特許第6168098号(P6168098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168098
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】電動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62M 7/02 20060101AFI20170713BHJP
   B62J 9/00 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   B62M7/02 X
   B62J9/00 H
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-98878(P2015-98878)
(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公開番号】特開2016-215668(P2016-215668A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年2月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513313129
【氏名又は名称】小野塚精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107906
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼原 健也
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−089754(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/102851(WO,A1)
【文献】 特開2013−035436(JP,A)
【文献】 特開2010−018270(JP,A)
【文献】 特開2012−101678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 7/02
B62J 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と、
回転駆動力を発生する電動モータと、
前記電動モータを制御するモータコントローラと、
前記電動モータの出力軸に結合された変速機と、
前記変速機の出力軸にチェーンを介して結合された後輪と、を備え、
前記モータコントローラは、前記前輪の後方であって、前記変速機の前方に配置され
前記電動モータは、第1乃至第3の制御電流に応じて回転駆動される三相ブラシレスモータで構成され、
前記モータコントローラは、複数の外壁面と、複数の内壁面とを有する収納ケースと、 前記収納ケースの第1の内壁面に取り付けられ、前記第1の制御電流を出力する第1のパワー基板と、
前記収納ケースの第2の内壁面に取り付けられ、前記第2の制御電流を出力する第2のパワー基板と、
前記収納ケースの第3の内壁面に取り付けられ、前記第3の制御電流を出力する第3のパワー基板と、を備えることを特徴とする電動二輪車。
【請求項2】
前輪と、
回転駆動力を発生する電動モータと、
前記電動モータを制御するモータコントローラと、
前記電動モータの出力軸に結合された変速機と、
前記変速機の出力軸にチェーンを介して結合された後輪と、を備え、
前記モータコントローラは、前記前輪の後方であって、前記変速機の前方に配置され、
前記モータコントローラを前記変速機に取り付けるとともに、前記モータコントローラと前記電動モータとの間の配線を通すためのアタッチメント部を備え、前記モータコントローラが前記アタッチメント部に取り付けられていることを特徴とする電動二輪車。
【請求項3】
前輪と、
第1乃至第3の制御電流に応じて回転駆動される三相ブラシレスモータで構成された電動モータと、
それぞれが第1乃至第3の制御電流を出力する複数のモータコントローラと、
前記電動モータの出力軸に結合された変速機と、
前記変速機の出力軸にチェーンを介して結合された後輪と、を備え、
前記複数のモータコントローラは、前記前輪の後方であって、前記変速機の前方に配置され
各モータコントローラは、複数の外壁面と、複数の内壁面とを有する収納ケースと、前記収納ケースの第1の内壁面に取り付けられ、前記第1の制御電流を出力する第1のパワー基板と、
前記収納ケースの第2の内壁面に取り付けられ、前記第2の制御電流を出力する第
2のパワー基板と、
前記収納ケースの第3の内壁面に取り付けられ、前記第3の制御電流を出力する第
3のパワー基板と、を備えることを特徴とする電動二輪車。
【請求項4】
前輪と、
第1乃至第3の制御電流に応じて回転駆動される三相ブラシレスモータで構成された電動モータと、
