特許第6168127号(P6168127)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6168127画像解析装置、画像解析方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168127
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】画像解析装置、画像解析方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20170713BHJP
   A63B 69/36 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   G01B11/00 A
   A63B69/36 541W
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-221280(P2015-221280)
(22)【出願日】2015年11月11日
(62)【分割の表示】特願2012-288971(P2012-288971)の分割
【原出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2016-48252(P2016-48252A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2015年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 善亮
【審査官】 梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−265748(JP,A)
【文献】 特開2009−247642(JP,A)
【文献】 特開2012−052926(JP,A)
【文献】 特開2012−247209(JP,A)
【文献】 特開2008−046978(JP,A)
【文献】 特開平08−277836(JP,A)
【文献】 特開2008−236124(JP,A)
【文献】 特開2007−265277(JP,A)
【文献】 米国特許第06110052(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − 11/30
A63B 69/00 − 69/40
F16C 35/00 − 39/06
F16C 43/00 − 43/08
G01C 3/00 − 3/32
G06T 1/00 − 1/40
G06T 3/00 − 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して撮影された複数の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された複数の画像の各々から、所定の物体を特定する特定手段と、
所定の直線上における前記所定の物体の移動距離を算出する第1移動距離算出手段と、
前記第1の移動距離算出手段により算出された前記移動距離における前記所定の物体の回転数を算出する回転数算出手段と、
前記回転数算出手段によって算出された回転数と、前記第1移動距離算出手段によって算出された距離とに基づいて、滑り量を算出する滑り量算出手段と、
を備えたことを特徴とする画像解析装置。
【請求項2】
前記所定の物体の大きさを算出する大きさ算出手段を更に備え、
前記第1移動距離算出手段は、前記大きさ算出手段により算出された算出結果に基づいて、前記所定の物体の所定の直線上における移動距離を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項3】
前記大きさ算出手段は、前記所定の物体の移動の開始時点、及び終了時点における当該所定の物体の大きさを算出し、
前記第1移動距離算出手段は、前記所定の物体の移動の開始時点と終了時点との大きさの変化に基づいて前記移動距離を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像解析装置。
【請求項4】
前記第1移動距離算出手段は、前記所定の物体の移動開始時点と終了時点における当該所定の物体の位置の変化に基づいて前記移動距離を算出する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像解析装置。
【請求項5】
前記滑り量算出手段により算出された滑り量に対応する情報を報知する報知手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の画像解析装置。
【請求項6】
前記特定手段は、
前記画像取得手段によって取得された複数の画像の各々において、少なくとも2つの異なる領域の情報の分離度により、前記物体を特定する
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の画像解析装置。
【請求項7】
前記回転数算出手段は、
前記所定の物体を含む所定の画像を参照画像として、前記参照画像と、前記複数の画像の各々との相関性に基づいて、前記物体の回転数を算出する
ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の画像解析装置。
【請求項8】
前記回転数算出手段によって算出された回転数から、前記所定の物体が回転運動のみにより移動した距離を算出する第2移動距離算出手段を更に備え、
前記滑り量算出手段は、前記第1移動距離算出手段により算出された距離から前記第2移動距離算出手段により算出された距離を減算した値を前記滑り量として算出することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の画像解析装置。
【請求項9】
前記滑り量算出手段は、前記第1移動距離算出手段により算出された距離から前記第2移動距離算出手段により算出された距離を減算した値が前記第1移動距離算出手段によって算出された距離に占める割合を前記滑り量として算出することを特徴とする請求項1から8の何れかに1項に記載の画像解析装置。
【請求項10】
前記第1移動距離算出手段は、前記画像取得手段により取得された複数の画像に基づいて、前記所定の物体が移動した距離を算出することを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の画像解析装置。
【請求項11】
前記所定の直線は、前記物体の移動方向に沿った直線を含む
ことを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の画像解析装置。
【請求項12】
画像を解析する画像解析装置が実行する画像解析方法であって、
連続して撮影された複数の画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得された前記複数の画像の各々から、所定の物体を特定する特定ステップと、
所定の直線上における前記所定の物体の移動距離を算出する第1移動距離算出ステップと、
前記第1の移動距離算出ステップにより算出された前記移動距離における前記所定の物体の回転数を算出する回転数算出ステップと、
