特許第6167710号(P6167710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日油株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167710
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用電解液
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
   H01G9/02 311
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-146606(P2013-146606)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2015-19007(P2015-19007A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】阿部 哲志
(72)【発明者】
【氏名】砂田 和輝
(72)【発明者】
【氏名】中村 康行
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−071727(JP,A)
【文献】 特開2003−012598(JP,A)
【文献】 特開平06−061100(JP,A)
【文献】 特開2004−128275(JP,A)
【文献】 特開2005−093448(JP,A)
【文献】 特開2015−019009(JP,A)
【文献】 特開2003−031442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G9/02−9/022
9/028−9/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物またはその塩を含有することを特徴とする、電解コンデンサ用電解液。

HOOC−(CH−O−(AO)−C2m−O−(AO)
(CH−COOH ・・・・ (1)

(式(1)中、AOおよびAOは、それぞれ独立して炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、(AO)及び(AO)に占めるオキシエチレン基の割合は、それぞれ50重量%以上であり、x=2〜50、y=2〜50、m=5〜12、(x+y)/m=1〜15、a=1〜3、b=1〜3である。)
【請求項2】
式(2)で表される化合物またはその塩を含有することを特徴とする、請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。

HOOC−(CH−COOH ・・・・ (2)
(式(2)中、n=1〜10である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用電解液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム電解コンデンサは、高純度のアルミニウム箔からなる陽極に形成する酸化被膜を誘電体として利用するものである。デジタル機器や車載機器の発展に伴い、近年、高電圧での使用条件下においてもショート等の不具合を発生することのない、火花発生電圧の高いアルミニウム電解コンデンサが要求されている。加えて、一定品質のアルミニウム電解コンデンサを供給する観点から、その電解液は、各成分が分離や析出することなく均一な透明液体であることが望まれる。
【0003】
アルミニウム電解コンデンサに用いられる電解液としては、エチレングリコールやγ−ブチロラクトン等の極性溶媒に、ホウ酸等の無機酸やアジピン酸、マレイン酸等の二塩基酸及びその塩を電解質としたものが知られている。しかしながら、電解質としてこれらのカルボン酸を使用した電解液は、火花発生電圧が低いことが問題となっていた。
【0004】
火花発生電圧を向上させる方法としては、ブチルオクタン二酸を使用する方法(特許文献1)、5,6−デカンジカルボン酸を溶質として使用する方法(特許文献2)等が報告されている。このような長鎖アルキル鎖を有するカルボン酸を使用した電解液は、火花発生電圧の向上に有効であるが、極性溶媒への溶解性が低く、多量に添加できない問題があった。
【0005】
また、二塩基酸以外に火花発生電圧を向上させる方法として、ポリエチレングリコール(特許文献3)、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールのランダム共重合体またはブロック共重合体等の高分子化合物を用いることが報告されている。これらの化合物は、電極箔及び電解紙上に保護皮膜を形成することにより電解液の火花発生電圧を向上させるものである。しかし、これらの化合物は火花発生電圧の向上にある程度の効果はあるものの、導電性をほとんど示さないため、多量に添加すると電解液の比抵抗が高くなり、導電性が低くなる問題があった。
【0006】
そこで、極性溶媒への溶解性や火花発生電圧が高く、比抵抗が小さい電解質として、ポリアルキレングリコール化合物とジカルボン酸化合物とをエステル化反応させた構造の化合物(特許文献4)が知られている。しかし、この化合物を用いた電解液は、エステル結合が経時的に分解することにより、保管時に分離することがあった。分離した電解液を用いると、本来の比抵抗や火花発生電圧が得られず、一定品質のコンデンサを供給する観点から問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭60−13293号公報
【特許文献2】特公昭63−15738号公報
【特許文献3】特公平3−76776号公報
【特許文献4】特開2004−128275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、極性溶媒への溶解性が高い電解質を用い、加えて、分解しにくく経時的に安定で、比抵抗が低く、火花発生電圧の高い電解液が望まれていた。
【0009】
本発明の課題は、極性溶媒への溶解性の高い電解質を用い、分解しにくく経時的に安定で、比抵抗が低く、火花発生電圧の高い電解液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の2価の脂肪族アルコールにオキシアルキレン基を特定の割合で導入し、さらに、エーテル結合を介してカルボン酸を導入した構造の化合物またはその塩を電解質として用いることで、極性溶媒への溶解性が高く、加えて、分解しにくく、経時的に安定で、比抵抗が低く、火花発生電圧の高い電解液が得られることを見出し、本発明に至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は、式(1)で表される化合物またはその塩を含有することを特徴とする電解コンデンサ用電解液である。

