(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168110
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】スライドシート用のワイヤハーネス配索装置
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20170713BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20170713BHJP
F16G 13/16 20060101ALI20170713BHJP
B60N 2/44 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
H02G11/00 060
B60R16/02 620A
F16G13/16
B60N2/44
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-136422(P2015-136422)
(22)【出願日】2015年7月7日
(65)【公開番号】特開2017-22806(P2017-22806A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美
(72)【発明者】
【氏名】濱本 勇
(72)【発明者】
【氏名】榊原 敬和
(72)【発明者】
【氏名】大谷 努
【審査官】
石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−237394(JP,A)
【文献】
特開2012−45994(JP,A)
【文献】
特開2012−191830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B60N 2/44
B60R 16/02
F16G 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるスライドシートに配索するワイヤハーネスを挿通する余長吸収ケースをフロア側に設置し、該余長吸収ケースに設けた上面開口のスライダ用ガイド穴に、前記ワイヤハーネスを貫通すると共に前記スライドシートに連動するスライダを摺動自在に搭載しているスライドシート用のワイヤハーネス配索装置において、
前記スライダの前後にベルトまたはリンクプレートからなる遮蔽帯材を連結すると共に、前記スライダ用ガイド穴の両側下面に沿って該遮蔽帯材の幅方向の両側を摺動可に保持するガイド溝を設け、該遮蔽帯材の中央部で前記スライダ用ガイド穴を塞ぐ構成としているスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【請求項2】
前記余長吸収ケースは直線状のレール部と、該レール部の前端または後端に連続すると共に先端側に円弧部を備えているターン部が連続するJ形状であり、浅底の本体に蓋をかぶせて水平配置し、前記蓋に前記スライダ用ガイド穴を設けており、かつ、
前記遮蔽帯材は樹脂製またはゴム製の環状ベルトとし、該環状ベルトの上下部は前記余長吸収ケースの前記レール部とターン部を含めた前後直線部分の全長に延在する長さにすると共に、該環状ベルトの前後端が該余長吸収ケースに設けた上下円弧部に沿って円弧状に巻き付けられ、該環状ベルトの上部の幅方向中央部で前記スライダ用ガイド穴を塞ぐ構成としている請求項1に記載のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【請求項3】
前記余長吸収ケースは直線状のレール部と、該レール部の前端および後端に連続する前後一対のターン部を有する形状であり、浅底の本体に蓋をかぶせて水平配置し、前記蓋のレール部に前記スライダ用ガイド穴を設けており、
前記遮蔽帯材は樹脂製のリンクを回転可に軸着して順次連結するリンクプレートとし、連結する前記リンクの間に前記スライダを介在させて連結し、前記リンクプレートの幅方向両側を摺動自在に保持するガイド溝を前記スライダ用ガイド穴の両側下面および前記前後のターン部の周縁に沿って連続して設け、前記リンクプレートの幅方向中央部で前記スライダ用ガイド穴を塞ぐ構成としている請求項1に記載のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【請求項4】