前記回転数算出ステップにおいて算出された回転数と、前記第1移動距離算出ステップにおいて算出された距離とに基づいて、滑り量を算出する滑り量算出ステップと、
を含むことを特徴とする画像解析方法。
【請求項13】
画像解析装置を制御するコンピュータを、
連続して撮影された複数の画像を取得する画像取得手段、
前記画像取得手段によって取得された複数の画像の各々から、所定の物体を特定する特定手段、
所定の直線上における前記所定の物体の移動距離を算出する第1移動距離算出手段、
前記第1の移動距離算出手段により算出された前記移動距離における前記所定の物体の回転数を算出する回転数算出手段、
前記回転数算出手段によって算出された回転数と、前記第1移動距離算出手段によって算出された距離とに基づいて、滑り量を算出する滑り量算出手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像中の所定の物体の状態を解析又は報知する画像解析装置、画像解析方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴルフの練習ツールとして、被写体の動きを自動的に撮像し、解析してユーザに報知するものがある。このようなツールの公知技術としては、例えば、特許文献1に記載された、ゴルフパット練習器具がある。
特許文献1に記載されたゴルフパット練習器具は、パッティングの基点からテークバックの程度を検知することで、パッティングの距離の打ち分けを練習するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−240087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、テークバックの程度が同じであっても、ゴルフボールに対するパターの当たり所によってはユーザの感覚とボールが進む距離との間にズレが生じるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ユーザの感覚と所定の物体が進む距離との間のズレを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の画像解析装置は、連続して撮影された複数の画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段によって取得された複数の画像の各々から、所定の物体を特定する特定手段と、所定の直線上における前記所定の物体の移動距離を算出する第1移動距離算出手段と、前記第1の移動距離算出手段により算出された前記移動距離における前記所定の物体の回転数を算出する回転数算出手段と、前記回転数算出手段によって算出された回転数と、前記第1移動距離算出手段によって算出された距離とに基づいて、滑り量を算出する滑り量算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザの感覚と所定の物体が進む距離との間のズレを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明における画像解析装置及び情報報知装置の一実施形態に係る撮像装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
図2図1に示した撮像装置の機能的構成のうち、画像解析処理及び情報報知処理を実行するための機能的構成を示す機能ブロック図である。
図3図2の撮像装置において、ゴルフボール像の検出に使用される分離度フィルタを模式的に示した図である。
図4図2の撮像装置において処理される、インパクトフレーム画像の一例を示した図である。
図5図2の撮像装置において処理される、フレームアウト画像の一例を示した図である。
図6図2の撮像装置において処理される、回転数の算出用にマークが付されたゴルフボールの一例を示した図である。
図7図2の撮像装置によって算出された相関係数の一例を示す図である。
図8図2の撮像装置による全体移動量の算出の手法を説明するための図である。
図9図2の撮像装置において処理される、マルチモーション画像を例示した図である。
図10図2の撮像装置が実行する画像解析処理の全体の流れを説明するためのフローチャートである。
図11図10の画像解析処理のうち特定処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図12図10の画像解析処理のうち回転数算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図13図10の画像解析処理のうち全体移動量算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図14図10の画像解析処理のうち滑り量算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
図1は、本発明における画像解析装置及び情報報知装置の一実施形態に係る撮像装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
撮像装置1は、例えばデジタルカメラとして構成される。
【0011】
撮像装置1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、画像処理部14と、バス15と、入出力インターフェース16と、撮像部17と、入力部18と、出力部19と、記憶部20と、通信部21と、ドライブ22と、を備えている。
【0012】
CPU11は、ROM12に記録されているプログラム、又は、記憶部20からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
【0013】
RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0014】
画像処理部14は、各種画像のデータに対して、色補正、平滑化、パターンマッチング等の各種画像処理を施す。
【0015】
CPU11、ROM12、RAM13及び画像処理部14は、バス15を介して相互に接続されている。このバス15にはまた、入出力インターフェース16も接続されている。入出力インターフェース16には、撮像部17、入力部18、出力部19、記憶部20、通信部21及びドライブ22が接続されている。
【0016】
撮像部17は、図示はしないが、光学レンズ部と、イメージセンサと、を備えている。
【0017】
光学レンズ部は、被写体を撮像するために、光を集光するレンズ、例えばフォーカスレンズやズームレンズ等で構成される。
【0018】
フォーカスレンズは、イメージセンサの受光面に被写体像を結像させるレンズである。ズームレンズは、焦点距離を一定の範囲で自在に変化させるレンズである。
【0019】
光学レンズ部にはまた、必要に応じて、焦点、露出、ホワイトバランス等の設定パラメータを調整する周辺回路が設けられる。
【0020】
イメージセンサは、光電変換素子や、AFE(Analog Front End)等から構成される。
【0021】
