着し、熱を発生する。この熱は、DOC用排気管13に伝わり、DOC用排気管13からDOC4に伝わる。特に、DOC用排気管13は、薄いので、熱が伝わり易い。これによって、DOC4が加熱され、温度がDOC4の活性温度以上になると、DOC4で排気ガスを浄化できる。
【0037】
エンジン2から排出された排気ガスの温度が所定温度より高くなると、排気ガスの排熱によって、反応器9では、アンモニアと反応材9aとが分離し、アンモニアが発生する。この分離したアンモニアは、開閉弁12が開かれているので、反応器9から接続管11を介して吸着器10に戻る。このとき、反応器9の圧力が吸着器10の圧力よりも高く、アンモニアが吸着器10側に移動する。吸着器10では、吸着材がアンモニアを物理吸着して貯蔵する。吸着器10内の圧力値がアンモニアの満貯蔵状態を示す圧力値になった場合、ECUでは開閉弁12を閉じる。
【0038】
排気ガスの温度が高くなると、各フランジ14,15が熱膨張し、嵌合部14f,15fがDOC4側に伸びる。この際、フランジ14,15よりも熱膨張しないが、DOC4のハニカム基材4aも熱膨張する。しかし、隙間G,Gが設けられているので、嵌合部14f,15fの先端がハニカム基材4aに接触することはなく、ハニカム基材4aが損傷するようなことはない。また、反応器9内の圧力が高くなると、特に、隅の部分の圧力が高くなる。しかし、その隅の部分には薄いDOC用排気管13の内側に厚い嵌合部14f,15fが配置されているので、その高い圧力に十分に耐えることができる。
【0039】
この第1の実施の形態に係る構造によれば、DOC4の外周部を構成するDOC用排気管13の端部の内周側に嵌合部14f,15fを挿入して、薄いDOC用排気管13の内側に厚い嵌合部14f,15fを配置させた構造とすることにより、薄いDOC用排気管13でも溶接接合が可能かつ耐圧性能が低下しない。また、この構造によれば、フランジ14,15の嵌合部14f,15fの外周側にDOC用排気管13が配置される構造となるので、製造し易い。また、この構造によれば、嵌合部14f,15fの先端とDOC4のハニカム基材4aとの間に隙間G,Gを設けておくことにより、嵌合部14f,15fやハニカム基材4aが熱膨張しても、嵌合部14f,15fの先端がハニカム基材4aに接触することはなく、嵌合部14f,15fによってハニカム基材4aを損傷するようなことはない。
【0040】
なお、DOC用排気管13が薄いので、反応器9(反応材9a)とDOC4との間の熱伝導性が高い。そのため、反応器9でDOC4を外周部から加熱する場合でも、反応材9aからの熱を薄いDOC用排気管13を介してDOC4に効率的に伝えることができ、化学蓄熱装置8によるDOC4への加熱効率が向上する。その結果、DOC4を迅速に昇温でき、早期にDOC4の活性温度に達し、DOC4で排気ガスを浄化できる。また、排気ガスの排熱によって温められたDOC4から反応材9aへ熱を効率的に伝えることができ、反応材9aからアンモニアの分離、回収を効率的に行うことができる。
【0041】
次に、
図3を参照して、第2の実施の形態に係るDOC4、反応器9のケーシング9b及びその周辺の構造について説明する。
図3は、第2の実施の形態に係るDOC及び反応器周辺の側断面図である。第2の実施の形態に係る構造は、第1の実施の形態に係る構造と比較すると、反応器9のケーシング9bの一部(側面)がフランジに一体で構成されていない点が異なる。なお、DOC4及びDOC用排気管23は、第1の実施の形態と同様の構造なので、説明を省略する。また、化学蓄熱装置8の動作についても、第1の実施の形態と同様の動作なので、説明を省略する。第2の実施の形態では、DOC用排気管23が特許請求の範囲に記載する加熱対象の外周部を構成する配管に相当する。
【0042】
