特許第6167746号(P6167746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167746
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】搬送車システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
   B60L15/20 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-168347(P2013-168347)
(22)【出願日】2013年8月13日
(65)【公開番号】特開2015-37365(P2015-37365A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】幸本 誉
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−244532(JP,A)
【文献】 特開平03−093403(JP,A)
【文献】 特開2012−038134(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/041312(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道と、
前記軌道に沿った一部区間に設けられた給電部と、
前記給電部から供給される電力を蓄電する蓄電部及び前記蓄電部における蓄電量を取得する蓄電量取得部を有し、前記軌道に沿って走行する搬送車と、
前記給電部が配置された給電区間における走行速度を制御する走行速度制御部を含むコントローラと、
を備え、
前記蓄電部は、減速時に走行用モータから供給される回生電力を蓄電し、
前記コントローラは、前記給電区間から前記搬送車の目的地までの距離を取得する目的地取得部を更に含み、
前記走行速度制御部は、前記給電部から電力の供給が開始される前の前記蓄電量が第1蓄電量の場合には第1速度を前記走行速度として設定し、前記給電部から電力の供給が開始される前の前記蓄電量が前記第1蓄電量よりも少ない第2蓄電量の場合には前記第1速度よりも遅い第2速度を前記走行速度として設定すると共に、前記距離が所定値よりも短い場合には、前記走行速度として設定された速度よりも速い速度を前記走行速度として再設定する、搬送車システム。
【請求項2】
軌道と、
前記軌道に沿った一部区間に設けられた給電部と、
前記給電部から供給される電力を蓄電する蓄電部及び前記蓄電部における蓄電量を取得する蓄電量取得部を有し、前記軌道に沿って走行する搬送車と、
前記給電部が配置された給電区間における走行速度を制御する走行速度制御部を含むコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、被搬送物を積載した搬送車が後方に接近したことを把握する後方接近把握部を更に有し、
前記走行速度制御部は、前記給電部から電力の供給が開始される前の前記蓄電量が第1蓄電量の場合には第1速度を前記走行速度として設定し、前記給電部から電力の供給が開始される前の前記蓄電量が前記第1蓄電量よりも少ない第2蓄電量の場合には前記第1速度よりも遅い第2速度を前記走行速度として設定すると共に、前記被搬送物を積載した搬送車が後方に接近したことを把握すると、把握時における前記蓄電量が目標量以上であることを条件に、前記走行速度として設定された速度よりも速い速度を前記走行速度として再設定する、搬送車システム。
【請求項3】
前記コントローラは、被搬送物を積載した搬送車が後方に接近したことを把握する後方接近把握部を更に有し、
前記走行速度制御部は、前記被搬送物を積載した搬送車が後方に接近したことを把握すると、把握時における前記蓄電量が目標量以上であることを条件に、前記走行速度として設定された速度よりも速い速度を前記走行速度として再設定する、
請求項に記載の搬送車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を搬送車により搬送するための搬送車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ、ガラス基板及び一般部品などの被搬送物を、軌道に沿って走行する搬送車によって搬送する搬送車システムが知られている。このような搬送車システムにおける搬送車は、軌道に沿って配置された給電線などの給電部から供給される電力によって走行する。
【0003】
