特許第6167854号(P6167854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6167854蓄電装置用電極及び蓄電装置用電極組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167854
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】蓄電装置用電極及び蓄電装置用電極組立体
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20170713BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170713BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20170713BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20170713BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20170713BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20170713BHJP
   H01M 4/13 20100101ALN20170713BHJP
【FI】
   H01M4/02 Z
   H01M4/36 D
   H01G11/06
   H01G11/24
   H01G11/26
   H01G11/30
   !H01M4/13
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-227309(P2013-227309)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-88385(P2015-88385A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岡村 建志
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−131298(JP,A)
【文献】 特開2013−073924(JP,A)
【文献】 特開2007−179864(JP,A)
【文献】 特開2008−251250(JP,A)
【文献】 特開2010−192365(JP,A)
【文献】 特開2010−287472(JP,A)
【文献】 特開2009−181756(JP,A)
【文献】 特開2007−157694(JP,A)
【文献】 特開2010−021113(JP,A)
【文献】 特表2013−543221(JP,A)
【文献】 特開平11−025955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02
H01G 11/06
H01G 11/24
H01G 11/26
H01G 11/30
H01M 4/36
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の集電体と、
前記集電体の少なくとも一方の面上に形成され、第1の活物質を主成分とする第1層と、前記第1層上に形成され、前記第1の活物質と、前記第1の活物質より小さな粒径の第2の活物質とを主成分とし、前記第1の活物質の間に前記第2の活物質が存在する第2層と、を有する活物質層と、
前記活物質層上に形成され、前記第1の活物質より粒径の小さな粒子を主成分とする保護層とを備え
前記保護層は、絶縁性のセラミック粒子を主成分とすることを特徴とする蓄電装置用電極。
【請求項2】
前記活物質層と前記保護層との間に、前記第2の活物質を主成分とする中間層が存在する請求項1に記載の蓄電装置用電極。
【請求項3】
前記第1の活物質は、粒径が前記第2の活物質の粒径の十倍〜百倍程度であり、前記第2の活物質は、粒径が前記保護層の粒子の粒径と同程度である請求項1に記載の蓄電装置用電極。
【請求項4】
正極活物質層を備えた正極をなす電極と、負極活物質層を備えた負極をなす電極と、両電極間に介在する樹脂製セパレータと、を備えた蓄電装置用電極組立体において、
少なくとも一方の前記電極は、活物質層として、第1の活物質を主成分とする第1層と、前記第1層上に配置され、前記第1の活物質と、前記第1の活物質より小さな粒径の第2の活物質とを主成分とし、前記第1の活物質の間に前記第2の活物質が存在する第2層と、を有し、
前記活物質層の上に、前記第1の活物質より粒径の小さな粒子を主成分とする保護層を有し、
前記保護層の主成分をなす粒子は、絶縁性のセラミック粒子であることを特徴とする蓄電装置用電極組立体。
【請求項5】
