特許第6168128号(P6168128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6168128基板の処理方法及びその方法に用いる溶剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168128
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】基板の処理方法及びその方法に用いる溶剤
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
   H01L21/304 647A
   H01L21/304 651G
【請求項の数】43
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2015-221592(P2015-221592)
(22)【出願日】2015年11月11日
(65)【公開番号】特開2017-92285(P2017-92285A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2017年2月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108671
【弁理士】
【氏名又は名称】西 義之
(72)【発明者】
【氏名】八尾 章史
(72)【発明者】
【氏名】公文 創一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 昌生
(72)【発明者】
【氏名】七井 秀寿
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−098303(JP,A)
【文献】 特開2015−135913(JP,A)
【文献】 特開2009−283652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面を水系洗浄液で洗浄し、基板面に付着した水系洗浄液を超臨界流体に置換して乾燥する方法において、該流体として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤を用いることを特徴とする半導体基板の処理方法。
【請求項2】
(1−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(1−2)Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、前記水系洗浄液が付着した前記基板表面に供給する工程、
(1−3)前記含フッ素アルコール含有溶剤が付着した前記基板をチャンバ内に移し、チャンバ内の温度と圧力を該含フッ素アルコール含有溶剤の臨界点以上とすることにより超臨界流体にせしめる工程、
(1−4)チャンバ内の圧力を低下させて前記超臨界流体を気体にせしめる工程
(1−5)前記チャンバから前記基板を取り出す工程
を有する、請求項1に記載の基板の処理方法。
【請求項3】
前記工程(1−2)において、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、前記水系洗浄液が付着した前記基板表面に供給し置換する、請求項2に記載の基板の処理方法。
【請求項4】
前記含フッ素アルコール含有溶剤が、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールである、請求項2又は3に記載の基板の処理方法。
【請求項5】
前記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールの純度が99.5%以上である、請求項2〜4のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項6】
前記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールが、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、及びCFCHOHからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項2〜5のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項7】
前記水系洗浄液が、水を80質量%以上含有する洗浄液である、請求項2〜6のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項8】
前記水系洗浄液が、水である、請求項2〜7のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項9】
(2−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(2−2)Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、前記水系洗浄液が付着した前記基板表面に供給する工程、
(2−3)前記含フッ素アルコール含有溶剤が付着した前記基板をチャンバ内に移し、前記基板に付着した前記含フッ素アルコール含有溶剤を、
臨界点以上の温度と圧力とすることにより別途得た前記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換する工程、
(2−4)チャンバ内の圧力を低下させて前記超臨界流体を気体にせしめる工程
(2−5)前記チャンバから前記基板を取り出す工程
を有する、請求項1に記載の基板の処理方法。
【請求項10】
前記工程(2−2)において、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、前記水系洗浄液が付着した前記基板表面に供給し置換する、請求項9に記載の基板の処理方法。
【請求項11】
前記含フッ素アルコール含有溶剤が、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールである、請求項9又は10に記載の基板の処理方法。
【請求項12】
前記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールの純度が99.5%以上である、請求項9〜11のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項13】
前記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールが、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、及びCFCHOHからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項9〜12のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項14】
前記水系洗浄液が、水を80質量%以上含有する洗浄液である、請求項9〜13のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項15】
前記水系洗浄液が、水である、請求項9〜14のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項16】
(3−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(3−2)前記水系洗浄液が付着した前記基板をチャンバ内に移し、前記基板に付着した前記水系洗浄液を、
Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、当該溶剤の臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た超臨界流体に置換する工程、
(3−3)チャンバ内の圧力を低下させて前記超臨界流体を気体にせしめる工程
(3−4)前記チャンバから前記基板を取り出す工程
を有する、請求項1に記載の基板の処理方法。
【請求項17】
前記含フッ素アルコール含有溶剤が、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールである、請求項16に記載の基板の処理方法。
【請求項18】
前記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールの純度が99.5%以上である、請求項16又は17に記載の基板の処理方法。
【請求項19】
前記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールが、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、及びCFCHOHからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項16〜18のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項20】
前記水系洗浄液が、水を80質量%以上含有する洗浄液である、請求項16〜19のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項21】
前記水系洗浄液が、水である、請求項16〜20のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項22】
(4−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(4−2)水溶性有機溶剤を、前記水系洗浄液が付着した前記基板表面に供給する工程、
(4−3)前記水溶性有機溶剤が付着した前記基板をチャンバ内に移し、前記基板に付着した前記水溶性有機溶剤を、
Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、当該溶剤の臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た超臨界流体に置換する工程、
(4−4)チャンバ内の圧力を低下させて前記超臨界流体を気体にせしめる工程
(4−5)前記チャンバから前記基板を取り出す工程
を有する、請求項1に記載の基板の処理方法。
【請求項23】
前記含フッ素アルコール含有溶剤が、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールである、請求項22に記載の基板の処理方法。
