(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167761
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】ポットブローチ
(51)【国際特許分類】
B23D 43/04 20060101AFI20170713BHJP
B23F 21/26 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
B23D43/04
B23F21/26
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-175520(P2013-175520)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-44247(P2015-44247A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】井沢 晃
【審査官】
青山 純
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0196106(US,A1)
【文献】
特開昭57−127618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 37/00 − 43/08
B23F 21/26
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周縁から半径方向に形成された複数の溝を有するドーナツ形の分割ホルダを長手方向に多数組付け、各溝にブローチ刃を装着して一体のポットブローチとした組立式の外形加工用ポットブローチにおいて、
前記各溝の第一の溝は前記第一の溝に嵌挿される第一のブローチ刃が固定部材で固定しない状態では長手方向及び半径方向に移動可能であり、前記第一の溝に隣接する第二の溝は前記第二の溝に嵌挿される第二のブローチ刃が固定部材で固定しない状態で長手方向に移動可能であるが、第一のブローチ刃の刃部と過干渉することがないように半径方向内方には移動できないようにされ、かつ前記第一及び第二のブローチ刃で一体となる刃部が形成されていることを特徴とするポットブローチ。
【請求項2】
請求項1記載の前記第一の溝を挟んで、第三の溝が設けられ、前記第三の溝は前記第三の溝に嵌挿される第三のブローチ刃が固定部材で固定しない状態では長手方向に移動可能であるが、第一のブローチ刃の刃部と過干渉することがないように半径方向内方には移動できないようにされ、かつ前記第一及び第二及び第三のブローチ刃で一体となる刃部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のポットブローチ。
【請求項3】
前記第三の溝に隣接して第四の溝が設けられ、前記第四の溝は前記第四の溝に嵌挿される第四のブローチ刃が固定部材で固定しない状態では長手方向及び半径方向に移動可能にされ、前記第三のブローチ刃が固定部材で固定しない状態で長手方向に移動可能であるが、前記第三のブローチ刃の刃部と過干渉することがないように半径方向内方には移動できないようにされ、かつ前記第一及び第二及び第三及び第四のブローチ刃で一体となる刃部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のポットブローチ。
【請求項4】
請求項1記載の前記第二の溝を挟んで、第五の溝が設けられ、前記第五の溝は前記第五の溝に嵌挿される第五のブローチ刃が固定部材で固定しない状態では長手方向及び半径方向に移動可能にされ、前記第二のブローチ刃が固定部材で固定しない状態で長手方向に移動可能であるが、前記第五のブローチ刃の刃部と過干渉することがないように半径方向内方には移動できないようにされ、かつ前記第一及び第二及び第五のブローチ刃で一体となる刃部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のポットブローチ。
【請求項5】
前記第一乃至第四の溝及びブローチ刃の何れか一以上が複数組設けられていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4に記載のポットブローチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の分割ホルダを長手方向に組付けて一体のポットブローチとした組立式の外形加工用ポットブローチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リング状の複数枚の分割ホルダを長手方向に組付けたポットブローチは、
