(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2当接面(111a)に対応する前記第2フランジ部(111)の厚さ寸法(tf)、および前記板状部(151)の厚さ寸法(tp)は、同一に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の3部材のレーザー溶着構造。
前記第1フランジ部(141)において、前記第1当接面(141a)および前記収容凹部(141b)とは反対側となる面は、1つの平面として形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の3部材のレーザー溶着構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、2つの部材をレーザー溶着する際には、当接面同士を圧着させることで、溶着状態の信頼性を確保するようにしている。しかしながら、上記の特許文献1では、そのような圧着に関する記載は何らされていない。更に、上術したように、収納凹部の深さは、フィルタエレメントの周縁部の厚みよりも浅く形成されている。よって、特許文献1では、上側フランジ部と下側フランジ部とを例えば2つの冶具によって挟み込んで、上側当接面と下側当接面とを圧着させようとしても、フィルタエレメントの周縁部が収納凹部から多少突出することになる。従って、上下の当接面同士を確実に圧着させることができず、信頼性の高い溶着状態が得られない。
【0008】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、3つの部材をレーザー溶着するものにおいて、信頼性の高い溶着状態を確保可能な3部材のレーザー溶着構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0010】
本発明では、外周部において外側に張出す第1フランジ部(141)が形成された
下側ケース(14)と、
第1フランジ部(141)に対向するように、外周部において外側に張出す第2フランジ部(111)が形成された
上側ケース(11)と、
外周部において板状となる板状部(151)が形成されて、板状部(151)が第1フランジ部(141)と第2フランジ部(111)との間に配置される
仕切り板(15)とを備え、
第1フランジ部(141)は、光吸収性樹脂から形成されており、第2フランジ部(111)および板状部(151)は、光透過性樹脂から形成されており、
第1フランジ部(141)の張出し方向の内側領域には、板状部(151)を収容する収容凹部(141b)が形成されており、
第1フランジ部(141)の張出し方向の外側領域で第2フランジ部(111)側に形成される第1当接面(141a)と、第2フランジ部(111)の張出し方向の外側領域で第1フランジ部(141)側に形成される第2当接面(111a)とがレーザー溶着されると共に、
収容凹部(141b)の底部面(141c)と、板状部(151)の第1フランジ部(141)側となる第1面(151a)とがレーザー溶着された3部材のレーザー溶着構造において、
板状部(151)の第2フランジ部(111)側となる第2面(151b)は、第1当接面(141a)よりも第2フランジ部(111)側に突出しており、
第2フランジ部には、第2当接面よりも張出し方向の内側領域に、第2当接面よりもへこんでいる凹部(111b)が形成されており、
且つ、第2面(151b)と、第2フランジ部(111)の第2面(151b)と対向する対向面(111c)との間には、隙間部(152)が形成されていることを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、上記のように、第2面(151b)は、第1当接面(141a)よりも第2フランジ部(111)側に突出している。よって、第1フランジ部(141)と板状部(151)とをレーザー溶着するにあたって、第1フランジ部(141)と板状部(151)とを所定の冶具で挟み込み、収容凹部(141b)の底部面(141c)と板状部(151)の第1面(151a)とを圧着させる際に、冶具が第1当接面(141a)に当たることが無い。従って、底部面(141c)と第1面(151a)とを確実に圧着させることができる。
【0012】
