特許第6168073号(P6168073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許6168073-電源装置 図000002
  • 特許6168073-電源装置 図000003
  • 特許6168073-電源装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168073
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
   H02M3/155 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-11912(P2015-11912)
(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-140119(P2016-140119A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志治 肇
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−073036(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/032333(WO,A1)
【文献】 特開2006−271069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直流電源が接続される第1接続部と、
第2直流電源が接続される第2接続部と、
前記第1接続部からグランドの間に順次直列に接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の接続点からグランドの間に、順次直列に接続されたインダクタ及びキャパシタと、
前記第1スイッチング素子をオンオフする制御部と、
前記インダクタ及び前記キャパシタの接続点と前記第2接続部との間の電圧を検出する電圧検出部と、
前記インダクタに流れる電流の方向を検出する電流方向検出部と、
前記電圧検出部が検出した電圧が所定値以下の場合、低電圧異常と判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、
前記電流方向検出部が検出した電流の方向が、前記第1接続部側から前記第2接続部の方向である場合、前記第2接続部側の異常と判定し、前記第2接続部側から前記第1接続部の方向である場合、前記第2スイッチング素子の異常と判定する、
電源装置。
【請求項2】
前記インダクタ及び前記キャパシタの接続点と、前記第2接続部との間に接続された第3スイッチング素子、
を備え、
前記制御部は、
前記判定部が前記第2スイッチング素子の異常と判定とした場合、前記第3スイッチング素子をオフにする、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第3スイッチング素子は、ボディーダイオードの方向が互いに逆方向となるよう接続された2つのMOS−FETから構成された双方向スイッチング素子である、
請求項2に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を降圧する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流電源に接続されたDC−DCコンバータ等の電源装置に異常が生じた際の異常判定方法が開示されている。特許文献1に記載の判定方法では、所定位置で検出した電圧が所定値未満の場合、コンバータの還流用半導体素子がショート状態である、又は、コンバータのスイッチング素子がオープン状態であると異常判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5611302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源装置(DC−DCコンバータ)では、素子のショート異常又はオープン異常が電圧異常の原因になるとは限らず、例えば、電源装置に接続された直流電源が電圧異常の原因となる場合もある。しかしながら、特許文献1に記載の判定方法では、直流電源に電圧異常の原因があることを特定できず、電圧異常検出後の対応を適切に行えない場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、低電圧異常の原因を判別できる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電源装置は、第1直流電源が接続される第1接続部と、第2直流電源が接続される第2接続部と、前記第1接続部からグランドの間に順次直列に接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の接続点からグランドの間に、順次直列に接続されたインダクタ及びキャパシタと、前記第1スイッチング素子をオンオフする制御部と、前記インダクタ及び前記キャパシタの接続点と前記第2接続部との間の電圧を検出する電圧検出部と、前記インダクタに流れる電流の方向を検出する電流方向検出部と、前記電圧検出部が検出した電圧が所定値以下の場合、低電圧異常と判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記電流方向検出部が検出した電流の方向が、前記第1接続部側から前記第2接続部の方向である場合、前記第2接続部側の異常と判定し、前記第2接続部側から前記第1接続部の方向である場合、前記第2スイッチング素子の異常と判定することを特徴とする。