それぞれが第1乃至第3の制御電流を出力する複数のモータコントローラと、
前記電動モータの出力軸に結合された変速機と、
前記変速機の出力軸にチェーンを介して結合された後輪と、を備え
前記複数のモータコントローラは、前記前輪の後方であって、前記変速機の前方に配置され、前記複数のモータコントローラを前記変速機に取り付けるとともに、前記複数のモータコントローラと前記電動モータとの間の配線を通すためのアタッチメント部を備え、前記複数のモータコントローラが前記アタッチメント部に取り付けられていることを特徴とする電動二輪車。
【請求項5】
前記モータコントローラは、複数の外壁面を有する収納ケースを備え、前記複数の外壁面のうち、3面以上に放熱フィンが取り付けられたことを特徴とする請求項2または4に記載の電動二輪車。
【請求項6】
前記第1乃至第3の内壁面の反対側にある第1乃至第3の外壁面に、それぞれ放熱フィンが取り付けられたことを特徴とする請求項1または3に記載の電動二輪車。
【請求項7】
前記収納ケースが金属からなることを特徴とする請求項1,3,5のいずれかに記載の電動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動力を発生する電動モータと、電動モータを制御するモータコントローラとを備える電動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動二輪車は、特許文献1に記載されている。図13に示すように、電動二輪車10は、前輪11及び後輪12を有する自動二輪車であり、モータ13を用いて走行することができる。
【0003】
具体的は、モータ13は、ドライブベルト部14を介して後輪12を駆動する。電動二輪車10のライダーは、スロットルグリップ15を用いてスロットルの開度を調整することによって、モータ13の回転によって生じる駆動力を調整する。制御装置100A(モータコントローラ)は、シート16の下方に搭載されている。制御装置100Aには、電動二輪車10に生じるモーメントなどを検出するセンサによって構成されるセンサ部110が接続されている。また、制御装置100Aには、前輪11近傍に取り付けられ、電動二輪車10の車速を検出する車速センサ101が接続されている。
【0004】
特許文献2には、ガソリンエンジン駆動の自動二輪車が記載されている。図14は、自動二輪車1の車体全体を示し、図15は自動二輪車1のエンジン及び変速機を示す図である。
【0005】
自動二輪車1は、車体2の骨格となる車体フレーム3を有している。車体フレーム3は車両前方から、ヘッドパイプ5、このヘッドパイプ5から後側に斜め下方に延びるメインパイプ6、メインパイプ6の後方中間部に固着されて斜め上方に延びるリヤパイプ7、メインパイプ6の後端部に固着されて下方に延びる支持フレーム8などから構成される。
【0006】
ヘッドパイプ5には、ステアリングシャフト9が回転自在に枢着されており、このステアリングシャフト9の下側にテレスコピック型サスペンションを備えて伸縮自在なフロントフォーク10を介して前輪FWが回転自在に懸架支持されている。ステアリングシャフト9の上端部には、図示省略するハンドルポストを介して左右に延びるバー状のハンドル11が取り付けられ、前輪FWを操舵可能に構成される。
【0007】
この車体フレーム3の中間部には、エンジン40及び変速機60を一体化したパワーユニットPUがメインパイプ6の下側に吊り下げられるようにして取り付けられ、このパワーユニットPUの出力軸(変速機の出力軸)に結合されたドライブスプロケット67からチェーン15を介して回転駆動力が後輪RWに伝達される。
【0008】
パワーユニットPUの前部には、エンジン40のシリンダブロック41が取り付けられ、その前方にシリンダヘッド42が結合されている。シリンダブロック41の内部には、不図示のピストンが前後方向に摺動自在に嵌合され、コンロッド及びクランクピンを介してクランクシャフトに接続される。
【0009】
クランクシャフトの左部にはカムドライブスプロケット46が結合されるとともに、シリンダヘッド42に回転自在に支承されたカムシャフトの左端部に結合されたカムドリブンスプロケットとの間にカムチェーン48が巻き掛けられて接続され、クランクシャフト45の回転により吸気バルブ及び排気バルブが開閉作動される。
【0010】
変速機60の詳細な図示は省略するが、変速機60はクランクシャフトに接続されるメインシャフトと、このメインシャフトに接続されたカウンタシャフトとを備えており、メインシャフトとカウンタシャフトとの間に複数の変速段を確立するためのギア列が設けられる。なお、図14図15中、8は支持フレーム、20は足乗せステップ、21はバー部材、96はシフトポジション検出部、160はアクチュエータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−151289号公報