図2に示すように、内周縁3から半径方向に形成された複数の溝4を有するドーナツ形の分割ホルダ2を長手方向に多数組付け、各溝4に長手方向に多数の切れ刃12を有するブローチ刃5を装着して一体のポットブローチ51としている。かかるポットブローチ51においては、各溝4にブローチ刃5を嵌挿し、各溝背面側からボルト等の固定部材6によりブローチ刃5をホルダ2に固定する。しかし、ブローチ刃5をホルダ2の溝4に嵌挿するにあたり、長手方向が上下となる縦置きでの組付けは、ブローチ刃5の径方向への移動が少なく比較的容易である。しかし、長手方向が横となる横置きの場合は、上側溝4のブローチ刃5は脱落し易いので作業が困難である。そこで、特許文献1においては、溝4の周方向面に凹又は凸状の係合部8を長手方向に設ける。この凹又は凸状の係合部8に嵌合する凸又は凹状の嵌合部9をブローチ刃5の側面に設ける。これにより、ブローチ刃5の溝4内での半径方向への移動を規制している。なお、ブローチ刃5は互いに離隔して取り付けられている。
【0003】
また、特許文献2においては、ワークとの芯出し精度を高めるため、加工するワークの大径に当接するガイドプレートをブローチ刃の周方向間に配設し、ガイドプレートの案内面を調整できるようにしている。このガイドプレートはブローチ刃の側面と近接又は当接している。この場合もブローチ刃は互いに接触することはない。
【0004】
しかし、ワークの形状によっては、ブローチ刃の基体部を互いに接触させ加工する場合もある。例えば、
図3(a)に示すように、特許文献3のFIG.6のポットブローチ52では、ワーク30の外周31と干渉しない外側位置で、ブローチ刃5の側面55が互いに接触するように配置している。また、
図3(b)に示すように、FIG.7のポットブローチ53においては、ブローチ刃5が符号56で示すように、互いに接触又は近接するように配置してワーク外周歯32を切れ刃12によりブローチ切削加工している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−019427号公報
【特許文献2】特開2007−210048号公報
【特許文献3】特開昭61−056817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3のFIG.7(
図3(b))においては、詳細については記載されていないが、ワーク30の外周31に対応した切れ刃を設けると、隣り合うブローチ刃の切れ刃が互いに干渉し欠けを生じるおそれがある。特に角部56は破損しやすいまた、ワークの外周31は旋盤加工等の加工で充分であり、ブローチ加工による加工は必須ではない。このため、ワークの外周31は位置決め等に用いブローチ刃5の切れ刃12では切削しない場合が一般である。ブローチ刃5では歯底面及び歯側面32の加工を行う。従って、外周31に対応する切れ刃は設けないのが一般である。
【0007】
しかし、近年、等配分の歯車でなく、
図4に示すように、ワーク谷径がつながった欠け歯(歯底)34を有するワーク30が増えてきている。この場合は、旋盤等で加工できる外周31とは異なり、欠け歯(歯底)34はブローチ刃5の切れ刃12で加工する必要がある。この欠け歯34を加工するためには複数のブローチ刃5、5を用いる。欠け歯形状を複数のブローチ刃で加工するに際しては、ブローチ刃5の切れ刃12を隙間無く配置する必要がある。しかし、切れ刃12を隙間無く配置すると、当然にブローチ刃5を径方向へ移動すると隣接するブローチ刃の切れ刃12の隣接部57が干渉し、刃欠け等を生じるという問題があった。
【0008】