HOOC−(CH−O−(AO)−C2m−O−(AO)
(CH−COOH ・・・・ (1)

(式(1)中、AOおよびAOは、それぞれ独立して炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、(AO)及び(AO)に占めるオキシエチレン基の割合は、それぞれ50重量%以上であり、x=2〜50、y=2〜50、m=5〜12、(x+y)/m=1〜15、a=1〜3、b=1〜3である。)
【0012】
また、式(2)で表される化合物またはその塩を含有する前記の電解コンデンサ用電解液である。

HOOC−(CH−COOH ・・・・ (2)

(式(2)中、n=1〜10である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明により、極性溶媒への溶解性が高い電解質と、分解しにくく、経時的に安定で、比抵抗が低く、火花発生電圧の高い電解液を提供できるため、大変有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(電解コンデンサ用電解液)
電解コンデンサにおいては、アルミニウムまたはタンタルなどの金属の表面に絶縁性の酸化被膜が形成された弁金属を陽極電極として使用し、前記酸化被膜を誘電体とする。この酸化被膜の表面に電解液を接触させ、また集電用の電極を配置する。電解コンデンサ用電解液は、誘電体に接触し、陰極として作用する。
【0015】
(式(1)で表される化合物)
式(1)で表される化合物は極性溶媒への溶解性が高く、また、式(1)で表される化合物を用いることにより、分解しにくく、経時的に安定で、比抵抗が低く、火花発生電圧の高い電解液を得ることが可能となる。
【0016】
OおよびAOは、それぞれ、独立して炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。具体的には、炭素数2のオキシアルキレン基としてオキシエチレン基、炭素数3のオキシアルキレン基としてオキシプロピレン基、炭素数4のオキシアルキレン基としてオキシブチレン基が挙げられる。なお、オキシエチレン基はエチレンオキシド由来であり、オキシプロピレン基はプロピレンオキシド由来のメチルオキシエチレン基である。オキシブチレン基は、1,2−ブチレンオキシド由来のエチルオキシエチレン基、2,3−ブチレンオキシド由来のジメチルオキシエチレン基であり、1,2−ブチレンオキシド由来のエチルオキシエチレン基が好ましい。
【0017】
x及びyは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、それぞれ独立して2〜50とする。xまたはyが2より小さい場合は、エチレングリコールやγ−ブチロラクトン等の極性溶媒に対する溶解度が低下して均一な電解液が得られない。この観点からは、x、yは、それぞれ、5以上が好ましく、7以上が更に好ましい。また、xまたはyが50よりも大きい場合は、電解液の導電性が低くなり、比抵抗が高くなる。この観点からは、x、yは、それぞれ、32以下が更に好ましく、20以下が一層好ましく、15以下が特に好ましい。
【0018】
また、(AO)及び(AO)に占めるオキシエチレン基の割合は、それぞれ、50重量%以上とする。(AO)及び(AO)に占めるオキシエチレン基の割合が50重量%未満の場合、極性溶媒に対する溶解度が低下して均一な電解液が得られない。この観点からは、(AO)、(AO)に占めるオキシエチレン基の割合は、それぞれ、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上が更に好ましく、100重量%、つまりオキシエチレン単独重合が特に好ましい。
【0019】
2mはアルキレン基であり、2価の脂肪族アルコール残基である。その炭素数であるmは、5〜12とする。mが5より小さい場合、電解液の火花発生電圧が低下する。この観点からは、mは、7以上が好ましく、8以上が更に好ましい。また、mが12より大きい場合、極性溶媒に対する溶解度が低下して均一な電解液が得られない。この観点からは、mは、11以下が好ましく、10以下がさらに好ましい。
【0020】
炭素数5〜12の2価の脂肪族アルコールとして、具体的にはペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオールが挙げられる。これらは直鎖型でも分岐型でも良く、単独で使用しても2種類以上を併用しても良い。ただし、脂肪族アルコールの主鎖が長いほど、電解液の火花発生電圧は高くなる傾向があるので、直鎖型で両末端に水酸基を有するアルコールが好ましい。
【0021】
