(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カーボンブラック(A)が、粒子径の異なる少なくとも2種類のカーボンブラックを含み、平均一次粒子径が最小のカーボンブラック(a1)の平均一次粒子径をD1、平均一次粒子径が最大のカーボンブラック(a2)の平均一次粒子径をD2としたとき、8nm≦D1≦20nm、かつ21nm≦D2≦40nmであることを特徴とする請求項1記載の黒色組成物。
さらに、光重合開始剤(E)、およびエチレン性不飽和単量体(F)を含み、黒色組成物中の固形分の重量を基準(1.0)としたときの、光重合開始剤(E)、エチレン性不飽和単量体(F)、およびバインダ樹脂(D)の重量比を、それぞれW1、W2、およびW3としたとき、0.10≦W1+W2≦0.45、0.10≦W2/W3≦1.10となることを特徴とする請求項1または2記載の黒色組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本願では、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、又は「(メタ)アクリルアミド」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、又は「アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド」を表すものとする。
また、本明細書に挙げる「C.I.」は、カラーインデクッス(C.I.)を意味する。
【0019】
まず、本発明における黒色組成物について具体的に説明する。
《黒色組成物》
本発明の黒色組成物は、カーボンブラック(A)、少なくとも2種類の有機顔料(B)、下記一般式(1)で表される色素誘導体(C)、およびバインダ樹脂(D)を含有する黒色組成物であって、かつ該黒色組成物を膜厚1.0μmとなる条件で塗膜を形成したときに、波長400〜700nmの光透過率の最大値が10%以下であり、波長400〜700nmの光透過率の標準偏差が3%未満であることを特徴とする黒色組成物である。
【0020】
本発明の黒色組成物は、膜厚1.0μmとなる条件で塗膜を形成したときに、波長400〜700nmの光透過率の最大値が10%以下であり、波長400〜700nmの光線透過率の標準偏差が3%未満である。光透過率の最大値として、より好ましくは8%以下、更に好ましくは6%以下である。光透過率の標準偏差として、より好ましくは2%以下である。
【0021】
光線透過率の標準偏差(σ)は例えば波長400〜700nmの光線透過率を1nm刻みで測定した場合、n=301点の光透過率が得られ、i番目の波長の透過率をT
i、301点の光透過率の平均値をT
Aveとしたとき、次の方法で光透過率の測定値から計算することができる。
【0023】
ここで、nは60以上の整数であり、任意のi番目の波長とi−1番目の波長の差が1nm以上5nm以下となるよう、測定波長を選択することとする。
こうした分光特性を有する塗膜を形成することができる黒色組成物を用いることで、遮光性および美観にも優れた塗膜を得ることが可能となる。
【0024】
<カーボンブラック(A)>
本発明の黒色組成物は、タッチパネルの配線部の隠蔽に必要な遮光性を付与することを目的として、カーボンブラックを含む。カーボンブラックは特に規定がなくどのようなカーボンブラックを使用してもよく、樹脂などで表面処理されていてもよい。カーボンブラックの種類は単独でもよく、2種類以上のカーボンブラックを併用して用いてもよい。
カーボンブラック(A)の種類を単独で選定する場合、平均一次粒子径の好ましい範囲は8nm以上40nm以下であり、より好ましくは10nm以上35nm以下であり、更に好ましくは15nm以上30nm以下である。
【0025】
中でも、カーボンブラック(A)が、粒子径Dの異なる少なくとも2種類のカーボンブラックを含み、平均一次粒子径が最小のカーボンブラック(a1)の平均一次粒子径をD1、平均一次粒子径が最大のカーボンブラック(a2)の平均一次粒子径をD2としたとき、8nm≦D1≦20nm、かつ21nm≦D2≦40nmであることが遮光性に優れた塗膜を形成することができるため好ましい。
とくに、平均一次粒子径Dが40nmを超えるカーボンブラックを含有しない組成物が特に好ましい。
それぞれのカーボンブラックを用いた黒色組成物においては、以下に示すような傾向がある。
【0026】
平均一次粒子径Dが8nm≦D≦20nmであるカーボンブラック(a1)が単独で使用された黒色組成物では、同重量の平均一次粒子径Dがより大きいカーボンブラックが単独で使用された黒色組成物と比べて、単位体積当たりのカーボンブラック粒子数が多数となり遮光性の観点で有利であるが、高遮光性のため光硬化性が劣る場合がある。更に、カーボンブラックの安定分散が困難であり、現像後のガラス基板に黒色組成物の一部が残る、残渣(あるいは地汚れとも呼ばれる)という現象を引き起こすという問題を生じやすい。
【0027】
一方、平均一次粒子径Dが21nm≦D≦40nmであるカーボンブラック(a2)が単独で使用された黒色組成物では、同重量の平均一次粒子径がより小さいカーボンブラックが単独で使用された黒色組成物と比べて、単位体積当たりのカーボンブラック粒子数が少数となり光硬化性は有利となるが遮光性が劣る場合がある。
【0028】
また、平均一次粒子径Dが40nmを超えるカーボンブラックが使用された黒色組成物では、同重量の平均一次粒子径Dが40nmより小さいカーボンブラックのみが使用された黒色組成物と比べて、単位体積当たりのカーボンブラック粒子数が少数となり光硬化性は有利となるが、遮光性およびブラックマトリックスのパターン形状、特に直線性が劣りやすい。
【0029】
カーボンブラック(a1)としては、平均一次粒子径Dが10nm≦D≦18nmのカーボンブラックが好ましく、さらに比表面積が200〜600m
2/gであるカーボンブラックを好適に使用することができる。比表面積が200m
2/g未満のカーボンブラックを用いる場合には、ブラックマトリックスのパターン形状の劣化や密着性の低下を引き起こし易い傾向があり、600m
2/gより大きいカーボンブラックを用いる場合は、カーボンブラックの安定分散が難しくなる傾向がある。またカーボンブラックの入手の容易性から、平均一次粒子径は8nm以上であることが好ましい。
【0030】
また、カーボンブラック(a2)としては、平均一次粒子径が22nm≦D≦37nmのカーボンブラックが好ましく、さらに比表面積が40〜600m
2/gであるカーボンブラックを好適に使用することができる。比表面積が40m
2/g未満のカーボンブラックを用いる場合には、パターン形状の劣化や密着性の低下を引き起こし易い傾向があり、600m
2/gより大きいカーボンブラックを用いる場合は、カーボンブラックの安定分散が難しくなる傾向がある。
【0031】
黒色組成物に含有されるカーボンブラックの平均一次粒子径Dは、次の方法により求めることができる。
まず、黒色組成物を、黒色組成物に含まれる溶剤を用いて約100倍に希釈し、希釈物を得る。次いで希釈物を試料台上にて風乾させ、得られたカーボンブラックについて電子顕微鏡で数万倍の写真を数視野撮影する。カーボンブラックの粒子最大径を2000〜3000個程度計測し、計測値を単純平均して平均一次粒子径Dを求める。2種類以上のカーボンブラックが含まれている黒色組成物については、まず、黒色組成物に含まれるカーボンブラック全体の個数基準の粒子径分布を求める。次いで、2種類以上のカーボンブラックの各粒子径分布が正規分布に従うとして、粒子径分布の形状およびピークの本数から予想されるガウス関数の項数にてカーブフィッティングを行い、各分布関数を決定する。得られた分布関数のパラメータからそれぞれのカーボンブラックの平均一次粒子径Dを求める。平均一次粒子径Dは、通常、小数第一位を四捨五入した値(nm)として表す。
【0032】
本発明の黒色組成物において、2種類以上のカーボンブラックを使用する場合においては、平均一次粒子径が最小のカーボンブラック(a1)の平均一次粒子径をD1、平均一次粒子径が最大のカーボンブラック(a2)の平均一次粒子径をD2としたとき、8nm≦D1≦20nm、かつ21nm≦D2≦40nmのカーボンブラックを併用することが好ましい。この際、平均一次粒子径Dが40nmを超えるカーボンブラックを混合しないことが黒色組成物の塗膜の遮光性を高くすることができるため好ましい。
混合前のカーボンブラックの平均一次粒子径についても、前述と同様の電子顕微鏡を用いる方法により測定することができる。8nm≦D1≦20nmとなるカーボンブラック、21nm≦D2≦40nmとなるカーボンブラックのいずれも市販のカーボンブラックを用いることができる。
【0033】
平均一次粒子径Dが8nm≦D≦20nmであるカーボンブラックとしては、例えば、CABOT製のMONARCH、あるいは、BLACK PERLS(1400、1300、1100、1000、900、880、800、700)、VULCAN(P、9A32)、三菱化学製の#(2700B、2650、2600、2450B、2400B、2350、2300、1000、990、980、970、960、950、900、850)、MCF88、MA600、DEGUSSA製のColor Black(FW2000、FW2、FW2V、FW1、FW18、S170、S160)、Special Black(6、5)、Printex(95、90、85、80、75、40、60)、東海カーボン製のシースト(9H SAF−HS、9 SAF)、旭カーボン製の旭#80、コロンビヤン・カーボン製のROYAL SPECTRA、NEO SPECTRA MARK(IおよびII)、NEO SPECTRA AG、SUPERBA(NEO MK III)、NEO SPECTRA MARK IV、RAVEN(5000、7000、5750、5250、3500、3200、2000、1500)、CONDUCTEX(40−220、SC)、RAVEN C BEADSなどを挙げることができる。好ましくはCABOT製のMONARCH(1100、800)、BLACK PERLS(1100、800)、DEGUSSA製のPrinteX 95、三菱化学製の#850、特に好ましくはCABOT製のMONARCH1100、DEGUSSA製のPrinteX 95を用いることができる。上記カーボンブラックは、1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】