光電変換素子は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の光電変換素子等から構成される。光電変換素子には、光学レンズ部から被写体像が入射される。そこで、光電変換素子は、被写体像を光電変換(撮像)して画像信号を一定時間蓄積し、蓄積した画像信号をアナログ信号としてAFEに順次供給する。
【0022】
AFEは、このアナログの画像信号に対して、A/D(Analog/Digital)変換処理等の各種信号処理を実行する。各種信号処理によって、ディジタル信号が生成され、撮像部17の出力信号として出力される。
【0023】
このような撮像部17の出力信号を、以下、「撮像画像のデータ」と呼ぶ。撮像画像のデータは、CPU11や画像処理部14等に適宜供給される。
【0024】
入力部18は、各種ボタン等で構成され、ユーザの指示操作に応じて各種情報を入力する。
出力部19は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部20は、ハードディスク或いはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種画像のデータを記憶する。
通信部21は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置(図示せず)との間で行う通信を制御する。
【0025】
ドライブ22には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア31が適宜装着される。ドライブ22によってリムーバブルメディア31から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部20にインストールされる。また、リムーバブルメディア31は、記憶部20に記憶されている画像のデータ等の各種データも、記憶部20と同様に記憶することができる。
【0026】
図2は、このような撮像装置1の機能的構成のうち、画像解析処理を実行するための機能的構成を示す機能ブロック図である。
画像解析処理とは、連続して撮像された一連の撮像画像から、所定の物体(ゴルフボール)の位置及び大きさを特定することにより、所定の物体の回転数から当該所定の物体が回転することによって移動した距離(回転移動量)を算出し、当該所定の物体が実際に移動した全体移動量から所定の物体が回転運動のみによって移動する仮想的な回転移動量を減算して滑り量を算出し、算出された滑り量を報知するまでの一連の処理をいう。
画像解析処理には、滑り量を算出する処理(以下、「滑り量算出処理」と呼ぶ)と、滑り量をユーザに報知する処理(以下、「滑り量報知処理」と呼ぶ)とが含まれる。
ここで、滑り量とは、所定の物体が地面等の面に接触しながら移動するに際し、その全体の移動量のうち、回転を伴わない移動の量(いわゆる滑りながら移動した量)をいう。
本実施形態では、所定の物体として、ゴルフボールが採用されている。
【0027】
具体的には、本実施形態では、ゴルフの練習施設等において、ユーザがパットの練習を行うスペース(以下、「パットスペース」と呼ぶ)の上方に撮像装置1が固定されている。即ち、撮像装置1は、当該パットスペースを、画角の範囲(以下、「撮像範囲」とも呼ぶ)内で上方から動画像として撮像する。
ここで、動画像は、フレームやフィールド等のいわゆる「コマ」に相当する画像(以下、「単位画像」と呼ぶ)が複数枚配置されて構成される。本実施形態では、単位画像としてフレームが採用されているが、本明細書では、フレームを「フレーム画像」と適宜呼ぶ。
【0028】
本実施形態では、撮像装置1は、滑り量算出処理として、次のような一連の処理を実行する。
即ち、ユーザによりパットの動作がなされると、撮像装置1は、パットスペース上でゴルフボールが移動している様子を、動画像として撮像する。正確には、パットスペースのうち撮像範囲内で移動するゴルフボールが映る動画像が得られる。
撮像装置1は、この動画像から、ゴルフボールが撮像範囲内で移動した全体の量(以下、「全体移動量」と呼ぶ)と、ゴルフボールが回転しながら移動した量(以下、「回転移動量」と呼ぶ)を算出する。
そして、撮像装置1は、全体移動量から回転移動量を減算することによって、ゴルフボールの滑り量を算出する。
【0029】
以上のような滑り量算出処理の実行後、本実施形態では、撮像装置1は、滑り量報知処理として、滑り量を示す画像や音声を出力部19(図1)から出力することによって、当該滑り量をユーザに報知する処理を実行する。
【0030】
滑り量算出処理が制御される場合、図2に示すように、画像処理部14においては、画像取得部111と、特定部112と、回転数算出部113と、が機能し、CPU11においては、移動量算出部114と、滑り量算出部115と、が機能する。また、滑り量報知処理の実行が制御される場合、CPU11においては、滑り量取得部116と、報知制御部117と、が機能する。
【0031】
画像取得部111は、撮像部17から順次出力される、動画像を構成する複数のフレーム画像のデータの各々を順次取得して、特定部112に供給する。
【0032】
特定部112は、画像取得部111によって取得された複数のフレーム画像のデータの各々から、回転することによって移動する物体として、本実施形態ではゴルフボールを特定する。より正確には、特定部112は、撮像部17から出力される動画像のデータの中から、移動するゴルフボールが写っている、一連の複数のフレーム画像のデータ群を特定する。
【0033】
図3は、フレーム画像からゴルフボール像を検出する手法の一例を説明するための図であって、ゴルフボール像の検出に使用される分離度フィルタを模式的に示した図である。
特定部112は、図3に示すような円の分離度フィルタをフレーム画像のデータにかけて、分離度を算出することで、当該フレーム画像内のゴルフボール像を特定(検出)することができる。ここで、分離度とは、図3に示すような2つの局所的な領域a1と領域a2の各々の領域情報の分離の程度を示すパラメータである。特定部112が、ゴルフボール像の位置を特定するために、このような円の分離度フィルタを採用するのは、ゴルフボール像が、2つの領域a1及び領域a2の輝度に依存し難く、ノイズの影響を受け難いという利点があるからである。
本実施形態では、特定の対象が、フレーム画像における円形状のゴルフボール像である。このため、本実施形態の円の分離度フィルタでは、2つの局所領域として、円c1の輪郭の内側である領域a1と、円c1の輪郭と円c2の輪郭との間の領域a2とが採用されている。また、本実施形態では、領域情報として、フレーム画像のデータ(各画素値)のうち、各画素の、輝度、色度、及び彩度が採用されている。
【0034】
特定部112は、処理対象のフレーム画像のデータに対して図3の円の分離度フィルタをかけて、領域a1と領域a2とで、正規化された領域情報が完全に分離された場合には、分離度を最大値である1.0となるように算出する。これに対して、特定部112は、処理対象のフレーム画像のデータに対して図3の円の分離度フィルタをかけて、領域情報が分離できない場合には、分離度を最小値0.0又はその近傍の値となるように算出する。
より具体的には、分離度μは、次の式(1)、式(2)、及び式(3)によって求められる。
【0035】
【数1】
【数2】
【数3】
【0036】