この状態で、レーザー光を板状部(151)側から照射し、底部面(141c)を溶融させ、更に、この溶融時の熱によって第1面(151a)をも溶融させることで、底部面(141c)と第1面(151a)とを確実に溶着することができる。
【0013】
また、本発明では、第2面(151b)と対向面(111c)との間には、隙間部(152)が形成されている。よって、第1フランジ部(141)と第2フランジ部(111)とをレーザー溶着するにあたって、第1フランジ部(141)と第2フランジ部(111)とを所定の冶具で挟み込み、第1当接面(141a)と第2当接面(111a)とを圧着させる際に、対向面(111c)が第2面(151b)に当たることが無い。従って、第1当接面(141a)と第2当接面(111a)とを確実に圧着させることができる。
【0014】
この状態で、レーザー光を第2フランジ部(111)側から照射し、第1当接面(141a)を溶融させ、更に、この溶融時の熱によって第2当接面(111a)をも溶融させることで、第1フランジ部(141)と第2フランジ部(111)とを確実に溶着することができる。
【0015】
総じて、第1フランジ部(141)と第2フランジ部(111)とがレーザー溶着されると共に、第1フランジ部(141)と板状部(151)とがレーザー溶着される3部材のレーザー溶着構造(100)において、信頼性の高い溶着状態を確保することが可能となる。
【0016】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかる3部材のレーザー溶着構造(以下、レーザー溶着構造)100について、
図1〜
図6を用いて説明する。レーザー溶着構造100は、例えば、車両用の蒸発燃料パージ装置10に適用されている。
【0020】
ここで、蒸発燃料パージ装置10は、燃料タンク内で発生する蒸発燃料が、給油時等に大気中に放出されるのを防止するために、蒸発燃料をエンジンの吸気系(吸気マニホールド)に導入(パージ)するものである。エンジンの吸気系に導入された蒸発燃料は、インジェクタ等からエンジンに供給される本来の燃焼用燃料と混合されて、エンジンのシリンダ内で燃焼されるようになっている。蒸発燃料パージ装置10は、蒸発燃料パージ系と、エンジンの吸気系とに接続されている。
【0021】
蒸発燃料パージ系は、燃料タンクから吸気マニホールドに接続される蒸発燃料配管によって形成されている。一方、エンジンの吸気系は、吸気マニホールドに接続される吸気管の途中に吸気を加圧する過給機が設けられて形成されている。そして、過給機には、過給機の上流側と下流側とを接続する還流路が設けられている。還流路の途中にはエジェクタが介在されている。過給機の作動時においては、還流路によってエジェクタには吸気の一部が流通するようになっている。
【0022】
そして、蒸発燃料パージ装置10は、蒸発燃料配管の途中に配置されて、後述する燃料流入パイプ12が燃料タンク側に接続され、また、燃料流出パイプ21が吸気マニホールド側に接続されている。更に、エジェクタ用パイプ22は、エジェクタの吸引部側に接続されている。
【0023】
以下、蒸発燃料パージ装置10について簡単に説明する。蒸発燃料パージ装置10は、
図1〜
図3に示すように、入口側ケース11、燃料流入パイプ12、フィルタ13、出口側ケース14、仕切り板15、バルブ16、主流路17、分岐流路18、第1逆止弁19、第2逆止弁20、燃料流出パイプ21、およびエジェクタ用パイプ22等を備えている。
【0024】
入口側ケース11は、後述する出口側ケース14側(ここでは下側)に開口部11aを有する樹脂製の容器となっており、開口部11aの外周部には、外周壁に対して交差する方向で外側に突出するフランジ部111が形成されている。入口側ケース11の内部は、内部空間11bとなっている。内部空間11bは、流入された蒸発燃料を、後述する仕切り板15の連通孔15bに流す内部流路を形成する。内部流路は、後述する出口側ケース14内に形成される主流路17の上流側を形成する流路となる。
【0025】
燃料流入パイプ12は、燃料タンク側から蒸発燃料を入口側ケース11(内部空間11b)内に流入させるパイプであり、入口側ケース11と一体的に形成されている。燃料流入パイプ12は、入口側ケース11において天井側(ここでは上側)で凹みが形成された部位に設けられており、燃料流入パイプ12の長手方向は、フランジ部111が突出する方向と平行となるように配置されている。
【0026】