第2の実施の形態に係る構造では、径の異なるDOC用排気管23とその上流側や下流側の排気管3とを接続するために、DOC用排気管23の上流側には上流側フランジ24が配設され、下流側には下流側フランジ25が配設される。上流側フランジ24及び下流側フランジ25は、第1の実施の形態に係る上流側フランジ14及び下流側フランジ15と比較すると、ケーシング9bの一部(側面)を構成する部分を有していない点が異なる。したがって、各フランジ24,25は、大径部24a,25a(一部が嵌合部24f,25f)、テーパ部24b,25b、小径部24c,25c、取付部24d,25dからなる。大径部24a,25a、テーパ部24b,25b、小径部24c,25c、取付部24d,25d、嵌合部24f,25fは、第1の実施の形態で説明した大径部14a,15a、テーパ部14b,15b、小径部14c,15c、取付部14d,15d、嵌合部14f,15fと同様の構造を有するので、説明を省略する。
【0043】
反応器9のケーシング9bは、上流側の側面ケーシング部27と下流側の側面ケーシング部28の間に円筒形状の上面ケーシング部26が配置されて接合されることによって構成される。側面ケーシング部27,28は、所定の厚さを有するドーナツ形状であり、フランジ24,25の大径部24a,25aの外周面に嵌り合う孔を有している。この側面ケーシング部27,28は、その孔の内周面が大径部24a,25aの外周面に接触した状態で挿入されている。そして、この側面ケーシング部27,28の外側面における各端部と大径部24a,25aの外周面との間が全周の溶接W,Wによって接合され、フランジ24,25に側面ケーシング部27,28が取り付けられている。
【0044】
各フランジ24,25の嵌合部24f,25fは、その外周面がDOC用排気管23の内周面に接触した状態で挿入されている。そして、DOC用排気管23の各端部の外周面と側面ケーシング部27,28の内側面との間が全周の溶接W,Wによって接合され、DOC用排気管23の各端部に各フランジ24,25が取り付けられている。このような構造とすることにより、嵌合部24f,25fとDOC用排気管23の各端部とは、オーバラップ部分ができる。また、第1の実施の形態に係る構造と同様に、嵌合部24f,25fの先端と触媒4のハニカム基材4aとの間には隙間G,Gができるようにしている。この隙間G,Gができるように、DOC用排気管23の長さ及びハニカム基材4aの長さに基づいて、各フランジ24,25の大径部24a,25aに側面ケーシング部27,28を配置させる位置が調整される。
【0045】
この第2の実施の形態に係る構造によれば、第1の実施の形態に係る構造と同様の効果を有している。
【0046】
次に、
図4を参照して、第3の実施の形態に係るDOC4、反応器9のケーシング9b及びその周辺の構造について説明する。
図4は、第3の実施の形態に係るDOC及び反応器周辺の側断面図である。第3の実施の形態に係る構造は、第1の実施の形態に係る構造と比較すると、反応器9のケーシング9bの一部(側面)がフランジに一体で構成されていない点及び嵌合部がそのケーシング9bの一部に一体に構成されている点が異なる。なお、DOC4及びDOC用排気管33は、第1の実施の形態と同様の構造なので、説明を省略する。また、化学蓄熱装置8の動作についても、第1の実施の形態と同様の動作なので、説明を省略する。第3の実施の形態では、DOC用排気管33が特許請求の範囲に記載する加熱対象の外周部を構成する配管に相当する。
【0047】
第4の実施の形態に係る構造では、径の異なるDOC用排気管33とその上流側や下流側の排気管3とを接続するために、DOC用排気管33の上流側には上流側フランジ34が配設され、下流側には下流側フランジ35が配設される。上流側フランジ34及び下流側フランジ35は、第1の実施の形態に係る上流側フランジ14及び下流側フランジ15と比較すると、反応器9のケーシング9bの一部(側面)を構成する部分を有していない点及び大径部の先端部分が嵌合部になっていない点が異なる。各フランジ34,35は、大径部34a,35a、テーパ部34b,35b、小径部34c,35c、取付部34d,35d、接合部34g,35gからなる。テーパ部34b,35b、小径部34c,35c、取付部34d,35dは、第1の実施の形態で説明したテーパ部14b,15b、小径部14c,15c、取付部14d,15dと同様の構造を有するので、説明を省略する。