【0007】
この構成では、低電圧異常の原因が、第2スイッチング素子であるか、第2接続部に接続された第2直流電源であるかを判別できるため、異常検出後の対応を適切に行える。
【0008】
本発明に係る電源装置は、前記インダクタ及び前記キャパシタの接続点と、前記第2接続部との間に接続された第3スイッチング素子を備え、前記制御部は、前記判定部が前記第2スイッチング素子の異常と判定とした場合、前記第3スイッチング素子をオフにすることが好ましい。
【0009】
この構成では、第2スイッチング素子の異常、例えばショート破壊(オフしているにもかかわらず導通状態となる)である場合、第2スイッチング素子側へ電流が流れ込むことを防止できる。
【0010】
本発明に係る電源装置では、前記第3スイッチング素子は、ボディーダイオードの方向が互いに逆方向となるよう接続された2つのMOS−FETから構成された双方向スイッチング素子であることが好ましい。
【0011】
この構成では、MOS−FETがオフのときであっても、2つのMOS−FETのボディーダイオードが互いに逆方向であるため、電流を阻止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低電圧異常の原因を判別できるため、異常検出後の対応を適切に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係る電源装置の回路図
図2】電源装置の低電圧異常を判定する処理のフローチャート
図3】実施形態2に係る電源装置の回路図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電源装置1の回路図である。
【0015】
電源装置1は外部接続端子11,12,13,14を備えている。外部接続端子11,12には直流電源V1が接続される。外部接続端子13,14には直流電源V2が接続される。外部接続端子12,14の接続ラインはグランドに接続されている。本実施形態では、電源装置1は、外部接続端子11,12から入力された直流電圧を降圧して、外部接続端子13,14から出力する降圧コンバータとして説明する。
【0016】
直流電源V1は、本発明に係る「第1直流電源」に相当する。直流電源V2は、本発明に係る「第2直流電源」に相当する。また、外部接続端子11は、本発明に係る「第1接続部」に相当し、外部接続端子13は、本発明に係る「第2接続部」に相当する。
【0017】
外部接続端子11,12には、スイッチング素子Q1,Q2が順次直列に接続されている。スイッチング素子Q1,Q2はMOS−FETである。スイッチング素子Q1は、本発明に係る「第1スイッチング素子」に相当する。スイッチング素子Q2は、本発明に係る「第2スイッチング素子」に相当する。なお、スイッチング素子Q2はダイオードであってもよい。この場合、ダイオードのカソードがスイッチング素子Q1に接続される。
【0018】
スイッチング素子Q1,Q2の接続点Pには、順次インダクタL1とキャパシタC1とが直列に接続されている。インダクタL1とキャパシタC1との接続点は、スイッチング素子S1を介して外部接続端子13に接続されている。スイッチング素子S1は、ボディーダイオードD1を有するMOS−FETであり、本発明に係る「第3スイッチング素子」に相当する。スイッチング素子S1は、そのドレインが外部接続端子13側となるように接続される。
【0019】
電源装置1はコントローラ15を備えている。コントローラ15は、コンバータ制御部151、電圧検出部152、電流検出部153及び異常判定部154を有している。
【0020】
コンバータ制御部151は、スイッチング素子Q1,Q2をスイッチング制御し、外部接続端子11,12から入力された直流電圧を降圧する。なお、スイッチング素子Q2に代えてダイオードを用いた場合、コンバータ制御部151は、スイッチング素子Q1のみをスイッチング制御する。
【0021】
電圧検出部152は、インダクタL1とスイッチング素子S1の接続点における電圧、すなわち、コンバータ動作により降圧された直流電圧の電圧値Vsを検出する。直列接続された分圧抵抗R1,R2が、キャパシタC1に対して並列に接続されている。電圧検出部152は、分圧抵抗R1,R2により検出される電圧を基に電圧値Vsを検出する。
【0022】
電流検出部153は、インダクタL1に流れる電流の電流値Isを検出する。インダクタL1には、電流検出用の抵抗R3が直列に接続されている。電流検出部153は、その抵抗R3の両端の電圧降下を測定することで、電流値Isを検出する。検出された電流値Isから、インダクタL1に流れる電流の方向が判定できる。電流値Isが正の場合、電流の方向は、接続点Pから外部接続端子13への方向である。電流値Isが負の場合、電流の方向は、外部接続端子13から接続点Pへの方向である。
【0023】
異常判定部154は、電源装置1の低電圧異常の有無、低電圧異常の原因の判定、及びスイッチング素子S1のスイッチング制御を行う。異常判定部154は、平時は、スイッチング素子S1をオンにする。スイッチング素子S1がオンの状態で、コンバータ制御部151は、スイッチング素子Q1,Q2をスイッチング制御する。これにより、外部接続端子11,12から入力された直流電圧は降圧され、外部接続端子13,14から出力される。この制御状態では、電源装置1は通常の降圧動作を行う。