【請求項24】
前記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールの純度が99.5%以上である、請求項22又は23に記載の基板の処理方法。
【請求項25】
前記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールが、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、及びCFCHOHからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項22〜24のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項26】
前記水系洗浄液が、水を80質量%以上含有する洗浄液である、請求項22〜25のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項27】
前記水系洗浄液が、水である、請求項22〜26のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項28】
前記水溶性有機溶剤が、水と任意混合比で相溶する溶剤である、請求項22〜27のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項29】
前記水溶性有機溶剤が、アルコールである、請求項22〜28のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項30】
前記水溶性有機溶剤が、2−プロパノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項22〜29のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項31】
(5−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(5−2)前記水系洗浄液が付着した前記基板をチャンバ内に移し、前記水系洗浄液が付着した前記基板表面に、水溶性有機溶剤を供給する工程、
(5−3)前記基板に付着した前記水溶性有機溶剤を、
Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、当該溶剤の臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た超臨界流体に置換する工程、
(5−4)チャンバ内の圧力を低下させて前記超臨界流体を気体にせしめる工程
(5−5)前記チャンバから前記基板を取り出す工程
を有する、請求項1に記載の基板の処理方法。
【請求項32】
前記含フッ素アルコール含有溶剤が、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールである、請求項31に記載の基板の処理方法。
【請求項33】
前記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールの純度が99.5%以上である、請求項31又は32に記載の基板の処理方法。
【請求項34】
前記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールが、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、及びCFCHOHからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項31〜33のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項35】
前記水系洗浄液が、水を80質量%以上含有する洗浄液である、請求項31〜34のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項36】
前記水系洗浄液が、水である、請求項31〜35のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項37】
前記水溶性有機溶剤が、水と任意混合比で相溶する溶剤である、請求項31〜36のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項38】
前記水溶性有機溶剤が、アルコールである、請求項31〜37のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項39】
前記水溶性有機溶剤が、2−プロパノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項31〜38のいずれかに記載の基板の処理方法。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれかの方法に使用する、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤。
【請求項41】
炭素数が2〜6の含フッ素アルコールである、請求項40に記載の溶剤。
【請求項42】
前記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールの純度が99.5%以上である、請求項40又は41に記載の溶剤。
【請求項43】
前記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールが、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、及びCFCHOHからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項40〜42のいずれかに記載の溶剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の処理方法及びその方法に用いる溶剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークやデジタル家電用の半導体デバイスにおいて、さらなる高性能・高機能化や低消費電力化が要求されている。そのため、回路パターンの微細化が進行しており、微細化が進行するに伴って、回路パターンのパターン倒れが問題となっている。半導体デバイス製造においては、パーティクルや金属不純物の除去を目的とした洗浄工程が多用されており、その結果、半導体製造工程全体の3〜4割にまで洗浄工程が占めている。この洗浄工程において、半導体デバイスの微細化に伴う凹凸パターンの孔や溝のアスペクト比が高くなると、洗浄またはリンス後、気液界面がパターンを通過する時にパターンが倒れる現象がパターン倒れである。パターン倒れの発生を防止するためにパターンの設計を変更せざるを得なかったり、また生産時の歩留まりの低下に繋がったりするため、洗浄工程におけるパターン倒れを防止する方法が望まれている。
【0003】
上記の問題を解決する手法として、表面張力がほぼゼロの超臨界流体で基板を処理した後、液相を経ることなく気化させる洗浄・乾燥方法が知られている。
【0004】
特許文献1では、デバイス基板に付着しているレジスト、特にアスペクト比の大きい微細なパターンの孔部に付着したレジストを十分に除去するために、溶剤を用いてデバイス基板に付着しているレジストを除去する洗浄工程を備えるデバイス基板の洗浄方法であって、
上記溶剤が、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンからなる群から選択される少なくとも1種の含フッ素化合物と、含フッ素アルコールとを含有する組成物であることを特徴とするデバイス基板の洗浄方法が開示されている。
さらに、上記洗浄工程において上記溶剤を液体状態で用いて洗浄した後、さらに上記溶剤を超臨界状態で用いて洗浄することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/114448号パンフレット
【特許文献2】特許第5506461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の超臨界流体を用いた洗浄方法は、表面張力が小さく拡散係数が大きい超臨界流体を用いることで、微細隙間にも容易に浸透でき、パターン間にあるレジストを除去しうる洗浄方法であるが、
超臨界流体として使用するフッ素系の溶剤(含フッ素アルコール等)が金属不純物を多く含む溶剤であると、超臨界流体とした際にフッ化水素(HF)、あるいはフッ化金属の状態で、フッ素原子を放出しやすいことが本発明者の検討により判明した。
これは、詳細は不明であるが、超臨界状態となる高温、高圧下でフッ素系の溶剤が熱分解し、上記のようにフッ素原子を放出するものと考えられる。
上記のようにフッ素系の溶剤からフッ素原子が放出されると、例えば、特許文献2に記載されているように、表面にSiO膜が形成された基板を処理する場合に該SiO膜がエッチングされてしまうおそれがある。またフッ素原子が基板やパターンなどの半導体デバイス中に取り込まれてデバイスの特性を低下させる要因ともなる。
【0007】
そこで本発明は、超臨界流体中でのフッ素原子の放出量が低減された基板の処理方法及びその方法に用いる溶剤を供給することを課題とする。
【0008】
本発明は、半導体基板の表面を水系洗浄液で洗浄し、基板面に付着した水系洗浄液を超臨界流体に置換して乾燥する方法において、該流体として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤を用いることを特徴とする半導体基板の処理方法である。
【0009】
本発明の半導体基板の処理方法は、
(1−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(1−2)Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、上記水系洗浄液が付着した上記基板表面に供給する工程、
(1−3)上記含フッ素アルコール含有溶剤が付着した上記基板をチャンバ内に移し、チャンバ内の温度と圧力を該含フッ素アルコール含有溶剤の臨界点以上とすることにより超臨界流体にせしめる工程、
(1−4)チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にせしめる工程
(1−5)上記チャンバから上記基板を取り出す工程
を有する基板の処理方法であることが好ましい(以降、「第1の態様」と記載する場合がある)。