平均一次粒子径Dが21nm≦D≦40nmであるカーボンブラックとしては、例えば、CABOT製のVULCAN(XC72R、XC72)、MOGUL L、BLACK PEARLS(L、570、520、490、480、470、460、450、430、420、410)、REGAL(660R、660、500R、330R、330、300R、250R、250、99R、99I)、ELFTEX(5、8、12、PELLETS115)、三菱化学製のMA(77、7、8、11、100、100R、100S、230、200RB、14)、#(750B、650B、52、50、47、45、45L、44、40、33、32、30、95、85、260、3230B、3350B)、CF9、DEGUSSA製のSpecialBlack(4、4A、550、350)、PrinteX(150T、U、V、140U、140V、55、45、P、L6、L、300、30、ES23、3、ES22、35、XE2)、NIPex35、東海カーボン製のシースト[6ISAF、600ISAF−LS、5H−IISAF−HS、KH(N339)、3HHAF−HS、NH(N351)、3 HAF、3M、N LI−HAF、300HAF−LS、116 MAF]、旭カーボン製の旭#75、旭#70(−IH、−IN、−L)、旭HS−500、旭F−200、コロンビヤン・カーボン製のRAVEN(1255、1250、1200、1170、1040、1035、1030BEADS、1020、1000、890POWDWE、890HPOWDER、850、825BEADS)、CONDUCTEX(975BEADS、900BEADS)などを挙げることができる。好ましくはCABOT製のREGAL(300R、250R、250、99R、99I)、三菱化学製のMA(7、11、100R)、#(47、45、45L)、DEGUSSA製のPrintex55、NIPex35、特に好ましくは三菱化学製の#47、CABOT製のREGAL250R、DEGUSSA製のPrinteX55、NIPex35を用いることができる。上記カーボンブラックは、1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
黒色組成物に含まれるカーボンブラック(a1)およびカーボンブラック(a2)の重量比は、(a1)/(a2)=1/3〜1/30が好ましく、さらに好ましくは1/3〜1/10である。(a1)/(a2)=1/3を超える場合、つまり(a1)が多い場合は、カーボンブラックの安定分散が困難になる傾向がある。一方、(a1)/(a2)=1/30未満の場合、つまり(a1)が少なくなる場合は、(a1)カーボンブラックと(a2)カーボンブラックを併用する場合に発現する高遮光性や前記黒色組成物の安定性の効果が期待できない傾向がある。
【0036】
また、カーボンブラック(a1)およびカーボンブラック(a2)は、黒色組成物の全固形分重量を基準(100重量%)として、好ましくは合計して10〜50重量%、より好ましくは合計して10〜30重量%の量で用いることができる。
【0037】
<有機顔料(B)>
本発明の黒色組成物は、少なくとも2種の有機顔料を含む。用いることの出来る有機顔料としては、本発明の作用効果を損なわない範囲で、さまざまな顔料が使用可能であり、たとえば以下のものが挙げられる。
赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、246、254、255、264、266、272、276などが挙げられる。
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213などが挙げられる。
橙色顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、81などが挙げられる。
緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7、10、36、58などが挙げられる。
青色顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、80などが挙げられる。
紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50などが挙げられる。
黒色顔料としてはC.I.ピグメントブラック 1,31,32などが挙げられる。
【0038】
これらの中でも、赤色顔料、青色顔料、黄色顔料、および黒色顔料からなる群より選ばれる少なくとも2種の顔料を含む組合せ、あるいは、ピグメントブラック31や32のようなペリレンブラックとペリレンブラック以外の有機顔料の組合せが好ましい。
より好ましくは、遮光性・美観に優れた塗膜が得られるよう、少なくとも赤色顔料および青色顔料を含む場合が好ましい。
【0039】
中でも、赤色顔料として、C.I.ピグメントレッド177、または254、青色顔料として、C.I.ピグメントブルー15:6、または15:3、黄色顔料として、C.I.ピグメントエロー138、139、150、または185、黒色顔料として、C.I.ピグメントブラック 31、または32であることが好ましいものである。
【0040】
有機顔料(B)中のそれぞれの含有量は、有機顔料の合計を基準(100重量%)として、赤色顔料が20〜60重量%、青色顔料が20〜60重量%、その他の顔料が0〜40重量%である。
また、有機顔料(B)の含有量は、黒色組成物の全固形分重量を基準(100重量%)として、好ましくは合計して5〜50重量%、より好ましくは合計して10〜40重量%の量で用いることができる。
【0041】
<色素誘導体(C)>
色素誘導体(C)は、下記一般式(1)で示されるものである。また、後述するように最適な分光透過率を有する色素誘導体を選択することにより遮光性や美観に優れた加飾塗膜を得ることが可能となる。色素誘導体(C)は、1種を単独で使用してもよく、任意の比率で2種以上混合して使用してもよい。
【0042】
【化3】
[一般式(1)中、Qは有機色素残基を表し、Xは直接結合、−CONH−Y
2−、−SO
2NH−Y
2−、または−CH
2NHCOCH
2NH−Y
2−(但し、Y
2は置換基を有してもよいアルキレン基または置換基を有してもよいアリーレン基を表す。)を表し、Y
1は−NH−または−O−を表し、Zは、nが1の場合には水酸基、アルコキシ基、下記一般式(2)で示される置換基、または−NH−X−Q(但し、Q及びXは前記のとおりである。)を表し、nが2〜4の場合には水酸基、アルコキシ基、または下記一般式(2)で示される置換基を表し、R
1およびR
2は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基を表し、R
1とR
2とが互いに結合して少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成してもよく、mは1から6の整数を表し、nは1から4の整数を表す。
【化4】
[一般式(2)中、Y
3は−NH−または−O−を表す。また、m、R
1およびR
2は前記のとおりである。]]
【0043】
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。また、これらの基が有する置換基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0044】
有機色素残基Qにおける有機色素としては、例えば、フタロシアニン系、キナクリドン系、キナクリドンキノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系、ペリレン系、ペリノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、アントラキノン系、ピランスロン系、アンスアンスロン系、フラバンスロン系、インダンスロン系、金属錯体系等の縮合多環系有機顔料、ベンズイミダゾロン系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、溶性アゾ系等の有機顔料または染料、ナフタレン系等の淡黄色の芳香族多環化合物が挙げられる。中でもフタロシアニン系、ベンズイミダゾロン系、アントラキノン系、ジケトピロロピロール系、ペリレン系の有機色素残基が有機顔料とカーボンブラックそれぞれの分散性を向上させることができるため好ましい。
【0045】
一般式(1)で示される色素誘導体(C)としては、例えば、下記一般式(2)〜(11)で示される色素誘導体が挙げられる。
【化3】
【0048】
また、色素誘導体(C)とは異なる色素誘導体を用いることも出来る。
併用する事のできる色素誘導体としては、例えば特開昭63−305173号公報、特公昭57−15620号公報、特公昭59−40172号公報、特公昭63−17102号公報、特公平5−9469号公報等に記載されているものを使用できる。
【0049】
色素誘導体(C)を含む全ての色素誘導体の含有量は、黒色組成物の全固形分重量を基準(100重量%)として、好ましくは0.05〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%の量で用いることができる。色素誘導体の含有量が0.05重量%より少ない場合は、有機顔料とカーボンブラックを分散する効果が充分に発揮されない傾向があり、20重量%より多い場合は、有機顔料とカーボンブラックの分散が不安定になる傾向がある。
【0050】
カーボンブラック(A)、有機顔料(B)、色素誘導体(C)の含有量の合計は、黒色組成物の全固形分重量を基準(100重量%)として、好ましくは20重量%以上であり、30〜60重量%の量を含有することがより好ましい。中でもカーボンブラック(A)を10重量%以上含有する事で、黒色組成物を膜厚1.0μmとなる条件で塗膜を形成したときに、波長400〜700nmの光透過率の最大値が10%以下であり、波長400〜700nmの光透過率の標準偏差が3%未満としやすくなり、遮光性・美観に優れたものとすることができる。好ましくは、10〜50重量%、より好ましくは合計して10〜30重量%の量で用いることができる
【0051】
<有機顔料および色素誘導体の光透過率>
本発明の黒色組成物においては、下記式(T1)、(T2)、および(T3)をそれぞれ満たす、有機顔料(B)および/または色素誘導体(C)を含み、かつ少なくとも1つは色素誘導体(C)であるとき、特定の波長領域の光が偏って透過することを防ぐことができ、その結果、遮光性・美観を高めることができるため好ましい。
(T1):400nm≦λmin<500nm
(T2):500nm≦λmin<600nm
(T3):600nm≦λmin<700nm