フィルタ13は、蒸発燃料中の塵や埃等を捕捉するものであり、内部空間11bによって形成される内部流路の途中部位に配設されている。フィルタ13は、例えば微細な網目状を成すメッシュ部材から形成されている。
【0027】
出口側ケース14は、上記入口側ケース11側(ここでは上側)に開口部14aを有する樹脂製の容器となっており、開口部14aの外周部には、外周壁に対して交差する方向で外側に突出するフランジ部141が形成されている。
【0028】
また、出口側ケース14の底部側で、燃料流入パイプ12の長手方向に直交して互いに対向する側壁において、後述する燃料流出パイプ21、およびエジェクタ用パイプ22に対応する部位は、共に内側に凹むように形成されている。凹まされた内側は、扁平な円筒状の空間を形成している。そして、凹まされた底部側となる壁は、第1壁部14b、および第2壁部14cとなっている。第1壁部14bには連通孔14dが形成され、また、第2壁部14cには連通孔14eが形成されている。連通孔14dは、出口側ケース14内と後述する燃料流出パイプ21とを連通させる孔であり、また、連通孔14eは、出口側ケース14内と後述するエジェクタ用パイプ22とを連通させる孔である。
【0029】
仕切り板15は、全体が板状を成して、内側領域に一部、厚肉となる厚肉部15aを有する部材となっている。仕切り板15は、出口側ケース14の開口部14aを閉塞するように配置されており、外周部において板状となる板状部151が入口側ケース11のフランジ部111と、出口側ケース14のフランジ部141との間に配置されている。
【0030】
厚肉部15aは、仕切り板15において、入口側ケース11内のフィルタ13よりも下流側となる領域に対応する部位に形成されている。この厚肉部15aには、連通孔15bが形成されている。連通孔15bは、入口側ケース11の内部空間11bと、出口側ケース14内とを連通させる孔となっている。また、厚肉部15aにおいて、出口側ケース14側となる連通孔15bの外周部分は、後述するバルブ16の弁体16aが着座する弁座15cとなっている。
【0031】
バルブ16は、上記連通孔15bを開閉する開閉手段であり、出口側ケース14内において、連通孔15bと対向する部位に配設されている。バルブ16は、弁体16a、電磁コイル16b、およびスプリング16cを備えた電磁弁が使用されている。バルブ16は、図示しない制御部によって、コネクタ16dのターミナル16eを介して電磁コイル16bに通電されたときの電磁力と、スプリング16cの弾性力とのバランスによって、弁体16aを移動させて連通孔15bを開閉するようになっている。
【0032】
バルブ16は、通常は連通孔15bを閉じた状態を維持しており、制御部によって電磁コイル16bに通電されると、電磁力がスプリングの弾性力に打ち勝って、連通孔15bを開いた状態にするようになっている。
【0033】
主流路17は、出口側ケース14内において蒸発燃料が流通する流路であり、連通孔15b、バルブ16の弁体16a、出口側ケース14内部、更には第1壁部14bの連通孔14dを介して燃料流出パイプ21に至る流路として形成されている。
【0034】
分岐流路18は、出口側ケース14内において上記主流路17から分岐する流路であり、バルブ16の弁体16aから出口側ケース14内部、第2壁部14cの連通孔14eを介してエジェクタ用パイプ22に至る流路として形成されている。よって、バルブ16(弁体16a)は、分岐流路18が分岐する分岐点よりも上流側となる主流路17に配置されていることになる。
【0035】
第1逆止弁19は、主流路17において、分岐流路18が分岐する分岐点よりも下流側に配設された弁である。具体的には、第1逆止弁19は、第1壁部14bに配設されている。第1逆止弁19は、主流路17において、燃料流入パイプ12から内部空間11b、連通孔15b、バルブ16(弁体16a)、主流路17、更には燃料流出パイプ21への蒸発燃料の本来の流通を許容するようになっている。加えて、第1逆止弁19は、燃料流出パイプ21側から燃料流入パイプ12側への蒸発燃料の逆流を阻止するようになっている。第1逆止弁19は、蒸発燃料の本来の流通に伴って流路を開き、蒸発燃料の逆流に伴って流路を閉じる傘状の弁体が使用されている。
【0036】
