(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述の軸受構造を備える油圧ポンプでは、回転軸の高速回転に伴って、予圧付与部材が接触する相手部材が高速回転することで、予圧付与部材が摩耗するという問題があった。従って、油圧ポンプにおいては、予圧付与部材の摩耗を抑制しながら、軸受部に適切な予圧を付与できる軸受構造が要請されていた。
【0005】
本発明は、予圧付与部材の摩耗を抑制しながら、軸受部に適切な予圧を付与できる軸受構造を備える油圧ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る油圧ポンプは、ケーシングに対して回転可能に支持された回転軸を有する油圧ポンプであって、回転軸の一端側及び他端側に設けられる軸受部と、回転軸の一端側及び他端側の少なくとも一方側において、回転軸周りに設けられる第1の環状部材と、を備え、一方側の軸受部は、回転軸を回転可能に支持する支持部と、支持部へ前記軸方向への予圧を付与する予圧付与部材と、を有し、軸方向において、一方側の軸受部と回転軸の受部との間には、第1の環状部材が介在しており、第1の環状部材の内径は回転軸の直径よりも大きい。
【0007】
本発明に係る油圧ポンプは、回転軸を回転可能に支持する支持部と、支持部へ軸方向への予圧を付与する予圧付与部材を有する軸受部を備えている。また、軸方向において、軸受部と回転軸の受部との間には、第1の環状部材が介在している。これにより、予圧付与部材を有する軸受部と、高速回転する回転軸との間に、第1の環状部材が配置されるような構成となる。第1の環状部材が介在することで、回転軸の高速回転に伴って軸受部の予圧付与部材又は支持部の高速回転が抑制される。従って、予圧付与部材と相手部材との摩擦によって、予圧付与部材の摩耗が抑制される。以上より、予圧付与部材の摩耗を抑制しながら、軸受部に適切な予圧を付与できる。
【0008】
本発明の他の側面に係る油圧ポンプでは、支持部は、回転軸に取り付けられる内輪と、ハウジングに取り付けられる外輪と、内輪及び外輪との間に配置される転動体と、を有し、軸方向において、予圧付与部材は、支持部と第1の環状部材との間に介在し、内輪及び外輪のうち、予圧付与部材が当接する側の部材は、隙間嵌めによって回転軸またはハウジングに取り付けられる。このような構成により、予圧付与部材が支持部の内輪または外輪と当接することで予圧を付与できる。また、回転軸の高速回転に伴う予圧付与部材の高速回転が、環状部材の介在によって抑制される。
【0009】
本発明の他の側面に係る油圧ポンプでは、支持部は、回転軸に取り付けられる内輪と、ハウジングに取り付けられる外輪と、内輪及び外輪との間に配置される転動体と、を有し、軸方向において、支持部は、予圧付与部材と環状部材との間に介在し、内輪及び外輪のうち、予圧付与部材が当接する側の部材は、隙間嵌めによって回転軸またはハウジングに取り付けられてよい。このような構成により、予圧付与部材が支持部の内輪または外輪と当接することで予圧を付与できる。また、回転軸の高速回転に伴う支持部の高速回転が、環状部材の介在によって抑制される。また、このような構成では、予圧付与部材と回転軸との間に環状部材に加えて支持部が介在するため、予圧付与部材の高速回転が更に抑制される。従って、予圧付与部材の摩耗を更に抑制することができる。
【0010】
本発明の他の側面に係る油圧ポンプでは、回転軸の一端側及び他端側の他方側において、回転軸周りに設けられて軸受部と軸方向に対向する第2の環状部材を更に備えてよい。このような構成により、他方側の軸受部の高速回転を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、予圧付与部材の摩耗を抑制しながら、軸受部に適切な予圧を付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0014】
まず、本実施形態に係る油圧ポンプの構成について説明する。油圧ポンプの一例として、可変容量型ピストンポンプ(以下、単に油圧ポンプと称す。)1について、
図1を参照しつつ説明する。
【0015】