[式(T1)、(T2)、および(T3)中、
λminは、波長400nm〜700nmにおける光透過率が最小となる波長である。]
【0052】
有機顔料、色素誘導体のλminは例えば下記のような方法で求めることができる。
有機顔料または色素誘導体を10重量%、透明性の高い顔料分散剤(ビックケミー社製BYK-167など)あるいはアクリル樹脂(固形分)10重量%、および溶剤80重量%の分散体を、波長400〜700nmにおける透過率の最小値が1%よりも高くなるように塗布した塗膜について、顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP100」)を用いて測定した透過スペクトルより求めることができる。
【0053】
式(T1)、(T2)、および(T3)を満たす有機顔料(B)および色素誘導体(C)としては、それぞれの色素の母体骨格、および有する置換基の種類等により、違いはあるが、概ね、下記の母体骨格を有するものが挙げられる。
式(T1)を満たす有機顔料(B)および色素誘導体(C)としては、例えば、アゾ系、キノフタロン系、イソンドリン系、イソインドリノン系エロー顔料などの有機顔料(B)、またはこれらの有機顔料を母体骨格とする色素誘導体(C)が挙げられる。
【0054】
式(T2)を満たす有機顔料(B)および色素誘導体(C)としては、例えば、アントラキノン系、ジケトピロロピロール系、ペリレン系、アゾ系などの赤色有機顔料、ジオキサジン系などの紫色有機顔料(B)またはこれらの有機顔料を母体骨格とする色素誘導体(C)が挙げられる。
【0055】
式(T3)を満たす有機顔料(B)および色素誘導体(C)としては、例えば、フタロシアニン系青色・緑色有機顔料(B)、またはこれらの有機顔料を母体骨格とする色素誘導体(C)が挙げられる。
【0056】
<バインダ樹脂(D)>
本発明の樹脂組成物に含まれるバインダ樹脂(D)は、着色材即ちカーボンブラック(A)と有機顔料(B)を分散するものであって、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。バインダ樹脂(B)は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において分光透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の透明樹脂であることが好ましい。また、アルカリ現像型感光性着色組成物の形態で用いる場合には、酸性置換基含有エチレン性不飽和単量体を共重合したアルカリ可溶性ビニル系樹脂を用いることが好ましい。また、さらに光感度を向上させるために、エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂を用いることもできる。
【0057】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、およびポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0058】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびフェノール樹脂等が挙げられる。
【0059】
酸性置換基含有エチレン性不飽和単量体を共重合したビニル系アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボキシル基、スルホン基等の酸性置換基を有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂として具体的には、酸性置換基を有するアクリル樹脂、α−オレフィン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、又はイソブチレン/(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、酸性置換基を有するアクリル樹脂、およびスチレン/スチレンスルホン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂、特に酸性置換基を有するアクリル樹脂は、耐熱性、透明性が高いため、好適に用いられる。
【0060】
エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂としては、たとえば以下に示す(i)や(ii)の方法によりエチレン性不飽和二重結合を導入した樹脂が挙げられる。
【0061】
[方法(i)]
方法(i)としては、例えば、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体と、他の1種類以上の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖エポキシ基に、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和一塩基酸のカルボキシル基を付加反応させ、更に、生成した水酸基に、多塩基酸無水物を反応させ、エチレン性不飽和二重結合およびカルボキシル基を導入する方法がある。
【0062】
エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、及び3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。次工程の不飽和一塩基酸との反応性の観点で、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0063】
不飽和一塩基酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体等のモノカルボン酸等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。
【0064】
多塩基酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。カルボキシル基の数を増やす等、必要に応じて、トリメリット酸無水物等のトリカルボン酸無水物を用いたり、ピロメリット酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物を用いて、残った無水物基を加水分解したりすること等もできる。また、多塩基酸無水物として、エチレン性不飽和二重結合を有する、テトラヒドロ無水フタル酸、又は無水マレイン酸を用いると、更にエチレン性不飽和二重結合を増やすことができる。
【0065】
方法(i)の類似の方法として、例えば、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と、他の1種類以上の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖カルボキシル基の一部に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を付加反応させ、エチレン性不飽和二重結合およびカルボキシル基を導入する方法がある。
【0066】
[方法(ii)]
方法(ii)としては、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体を使用し、他のカルボキシル基を有する不飽和一塩基酸の単量体や、他の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖水酸基に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体のイソシアネート基を反応させる方法がある。
【0067】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アク
リレート、2−若しくは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−若しくは3
−若しくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、又はシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルメタアクリレート類が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用して用いてもかまわない。また、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシド等を付加重合させたポリエーテルモノ(メタ)アクリレートや、ポリγ−バレロラクトン、ポリε−カプロラクトン、及び/又はポリ12−ヒドロキシステアリン酸等を付加したポリエステルモノ(メタ)アクリレートも使用できる。塗膜異物抑制の観点から、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、又はグリセロールメタアクリレートが好ましい。
【0068】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、又は1,1−ビス〔メタアクリロイルオキシ〕エチルイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定することなく、2種類以上併用することもできる。
【0069】
カーボンブラック(A)と有機顔料(B)を好ましく分散させるためには、バインダ樹脂(D)の重量平均分子量(Mw)は10,000〜100,000の範囲が好ましく、より好ましくは10,000〜80,000の範囲である。また数平均分子量(Mn)は5,000〜50,000の範囲が好ましく、Mw/Mnの値は10以下であることが好ましい。
【0070】
また、上記着色材の分散性、安定性、現像性、及び耐熱性の観点から、着色材吸着基及び現像時のアルカリ可溶性基として働くカルボキシル基、着色材担体及び溶剤に対する親和性基として働く脂肪族基及び芳香族基のバランスが、顔料の分散性、塗膜における現像液浸透性、未硬化部分の現像液溶解性、さらには耐久性にとって重要であり、酸価20〜300mgKOH/gの樹脂を用いることが好ましい。酸価が、20mgKOH/g未満では、現像液に対する溶解性が悪く、微細パターン形成するのが困難である。また300mgKOH/gを超えると、微細パターンが残らなくなる場合がある。
【0071】