【特許文献2】特開2008−174109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の電動二輪車は、制御装置100A(モータコントローラ)がシート16の下方のカウルの中に取り付けられていたため、放熱性が悪く、配置スペースにも制約があった。そのため、制御装置100Aを大型化することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題に鑑み、本発明の電動二輪車は、前輪と、回転駆動力を発生する電動モータと、前記電動モータを制御するモータコントローラと、前記電動モータの出力軸に結合された変速機と、前記変速機の出力軸にチェーンを介して結合された後輪と、を備え、
前記モータコントローラは、前記前輪の後方であって、前記変速機の前方に配置され
前記電動モータは、第1乃至第3の制御電流に応じて回転駆動される三相ブラシレスモータで構成され、前記モータコントローラは、複数の外壁面と、複数の内壁面とを有する収納ケースと、前記収納ケースの第1の内壁面に取り付けられ、前記第1の制御電流を出力する第1のパワー基板と、前記収納ケースの第2の内壁面に取り付けられ、前記第2の制御電流を出力する第2のパワー基板と、前記収納ケースの第3の内壁面に取り付けられ、前記第3の制御電流を出力する第3のパワー基板と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の電動二輪車は、前輪と、回転駆動力を発生する電動モータと、前記電動モータを制御するモータコントローラと、前記電動モータの出力軸に結合された変速機と、前記変速機の出力軸にチェーンを介して結合された後輪と、を備え、前記モータコントローラは、前記前輪の後方であって、前記変速機の前方に配置され、前記モータコントローラを前記変速機に取り付けるとともに、前記モータコントローラと前記電動モータとの間の配線を通すためのアタッチメント部を備え、前記モータコントローラが前記アタッチメント部に取り付けられていることを特徴とする
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モータコントローラを前輪の後方であって、変速機の前方に配置したので、走行風を効率よくモータコントローラに当てて放熱性能を向上させることができ、配置スペースにも余裕があることから、モータコントローラを容易に大型化してその出力容量を増加させることが可能となる。
【0015】
また、本発明によれば、モータコントローラが配置される位置は、ガソリンエンジン駆動の自動二輪車におけるエンジンが配置される位置と近いため、デザイン性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態における電動二輪車のモータコントローラの配置を示す図である。
図2】モータコントローラの構成を示すブロック図である。
図3】モータコントローラの内部構造を示す斜視図である。
図4】モータコントローラの基板構造を示す斜視図である。
図5】モータコントローラの回路図である。
図6】本発明の第2の実施形態における電動二輪車のモータコントローラの配置を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態における2個のモータコントローラの構成を示すブロック図である。
図8】L型2気筒のモータコントローラの配置を示す斜視図である。
図9】並列2気筒のモータコントローラの配置を示す斜視図である。
図10】ラジアル4気筒のモータコントローラの配置を示す斜視図である。
図11】L型4気筒のモータコントローラの配置を示す斜視図である。
図12】ラジアル5気筒のモータコントローラの配置を示す斜視図である。
図13】従来の電動二輪車の全体構成を示す正面図である。
図14】従来のガソリンエンジン駆動の自動二輪車の車体全体を示す正面図である。
図15図14の自動二輪車のエンジン及び変速機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態における電動二輪車100を図1乃至図5に基づいて説明する。図1に示すように、電動二輪車100は、図14図15に示す従来のガソリンエンジン駆動の自動二輪車1において、パワーユニットPUのガソリン駆動のエンジン40(シリンダブロック41,シリンダヘッド42,クランクシャフト等)を除去し、その代わりに、エンジン40の設置位置にアタッチメント部101を介してモータコントローラ102を取り付け、電動モータMの出力軸を従前の変速機60の入力軸に結合させたものである。図1において、アタッチメント部101,モータコントローラ102は、それぞれ破線で囲んで示してある。
【0018】