ここで、式(1)において、σTは、領域a1と領域a2との全分散値を示し、σbは、領域a1、領域a2の級間分散値を示している。
級間分散とは、集団がいくつかの部分集団(級と呼ぶ)に分けられているとき、部分手段の平均が母集団の平均の周りにどの程度の散らばり方で散らばるかを表す量を意味する。
式(2)において、n1は領域a1の全画素数を示し、n2は領域a2の全画素数を示している。頭部にバーが付されたP1は、領域a1の各画素値(各画素の領域情報)の平均値を示し、頭部にバーが付されたP2は、領域a2の各画素値の平均値を示し、頭部にバーが付されたPmは、領域a1と領域a2との各画素値の平均値を示している。
式(3)において、Nは、領域a1と領域a2の全画素数を示し、Piは、フレーム画像内の画素位置iの画素値を示している。
【0037】
特定部112は、領域a1と領域a2のサイズを変化させながら、処理対象のフレーム画像に円の分離度フィルタを逐次かけて、上述の式(1)乃至式(3)を逐次演算することによって、分離度を逐次算出する。そして、特定部112は、最も大きな分離度を示した領域a1の大きさと位置とによって、処理対象のフレーム画像における、ゴルフボール像の大きさと位置とを特定することができる。
【0038】
ところで、撮像部17から出力される動画像のデータのうち、初期のフレーム画像のデータには、パットスペースの所定位置で静止しているゴルフボール像が含まれている。ユーザがパットの動作を未だしていないためである。この初期のフレーム画像には、移動するゴルフボール像は含まれていないと判定される。なお、パットの動作が行われる前のゴルフボールの静止位置を、以下、「初期位置」と呼ぶ。初期位置は、パットスペース上のゴルフボール(実物体)の実位置で示されてもよいし、フレーム画像内のゴルフボール像の位置で示されてもよい。
特定部112は、初期位置で静止しているゴルフボール像を検出し、このゴルフボール像を含むフレーム画像を初期のフレーム画像であるとする。
【0039】
その後、ユーザがパットの動作を開始し、ゴルフクラブのヘッドによりゴルフボールが打たれると、当該ゴルフボールはパットスペース上で移動を開始する。この移動開始のタイミングのフレーム画像、即ち、初期位置にあったゴルフボールが打たれたタイミングのフレーム画像を、以下、「インパクトフレーム画像」と呼ぶ。
特定部112は、移動するゴルフボール像が含まれていると初回に判定したフレーム画像のデータを、インパクトフレーム画像のデータとして特定する。
具体的には、例えば、特定部112は、初期位置が特定されたフレーム画像のデータを基準として、それ以降に画像取得部111から逐次出力されるフレーム画像のデータを処理対象として、ゴルフボールの初期位置付近に走査範囲を限定して、基準と処理対象の各特徴量の差分を算出する。特定部112は、この算出結果に基づいてインパクトフレーム画像のデータを検出する。即ち、インパクトフレーム画像では、基準のフレーム画像内の初期位置にあったゴルフボール像が、ゴルフクラブに打たれたことによって移動し、初期位置を含む領域から消失する。このため、初期位置を含む領域の特徴量の差分が最大値(例えば1)を取る。そこで、特定部112は、初期位置を含む領域の特徴量の差分が最大値をとったフレーム画像のデータを、インパクトフレーム画像のデータであると特定する。
【0040】
図4は、インパクトフレーム画像の一例を示している。
図4に示すように、インパクトフレーム画像においては、ゴルフボール像は、ゴルフクラブのヘッドにより打たれて、移動を開始する状態である。
【0041】
図2に戻り、特定部112は、インパクトフレーム画像のデータ以降に連続して画像取得部111から逐次出力されるフレーム画像のデータの各々に対して、分離度フィルタをかけることによって、ゴルフボールBrの位置及び大きさを特定する。このような特定が繰り返されていくと、ゴルフボールBrが移動して撮像装置1の撮像範囲から外れてしまうため、ゴルフボールBrの位置及び大きさの特定ができないフレーム画像のデータ、即ち分離度が0又はその近傍値(所定の閾値以下)となったフレーム画像のデータが検出される。そこで、特定部112は、分離度が0又はその近傍値(所定の閾値以下)となった最初のフレーム画像のデータから、分離度が減少し始める2〜3フレーム前のフレーム画像を、ゴルフボールBrが撮像装置1の撮像範囲から外れて移動したタイミングのフレーム画像(以下、「フレームアウト画像」と呼ぶ)のデータを特定する。
【0042】
図5は、フレームアウト画像の一例を示している。
図5に示すように、フレームアウト画像においては、図4のインパクトフレーム画像と比較して、ゴルフボール像は図中下方に移動しており、その結果、フレーム画像における相対的な大きさは大きくなっている。
【0043】
図2に戻り、特定部112は、インパクトフレーム画像からフレームアウト画像までの一連の複数のフレーム画像のデータ群を、ゴルフクラブに打たれて移動するゴルフボールBr像を含む動画像であると特定する。
また、特定部112は、インパクトフレーム画像が撮像されてからフレームアウト画像が撮像されるまでに要した時間長を、観測期間として設定する。
【0044】
回転数算出部113は、特定部112によって特定された、ゴルフクラブに打たれて移動するゴルフボール像を含む動画像のデータに基づいて、ゴルフボールの回転数を算出する。
【0045】
図6は、回転数の算出用にマークが付されたゴルフボールの一例を示している。
本実施形態では、例えば、図6(a)に示すように、ゴルフボールBrにはマークMが付されている。動画像を構成する複数のフレーム画像のそれぞれについて、ゴルフボールBrが回転することにより、フレーム画像に含まれるゴルフボール像が、図6(a)に示すようにマークMが見える状態のものと、図6(b)に示すようにマークMが隠れて見えない状態のものとで周期的に交互に繰り返して現れる。回転数算出部113は、特定部112によって設定された観測期間内においてマークMの周期的な見え隠れが起こる回数をカウントすることによって、ゴルフボールの回転数を算出する。
【0046】
具体的には、本実施形態では、パッティングの動作において、ゴルフボールBrの運動は、一方向への回転と、回転せずに併進する「滑り」とによって行われ、サイドスピン等の他の運動は含まれないことを前提としている。ユーザは、マークMが天頂に向くようにゴルフボールBrを置き、ゴルフボールBrを打つ。すると、ゴルフボールBrは滑りながら移動し、続いて回転しながら移動する。このため、ゴルフボールBrは、上方に位置する撮像装置1から見て、先ず、マークMが天頂を向いたまま移動する。その後、ゴルフボールBrは、マークMがゴルフボールBrの移動方向に向けて移動して、一旦消えた後に再び現れる、という動きを繰り返すことになる。
【0047】
そこで、回転数算出部113は、ゴルフボール像が初期位置に存在するフレーム画像のうち、当該ゴルフボール像を含む所定サイズのブロック(領域画像)のデータを、参照ブロックのデータとして抽出する。