(x+y)/mは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数の合計(x+y)と、アルキレン基C2mの炭素数mとの比であり、1〜15とする。(x+y)/mが1未満の場合、極性溶媒に対する溶解度が低下して均一な電解液が得られない。この観点からは、(x+y)/mを1.5以上とすることが好ましい。また、(x+y)/mが15より大きい場合、電解液の比抵抗が上昇して導電性が低下する。この観点からは、(x+y)/mは、9以下が好ましく、5以下がさらに好ましい。
【0022】
a及びbは、オキシアルキレン部位とカルボキシル基とのリンカー部位のアルキル基の炭素数であり、それぞれ1〜3が好ましく、1または2がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0023】
式(1)で表される化合物は、そのまま電解液に用いてもよく、塩として用いても良い。塩として用いる場合、具体的には、アンモニウム塩、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン等の1級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の2級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩、イミダゾリニウム塩等の溶融塩を挙げられるが、アンモニウム塩が好ましい。
【0024】
(式(2)で表される化合物)
本発明の電解液には、上記の式(1)で表される化合物に加えて、式(2)で表される化合物を添加しても良い。式(2)で表される化合物を用いることにより、電解液の比抵抗を低下させることが可能となる。
【0025】
nは、2個のカルボキシル基を有するジカルボン酸のアルキル部位の炭素数であり、1〜10が好ましい。nを10以下とすることによって、極性溶媒に対する溶解度が更に向上する。この観点からは、nは、9以下が更に好ましい。また、火花発生電圧の向上効果の観点からは、nは、5以上が好ましく、7以上がさらに好ましい。
【0026】
式(2)で表される化合物として、具体的には、脂肪族の直鎖型ジカルボン酸であるプロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、およびこれらの分岐型の異性体である2−メチルアゼライン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸等が挙げられ、これらは単独でも、2種類以上を併用しても良い。
【0027】
式(2)で表される化合物はそのままでも塩として用いても良い。塩として用いる場合、具体的には、アンモニウム塩、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン等の1級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の2級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩、イミダゾリニウム塩等の溶融塩を挙げられるが、アンモニウム塩が好ましい。
【0028】
(溶媒)
本発明の電解コンデンサ電解液において、残部は溶媒である。本発明で用いる溶媒は極性溶媒である。こうした極性溶媒は、極性を有する溶媒、特に有機溶媒として通常知られているものや水を使用できる。好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、γ−ブチルラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等のラクトン類、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等のアミド類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、イソブチレンカーボネート等の炭酸類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等のオキシド類、ベンジルアルコール等のアルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、スルホラン、スルホラン誘導体、水等が挙げられる。これらの溶媒は1種類でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0029】
極性溶媒としては、極性有機溶媒単独、または水と極性有機溶媒との混合物が好ましい。水と極性有機溶媒との混合物の場合、水と2価アルコールや3価アルコールとの混合物が更に好ましい。これらのうち、エチレングリコール、エチレングリコールと水の混合物がいっそう好ましい。
【0030】
(重量比)