【0010】
第1の態様において、上記工程(1−2)で、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、上記水系洗浄液が付着した上記基板表面に供給し置換することが好ましい。上記置換をすると、後工程の工程(1−3)で超臨界流体化させ易いため好ましい。
【0011】
第1の態様において、上記含フッ素アルコール含有溶剤が、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールであることが好ましい。
【0012】
第1の態様において、上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールの純度が99.5%以上であることが好ましい。
【0013】
第1の態様において、上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールが、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、及びCFCHOHからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0014】
第1の態様において、上記水系洗浄液が、水を80質量%以上含有する洗浄液であることが好ましい。
【0015】
第1の態様において、上記水系洗浄液が、水であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の半導体基板の処理方法は、
(2−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(2−2)Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、上記水系洗浄液が付着した上記基板表面に供給する工程、
(2−3)上記含フッ素アルコール含有溶剤が付着した上記基板をチャンバ内に移し、上記基板に付着した上記含フッ素アルコール含有溶剤を、
臨界点以上の温度と圧力とすることにより別途得た上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換する工程、
(2−4)チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にせしめる工程
(2−5)上記チャンバから上記基板を取り出す工程
を有する基板の処理方法であることが好ましい(以降、「第2の態様」と記載する場合がある)。
【0017】
第2の態様において、上記工程(2−2)で、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、上記水系洗浄液が付着した上記基板表面に供給し置換することが好ましい。上記置換をすると、後工程の工程(2−3)で超臨界流体との置換が容易となるため好ましい。
【0018】
第2の態様において、上記含フッ素アルコール含有溶剤が、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールであることが好ましい。
【0019】
第2の態様において、上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールの純度が99.5%以上であることが好ましい。
【0020】
第2の態様において、上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールが、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、及びCFCHOHからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい
【0021】
第2の態様において、上記水系洗浄液が、水を80質量%以上含有する洗浄液であることが好ましい。
【0022】
第2の態様において、上記水系洗浄液が、水であることが好ましい。
【0023】
また、本発明の半導体基板の処理方法は、
(3−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(3−2)上記水系洗浄液が付着した上記基板をチャンバ内に移し、上記基板に付着した上記水系洗浄液を、
Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、当該溶剤の臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た超臨界流体に置換する工程、
(3−3)チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にせしめる工程
(3−4)上記チャンバから上記基板を取り出す工程
を有する基板の処理方法であることが好ましい(以降、「第3の態様」と記載する場合がある)。
【0024】
第3の態様において、上記含フッ素アルコール含有溶剤が、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールであることが好ましい。
【0025】
第3の態様において、上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールの純度が99.5%以上であることが好ましい。
【0026】
第3の態様において、上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールが、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、及びCFCHOHからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0027】
第3の態様において、上記水系洗浄液が、水を80質量%以上含有する洗浄液であることが好ましい。
【0028】
第3の態様において、上記水系洗浄液が、水であることが好ましい。
【0029】
また、本発明の半導体基板の処理方法は、
(4−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(4−2)水溶性有機溶剤を、上記水系洗浄液が付着した上記基板表面に供給する工程、
(4−3)上記水溶性有機溶剤が付着した上記基板をチャンバ内に移し、上記基板に付着した上記水溶性有機溶剤を、
Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、当該溶剤の臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た超臨界流体に置換する工程、
(4−4)チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にせしめる工程
(4−5)上記チャンバから上記基板を取り出す工程
を有する基板の処理方法であることが好ましい(以降、「第4の態様」と記載する場合がある)。
【0030】
第4の態様において、上記含フッ素アルコール含有溶剤が、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールであることが好ましい。
【0031】
第4の態様において、上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールの純度が99.5%以上であることが好ましい。
【0032】
第4の態様において、上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールが、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、及びCFCHOHからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0033】
第4の態様において、上記水系洗浄液が、水を80質量%以上含有する洗浄液であることが好ましい。
【0034】
第4の態様において、上記水系洗浄液が、水であることが好ましい。
【0035】
第4の態様において、上記水溶性有機溶剤が、水と任意混合比で相溶する溶剤であることが好ましい。
【0036】
第4の態様において、上記水溶性有機溶剤が、アルコールであることが好ましい。
【0037】
第4の態様において、上記水溶性有機溶剤が、2−プロパノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0038】
また、本発明の半導体基板の処理方法は、
(5−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(5−2)上記水系洗浄液が付着した上記基板をチャンバ内に移し、上記水系洗浄液が付着した上記基板表面に、水溶性有機溶剤を供給する工程、
(5−3)上記基板に付着した上記水溶性有機溶剤を、
Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、当該溶剤の臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た超臨界流体に置換する工程、
(5−4)チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にせしめる工程
(5−5)上記チャンバから上記基板を取り出す工程
を有する基板の処理方法であることが好ましい(以降、「第5の態様」と記載する場合がある)。
【0039】
第5の態様において、上記含フッ素アルコール含有溶剤が、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールであることが好ましい。
【0040】
第5の態様において、上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールの純度が99.5%以上であることが好ましい。
【0041】
第5の態様において、上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールが、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、及びCFCHOHからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0042】
第5の態様において、上記水系洗浄液が、水を80質量%以上含有する洗浄液であることが好ましい。
【0043】