ここで、観測期間内の動画像を構成する複数のフレーム画像の各々において、ゴルフボール像の位置と大きさは、特定部112によって特定されている。そこで、回転数算出部113は、画像取得部111によりフレーム画像のデータが入力される毎に、それを処理対象として、処理対象の中から、ゴルフボール像を含む所定サイズのブロック(領域画像)のデータを順次抽出し、参照ブロックのデータとパターンマッチングする。このようなパターンマッチングは、観測期間内の複数のフレーム画像のデータ毎にその都度実行される。
回転数算出部113は、パターンマッチングの結果として、処理対象のブロックと参照ブロックとの各データの相関性を求め、相関性を示すパラメータ(以下、「相関係数」と呼ぶ)を、観測期間内の複数のフレーム画像の各々に対応付ける。
【0048】
図7は、回転数算出部113によって算出された相関係数を示す図である。
図7において、縦軸は相関係数を示し、横軸は、観測期間内の複数のフレームの各々を示している。図7中に記した「閾値」は、ゴルフボールBrのマークMが撮像されたか否かを判定するために予め設定されている閾値である。
【0049】
ゴルフボールBrは、ゴルフクラブに打たれた直後、滑りによって移動するから、マークMの像に略変化はない。このため、ゴルフクラブに打たれた直後から数枚のフレーム画像における相関係数は、最高値1に近似した値をとる。
ゴルフボールBrは滑りにより移動した後、回転による移動を開始する。このとき、処理対象のブロックにおけるゴルフボールBrのマークMの像が、参照ブロックのマークMの位置に近づくほど、相関係数も高くなる(完全一致すると最高値1になる)。換言すると、ゴルフボールBrが回転し、処理対象のブロックにおけるゴルフボールBrのマークMの位置が、参照ブロックのマークMの位置から離れていくほど、相関係数が小さくなる。
【0050】
そこで、回転数算出部113は、相関係数が閾値以上のピークが現れた回数をカウントし、そのカウント値を回転数として算出する。なお、回転数が増えるとピークの相関係数が小さくなるのは、ゴルフボールBrが回転することによって撮像装置1に近づき、フレーム画像のブロックにおけるゴルフボール像の占める割合が大きくなって、参照ブロックにおける初期位置のゴルフボール像との相違が大きくなるためである。
なお、相関係数の算出は、公知の計算式によって可能である。本実施形態では、相関係数CCは、次の式(4)に従って算出される。
【数4】
【0051】
式(4)において、Mは、領域a1と領域a2にそれぞれに含まれる画素数を示している。Gijは、参照ブロック内の座標(i,j)に位置する画素の画素値(輝度等)を示している。Fijは、処理対象のフレーム画像のブロック内の座標(i,j)に位置する画素の画素値(輝度等)を示している。
【0052】
なお、図7においては、相関係数は、式(4)で算出される相関係数CCの二乗になっている。このため、図7の縦軸に示した相関係数は常に正の値を持つ。
【0053】
移動量算出部114は、ゴルフボールBrが滑りによって移動した移動量(滑り量)と、回転によって移動した移動量(回転移動量)とを含む、ゴルフボールBrの全体移動量を算出する。
【0054】
図8は、移動量算出部114による全体移動量の算出の手法を説明するための図である。
上述したように、撮像装置1は、パットスペースの上方に固定されていて、パットスペースのうち、図8中に示した撮像範囲Aの実空間を撮像することができる。
図8において、ゴルフボールは、初期位置であるポイントPsで静止した状態で、ユーザによりゴルフクラブのヘッドで打たれると、パットスペース上の移動を開始し、ポイントPsからポイントPoに向かって移動する。そして、ゴルフボールは、ポイントPoにおいてフレームアウトする(撮像範囲Aから外れる2、3フレーム前の状態になった)とする。
【0055】
移動量算出部114は、インパクトフレームにおける、ゴルフボールの直径を検出し、その直径に基づいて、撮像装置1と、ポイントPsにおけるゴルフボールとの距離hを検出する。また、移動量算出部114は、図5に示したフレームアウト画像における、ゴルフボール像の直径を検出し、その直径に基づいて、撮像装置1とポイントPoにおけるゴルフボールとの距離jを検出する。
【0056】
さらに、移動量算出部114は、撮像装置1とポイントPsとを結ぶ線分と、撮像装置1とポイントPoとを結ぶ線分とがなす角度αを算出する。角度αの算出手法は、特に限定されないが、例えば本実施形態では、次のような手法が採用されている。
即ち、本実施形態では、撮像画像上の座標と、実際に撮像される(実世界の)撮像範囲A上の座標が予め対応付けられている。移動量算出部114は、特定部112によって特定されたゴルフボールBrの初期位置と、フレームアウト画像におけるゴルフボールBrの位置とを撮像画像から取得する。そして、移動量算出部114は、撮像画像上のゴルフボールBrの位置から実世界におけるゴルフボールBrの初期位置と、撮像範囲Aから出る直前のゴルフボールBrの位置を特定し、角度αを算出する。
【0057】
移動量算出部114は、距離h、距離j、角度αから、ゴルフボールBrが移動した全体移動量kを、以下の式(5)によって算出した。
【数5】
【0058】
なお、撮像画像上の座標と実世界の座標とを対応付ける際には、撮像装置1の撮像部17の特性や光学レンズ部の歪等が問題になる。このため、本実施形態では、撮像画像上の座標と実世界の座標との関係や、撮像画像上の位置と、この位置と撮像装置1との実際の距離、算出される角度と実際の角度との関係とを、撮像装置1の設計者が予め把握しておくものとする。
そして、撮像画像上の座標、算出された距離及び角度を、実際の座標、距離及び角度に補正するためのLUT(LookUp Table)を予め記憶部20に保存しておくものであってもよい。このようにした場合、移動量算出部114は、式(5)によって算出された全体移動量kをLUTと比較して、LUTからより正確な全体移動量kを得るようにしてもよい。
【0059】
また、移動量算出部114は、回転数算出部113によって算出されたゴルフボールBrの回転数に既知のゴルフボールBrの周長を乗算し、ゴルフボールBrの回転移動量を算出する。なお、ゴルフボールの直径は、国際的な規格によって1.68インチに決まっている。このため、ゴルフボールBrの周長も一定の長さに固定されている。
【0060】
滑り量算出部115は、移動量算出部114によって算出された全体移動量kから、移動量算出部114によって算出されたゴルフボールBrの回転移動量を減算する。そして、減算の結果得られた距離を、ゴルフボールBrが滑ることによって移動した、滑り量であるとする。
【0061】
上述した本実施形態の構成によれば、ゴルフボールが打たれて移動する際の滑り量を使ってパッティングの状態をユーザ自身が把握することができる。そして、滑り量と、実際のパッティングの状態とから、ユーザは自身が望ましいパッティングを行った際の滑り量が再現されるようにパッティングの練習を行うことができる。
このような本実施形態は、撮像装置1等の機材や撮像範囲の画角を厳密に位置合わせする必要がない。このため、本実施形態によれば、簡便に自身のパッティングを検証することができる。また、本実施形態は、撮像装置1に特別高い解像度も必要ないため、比較的安価でありながら、撮像範囲A全体を撮像できる撮像装置1を提供することができる。
【0062】