前記第1の活物質と前記第2の活物質とは、同一の材質にて粒径の異なる請求項に記載の蓄電装置用電極組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置用電極及び蓄電装置用電極組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタのような蓄電装置は再充電が可能であり、繰り返し使用することができるため電源として広く利用されている。従来から、EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)などの車両に搭載される蓄電装置としては、リチウムイオン二次電池や、ニッケル水素二次電池などがよく知られている。これらの二次電池では、例えば、金属箔の表面に活物質を含むペースト状又はスラリー状の活物質合剤を塗布して活物質層を形成した正極及び負極の電極を、間に多孔質かつ樹脂製のセパレータを介在させた状態で積層又は捲回するなどして電極組立体を形成するとともに、該電極組立体をケースに収容している。
【0003】
従来より、電極組立体に関し、正極及び負極間の短絡を防止する絶縁構造について、より耐熱性を向上させる取組みがなされていた。その一つとして、正極と負極との間に、樹脂製セパレータに加え、絶縁性のセラミック層を配置することが提案されている。例えば、特許文献1のセパレータは、多孔性樹脂基材と、その少なくとも第1面に付与された絶縁性のセラミックス層とを含む。多孔性樹脂基材は、内部層としての多孔性ポリエチレン層と、外部層としての第1及び第2の多孔性ポリプロピレン層とを有し、セラミック層は少なくとも無機フィラーとバインダとを含む。多孔性樹脂基材は、セラミックス層との界面部分に表面改質層を含む。表面改質層は、平均孔径が0.12μm以下の、空孔を有する。
【0004】
また、セパレータを電極と独立して構成せずに、図5に示すように、電極40として、金属箔41の表面に形成された活物質層42上に微小なセラミック粒子からなるセラミック層43を形成したものもある。例えば、多孔性電極と、この電極上に形成された金属酸化物粒子からなるセパレータ層とを有するセパレータ電極ユニットも提案されている。(特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−71009号公報
【特許文献2】特表2006−505100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂製のセパレータは、温度の上昇により溶融し、内部でイオンの通路となっている空孔を閉鎖する、いわゆるシャットダウン機能を有する。このため、特許文献1の如く、樹脂製のセパレータを残し、セラミック層と組合せた絶縁構造が多数提案されている。セラミック層を樹脂製のセパレータと組合せる場合、電解液はセパレータに保持されるため、蓄電装置の高容量化を図る上でも、セラミック層は、なるべく薄くすることが望まれる。セラミック層を薄くする方法として、例えば、セラミック粒子の粒径を小さくすることが考えられる。ところで、電極40の活物質層42の表面にセラミック層43が一体に形成された構成では、セラミック粒子の粒径が活物質の粒径に比べて小さすぎる場合、セラミック層43を薄くすると、図6に模式的に示すように、セラミック層43の一部に凹部44が生じる。凹部44は、活物質層42が露出したり、セラミック層43の厚さが極端に薄い状態となったりした箇所である。そのため、凹部44が生じると、蓄電装置の使用時に凹部44に電流が集中し蓄電装置の性能が低下したり、蓄電装置の寿命が短くなったりする。
【0007】
凹部44が生じるのは、セラミック粒子の粒径が活物質の粒径に比べて小さすぎる場合、セラミック粒子の一部が活物質層42を構成する活物質の間に入り込むためである。
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、電極を構成する活物質層上に絶縁性粒子を主成分とする保護層を薄く設けても、保護層の凹部の発生が抑制でき、蓄電装置の性能低下を防止することができる蓄電装置用電極及び蓄電装置用電極組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する蓄電装置用電極は、シート状の集電体と、前記集電体の少なくとも一方の面上に形成され、第1の活物質を主成分とする第1層と、前記第1層上に形成され、前記第1の活物質と、前記第1の活物質より小さな粒径の第2の活物質とを主成分とし、前記第1の活物質の間に前記第2の活物質が存在する第2層と、を有する活物質層と、前記活物質層上に形成され、前記第1の活物質より粒径の小さな粒子を主成分とする保護層とを備え、前記保護層は、絶縁性のセラミック粒子を主成分とする。ここで、「主成分とする」とは、主成分の他にバインダ等の他の成分を含んでいることを意味する。
【0009】