第2逆止弁20は、分岐流路18に配設された弁である。具体的には、第2逆止弁20は、第2壁部14cに配設されている。第2逆止弁20は、分岐流路18において、燃料流入パイプ12から内部空間11b、連通孔15b、バルブ16(弁体16a)、分岐流路18、更にはエジェクタ用パイプ22への蒸発燃料の本来の流通を許容するようになっている。加えて、第2逆止弁20は、エジェクタ用パイプ22側から燃料流出パイプ21側(あるいは燃料流入パイプ12側)への蒸発燃料の逆流を阻止するようになっている。第2逆止弁20は、上記第1逆止弁19と同様に、蒸発燃料の本来の流通に伴って流路を開き、蒸発燃料の逆流に伴って流路を閉じる傘状の弁体が使用されている。
【0037】
燃料流出パイプ21は、第1逆止弁19の下流側で主流路17に連通して、出口側ケース14の外側に突出すると共に、吸気マニホールドへ蒸発燃料を流出させる樹脂製のパイプとなっている。燃料流出パイプ21は、出口側ケース14に対しては、別部品として形成されており、付け根部側にはフランジ部21aが一体的に設けられている。また、フランジ部21aの外周部には、外周壁部21bが形成されている。そして、フランジ部21aは、出口側ケース14の第1壁部14bと対向して、凹まされた側壁部の開口側を塞ぐように組付けされて、フランジ部21aの外周壁部21bと凹みの内周側とが互いに接合(例えば、超音波溶着)されている。
【0038】
エジェクタ用パイプ22は、第2逆止弁20の下流側で分岐流路18に連通して、出口側ケース14の外側に突出すると共に、エジェクタの吸引部へ蒸発燃料を流出させる樹脂製のパイプとなっている。エジェクタ用パイプ22は、上記燃料流出パイプ21と同様に、出口側ケース14に対しては、別部品として形成されており、付け根部側にはフランジ部22aが一体的に設けられている。また、フランジ部22aの外周部には、外周壁部22bが形成されている。そして、フランジ部22aは、出口側ケース14の第2壁部14cと対向して、凹まされた側壁部の開口側を塞ぐように組付けされて、フランジ部22aの外周壁部22bと凹みの内周側とが互いに接合(例えば、超音波溶着)されている。エジェクタ用パイプ22は、燃料流出パイプ21とは反対側を向くように出口側ケース14に接合されている。
【0039】
上記のように構成される蒸発燃料パージ装置10においては、車両の走行時に、過給機が作動していない場合に、図示しない制御部によってバルブ16が開かれる。すると、ピストンの吸入作用によって発生する吸気マニホールド内の負圧によって、燃料タンクの蒸発燃料は、燃料流入パイプ12、内部空間(内部流路)11b、フィルタ13、連通孔15b、バルブ16、主流路17、第1逆止弁19(連通孔14d)、および燃料流出パイプ21を流れ、吸気マニホールド内に吸引されるようになっている。
【0040】
また、車両の走行時に、過給機が作動している場合には、吸気マニホールド内は加圧された吸気によって正圧となるので、上記のような蒸発燃料の吸引が困難となる。この場合は、過給機によって過給された吸気の一部が、過給機の下流側から、還流路、エジェクタ内を流通して、過給機の上流側に戻る。
【0041】
このとき、制御部によってバルブ16が開かれると、エジェクタの吸引部の吸引作用により、燃料タンクの蒸発燃料は、燃料流入パイプ12、内部空間(内部流路)11b、フィルタ13、連通孔15b、バルブ16、分岐流路18、第2逆止弁20(連通孔14e)、およびエジェクタ用パイプ22を通り、吸引部からエジェクタに吸引され、エジェクタ内を流通する吸気と共に過給機の上流側に供給されるようになっている。
【0042】
本蒸発燃料パージ装置10では、出口側ケース14のフランジ部141に、入口側ケース11のフランジ部111がレーザー溶着されている。また、出口側ケース14のフランジ部141に仕切り板15の板状部151がレーザー溶着されている。そして、これらの溶着部がレーザー溶着構造100を形成している。以下、その詳細について、
図4〜
図6を加えて説明する。
【0043】
尚、出口側ケース14は本発明の第1部材に対応し、入口側ケース11は本発明の第2部材に対応し、仕切り板15は本発明の第3部材に対応する。また、以下においては、出口側ケース14のフランジ部141を第1フランジ部141と呼び、入口側ケース11のフランジ部111を第2フランジ部111と呼ぶことにする。
【0044】
第1フランジ部141(出口側ケース14)は、レーザー溶着時のレーザー光を吸収可能とする光吸収性樹脂から形成されている。