この場合、変速機60の入力軸は、従来のガソリンエンジン駆動の自動二輪車1におけるクランクシャフトが結合されるカムドライブスプロケット46の回転軸又は、クランクシャフトに接続されるメインシャフトに相当する。アタッチメント部101は直方体等の箱体からなり、モータコントローラ102は、アタッチメント部101の前輪FWに対向した外面に取り付けられる。
【0019】
すなわち、電動二輪車100は、ガソリンエンジン駆動の自動二輪車1を電動二輪車100にコンバートしたものであって、回転駆動力を発生する電動モータMと、電動モータMを制御するモータコントローラ102と、電動モータMの出力軸に入力軸が結合された変速機60と、変速機60の出力軸にチェーン15を介して結合された後輪と、を備え、モータコントローラ102は、前輪FWの後方であって、変速機60の前方に配置される。
【0020】
そして、電動二輪車100によれば、モータコントローラ102を前輪FWの後方であって、変速機60の前方に前輪FWを臨むように配置したので、走行風を効率よくモータコントローラ102に当てて放熱性能を向上させることができことに加えて、変速機60と前輪FWの間には広い空間があり、モータコントローラ102の配置スペースにも余裕があることから、モータコントローラ102を容易に大型化してその出力容量を増加させることが可能となる。
【0021】
また、モータコントローラ102が配置される位置は、ガソリンエンジン駆動の自動二輪車1におけるエンジン40が配置される位置と近いため、元のガソリンエンジン駆動の自動二輪車1の全体デザインを保持することができることからデザイン性にも優れている。
【0022】
ガソリンエンジン駆動の自動二輪車1に必要されたガソリンタンクは除去され、その代わりに、電動モータMの駆動源として二次電池等からなるバッテリーが取り付けられる。バッテリーは、電動二輪車100の座席の下や、後方の荷台の下などに取り付けることが適当である。
【0023】
図2は、モータコントローラ102の構成を示すブロック図である。図示のように、
電動モータMは三相ブラシレスモータであり、モータコントローラ102は、電動モータMを制御するために、それぞれ三相(U,V,W)に対応した第1乃至第3の制御電流IU,IV,IWを出力する3個のパワー基板103A,103B,103Cと、1個の制御基板104を備え、バッテリー105からの電源供給を受けて動作する。
【0024】
制御基板104はマイコンを含んで構成され、アクセル,ブレーキ,メインスイッチからの回転指示信号、並びに電動モータMに設けられた角度センサと温度センサからのセンサ信号に基づいて、これらのパワー基板103A,103B,103Cを制御するための制御信号を出力する。
【0025】
この場合、アタッチメント部101は、モータコントローラ102と電動モータMとの間の各種配線(第1乃至第3の制御電流IU,IV,IWを流す配線、角度センサと温度センサの出力配線等)を媒介する。すなわち、これらの各種配線は、アタッチメント部101の中を通して配設され、損傷から保護されるようになっている。
【0026】
モータコントローラ102は、図3に示すように、中空直方体からなり6個の外壁面と6個の内壁面を有する収納ケース106を備え、その本体であるパワー基板103A,103B,103Cと制御基板104が収納される。モータコントローラ102が発生するジュール熱を放熱するために、6個の外壁面のうち3面以上に放熱フィン107が取り付けられていることが好ましい。
【0027】
収納ケース106は機械的強度と放熱性能を確保するために、肉厚2mm以上のアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属からなることが好ましい。なお、図3は収納ケース106の内部構造を示すために、2面を取り除いて図示してある。
【0028】
パワー基板103Aは収納ケース106の第1の内壁面108Aに取り付けられ、パワー基板103Bは収納ケース106の第2の内壁面108Bに取り付けられ、パワー基板103Cは収納ケース106の第3の内壁面108Cに取り付けられる。制御基板104は、収納ケース106の第4の内壁面108Dに取り付けられる。
【0029】
この場合、パワー基板103A,103B,103Cは、制御基板104に比して大きなジュール熱を発生することから、放熱フィン107は、第1乃至第3の内壁面108A,108B,108Cの反対側にある第1乃至第3の外壁面109A,109B,109Cに取り付けられることが放熱効率を高める上で好ましい。
【0030】
パワー基板103A〜103Cは、図4に示すように、プリント基板110と、プリント基板110に配置されたFET(不図示)と、アルミ電解コンデンサ111、 パワー基板103A〜103Cと制御基板104との間の配線接続を行うためのコネクタ112、プリント基板110の裏側に配置されたヒートスプレッダ113と、を備えて構成される。ヒートスプレッダ113は高熱伝導材で形成され、FETのジュール熱の放熱を促進させる。