前記各リンクにワイヤハーネス用の保持クリップまたはワイヤハーネス用の締結バンドを設け、前記スライダから前記余長吸収ケース内に引き出すワイヤハーネスを前記保持クリップまたは締結バンドで前記リンクプレートに取り付けている請求項3に記載のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライドシート用のワイヤハーネス配索装置に関し、特に、ワイヤハーネス挿通用のスライダをスライドシートの移動に連動可能とするために余長吸収ケースに設けられた開口からの異物混入を防止するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートには電動リクライニング装置やシートヒータなど種々の電装品が装備されており、これらの電装品に給電するために、車体フロア側からシートに給電用のワイヤハーネスが配索されている。スライドシートの場合には、ワイヤハーネスをシートのスライド動作に追従させる必要があり、そのためワイヤハーネスに余長部を持たせて配索している。
【0003】
この種のスライドシートへのワイヤハーネスの配索装置は、特開2010−193599号公報(特許文献1)、特開2014−121930号公報(特許文献2)等に記載されているように、ワイヤハーネスの電線余長部を収容する余長吸収ケースを設け、該余長吸収ケースをシートレールの側方のフロアに配置している場合が多い。該配索装置では、シートに配索するワイヤハーネスを挿通するスライダを余長吸収ケースに設けるスライド用空間に摺動自在に搭載し、該スライダを通したワイヤハーネスを余長吸収ケース内でターンさせてフロア側へ引き出している。
【0004】
前記特許文献2等で開示されているスライドシートへのワイヤハーネスの配索装置では、具体的には、
図15(A)(B)に示すように、フロア側に水平配置される大略J形状の余長吸収ケース100の中央から後端に延在する直線部100aの上面にスライダ110がシートの前後移動に連動して移動できるガイド穴120を設けている。該ガイド穴120は余長吸収ケース100の浅底の本体100xにかぶせる蓋100yに貫通して設けている。前記スライダ110にワイヤハーネス150を貫通させ、スライダ110の上端から引き出すワイヤハーネス150をシート側へ配索してシートハーネスと接続する一方、ガイド穴120を通して余長吸収ケース100内に突出するスライダ110の下部から引き出すワイヤハーネス150を余長吸収ケース100の前部ターン100b内に挿通してUターンさせ、開口100cから引き出してフロアハーネスと接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−193599号公報
【特許文献2】特開2014−121930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、従来の余長吸収ケース100には、シートの前後移動に応じてスライダ110を連動させるために、上面に開口したガイド穴120を設けているため、該ガイド穴120を通して余長吸収ケース100内に粉塵、小石、釘等の異物が混入する恐れがある。特に、シートの前後移動距離が400mm〜1200mmと長くなるロングスライドシートでは、スライダの移動距離が長くなるためガイド穴120の長さも大となり、異物混入がより発生しやすい状況となる。
このように余長吸収ケース内に異物が混入すると、スライダ110の動作が阻害され、スライダが動かなくなれば、ワイヤハーネスの断線に至る恐れもある。
【0007】
本発明は前記問題を解消せんとするもので、余長吸収ケースの上面に開口するスライダ用のガイド穴から異物が混入しないようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、車両に搭載されるスライドシートに配索するワイヤハーネスを挿通する余長吸収ケースをフロア側に設置し、該余長吸収ケースに設けた上面開口のスライダ用ガイド穴に、前記ワイヤハーネスを挿通すると共に前記スライドシートに連動するスライダを摺動自在に搭載しているスライドシート用のワイヤハーネス配索装置において、
前記スライダの前後にベルトまたはリンクプレートからなる遮蔽帯材を連結すると共に、前記スライダ用ガイド穴の両側下面に沿って該遮蔽帯材の幅方向の両側を摺動可に保持するガイド溝を設け、該遮蔽帯材の中央部で前記スライダ用ガイド穴を塞ぐ構成としているスライドシート用のワイヤハーネス配索装置を提供している。
【0009】
スライドシートのシート下部に突設する車軸で保持した車輪を摺動自在に嵌合するシートレールの側方に前記余長吸収ケースを平行設置し、前記車軸またはシートで前記スライダから引き出したワイヤハーネスを支持し、スライドシートの移動にスライダを連動させ、該スライダ内を上方から下横向きに屈曲して通して前記余長吸収ケースに挿通するワイヤハーネスは、スライドシートの前後移動時に前記余長吸収ケース内での迂回量を調節してワイヤハーネスの余長吸収を行っている。