図4に示すように、第1フランジ部141の張出し方向の外側領域で、第2フランジ部111と対向する側の面は、第1当接面141aとして形成されている。また、第1当接面141aには、第1フランジ部141の全周にわたって、第2フランジ部111(後述する第2当接面111a)側に突出する凸部141dが一体的に形成されている(
図5)。凸部141dは、例えば、先端側に向けて幅寸法が小さくなる三角形状、あるいは半円形状等に形成されている。尚、ここでは、第1当接面141a、および第2当接面111aのうち、第1当接面141aが本発明の一方側に対応し、第2当接面111aが本発明の他方側に対応している。
【0045】
また、第1フランジ部141において、第1フランジ部141の張出し方向で第1当接面141aよりも内側となる領域には、第1当接面141aよりもへこまされて、板状部151を収容可能とする収容凹部141bが形成されている。収容凹部141bのへこまされた底部は、底部面141cとなっている。よって、第1当接面141aと収容凹部141bとの間は、階段状の段部141fとなっている。そして、第1フランジ部141において、第1当接面141aおよび収容凹部141bとは反対側となる反対側面141eは、段差等のない1つの平面として形成されている。
【0046】
第2フランジ部111(入口側ケース11)は、レーザー溶着時のレーザー光を透過可能とする光透過性樹脂から形成されている。第2フランジ部111の張出し方向の外側領域で、第1フランジ部141と対向する側の面は、第2当接面111aとして形成されている。第2当接面111aの設定領域は、第1当接面141aの設定領域と対応しており、第1当接面141aと第2当接面111aとは、互いに当接する面となっている。
【0047】
また、第2フランジ部111において、第2フランジ部111の張出し方向で第2当接面111aよりも内側となる領域には、第2当接面111aよりもへこまされた凹部111bが形成されている。凹部111bのへこまされた底部は、後述する板状部151の第2面151bが対向する対向面111cとなっている。よって、第2当接面111aと凹部111bとの間は、階段状の段部111dとなっている。
【0048】
板状部151(仕切り板15)は、レーザー溶着時のレーザー光を透過可能とする光透過性樹脂から形成されている。板状部151は、収容凹部141bに収容されている。板状部151において、底部面141cと当接する側の面は、第1面151aとなっている。また板状部151において、対向面111cと対向する側の面は、第2面151bとなっている。
【0049】
板状部151が収容凹部141bに収容された状態で、第2面151bは、第1当接面141aよりも第2フランジ部111側に第1所定量だけ突出するようになっている。つまり、収容凹部141bの深さ寸法よりも、板状部151の厚さ寸法の方が第1所定量だけ大きく設定されている。
【0050】
また、第2面151bと、対向面111cとの間には、第2所定量の隙間部152が形成されるようになっている。つまり、第2面151bの第1当接面141aからの突出寸法よりも、凹部111bの深さ寸法の方が、第2所定量だけ大きく設定されている。
【0051】
更に、第2当接面111aに対応する第2フランジ部111の厚さ寸法tfと、板状部151の厚さ寸法tpは、同一となるように設定されている。
【0052】
次に、第1フランジ部141、第2フランジ部111、および板状部151間におけるレーザー溶着の実施要領を説明する。
【0053】
1.第1工程(第1フランジ部と板状部との溶着、
図5)
まず、第1フランジ部141を受け冶具210の上側にセットする。続いて、第1フランジ部141(出口側ケース14)に、板状部151(仕切り板15)をセットする。このとき、板状部151を収容凹部141bにはめ込むようにセットすることで、板状部151は、底部面141cと段部141fとによって、第1フランジ部141に対して位置決めされる。
【0054】
次に、板状部151の第2面151bに押え冶具220をセットする。つまり、第1フランジ部141の反対側面141eと、板状部151の第2面151bとを、受け冶具210と押え冶具220とで挟み込むようにして、押え冶具220によって、受け冶具210側に所定の押え力を付加する。尚、押え冶具220のセット位置は、後述するレーザー光の照射を妨げないように、第2面151bの先端側としている。また、押え冶具220において、凸部141dと対応する部位には、予め、切欠き部220aが設けられており、押え冶具220と凸部141dとが干渉しないようにしている。この受け冶具210と押え冶具220とによって、底部面141cと第1面151aとが圧着される。