この構成によれば、電極を構成する活物質層は、一般的な活物質層を構成する第1の活物質を主成分とする第1層上に、第1の活物質と、第1の活物質より小さな粒径の第2の活物質とを主成分とし、第1の活物質の間に第2の活物質が存在する第2層を有する。そのため、保護層が形成される活物質層の表面側における隣接する活物質の隙間が、活物質層が第1の活物質のみで構成された場合に比べて小さくなり、保護層を構成する粒子の一部が活物質層の表面部分の活物質の隙間に入り込むことが防止される。その結果、保護層を薄くしても、活物質層の一部が露出したり、保護層の一部の厚さが極端に薄い状態となったりする箇所がなくなる。したがって、電極を構成する活物質層上に粒子を主成分とする保護層を薄く設けても、保護層の凹部の発生が抑制でき、蓄電装置の性能低下を防止することができる。また、保護層の主成分を絶縁性のセラミック粒子以外の粒子で構成することも可能であるが、絶縁性のセラミック粒子とすれば、必要な性能や大きさの粒子を容易に入手することができる。
【0010】
前記活物質層と前記保護層との間に、前記第2の活物質を主成分とする中間層が存在することが好ましい。活物質層上に直接保護層が存在する構成では、第2層の表面の凹凸が直接保護層の表面に反映されるため、第2層を構成する第2の活物質が、第2層を構成する第1の活物質の隙間を支障のない大きさとなる状態で埋めるように形成する必要がある。しかし、活物質層と保護層との間に、第2の活物質を主成分とする中間層が存在する場合は、第2層の表面に大きな隙間が存在しても、中間層を形成する際にその隙間が中間層を構成する第2の活物質で埋められるため、保護層は均一に形成される。また、第1の活物質と第2の活物質とを同一の材質とした場合、中間層は第1の活物質と同じ材質よりなる第2の活物質を主成分としているため、充放電の為の化学反応において、異なる化学反応が混在することにより生じる悪影響を回避することができる。
【0012】
前記第1の活物質は、粒径が前記第2の活物質の粒径の十倍〜百倍程度であり、前記第2の活物質は、粒径が前記保護層の粒子の粒径と同程度であることが好ましい。この構成によれば、保護層を形成する際、第2層を構成する第1の活物質の隙間に保護層の粒子が入り込むことが防止され、保護層を薄く形成しても、保護層が均一に形成されて蓄電装置の性能低下を防止することができる。
【0013】
蓄電装置用電極組立体は、正極活物質層を備えた正極をなす電極と、負極活物質層を備えた負極をなす電極と、両電極間に介在する樹脂製セパレータと、を備えた蓄電装置用電極組立体において、少なくとも一方の前記電極は、活物質層として、第1の活物質を主成分とする第1層と、前記第1層上に配置され、前記第1の活物質と、前記第1の活物質より小さな粒径の第2の活物質とを主成分とし、前記第1の活物質の間に前記第2の活物質が存在する第2層と、を有し、前記活物質層の上に、前記第1の活物質より粒径の小さな粒子を主成分とする保護層を有し、前記保護層の主成分をなす粒子は、絶縁性のセラミック粒子である。この構成によれば、少なくとも一方の電極は、活物質層として、第1の活物質を主成分とする第1層と、第1層上に配置され、第1の活物質と、第1の活物質より小さな粒径の第2の活物質とを主成分とし、第1の活物質の間に第2の活物質が存在する第2層と、を有する。そのため、保護層が形成される活物質層の表面側における隣接する活物質の隙間が、活物質層が第1の活物質のみで構成された場合に比べて小さくなり、保護層を構成する粒子の一部が活物質層の表面部分の活物質の隙間に入り込むことが防止される。その結果、保護層を薄くしても、活物質層の一部が露出したり、保護層の一部の厚さが極端に薄い状態となったりする箇所がなくなる。したがって、電極を構成する活物質層上に粒子を主成分とする保護層を薄く設けても、保護層の凹部の発生が抑制されて蓄電装置の性能低下を防止することができる。また、保護層の主成分を絶縁性のセラミック粒子以外の粒子で構成することも可能であるが、絶縁性のセラミック粒子とすれば、必要な性能や大きさの粒子を容易に入手することができる。
【0015】
前記第1の活物質と前記第2の活物質とは、同一の材質にて粒径の異なることが好ましい。この構成によれば、充放電の為の化学反応において、異なる化学反応が混在することにより生じる悪影響を回避することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電極を構成する活物質層上に粒子を主成分とする保護層を薄く設けても、保護層の凹部の発生が抑制でき、蓄電装置の性能低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は一実施形態の帯状電極を幅方向に切断した断面図、(b)は部分拡大模式図。
図2】製造工程の一部を示す概略図。
図3】電極組立体の正極、負極及びセパレータの関係を示す概略斜視図。
図4】別の実施形態の電極の部分拡大模式図。