搬送車システムの中には、例えば特許文献1に示すような、充電可能な蓄電部を備えた搬送車によって被搬送物を搬送する搬送車システムがある。このような搬送車システムにおける搬送車は、軌道に沿った一部区間に配置される給電部を走行する際に給電部から供給される電力を蓄電部に蓄電し、この蓄電した電力により給電部が配置されていない区間の軌道を走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−038134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送車システムでは、例えば、被搬送物の搬送先によって互いに異なる経路を走行させたり、搬送車システム全体の搬送量が相対的に少なくなった場合には、搬送車の移動を周回の途中で停止して待機させたりする場合がある。このような場合、上述したような蓄電部を搭載した搬送車が走行する搬送車システムでは、搬送車は互いに蓄電量が異なる状態で給電部に戻ってくる。搬送車システムでは、蓄電量が異なる搬送車に対し、一律に一定量の電力を供給して充電させるのではなく、蓄電量に応じた充電がなされることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、搬送車に対し蓄電量に応じた充電をすることができる搬送車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る搬送車システムは、軌道と、軌道に沿った一部区間に設けられた給電部と、給電部から供給される電力を蓄電する蓄電部及び蓄電部における蓄電量を取得する蓄電量取得部を有し、軌道に沿って走行する搬送車と、給電部が配置された給電区間における走行速度を制御する走行速度制御部を含むコントローラと、を備え、走行速度制御部は、給電部から電力の供給が開始される前の蓄電量が第1蓄電量の場合には第1速度を走行速度として設定し、給電部から電力の供給が開始される前の蓄電量が第1蓄電量よりも少ない第2蓄電量の場合には第1速度よりも遅い第2速度を走行速度として設定する。
【0008】
ここでいう第1蓄電量及び第2蓄電量は、所定の範囲の蓄電量であってもよいし、所定の一の蓄電量であってもよい。すなわち、所定の範囲の蓄電量である第1蓄電量(蓄電量をCとすると、C>A)に対して第1速度Vaが設定され、所定の範囲よりも小さく、先の所定の範囲とは異なる範囲の蓄電量である第2蓄電量(C≦A)に対して、第1速度Vaよりも遅い第2速度Vbが設定されてもよい。また、所定の一の蓄電量である第1蓄電量Caに対して第1速度Vaが設定され、第1蓄電量Caよりも少ない一の蓄電量である第2蓄電量Cb(Cb<Ca)に対して、第1速度Vaよりも遅い第2速度Vbが設定されてもよい。
【0009】
このような搬送車システムによれば、給電部から電力の供給が開始される前の蓄電部の蓄電量が相対的に少ない場合には、給電区間の走行速度が相対的に遅くなるように制御され、給電部からの電力の供給が開始される前の蓄電部の蓄電量が相対的に多い場合には、給電区間の走行速度が相対的に速くなるように制御される。これにより、給電部から電力の供給が開始される前の蓄電部の蓄電量に応じて、給電部から蓄電部に供給される電力量が適切に調整される。すなわち、搬送車に蓄電量に応じた充電をすることができる。
【0010】
また、一実施形態において、蓄電部は減速時に走行用モータから供給される回生電力を蓄電し、コントローラは給電区間から搬送車の目的地までの距離を取得する目的地取得部を更に含み、走行速度制御部は、距離が所定値よりも短い場合には、走行速度として設定された速度よりも速い速度を走行速度として再設定してもよい。
【0011】
このような搬送車システムによれば、搬送車が、給電部から供給される電力に加え、減速時に走行用モータから供給される回生電力を蓄電部に供給できる構成となっているので、目的地に停止するための減速によって発生する回生電力を蓄電部に供給することができる。これにより、給電区間を通過後の蓄電量を目標量まで充電するために先に設定された走行速度にまで速度を落とさなくても、減速時の回生電力を有効に用いることで上記目標量まで充電することができる。
【0012】
また、一実施形態において、コントローラは、被搬送物を積載した搬送車が後方に接近したことを把握する後方接近把握部を更に有し、走行速度制御部は、被搬送物を積載した搬送車が後方に接近したことを把握すると、把握時における蓄電量が目標量以上であることを条件に、走行速度として設定された速度よりも速い速度を走行速度として再設定してもよい。
【0013】