次に、本実施形態の撮像装置1のうち、上述した構成によって算出された滑り量をユーザに報知する構成について説明する。
図2に示したCPU11においては、滑り量報知処理が制御される場合、滑り量取得部116と、報知制御部117と、が機能する。滑り量取得部116は、滑り量算出部115から滑り量を取得するばかりでなく、通信部21を介して他の撮像装置から滑り量を取得する。
報知制御部117は、滑り量取得部116が出力した滑り量を出力部19のディスプレイやスピーカ等といった形態に合わせて、テキストや画像或いは音声として出力部19に出力する。
【0063】
また、本実施形態は、滑り量取得部116が滑り量を画像処理部14に出力し、画像処理部14が、滑り量に基づいてマルチモーション表示された画像を出力部19に出力するようにしてもよい。
マルチモーション表示処理とは、取得した動画像のデータにおける被写体(本実施形態ではゴルフボール)の特定の動作を連続的に撮像した画像を重畳合成したマルチモーション画像のデータと、当該マルチモーション画像に含まれる被写体の速度を表すオブジェクト画像とを重畳的に表示するまでの一連の処理である。
【0064】
図9は、本実施形態のマルチモーション画像を例示した図であり、ゴルフボールBrを斜め上方から撮像した構図の画像である。
図9では、滑り量取得部116が取得した滑り量が図中に「S」で示されている。「S」以外のゴルフボールBrの軌跡には、ゴルフボールBrの速度に対応した網掛けが付されたオブジェクト画像が重畳的に表示されている。このため、ユーザに対して、パッティングで移動したゴルフボールBrの状態をより把握し易い表示を行うことができるようになる。
また、当該マルチエモーション画像では、滑り量の大きさに応じて図中の「S」の部分のオブジェクトの色を変化させるようにしてもよい。
【0065】
なお、本実施形態においては、滑り量算出に用いられた、ゴルフボールを上方から撮像した構図をマルチモーション表示に用いることに限られない。例えば、滑り量算出とは別に、ゴルフボールBrを異なる角度から撮像しておけば、種々の構図でマルチモーション表示を行うことができる。
【0066】
次に、図10乃至図14を参照して、図2に示した機能的構成を有する図1に示した撮像装置1が実行する滑り量算出処理と、滑り量報知処理について説明する。
図10は、図1に示した撮像装置1が実行する画像解析処理の全体の流れを説明するためのフローチャートである。
画像解析処理は、撮像装置1が撮像を開始したことを契機として開始される。撮像装置1の撮像は、例えば、ユーザがパッティングの練習を開始する際に撮像装置1に撮像開始を指示することによって開始するものであってもよい。
【0067】
ステップS21において、特定部112は、画像取得部111により取得された複数のフレーム画像のデータから、ゴルフボール像を取得することで、インパクトフレーム画像及びフレームアウト画像を特定する。そして、特定部112は、インパクトフレーム画像が撮像されてからフレームアウト画像が撮像されるまでに要した時間長を、観測期間として設定する。このような一連の処理を、本実施形態では、「特定処理」と呼ぶ。特定処理の詳細については、図11を参照して後述する。
【0068】
ステップS22において、回転数算出部113は、特定部112によって設定された観測期間に撮像されたフレーム画像のデータに基づいて、ゴルフボールの回転数を算出する。このような一連の処理を、本実施形態では、「回転数算出処理」と呼ぶ。回転数算出処理の詳細については、図12を使って後述する。
【0069】
ステップS23において、移動量算出部114は、ゴルフボールBrの滑り量と、回転移動量とを含む、ゴルフボールBrの全体移動量を算出する。また、移動量算出部114は、ゴルフボールの回転移動量を算出する。このような一連の処理を、本実施形態では、「全体移動量算出処理」と呼ぶ。全体移動量算出処理の詳細については、図13を使って後述する。
【0070】
ステップS24において、滑り量算出部115は、ゴルフボールBrの全体移動量から回転移動量を減算し、滑り量を算出する。このような一連の処理を、本実施形態では、「滑り量算出処理」と呼ぶ。滑り量算出処理の詳細については、図14を使って後述する。
【0071】
ステップS25において、滑り量取得部116は、滑り量算出部115によって算出された滑り量、又は通信部21から取得した滑り量を報知制御部117に出力する。報知制御部117は、出力部19の構成等に応じた形態で滑り量を出力部19に出力し、ユーザに報知する。
【0072】
図11は、図10のステップS21に示した特定処理の詳細を説明するためのフローチャートである。ステップS211において、特定部112は、複数のフレーム画像から、初期位置で静止しているゴルフボール像を検出する。特定部112は、このゴルフボール像を含むフレーム画像を初期のフレーム画像であると判定する。
続くステップS212において、特定部112は、初期位置を含む領域の特徴量の差分が最大値をとったフレーム画像のデータから、インパクトフレーム画像のデータを特定する。
【0073】
特定部112は、ステップS213において、分離度が0又はその近傍値(所定の閾値以下)となったフレーム画像のデータを検出し、分離度が0又はその近傍値(所定の閾値以下)となった最初のフレーム画像のデータから、フレームアウト画像のデータを特定する。特定部112は、ステップS214において、インパクトフレーム画像が撮像されてからフレームアウト画像が撮像されるまでに要した時間長を、観測期間として設定する。
【0074】
図12は、図10のステップS22に示した回転数算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
ステップS221において、回転数算出部113は、画像取得部111によりフレーム画像のデータを処理対象として、処理対象の中から領域画像のデータを順次抽出し、参照ブロックのデータとパターンマッチングをする。
ステップS222において、回転数算出部113は、パターンマッチングの結果として、処理対象のブロックと参照ブロックとの各データの相関性を求め、相関係数を算出する。そして、観測期間内の複数のフレーム画像の各々に相関係数を対応付ける。
さらに、ステップS223において、回転数算出部113は、算出された相関係数の変動から、ゴルフボールBrの回転数を算出する。
【0075】
図13は、図10のステップS23に示した全体移動量算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。ステップS231において、移動量算出部114は、実世界におけるゴルフボールBrの初期位置を特定する。また、ステップS232において、移動量算出部114は、インパクトフレームにおける、ゴルフボールBrの直径を検出する。
【0076】
また、ステップS233において、移動量算出部114は、撮像範囲から出る直前のゴルフボールBrの実世界の位置を特定する。また、ステップS234において、移動量算出部114は、図5に示したフレームアウト画像における、ゴルフボール像の直径を検出する。
【0077】
ステップS235において、移動量算出部114は、上述した各ステップで検出されたゴルフボールBrの位置や撮像装置1とゴルフボールBrとの距離に基づいて、ゴルフボールBrの全体移動量を算出する。