第5の態様において、上記水系洗浄液が、水であることが好ましい。
【0044】
第5の態様において、上記水溶性有機溶剤が、水と任意混合比で相溶する溶剤であることが好ましい。
【0045】
第5の態様において、上記水溶性有機溶剤が、アルコールであることが好ましい。
【0046】
第5の態様において、上記水溶性有機溶剤が、2−プロパノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0047】
また、本発明は、上記のいずれかの方法に使用する、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤である。当該溶剤は、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールであることが好ましい。また、上記の溶剤において、上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールの純度が99.5%以上であることが好ましい。また、当該溶剤は、上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールが、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、及びCFCHOHからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0048】
上記第1の態様〜第5の態様のいずれにおいても、上記含フッ素アルコール含有溶剤が、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であることが重要である。上記各元素の含有量が500質量ppbよりも多いと、該溶剤を超臨界流体化した際に例えばフッ化水素(HF)の状態でフッ素原子を放出しやすいためである。
【0049】
なお、含フッ素アルコール含有溶剤中のFe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量は、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)測定や、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)測定などによって評価することができる。
【0050】
また、溶剤を超臨界流体化した際のフッ素原子の放出量は、例えば、イオン電極法や、イオンクロマトグラフ法の他、ジルコニウムエリオクロムシアニンR法やジルコニルアリザリン法などの可視紫外線吸収スペクトル法よって評価することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によると、超臨界流体中でのフッ素原子の放出量が低減された基板の処理方法及びその方法に用いる溶剤を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】第1態様のフロー図である。
図2】第2態様のフロー図である。
図3】第3態様のフロー図である。
図4】第4態様のフロー図である。
図5】第5態様のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
1.第1の態様について
図1に示すように、本発明の第1の態様は、
(1−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(1−2)Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、上記水系洗浄液が付着した上記基板表面に供給する工程、
(1−3)上記含フッ素アルコール含有溶剤が付着した上記基板をチャンバ内に移し、チャンバ内の温度と圧力を該含フッ素アルコール含有溶剤の臨界点以上とすることにより超臨界流体にせしめる工程、
(1−4)チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にせしめる工程
(1−5)上記チャンバから上記基板を取り出す工程
を有する基板の処理方法である。
【0054】
工程(1−1)について
工程(1−1)では基板表面に水系洗浄液を供給する。水系洗浄液の例としては、水、あるいは、水に有機溶媒、過酸化水素、オゾン、酸、アルカリ、界面活性剤のうち少なくとも1種が混合された水溶液が挙げられる。基板へのダメージの観点から、水を80質量%以上含有する洗浄液であることが好ましく。清浄性の観点から水であることが好ましく、特に超純水が好ましい。また、水系洗浄液は、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であることが好ましい。各元素の含有量が500質量ppbよりも多いと、工程(1−1)において基板表面に各元素が付着、残留する恐れがあり、基板表面と含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体を接触させる後工程において、付着、残留した各元素が含フッ素アルコールの分解を引き起こし、超臨界流体中でフッ素原子を放出する恐れがあると考えられるためである。
なお、上記の水系洗浄液としては、一般に入手して得たあるいは調液して得た、水系洗浄液を、蒸留、抽出、フィルタリング等の手法で精製することにより、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量をそれぞれ500質量ppb以下としたものが好ましい。
【0055】
基板表面に水系洗浄液を供給する方法としては、結果的に基板表面に液盛りできるのであれば、液体状態の水系洗浄液を供給することでもよいし、蒸気として水系洗浄液を供給することでもよい。具体的には、ノズル等で基板表面に水系洗浄液を供給する方法や、基板表面を水系洗浄液の蒸気に曝す方法や、基板を水系洗浄液中に浸漬する方法などが挙げられる。このとき、基板を1つずつ処理する枚葉方式を採用してもよいし、複数の基板を一度に処理するバッチ方式を採用してもよい。
【0056】
工程(1−2)について
工程(1−2)では、水系洗浄液が液盛りされた基板表面に、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を供給する。各元素の含有量が500質量ppbよりも多いと、工程(1−3)において各元素が含フッ素アルコールの分解を引き起こし、超臨界流体中でフッ素原子の放出量が多くなってしまう。上記の各元素の含有量は少ないほど好ましく、350質量ppb以下がより好ましく、100質量ppb以下がさらに好ましい。
なお、上記の含フッ素アルコール含有溶剤としては、一般に入手して得たあるいは合成して得た、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤を、蒸留、抽出、フィルタリング等の手法で精製することにより、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量をそれぞれ500質量ppb以下としたものを用いることができる。
【0057】
上記含フッ素アルコール含有溶剤は、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤であり、それ以外に含有することのある溶剤としては、該含フッ素アルコールに溶解できるものであれば良く、水や有機溶剤等があり、有機溶剤が好ましい。超臨界流体化が容易であるため上記含フッ素アルコール含有溶剤が、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールであることがより好ましい。
【0058】
上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールとして、純度が99.5%以上のものを用いることが好ましい。当該含フッ素アルコール中に不純物として含まれうる成分の中には、超臨界流体のような高温高圧環境において分解することにより、フッ素原子を放出する恐れがあるものもあるため、上記の純度が99.5%以上の高いものほど好ましい。例えば、蒸留やフィルタリングや抽出等の精製操作により、上記のように純度が99.5%以上の炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを得ることができる。
【0059】
上記炭素数が2〜6の含フッ素アルコールとしては、下記一般式[1]で表される含フッ素アルコールが好ましい。
CHOH [1]
[式[1]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1〜5のアルキル基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Rの炭素数の合計は1〜5である。aは、1〜3の整数であり、bは、0〜2の整数であり、aとbの合計は3である。]
【0060】
上記一般式[1]で表される含フッ素アルコールとしては、CFCHOH、CHFCHOH、CFCFCHOH、CHFCFCHOH、CFCH(OH)CF、CFCH(OH)CH、CHFCH(OH)CHF、CHFCH(OH)CHF、CFCFCFCHOH、CHFCFCFCHOH、CFCHFCFCHOH、CFCHCHCHOH、(CFCFCHOH、CFCFCH(OH)CF、CFCFCH(OH)CH、(CFCOH、CH(CFCOH、CF(CHCOH、CFCFCFCFCHOH、CFCFCHCHCHOH、CHFCFCFCFCHOH、CFCHCHCHCHOH、(CFCFCHCHOH、CFCFCFCH(OH)CF、CFCFCFCH(OH)CH、CFCFC(CFOH、CFCFC(CHOH、CHFCFC(CFOH、CFCFCFCFCFCHOH、CHFCFCFCFCFCHOH、CFCHCHCHCHCHOH、(CFCFCHCHCHOH、CFCFCFCFCH(OH)CF、CFCFCFCFCH(OH)CH、CHCHCHC(CFOHなどが挙げられる。中でも、超臨界流体化の容易さという観点から、フッ素元素置換率が50%以上の1級含フッ素アルコール、フッ素元素置換率が40%以上の2級含フッ素アルコール、フッ素元素置換率が30%以上の3級含フッ素アルコールが好ましい。なお、フッ素元素置換率(%)は、「炭素元素に結合するフッ素元素の数/(炭素元素の数×2+1)×100」で算出される。工業的な入手容易性の観点から、具体的には、CHCHCHC(CFOH、CHFCFCHOH、(CFCOH、CH(CFCOH、CFCH(OH)CF、CFCHOHが好ましい。これらは冷媒や洗浄剤などとして一般的に使用されている。さらに、水や上記のその他に含みうる溶剤との溶解性の観点から、炭素数が2または3の含フッ素アルコールが好ましく、CFCH(OH)CF、CFCHOHがより好ましい。