ここでいう再設定とは、蓄電量に基づいて最初に設定された走行速度を再設定する場合と、目的地までの距離に基づいて再設定された走行速度をさらに再設定する場合も含む。また、上記目標量は、例えば、搬送車が給電区間を抜け出た後に所定速度で軌道を周回して給電部に戻ってくることができる充電量とすることができる。これにより、後方搬送車の搬送能力を低減させること、言い換えれば、搬送車システムとしての搬送能力を低下させることを回避することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬送車に対し蓄電量に応じた充電をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る搬送車システムの構成を示す構成図である。
図2図1の搬送車システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
図3図1の走行速度制御部が設定する給電部における走行速度について、蓄電部における蓄電量との関係を示したグラフである。
図4】走行速度の設定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0017】
図1は、一実施形態に係る搬送車システム1の構成図である。搬送車システム1は、軌道に沿って移動可能な天井走行車40を用いて、被搬送物Xを搬送するためのシステムである。ここでは、例えば、工場などにおいて、被搬送物である一般物品を移載可能に構成された無人の天井走行車が軌道に沿って走行する搬送車システムを例に挙げて説明する。なお、被搬送物の例には、半導体ウェハ、ガラス基板及び一般部品などが含まれる。図1に示すように、搬送車システム1は、主にシステムコントローラ3、軌道11、給電部21及び天井走行車(搬送車)40を備えている。
【0018】
システムコントローラ3は、後段にて詳述する天井走行車40を制御するためのものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)などからなる電子制御ユニットである。システムコントローラ3は、主に天井走行車40に対して搬送指令を出力する。搬送指令には、天井走行車40が行う作業内容に関する種々の情報が含まれ、例えば、被搬送物Xの受け渡しを行うステーションの情報などがある。
【0019】
軌道11は、天井走行車40を走行させるためのものであり、天井から吊り下げられている。図1に示すように、搬送車システム1における軌道11は、直線部、曲線部、分岐部、合流部などを含んで構成され、少なくとも、後述する給電区間20を出発した天井走行車40が、再び給電区間20に戻ってくることができる周回部分を有している。また、軌道11に沿って、被搬送物Xの受け渡しを行うステーション15A,15B,15C,15Dが設けられている。
【0020】
軌道11に沿った一部区間には、天井走行車40に電力を供給する給電部21が配置された給電区間20が設けられている。本実施形態の給電部21は、電磁誘導を利用して非接触にて天井走行車40に電力を供給する非接触給電システムである。給電部21は、電源部23から交流電流が供給される。
【0021】
給電部21は、天井走行車40の受電部53に電力を供給する部分である。具体的には、給電部21に近接する受電部53に対し、給電部21に電源部23から交流電流が供給された際に生じる磁界の変化を利用して電力を発生させる。本実施形態の搬送車システム1では、天井走行車40が給電区間20に進入すると、蓄電部55への充電と走行用モータ57への電力の供給とが同時に開始される。また、本実施形態の搬送車システム1では、蓄電部55の蓄電量が第1目標量(例えば、満充電)となった場合には自動的に充電が停止される。なお、蓄電部55における満充電とは、温度、湿度など所定環境下において最大限に蓄電できる状態(能力上の満充電)であってもよいし、製品仕様などから決定される最大限の蓄電状態(仕様上の満充電)であってもよい。
【0022】
図2は、搬送車システム1の機能構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、天井走行車40は、車体コントローラ41、受電部53、蓄電部55及び走行用モータ57を主に備える。天井走行車40は、蓄電部55に蓄電された電力及び給電部21から供給される電力の少なくとも一方の電力によって駆動する走行用モータ57によって、軌道11に沿って一方向(図1に示す矢印の向き)に走行する。
【0023】
受電部53は、給電部21から電力の供給を受ける部分である。上述したとおり、本実施形態の受電部53は、給電部21に交流電流が流れた際に生じる磁界の変化を利用して電力を発生させる。
【0024】
蓄電部55は、給電部21から供給される電力、すなわち、受電部53で発生させた電力と、減速時に走行用モータ57から供給される回生電力とを蓄電する部分である。受電部53と蓄電部55との間及び走行用モータ57と蓄電部55との間には、図示しないインバータなどが配置される。蓄電部55の例には、電気二重層キャパシタなどのキャパシタ、リチウムイオン電池及びニッケル水素電池などの二次電池などが含まれる。