【0031】
図5は、モータコントローラ102の回路図である。制御基板104は、信号入力回路114と、マイコン115を備える。信号入力回路115は、アクセル,ブレーキ,メインスイッチからの回転指示信号、角度センサ信号、温度センサ信号を受けてマイコン115に出力する。マイコン115は、信号入力回路115からの信号に応じて、U相,V相,W相に対応した回転制御信号を発生する。
【0032】
パワー基板103Aは、ゲートドライバー116Aと、電源ラインVと接地ラインEの間に直列に接続されたハイ側FET117A,ロー側FET118Aと、電源ラインVと接地ラインEの間に接続された電源電圧安定化用の電解コンデンサ111Aとを備える。
【0033】
同様に、パワー基板10Bは、ゲートドライバー116Bと、電源ラインVと接地ラインEの間に直列に接続されたハイ側FET117B,ロー側FET118Bと、電源ラインVと接地ラインEの間に接続された電源電圧安定化用の電解コンデンサ111Bとを備える。
【0034】
同様に、パワー基板10Cは、ゲートドライバー116Cと、電源ラインVと接地ラインEの間に直列に接続されたハイ側FET117C,ロー側FET118Cと、電源ラインVと接地ラインEの間に接続された電源電圧安定化用の電解コンデンサ111Cとを備える。
【0035】
パワー基板103Aのハイ側FET117Aとロー側FET118Aの接続ノードは、電動モータMのU相コイルの一端に接続され、パワー基板103Bのハイ側FET117Bとロー側FET118Bの接続ノードは、電動モータMのV相コイルの一端に接続され、パワー基板103Cのハイ側FET117Cとロー側FET118Cの接続ノードは、電動モータMのW相コイルの一端に接続され、各コイルの他端同士が中間点として結合されている。
【0036】
電動モータMは、公知の構造であるが、固定軸に固定された円環状のステータと、ロータを備え、ステータは半径方向外向きに突出する3本のティースを一体に有する形状に形成されており、この3本のティースに各コイルが巻回されている。アウターローラ型の場合、アウターローラにおける内周面に各ティースの突出端面に対向する複数のマグネットが周方向に並べて配置される。
【0037】
各コイルには、モータコントローラ102から三相(U,V,W)に対応した第1乃至第3の制御電流IU,IV,IWが流れることにより、三相ブラシレスモータである電動モータMの回転制御を行うことができる。しかして、電動モータMの回転駆動力は変速機60により減速され、チェーン15を介して後輪に伝達されることで、電動二輪車100を走行させることができる。
【0038】
<第2の実施形態>
本実施形態の電動二輪車100は、図6に示すように、三相ブラシレスモータからなる1個の電動モータMを2個のモータコントローラ102A,102Bで制御するものであり、モータコントローラ102A,102Bは、前輪FWの後方であって、変速機60の前方に配置されたものである。図6において、アタッチメント部101,モータコントローラ102A,102Bは、それぞれ破線で囲んで示してある。
【0039】
モータコントローラ102A,102Bを変速機60に結合させるためのアタッチメント部101は、立方体形状をなしており、モータコントローラ102Aは、アタッチメント部101の前輪FWに対向する面に取り付けられ、もう1つのモータコントローラ102Bは、当該面とは別の面に取り付けられている。モータコントローラ102A,102Bの構成は、第1の実施形態のものと同じである。
【0040】
本実施形態の電動二輪車100によれば、1個の電動モータMに対して2個のモータコントローラ102A,102Bの制御電流を供給しているので、第1の実施形態のものに比して出力容量を増加することができる。また、2つのモータコントローラ102A,102Bは、前輪FWの後方であって、変速機60の前方に配置されていることから、配置スペースが確保され、その大型化を可能としている。
【0041】
また、2つのモータコントローラ102A,102Bは、アタッチメント部101の別々の面に取り付けられているので、走行風を効率よく2つのモータコントローラ102A,102Bに当てることができる。
【0042】
図7は、モータコントローラ102の構成を示すブロック図である。図示のように、電動モータMは三相ブラシレスモータであり、モータコントローラ102Aは、電動モータMを制御するために、それぞれ三相(U,V,W)に対応した第1乃至第3の制御電流IU1,IV1,IW1を出力するパワー基板103A,103B,103Cと、制御基板104を備え、バッテリー105からの電源供給を受けて動作する。
【0043】
モータコントローラ102Bも、電動モータMを制御するために、それぞれ三相(U,V,W)に対応した第1乃至第3の制御電流IU2,IV2,IW2を出力するパワー基板103A,103B,103Cと、制御基板104を備え、バッテリー105からの電源供給を受けて動作する。