油圧ポンプ1は、ポンプハウジング10(ケーシング)と、ポンプハウジング10に回転可能に支持されるとともにポンプハウジング10から突出する突出端部を有する回転軸20と、回転軸20の周方向に複数のシリンダボア14aを有し、回転軸20と一体に回転するシリンダブロック14と、複数のシリンダボア14a内のそれぞれに摺動自在に設けられたピストン16と、ピストン16の先端部が摺接可能であって、回転軸20に対して傾斜可能に支持された斜板30と、を備えている。油圧ポンプ1では、ピストン16が、斜板30の傾角に応じたストロークの往復動をおこなって、作動流体の吸入および吐出をおこなう。
【0016】
ポンプハウジング10は、フロントハウジング10aとメインハウジング10bとを備えており、これら両部材は図示しないネジ部材によって一体に形成されている。
【0017】
ポンプハウジング10には、一端部及び他端部が軸受部60A、60Bにより回転自在に支持された回転軸20が取り付けられている。回転軸20は、そのポンプハウジング10からの突出端部が、エンジンやモータなどの図示しない動力取出装置に連結されている。動力取出装置の駆動に伴い回転軸20は回転する。
【0018】
ポンプハウジング10の内部には、回転軸20に一体回転可能にスプライン嵌合されたシリンダブロック14が収容されている。シリンダブロック14には、回転軸20の周方向に所定の間隔で配置された複数のシリンダボア14aが形成されている。各シリンダボア14a内にはそれぞれピストン16が摺動自在に挿入されている。各ピストン16の一端部(
図1の左端部)である頭部にはそれぞれシューが取り付けられており、それら複数のシューはリテーナプレート36により一括で保持されている。
【0019】
また、ポンプハウジング10の内部におけるフロントハウジング10a側には、斜板軸受30aを介して回動可能に支持され、かつ、回転軸20の軸線方向に揺動可能な斜板30が収容されている。シリンダブロック14と回転軸20との間に設けられたばね部材34の付勢力をピボット35を介してリテーナプレート36に伝えることで、リテーナプレート36が斜板30側に押し付けられ、各ピストン16はシューを介して斜板30に摺動自在に当接される。また、シリンダブロック14はメインハウジング10bのフロントハウジング10a側と反対側の内端壁面に止着されたバルブプレート40に押接される。
【0020】
そして、シリンダブロック14が回転軸20と一体的に回転されることにより、各ピストン16が斜板30の傾角により規定されたストロークを往復動されるとともに、シリンダボア14aがバルブプレート40に透設された円弧状をなす吸入ポート(不図示)および吐出ポート(不図示)と交互に連通される。これにより作動油が吸入ポートからシリンダボア14a内に吸入され、シリンダボア14a内の作動油はポンプ作用により吐出ポートから吐出される。なお、吸入通路(不図示)および吐出通路(不図示)はメインハウジング10bの他端部側の壁部に形成され、それぞれ吸入ポートおよび吐出ポートと連通されている。
【0021】
油圧ポンプ1は、さらにコントロールピストン50を備えている。コントロールピストン50は、ポンプハウジング10のメインハウジング10bの側部に設けられたハウジング52に収容されている。
【0022】
コントロールピストン50のハウジング52は、回転軸20に対して傾いた方向に延在し、かつ、斜板30の縁部に向かって延びる略円筒状の形状を有している。
【0023】
ハウジング52の開口のうち、斜板30から遠い方の開口は、ネジ54によって塞がれている。それにより、ハウジング52内にはピストン収容室56が画成され、このピストン収容室56にピストン部58が収容されている。なお、ピストン収容室56のうち、ピストン部58とネジ54との間の空間は、作動油が流入する制御室56aとして機能する。
【0024】
ピストン部58は、円柱状の外形を有しており、その径は、ピストン収容室56の内壁面との間に隙間がないように、かつ、ピストン収容室56においてピストン部58が摺動できるように設計される。
【0025】
コントロールピストン50によれば、制御室56aへの作動油を制御することで、ピストン部58を斜板30の向きに往復動させることができる。そして、ピストン部58が斜板30の縁部30bに設けられた球32を押圧すると、斜板30の傾角が変更され、その結果、油圧ポンプ1の吐出容量が変更される。
【0026】