【0025】
車体コントローラ41は、天井走行車40を制御する部分であり、例えば、CPU、ROM、RAMなどからなる電子制御ユニットである。車体コントローラ41は、主に天井走行車40の一般的な走行を制御する。具体的には、車体コントローラ41は、区間ごとに予め設定されている走行速度で走行するように、天井走行車40の主に走行用モータ57を制御する。ここでいう区間とは、給電部21を含む給電区間20、直線区間及び曲線区間などが含まれる。上記設定速度までの加減速は、設定された一定の加速度で行われる。
【0026】
車体コントローラ41は、更なる処理部として少なくとも蓄電量取得部45、走行速度制御部47、目的地取得部49及び後方接近把握部51を有している。車体コントローラ41における蓄電量取得部45、走行速度制御部47、目的地取得部49及び後方接近把握部51などの各機能は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成される。なお、各処理部は、ハードウェアとして構成されてもよい。
【0027】
蓄電量取得部45は、蓄電部55における蓄電量を取得する部分である。蓄電量取得部45は、例えば、蓄電部55の起電力、温度、内部抵抗などを測定することにより、蓄電部55の蓄電量を取得できる。なお、蓄電量取得部45は、走行状況などから使用電力量を算出することによって蓄電量を取得してもよい。
【0028】
走行速度制御部47は、蓄電量取得部45によって取得された蓄電部55の蓄電量に基づいて、天井走行車40の給電区間20における走行速度を制御する部分である。具体的には、図3に示すように、走行速度制御部47は、給電区間20において天井走行車40への給電が開始される前の蓄電量が蓄電量C12以上である第1蓄電量C1の場合には速度V1(第1速度)を走行速度として設定する。また、走行速度制御部47は、給電区間20において天井走行車40への給電が開始される前の蓄電量が蓄電量C12未満である第2蓄電量C2(C1<C2)の場合には速度V1よりも遅い速度V2(第2速度)を走行速度として設定する。この走行速度の設定には、給電区間20に進入する前の速度と同じ値の速度を設定することも含まれる。また、走行速度として設定される速度V1は、搬送車システム1における天井走行車40の最高速度とすることができる。以下は、速度V1が、給電区間20に進入する前の速度と同じ速度であり、かつ、搬送車システム1における天井走行車40の最高速度であるとして説明する。
【0029】
なお、上記走行速度は、上述したような2段階(速度V1又は速度V2)で設定されるだけでなく、3段階以上に設定されてもよい。例えば、蓄電量C12、C23(C12>C23)としたとき、蓄電量Cの範囲がC>C12の場合には速度V1が設定され、蓄電量Cの範囲がC23<C≦C12の場合には速度V1よりも遅い速度V2が設定され、蓄電量Cの範囲がC≦C23の場合には速度V1及び速度V2よりも遅い速度が設定されてもよい。
【0030】
また、上記走行速度は、上述したような段階的に設定されるだけではなく、例えば、蓄電部55における蓄電量に応じて設定されてもよい。例えば、走行速度は、蓄電部55における蓄電量に比例した値が設定されてもよい。
【0031】
図2に戻り、目的地取得部49は、給電区間20から天井走行車40の目的地となるステーション15A,15B,15C,15Dまでの距離を取得する部分である。目的地取得部49は、例えば、システムコントローラ3から、対象とする天井走行車40の目的地であるステーションの情報の入力を受け、目的地となるステーション15A,15B,15C,15Dまでの距離を取得する。
【0032】
目的地取得部49が、目的地となるステーション15A,15B,15C,15Dまでの距離を取得し、その取得した距離が所定値よりも短い場合には、走行速度制御部47は、先に決定された走行速度よりも速い速度を走行速度として再設定する。具体的には、走行速度制御部47は、給電区間20における走行速度を給電区間20に進入する前の速度と同じ速度である速度V1よりも遅い速度V2に設定していたときのみ、目的地取得部49によってその後に取得された上記距離が所定値よりも短い場合に、先に設定された速度V2よりも速い速度V3を走行速度として再設定する。走行速度制御部47は、このように再設定された走行速度で給電区間20を走行させるように走行用モータ57を制御する。なお、走行速度制御部47によって設定された速度V1が、搬送車システム1における天井走行車40の最高速度よりも遅い速度に設定されている場合には、給電区間20に進入する前の速度と同じ速度である速度V1よりも遅い速度V2に設定されていなくても(すなわち、給電区間20に進入する前の速度と同じ速度である速度V1に設定されている場合であっても)、先に決定された速度V1よりも速い速度V3を走行速度として再設定してもよい。