【0055】
次に、底部面141cの中央部を狙って板状部151の外側からレーザー溶着用のレーザー光を照射する。レーザー光は、光透過性の板状部151を透過して底部面141cに至る。光吸収性の底部面141cは、レーザー光の熱エネルギーを吸収して溶融される。更に、この溶融時の熱が板状部151側にも伝えられて、第1面151aも溶融される。このようにレーザー光によって底部面141cと第1面151aとの間に溶融プールが形成され、両面141c、151aが溶着される。上記の溶着は、レーザー光の照射位置が順次移動されることで、第1フランジ部141の全周にわたって実施される。
【0056】
2.第2工程(第1フランジ部と第2フランジ部との溶着、
図6)
上記溶着時に用いた押え冶具220による押え力を解除すると共に、受け冶具210に対して押え冶具220を移動させて待機状態とする。
【0057】
次に、第1フランジ部141(出口側ケース14)に、第2フランジ部111(入口側ケース11)をセットする。このとき、例えば、第1フランジ部141、および第2フランジ部111に予め設けられた図示しない位置決め部を用いることで、第2フランジ部111は、第1フランジ部141および板状部151に対して位置決めされる。そして、第1当接面141aと第2当接面111aとが互いに当接される。また、第2面151bと対向面111cとの間には隙間部152が形成される。
【0058】
尚、第2面151bは、第1当接面141aから突出しており、また、第2当接面111aと凹部111bとの間には、段部111dが形成されている。よって、段部111dを板状部151の長手方向端部に合わせるようにセットすることで、第2フランジ部111を、第1フランジ部141および板状部151に対して位置決めするようにしても良い。
【0059】
次に、第2フランジ部111の外側面に押え冶具220とは別の押え冶具230をセットする。つまり、第1フランジ部141の反対側面141eと、第2フランジ部111の外側面とを、受け冶具210と押え冶具230とで挟み込むようにして、押え冶具230によって、受け冶具210側に所定の押え力を付加する。尚、押え冶具230のセット位置は、後述するレーザー光の照射を妨げないように、第2フランジ部111の先端側としている。この受け冶具210と押え冶具230とによって、第1当接面141aと第2当接面111aとが圧着される。
【0060】
尚、押え冶具230については、上記第1工程で説明した押え冶具220を移動させて使用することで、押え冶具220によって兼用するようにしても良い。
【0061】
次に、第1当接面141aの中央部を狙って第2フランジ部111の外側からレーザー溶着用のレーザー光を照射する。ここで、本工程におけるレーザー光のエネルギーは、上記の第1工程におけるレーザー光のエネルギーと同一となるように設定している。レーザー光は、第1工程と同様に、光透過性の第2フランジ部111を透過して第1当接面141aに至る。光吸収性の第1当接面141aは、レーザー光の熱エネルギーを吸収して溶融される。更に、この溶融時の熱が第2当接面111a側にも伝えられて、第2当接面111aも溶融される。このようにレーザー光によって第1当接面141aと第2当接面111aとの間に溶融プールが形成され、両当接面141a、111aが溶着される。上記の溶着は、レーザー光の照射位置が順次移動されることで、第1フランジ部141の全周にわたって実施される。尚、第1当接面141aに形成された凸部141dは、上記の圧着および溶着により、潰された状態となっている。
【0062】
以上のように、本実施形態では、第2面151bは、第1当接面141aよりも第2フランジ部111側に突出するようにしている。よって、第1フランジ部141と板状部151とをレーザー溶着するにあたって、第1フランジ部141と板状部151とを受け冶具210と押え冶具220とで挟み込み、収容凹部141bの底部面141cと、板状部151の第1面151aとを圧着させる際に、押え冶具220が第1当接面141aに当たることが無い。従って、底部面141cと第1面151aとを確実に圧着させることができる。