また、ステップS236において、移動量算出部114は、回転数算出部113によって算出されたゴルフボールBrの回転数に基づいて、ゴルフボールBrの回転移動量を算出する。
【0078】
図14は、図10のステップS24に示した滑り量算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。ステップS241において、滑り量算出部115は、移動量算出部114からゴルフボールBrの回転移動量を取得する。また、ステップS242において、滑り量算出部115は、移動量算出部114からゴルフボールBrの全体移動量を取得する。
さらに、ステップS243において、滑り量算出部115は、ゴルフボールBrの全体移動量からゴルフボールBrの回転移動量を減算し、滑り量を算出する。
【0079】
以上説明した本実施形態によれば、撮像装置1だけを用い、ゴルフボールBrの位置や画角を厳密に合わせることもなく、簡便にゴルフボールBrの滑り量を算出することができる。そして、算出された滑り量を、ユーザに報知することができる。
なお、パッティングにおいては、ゴルフボールBrの滑り量がパッティングの状態を示す指標の1つとなることが知られている。滑り量は、実際にユーザがパッティングを行って得られる値であるから、滑り量とパッティングの状態との間にユーザの感覚のズレは生じ難い。
このため、本実施形態は、撮像装置1をゴルフの練習に適用し、ユーザの感覚とボールが進む距離との間のズレを解消し、パッティングの状態の指標をより簡便に取得することが可能になる。
【0080】
以上説明したように、上述の実施形態等をとることが可能な撮像装置1は、図2等に示すように、画像取得部111と、特定部112と、回転数算出部113と、移動量算出部114と、滑り量算出部115と、を有している。
画像取得部111は、連続して撮影された複数の画像を取得する。
特定部112は、画像取得部111によって取得された複数の画像の各々から、所定の物体としてのゴルフボールBrを特定する。
回転数算出部113は、特定部112によって特定されたゴルフボールBrの回転数を算出する。
移動量算出部114は、ゴルフボールBrが移動する全体移動量を算出する。
滑り量算出部115は、回転数算出部113によって算出された回転数と、移動量算出部114によって算出された全体移動量とに基づいて、滑り量を算出する。
これにより、連続して撮像された複数の画像に含まれる所定の物体の像の滑り量を算出することができる。このため、ユーザの感覚とゴルフボールが進む距離との間のズレを解消することができる。
【0081】
また、撮像装置1は、図2等に示すように、滑り量算出部115により算出された滑り量に対応する情報を報知する報知制御部117を更に備える。
これにより、撮像装置1は、滑り量をユーザに報知し、滑り量をパッティングの状態を示す指標としてユーザに提供することができる。
また、撮像装置1は、図3等に示すように、特定部112が、画像取得部111によって取得された複数の画像の各々において、少なくとも2つの異なる領域の情報の分離度により、物体を特定する。
これにより、分離フィルタを使って物体の特定を行うことができる。
【0082】
また、撮像装置1は、図6図7等に示すように、回転数算出部113が、所定の物体を含む所定の画像(初期位置にあるゴルフボール像)を参照画像として、参照画像と、複数の画像の各々との相関性に基づいて、物体の回転数を算出する。
これにより、複数の画像の各々を参照画像とパターンマッチングすることによって所定の物体の回転数を算出することができる。
【0083】
また、撮像装置1は、図13等に示すように、移動量算出部114が、回転数算出部113によって算出された回転数から、ゴルフボールBrが回転運動のみにより移動した距離である回転移動量を算出する。滑り量算出部115は、移動量算出部114によって算出された全体移動量から移動量算出部114によって算出された回転移動量を減算した値を滑り量として算出する。
これにより、比較的簡易な方法によって滑り量の値を算出することができる。
【0084】
また、撮像装置1は、図13等に示すように、移動量算出部114が、画像取得部111により取得された複数の画像に基づいて、所定の物体としてのゴルフボールBrが移動した距離を算出する。
これにより、ゴルフボールBrの移動距離を算出するための情報を別個に取得することなく、回転数等、他の情報を取得した複数の画像を使ってゴルフボールBrの移動距離を算出することができる。
【0085】
また、撮像装置1は、図2等に示すように、滑り量取得部116と、報知制御部117と、を有している。滑り量取得部116は、特定の物体の滑り量に関する情報を取得する。
報知制御部117は、滑り量取得部116によって取得された滑り量に関する情報を報知する。
これにより、滑り量をユーザに報知し、滑り量をパッティングの状態を示す指標としてユーザに提供することができる。
【0086】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0087】
上述の実施形態では、画像取得部111により取得される画像のデータは、撮像部17から順次出力される、動画像を構成する複数のフレーム画像のデータであったが、特にこれに限定されず、いわゆる連写により得られる複数の静止画像のデータ等、連続して撮像された複数の画像のデータであってもよい。また、当該画像は、撮像装置1の撮像部17により撮像されたものに限らず、図示せぬ他の装置により撮像されたものであってもよい。
【0088】
また、上述の実施形態では、報知制御部117は、所定の物体としてのゴルフボールBrが移動した全体移動量から当該ゴルフボールBrが回転することによって移動した回転移動量を減算した値を滑り量として報知したが、本実施形態はこれに限られるものではない。
例えば、報知制御部117は、当該演算した値がゴルフボールBrの移動した距離全体のうちに占める割合を滑り量として報知するようにしてもよい。
即ち、撮像装置1は、移動量算出部114が、回転数算出部113によって算出された回転数から、ゴルフボールBrが回転運動のみにより移動した距離である回転移動量を算出する。滑り量算出部115は、移動量算出部114によって算出された全体移動量から移動量算出部114によって算出された回転移動量を減算した値を算出し、算出された値が全体移動量に占める割合を滑り量として算出する。
これにより、比較的簡易な方法によってゴルフボールBrが回転することなく移動する距離が全体移動量に占める割合を滑り量として算出することができる。
【0089】
また、上述の実施形態では、本発明が適用される撮像装置1は、デジタルカメラを例として説明したが、特にこれに限定されない。
例えば、本発明は、画像解析機能、情報報知機能を有する電子機器一般に適用することができる。具体的には、例えば、本発明は、ノート型のパーソナルコンピュータ、テレビジョン受像機、ビデオカメラ、携帯型ナビゲーション装置、携帯電話機、スマートフォン、ポータブルゲーム機等に適用可能である。