【0010】
スライドシートの前後移動に連動してスライダが移動する時に、該スライダに連結した遮蔽帯材も連動してガイド穴の下面を塞ぎながら前後移動する。これにより、遮蔽帯材の中央部で、前記スライダにより塞がれない部分のガイド穴を塞ぎ、上面開口のスライダ用ガイド穴の全長が遮蔽帯材とスライダとにより閉鎖され、ガイド穴を通して異物が余長吸収ケースに混入するのを防止できる。その結果、異物混入によりスライダが動かなくなったり、断線の発生を確実に防止することができる。
【0011】
具体的には、前記余長吸収ケースは直線状のレール部と、該レール部の前端または後端に連続すると共に先端側に円弧部を備えたターン部とが連続するJ形状であり、浅底の本体に蓋をかぶせて水平配置し、前記蓋のレール部に前記スライダ用ガイド穴を設けており、かつ、
前記遮蔽帯材は樹脂製またはゴム製の環状ベルトとし、該環状ベルトの上下部は前記余長吸収ケースの前記レール部とターン部を含めた前後直線部分の全長に延在する長さにすると共に、該環状ベルトの前後端が該余長吸収ケースに設けた上下円弧部に沿って円弧状に巻き付けられる形状とし、該環状ベルトの上部の幅方向中央部で前記スライダ用ガイド穴を塞ぐ構成としている。
【0012】
前記スライダより前記余長吸収ケース内に引き出して、該余長吸収ケース内をターンさせて挿通させる前記ワイヤハーネスは、コルゲートチューブあるいはキャタピラ型外装材で外装することが好ましい。
【0013】
あるいは、前記余長吸収ケースは直線状のレール部と、該レール部の前端および後端に連続する前後一対のターン部を有する形状であり、浅底の本体に蓋をかぶせて水平配置し、前記蓋のレール部に前記スライダ用ガイド穴を設けており、
前記遮蔽帯材は樹脂製のリンクを回転可に軸着して順次連結するリンクプレートとし、連結する前記リンクの間に前記スライダを介在させて連結し、前記リンクプレートの幅方向両側を摺動自在に保持するガイド溝を前記スライダ用ガイド穴の両側下面および前記前後のターン部の周縁に沿って連続して設け、前記リンクプレートの幅方向中央部で前記スライダ用ガイド穴を塞ぐ構成としてもよい。
【0014】
前記各リンクにワイヤハーネス用の保持クリップまたはワイヤハーネス用の締結バンドを設け、前記スライダから前記余長吸収ケース内に引き出すワイヤハーネスを前記保持クリップまたは締結バンドで前記リンクプレートに取り付けてもよい。または、ワイヤハーネスをリンクプレートで保持せずに、コルゲートチューブまたはキャタピラ型外装材で外装してもよい。
【0015】
スライドシート用のシートレールに沿ってフロア側に固定する前記余長吸収ケースは、そのレール部の上面を前記シートレールに沿って配置すればよく、該レール部に連続するターン部は水平配置しても良いし、下向きに垂直配置してもよい。
【発明の効果】
【0016】
前記のように、本発明では、スライドシートと連動するスライダに環状ベルトまたはリンクプレートからなる遮蔽帯材を連結しているため、スライダを移動させると共に該スライダから引き出すワイヤハーネスを挿通するために設けているスライダ用ガイド穴を遮蔽帯材で塞ぐことができ、スライダ用ガイド穴を通して余長吸収ケース内に異物が混入するのを防止できる。よって、スライダのスムーズな移動を保証でき、該スライダを貫通するワイヤハーネスの損傷および断線の発生を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のワイヤハーネス配索装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図3】(A)は余長吸収ケースの斜視図、(B)は該余長吸収ケースに摺動自在に嵌合するスライダの斜視図である。
【
図6】(A)は環状ベルトとスライダとレール材の組立体の斜視図、(B)は前記組立体を本体に組みつけた状態の要部斜視図である。
【
図7】第1実施形態の変形例を示し、(A)は余長吸収ケースの分解斜視図、(B)は余長吸収ケースの一部拡大斜視図である。
【
図9】第2実施形態の余長吸収ケースの分解斜視図である。
【
図10】(A)は前記第2実施形態の構成部材のリンクプレートを構成するリンクの平面図、(B)はリンクプレートの一部正面図である。
【
図11】リンクプレートとスライダの連結部を示す説明図である。
【
図13】第2実施形態の作用を示し、(A)はスライドシートが最後端位置でのリンクプレートの位置を示す概略平面図、(B)はスライドシートが最前端位置でのリンクプレートの位置を示す概略平面図である。
