(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子部品が実装された回路基板と、前記回路基板を収容する下側ケースと、前記下側ケースに充填される充填材と、前記充填材を覆うように前記下側ケースに被せられる上側ケースと、を備えた回路ユニットであって、
前記電子部品および前記回路基板は前記充填材により覆われており、
前記上側ケースは、前記電子部品に対応する位置に該電子部品に向けて突出して前記充填材と接触する接触部と、前記接触部と隣接する位置において前記充填材との間に空気層を形成するべく前記充填材から離間して配される離間部と、を備えて構成されており、
前記上側ケースのうち前記接触部が設けられた領域の外面は、凹状に窪んだ形状とされている回路ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにポッティング材を必要量だけ充填した電子部品ユニットにおいては、ポッティング材の表面とポッティング材を覆う上ケースとの間に、空気層が形成される。このような構成によると、通電時に電子部品や基板で発生した熱は、まずポッティング材に伝達され、その後、ポッティング材と上ケースとの間の空気層に伝達される。その後、熱は、空気層から上ケースに伝達され、上ケースの表面から外部に放散される。
【0005】
しかしながら、空気は比較的熱伝導率が小さいので、電子部品や基板から発生した熱がケース内にこもり、ケースの内部が局所的に高温になることが懸念される。ケースの内部が局所的に高温になると、例えば、電子部品と基板とが半田付けにより接続されている場合には、半田付け部分にクラックが生じる等の問題が生じ、電子部品と基板との接続部分の接続信頼性が低下することが懸念される。
【0006】
そこで、上ケースに例えば電子部品を保持するクリップ部を一体に設け、電子部品で発生した熱をクリップ部を介して上ケースから放熱させる構成が提案されているが、このような構成では、上ケースの形状が複雑になるとともに、製造精度の要求が厳しくなって製造コストがかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に基づいて完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書によって開示される回路ユニットは、電子部品が実装された回路基板と、前記回路基板を収容する下側ケースと、前記下側ケースに充填される充填材と、前記充填材を覆うように前記下側ケースに被せられる上側ケースと、を備えた回路ユニットであって、前記電子部品および前記回路基板は前記充填材により覆われており、前記上側ケースは、前記電子部品に対応する位置に該電子部品に向けて突出して前記充填材と接触する接触部と、前記接触部と隣接する位置において前記充填材との間に空気層を形成するべく前記充填材から離間して配される離間部と、を備えて構成されて
おり、前記上側ケースのうち前記接触部が設けられた領域の外面は、凹状に窪んだ形状とされている。
【0009】
上記回路ユニットによれば、電子部品から発生した熱は、空気層と比較して熱伝導率が高い上側ケースの接触部に充填材を介して速やかに伝わり、上側ケース全体から外部に放熱されるから、放熱性および接続信頼性に優れた回路ユニットを得ることができる。
【0010】
しかも接触部は、充填材のうち最も温度が高くなる電子部品に対応する位置に電子部品に向けて突出して設けられているから、電子部品から発生された熱を効率的に吸熱してケース内が局所的に高温になることを抑制し、電子部品と回路基板との間の接続信頼性を向上させることができる。
【0011】
また、上側ケースには接触部に隣接して離間部が設けられているから、下側ケースに上側ケースを被せる際、接触部が充填材に押し込まれることにより周囲に押し除けられた充填材は、離間部の空気層内に速やかに逃がされる。
【0012】
さらにこのような構成の上側ケースは、従来と比較して簡易な構成であるので、製造が容易で製造コストも安価である。
【0013】
回路ユニットの実施態様としては以下の態様が好ましい。
【0014】
上側ケースのうち離間部に、水分を通過不能で空気を通過可能な防水性通気部を設ける構成としてもよい。
【0015】
このような構成によれば、接触部により押し除けられた充填材が空気層に逃がされるにあたり、離間部内にあった空気が防水性通気部から外部に逃がされるから、上側ケース内の空気を圧縮することなく、より円滑に上側ケースを下側ケースに対して取り付けることができる。しかも防水性通気部は、水分を通過不能であるから、外部から上側ケースおよび下側ケースの内部に水分が浸入することを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書によって開示される技術によれば、簡易な構成で放熱性および接続信頼性に優れた回路ユニットを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