【0048】
大径部34a,35aの先端には、接合部34g,35gが繋がっている。接合部34g,35gは、フランジ34,35をケーシング9b(ひいては、ケーシング9bを介してDOC用排気管33)に接合するための部分であり、大径部34a,35aの先端から外周側に垂直に延びる部材である。
【0049】
反応器9のケーシング9bは、上流側の側面ケーシング部37と下流側の側面ケーシング部38の間に円筒形状の上面ケーシング部36が配置されて接合されることによって構成される。側面ケーシング部37,38は、側面部37a,38aと嵌合部37b,38bからなり、第2の実施の形態に係る側面ケーシング部27,28と同様にドーナツ形状の部分を有するとともにそのドーナツ形状部分の内周側の端部に円筒部分を有している。この側面ケーシング部37,38におけるドーナツ形状部分が、側面部37a,38aであり、ケーシング9bの側面となる部分である。この側面部37a,38aの外側に、各フランジ34,35の接合部34g,35gが接触した状態で配置されている。そして、接合部34g,35gの各先端部と側面部37a,38aの外周面との間が全周の溶接W,Wによって接合され、フランジ34,35に側面ケーシング部37,38が取り付けられている。
【0050】
側面ケーシング部37,38における円筒部分が、嵌合部37b,38bとなっており、DOC用排気管33の端部の内周側に嵌り合う部分である。嵌合部37b,38bは、DOC用排気管33の内周側に嵌り合う外径を有している。嵌合部37b,38bは、その外周面がDOC用排気管33の内周面に接触した状態で挿入されている。そして、DOC用排気管33の各端部の外周面と側面ケーシング部37,38の側面部37a,38aの内側面との間が全周の溶接W,Wによって接合され、DOC用排気管33の各端部に側面ケーシング部37,38(ひいては、各フランジ34,35)が取り付けられている。このような構造とすることにより、嵌合部37b,38bとDOC用排気管33とは、オーバラップ部分ができる。また、第1の実施の形態に係る構造と同様に、嵌合部37b,38bの先端が触媒4のハニカム基材4aとの間には隙間G,Gができるようにしている。この隙間G,Gができるように、DOC用排気管33の長さ及びハニカム基材4aの長さに基づいて、側面ケーシング部37,38の嵌合部37b,38bの長さが調整される。
【0051】
この第3の実施の形態に係る構造によれば、第1の実施の形態に係る構造と同様の効果を有している。
【0052】
次に、
図5を参照して、第4の実施の形態に係るDOC4、反応器9のケーシング9b及びその周辺の構造について説明する。
図5は、第4の実施の形態に係るDOC及び反応器周辺の側断面図である。第4の実施の形態に係る構造は、第1の実施の形態に係る構造と比較すると、各フランジの嵌合部がDOC用排気管の外側に挿入される点が異なる。なお、DOC4、DOC用排気管43及びケーシング9bは、第1の実施の形態と同様の構造なので、説明を省略する。また、化学蓄熱装置8の動作についても、第1の実施の形態と同様の動作なので、説明を省略する。第4の実施の形態では、DOC用排気管43が特許請求の範囲に記載する加熱対象の外周部を構成する配管に相当する。
【0053】
第4の実施の形態に係る構造では、径の異なるDOC用排気管43とその上流側や下流側の排気管3とを接続するために、DOC用排気管43の上流側には上流側フランジ44が配設され、下流側には下流側フランジ45が配設される。上流側フランジ44及び下流側フランジ45は、第1の実施の形態に係る上流側フランジ14及び下流側フランジ15と比較すると、嵌合部44f,45fをDOC用排気管43の外側に配置させる点が異なる。各フランジ44,45は、大径部44a,45a(一部が嵌合部44f,45f)、テーパ部44b,45b、小径部44c,45c、取付部44d,45d、側面ケーシング部44e,45eからなる。テーパ部44b,45b、小径部44c,45c、取付部44d,45d、側面ケーシング部44e,45eは、第1の実施の形態で説明したテーパ部14b,15b、小径部14c,15c、取付部14d,15d、側面ケーシング部14e,15eと同様の構造を有するので、説明を省略する。大径部44a,45aは、DOC用排気管43に対応した円筒部分であり、DOC用排気管43の外周面に嵌り合う内径を有している。