バインダ樹脂(D)、成膜性および諸耐性が良好なことから、着色材(A)の全重量100重量部に対して、30重量部以上の量で用いることが好ましく、着色材濃度が高く、良好な色特性を発現できることから、500重量部以下の量で用いることが好ましい。より好ましくは100〜400重量部。さらに好ましくは160〜320重量部である。このような顔料の構成比率により色度領域を広げることができる。
【0072】
本発明の黒色組成物は該黒色組成物を膜厚1.0μmとなる条件で形成したときに波長400〜700nmの光線透過率の最大値が10%以下であって波長400〜700nmの光線透過率の標準偏差が3%未満となることを特徴とする。400〜700nmの光線透過率の最大値が10%を上回ると、タッチパネルの加飾塗膜として使用したときに遮光性が不足し、タッチパネルの配線を十分に隠蔽できず好ましくない。また、波長400〜700nmの光線透過率の標準偏差が3%を超えると、液晶ディスプレイと組み合わせて使用したとき、液晶ディスプレイの光源における特定の波長の光線を選択的に通す傾向が強く、加飾部分が着色して見えるようになるために美観が損なわれ好ましくない。
【0073】
本発明の黒色組成物は、フォトリソ方式や印刷方式等により塗膜を形成することが可能である。フォトリソ方式で塗膜を形成する場合、黒色組成物は上記(A)〜(D)以外に光重合開始剤(E)、エチレン性不飽和単量体(F)、増感剤、連鎖移動剤、溶剤を含んでいてもよい。
以下、これらの材料について例示する。
【0074】
<光重合開始剤(E)>
光重合開始剤(E)としては、フォトリソ方式で使用する露光装置から発生する光を吸収してラジカルまたはイオンを発生する化合物であれば特に限定しない。
光重合開始剤(E)としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4'−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系化合物、1,2−オクタンジオン,−1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−2−(O−ベンゾイルオキシム)、O−(アセチル)−N−(1−フェニル−2−オキソ−2−(4'−メトキシ−ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等が用いられる。
これらの光重合開始剤は、1種を単独で、または必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0075】
中でもオキシムエステル系化合物の光重合開始剤が一般に感度が高く、直線性に優れたパターンを形成することができるため好ましい。オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えばフェノール系やカルバゾール系が挙げられるが、本発明においてはカルバゾール系が好ましい。
さらに、下記一般式(12)で表されるオキシムエステル系化合物の光重合開始剤が好ましく、特に、下記化学式(13)で表される化合物であることがより好ましい。
【化6】
[一般式(12)中、R
51〜R
54は、水素原子、C
1〜C
6のアルキル基、または置換基を有しても良いフェニル基を示す。]
【0076】
置換基としては、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。
【0078】
光重合開始剤(E)の含有量は、感度の観点から、感光性黒色組成物の全固形分量を基準(100重量%)として0.5〜50重量%が好ましく、より好ましくは3〜30重量%である。
【0079】
<増感剤>
さらに、本発明の黒色組成物には、増感剤を含有させることができる。
増感剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミン系化合物を併用することもできる。これらの増感剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
また、増感剤の中でも4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましく、より好ましくは4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンである。
これらの増感剤は、1種を単独で、または必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0080】
増感剤の含有量は、黒色組成物中に含まれる光重合開始剤100重量部に対し、3〜60重量部であることが好ましく、光硬化性、現像性の観点から5〜50重量部であることがより好ましい。
【0081】
<エチレン性不飽和単量体(F)>
光重合性単量体(F)には、紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれる。
エチレン性不飽和単量体(F)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1, 6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびこはく酸とのモノエステル化物、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
これらのエチレン性不飽和単量体は、1種を単独で、または必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0082】
エチレン性不飽和単量体の(F)含有量は、有機顔料およびカーボンブラックの合計100重量部に対し、10〜300重量部であることが好ましく、光硬化性および現像性の観点から10〜200重量部であることがより好ましい。
【0083】
黒色組成物が、光重合開始剤(E)、およびエチレン性不飽和単量体(F)を含む感光性黒色組成物である場合、黒色組成物中の固形分の重量を基準(1.0)としたときの、光重合開始剤(E)、エチレン性不飽和単量体(F)、およびバインダ樹脂(D)の重量比を、それぞれW1、W2、およびW3としたとき、0.10≦W1+W2≦0.45、0.10≦W2/W3≦1.10である場合、実用的な紫外線感度を得ることができ、尚且つ黒色パターンを現像したあとの直線不良が生じがたいため好ましい。
【0084】
さらにW1+W2は、0.15≦W1+W2≦0.35であることがより好ましく、0.15≦W2/W3≦0.80であることがより好ましい。
W1+W2が0.10以上であれば、実用的な紫外線感度を得ることができ、0.45以下であればパタ−ン形状の直線性不良が生じがたい。
また、W2/W3が0.10以上であれば、実用的な紫外線感度を得ることができ、1.10以下であればパタ−ン形状の直線性不良が生じがたい。
なお、感光性黒色組成物が増感剤を含む場合、増感剤の重量比もW1に含み、また樹脂型分散剤の重量はW2には含まないものとする。
【0085】
<酸化防止剤>
黒色組成物には塗膜に耐熱性・耐光性を付与することを目的として酸化防止剤を添加することが好ましい。
【0086】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒドロキシルアミン系、サルチル酸エステル系、およびトリアジン系の化合物があげられ、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤等が使用できる。
これらの酸化防止剤の中でも、塗膜の透過率と感度の両立の観点から、好ましいものとしては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤またはイオウ系酸化防止剤が挙げられる。また、より好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、またはリン系酸化防止剤である。
【0087】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,4−ビス〔(ラウリルチオ)メチル〕−o−クレゾール、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−ノニルフェノール、2,2’−イソブチリデン−ビス−(4,6−ジメチル−フェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2’−チオ−ビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミル−ヒドロキノン、2,2’チオジエチルビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,1,3−トリス−(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−ブタン、2,2’−メチレン−ビス−(6−(1−メチル−シクロヘキシル)−p−クレゾール)、2,4−ジメチル−6−(1−メチル−シクロヘキシル)−フェノール、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド)等が挙げられる。その他ヒンダードフェノール構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等が挙げられる。
【0088】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤として具体的には、ヨシノックスBHT(=2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)、トミノックスTT(=テトラキス−[メチレン−3−(3,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)、ヨシノックスSR、ヨシノックスBB、ヨシノックス2246G、ヨシノックス425、ヨシノックス250、ヨシノックス930、トミノックスSS、トミノックス917、GSY−314(以上、エーピーアイコーポレーション製)、IRGANOX245、IRGANOX259、IRGANOX565、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1098、IRGANOX1135、IRGANOX1076、IRGANOX1425WL、IRGANOX1222、IRGANOX1330(以上、BASF・ジャパン社製)、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−330、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−80(以上、旭電化工業社製)、SumilizerBBM、SumilizerGM、SumilizerGP、SumilizerGS、SumilizerGA−80、SumilizerBP−101、SumilizerBP−76、SumilizerBP−101(以上、住友化学社製)が挙げられる。