そこで、特許文献1のように、凸又は凹状の嵌合部8,9を設けてブローチ刃5の半径方向の移動を規制すればよい。しかし、かかる規制をすると高精度加工が必要である。さらには、微調整が困難であるという問題があった。本発明の課題は、かかる問題点に鑑みて、欠け歯を有するワークの欠け歯(底歯)の加工あるいは外周加工を複数のブローチ刃で行う場合に、隣接するブローチ刃の干渉を避け、切れ刃の欠け等の損傷を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、内周縁から半径方向に形成された複数の溝を有するドーナツ形の分割ホルダを長手方向に多数組付け、各溝にブローチ刃を装着して一体のポットブローチとした組立式の外形加工用ポットブローチにおいて、前記各溝の第一の溝は前記第一の溝に嵌挿される第一のブローチ刃が固定部材で固定しない状態では長手方向及び半径方向に移動可能であり、前記第一の溝に隣接する第二の溝は前記第二の溝に嵌挿される第二のブローチ刃が固定部材で固定しない状態で長手方向に移動可能であるが、第一のブローチ刃の刃部と過干渉することがないように半径方向内方には移動できないようにされ、かつ前記第一及び第二のブローチ刃で一体となる刃部が形成されているポットブローチを提供することにより前述した課題を解決した。
【0010】
即ち、ワークの歯底等の切り欠き部を複数のブローチ刃で加工するに際し、ブローチ刃の一方を半径方向内方に移動させないようにして、隣接するブローチ刃との過干渉を避けるようにした。干渉はないことが望ましいが、隣接するブローチ刃は近接すればするほど切削面が良好となるので、破損等しない程度に接触してもよい。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、複数のブローチ刃が3個の場合であり、前記第一の溝を挟んで、第三の溝が設けられ、前記第三の溝は前記第三の溝に嵌挿される第三のブローチ刃が固定部材で固定しない状態では長手方向に移動可能であるが、第一のブローチ刃の刃部と過干渉することがないように半径方向内方には移動できないようにされ、かつ前記第一及び第二及び第三のブローチ刃で一体となる刃部が形成されているポットブローチとした。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明は、複数のブローチ刃が4個の場合であり、前記第三の溝に隣接して第四の溝が設けられ、前記第四の溝は前記第四の溝に嵌挿される第四のブローチ刃が固定部材で固定しない状態では長手方向及び半径方向に移動可能にされ、前記第三のブローチ刃が固定部材で固定しない状態で長手方向に移動可能であるが、前記第三のブローチ刃の刃部と過干渉することがないように半径方向内方には移動できないようにされ、かつ前記第一及び第二及び第三及び第四のブローチ刃で一体となる刃部が形成されているポットブローチとした。
【0013】
また、請求項2に記載の発明においては、第一の溝を挟んで両側に第二第三の溝を設けたが、逆でもよい。そこで、請求項4に記載の発明においては、前記第二の溝を挟んで、第五の溝が設けられ、前記第五の溝は前記第五の溝に嵌挿される第五のブローチ刃が固定部材で固定しない状態では長手方向及び半径方向に移動可能にされ、前記第二のブローチ刃が固定部材で固定しない状態で長手方向に移動可能であるが、前記第五のブローチ刃の刃部と過干渉することがないように半径方向内方には移動できないようにされ、かつ前記第一及び第二及び第五のブローチ刃で一体となる刃部が形成されているポットブローチを提供する。
【0014】
このように、複数のブローチ刃は、半径方向に移動できるブローチ刃と半径方向内方への移動を規制されたブローチ刃とを交互に配置すればよい。そこで、請求項5に記載の発明においては、前記第一乃至第四の溝及びブローチ刃の何れか一以上が複数組設けられているポットブローチとした。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、欠け歯等のワークの歯底等の切り欠き部を複数のブローチ刃で加工するに際し、隣接するブローチ刃の一方を半径方向移動可能(移動可能ブローチ刃)とし、他方のブローチ刃を半径方向内方に移動させないよう(規制ブローチ刃)にして、隣接するブローチ刃の隣接部同士の過干渉を避けるようにしたので、切れ刃が干渉して損傷することがない。また、組立、分解時での干渉や作業不備によるブローチ刃のぶつかり等も避けられ組付け分解が容易なものとなった。ブローチ刃が3個以上となる場合は、移動可能ブローチ刃と規制ブローチ刃とを交互に設けることで、容易に干渉を避け、ブローチ刃の損傷をなくすものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態を示すポットブローチ及びワークの横断面図である。である。
【
図2】従来のストッパを有するポットブローチの横断面図である。
【
図3】従来のポットブローチ及びワークの横断面図である。
【