【0033】
後方接近把握部51は、被搬送物Xを積載した天井走行車40が後方に接近したことを把握する部分である。後方接近把握部51は、例えば、センサなどから天井走行車40が自車両の後方に接近したことを検出してもよいし、後方に接近した天井走行車40からの通信を受信することにより天井走行車40が自車両の後方に接近したことを把握してもよい。また、システムコントローラ3から、天井走行車40が自車両の後方に接近したこと及び対象とする天井走行車40の被搬送物Xの積載の有無に関する情報を取得してもよい。
【0034】
後方接近把握部51が被搬送物Xを積載した天井走行車40が後方に接近したことを把握した場合には、走行速度制御部47は、把握時における蓄電量が第2目標量C6(目標量)以上(図3参照)であることを条件に、上記走行速度(速度V2又は速度V3)として設定された速度よりも速い速度V4を走行速度として再設定する。具体的には、走行速度制御部47は、給電区間20における走行速度を給電区間20に進入する前の速度と同じ速度である速度V1よりも遅い速度V2に設定していたときのみ、蓄電量取得部45によって取得された蓄電量が第2目標量C6(目標量)以上の場合に、上記走行速度(速度V2又は速度V3)として設定された速度よりも速い速度V4を走行速度として再設定する。なお、走行速度制御部47によって設定された速度V1が、搬送車システム1における天井走行車40の最高速度よりも遅い速度に設定されている場合には、給電区間20に進入する前の速度と同じ速度である速度V1よりも遅い速度V2に設定されていなくても(すなわち、給電区間20に進入する前の速度と同じ速度である速度V1に設定されている場合であっても)、先に設定された速度V1又は速度V3よりも速い速度V4を走行速度として再設定してもよい。また、天井走行車40の接近に基づいて設定される、速度V2よりも速い速度である速度V4と、目的地の距離に基づいて設定される、速度V2よりも速い速度である速度V3とは、同じ速度となるように設定することができる。
【0035】
次に、搬送車システム1の動作について説明する。図1に示すような軌道11が配置された搬送車システム1において、天井走行車40は、一方向(図1に示す矢印の向き)に周回しながら、システムコントローラ3からの搬送指令に基づいて、被搬送物Xを搬送する。このような搬送車システム1において、システムコントローラ3は、搬送要求を送信する。
【0036】
軌道11上を走行する複数の天井走行車40の中で、最初に搬送要求に応答した天井走行車40に対し、搬送指令が割り付けられる。搬送指令は、例えば、搬送対象となる被搬送物Xが存在するステーションに関する情報と、当該被搬送物Xの搬送先のステーションに関する情報とを含む。天井走行車40は、上述した搬送指令を受信すると、給電区間20、直線区間及び曲線区間などの区間ごとに予め設定されている走行速度で走行する。本実施形態の搬送車システム1では、給電部21が配置された給電区間20を走行する際の速度である走行速度の設定の仕方に一つの特徴がある。図4は、走行速度の設定の仕方を示すフローチャートである。以下、図4を参照しながら、給電区間20を走行する際の速度である走行速度の設定の仕方を説明する。
【0037】
天井走行車40が周回方向(図1に示す矢印方向)における給電区間20の手前の位置に到達すると、車体コントローラ41に含まれる蓄電量取得部45は、蓄電部55の蓄電量Cを取得する(ステップS1)。ここで、図3に示すように、蓄電量取得部45によって取得された蓄電部55の蓄電量が第1蓄電量C1(ステップS2:C>C12)のとき、車体コントローラ41に含まれる走行速度制御部47は、給電区間20を走行する際の走行速度を速度V1に設定し(ステップS3)、速度V1で給電区間20を走行させる。この速度V1は、給電区間20に進入する前の速度と同じ速度であり、搬送車システム1における天井走行車40の最高速度である。また、蓄電量取得部45によって取得された蓄電部55の蓄電量が第1蓄電量C1よりも少ない第2蓄電量C2(ステップS2:C≦C12)のとき、車体コントローラ41に含まれる走行速度制御部47は、給電区間20を走行する際の走行速度を速度V1よりも遅い速度V2に設定し(ステップS4)、速度V2で給電区間20を走行させる。
【0038】