【0090】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図2の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が撮像装置1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図2の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0091】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0092】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図1のリムーバブルメディア31により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディア31は、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)、Blu−ray(登録商標) Disc(ブルーレイディスク)等により構成される。
光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている図1のROM12や、図1の記憶部20に含まれるハードディスク等で構成される。
【0093】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【0094】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0095】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
連続して撮影された複数の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された複数の画像の各々から、所定の物体を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記所定の物体の回転数を算出する回転数算出手段と、
前記所定の物体が移動した距離を算出する第1移動距離算出手段と、
前記回転数算出手段によって算出された回転数と、前記第1移動距離算出手段によって算出された距離とに基づいて、滑り量を算出する滑り量算出手段と、
を備えたことを特徴とする画像解析装置。
[付記2]
前記滑り量算出手段により算出された滑り量に対応する情報を報知する報知手段を、更に備えたことを特徴とする付記1に記載の画像解析装置。
[付記3]
前記特定手段は、
前記画像取得手段によって取得された複数の画像の各々において、少なくとも2つの異なる領域の情報の分離度により、前記物体を特定する
ことを特徴とする付記1又は2に記載の画像解析装置。
[付記4]
前記回転数算出手段は、
前記所定の物体を含む所定の画像を参照画像として、前記参照画像と、前記複数の画像の各々との相関性に基づいて、前記物体の回転数を算出する
ことを特徴とする付記1から3の何れか1つに記載の画像解析装置。
[付記5]
前記回転数算出手段によって算出された回転数から、前記所定の物体が回転運動のみにより移動した距離を算出する第2移動距離算出手段を更に備え、
前記滑り量算出手段は、前記第1移動距離算出手段により算出された距離から前記第2移動距離算出手段により算出された距離を減算した値を前記滑り量として算出することを特徴とする付記1から4の何れか1つに記載の画像解析装置。
[付記6]
前記回転数算出手段によって算出された回転数から、前記所定の物体が回転運動のみにより移動した距離を算出する第2移動距離算出手段を更に備え、
前記滑り量算出手段は、前記第1移動距離算出手段により算出された距離から前記第2移動距離算出手段により算出された距離を減算した値が前記第1移動距離算出手段によって算出された距離に占める割合を前記滑り量として算出することを特徴とする付記1から4の何れかに1つに記載の画像解析装置。
[付記7]
前記第1移動距離算出手段は、前記画像取得手段により取得された複数の画像に基づいて、前記所定の物体が移動した距離を算出することを特徴とする付記1から6の何れか1つに記載の画像解析装置。
[付記8]
画像を解析する画像解析装置が実行する画像解析方法であって、
連続して撮影された複数の画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得された前記複数の画像の各々から、所定の物体を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにおいて特定された前記所定の物体の回転数を算出する回転数算出ステップと、
前記所定の物体が移動した距離を算出する第1移動距離算出ステップと、
前記回転数算出ステップにおいて算出された回転数と、前記第1移動距離算出ステップにおいて算出された距離とに基づいて、滑り量を算出する滑り量算出ステップと、
を含むことを特徴とする画像解析方法。
[付記9]
画像解析装置を制御するコンピュータを、
連続して撮影された複数の画像を取得する画像取得手段、
前記画像取得手段によって取得された複数の画像の各々から、所定の物体を特定する特定手段、
前記特定手段によって特定された前記所定の物体の回転数を算出する回転数算出手段、
前記所定の物体が移動した距離を算出する第1移動距離算出手段、
前記回転数算出手段によって算出された回転数と、前記第1移動距離算出手段によって算出された距離とに基づいて、滑り量を算出する滑り量算出手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
[付記10]
特定の物体の滑り量に関する情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された滑り量に関する情報を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする情報報知装置。
[付記11]
情報を報知する情報報知装置が実行する情報報知方法であって、
特定の物体の滑り量に関する情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された滑り量に関する情報を報知する報知ステップと、
を含むことを特徴とする情報報知方法。
[付記12]
情報報知装置を制御するコンピュータを、
特定の物体の滑り量に関する情報を取得する取得手段、
前記取得手段により取得された滑り量に関する情報を報知する報知手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0096】
1・・・撮像装置,11・・・CPU,12・・・ROM,13・・・RAM,14・・・画像処理部,15・・・バス,16・・・入出力インターフェース,17・・・撮像部,18・・・入力部,19・・・出力部,20・・・記憶部,21・・・通信部,22・・・ドライブ,31・・・リムーバブルメディア,41・・・通信部,111・・・画像取得部,112・・・特定部,113・・・回転数算出部,114・・・移動量算出部,115・・・滑り量算出部,116・・・滑り量取得部,117・・・報知制御部
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