【
図14】第2実施形態の変形例を示し、(A)はリンクの正面図、(B)は締結バンドでワイヤハーネスを保持している状態を示す斜視図である。
【
図15】従来例を示し、(A)は余長吸収ケースの斜視図、(B)は(A)の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至
図6に本発明の第1実施形態を示す。
図1に示す自動車に搭載するスライドシート1に装着した電装品(図示せず)に給電するために、フロアパネル70に沿って配索するフロアハーネスから分岐したシート給電用のワイヤハーネス2を
図2に示すように、車室床材(モール)71の下面に配置した余長吸収ケース10を通して、スライドシート1へと配索し、スライドシート1のシート内部に配線しているシートハーネス72とシート下面でコネクタC1とC2とで接続している。
【0019】
図2に示すように、スライドシート1のシート下面から突設した車軸6aに支持した車輪6bを摺動自在に嵌合するシートレール7と平行に前記余長吸収ケース10を配置してモール71の下面に設置している。
【0020】
余長吸収ケース10は、
図3に示すように、直線状のレール部10aと該レール部10aの前端に連続すると共に先端に円弧部を備えているターン部10bが連続するJ形状とし、水平配置している。該余長吸収ケース10は樹脂成形品からなり、浅底の本体11にワイヤハーネス2を挿通した後に蓋12をかぶせつ構成としている。該蓋12の上面は、乗員により足踏みされた時の強度アップを図るために、多数の溝12aを設けたハニカム構造としている。
【0021】
蓋12のレール部には、スライダ用ガイド穴15(以下、ガイド穴15と略す)を前後方向の全長にわたって延在させて穿設している。該ガイド穴15はスライダ20を摺動自在に嵌合するものである。スライダ20は
図3(B)に示すように、縦向き筒部20aの下部に横向き筒部20bを屈折させて設けた四角筒形状としている。該スライダ20の中空部20cの両端を上面と下部前端面に開口させ、該開口を通してワイヤハーネス2をスライダ20内に挿通している。前記上面開口20dから引き出すワイヤハーネス2をスライドシート1のシートハーネス72と接続し、下部前端開口20eから引き出すワイヤハーネス2にコルゲートチューブ8を外装して余長吸収ケース10内に通している。該余長吸収ケース10のターン部10bの他側直線部の先端に開口を設け、該開口を通してワイヤハーネス2をフロア側へ引き出し、引き出し位置でクリップにより車体パネルに固定している。
【0022】
スライダ20の縦向き筒部20aの下面に横向き筒部20bが連続する部分20fをガイド穴15に摺動自在に嵌合している。詳しくは、スライダ20の前記部分20fの左右側面をガイド穴15の左右側面に摺接させて、スライドシート1の前後移動に連動してスライダ20がガイド穴15内を移動できるようにしている。スライダ20で塞がれない部分のガイド穴15は開口するが、スライダ20に連結してスライダ20と共に移動する樹脂製またはゴム製の環状ベルト30からなる遮蔽帯材でガイド穴15を下面から覆っている。このように、異物混入が発生する恐れがあるガイド穴15の開口を
図4に示すように、スライダ20と連動する環状ベルト30で覆っている。
【0023】
環状ベルト30の上部30aと下部30bの長さは、余長吸収ケース10のレール部10aとターン部10bを含めた前後直線部分の全長と同等な長さとしている。かつ、
図5、
図6に示すように、環状ベルト30の前後端30c、30dを余長吸収ケース10の前後端に設けた上下円弧部16A、16Bに沿って円弧状に巻き付けている。該環状ベルト30の上部30aの一部を分断し、分断した両端を前記スライダ20の横向き筒部20bの前後上面に止具33で固定している。このように、スライダ20と環状ベルト30とを連結して、スライダ20と連動する環状ベルト30の上部30aの幅方向中央でガイド穴15を下面側で塞ぐ構成としている。
【0024】
余長吸収ケース10は
図5に示すように、本体11、蓋12、本体11の下面に取り付ける下カバー17、前記環状ベルト30をガイドするレール材18とから構成している。本体11の周壁11bには蓋12の周壁12bに設けるロック片12cとロックするロック枠11cを設けている。かつ、環状ベルト30の配置箇所と対応する本体11の底面は
図6(B)に示すように開口11hとしている。下カバー17の周縁から突設した結合片17aを本体11の周壁11bに係止して組みつけた状態で、開口11hの下方を、環状ベルトの下部30bの挿通空間をあけて下カバー17で閉鎖している。