図5】従来技術の電極の断面図。
図6】その拡大部分概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を集電体となる幅広の金属箔上に活物質層を形成した後、その金属箔を幅方向において長手方向に沿って半分に切断して2枚の帯状電極を製造するための、2条取り用の負極用の帯状電極に具体化した一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
【0019】
図1(a)に示すように、蓄電装置用電極としての負極用の帯状電極10は、シート状の集電体としての帯状の金属箔11と、金属箔11の少なくとも一方の面上に形成された活物質層12と、活物質層12上に形成された保護層13とを備えている。活物質層12は、帯状電極10の幅方向両側に活物質合剤非塗布部14が存在するように金属箔11上に形成されている。活物質層12と保護層13との間に、中間層15が存在する。なお、この実施の形態では、活物質層12は、金属箔11の両面上に形成されている。
【0020】
図1(b)に示すように、活物質層12は、第1の活物質16aを主成分とする第1層16と、第1層16上に形成された第2層17とを備えている。第2層17は、第1の活物質16aと、第1の活物質16aより小さな粒径の第2の活物質17aとを主成分とし、第1の活物質16aの間に第2の活物質17aが存在する。第2層17は、可能な限り、第1の活物質16aが活物質層12の厚さ方向に重ならない状態で層を成すように配置され、第2の活物質17aは、第2層17を構成する隣り合う第1の活物質16aの隙間に存在する。
【0021】
第1の活物質16a及び第2の活物質17aとしてカーボン粒子が使用されている。即ち、第1の活物質16a及び第2の活物質17aは同じ材質よりなる。第1の活物質16aの粒径は、第2の活物質17aの粒径の十倍〜百倍程度が好ましい。例えば、第1の活物質16aは、粒径(平均粒径)が、5〜50μmであり、好ましくは、15〜40μmである。第2の活物質17aは、粒径(平均粒径)が、300〜700nmであり、好ましくは、400〜600nmである。ここで、本明細書における「平均粒径」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察される平均粒径を意味する。
【0022】
保護層13は、第1の活物質16aより粒径の小さな、絶縁性を有し、耐熱性の高い材質よりなる粒子を主成分とする。この実施形態では保護層13は、セラミック粒子13aを主成分とし、セラミック粒子13aがバインダを介して結合されている。セラミック粒子13aの粒径(平均粒径)は、第2の活物質17aと同程度で、例えば、300〜700nmであり、好ましくは、400〜600nmである。同程度とは、±数%の範囲を意味する。
【0023】
中間層15は、第2層17と同じ材料で構成されている。活物質層12の第2層17は、保護層13を形成する際に、保護層13を構成するセラミック粒子13aが活物質層12に入り込むことを防止するために設けられるものである。中間層15により、セラミック粒子13aが活物質層12に入り込むことは防止されるが、本実施形態では、さらに、第2層17の上側に、小さな粒径の第2の活物質17aを主成分とした中間層15を配置する。
【0024】
前記のように構成された蓄電装置用電極としての負極用の帯状電極10は、従来技術と異なり、金属箔11上に形成された活物質層12が、第1の活物質16aを主成分とする第1層16だけでなく、第1層16上に形成された第2層17を有する。第2層17は、第1の活物質16aと、第1の活物質16aより小さな粒径の第2の活物質17aとを主成分とするため、活物質層12の金属箔11と反対側の面は、粒径が大きな第1の活物質16a同士が隣り合う場合と異なり、両者の隙間に第2の活物質17aが存在する。そのため、活物質層12上に形成された中間層15を構成する粒子が第1の活物質16aより粒径の小さな粒子であっても、粒子の一部が活物質層12の表面部分の活物質の隙間に入り込むことが防止される。したがって、中間層15上に第1の活物質16aより粒径の小さな粒子を主成分とする保護層13を薄く設けても、保護層13が均一に形成されて蓄電装置の性能低下を防止することができる。
【0025】
なお、活物質層12として粒径の異なる第1の活物質16a及び第2の活物質17aの2種類の活物質を使用せずに、粒径の小さな第2の活物質17aのみ使用して構成すれば、活物質層12上に保護層13を直接設けても、保護層13のセラミック粒子13aが活物質の隙間に入り込むことが防止される。しかし、活物質の粒径の変更は、活物質の表面積の変更を伴い、蓄電装置の性能や仕様に大きな影響を及ぼす。この為、仕様を定めて設計される蓄電装置において、活物質全体の粒径の変更は困難である。
【0026】