【0061】
基板表面に上記含フッ素アルコール含有溶剤を供給する方法としては、結果的に基板表面に液盛りできるのであれば、液体状態の含フッ素アルコール含有溶剤を供給することでもよいし、蒸気として含フッ素アルコール含有溶剤を供給することでもよい。具体的には、ノズル等で基板表面に含フッ素アルコール含有溶剤を供給する方法や、基板表面を含フッ素アルコール含有溶剤の蒸気に曝す方法や、基板を含フッ素アルコール含有溶剤中に浸漬する方法などが挙げられる。このとき、基板を1つずつ処理する枚葉方式を採用してもよいし、複数の基板を一度に処理するバッチ方式を採用してもよい。
【0062】
工程(1−3)について
工程(1−3)では、上記含フッ素アルコール含有溶剤が液盛りされた基板をチャンバ内に移し、チャンバ内の温度と圧力を該含フッ素アルコール含有溶剤の臨界点以上とすることにより超臨界流体にせしめる。液体の含フッ素アルコール含有溶剤を超臨界流体に相変化させる方法は、含フッ素アルコール含有溶剤が液盛りされた基板をチャンバ内に移した後で、熱処理を施すことでもよい。また、含フッ素アルコール含有溶剤が液盛りされた基板をチャンバ内に移した後で、予め臨界温度以上に加熱した気体の含フッ素アルコール含有溶剤をチャンバ内に供給し加圧することでもよい。また、上記熱処理と上記加圧をともに行うことでもよい。
チャンバは、含フッ素アルコール含有溶剤を超臨界流体化できるような耐圧容器として構成されるものであればよい。なお、基板をチャンバ内に移す前に、予めチャンバを昇温させておいてもよい。また、当該チャンバは基板を搬入する手段を備えていてもよい。
この工程において、液体である含フッ素アルコール含有溶剤が蒸発することなく超臨界流体に相変化する。すなわち、基板表面が連続して液体及び超臨界流体で覆われているため、当該工程でパターン倒れは起こらない。
【0063】
工程(1−4)について
工程(1−4)では、チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にせしめる。このように、超臨界流体から液体状態を経ることなく気化させることで、基板表面のパターンに毛細管力が働かないため、パターン倒れが起こらない。表面張力がほぼゼロの超臨界流体ではパターンに係る毛細管力もほぼゼロであり、この状態から液体状態を経ることなく気化させるため、当該工程ではパターンにほとんど力が加わらないと推察される。
【0064】
工程(1−5)について
工程(1−5)では、上記チャンバから上記基板を取り出す。上記チャンバは基板を搬出する手段を備えていてもよい。
【0065】
2.第2の態様について
図2に示すように、本発明の第2の態様は、
(2−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(2−2)Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、上記水系洗浄液が付着した上記基板表面に供給する工程、
(2−3)上記含フッ素アルコール含有溶剤が付着した上記基板をチャンバ内に移し、上記基板に付着した上記含フッ素アルコール含有溶剤を、
臨界点以上の温度と圧力とすることにより別途得た上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換する工程、
(2−4)チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にせしめる工程
(2−5)上記チャンバから上記基板を取り出す工程
を有する基板の処理方法である。
【0066】
工程(2−1)について
工程(2−1)は、第1の態様の工程(1−1)と同様である。
【0067】
工程(2−2)について
工程(2−2)は、第1の態様の工程(1−2)と同様である。
【0068】
工程(2−3)について
工程(2−3)では、上記含フッ素アルコール含有溶剤が液盛りされた基板をチャンバ内に移し、上記基板に付着した上記含フッ素アルコール含有溶剤を、
臨界点以上の温度と圧力とすることにより別途得た上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換する。上記超臨界流体は、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤を臨界点以上の温度と圧力とすることにより予め超臨界流体化して得たものである。各元素の含有量が500質量ppbよりも多いと、各元素が含フッ素アルコールの分解を引き起こし、超臨界流体中でフッ素原子の放出量が多くなってしまう。上記の各元素の含有量は少ないほど好ましく、350質量ppb以下がより好ましく、100質量ppb以下がさらに好ましい。当該超臨界流体として用いる含フッ素アルコール含有溶剤は、工程(2−2)で基板表面に供給する含フッ素アルコール含有溶剤と同じ組成の溶剤でもよいし、異なる組成の溶剤でもよい。
【0069】
本工程では、例えば、
上記チャンバと配管により連結した別の耐圧容器内で臨界点以上の温度と圧力とすることにより別途得た上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体を、該配管を通して圧送し上記チャンバ内に供給することで、
上記基板に付着した上記含フッ素アルコール含有溶剤を、上記別途得た含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換する。
上記の置換は、
基板に付着した含フッ素アルコール含有溶剤を、上記超臨界流体で、基板表面から流し出して排出することにより行ってもよいし、
基板に付着した含フッ素アルコール含有溶剤が、供給された超臨界流体中に溶解し、互いに溶解した状態の超臨界流体として基板表面に保持されるようにすることでもよい。
上記超臨界流体は、上記配管に連結したチャンバ内のノズルから上記含フッ素アルコール含有溶剤が液盛りされた基板に供給されることが好ましい。当該供給は、チャンバ内を加熱や加圧しながら行ってもよい。
チャンバは、置換した含フッ素アルコール超臨界流体を、そのまま超臨界流体の状態で保持できるような耐圧容器として構成されるものであればよい。なお、基板をチャンバ内に移す前に、予めチャンバを昇温させておいてもよい。また、当該チャンバは基板を搬入する手段を備えていてもよい。
この工程において、液体である含フッ素アルコール含有溶剤が蒸発することなく超臨界流体に置換する。すなわち、基板表面が連続して液体及び超臨界流体で覆われているため、当該工程でパターン倒れは起こらない。
【0070】
上記予め超臨界流体化させるための含フッ素アルコール含有溶剤は、第1の態様の工程(1−2)で用いる含フッ素アルコール含有溶剤と同様である。
【0071】
工程(2−4)について
工程(2−4)は、第1の態様の工程(1−4)と同様である。
【0072】
工程(2−5)について
工程(2−5)は、第1の態様の工程(1−5)と同様である。
【0073】
3.第3の態様について
図3に示すように、本発明の第3の態様は、
(3−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(3−2)上記水系洗浄液が付着した上記基板をチャンバ内に移し、上記基板に付着した上記水系洗浄液を、
Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、当該溶剤の臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た超臨界流体に置換する工程、
(3−3)チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にせしめる工程
(3−4)上記チャンバから上記基板を取り出す工程
を有する基板の処理方法である。
【0074】
工程(3−1)について
工程(3−1)は、第1の態様の工程(1−1)と同様である。
【0075】
工程(3−2)について
工程(3−2)では、上記水系洗浄液が液盛りされた基板をチャンバ内に移し、上記基板に付着した上記水系洗浄液を、
臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換する。上記超臨界流体は、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤を臨界点以上の温度と圧力とすることにより予め超臨界流体化して得たものであり、第2の態様の工程(2−3)で用いるものと同様である。
【0076】
本工程では、例えば、
上記チャンバと配管により連結した別の耐圧容器内で臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体を、該配管を通して圧送し上記チャンバ内に供給することで、
上記基板に付着した上記水系洗浄液を、上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換する。
上記の置換は、
基板に付着した水系洗浄液を、上記超臨界流体で、基板表面から流し出して排出することにより行ってもよいし、
基板に付着した水系洗浄液が、供給された超臨界流体中に溶解し、互いに溶解した状態の超臨界流体として基板表面に保持されるようにすることでもよい。
上記超臨界流体は、上記配管に連結したチャンバ内のノズルから上記水系洗浄液が液盛りされた基板に供給されることが好ましい。当該供給は、チャンバ内を加熱や加圧しながら行ってもよい。
【0077】
また、本工程では、例えば、
水系洗浄液が液盛りされた基板をチャンバ内に移した後で、チャンバ内に設けられたノズルから上記基板に液体の上記含フッ素アルコール含有溶剤を供給し、
チャンバ内を含フッ素アルコール含有溶剤の臨界点以上に加熱・加圧して、上記含フッ素アルコール含有溶剤を超臨界流体とすることで、上記基板に付着した上記水系洗浄液を、上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換する。
【0078】
チャンバは、置換した含フッ素アルコール超臨界流体を、そのまま超臨界流体の状態で保持できるような耐圧容器として構成されるものであればよい。なお、基板をチャンバ内に移す前に、予めチャンバを昇温させておいてもよい。また、当該チャンバは基板を搬入する手段を備えていてもよい。
この工程において、液体である水系洗浄液が蒸発することなく超臨界流体に置換する。すなわち、基板表面が連続して液体及び超臨界流体で覆われているため、当該工程でパターン倒れは起こらない。