式(1)で表される化合物またはその塩の電解液中の濃度は、要求される火花発生電圧や比抵抗の値にもよるが、前記作用効果の観点からは、1重量%以上が好ましく、5重量%以上が更に好ましく、7重量%以上が特に好ましい。また、式(1)で表される化合物またはその塩の電解液中の濃度は、各電解質の飽和濃度以下という観点から、30重量%以下が好ましく、27重量%がより好ましく、20重量%がさらに好ましく、15重量%以下が特に好ましい。
【0031】
また、必要に応じて式(2)で表される化合物またはその塩を添加することもできる。その場合、式(2)で表される化合物またはその塩の電解液中の濃度は、式(1)で表される化合物またはその塩との相溶性や、要求される火花発生電圧や比抵抗の値にもよるが、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上が更に好ましく、0.7重量%以上が一層好ましく、1重量%以上が特に好ましい。また、式(2)で表される化合物またはその塩の電解液中の濃度は、30重量%以下が好ましく、27重量%以下がより好ましく、20重量%以下が一層好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0032】
式(2)で表される化合物を添加する場合、式(1)で表される化合物またはその塩:式(2)で表される化合物またはその塩の重量比は、5:5〜9:1が好ましく、6:4〜9:1がより好ましく、7:3〜9:1がさらに好ましい。すなわち、式(2)で表される化合物またはその塩の重量は、式(1)で表される化合物またはその塩の重量以下とすることが好ましく、これによって電解液の火花発生電圧の低下を抑制することができる。
【0033】
前記電解液組成では、式(1)で表される化合物またはその塩、溶媒、および必要に応じて式(2)で表される化合物またはその塩の重量比の合計値を100重量%として計算する。つまり、溶媒の重量比率は、100重量%から、式(1)で表される化合物またはその塩、および必要に応じて式(2)で表される化合物またはその塩の重量比を差し引いた後の残部である。
【0034】
極性溶媒が、水と極性有機溶媒との混合物である場合には、極性有機溶媒の比率は、両者の合計を100重量部としたとき、90〜99重量部であることが好ましく、95〜99重量部であることが更に好ましい。
【0035】
(添加剤)
本発明の電解液には、漏れ電流の低減、火花発生電圧向上、ガス吸収等の目的で、更に種々の添加剤を加えることができる。添加剤の例として、リン酸化合物、ホウ酸化合物、多価アルコール類、ニトロ化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールのランダム共重合体及びブロック共重合体に代表される高分子化合物等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
表1に示す化合物のジアンモニウム塩、セバシン酸のジアンモニウム塩、水、エチレングリコールを用いて、表2に記載の重量比にて電解液を調製した。EOはオキシエチレン基である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
(試験1:安定性試験)
得られた電解液について、調製直後、及び室温で1ヶ月保管後の外観を目視により観察した。なお、電化液の調製直後及び保管後の外観は、電解質が溶解し均一な透明液体となっていることが、安定性が良好であることを表す。調製直後、及び室温で1ヶ月保管後の外観が透明な電解液について、火花発生電圧及び比抵抗の測定を行った。
【0040】
(試験2:火花発生電圧の測定)
1L容量ステンレス製容器に電解液700gを入れ、60mm×10mmに裁断した純度99.99%以上のアルミニウム箔を浸漬し、直流電源を繋げて30℃における電解液の火花発生電圧を測定した。火花発生電圧が400V以上で、良好であることを表す。
【0041】
(試験3.比抵抗の測定)
電気伝導度計(東亜電波工業(株)製CM−60S)により、電解液の30℃での比抵抗を測定した。電解液の比抵抗が2000Ω・cm以下で、良好であることを表す。
【0042】
本発明の式(1)で表される化合物を用いた実施例1〜3は、いずれも調製直後及び1ヶ月保管後も透明な電解液が得られ、高い火花発生電圧を示した。
【0043】
比較例1では、式(1)で表される化合物を用いなかったため、火花発生電圧が低かった。
比較例2では、式(1)で表される化合物を用いなかったため、1ヶ月保管後に電解液の分離が確認された。
比較例3では、式(1)で表される化合物の(x+y)/mの値が1未満で本発明の範囲外のため、溶解せず透明な電解液が得られなかった。
比較例4では、式(1)で表される化合物の(x+y)/mの値が15より大きく本発明の範囲外のため、比抵抗が高くなった。
比較例5では、式(1)で表される化合物のアルキレン基であるC2m部位が含まれていないため、火花発生電圧が低かった。