【0024】
通常の降圧動作において、異常判定部154は、電圧検出部152が検出した電圧値Vsがしきい値Vth1以下であるか否かを判定する。しきい値Vth1は、例えば、電源装置1が正常動作した場合に出力されるべき電圧の電圧値に基づいて設定される。電圧値Vsがしきい値Vth1以下である場合、異常判定部154は、低電圧異常が発生したと判定する。そして、異常判定部154は、電流検出部153が検出した電流値Isから、インダクタL1に流れる電流の方向を判定する。電流値Isが正の場合、異常判定部154は、直流電源V2が低電圧異常の原因であると判定する。電流値Isが負の場合、異常判定部154は、スイッチング素子Q2のショート破壊(正のゲート電圧が印加されているにもかかわらずドレイン・ソース間が導通状態となる)が低電圧異常の原因であると判定する。
【0025】
スイッチング素子Q2のショート破壊が低電圧異常の原因であると判定した場合、異常判定部154は、スイッチング素子S1をオフにする。スイッチング素子Q2がショート破壊している場合、スイッチング素子Q2側が低電位となり、直流電源V2からスイッチング素子Q2へと電流が流れる。そこで、スイッチング素子S1をオフにすることで、直流電源V2からスイッチング素子Q2へと流れる電流を防止できる。
【0026】
以上のように、直流電源V2及びスイッチング素子Q2の何れかに低電圧異常の原因があると判別できるため、低電圧異常検出後、適切な対応を行うことができる。例えば、スイッチング素子Q2がショート破壊している場合に、スイッチング素子Q2に電流が流れ込むことを防止できる。その結果、スイッチング素子Q2及び周辺部品に対して、異常時電流によるストレスを抑制できる。また、流れる電流を抑制することで、異常検出後の対応を安全に行える。
【0027】
図2は、電源装置1の低電圧異常を判定する処理のフローチャートである。図2に示す処理は、コントローラ15により実行される。
【0028】
コントローラ15は通常の降圧動作を実行する(S1)。すなわち、スイッチング素子S1をオンした状態で、コンバータ制御部151は、スイッチング素子Q1,Q2をスイッチング制御する。これにより、外部接続端子11,12から入力された直流電圧は降圧され、外部接続端子13,14から出力される。次に、コントローラ15は、所定時間(例えば10ms)待機する(S2)。その後、電圧検出部152は電圧値Vsを検出する(S3)。
【0029】
異常判定部154は、電圧値Vsがしきい値Vth1以下(Vs≦Vth1)であるか否かを判定する(S4)。Vs≦Vth1でない場合(S4:NO)、コントローラ15は、S2の処理を再実行する。Vs≦Vth1の場合(S4:YES)、電流検出部153は、電流値Isを検出し(S5)、電流値Isが正であるか否かを判定する(S6)。
【0030】
電流値Isが正である場合(S6:YES)、すなわち、接続点Pから外部接続端子13へ電流が流れている場合、異常判定部154は、直流電源V2が低電圧異常の原因であると判定する(S7)。一方、電流値Isが正でない場合(S6:NO)、すなわち、外部接続端子13から接続点Pへ電流が流れている場合、異常判定部154は、スイッチング素子Q2のショート破壊が低電圧異常の原因であると判定する(S8)。その後、異常判定部154は、スイッチング素子S1をオフにする(S9)。これにより、スイッチング素子Q2側へ電流が流れ込むことを防止できる。
【0031】
その後、コントローラ15は、例えば、ステータス異常等により警告し(S10)、本処理を終了する。
【0032】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係る電源装置2の回路図である。
【0033】
この例では、インダクタL1と外部接続端子13との間に接続されたスイッチング素子S2は、双方向スイッチング素子である。スイッチング素子S2は、2つのMOS−FET21,22で構成されている。MOS−FET21,22は、それぞれのボディーダイオードD1,D2の方向が互いに逆となるように接続されている。
【0034】
コントローラ15は、直流電源V2が低電圧異常の原因であると判定した場合、MOS−FET21,22をオフにすることで、直流電源V1から直流電源V2へ電流が流れることを防止できる。直流電源V2への電流を阻止することで、電源装置2内の部品故障、周辺回路故障の波及を抑制できる。
【0035】
なお、スイッチング素子S2は、ボディーダイオードが形成されないIGBT(InsulatedGate Bipolar Transistor)、又はGaN−FETであってもよい。この場合、スイッチング素子S2は一つの部品で構成できるため、省スペース化が図れる。
【符号の説明】
【0036】
1,2…電源装置
11…外部接続端子(第1接続部)
12,14…外部接続端子
13…外部接続端子(第2接続部)
15…コントローラ(制御部)
21,22…MOS−FET
151…コンバータ制御部
152…電圧検出部
153…電流検出部
154…異常判定部
C1…キャパシタ
D1,D2…ボディーダイオード
L1…インダクタ
P…接続点
Q1…スイッチング素子(第1スイッチング素子)
Q2…スイッチング素子(第2スイッチング素子)
R1,R2…分圧抵抗
R3…抵抗
S1,S2…スイッチング素子(第3スイッチング素子)
V1…直流電源(第1直流電源)
V2…直流電源(第2直流電源)
図1
図2
図3