実施形態を
図1ないし
図7によって説明する。
【0019】
本実施形態の回路ユニット10は、例えば、図示しない車両に搭載されてバッテリからの電装品への電力供給の切り替えを行うスイッチング装置に適用されるものであって、
図6および
図7に示すように、回路構成体11と、この回路構成体11を収容するケース50と、ケース50内に充填される充填材40と、を備えている。回路構成体11は、回路基板12と、6つの半導体スイッチング素子30と、3枚のバスバー21,22,23と、を備えている。以下、
図6における上側を上方、下側を下方、
図3における下側を前方、上側を後方、左側を左方、右側を右方として説明する。
【0020】
(回路基板12)
回路基板12は、ガラス基材またはガラス不織布基材からなる絶縁板の一面側(上面)に、プリント配線技術により図示しない導電回路を形成したものである。
【0021】
回路基板12には、
図2および
図3に示すように、半導体スイッチング素子30を回路基板12の裏面(下面)に配されたバスバー21,22,23に搭載するための6つの実装窓13が設けられている。実装窓13は、回路基板12の板面を垂直方向に貫通する略矩形の開口であって、その大きさは、半導体スイッチング素子30の外形より一回り大きく設定されている。
【0022】
6つの実装窓13のうち3つの実装窓13は、前後方向に略一列に並んで一組の第1実装窓群13Aを構成している。また、残り3つの実装窓13も前後方向に略一列に並んで、一組の第2実装窓群13Bを構成している。
【0023】
回路基板12の四隅には、ボルト45を挿通して下側ケース61に固定するためのボルト挿通孔が設けられている(図示せず)。また回路基板12の中央部には、充填材40を充填するための充填孔14が設けられているとともに、左右方向における中央部の端縁部付近には、空気孔15が設けられている。
【0024】
(バスバー)
回路基板12の裏面には、3枚のバスバー21、22、23が接着されている。3枚のバスバー21、22、23のうち、
図3において左側に位置するバスバーは入力バスバー21であり、右側に位置するバスバーは出力バスバー22である。入力バスバー21は、導電性材料(本実施形態では銅または銅合金)により形成された厚板である。入力バスバー21のうち、回路基板12のボルト挿通孔に対応する位置には、バスバー側のボルト挿通孔(図示せず)が設けられている。出力バスバー22も、入力バスバー21と同様に、導電性材料(本実施形態では銅または銅合金)により形成された厚板であって、回路基板12のボルト挿通孔に対応する位置には、バスバー側のボルト挿通孔(図示せず)が設けられている。
【0025】
入力バスバー21と出力バスバー22とは、回路基板12において導電回路が形成された面(上面)とは逆側の面(下面)に、互いに間隔を空けて配置されている。入力バスバー21および出力バスバー22は、一部の領域が回路基板12と重なるとともに、他の領域が回路基板12から張り出すように配されており、ボルト挿通孔に挿通されたボルト45により、回路基板12および下側ケース61と一体化されている。
【0026】
入力バスバー21と出力バスバー22との間には、接続バスバー23が配されている。接続バスバー23は、導電性材料(本実施形態では銅または銅合金)により形成された略I字形の厚板である。接続バスバー23は、入力バスバー21と出力バスバー22との間に、入力バスバー21および出力バスバー22に対して隙間を空けて配置されている。
【0027】
接続バスバー23のうち、回路基板12の充填孔14および空気孔15に対応する位置には、同じく充填孔24および空気孔25が設けられている。
【0028】
回路基板12の複数の第1実装窓群13Aは、
図3に示すように、それぞれ、入力バスバー21と接続バスバー23とにまたがる位置に配され、その内側に、入力バスバー21一部と、接続バスバー23の一部とが露出している。複数の第2実装窓群13Bは、出力バスバー22と接続バスバー23とにまたがる位置に配され、その内側に、出力バスバー22の一部と、接続バスバー23の一部とが露出している。
【0029】
(半導体スイッチング素子30)
半導体スイッチング素子30(電子部品の一例)は、パワーMOSFETであって、ハウジング31と、このハウジング31に設けられたドレイン端子32、ソース端子33およびゲート端子34を備えている。ドレイン端子32はハウジング31の下面に配置されている。また、複数のソース端子33およびゲート端子34は、ハウジング31の一側面から並んで横方向に突出するとともに、斜め下側に向けて屈曲されている。
【0030】