【0063】
この状態で、レーザー光を板状部151側から照射して、底部面141cを溶融させ、更に、この溶融時の熱によって第1面151aをも溶融させることで、底部面141cと第1面151aとを確実に溶着することができる。
【0064】
また、本実施形態では、第2面151bと対向面111cとの間には、隙間部152が形成されるようにしている。よって、第1フランジ部141と第2フランジ部111とをレーザー溶着するにあたって、第1フランジ部141と第2フランジ部111とを受け冶具210と押え冶具230(220)とで挟み込み、第1当接面141aと第2当接面111aとを圧着させる際に、対向面111cが第2面151bに当たることが無い。従って、第1当接面141aと第2当接面111aとを確実に圧着させることができる。
【0065】
この状態で、レーザー光を第2フランジ部111側から照射して、第1当接面141aを溶融させ、更に、この溶融時の熱によって第2当接面111aをも溶融させることで、第1フランジ部141と第2フランジ部111とを確実に溶着することができる。
【0066】
総じて、第1フランジ部141と第2フランジ部111とがレーザー溶着されると共に、第1フランジ部141と板状部151とがレーザー溶着されるレーザー溶着構造100において、信頼性の高い溶着状態を確保することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態では、第2当接面111aに対応する第2フランジ部111の厚さ寸法tf、および板状部151の厚さ寸法tpは、同一に設定されている。これにより、第1工程において底部面141cに照射するレーザー光のエネルギーと、第2工程において第1当接面141aに照射するレーザー光のエネルギーとを同一にしてそれぞれの部位の溶着を行うことが可能となる。従って、溶着時の条件設定をシンプルにすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、第1当接面141aには、第2当接面111a側に突出する凸部141dが形成されており、凸部141dは、第1当接面141aと第2当接面111aとのレーザー溶着によって潰されている。これにより、第1当接面141aと第2当接面111aとの間は、隙間の無い状態が形成され、潰された凸部141dによるシール構造を形成することができるので、両当接面141a、111a間のシール性を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、第1フランジ部141において、第1当接面141aおよび収容凹部141bとは反対側となる反対側面141eは、1つの平面として形成されている。これにより、第1フランジ部141と板状部151とを溶着するとき、および第1フランジ部141と第2フランジ部111とを溶着するときとで、受け冶具210を段部の無い簡素な形状で、同一のものとすることができるので、冶具費を低減することができる。
【0070】
(その他の実施形態)
上記第1実施形態では、第2当接面111aに対応する第2フランジ部111の厚さ寸法tfと、板状部151の厚さ寸法tpとは、同一となるようにした。しかしながら、第1工程と第2工程とでレーザー光のエネルギーを調節して対応するようにすれば、両厚さ寸法は異なる設定としても良い。
【0071】
また、第1当接面141aに凸部141dを設けるようにしたが、この凸部141dを第2当接面111a側に設けるようにしても良い。また、第1当接面141aと第2当接面111aとのレーザー溶着によって、両当接面141a、111a間のシール性が充分確保できる場合は、凸部141dを廃止するようにしても良い。
【0072】
また、第1フランジ部141において、反対側面141eは、1つの平面となるように形成したが、第1当接面141aと収容凹部141bとに応じた、段付きの面となるようにしても良い。この場合は、受け冶具210を、この段付き面に対応する段部の形成されたものとする、あるいは、第1工程と第2工程とで受け冶具210を移動させる等によって対応することも可能である。
【0073】
また、本レーザー溶着構造100を、蒸発燃料パージ装置10に適用するものとして説明したが、これに限らず、同様の溶着部を形成する3部材をレーザー溶着するものに対して広く適用することができる。