次に、油圧ポンプ1が備える軸受構造100について説明する。軸受構造100は、回転軸20の前端側(一端側)及び後端側(他端側)に設けられる軸受部60A,60Bと、回転軸20の前端側において、回転軸20周りに設けられて軸受部60Aと軸方向に対向する第1の環状部材71Aと、回転軸20の後端側において、回転軸20周りに設けられて軸受部60Bと軸方向に対向する第2の環状部材71Bと、を備えている。回転軸20には、前端側及び後端側において、周方向へ突出するように広がる受部21A,21Bが形成されている。
【0027】
また、前端側の軸受部60Aは、回転軸20を回転可能に支持する支持部65と、支持部65へ軸方向への予圧を付与する予圧付与部材70と、を有している。後端側の軸受部60Bは、回転軸20を回転可能に支持する支持部65のみを有している。軸受部60A,60Bの支持部65としては、予圧が付与されることによって寿命を向上することができる種々のベアリングを用いることができる。例えば、支持部65として、円錐ころ軸受、玉軸受、などの転がり軸受を採用することができる。なお、この実施形態においては、円錐ころ軸受が採用されている。
【0028】
図2は、回転軸20両端側の構造を示す概略拡大図である。
図2においては、紙面左側が「前」に該当し、紙面右側が「後」に該当するものとして以下の説明を行う。
【0029】
前端側においては、軸方向における前方から後方へ向かって順に、軸受部60Aの支持部65、軸受部60Aの予圧付与部材70、第1の環状部材71A、及び受部21Aが設けられている。これによって、軸方向において、軸受部60Aと回転軸20との間には、第1の環状部材71Aが介在する配置となる。軸方向において、予圧付与部材70は、支持部65と第1の環状部材71Aとの間に介在する配置となる。また、後端側においては、軸方向における後方から前方へ向かって順に、軸受部60Bの支持部65、第2の環状部材71B、及び受部21Bが設けられている。これによって、軸方向において、軸受部60Bと回転軸20との間には、第2の環状部材71Bが介在する配置となる。
【0030】
次に、各構成要素について詳細に説明する。前端側の受部21Aは前方に受面21aを有し、後端側の受部21Bは後方に受面21aを有する。また、これらの受面21aは、軸方向に対して垂直に広がる面である。ただし、受部21A,21Bの構成は特に限定されず、受面21aを形成することができる限り、どのような構成を採用してもよい。例えば、回転軸20の径を変更した段差部を受面21aとしてもよい。なお、回転軸20及び受部21A,21Bの材質として、クロムモリブデン鋼等が採用される。
【0031】
前端側の第1の環状部材71Aは、中央に貫通孔を有する円板状の部材であり、リングワッシャ等によって構成される。第1の環状部材71Aは、受部21Aの受面21a上に取り付けられる。すなわち、第1の環状部材71Aは、受部21Aよりも前端側に配置され、第1の環状部材71Aの端面が受面21aと接触するように配置される。第1の環状部材71Aは、回転軸20に対して自由に回転可能となるように取り付けられる。すなわち、第1の環状部材71Aの内径(貫通孔の直径)は回転軸20の直径よりも大きく設定されている。言い換えると、第1の環状部材71Aは隙間嵌めにより回転軸20に外嵌されている。なお、
図2においては、第1の環状部材71Aの外径(第1の環状部材71Aの直径)は受面21aより大きく設定されているが、特に限定されない。
【0032】
後端側の第2の環状部材71Bは、中央に貫通孔を有する円板状の部材であり、リングワッシャ等によって構成される。第2の環状部材71Bは、受部21Bの受面21a上に取り付けられる。すなわち、第2の環状部材71Bは、受部21Bよりも後端側に配置され、第2の環状部材71Bの前端面が受面21aと接触するように配置される。第2の環状部材71Bは、回転軸20に対して自由に回転可能となるように取り付けられる。すなわち、第2の環状部材71Bの内径(貫通孔の直径)は回転軸20の直径よりも大きく設定されている。言い換えると、第2の環状部材71Bは隙間嵌めにより回転軸20に外嵌されている。なお、
図2においては、第2の環状部材71Bの外径(第2の環状部材71Bの直径)は受面21aより大きく設定されているが、特に限定されない。また、環状部材71A,71Bの材質として、耐摩耗性を確保するために、リン酸塩皮膜の表面処理等が採用される。環状部材71A,71Bの硬度はHRC40〜60に設定されてよい。環状部材71A,71Bの重さは、20〜100グラムに設定されてよい。環状部材71A,71Bの外径は30mm〜50mmに設定されて、厚さは2mm〜5mmに設定されてよい。