【0079】
工程(3−3)について
工程(3−3)は、第1の態様の工程(1−4)と同様である。
【0080】
工程(3−4)について
工程(3−4)は、第1の態様の工程(1−5)と同様である。
【0081】
4.第4の態様について
図4に示すように、本発明の第4の態様は、
(4−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(4−2)水溶性有機溶剤を、上記水系洗浄液が付着した上記基板表面に供給する工程、
(4−3)上記水溶性有機溶剤が付着した上記基板をチャンバ内に移し、上記基板に付着した上記水溶性有機溶剤を、
Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、当該溶剤の臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た超臨界流体に置換する工程、
(4−4)チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にせしめる工程
(4−5)上記チャンバから上記基板を取り出す工程
を有する基板の処理方法である。
【0082】
工程(4−1)について
工程(4−1)は、第1の態様の工程(1−1)と同様である。
【0083】
工程(4−2)について
工程(4−2)では、水系洗浄液が液盛りされた基板表面に、水溶性有機溶剤を供給する。
【0084】
上記水溶性有機溶剤は、水100重量部に対して5重量部が溶解できる溶剤である。さらには、水と任意混合比で相溶すると水系洗浄液を置換しやすいため好ましい。なお、該水溶性有機溶剤は、有機溶剤の混合液であっても良い。
【0085】
上記水溶性有機溶剤としては、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が少ないものを容易に入手できるため、イソプロピルアルコール(2−プロパノール、イソプロパノールとも記載することがある)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0086】
また、上記水溶性有機溶剤は、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であることが好ましい。各元素の含有量が500質量ppbよりも多いと、工程(4−2)において基板表面に各元素が付着、残留する恐れがあり、基板表面と含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体を接触させる後工程において、付着、残留した各元素が含フッ素アルコールの分解を引き起こし、超臨界流体中でフッ素原子を放出する恐れがあるためである。
なお、上記の水溶性有機溶剤としては、一般に入手して得たあるいは調液して得た、水溶性有機溶剤を、蒸留、抽出、フィルタリング等の手法で精製することにより、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量をそれぞれ500質量ppb以下としたものが好ましい。
【0087】
基板表面に上記水溶性有機溶剤を供給する方法としては、結果的に基板表面に液盛りできるのであれば、液体状態の水溶性有機溶剤を供給することでもよいし、蒸気として水溶性有機溶剤を供給することでもよい。具体的には、ノズル等で基板表面に水溶性有機溶剤を供給する方法や、基板表面を水溶性有機溶剤の蒸気に曝す方法や、基板を水溶性有機溶剤中に浸漬する方法などが挙げられる。このとき、基板を1つずつ処理する枚葉方式を採用してもよいし、複数の基板を一度に処理するバッチ方式を採用してもよい。
【0088】
工程(4−3)について
工程(4−3)では、上記水溶性有機溶剤が液盛りされた基板をチャンバ内に移し、上記基板に付着した上記水溶性有機溶剤を、
臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換する。上記超臨界流体は、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤を臨界点以上の温度と圧力とすることにより予め超臨界流体化して得たものであり、第2の態様の工程(2−3)で用いるものと同様である。
【0089】
本工程では、例えば、
上記チャンバと配管により連結した別の耐圧容器内で臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体を、該配管を通して圧送し上記チャンバ内に供給することで、
上記基板に付着した上記水溶性有機溶剤を、上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換する。
上記の置換は、
基板に付着した水溶性有機溶剤を、上記超臨界流体で、基板表面から流し出して排出することにより行ってもよいし、
基板に付着した水溶性有機溶剤が、供給された超臨界流体中に溶解し、互いに溶解した状態の超臨界流体として基板表面に保持されるようにすることでもよい。
上記超臨界流体は、上記配管に連結したチャンバ内のノズルから上記水溶性有機溶剤が液盛りされた基板に供給されることが好ましい。当該供給は、チャンバ内を加熱や加圧しながら行ってもよい。
【0090】
また、本工程では、例えば、
水溶性有機溶剤が液盛りされた基板をチャンバ内に移した後で、チャンバ内に設けられたノズルから上記基板に液体の上記含フッ素アルコール含有溶剤を供給し、
チャンバ内を含フッ素アルコール含有溶剤の臨界点以上に加熱・加圧して、上記含フッ素アルコール含有溶剤を超臨界流体とすることで、上記基板に付着した上記水溶性有機溶剤を、上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換する。
【0091】
チャンバは、置換した含フッ素アルコール超臨界流体を、そのまま超臨界流体の状態で保持できるような耐圧容器として構成されるものであればよい。なお、基板をチャンバ内に移す前に、予めチャンバを昇温させておいてもよい。また、当該チャンバは基板を搬入する手段を備えていてもよい。
この工程において、液体である水溶性有機溶剤が蒸発することなく超臨界流体に置換する。すなわち、基板表面が連続して液体及び超臨界流体で覆われているため、当該工程でパターン倒れは起こらない。
【0092】
工程(4−4)について
工程(4−4)は、第1の態様の工程(1−4)と同様である。
【0093】
工程(4−5)について
工程(4−5)は、第1の態様の工程(1−5)と同様である。
【0094】
5.第5の態様について
図5に示すように、本発明の第5の態様は、
(5−1)基板の表面に水系洗浄液を供給する工程、
(5−2)上記水系洗浄液が付着した上記基板をチャンバ内に移し、上記水系洗浄液が付着した上記基板表面に、水溶性有機溶剤を供給する工程、
(5−3)上記基板に付着した上記水溶性有機溶剤を、
Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤(含フッ素アルコール含有溶剤)を、当該溶剤の臨界点以上の温度と圧力とすることにより得た超臨界流体に置換する工程、
(5−4)チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にせしめる工程
(5−5)上記チャンバから上記基板を取り出す工程
を有する基板の処理方法である。
【0095】
工程(5−1)について
工程(5−1)は、第1の態様の工程(1−1)と同様である。
【0096】
工程(5−2)について
工程(5−2)では、上記水系洗浄液が液盛りされた基板をチャンバ内に移し、上記基板表面に、水溶性有機溶剤を供給する。当該水溶性有機溶剤は、第4の態様の工程(4−2)で用いるものと同様である。また、供給方法も第4の態様の工程(4−2)と同様である。
【0097】
工程(5−3)について
工程(5−3)は、第4の態様の工程(4−3)と同様である。
【0098】
工程(5−4)について
工程(5−4)は、第1の態様の工程(1−4)と同様である。
【0099】
工程(5−5)について
工程(5−5)は、第1の態様の工程(1−5)と同様である。
【0100】
6.基板について
上記の第1の態様〜第5の態様で処理対象となる基板としては、従来のウェットプロセスでは洗浄液の乾燥によってパターンの倒壊の恐れがあるような微細凹凸パターンを有し、かつ、フッ素原子により悪影響を及ぼされるような材質を表面に有する基板である。
フッ素原子により悪影響を及ぼされるような材質を表面に有する基板としては、Si原子、Ti原子、W原子、Ge原子、O原子、N原子、C原子等を表面に有する基板(例えば、Si、SiC、SiN、SiGe、Ge、TiN、W、InGaAs、SiO、SiOC、SiON等を表面に有する基板)が挙げられる。中でも、Si原子、Ti原子等を表面に有する基板(例えば、Si、SiN、SiO、TiN等を表面に有する基板)は、本発明の処理方法によって良好に処理することができる。なお、上記基板は、半導体ウェハやフォトマスクやMEMS等の微小構造体に用いられるものであってもよい。
【実施例】
【0101】
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0102】
基板表面に保持された液体を、超臨界流体に置換し、又は温度と圧力を臨界点以上とすることにより超臨界流体に相変化し、
その後、該超臨界流体を、液相を経ずに気化することで、基板のパターン倒れを防止する処理技術については、これまで数多く報告され、確立された技術であるので、
本発明では、基板表面に超臨界流体として接触する溶剤中のFe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量と、溶剤を超臨界流体化した際のフッ素原子の放出量について評価した。
【0103】
[Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量の評価]
各金属元素の含有量は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)装置を用いて測定した。
【0104】
[溶剤の超臨界流体処理の際のフッ素原子の放出量の評価]
超臨界流体化した際のフッ素原子の放出量については、イオンクロマトグラフを用いて測定した。ウェハを処理し、チャンバ内の超臨界流体を気化してチャンバから排出された溶剤を液体窒素で冷却した捕集器に深冷捕集し、その捕集した液体のフッ素イオン濃度をイオンクロマトグラフによって測定した。