ここで、給電区間20の周回方向における長さはLであるので、天井走行車40が速度V1で給電区間20を走行する際にはt1(t1=L/V1)の時間を要する。また、天井走行車40が速度V2で給電区間20を走行する際にはt2(t2=L/V2)の時間を要する。したがって、図3に示すように、速度V2で給電区間20を走行する時に要する時間t2は、速度V2よりも速い速度V1で給電区間20を走行する際に要する時間t1と比べて長くなる。給電部21から蓄電部55への充電は一定の割合で行われるので、給電区間20の走行時間に比例して、給電区間20における充電量が増える。
【0039】
この搬送車システム1では、走行速度制御部47が、給電区間20において給電が開始される前の蓄電部55の蓄電量が相対的に少ない場合には、給電区間20の走行速度が相対的に遅くなるように制御し、給電区間20において給電が開始される前の蓄電部55の蓄電量が相対的に多い場合には、給電区間20の走行速度が相対的に速くなるように制御する。このような走行速度制御部47による走行速度の設定制御により、給電区間20において給電が開始される前の蓄電部55の蓄電量に応じて、給電部21から蓄電部55に供給される電力が適切に調整される。すなわち、天井走行車40に対し蓄電量に応じた充電がなされる。
【0040】
また、本実施形態の搬送車システム1では、給電区間20を通過後の蓄電部55における蓄電量を適切に確保するために、給電区間20の設置長さL(図1参照)が調整されるのではなく、天井走行車40の給電区間20における走行速度が調整される。このため、この搬送車システム1では、給電区間20となる区間を短くすることができる。言い換えれば、給電部21を配置する距離を短くすることができる。
【0041】
走行速度制御部47における走行速度の設定は、例えば図3に示すように、天井走行車40が給電区間20を通過後の蓄電部55の蓄電量が第1目標量C5となるように行われてもよい。言い換えれば、天井走行車40が、給電区間20の周回方向における最下流側に位置する際の蓄電部55の蓄電量が第1目標量C5となるように行われてもよい。
【0042】
ここで、第1目標量の例として、蓄電部55の満充電状態を設定することができる。この場合、走行速度制御部47は、天井走行車40が給電区間20を抜け出ようとするタイミングで蓄電部55における蓄電量が満充電状態となるような走行速度(必要走行速度)を設定する。また、車体コントローラ41は、蓄電部55における蓄電量が満充電状態に到達すれば自動的に蓄電部55への電力の供給を停止する機能を備えている。このため、走行速度制御部47が、前述の必要走行速度よりも遅い速度を走行速度として設定した場合であっても、天井走行車40が給電区間20を抜け出ようとするタイミングで蓄電部55における蓄電量を満充電状態とすることができる。
【0043】
また、搬送車システム1では、給電区間20から目的地となるステーション15Dまでの距離Dに基づいて、ステップS4において設定された速度V2を再設定してもよい。具体的には、目的地取得部49が、給電区間20から目的地となるステーション15Dまでの距離Dを取得し(ステップS5)、走行速度制御部47が、その距離Dが所定値D1よりも短いか否かを判定してもよい(ステップS6)。ここで、給電区間20から目的地となるステーション15Dまでの距離Dが所定値D1よりも短い場合には、先のステップ(ステップS4)において設定された走行速度(速度V2)よりも速い速度V3を走行速度として再設定してもよい(ステップS7)。一方、給電区間20から目的地となるステーション15Dまでの距離Dが所定値D1以上の場合には、先のステップ(ステップS4)において設定された走行速度(速度V2)の再設定は行われない。
【0044】
この搬送車システム1によれば、例えば、天井走行車40が、給電部21から供給される電力に加え、減速時に走行用モータ57から供給される回生電力を蓄電部55に供給できる構成となっているので、目的地となるステーションに停止するための減速によって発生する回生電力を蓄電部55に供給することができる。これにより、天井走行車40が給電区間20を抜け出ようとするタイミングで蓄電部55における蓄電量が第1目標量C5に到達するような走行速度(必要走行速度)にまで給電区間20における走行速度を落とさなくても、減速時の回生電力を有効に用いることで蓄電部55における蓄電量を上記第1目標量C5とすることができる。
【0045】
また、搬送車システム1では、被搬送物Xが載置された他の天井走行車40が後方に接近したことを把握した場合には、ステップS4又はステップS7においてそれぞれ設定された速度V2又は速度V3を再設定してもよい。具体的には、後方接近把握部51が被搬送物を積載した天井走行車40が後方に接近したことを把握すると(ステップS8:YES)、走行速度制御部47は、把握時における蓄電部55の蓄電量が第2目標量C6以上であることを条件に、先のステップ(ステップS4又はステップS7)においてそれぞれ設定された走行速度(速度V2又は速度V3)よりも速い速度V4を走行速度として再設定してもよい(ステップS9)。一方、後方接近把握部51によって被搬送物Xが載置された他の天井走行車40が後方に接近したことが把握されない場合には(ステップS8:NO)、先のステップ(ステップS4又はステップS7)において設定された走行速度(速度V2又は速度V3)の再設定は行われない。