【0025】
レール材18の後半部には、
図4に示すように、幅方向に一対のガイド溝18m1、18m2を設けたL字状の支持片18b、18cを備えている。前半部は外側の前記支持片18bに連続して前方へ延在する支持片18eを備え、該支持片18eに前記ガイド溝18m1と連続するガイド溝を設けている。該レール材18の幅方向の一対のガイド溝18m1と18m2に前記環状ベルト30の幅方向の両側部を挿入して保持し、スライダ20の移動に応じて環状ベルト30を前後方向に摺動自在にガイドしている。
【0026】
図6に示すように、スライダ20と連結した環状ベルト30にレール材18を組みつけた状態で、本体11に組みつけている。本体11にはレール部10aの後端と、レール部10aに直線状に連続するターン部10bの前端に、上下円弧部16A、16Bを設けている。
図6(B)に示すように、環状ベルト30の前後端30c、30dを上下円弧部16A、16Bに巻き付けている。
【0027】
前記のように、環状ベルト30にレール材18を取り付けて本体11に組みつけ、その後、本体11に下カバー17を取り付け、本体11内にワイヤハーネス2を挿通した後に、蓋12を組みつけている。このように組みつけて、
図4の断面図に示す構成としている。即ち、環状ベルト30の上部30aの幅方向両側をレール材18のガイド溝18m1、18m2に摺動自在に支持し、前後端30c、30dで連続する下部30bを下カバー17で閉鎖された本体11の底面の開口11hに摺動自在に配置している。これにより、スライダ20と連結した環状ベルト30は、スライダ20と連動して循環移動し、ガイド穴15を下面側から確実に塞ぐことができる構成としている。
【0028】
前記実施形態では、余長吸収ケース10内に挿通するワイヤハーネス2をコルゲートチューブ8で外装しているが、前記特許文献2に記載のキャタピラ型のプロテクタで外装してもよい。また、スライドシート1内に収容しているシートハーネスをシート下方へ引き出し、スライダ20を通して余長吸収ケース10内に挿入し、該余長吸収ケース10内を挿通させた後にフロア側へ引き出し、フロア側でフロアハーネスとコネクタ接続してもよい。さらに、余長吸収ケース10はレール部の後端にターン部を連続させ、J形状を前後逆転してもよい。
【0029】
図7及び
図8に第1実施形態の変形例を示す。
変形例では、余長吸収ケースのレール材を相違させていると共に、下カバーを無くし、かつ、蓋12と本体11とで環状ベルト30の幅方向両側を挿入するガイド溝42A、42Bを設けている点が相違する。
図7(A)に示すように、余長吸収ケース10Bは本体11、蓋12と、レール材18Bと、該レール材18Bの前後端に回転自在に軸着する一対のローラ40で組み立てている。レール材18Bは長尺帯状の底部18iを本体11の底面の下部にベルト挿通空間18jをあけて組みつけ、かつ、前後両端に円弧枠18kを設けている。
【0030】
図7(B)に示すように、レール材18Bの前後両端の円弧枠18k内に前記ローラ40をそれぞれ軸40aで回転自在に取り付けている。環状ベルト30の前後両端をローラ40に巻き付けて円弧枠18k内に収容している。
図8に示すように、環状ベルト30の上部30aの幅方向両側を前記ガイド溝42A、42Bに摺動自在に挿入すると共に、下部30bを本体11の底面とレール材18Bの底部18iの間のベルト挿通空間18jに通している。
【0031】
他の構成は第1実施形態と同様であり、作用効果も第1実施形態と同様である。即ち、環状ベルト30の上部30aをスライダに連結し、スライダと連動させた環状ベルト30でガイド穴15を下面から塞ぎ、ガイド穴15を通して余長吸収ケース10B内に異物が混入するのを防止している。
【0032】
図9乃至
図12に第2実施形態を示す。
第2実施形態はスライダが摺動するガイド穴を下面側で塞ぐ遮蔽帯材をリンクプレート50とすると共に、余長吸収ケース10Cの形状を相違させている。
【0033】
図9に示すように、余長吸収ケース10Cは直線状のレール部10aの前端および後端に前後一対のターン部10b−1、10b−2が連続する形状とし、水平配置している。該余長吸収ケース10Cは浅底の本体11と蓋12とからなり、第1実施形態と同様に、蓋12のレール部10aにスライダ20を前後方向に摺動自在に嵌合するガイド穴15を設けている。
なお、蓋12の上面はハニカム構造としていないが、第1実施形態と同様にハニカム構造としてもよい。
【0034】
遮蔽帯材として用いるリンクプレート50は、