【0089】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチル{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ポリ〔(6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、N,N′−4,7−テトラキス〔4,6−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が挙げられる。その他ヒンダードアミン構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等が挙げられる。
【0090】
ヒンダードアミン系酸化防止剤として具体的には、サノールLS−770、サノールLS−765、サノールLS−622LD、キマソープ944(以上、三共株式会社)、CYASORB UV−3346(以上、サンケミカル株式会社製)、ノックラック224、ノックラックCD、Uvasil299−299LM(以上、大内新興化学工業社製)、MARK LAー63、MARKLA−68(以上、旭電化工業社製)、TINUVIN 144、TINUVIN 312(以上、BASF・ジャパン社製)が挙げられる。
【0091】
リン系酸化防止剤としては、トリス(イソデシル)フォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、フェニルイソオクチルフォスファイト、フェニルイソデシルフォスファイト、フェニルジ(トリデシル)フォスファイト、ジフェニルイソオクチルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、4,4’イソプロピリデンジフェノールアルキルフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリスジノニルフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリス(ビフェニル)フォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラトリデシル4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)ジフォスファイト、ヘキサトリデシル1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタントリフォスファイト、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスファイトジエチルエステル、ソジウムビス(4−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ソジウム−2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)−フォスファイト、1,3−ビス(ジフェノキシフォスフォニロキシ)−ベンゼン、亜リン酸エチルビス(2,4−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)等が挙げられる。その他フォスファイト構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等が挙げられる。
【0092】
リン系酸化防止剤として具体的には、IRGAFOS168、IRGAFOS12、IRGAFOS38、IRGAFOSEPQ、(以上、BASF・ジャパン社製)、SumilizerP−16(住友化学社製)、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8F、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−45、アデカスタブPEP−11C、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブP、アデカスタブC、アデカスタブQL、アデカスタブ135A、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブ2112、アデカスタブ3010、アデカスタブ522A、アデカスタブTPP(以上、旭電化工業社製)、GSY−202(以上、エーピーアイコーポレーション製)、SANKOHCA(三光株式会社製)、JPH1200、JP302、JPM313、JP304、JP308、JPP100、JP333E、JP318E、JP312(以上、エーピーアイコーポレーション製)が挙げられる。
【0093】
イオウ系酸化防止剤としては、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾール、2,4−ビス〔(ラウリルチオ)メチル〕−o−クレゾール等が挙げられる。その他チオエーテル構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等が挙げられる。
【0094】
イオウ系酸化防止剤として具体的には、IRGANOXPS800FD、IRGANOXPS802FD(以上、BASF・ジャパン社製)、アデカスタブAO−503、アデカスタブAO−412S(以上、旭電化工業社製)、SumilizerTPL−R、SumilizerTPM、SumilizerTPS、SumilizerTP−D、SumilizerTL、SumilizerMB(以上、住友化学社製)、DLTP「ヨシトミ」、DSTP「ヨシトミ」,DMTP「ヨシトミ」、DTTP「ヨシトミ」(以上、エーピーアイコーポレーション製)が挙げられる。
【0095】
ベンゾトリアゾール系酸化防止剤としては、ベンゾトリアゾール構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等が挙げられる。
【0096】
ベンゾトリアゾール系酸化防止剤として具体的には、トミソープ600(吉富ファインケミカル製)、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN P、TINUVIN328(以上、BASF・ジャパン社製)、VIOSORB583、VIOSORB590(共同薬品社製)が挙げられる。
【0097】
ベンゾフェノン系酸化防止剤としては、ベンゾフェノン構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等が挙げられる。
【0098】
ベンゾフェノン系酸化防止剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5スルフォベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−クロロベンゾフェノン、LA−51(以上、旭電化工業社製)等が挙げられる。その他ベンゾフェノン構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等が挙げられる。
【0099】
ベンゾフェノン系酸化防止剤として具体的には、トミソープ800(エーピーアイコーポレーション製)、LA−51(旭電化工業社製)が挙げられる。
【0100】
トリアジン系酸化防止剤としては、2,4−ビス(アリル)−6−(2−ヒドロキシフェニル)1,3,5−トリアジン等が挙げられる。その他トリアジン構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等が挙げられる。
【0101】
トリアジン系酸化防止剤として具体的には、CYASORB UV−1164(サンケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0102】
ヒドロキシルアミン系酸化防止剤として、具体的には、IRGASTABFS042(以上、BASF・ジャパン社製)等の化合物が挙げられる。
【0103】
サルチル酸エステル系酸化防止剤としては、サリチル酸フェニル、サリチル酸p−オクチルフェニル、サリチル酸p−tertブチルフェニル等が挙げられる。その他サルチル酸エステル構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等が挙げられる。
【0104】
これらの酸化防止剤は、1種を単独で、または必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0105】
また酸化防止剤の含有量は、黒色組成物の固形分重量を基準として、0.001〜5.0重量%の場合、紫外線で硬化させる場合に十分な感度が得られ、尚且つ光・熱による塗膜の劣化を抑制することが可能であるため好ましい。
【0106】
<連鎖移動剤>
さらに、本発明の感光性黒色組成物には、感度を調整する目的で連鎖移動剤を添加することができる。連鎖移動剤としては多官能チオールが好ましい。多官能チオールは、チオール基を2個以上有する化合物であればよく、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール 、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等が挙げられる。これらの多官能チオールは、1種または2種以上混合して用いることができる。
【0107】
連鎖移動剤の含有量は、感光性黒色組成物の全固形分量を基準として0.1〜30重量%が好ましく、より好ましくは1〜20重量%である。0.1質量%未満では多官能チオールの添加効果が不充分であり、30質量%を越えると感度が高すぎて逆に解像度が低下する場合がある。
【0108】
<溶剤>
黒色組成物には、色素を充分に色素担体中に分散させ、ガラス基板等の透明基板上に乾燥膜厚が0.2〜5μmとなるように塗布してフィルタセグメントやブラックマトリクスを形成することを容易にするために溶剤を含有させることができる。溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いることができる。
【0109】
<黒色組成物の製造方法>