次に前記のように構成された帯状電極10の製造方法を説明する。
帯状電極10の製造方法は、帯状の金属箔11上に第1の活物質合剤を塗布して第1層16を形成する第1層形成工程と、第1層16上に第2層17を形成する第2層形成工程と、第2層17の上に保護層13を形成する保護層形成工程とを備えている。
【0027】
まず、第1層形成工程において、通常の活物質層形成工程と同様にして、第1の活物質16a、増粘剤、バインダ及び溶媒からなるスラリーが金属箔11上の所定位置に塗布された後、乾燥、プレスされて第1層16が形成された帯状金属箔がロール状に巻き取られる。
【0028】
第1の活物質16aは、負極用活物質として使用される物質であればよく、例えば、カーボン粉末が使用される。増粘剤としては、水に溶解して機能するカルボキシメチルセルロース(CMC)粉末が、バインダとしては、水に分散して機能するスチレンブタジエン共重合体(SBR)がそれぞれ使用され、溶媒として水が使用される。
【0029】
次に図2に示すように、第2層形成工程において、供給ロール20から繰り出され、両面に第1層16(図示せず)を有する帯状金属箔21に、第2層17の一部をなす第2の活物質17aを含む活物質合剤S1が第1のスリットダイ22から吐出されて、第1層16上に塗布される。活物質合剤S1が塗布された帯状金属箔21は、乾燥装置23を通過してある程度乾燥された後、一対のプレスローラ24により圧縮されて第2層17が形成される。
【0030】
活物質合剤S1は、第1層16を形成する際に使用された活物質合剤と基本的に同様に構成されるが、第1の活物質16aに代えて第2の活物質17aが使用されている点が異なり、増粘剤、バインダ及び溶媒として同じものが使用される。
【0031】
第1層16を構成する第1の活物質16aは、粒径が第2の活物質17aに比べて数十〜百倍程度あるため、第1層16を構成する隣り合う第1の活物質16a間には、図1(b)に示すように、第2の活物質17aが入り込むのに充分な大きさの隙間が存在する。そのため、第1層16上に第2の活物質17aを含む活物質合剤S1が塗布されると、活物質合剤S1中の一部の第2の活物質17aが、図1(b)に示すように、第1層16の金属箔11から離れた側の面側における第1の活物質16a間の隙間に侵入する。そして、第1層16上に、第1の活物質16aと第2の活物質17aとを主成分とし、第1の活物質16aの間に第2の活物質17aが存在する第2層17が形成される。また、本実施形態では、第2層形成工程において塗布される第2の活物質17aの量を、第2層において、第1の活物質16a間の隙間を埋める為に必要な量よりも多くすることで、第2層17上に第2の活物質17aを主成分とする中間層15が形成された状態になる。なお、図1(b)は模式図であり、第1の活物質16aとセラミック粒子13a及び第2の活物質17aとの大きさの比は正確ではない。
【0032】
その後、帯状金属箔21は第2のスリットダイ25と対応する位置を通過して第2のスリットダイ25により保護層形成材料S2が塗布される。そして、乾燥装置26を通過して乾燥された後、保護層13が形成され、その後、巻取ロール28に巻取られる。次に一方の面の第1層16上に第2層17、中間層15及び保護層13が形成された金属箔11が巻き取られた巻取ロール28を供給ロール20として使用して、前述と同様にその金属箔11の他方の面の第1層16上に第2層17、中間層15及び保護層13が形成されて2条取り用の負極用帯状電極が完成する。
【0033】
保護層13が形成される活物質層12の金属箔11と反対側の面には第2層17が存在し、第2層17は、第1の活物質16aと、第1の活物質16aより小さな粒径の第2の活物質17aとを主成分とし、第1の活物質16aの間に第2の活物質17aが存在する。そのため、保護層13が形成される活物質層12の表面側における隣接する活物質の隙間が、活物質層12が第1の活物質16aのみで構成された場合に比べて小さくなり、第1の活物質16aより粒径の小さな粒子が活物質層12内に入り込むことが防止される。
【0034】
この実施形態では、保護層13は、中間層15を介して第2層17上に形成される。保護層13は、第1の活物質16aよりも粒径の小さなセラミック粒子13aを主成分として形成されるが、第2層17を構成する第1の活物質16aの隙間には第2の活物質17aが存在する。そのため、保護層13を構成するセラミック粒子13aの一部が活物質層12の表面部分の活物質の隙間に入り込むことが防止される。そのため、保護層13を薄く形成しても、従来技術と異なり、保護層13の一部に活物質層12が露出したり、保護層13の厚さが極端に薄い状態となったりすることが防止される。
【0035】