【0044】
この場合、モータコントローラ102Aの第1の制御電流IU1と、モータコントローラ102Bの第1の制御電流IU2は同じ位相を有し、モータコントローラ102Aの第2の制御電流IV1と、モータコントローラ102Bの第2の制御電流IV2は同じ位相を有し、モータコントローラ102Aの第3の制御電流IW1と、モータコントローラ102Bの第3の制御電流IW2は同じ位相を有している。
【0045】
制御基板104,104はマイコンを含んで構成され、アクセル,ブレーキ,メインスイッチからの回転指示信号、並びに電動モータMに設けられた角度センサと温度センサからのセンサ信号に基づいて、モータコントローラ102A,102Bのパワー基板103A,103B,103Cを制御するための制御信号を出力する。
【0046】
一方、電動モータMは、三相ブラシレスモータであるが、第1の実施形態のものとは異なり、3本のU相コイル,V相コイル,W相コイルを1組としたものを2組備えている。すなわち、電動モータMは、固定軸に固定された円環状のステータと、ロータを備え、ステータは半径方向外向きに突出する6本のティースを一体に有する形状に形成されており、この6本のティースに、周方向に連続する3本ずつを1組として、各コイルが巻回されている。
【0047】
そして、1組目のU相コイル,V相コイル,W相コイルにモータコントローラ102Aの対応する第1乃至第3のIU1,IV1,IW1が供給され、2組目のU相コイル,V相コイル,W相コイルにモータコントローラ102Bの対応する第1乃至第3のIU2,IV2,IW2が供給されるようになっている。これにより、第1の実施形態のものに比してモータコントローラの出力容量を増加することができる。このような複数組のコイルを備えた電動モータは、特開2009−95124号公報に記載されている。
【0048】
図7の例では、2組のU相コイル,V相コイル,W相コイルを備えた電動モータMを2個のモータコントローラ102A,102Bで制御しているが、一般には、n組(nは2以上の偶数)のU相コイル,V相コイル,W相コイルを備えた電動モータを2個のモータコントローラで制御することができる。
【0049】
次に、複数のモータコントローラの配置例について図8乃至図12に基づいて説明する。図8の配置は、立方体形状をなした1個のアタッチメント部101の2つの面に2個のモータコントローラ102A,102Bを取り付け、全体としてL字形状をなしたものであり、L型2気筒と称されるものである。モータコントローラが取り付けられていない残りの4面のいずれかが、変速機60に対する取り付け面となっている。
【0050】
図9の配置は、扁平直方体形状をなした1個のアタッチメント部101の1つの大面積の面に2個のモータコントローラ102A,102Bを並列配置したものであり、並列2気筒と称されるものである。2個のモータコントローラ102A,102Bが取り付けられた面の反対側の面が、変速機60に対する取り付け面となっている。
【0051】
図10の配置は、立方体形状をなした1個のアタッチメント部101の4面に4個のモータコントローラ102A,102B,102C,102Dを取り付けたものであり、ラジアル4気筒と称されるものである。モータコントローラが取り付けられていない残りの2面のどちらかが、変速機60に対する取り付け面となっている。
【0052】
図11の配置は、直方体形状をなした1個のアタッチメント部101の1つの面に
2個のモータコントローラ102A,102Bを並列配置し、これに隣接する1つの面に2個のモータコントローラ102C,102Dを並列配置したものであり、L型4気筒と称されるものである。
【0053】
図12の配置は、立方体形状をなした1個のアタッチメント部101の5面に5個のモータコントローラ102A,102B,102C,102D,102Eを取り付けたものであり、ラジアル5気筒と称される。モータコントローラが取り付けられていない残りの1面が、変速機60に対する取り付け面となっている。
【0054】
なお、第1の実施形態では、1個の電動モータMを1個のモータコントローラ102で制御し、第2の実施形態では、1個の電動モータMを複数個のモータコントローラで制御しているが、複数個の電動モータMを、それぞれを1個又は複数のモータコントローラで制御する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
FW 前輪
60 変速機
100 電動二輪車
101 アタッチメント部
102 モータコントローラ
103A,103B,103C パワー基板
104 制御基板
105 バッテリー
106 収納ケース
107 放熱フィン
M 電動モータ
図1
図2
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