黒色組成物は、各有機顔料またはカーボンブラックと色素誘導体(C)を、バインダ樹脂などの色素担体および/または溶剤中に、好ましくは分散助剤と一緒に、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、アトライター等の各種分散手段を用いて微細に分散して製造することができる。また、各有機顔料とカーボンブラックは、同時に色素担体に分散しても良いし、別々に色素担体に分散したものを混合しても良い。樹脂型顔料分散剤、界面活性剤等の分散助剤は、有機顔料やカーボンブラックの分散に優れ、分散後の顔料の再凝集を防止する効果が大きい。
【0110】
樹脂型顔料分散剤としては、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、樹脂や溶剤と相溶性のある部位とを有し、顔料に吸着して顔料が樹脂や溶剤へ分散するのを安定化する働きをするものである。樹脂型顔料分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩などの油性分散剤、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、燐酸エステル系等が用いられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0111】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0112】
樹脂型分散剤、界面活性剤を添加する場合には、有機顔料およびカーボンブラックの合計100重量部に対し、好ましくは0.1〜55重量部、さらに好ましくは0.1〜45重量部である。樹脂型分散剤、界面活性剤の配合量が、0.1重量部未満の場合には、添加した効果が得られ難く、含有量が55重量部より多いと、過剰な分散剤により分散に影響を及ぼすことがある。
【0113】
黒色組成物には、組成物の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができ、また、透明基板との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。
【0114】
貯蔵安定剤としては、例えばベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸およびそのメチルエーテル、t−ブチルピロカテコール、テトラエチルホスフィン、テトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩等が挙げられる。
【0115】
シランカップリング剤としては、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等が挙げられる。
【0116】
黒色組成物は、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子および混入した塵の除去を行うことが好ましい。
【0117】
《黒色塗膜》
本発明の黒色組成物により形成される黒色塗膜は、ガラス基板・プラスチック基板などの基材上に、スクリーン印刷などの印刷法やフォトリソグラフィー法により形成し、遮光膜として用いることができる。
特に、タッチパネルのカバーガラスや保護フィルム基板の外周部に枠状に形成することにより遮光性・美観に優れたタッチパネルの加飾用塗膜として使用することができる。
【0118】
黒色塗膜の乾燥膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜5μmである。塗膜を乾燥させる際には、減圧乾燥機、コンベクションオーブン、IRオーブン、ホットプレート等を使用してもよい。
【0119】
フォトリソグラフィー法による黒色塗膜の形成は、下記の方法で行う。すなわち、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材として調製した感光性黒色組成物を、基材上に、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が0.2〜10μmとなるように塗布する。必要により乾燥された膜には、この膜と接触あるいは非接触状態で設けられた所定のパターンを有するマスクを通して紫外線露光を行う。その後、溶剤またはアルカリ現像液に浸漬するか、もしくはスプレーなどにより現像液を噴霧して未硬化部を除去し所望のパターンを形成することができる。さらに、着色レジスト材の重合を促進するため、必要に応じて加熱を施すこともできる。フォトリソグラフィー法によれば、印刷法より位置合わせ精度の高い黒色塗膜が形成できる。
【0120】
現像に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
現像処理方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
なお、紫外線露光感度を上げるために、上記着色レジスト材を塗布乾燥後、水溶性あるいはアルカリ可溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し、酸素による重合阻害を防止する膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。
【実施例】
【0121】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中、「部」および「%」は、「重量部」および「重量%」をそれぞれ表す。
【0122】
また、樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定方法は以下の通りである。
【0123】
(樹脂の重量平均分子量(Mw))
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
【0124】
続いて、実施例および比較例で用いたバインダ樹脂溶液の製造方法、有機顔料の微細化方法、色素誘導体の構造、有機顔料および色素誘導体の光透過率測定方法、顔料分散体、およびカーボンブラック分散体の製造方法について説明する。
【0125】
<バインダ樹脂溶液の製造方法>
(アクリル樹脂溶液1の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管および撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン196部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管より、ベンジルメタクリレート20.0部、n−ブチルメタクリレート17.2部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12.9部、メタクリル酸12.0部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)20.7部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、アクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2部をサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにPGMACを添加してアクリル樹脂溶液1を調製した。重量平均分子量(Mw)は26000であった。
【0126】
(アクリル樹脂溶液2の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管および撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン196部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管より、ベンジルメタクリレート20.0部、n−ブチルメタクリレート7.2部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12.9部、メタクリル酸22.0部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)20.7部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、アクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2部をサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにPGMACを添加してアクリル樹脂溶液2を調製した。重量平均分子量(Mw)は25000であった。
【0127】
(アクリル樹脂溶液3の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管および撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン207部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管より、メタクリル酸20部、ベンジルメタクリレート20部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成社製アロニックスM110)20部、メタクリル酸メチル25部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート8.5部、及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル1.33部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、共重合体樹脂溶液を得た。次に得られた共重合体溶液全量に対して、窒素ガスを停止し乾燥空気を1時間注入しながら攪拌したのちに、室温まで冷却した後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製カレンズMOI)6.5部、ラウリン酸ジブチル錫0.08部、シクロヘキサノン26部の混合物を70℃で3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間反応を継続し、アクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2部をサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液3を調製した。重量平均分子量(Mw)は18000であった。