【0033】
前端側の軸受部60Aは、受部21Aの受面21aから前方へ離間した位置に配置される。支持部65は、ハウジング10側に配置される円環状の外輪61と、回転軸20側に配置される円環状の内輪62と、外輪61と内輪62間に配置される転動体63と、を有している。
図2に例示されている支持部65として円錐ころ軸受が採用されている。内輪62の転動面(すなわち外周面)及び外輪61の転動面(すなわち内周面)は、前方へ向かって先細りとなるように円錐状に傾斜した状態で設けられている。本実施形態において内輪62は、回転軸20に対して隙間嵌めによって取り付けられている。また、本実施形態において外輪61は、ハウジング10に対して締まり嵌めによって取り付けられている。例えば、外輪61をハウジング10に対して圧入することによって外輪61をハウジング10に取り付ける。支持部65の材質としては、例えば、高炭素クロム鋼等が採用される。
【0034】
軸受部60Aの予圧付与部材70は、支持部65と第1の環状部材71Aとに挟まれることによって、支持部65に対して予圧を付与することができる弾性部材によって構成されている。本実施形態では、例えば、中央位置に貫通孔を有する円環状の皿バネが用いられる。予圧付与部材70は、回転軸20に対して隙間嵌めによって取り付けられている。予圧付与部材70の前側の端部(内周縁)は、支持部65の内輪62の端面と当接している。予圧付与部材70の外径は第1の環状部材71Aよりも小さく設定されており、予圧付与部材70の後側の端部(外周縁)は第1の環状部材71Aと当接している。なお、予圧付与部材70の材料として、耐摩耗性を確保するために、炭素工具鋼等を採用してよい。予圧付与部材70の硬度はHV200〜300に設定されてよい。また、予圧付与部材70の重さは、10〜30グラムに設定されてよい。予圧付与部材70の外径は30〜50mmに設定されて、厚さは1.5〜3mmに設定されてよい。
【0035】
後端側の軸受部60Bは、受部21Bの受面21aから後方へ離間した位置に配置される。支持部65は、受面21a上に配置されている。支持部65は、ハウジング10側に配置される円環状の外輪61と、回転軸20側に配置される円環状の内輪62と、外輪61と内輪62間に配置される転動体63と、を有している。本実施形態において内輪62は、回転軸20に対して隙間嵌めによって取り付けられていてよい。すなわち、内輪62の内周面と回転軸20の外周面との間には僅かな隙間が設けられていてよい。または、内輪62は、回転軸20に対して締まり嵌めで取り付けられていてもよい。外輪61は、ハウジング10に対して締まり嵌めによって取り付けられていてよい。すなわち、外輪61は、ハウジング10に対して圧入されることによって隙間なく取り付けられてよい。ただし、外輪61は、回転軸21に対して隙間嵌めで設けられていてよい。支持部65の材質として、例えば、高炭素クロム鋼等が採用される。
【0036】
以上のように構成された油圧ポンプ1の軸受構造100における予圧の付与状況について説明する。予圧付与部材70は、軸方向において、支持部65の内輪62と第1の環状部材71Aとの間に介在している。従って、予圧付与部材70は、第1の環状部材71Aを介して受部21Aに支持された状態で、支持部65の内輪62を前方へ向かって押圧する。これにより、軸受部60Aにおいて、内輪62及び外輪61に予圧が付与される。
【0037】
また、予圧付与部材70は、受部21Aを後方へ向かって押圧する。従って、予圧付与部材70は、回転軸20、受部21B、第2の環状部材71Bを介して後端側の支持部65の内輪62を後方へ向かって押圧する。これにより、軸受部60Bにおいて、内輪62及び外輪61に予圧が付与される。
【0038】
次に、本実施形態に係る油圧ポンプ1の作用・効果について説明する。
【0039】
本実施形態に係る油圧ポンプ1は、回転軸20を回転可能に支持する支持部65と、支持部65へ軸方向への予圧を付与する予圧付与部材70と、を有する軸受部60Aを備えている。また、軸方向において、軸受部60Aと回転軸20との間には、第1の環状部材71Aが介在している。これにより、予圧付与部材70を有する軸受部60Aと、高速回転する回転軸20との間に、第1の環状部材71Aが配置されるような構成となる。第1の環状部材71Aが介在することで、回転軸20の高速回転に伴って軸受部60Aの予圧付与部材70又は支持部65が高速回転することが抑制される。従って、予圧付与部材70と相手部材との摩擦によって、予圧付与部材70の摩耗が抑制される。以上より、予圧付与部材70の摩耗を抑制しながら、軸受部60Aに適切に予圧を付与できる。