【0105】
[水系洗浄液]
実施例及び比較例で用いる水系洗浄液として以下のものを用いた。
(水系洗浄液1、表中で「水1」と記載)
水系洗浄液1として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である純水を用いた。
(水系洗浄液2、表中で「水2」と記載)
水系洗浄液2として、90質量%の純水と10質量%のイソプロピルアルコール(以降「IPA」と記載)の混合液であり、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である混合液を用いた。
(水系洗浄液3、表中で「水3」と記載)
水系洗浄液3として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caのうち、Fe元素の含有量が800質量ppbであり、それ以外の各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である純水を用いた。
【0106】
実施例及び比較例で用いる水溶性有機溶剤として以下のものを用いた。
(水溶性有機溶剤1、表中で「IPA1」と記載)
水溶性有機溶剤1として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるIPAを用いた。
(水溶性有機溶剤2、表中で「IPA2」と記載)
水溶性有機溶剤2として、95質量%のIPAと5質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合液であり、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である混合液を用いた。
(水溶性有機溶剤3、表中で「IPA3」と記載)
水溶性有機溶剤3として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caのうち、Fe元素の含有量が750質量ppbであり、それ以外の各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるIPAを用いた。
【0107】
実施例及び比較例で用いる含フッ素アルコール含有溶剤として以下のものを用いた。
CFCH(OH)CF(以降、「HFIP」と記載する)
CFCHOH(以降、「TFEA」と記載する)
CHCHCHC(CFOH(以降、「BTHB」と記載する)
CHFCFCHOH(以降、「TFPA」と記載する)
(CFCOH(以降、「PFTB」と記載する)
CH(CFCOH(以降、「HFTB」と記載する)
85質量%のHFIPと15質量%のTFEAの混合液(以降、「HFIP混合」と記載する)
なお、上記の、HFIP、HFIP混合で用いたCFCH(OH)CFとTFEA、TFEA、BTHB、TFPA、PFTB、HFTBは、蒸留やフィルタリングや抽出といった精製操作により、ガスクロマトグラフィー純度が99.5%以上のものを用いた。
【0108】
[基板]
実施例及び比較例で処理対象とする基板として以下のものを用いた。なお、本発明の実施例及び比較例においては、基板表面に超臨界流体として接触する溶剤中のFe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量と、溶剤を超臨界流体化した際のフッ素原子の放出量についてのみ評価するので、擬似的な基板として表面が平滑な基板を用いた。
成膜処理をしていないSi基板(以降、「Si基板」、表中で「Si」と記載する)表面にSiO2膜を有するSi基板(以降、「SiO2基板」、表中で「SiO2」と記載する)、表面にTiN膜を有するSi基板(以降、「TiN基板」、表中で「TiN」と記載する)、表面にSiN膜を有するSi基板(以降、「SiN基板」、表中で「SiN」と記載する)、表面にSiC膜を有するSi基板(以降、「SiC基板」、表中で「SiC」と記載する)、表面にSiGe膜を有するSi基板(以降、「SiGe基板」、表中で「SiGe」と記載する)、表面にSiOC膜を有するSi基板(以降、「SiOC基板」、表中で「SiOC」と記載する)
【0109】
[実施例1−1]
工程(1−1)として、Si基板の表面に水系洗浄液1を供給し、
工程(1−2)として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表1に示すようなHFIPを上記基板に供給し、
工程(1−3)として、上記HFIPが付着した上記基板をチャンバ内に移し、チャンバ内の温度と圧力をHFIPの臨界点以上として超臨界流体化し、
工程(1−4)として、チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にし、
工程(1−5)として、上記チャンバから上記基板を取り出した。
なお、上述の超臨界流体化する際の圧力は、二酸化炭素を超臨界流体化する際の圧力よりも低い圧力である。
上記工程(1−3)の超臨界流体で処理する際に放出されたフッ素原子の量は0.5vol.ppm未満であった。結果を表1に示す。
なお、工程(1−4)で、液体状態を経ることなく、超臨界流体を気化したため、表面にパターンを有する基板を処理した場合であっても、パターン倒れを引き起こすことはない。
【0110】
[実施例1−2〜1−17、比較例1−1〜1−7]
表1に示すように、基板、水系洗浄液、含フッ素アルコール含有溶剤を変更し、実施例1−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
実施例1−1〜1−3の結果から分かるように、工程(1−2)でFe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)を用いることで、工程(1−3)で基板を超臨界流体で処理した際の超臨界流体中でのフッ素原子の放出量はわずかなものであり、上記各元素の含有量が少ないほど、該フッ素原子の放出量も少ない傾向であった。
一方、比較例1−1〜1−7の結果から分かるように、上記各元素の含有量が500質量ppbを超えると上記フッ素原子の放出量が顕著に多くなってしまう。
フッ素原子により基板表面がエッチングされてしまうことや、フッ素原子が基板やパターンなどの半導体デバイス中に取り込まれてデバイスの特性を低下させてしまう観点から、当然ながら、上記フッ素原子の放出量は少ないことが望ましい。
実施例1−6〜1−11は、実施例1−1の工程(1−2)で用いる含フッ素アルコール含有溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例1−1と同様に優れた結果を示した。従って、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤はその種類を問わず、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であれば本発明の第1の態様に適用できる。
実施例1−12〜1−17は、実施例1−1の処理対象であるSi基板を他の種類の基板に変えた例であり、いずれも実施例1−1と同様に優れた結果を示した。従って、本発明の第1の態様に係る処理方法は、フッ素原子により悪影響を及ぼされるような材質を表面に有する基板であれば種類を問わずに適用できる。
実施例1−4及び1−5は、実施例1−1の工程(1−1)で用いる水系洗浄液の種類を変えた例であり、いずれも実施例1−1と同様に優れた結果を示した。なお、水系洗浄液としてFe元素の含有量が800質量ppbの水系洗浄液3を用いた実施例1−5は、各元素の含有量が500質量ppb未満の水系洗浄液1や水系洗浄液2を用いた実施例1−1や1−4と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(1−1)で用いる水系洗浄液も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
【0113】
[実施例2−1]
工程(2−1)として、Si基板の表面に水系洗浄液1を供給し、
工程(2−2)として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が全て500質量ppb未満であるHFIP(後述の工程(2−3)で別途超臨界流体を得るために用いるHFIPと同じもの)を上記基板に供給し、
工程(2−3)として、上記HFIPが付着した上記基板をチャンバ内に移し、
該チャンバと配管により連結した別の耐圧容器内で、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表2に示すようなHFIPを予め臨界点以上の温度と圧力とすることにより超臨界流体として別途準備し、
該超臨界流体を、上記配管を通して圧送し上記チャンバ内に供給することで、
上記基板に付着したHFIPを、上記超臨界流体に置換し、
工程(2−4)として、チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にし、
工程(2−5)として、上記チャンバから上記基板を取り出した。
なお、上述の超臨界流体化する際の圧力は、二酸化炭素を超臨界流体化する際の圧力よりも低い圧力である。
上記工程(2−3)の超臨界流体で処理する際に放出されたフッ素原子の量は0.5vol.ppm未満であった。結果を表2に示す。
なお、工程(2−4)で、液体状態を経ることなく、超臨界流体を気化したため、表面にパターンを有する基板を処理した場合であっても、パターン倒れを引き起こすことはない。
【0114】
[実施例2−2〜2−18、比較例2−1〜2−7]
表2に示すように、基板、水系洗浄液、含フッ素アルコール含有溶剤を変更し、実施例2−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表2に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
実施例2−1〜2−3の結果から分かるように、工程(2−2)でFe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)を用い、
工程(2−3)で別途準備する超臨界流体の溶剤として各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)を用いることで、
工程(2−3)で基板を超臨界流体で処理した際の超臨界流体中でのフッ素原子の放出量はわずかなものであり、上記各元素の含有量が少ないほど、該フッ素原子の放出量も少ない傾向であった。