さらに、第2層17のみでは、粒径の異なる第1の活物質16a及び第2の活物質17aが混在する為、表面に多少の凹凸が残る虞がある。しかし、第2層17と保護層13との間に、セラミック粒子13aと同程度の粒径の第2の活物質17aを主成分とする中間層が配置されている為、保護層形成時の下地となる表面の凹凸も抑制され、保護層を形成する上で有利である。
【0036】
この負極用帯状電極は、切断工程において、その長手方向に沿って2つに切断されて2枚の帯状電極片に形成された後、各帯状電極片が所定長さに切断されて捲回型電極組立体に使用される負極用の帯状電極に形成されたり、活物質合剤非塗布部14の一部でタブを形成するよう切断されて積層型電極組立体に使用される電極に形成されたりする。
【0037】
蓄電装置用電極組立体としての積層型の電極組立体を図3に示す。電極組立体30は、前記の負極用帯状電極から形成された負極31と、活物質として正極用活物質を使用して負極用帯状電極と同様に形成された正極用帯状電極から形成された正極32とが、両者の間にシート状の樹脂製セパレータ33が介在する状態で積層されて構成されている。負極31は、シート状の金属箔11の両面に活物質層及び保護層13を有し、活物質合剤非塗布部14の一部からタブ31aが突出するように形成されている。なお、活物質層は図示を省略している。
【0038】
即ち、電極組立体30は、正極活物質層を備えた正極32をなす電極と、負極活物質層を備えた負極31をなす電極と、両電極間に介在する樹脂製セパレータ33と、を備えている。また、電極は、活物質層として、第1の活物質を主成分とする第1層と、第1層上に配置され、第1の活物質と、第1の活物質より小さな粒径の第2の活物質とを主成分とし、第1の活物質の間に第2の活物質が存在する第2層と、を有し、活物質層の上に、第1の活物質より粒径の小さな粒子を主成分とする保護層13を有する。保護層13の主成分をなす粒子は、絶縁性のセラミック粒子である。第1の活物質と第2の活物質とは、同一の材質にて粒径が異なる。
【0039】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)蓄電装置用電極は、金属箔11と、金属箔11上に形成され、第1の活物質16aを主成分とする第1層16と、第1層16上に形成され、第1の活物質16aと、第1の活物質16aより小さな粒径の第2の活物質17aとを主成分とし、第1の活物質16aの間に第2の活物質17aが存在する第2層17とを有する活物質層12と、活物質層12上に形成され、第1の活物質16aより粒径の小さな粒子を主成分とする保護層13とを備えている。したがって、電極を構成する活物質層12上に、第1の活物質16aよりも粒径の小さなセラミック粒子13aを主成分とする保護層13を薄く設けても、セラミック粒子13aが活物質層12に入り込むことが抑制され、活物質層の露出を防止することができる。また、保護層の凹部の発生が抑制でき、蓄電装置の性能低下を防止することができる。
【0040】
(2)活物質層12と保護層13との間に、第2の活物質17aを主成分とする中間層15が存在する。この構成によれば、第2層17の表面に粒径の大きな第1の活物質16aが露出し、多少の凹凸が形成されていても、中間層15を構成するより粒径の小さな第2の活物質17aで覆われるため、保護層13は均一に形成される。また、中間層15は第1の活物質16aと同じ材質よりなる第2の活物質17aを主成分としているため、充放電の為の化学反応において、異なる化学反応が混在することにより生じる悪影響を回避することができる。
【0041】
(3)保護層13は、セラミック粒子13aを主成分とする。保護層13の主成分をセラミック粒子13a以外の粒子で構成することも可能であるが、セラミック粒子13aとすれば、必要な性能や大きさの粒子を容易に入手することができる。
【0042】
(4)第1の活物質16aは、粒径が第2の活物質17aの粒径の十倍〜百倍程度であり、第2の活物質17aは、粒径が保護層13のセラミック粒子13aの粒径と同程度である。したがって、保護層13を形成する際、第2層17を構成する第1の活物質16aの隙間に保護層13を構成するセラミック粒子13aが入り込むことが防止され、保護層13を薄く形成しても、保護層13が均一に形成されて蓄電装置の性能低下を防止することができる。
【0043】
(5)第2層17は、第1の活物質16aが活物質層12の厚さ方向に重ならない状態で層を成すように配置され、第2の活物質17aは、第2層17を構成する隣り合う第1の活物質16aの隙間に存在する。この場合、粒径の異なる第2の活物質17aの量を必要最小限にすることができるので、設定された蓄電装置の性能・仕様に対し、与える影響は軽微である。
【0044】