【0054】
大径部44a,45aの先端部分は、嵌合部44f,45fとなっている。嵌合部44f,45fは、DOC用排気管43の端部の外周側に嵌り合う部分である。嵌合部44f,45fは、その内周面がDOC用排気管43の外周面に接触した状態で挿入されている。そして、DOC用排気管43の各端部の先端と各フランジ44,45の大径部44a,45aの内周面との間が全周の溶接W,Wによって接合され、DOC用排気管43の各端部に各フランジ44,45が取り付けられている。このような構造とすることにより、嵌合部44f,45fとDOC用排気管43とは、オーバラップ部分ができる。この嵌合部44f,45fの長さは、少なくともハニカム基材4aの側端面の位置まで届く長さとし、ハニカム基材4aの側端面の位置より少し内側まで入る長さとしてもよい。嵌合部44f,45fをこのような長さとするのは、嵌合部44f,45fの長さがハニカム基材4aの側端面の位置よりも短いと、反応器9内の圧力を薄いDOC用排気管43だけで受ける部分ができるからである。
【0055】
この第4の実施の形態に係る構造によれば、DOC4の外周部を構成するDOC用排気管43の端部の外周側に嵌合部44f,45fを挿入して、薄いDOC用排気管43の外側に厚い嵌合部44f,45fを配置させた構造とすることにより、薄いDOC用排気管43でも溶接接合が可能かつ耐圧性能が低下しない。また、この構造によれば、DOC用排気管43の外周側にフランジ44,45が配置される構造となるので、DOC用排気管43(ハニカム基材4a)の径が同じあれば、排気ガスが流れる流路断面の面積が大きくなるので、排気ガスの流速が抑えられ、暖機性能が向上する。また、この構造によれば、嵌合部44f,45fがハニカム基材4aよりも外側に配置されているので、嵌合部44f,45fの先端がハニカム基材4aに接触する可能性がなく。熱膨張した嵌合部44f,45fによってハニカム基材4aを損傷するようなことはない。
【0056】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0057】
例えば、本実施の形態では触媒としてDOC、SCR及びASC、フィルタとしてDPFを備える排気浄化システムに適用したが、他の様々な構成の排気浄化システムに適用できる。また、車両もディーゼルエンジン車としたが、ガソリンエンジン車等にも適用できる。また、車両以外の排気浄化システムにも適用できる。また、排気浄化システム以外にも適用できる。
【0058】
また、本実施の形態では化学蓄熱装置の加熱対象として触媒のDOCとしたが、加熱対象としては他のものでよく、例えば、SCR等の他の触媒がある。また、本実施の形態では化学蓄熱装置における化学反応の反応媒体をアンモニアとしたが、二酸化炭素、アルコール、水等の他の媒体でもよい。また、本実施の形態では反応器をDOCの外周部の全周に設ける構成としたが、全周に設けない構成でもよい。
【0059】
また、本実施の形態では嵌合部及びDOC(加熱対象)の外周部を構成するDOC用排気管(配管)の構造として4つの形態を示したが、嵌合部及び加熱対象の外周部を構成する配管の構造について配管の端部に嵌合部が挿入される構造であれば、様々な構造が適用可能である。
【0060】
また、第4の実施の形態では第1の実施の形態と同様の構造を持つフランジの嵌合部をDOC用排気管の外周側に挿入する構成としたが、第2の実施の形態と同様の構造を持つフランジの嵌合部をDOC用排気管の外周側に挿入する構成としてもよし、第3の実施の形態と同様の構造を持つ側面ケーシング部の嵌合部をDOC用排気管の外周側に挿入する構成としてもよい。