図4】欠け歯を有するポットブローチ及びワークの説明図(部分横断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、前述した従来と同様な部分については同符号を付し、説明の一部又は全部を省略する。また、組立式の外形加工用ポットブローチの全体構造等については従来と同様であるので説明を省略する。
図1に示すように、ポットブローチ1は内周縁3から半径方向に形成された複数の溝4(4a〜4k)を有するドーナツ形の分割ホルダ2長手方向(図で見て垂直方向)に多数組付けられる。各溝4にそれぞれブローチ刃5(5a〜5k)を装着され、ボルト等の固定部材6で各溝に固定される。また、分割ホルダ2の位相を合わせる為のキー38及びキー溝39が外周面に3箇所設けられている。また、分割ホルダを長手方向で挟持固定するボルト通し穴40が3箇所設けられている。
【0018】
本実施の形態のワーク30は自動車用リングギヤを例としたものである。ワーク30は外周面31が円筒の中空円筒状である。ワーク30の外周面31に歯、不等分割歯、欠け歯等をブローチ加工し、自動車用リングギヤを製造する。
図1では、内周面37に加工がされているが加工されていないものでもよいことはいうまでもない。
【0019】
分割ホルダ2の内周縁3はワーク30の外周31とは微少隙間が設けられている。また、
図1の左下に示すように、内周縁3の一部はさらに外側の内周縁3aを有し、特許文献2と同様に、内周縁3aにテーパ状のガイドプレート7がボルト18で分割ホルダ2に固定されている。ガイドプレート7の先端7aはワークの外周面31と接触(当接)し、ブローチ刃5とワーク30との芯出しを行う。
【0020】
従来と同様の単独歯あるいは等分割歯32等は、例えば
図1の右側中央部に示すようにブローチ刃5aの切れ刃12aにより加工される。ブローチ刃5aは、対応する溝4aに嵌挿され、ボルト6で固定される。また、欠け歯であっても、1枚のブローチ刃で加工できる欠け歯33は、同様にブローチ刃5bの切れ刃12bにより加工される。ブローチ刃5bは、対応する溝4bに嵌挿され、ボルト6で固定される。かかる構造は従来のものと同様である。
【0021】
1枚のブローチ刃の切れ刃では加工できず2枚のブローチ刃で加工される欠け歯34の場合、
図1の右下側に示すように、2個(枚)のブローチ刃5c、5dの切れ刃12c、12dで加工できる欠け歯34は、周方向に幅広の第一のブローチ刃5cと幅狭の第二のブローチ刃5dにより加工される。第一のブローチ刃5cは、対応する第一の溝4cに嵌挿され、ボルト6で固定される。第一のブローチ刃5cはボルト6で固定しない状態では長手方向及び半径方向に移動可能である。第二のブローチ刃5dは、第一の溝4cに隣接して対応する第二の溝4dに嵌挿され、ボルト6で固定される。
【0022】
第二の溝4dには、側面に凸部8dが長手方向に設けられている。また、第二のブローチ刃5dの側面には、凹溝9dが設けられている。凹溝9dと凸部8dが互いに嵌合する。凹溝9dの外側肩部11dと、凸部8dの内側肩部10dとが接触した位置で第一のブローチ刃5cの刃部12cと第二のブローチ刃5dの刃部12dの互いの角部16が過干渉あるいは接触しないようにされている。これにより、第一の溝4cに隣接する第二の溝4dは第二の溝に嵌挿される第二のブローチ刃5dが固定部材で固定しない状態で長手方向に移動可能であるが、第一のブローチ刃5cの刃部12cと過干渉又は接触することがないように半径方向内方には移動できないようにされている。
【0023】
これにより、ワーク30の歯底等の切り欠き部(欠け歯)34を複数のブローチ刃5c、5dで加工するに際し、ブローチ刃の一方を半径方向内方に移動させないようにして、隣接するブローチ刃の切れ刃の角部16での過干渉又は干渉を避ける。
【0024】
次に、3個(枚)のブローチ刃で加工される欠け歯35の場合について説明する。なお、前述したと同様な部分については同番号(数字)に対応するサブ符号(英小文字)をつけて説明の一部又は全部を省略する。
図1の左上に示すように、3枚のブローチ刃で加工できる欠け歯35は、周方向にやや幅狭の第一のブローチ刃5eと両側に配置したやや幅広の第二のブローチ刃5f、第三のブローチ刃5gにより加工される。第一のブローチ刃5eは、符号5cと同様に、対応する第一の溝4eに嵌挿され、ボルト6で固定される。前述したと同様に、第一のブローチ刃5eはボルト6で固定しない状態では長手方向及び半径方向に移動可能である。同様に、第二のブローチ刃5fは、第一の溝4eに隣接して対応する第二の溝4fに嵌挿され、ボルト6で固定される。