図10(A)(B)に示す樹脂製のリンク51を回転可に軸着して順次連結し、余長吸収ケースの前後両側のターン部10b−1、10b−2の先端の円弧部に沿って変形できるリンクプレートとしている。順次連結するリンク51は大略小判形状の基板からなり、中央部51aの一方側51bは底面を切り欠くと共に軸受ボス51dを突設し、他方側51cは上面を切り欠くと共にピン51eを突設している。隣接する一方のリンク51のピン51eを他方の軸受ボス51dに回転自在に嵌合して連結している。さらに、リンク51の中央部51aの幅方向両側からワイヤハーネスを保持する保持クリップ52を突設している。 なお、保持クリップ52に代えて、締結バンドを突設してもよい。
【0035】
リンク51を順次回転自在に軸着して連結しているリンクプレート50は、
図11に示すように、連結するリンク51−Aと51−Bとの間にスライダ20を介在させ、スライダ20の下部の横向き筒部20bの上面の前後両側にリンク51−Aと51−Bの下面を固着している。かつ、横向き筒部20bの前端開口から引き出すワイヤハーネス2をリンク51から突設する保持クリップ52で挟持している。これにより、スライダ20の移動にリンクプレート50を連動させると共に、スライダ20から引き出すワイヤハーネス2をリンクプレート50と連動して余長吸収ケース10C内を移動させている。かつ、該リンクプレート50で保持したワイヤハーネス2は前側のターン部10b−1に設けた開口10hからフロア側へ引き出している。このように、スライダ20の前側に連結するリンクプレート50でワイヤハーネス2を保持しているが、後側に連結するリンクプレート50にはワイヤハーネスを取り付けておらず、ガイド穴15を塞ぐ機能のみを付与している。
【0036】
図12に示すように、蓋12のレール部にはガイド穴15の両側面の下部にコ字形状のガイド溝12m−1、12m−2を設け、リンクプレート50の幅方向の両側をガイド溝12m−1、12m−2に摺動自在に嵌合している。蓋12のレール部に連続する前後ターン部10b−1、10b−2の下面にも、前記ガイド溝12m−1、12m−2に連続するガイド溝を周壁12bに沿って設けている。このように、リンクプレート50のガイド溝を周壁12bの全長に設けるのは、
図13(A)に示すスライドシートの後端位置では、リンクプレート50が、後側のターン部10b−2の周壁全長に移行すると共に、
図13(B)に示すスライドシートの前端位置では、リンクプレート50が、前側のターン部10b−1の周壁全長に移行するためである。
【0037】
他の構成および作用効果は第1実施形態と同様であり、スライダ20の移動に連動してリンクプレート50が移動し、
図13(A)に示す最後端位置から
図13(B)に示す最前端位置までのいずれの位置においても、ガイド穴15を下面側でリンクプレート50で塞ぐことができる。よって、ガイド穴15からの異物混入を防止することができる。
さらに、余長吸収ケース10C内でワイヤハーネス2をリンクプレート50に突設している保持クリップ52で挟持して移動させるため、コルゲートチューブやキャタピラ型のプロテクタで外装する必要はなく、部品点数および作業手数を簡素化できる利点がある。
【0038】
図14に第2実施形態の変形例を示す。
第2実施形態のリンクプレート50ではリンク51Bの中央部からワイヤハーネスに取り付ける締結バンド60を突設している。
図14(A)に示すように、締結バンド60はリンク51Bの中央部の幅方向の一端から締結部60aを突設すると共に、幅方向の他端から係止溝60mを設けたバンド本体60bを突設し、
図14(B)に示すように、締結バンド60のバンド本体60bをワイヤハーネス2に巻き付け、締結部60aで締結して、リンクプレート50でワイヤハーネス2を保持している。他の構成は第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
なお、締結バンドに代えて、前記実施形態と同様に保持クリップを設けてワイヤハーネスを保持してもよい。
【0039】
第2実施形態において、リンクプレートでワイヤハーネスを保持せず、リンクプレートには、スライダに連結してガイド穴を塞ぐ機能だけを持たせ、余長吸収ケース10のワイヤハーネスをコルゲートチューブまたはキャタピラ型プロテクタで外装してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 スライドシート
2 ワイヤハーネス
10 余長吸収ケース
11 本体
12 蓋
12mー1、12mー2、42A、42B ガイド溝
20 スライダ
30 環状ベルト
50 リンクプレート