第1半導体スイッチング素子30Aは、それぞれ、第1実装窓群13Aの内側に配置されている。そして、第1実装窓群13Aの内側に露出している入力バスバー21の一部にドレイン端子32が、接続バスバー23の一部にソース端子33がそれぞれ接続されている。ゲート端子34は、回路基板12上の導電回路に接続されている。同様に、第2半導体スイッチング素子30Bは、それぞれ、第2実装窓群13Bの内側に配置されている。そして、第2実装窓群13Bの内側に露出している出力バスバー22の一部にドレイン端子32が、接続バスバー23の一部にソース端子33がそれぞれ接続され、導電回路にゲート端子34が接続されている。接続は、例えばリフローはんだ技術等を用いて、はんだにより行うことができる。
【0031】
(ケース50)
ケース50は合成樹脂等で形成され、
図1に示すように、上側ケース51と、下側ケース61とからなる。
【0032】
下側ケース61は、
図2に示すように、回路構成体11を内部に収容可能な浅皿状をなしている。より詳しくは、下側ケース61は、長方形の底部62と、この底部62の4つの辺から上方に向けて立ち上がる4つの側壁部63とを備えている。また側壁部63の外面には、上側ケース51を受けるための受枠64が全周に亘って設けられている。
【0033】
また、底部62からは、
図4に示すように、上述したボルト45を固定するための円筒状のボルト固定部66が上方に向けて4つ立設されている。
【0034】
上側ケース51は、下側ケース61の上方の開口部を覆うように組み付けられる浅皿状をなしている。より詳しくは、
図1に示すように、上側ケース51は、長方形の天板部52と、この天板部52の4つの辺から下方に向けて延びる4つの側壁部53とを備えている。4つの側壁部53は、下側ケース61の側壁部63と受枠64との間に挿入可能とされている(
図6参照)。また、互いに対向する左右の一対の側壁部53の外面には、外側に向けて突出する係止突部54が設けられており、この係止突部54を受枠64に設けられた弾性係止片65に係止させることにより、上側ケース51および下側ケース61が組み付け状態にロックされるようになっている。
【0035】
天板部52のうち、下側ケース61を覆った状態において6つの半導体スイッチング素子30を一括に覆う領域は、天板部52から下側に向けて突出した接触部55とされている。この接触部55は、上側ケース51が下側ケース61に組み付けられた状態において、半導体スイッチング素子30を覆う充填材40と接触して、半導体スイッチング素子30とは直接接触しない突出量に設定されている。天板部52のうちこの接触部55が設けられた領域の上面(外面)は、凹状に窪んだ形状とされている。
【0036】
また、天板部52のうちこの接触部55以外の領域は、上側ケース51が下側ケース61を覆った状態において充填材40から離間する位置に配された(接触部55より上方側に配された)離間部56とされている。これにより、充填材40と離間部56との間には、空気層が設けられるようになっている。
【0037】
さらに離間部56には、ケース50の内圧を調整可能な防水性通気弁70を挿入する挿入孔57が設けられている(
図1および
図7参照)。また離間部56の上面(外面)には、この挿入孔57を囲むように、円弧状の立壁58が設けられている。
【0038】
防水性通気弁70は、
図7に示すように、段差部71により下方側が縮径された2段形状の円筒状をなしており、その上端に、充填材40や水分を通過させず、空気を通過させる通気性フィルタ72が設けられたものである。縮径部分の外面には挿入孔57の内側縁部に係止する係止爪73が設けられており、この係止爪73が段差部71に配された防水リング75とともに挿入孔57の縁部を挟持することにより、上側ケース51の離間部56に保持されている。
【0039】
(充填材40)
図5ないし
図7に示すように、下側ケース61の底部62と、側壁部63とで囲まれた空間内には、合成樹脂材からなる充填材40が充填されている。回路基板12の表面および半導体スイッチング素子30の表面(上面)は、充填材40により覆われている。
【0040】
充填材40を構成する合成樹脂材としては、熱可塑性樹脂、又は、熱硬化性樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等を用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等を用いることができる。また、シリコーン系樹脂や、ウレタン系樹脂を用いてもよく、任意の合成樹脂材を適宜に選択できる。
【0041】
続いて、本実施形態の回路ユニット10の製造工程の一例を説明する。回路基板12の一面側にプリント配線技術により導電回路を形成し、導電回路が形成された面とは反対側の面の所定の位置に、入力バスバー21、出力バスバー22、接続バスバー23を配索・接着する。そして、回路基板12の第1実装窓群13Aに第1半導体スイッチング素子30Aを配するとともに、第2実装窓群13Bに第2半導体スイッチング素子30Bを配し、例えばリフロー半田付けを行うことにより、第1半導体スイッチング素子30Aのドレイン端子32を入力バスバー21に、第2半導体スイッチング素子30Bのドレイン端子32を出力バスバー22に、、ソース端子33を接続バスバー23に、ゲート端子34を導電回路に接続する。