【0040】
また、本実施形態に係る油圧ポンプ1では、支持部65は、回転軸20に取り付けられる内輪62と、ハウジング10に取り付けられる外輪61と、内輪62及び外輪61との間に配置される転動体63と、を有する。また、軸方向において、予圧付与部材70は、支持部65の内輪62と第1の環状部材71Aとの間に介在している。内輪62及び外輪61のうち、予圧付与部材70が当接する側の部材である内輪62は、隙間嵌めによって回転軸20に取り付けられる。このような構成により、予圧付与部材70が支持部65の内輪62と当接することで予圧を付与できる。また、回転軸20の高速回転に伴う予圧付与部材70の高速回転が、第1の環状部材71Aの介在によって抑制される。仮に、回転軸20の受部21Aと予圧付与部材70が直接接触していた場合は、予圧付与部材70は回転軸20の回転に伴って高速回転することとなる。これによって支持部65と予圧付与部材70との間の摩擦によって、予圧付与部材70が摩耗する。一方、本実施形態では、第1の環状部材71Aが受部21Aと直接接触しており、予圧付与部材70が第1の環状部材71Aと接触している。従って、回転軸20に対して自由に回転可能な第1の環状部材71Aにより、回転軸20の回転がそのまま予圧付与部材70に伝わることが抑制される。即ち、回転軸20の高速回転に伴い受部21Aに接触する第1の環状部材71Aは連れ回るが、その連れ周りの回転数は回転軸20の回転数よりも抑えられることとなるため、第1の環状部材71Aに接触する予圧付与部材70の連れ回りの回転数も回転軸20の回転数よりも抑えられることとなる。その結果、予圧付与部材70と該予圧付与部材70に接触する相手部材との間の摩擦による予圧付与部材70の摩耗を抑制できる。
【0041】
また、本実施形態に係る軸受構造100では、回転軸20の後端側において、回転軸20周りに取り付けられて軸受部60Bと軸方向に対向する第2の環状部材71Bを更に備えている。このような構成により、他方側の軸受部60Bの高速回転を抑制することができる。
【0042】
以上、本発明に係る軸受構造の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0043】
例えば、上述の実施形態では、予圧付与部材70が内輪62と当接していた。これに代えて、
図3に示す油圧ポンプ150のように、予圧付与部材70が外輪61と当接している構造を採用してもよい。この場合、支持部65の外輪61はハウジング10に対して隙間嵌めにより取り付けられる。これにより、予圧付与部材70は、第1の環状部材71Aを介して回転軸20の受部21Aに支持されながら、外輪61を前方へ向かって押圧する。従って、外輪61及び内輪62に予圧が付与される。
【0044】
図3に示すような変形例に係る油圧ポンプ150では、軸方向において、予圧付与部材70は、支持部65の外輪61と第1の環状部材71Aとの間に介在している。内輪62及び外輪61のうち、予圧付与部材70が当接する側の部材である外輪61は、隙間嵌めによってハウジング10に取り付けられる。このような構成により、予圧付与部材70が支持部65の外輪61と当接することで予圧を付与できる。また、回転軸20の高速回転に伴う予圧付与部材70の高速回転が、第1の環状部材71Aの介在によって抑制される。第1の環状部材71Aが受部21Aと直接接触しており、予圧付与部材70が第1の環状部材71Aと接触している。従って、回転軸20に対して自由に回転可能な第1の環状部材71Aにより、回転軸20の回転がそのまま予圧付与部材70に伝わることが抑制される。即ち、回転軸20の高速回転に伴い受部21Aに接触する第1の環状部材71Aは連れ回るが、その連れ周りの回転数は回転軸20の回転数よりも抑えられることとなるため、第1の環状部材71Aに接触する予圧付与部材70の連れ回りの回転数も回転軸20の回転数よりも抑えられることとなる。その結果、予圧付与部材70と該予圧付与部材70に接触する相手部材との間の摩擦による予圧付与部材70の摩耗を抑制できる。
【0045】
また、例えば、
図2に示す実施形態では、予圧付与部材70が支持部65と第1の環状部材71Aとの間に介在していた。これに代えて、