【0025】
第三のブローチ刃5gは、第一の溝4eの第二の溝4fとは反対側に隣接して対応する第三の溝4gに嵌挿され、ボルト6で固定される。第三の溝4gには、第二の溝と同様に、側面に凸部8gが長手方向に設けられている。また、第三のブローチ刃5gの側面には、凹溝9gが設けられている。凹溝9gと凸部8gが互いに嵌合する。凹溝9gの外側肩部11gと、凸部8gの内側肩部10gとが接触した位置で第一のブローチ刃5eの刃部12eと第三のブローチ刃5gの刃部12gの互いの角部16が過干渉あるいは接触しないようにされている。これにより、第一の溝4eに隣接する第二、第三の溝4f、4gは第二、第三の溝に嵌挿される第二、第三のブローチ刃5f、5gが固定部材で固定しない状態で長手方向に移動可能であるが、第二、第三の切れ刃12f、12gが第一のブローチ刃5eの刃部12eと角部16,16で過干渉又は接触することがないように半径方向内方には移動できないようにされている。
【0026】
さらに、4個(枚)のブローチ刃で加工される欠け歯36の場合について説明する。前述したと同様な部分については同番号(数字)に対応するサブ符号(英小文字)をつけて説明の一部又は全部を省略する。
図1の右上に示すように、4枚のブローチ刃5の切れ刃12で加工できる欠け歯36は、周方向にやや幅狭の第一のブローチ刃5hと両側に配置したやや幅広の第二のブローチ刃5i、第三のブローチ刃5jにより加工される。前述したと同様に、第一の溝4hに隣接する第二、第三の溝4i、4jは第二、第三の溝に嵌挿される第二、第三のブローチ刃5i、5jが固定部材で固定しない状態で長手方向に移動可能であるが、第一のブローチ刃5hの刃部12hと互いに角部16で過干渉又は接触することがないように半径方向内方には移動できないようにされている。
【0027】
第三の溝4jに隣接して、第四の溝4kが設けられ、第四の溝4kに嵌挿される第四のブローチ刃5kがボルト6で固定しない状態では長手方向及び半径方向に移動可能にされ、第三のブローチ刃5jがボルト6で固定されていない状態で長手方向に移動可能であるが、第四のブローチ刃5kの刃部12kとの互いの角部16で過干渉することがないように半径方向内方には移動できないようにされている。
【0028】
かかるポットブローチ1の組立においては、組付け状態での刃部の損傷の他に、組付け時にブローチ刃同士をぶつけたりする虞があり、二人作業としたり、治具を作成する等が必要である。しかし、組付けにあたっては、まず、第一、第四のブローチ刃(移動可能ブローチ刃)5c、5e、5h、5kを先に固定し、次に第二又は第三のブローチ刃(規制ブローチ刃)5d、5f、5g、5iを組付けることによりかかる問題を解消できる。また、分解時は、まず、第二又は第三のブローチ刃5d、5f、5g、5iを先に取り外し、次に第一、第四のブローチ刃5c、5e、5h、5kを取り外すようにすればよい。
【0029】
このように、本発明の実施の形態によれば、欠け歯の長さに応じて分割して設けられたブローチ刃の干渉を避け、ブローチ刃の刃部の損傷を防ぎ、取扱がし易いものとなった。また、移動可能ブローチ刃(第一、第四のブローチ刃5c、5e、5h、5k)と、規制ブローチ刃(第二又は第三のブローチ刃5d、5f、5g、5i)を交互に配置すればよく、種々の歯形形状に対応できるものとなった。なお、実施の形態においては、請求項1乃至3の例を記載したが、請求項4に関しては、規制ブローチ刃を中心にして両側に移動可能ブローチ刃を配置することにより実現できることはいうまでもない。また、ブローチ刃、ガイドプレートの位置合わせ及び固定はボルトにより行うが、位置調整はカラー、シム、スプリングワッシャ等の各種座金、バネ等適宜選択調整すればよい。また、固定方法はこれに限るものではない。
【符号の説明】
【0030】
1 ポットブローチ
2 分割ホルダ
3 内周縁
4 溝、第五の溝
4c、4e、4h 第一の溝
4d、4f、4i 第二の溝
4g、4j 第三の溝
4k 第四の溝
5 ブローチ刃、第五のブローチ刃
5c、5e、5h 第一のブローチ刃
5d、5f、5i 第二のブローチ刃
5g、5j 第三のブローチ刃
5k 第四のブローチ刃
6 固定部材(ボルト)
12 刃部、第五のブローチ刃の刃部
12c、12e、12h 第一のブローチ刃の刃部
12d、12f、12i 第二のブローチ刃の刃部
12g、12j 第三のブローチ刃の刃部
12k 第四のブローチ刃の刃部
16 角部