(6)蓄電装置用電極組立体としての電極組立体30は、正極活物質層を備えた正極32をなす電極と、負極活物質層を備えた負極31をなす電極と、両電極間に介在する樹脂製セパレータ33と、を備えている。そして、電極は、活物質層として、第1の活物質を主成分とする第1層と、第1層上に配置され、第1の活物質と、第1の活物質より小さな粒径の第2の活物質とを主成分とし、第1の活物質の間に第2の活物質が存在する第2層と、を有し、活物質層の上に、第1の活物質より粒径の小さな粒子を主成分とする保護層13を有する。したがって、電極を構成する活物質層上に粒子を主成分とする保護層13を薄く設けても、保護層13の凹部の発生が抑制でき、蓄電装置の性能低下を防止することができる。
【0045】
(7)保護層13の主成分をなす粒子は、絶縁性のセラミック粒子である。保護層の主成分を絶縁性のセラミック粒子以外の粒子で構成することも可能であるが、絶縁性のセラミック粒子とすれば、必要な性能や大きさの粒子を容易に入手することができる。
【0046】
(8)第1の活物質と第2の活物質とは、同一の材質にて粒径が異なる。したがって、充放電の為の化学反応において、異なる化学反応が混在することにより生じる悪影響を回避することができる。
【0047】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
図4に示すように、電極は、活物質層12と保護層13との間に中間層15が存しない構成としてもよい。即ち、活物質層12を構成する第2層17上に保護層13が形成された構成としてもよい。
【0048】
○ 中間層15を設けずに第2層17上に保護層13を形成する場合、製造工程において第1のスリットダイ22から第1層16上に塗布する第2の活物質17aを含む活物質合剤S1の適切な塗布量や活物質合剤S1の粘度を、予め試験等により求めて行うことにより、中間層15が形成されずに、第2層17が形成される。
【0049】
○ 第2層17を形成する方法として、第1層16上に第2の活物質17aを含む活物質合剤S1を塗布する方法ではなく、予め第1の活物質16a及び第2の活物質17aがバインダ、増粘剤及び溶媒とともに混練されて形成されたスラリー状の活物質合剤を第1層16上に塗布してもよい。
【0050】
○ 負極に限らず、正極に適用してもよい。正極の場合、第1の活物質16aの粒径及び第2の活物質17aの粒径とも負極の場合に比べて、一般的に小さくなる。また、正極用の活物質合剤は、負極用の活物質合剤と異なり、導電剤を含み増粘剤はなくてもよい。
【0051】
○ 両面に第1層16が形成された金属箔11に第2層17、中間層15及び保護層13を片面ずつ順次形成する代わりに、両面に第1層16が形成された金属箔11の両面に、第2層17、中間層15及び保護層13を順次、同時に形成するようにしてもよい。例えば、第2の活物質17aを含む活物質合剤S1を塗布する第1のスリットダイ22を金属箔11を挟むように対向して2台設け、保護層形成材料S2を塗布する第2のスリットダイ25を金属箔11を挟むように対向して2台設ける。
【0052】
○ 蓄電装置用電極は、金属箔11の両面に少なくとも活物質層12及び保護層13が形成された構成に限らず、金属箔11の片面に少なくとも活物質層12及び保護層13が形成された構成であってもよい。また、金属箔の代わりに、シート状のパンチングメタルや金属繊維などを集電体として用いた場合でも、本発明は適用できる。
【0053】
○ 本実施形態の電極は、保護層がセパレータを兼用し、樹脂製セパレータを用いない蓄電装置に適用しても良い。この場合においても、例えば、保護層をなす粒径の小さなセラミック粒子を用いた場合に、セラミック粒子が活物質の隙間に入り込むことが抑制できる。
【0054】
○ 蓄電装置用電極組立体としての電極組立体30を構成する電極は、負極31及び正極32のいずれか一方の電極のみが、活物質層として、第1の活物質を主成分とする第1層と、第1層上に配置され、第1の活物質と、第1の活物質より小さな粒径の第2の活物質とを主成分とし、第1の活物質の間に第2の活物質が存在する第2層と、を有し、活物質層の上に、第1の活物質より粒径の小さな粒子を主成分とする保護層を有してもよい。
【0055】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記第2の活物質層は、前記第1の活物質が前記活物質層の厚さ方向に重ならない状態で層を成すように配置され、前記第2の活物質は第2の活物質層を構成する隣り合う前記第1の活物質の隙間に存在する。
【0056】
(2)請求項1〜請求項3及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の発明の蓄電装置用電極を備えた蓄電装置。
【符号の説明】
【0057】
11…シート状の集電体としての金属箔、12…活物質層、13…保護層、13a…セラミック粒子、15…中間層、16…第1層、16a…第1の活物質、17…第2層、17a…第2の活物質、31…負極、32…正極、33…樹脂製セパレータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6