【0128】
<微細化顔料の製造方法>
(赤色微細化顔料(R1))
ジケトピロロピロール系赤色顔料C.I.ピグメントレッド 254(PR254、BASF社製「IRGAZIN RED 2030」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8000部の温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、190部のジケトピロロピロール系の微細化顔料(R1)を得た。
【0129】
(赤色微細化顔料(R2))
アントラキノン系赤色顔料C.I.ピグメントレッド 177(PR177、BASF社製「クロモフタルレッド A2B」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8000部の温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、190部のアントラキノン系の微細化顔料(R2)を得た。
【0130】
(黄色微細化顔料(Y1))
イソインドリノン系黄色顔料3C.I.ピグメントイエロー 139(PY139、BASF社製「PALIOTOL YELLOW D1819」)100部、粉砕した食塩800部、及びジエチレングリコール180部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で4時間混練した。この混合物を温水3000部に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩及び溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、96部の微細化顔料(Y1)を得た。
【0131】
(黄色微細化顔料(Y2))
イソインドリン系黄色顔料C.I.ピグメントイエロー 185(PY185、BASF社製「パリオゲンイエロー D1155」)100部、粉砕した食塩800部、及びジエチレングリコール180部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で4時間混練した。この混合物を温水3000部に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩及び溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、96部の黄色微細化顔料(Y2)を得た。
(黄色微細化顔料(Y3))
アゾ系黄色顔料C.I.ピグメントイエロー 150(PY150、ランクセス社製「E−4GN」)100部、粉砕した食塩500部、及びジエチレングリコール250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で4時間混練した。この混合物を温水5000部に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩及び溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、490部の微細化顔料(Y3)を得た。
【0132】
(黄色微細化顔料(Y4))
キノフタロン系黄色顔料C.I.ピグメントイエロー 138(PY138、BASF社製「パリオトールイエロー K0960−HD」):500部、塩化ナトリウム:500部、およびジエチレングリコール:250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、120℃で2時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、490部の微細化顔料(Y4)を得た。
【0133】
(緑色微細化顔料(G1))
フタロシアニン系緑色顔料C.I.ピグメントグリーン 36(PG36、トーヨーカラー株式会社製「リオノールグリーン 6YK」)500部、塩化ナトリウム1500部、及びジエチレングリコール250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で8時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、緑色微細化顔料(G1)を得た。
【0134】
(緑色微細化顔料(G2))
フタロシアニン系緑色顔料C.I.ピグメントグリーン 7(PG7、トーヨーカラー株式会社製「リオノールグリーン 6YK」)500部、塩化ナトリウム1500部、及びジエチレングリコール250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で8時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、緑色微細化顔料(G2)を得た。
【0135】
(青色微細化顔料(B1))
フタロシアニン系青色顔料C.I.ピグメントブルー 15:6(PB15:6、トーヨーカラー株式会社製「LIONOL BLUE ES」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8000部の温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、青色微細化顔料(B1)を得た。
【0136】
(青色微細化顔料(B2))
フタロシアニン系青色顔料C.I.ピグメントブルー 15:3(PB15:3、トーヨーカラー株式会社製「LIONOL BLUE FG−7351)200部、塩化ナトリウム600部、およびジエチレングリコール600部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8000部の温水に投入し、120℃に加熱しながら8時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、190部の青色微細化顔料(B2)を得た。
【0137】
<微細化顔料及び色素誘導体の光透過率測定方法>
微細化顔料または表1に記載の色素誘導体10部をアクリル樹脂溶液1の50部と混合し、メトキシプロピルアセテート20部を均一に撹拌混合した後、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)で5時間分散した。得られた組成物を5μmのフィルタで濾過した分散体をバーコーターにてガラス基板に塗工し、400〜700nmにおける透過率を顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP100」)を用いて測定し、透過率が最小となる波長(λmin)を求めた。λminの値を表2に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
<顔料分散体の製造方法>
(顔料分散体GP−1の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)で5時間分散した。その後メトキシプロピルアセテートを30.0部加えた後、5μmのフィルタで濾過し、顔料分散体GP−1を得た。
緑色微細化顔料(G1) :12.6部
C.I.ピグメントグリーン 36
色素誘導体C2 : 1.4部
アクリル樹脂溶液1 :30.0部
メトキシプロピルアセテート :26.0部
【0141】
(顔料分散体GP−2、YP1〜5、BP−1〜3、KP−1、RP−1〜2の作製)
表3記載の組成、および配合量(重量部)に変更した以外は、顔料分散体GP−1と同様にして、顔料分散体GP−2、YP1〜5、BP−1〜3、KP−1、RP−1〜2を得た。
【0142】
【表3】
【0143】
<カーボンブラック分散体の製造方法>
(カーボンブラック分散体CP−1の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)で5時間分散した。その後メトキシプロピルアセテートを30.0部加えた後、5μmのフィルタで濾過し、顔料分散体CP−1を得た。
カーボンブラック(CB−2) :12.6部
CABOT社製「Regal250R」
色素誘導体C2 : 1.4部
アクリル樹脂溶液1 :30.0部
メトキシプロピルアセテート :26.0部
【0144】
(カーボンブラック分散体CP−2〜8の作製)
表5記載の組成、および配合量(重量部)に変更した以外は、顔料分散体CP−1と同様にして、カーボンブラック分散体CP−2〜8を得た。なお、用いたカーボンブラックの詳細を表4にまとめた。
【0145】
【表4】
【0146】
【表5】
【0147】
[実施例1]
(感光性黒色組成物BLK−1の製造)
下記の混合物(合計100部)を均一になるように攪拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過して、感光性黒色組成物BLK−1を得た。
顔料分散体RP−1(PR254) :16.32部
顔料分散体BP−1(PB15:6) :16.32部
カーボン分散体CP−9 :15.74部
アクリル樹脂溶液2 :20.85部
エチレン性不飽和単量体 : 3.24部
東亞合成株式会社製「アロニクスM402」
(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ペンタアクリレート混合物)
光重合開始剤 : 0.90部
BASF社製「イルガキュア OXE−02」
(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H
−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム))
レベリング剤溶液 : 1.50部
東レ・ダウコーニング社製「FZ−2122」
((不揮発分100重量%))1部をシクロヘキサノン99部で希釈した溶液
メトキシプロピルアセテート :25.14部
【0148】
[ 実施例2 〜 2 6 、比較例1 〜 7 ]
( 感光性黒色組成物B L K − 2 〜 3 3 の製造)
表6 、および7 記載の組成、および配合量( 重量部) に変更した以外は、感光性黒色組成物B L K − 1 と同様にして、感光性黒色組成物BLK−2〜33を得た。
ただし、実施例19、20、26は参考例である。
【0149】
【表6】
【0150】
【表7】
【0151】
表6、および表7における略語についてを下記に記す。