【0046】
ここで、第2目標量C6は、例えば、天井走行車40が給電区間20を抜け出た後に所定速度で軌道11を周回して、再び給電区間20に戻ってくることができる充電量(最低充電量)とすることができる。これにより、被搬送物Xを積載した天井走行車40の搬送能力が低下することを回避、言い換えれば、搬送車システム1としての搬送能力が低下することを回避できる。また、本実施形態では、後方に接近する天井走行車40のうち、被搬送物を積載しているものだけを対象としているので、蓄電量に応じた蓄電を最大限維持しながら、搬送能力が低下することを低減できる。
【0047】
上述した被搬送物Xが載置された他の天井走行車40が後方に接近したことを把握した場合の制御は、搬送車システム1の搬送量が多い場合にのみ実施してもよい。搬送車システム1の搬送量は、例えば、システムコントローラ3が管理する搬送指令の数を指標として比較することができ、搬送指令の数が多いほど、搬送量が多いと判定することができる。また、上述した被搬送物Xが載置された他の天井走行車40が後方に接近したことを把握した場合の制御は、後方の天井走行車40が、緊急を要する搬送品、いわゆる特急搬送品を搬送している場合にのみ行ってもよい。特急搬送品を搬送しているか否かの情報は、システムコントローラ3から取得することができる。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0049】
上記実施形態の搬送車システム1では、図4に示すように、速度V1が、給電区間20に進入する前の速度と同じ速度であり、かつ、搬送車システム1における天井走行車40の最高速度である場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。走行速度制御部47によって設定された速度V1は、搬送車システム1における天井走行車40の最高速度でなくてもよい。なお、この場合には、給電区間20に進入する前は最高速度である場合と、給電区間20に進入する前も最高速度ではない場合とがあり得る。ステップS3において、このような最高速度ではない速度V1が設定された場合には、目的地となるステーションまでの距離を取得して(ステップS5)、目的地の距離に基づいて速度V1よりも速い速度である速度V3を設定(ステップS7)してもよいし、また、後方の天井走行車40の接近の有無を確認して(ステップS8)、後方の天井走行車40の接近の有無に基づいて速度V1又は速度V3よりも速い速度である速度V4を設定(ステップS9)してもよい。
【0050】
また、上記実施形態の搬送車システム1では、給電部23が配置された給電区間20における走行速度を制御する走行速度制御部47を含むコントローラが、天井走行車40が有する車体コントローラ41として実装された例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、走行速度制御部47を含むコントローラは、上位コントローラとして位置付けられるシステムコントローラ3として実装されてもよい。
【0051】
上記実施形態の搬送車システム1では、搬送車の一例として天井走行車40を挙げて説明したが、搬送車のその他の例には、地上又は架台に配設された軌道を走行する無人搬送車及びスタッカークレーンなどが含まれる。
【0052】
上記実施形態の搬送車システム1では、給電部21として非接触給電システムを採用した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、トロリ線などに直接接触する方法により蓄電部55に対し電力の供給を行ってもよい。
【0053】
上記実施形態の搬送車システム1では、給電部21が配置された給電区間20が1箇所のみに設けられた例を挙げて説明したが、2箇所や3箇所など複数箇所に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…搬送車システム、3…システムコントローラ、11…軌道、15A,15B,15C,15D…ステーション、20…給電区間、21…給電部、23…電源部、40…天井走行車(搬送車)、41…車体コントローラ(コントローラ)、45…蓄電量取得部、47…走行速度制御部、49…目的地取得部、51…後方接近把握部、53…受電部、55…蓄電部、57…走行用モータ。
図1
図2
図3
図4