【0042】
次に、このようにして形成された回路構成体11を下側ケース61内に収容し、ボルト45により下側ケース61のボルト固定部66に固定する(
図4参照)。そして、充填孔14、24内にノズルを入れ、充填材40を充填する。充填材40は、空気孔15,25から空気を逃がしつつ、下側ケース61の底部62に徐々に拡がり、やがて、回路構成体11の表面(上面)全体を覆う(
図5参照)。
【0043】
回路構成体11の表面が全て充填材40に覆われたら、下側ケース61に上側ケース51を取り付ける。具体的には、上側ケース51の側壁部53を下側ケース61の側壁部53と受枠64との間に嵌め込む。すると、上側ケース51の側壁部53の外面に設けられた係止突部54が下側ケース61の受枠64に設けられた弾性係止片65を外側に向けて弾性変形させつつ移動し、上側ケース51が正規の位置に装着されたところで弾性係止片65が係止突部54を乗り越え弾性復帰することにより、上側ケース51と下側ケース61とがロックされる(
図1参照)。
【0044】
この時、上側ケース51の接触部55は、半導体スイッチング素子30の上方を覆っている充填材40を押し除けつつ半導体スイッチング素子30に向けて移動する。押し除けられた充填材40は、接触部55と隣接して設けられた離間部56の空気層内に逃がされる。この時、離間部56には防水性通気弁70が設けられているから、離間部56内の空気層は充填材40により圧縮されることなく、通気性フィルタ72から外部に逃がされる。よって、上側ケース51の下側ケース61に対する取り付け操作を円滑に行うことができる。
【0045】
また、上側ケース51と下側ケース61とがロックされた状態において、接触部55は半導体スイッチング素子30の上方に配されて充填材40と接触しているものの、半導体スイッチング素子30と直接的には接触していない。
【0046】
次に、作用効果を説明する。このような本実施形態の回路ユニット10によれば、半導体スイッチング素子30で発生した熱は、まず、半導体スイッチング素子30を覆う充填材40に伝達される。この充填材40は上側ケース51の接触部55に接触しているから、充填材40に伝達された熱は、速やかに上側ケース51に伝達され、その表面からケース50の外部に放散される。
【0047】
しかも接触部55は、充填材40のうち最も温度が高くなる半導体スイッチング素子30を覆う位置に設けられているから、半導体スイッチング素子30から発生された熱を効率的に吸熱し、外部に放熱させることができる。すなわち、回路ユニット10のケース50内が局所的に高温になることを抑制し、半導体スイッチング素子30と回路基板12との間の接続信頼性を向上させることができる。
【0048】
また、この接触部55と隣接して離間部56が設けられており、この離間部56に防水性通気弁70が設けられているから、接触部55により押し除けられた充填材40が離間部56に逃がされた場合には、離間部56内の空気は防水性通気弁70から速やかに外部に排出され、圧縮されることがない。よって、上側ケース51の下側ケース61に対する取り付け作業を円滑に行うことができる。
【0049】
また、上側ケース51のうち、接触部55の外面は凹状に窪んだ形状とされており、上側ケース51の外表面積が大きくなっているから、さらに放熱性に優れる。
【0050】
さらに、このような構成の上側ケース51は、天板部52の一部を下側に向けて突出させるだけの簡易な構成であるので、製造が容易で製造コストも安価である。
【0051】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0052】
(1)上記実施形態では、上側ケース51の離間部56に防水性通気弁70を設ける構成としたが、防水性通気弁70は省略することもできる。
【0053】
(2)充填材40としては、いわゆる防水ゲルを用いてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、上側ケース51の側壁部53を下側ケース61の側壁部63とこの側壁部63の外側に設けられた受枠64との間に挿入させる構成としたが、上側ケース51と下側ケース61との取り付け構造は上記実施形態に限るものではなく、例えば、上側ケース51の側壁部53を下側ケース61の側壁部63の内側に取り付ける構成とすることもできる。
【0055】
(4)上記実施形態では、接触部55の外面(上側ケース51の上面)を凹状に窪ませる構成としたが、
参考例として、平坦面としてもよい。
【0056】
(5)また、接触部55の突状の形状は上記実施形態に限るものではなく、例えは、側面がテーパ状となるように突出させたり、角柱状ではなく円柱状に突出させてもよい。また、各電子部品に対応して複数の接触部を設ける構成とすることもできる。