光重合開始剤としては、BASF社製「イルガキュア OXE−02」(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム))またはBASF社製「イルガキュア369」(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン)を用い、表6中のエチレン性不飽和単量体としては、東亞合成株式会社製「アロニクスM402」(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ペンタアクリレート混合物)、東亞合成株式会社製「TO-1382」(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ならびにジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびこはく酸とのモノエステル化物の混合物)、レベリング剤溶液としては、東レ・ダウコーニング社製「FZ−2122」(不揮発分100重量%))1部をシクロヘキサノン99部で希釈した溶液である。
【0152】
また、表6、および表7中のW1+W2、W2/W3は、黒色組成物中の固形分の重量を基準(1.0)としたときの、光重合開始剤(E)、エチレン性不飽和単量体(F)、およびバインダ樹脂(D)の重量比を、それぞれW1、W2、およびW3としたときの値である。
【0153】
<光透過率測定評価>
得られた黒色組成物の膜厚1.0μmとなる条件で塗膜を形成したときに、波長400〜700nmの光線透過率の最大値(Tmax)、および光透過率の標準偏差(σ(T))および、用いた有機顔料および色素誘導体の光透過率を表8に示す。
【0154】
[塗膜作製]
実施例・比較例の黒色組成物を、100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、次に70℃のオーブンで20分乾燥し、超高圧水銀ランプを用いて、実施例18、21〜23を除き積算露光量150mJ/cm
2(実施例18、21〜23は300mJ/cm
2)で紫外線露光を行い、23℃のアルカリ現像液で現像を行いイオン交換水で洗浄し、ついで220℃で30分間加熱、放冷後し、膜厚1.0μmの塗膜基板を得た。
【0155】
[光透過率測定]
得られた塗膜基板について、顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP100」)を用いて波長400〜700nmの光透過率を測定し光透過率の最大値(Tmax)と標準偏差σ(T)を求めた。
【0156】
[耐熱性の評価]
実施例・比較例の黒色組成物を、100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、次に70℃のオーブンで20分乾燥し、超高圧水銀ランプを用いて、実施例18、21〜23を除き積算露光量150mJ/cm
2(実施例18、21〜23は300mJ/cm
2)で紫外線露光を行い、23℃のアルカリ現像液で現像を行いイオン交換水で洗浄し、ついで220℃で30分間加熱、放冷後し、膜厚1.0μmの塗膜基板を得た。得られた塗膜基板について、260℃のオーブンで60分加熱した後、顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP100」)を用いて波長400〜700nmの光透過率を測定し、光透過率の最大値(Tmax2)を求めた。この(Tmax2)と(Tmax)とを比較し、X=|(Tmax2)−(Tmax)|/(Tmax)の値を求めた。Xの値が小さいほど、耐熱性が良好であるといえる。Xの値を表8に示す。
【0157】
[(T1)〜(T3)]
(T1)〜(T3)は、波長400nm〜700nmにおける光透過率が最小となる波長を有する微細化顔料または、色素誘導体をまとめたものである。
【0158】
【表8】
【0159】
<感光性着色組成物の評価>
実施例および比較例で得られた感光性黒色組成物について、安定性、残膜感度、および直線性、を下記のように評価した。評価結果を表9に示す。
【0160】
[安定性の評価]
実施例および比較例で得られた黒色組成物について、作製後24時間後の粘度(V1)と23度の条件で30日保存後の粘度(V2)を評価し、粘度変化率(V2−V1)/V1を評価した。粘度変化率≦0.10であれば安定性良好(○)、粘度変化率>0.10であれば安定性不良(×)とした。
【0161】
[紫外線感度(残膜率)・直線性評価(PW1-PW2)]
実施例および比較例で得られた黒色組成物を、100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基板上に塗布し、70℃で20分乾燥したあとの膜厚が、2.5μmとなる塗膜を作製した。
超高圧水銀ランプを用いて、フォトマスクを介し積算光量150mJ/cm
2と300mJ/cm
2の2種の露光量で紫外線露光を行ったあと、未露光部分を23℃のアルカリ現像液で現像を行いイオン交換水で洗浄した。作製したパターン形成基板のパターン形成部分の膜厚(t1)を塗工膜厚(2.5μm)で割った値(残膜率)を求めた。残膜率が0.90以上の場合は紫外線により光重合単量体を十分に硬化させることができたと判定し、より優れた組成物であるということがいえる。
また、上記の方法で得られた黒色パターン形成部分の直線性を顕微鏡にて確認し、直線性の良否を評価した。直線性の良否は顕微鏡にて
図1に示すパターンの線幅の最大値(PW1)と最小値(PW2)の差PW1−PW2を評価することにより判定した。PW1−PW2の優劣により下記の判定基準により直線性を評価した。
PW1−PW2≦2μmの場合は精密加工されたタッチパネルの電極配線パターンを精度良く被覆することができると判定し、より優れた組成物であるということがいえる。
【0162】
[遮光性・美観の評価]
実施例および比較例で得られた黒色組成物を、100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、次に70℃のオーブンで20分乾燥し、超高圧水銀ランプを用いて、実施例18・21〜23を除き積算露光量150mJ/cm
2(実施例18、21〜23は300mJ/cm
2)で紫外線露光を行い、23℃のアルカリ現像液で現像を行いイオン交換水で洗浄し、ついで220℃で30分間加熱、放冷後し、膜厚2.5μmの塗膜基板を得た。
また、得られた塗膜の裏面から日亜化学社製LED光源NSPW300BSを点灯・消灯させたときの視認性・美観を下記の判定基準により評価した。なお、評価は白色蛍光灯を点灯した照度770Lxの室内環境にて実施した。
遮光性○:LED光源消灯時にLED光源が殆ど見えず良好な遮光性が得られている。
遮光性△:LED光源消灯時にLED光源がわずかに見える。
(実用上は問題ない遮光性が得られている。)
遮光性×:LED光源消灯時にもLED光源が見える。
美観○:LED光源点灯・消灯時の色味の差が小さく良好な美観が得られている。
美観△:LED光源点灯・消灯時の色味の差が僅かに見える。
(実用上は問題ない美観が得られている。)
美観×:LED光源点灯・消灯時の色味の差が大きく、点灯時に色が大きく異なって見える。
【0163】
【表9】
【0164】
表9に示すように、カーボンブラック(A)、少なくとも2種類の有機顔料(B)、下記一般式(1)で表される色素誘導体(C)、およびバインダ樹脂(D)を含有する黒色組成物であって、かつ該黒色組成物を膜厚1.0μmとなる条件で塗膜を形成したときに、波長400〜700nmの光透過率の最大値が10%以下であり、波長400〜700nmの光透過率の標準偏差が3%未満である実施例1〜26の黒色組成物は、増粘率が低く安定性が良好であり、遮光性・美観とも優れた黒色塗膜を得ることができた。
【0165】
なかでも、黒色組成物が、式(T1)、(T2)、および(T3)を満たす有機顔料(B)および色素誘導体(C)から選ばれる少なくとも3種を含み、少なくとも1つは色素誘導体(C)である実施例1〜18、21〜26の黒色組成物が特に美観に優れていた。
【0166】
また、カーボンブラック(A)が、粒子径の異なる少なくとも2種類のカーボンブラックを含み、平均一次粒子径が最小のカーボンブラック(a1)の平均一次粒子径をD1、平均一次粒子径が最大のカーボンブラック(a2)の平均一次粒子径をD2としたとき、8nm≦D1≦20nm、かつ21nm≦D2≦40nmである実施例1〜2、4〜7の黒色組成物の遮光性は、同じ有機顔料を組み合わせて作製した実施例3、8〜9の黒色組成物の遮光性よりも高く、良好な結果であった。
【0167】
また、光重合開始剤(E)、およびエチレン性不飽和単量体(F)を含み、黒色組成物中の固形分の重量を基準(1.0)としたときの、光重合開始剤(E)、エチレン性不飽和単量体(F)、およびバインダ樹脂(D)の重量比を、それぞれW1、W2、およびW3としたとき、0.10≦W1+W2≦0.45、0.10≦W2/W3≦1.10である実施例1〜20、22〜23の黒色組成物においては、W1+W2>0.45となる実施例24〜25の黒色組成物と比較して形状が良好であり、W2/W3<0.10となる実施例21の黒色組成物と比較して感度が良好であった。
【0168】
また、光重合開始剤としてオキシムエステル系化合物を使用した実施例1〜17、19〜23、26の黒色組成物においてはオキシムエステル系化合物を使用していない実施例18、24〜25の黒色組成物と比較して形状が良好であった。
【0169】
さらに、実施例7の黒色組成物を基に酸化防止剤を添加した実施例26の黒色組成物については、実施例7の黒色組成物と比較してXの値が小さく耐熱性が優れていた。
【0170】
一方、一般式(1)で現される色素誘導体(C)を含まない比較例1,2、6、7の黒色組成物においては安定性が悪く、塗膜の分光透過率の標準偏差σ(T)≧3%となり美観評価において光源点灯時に塗膜が紫色に見え美観が悪かった。
少なくとも2種類の有機顔料(B)を含まない比較例3の黒色組成物においては、光源点灯時に塗膜が赤みがかっており美観が悪く、光源消灯時も光源が見え遮光性が悪かった。
カーボンブラック(A)を含まない比較例4の黒色組成物においては、遮光性が小さく、また塗膜のσ(T)≧3%となり美観評価において光源点灯時に塗膜が紫色に見え美観が悪かった。
また有機顔料およびカーボンブラックの濃度が低くTmax≦10%を満たさない比較例5の黒色組成物においても光源点灯時に紫色に見え美観が悪く、光源消灯時も光源が見え遮光性が悪かった。
【0171】
以上の結果より、本発明の黒色組成物により、遮光性に優れるとともに、表示デバイスとして使用するに当たり、美観に優れた色味の、タッチパネル加飾用に適した高品質の黒色塗膜であることが確認できた。