図4に示すような油圧ポンプ200を採用してもよい。この油圧ポンプ200では、軸方向において、支持部65は、予圧付与部材70と第1の環状部材71Aとの間に介在している。すなわち、予圧付与部材70は、支持部65よりも前側に配置されている。予圧付与部材70の前端(内周縁)はハウジング10に当接され、予圧付与部材70の後端(外周縁)は支持部65の外輪61に当接されている。この油圧ポンプ200では、内輪62及び外輪61のうち、予圧付与部材70が当接する側の部材である外輪61はハウジング10に対して隙間嵌めで取り付けられていてよい。これにより、予圧付与部材70は、ハウジング10で支持されながら、外輪61を後方へ向かって押圧する。従って、外輪61及び内輪62に予圧が付与される。
【0046】
図4に示すような変形例に係る油圧ポンプ200では、予圧付与部材70が支持部65の外輪61と当接することで予圧を付与できる。また、予圧付与部材70の相手部材である支持部65の回転軸20に伴う高速回転が、第1の環状部材71Aの介在によって抑制される。また、このような構成では、予圧付与部材70と回転軸20との間に第1の環状部材71Aに加えて支持部65が介在するため、回転軸20の回転がそのまま予圧付与部材70に伝わることが抑制される。回転軸20の高速回転に伴い受部21Aに接触する第1の環状部材71A、及び第1の環状部材71Aに接触する支持部65は連れ回るが、その連れ周りの回転数は回転軸20の回転数よりも抑えられることとなるため、支持部65に接触する予圧付与部材70の連れ回りの回転数も回転軸20の回転数よりも抑えられることとなる。その結果、予圧付与部材70と該予圧付与部材70に接触する相手部材との間の摩擦による予圧付与部材70の摩耗を抑制できる。以上より、予圧付与部材70の摩耗を更に抑制することができる。
【0047】
また、例えば、
図4に示す油圧ポンプ200では、予圧付与部材70が、外輪61と当接していた。これに代えて、
図5に示す油圧ポンプ250のように、内輪62と当接している構造を採用してもよい。この場合、軸受部60A側の支持部65の内輪62は回転軸20に対して隙間嵌めにより外嵌される。これにより、予圧付与部材70は、ハウジング10で支持されながら、内輪62を後方へ向かって押圧する。従って、外輪61及び内輪62に予圧が付与される。
【0048】
図5に示すような変形例に係る油圧ポンプ250では、軸方向において、支持部65は、予圧付与部材70と第1の環状部材71Aとの間に介在している。内輪62及び外輪61のうち、予圧付与部材70が当接する側の部材である内輪62は、隙間嵌めによって回転軸20に取り付けられる。このような構成により、予圧付与部材70が支持部65の内輪62と当接することで予圧を付与できる。また、予圧付与部材70の相手部材である支持部65の回転軸20に伴う高速回転が、第1の環状部材71Aの介在によって抑制される。また、このような構成では、予圧付与部材70と回転軸20との間に第1の環状部材71Aに加えて支持部65が介在するため、回転軸20の回転がそのまま予圧付与部材70に伝わることが抑制される。回転軸20の高速回転に伴い受部21Aに接触する第1の環状部材71A、及び第1の環状部材71Aに接触する支持部65は連れ回るが、その連れ周りの回転数は回転軸20の回転数よりも抑えられることとなるため、支持部65に接触する予圧付与部材70の連れ回りの回転数も回転軸20の回転数よりも抑えられることとなる。その結果、予圧付与部材70と該予圧付与部材70に接触する相手部材との間の摩擦による予圧付与部材70の摩耗を抑制できる。以上より、予圧付与部材70の摩耗を更に抑制することができる。
【0049】
例えば、上述の実施形態では、油圧ポンプの一例として、可変容量型ピストンポンプを例示したが、これに限定されない。例えば、固定容量型ピストンポンプ、ギヤポンプ、ベーンポンプ等の各種油圧ポンプに本発明の軸受構造を適用してもよい。
【0050】
また、
図2〜5では、予圧付与部材70がいずれも前端側の軸受部60Aに設けられていたが、これらに代えて、後端側の軸受部60Bに設けられていてもよい。また、予圧付与部材70が、前端側の軸受部60A及び後端側の軸受部60Bの両方に設けられてもよい。
【0051】
また、予圧付与部材70の構成は、上述の実施形態に示す形状に限定されず、コイルばねのような形状を有していてもよい。