一方、比較例2−1〜2−7の結果から分かるように、工程(2−2)で用いるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)や工程(2−3)で超臨界流体の溶剤として用いるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)の上記各元素の含有量が500質量ppbを超えると上記フッ素原子の放出量が顕著に多くなってしまう。
フッ素原子により基板表面がエッチングされてしまうことや、フッ素原子が基板やパターンなどの半導体デバイス中に取り込まれてデバイスの特性を低下させてしまう観点から、当然ながら、上記フッ素原子の放出量は少ないことが望ましい。
実施例2−6〜2−11は、実施例2−1の工程(2−2)で用いる含フッ素アルコール含有溶剤及び工程(2−3)で超臨界流体の溶剤として用いる含フッ素アルコール含有溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例2−1と同様に優れた結果を示した。従って、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤はその種類を問わず、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であれば本発明の第2の態様に適用できる。
実施例2−12〜2−17は、実施例2−1の処理対象であるSi基板を他の種類の基板に変えた例であり、いずれも実施例2−1と同様に優れた結果を示した。従って、本発明の第2の態様に係る処理方法は、フッ素原子により悪影響を及ぼされるような材質を表面に有する基板であれば種類を問わずに適用できる。
実施例2−4及び2−5は、実施例2−1の工程(2−1)で用いる水系洗浄液の種類を変えた例であり、いずれも実施例2−1と同様に優れた結果を示した。なお、水系洗浄液としてFe元素の含有量が800質量ppbの水系洗浄液3を用いた実施例2−5は、各元素の含有量が500質量ppb未満の水系洗浄液1や水系洗浄液2を用いた実施例2−1や2−4と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(2−1)で用いる水系洗浄液も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
実施例2−18は、工程(2−2)で用いる含フッ素アルコール含有溶剤として、実施例2−7の工程(2−3)で超臨界流体の溶剤として用いるTFEAを用い、それ以外は実施例2−1と同様の実験例である。すなわち、工程(2−2)で用いる含フッ素アルコール含有溶剤と工程(2−3)で超臨界流体の溶剤として用いる含フッ素アルコール含有溶剤の種類が異なる実験例である。このような場合も実施例2−1と同様に優れた結果を示した。
【0117】
[実施例3−1]
工程(3−1)として、Si基板の表面に水系洗浄液1を供給し、
工程(3−2)として、上記水系洗浄液1が付着した上記基板をチャンバ内に移し、
該チャンバと配管により連結した別の耐圧容器内で、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表3に示すようなHFIPを予め臨界点以上の温度と圧力とすることにより超臨界流体として別途準備し、
該超臨界流体を、上記配管を通して圧送し上記チャンバ内に供給することで、
上記基板に付着した水系洗浄液1を、上記超臨界流体に置換し、
工程(3−3)として、チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にし、
工程(3−4)として、上記チャンバから上記基板を取り出した。
なお、上述の超臨界流体化する際の圧力は、二酸化炭素を超臨界流体化する際の圧力よりも低い圧力である。
上記工程(3−2)の超臨界流体で処理する際に放出されたフッ素原子の量は0.5vol.ppm未満であった。結果を表3に示す。
なお、工程(3−3)で、液体状態を経ることなく、超臨界流体を気化したため、表面にパターンを有する基板を処理した場合であっても、パターン倒れを引き起こすことはない。
【0118】
[実施例3−2〜3−17、比較例3−1〜3−7]
表3に示すように、基板、水系洗浄液、含フッ素アルコール含有溶剤を変更し、実施例3−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表3に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
実施例3−1〜3−3の結果から分かるように、工程(3−2)で別途準備する超臨界流体の溶剤として各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)を用いることで、
工程(3−2)で基板を超臨界流体で処理した際の超臨界流体中でのフッ素原子の放出量はわずかなものであり、上記各元素の含有量が少ないほど、該フッ素原子の放出量も少ない傾向であった。
一方、比較例3−1〜3−7の結果から分かるように、工程(3−2)で超臨界流体の溶剤として用いるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)の上記各元素の含有量が500質量ppbを超えると上記フッ素原子の放出量が顕著に多くなってしまう。
フッ素原子により基板表面がエッチングされてしまうことや、フッ素原子が基板やパターンなどの半導体デバイス中に取り込まれてデバイスの特性を低下させてしまう観点から、当然ながら、上記フッ素原子の放出量は少ないことが望ましい。
実施例3−6〜3−11は、実施例3−1の工程(3−2)で超臨界流体の溶剤として用いる含フッ素アルコール含有溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例3−1と同様に優れた結果を示した。従って、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤はその種類を問わず、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であれば本発明の第3の態様に適用できる。
実施例3−12〜3−17は、実施例3−1の処理対象であるSi基板を他の種類の基板に変えた例であり、いずれも実施例3−1と同様に優れた結果を示した。従って、本発明の第3の態様に係る処理方法は、フッ素原子により悪影響を及ぼされるような材質を表面に有する基板であれば種類を問わずに適用できる。
実施例3−4及び3−5は、実施例3−1の工程(3−1)で用いる水系洗浄液の種類を変えた例であり、いずれも実施例3−1と同様に優れた結果を示した。なお、水系洗浄液としてFe元素の含有量が800質量ppbの水系洗浄液3を用いた実施例3−5は、各元素の含有量が500質量ppb未満の水系洗浄液1や水系洗浄液2を用いた実施例3−1や3−4と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(3−1)で用いる水系洗浄液も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
【0121】
[実施例4−1]
工程(4−1)として、Si基板の表面に水系洗浄液1を供給し、
工程(4−2)として、上記水系洗浄液が付着した上記基板表面にIPA1を供給し、
工程(4−3)として、上記IPA1が付着した上記基板をチャンバ内に移し、
該チャンバと配管により連結した別の耐圧容器内で、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表4に示すようなHFIPを予め臨界点以上の温度と圧力とすることにより超臨界流体として別途準備し、
該超臨界流体を、上記配管を通して圧送し上記チャンバ内に供給することで、
上記基板に付着したIPA1を、上記超臨界流体に置換し、
工程(4−4)として、チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にし、
工程(4−5)として、上記チャンバから上記基板を取り出した。
なお、上述の超臨界流体化する際の圧力は、二酸化炭素を超臨界流体化する際の圧力よりも低い圧力である。
上記工程(4−3)の超臨界流体で処理する際に放出されたフッ素原子の量は0.5vol.ppm未満であった。結果を表4に示す。
なお、工程(4−4)で、液体状態を経ることなく、超臨界流体を気化したため、表面にパターンを有する基板を処理した場合であっても、パターン倒れを引き起こすことはない。
【0122】
[実施例4−2〜4−19、比較例4−1〜4−7]
表4に示すように、基板、水系洗浄液、水溶性有機溶剤、含フッ素アルコール含有溶剤を変更し、実施例4−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表4に示す。
【0123】
【表4】
【0124】
実施例4−1〜4−3の結果から分かるように、工程(4−3)で別途準備する超臨界流体の溶剤として各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)を用いることで、
工程(4−3)で基板を超臨界流体で処理した際の超臨界流体中でのフッ素原子の放出量はわずかなものであり、上記各元素の含有量が少ないほど、該フッ素原子の放出量も少ない傾向であった。
一方、比較例4−1〜4−7の結果から分かるように、工程(4−3)で超臨界流体の溶剤として用いるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)の上記各元素の含有量が500質量ppbを超えると上記フッ素原子の放出量が顕著に多くなってしまう。
フッ素原子により基板表面がエッチングされてしまうことや、フッ素原子が基板やパターンなどの半導体デバイス中に取り込まれてデバイスの特性を低下させてしまう観点から、当然ながら、上記フッ素原子の放出量は少ないことが望ましい。
実施例4−6〜4−11は、実施例4−1の工程(4−3)で超臨界流体の溶剤として用いる含フッ素アルコール含有溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例4−1と同様に優れた結果を示した。従って、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤はその種類を問わず、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であれば本発明の第4の態様に適用できる。
実施例4−12〜4−17は、実施例4−1の処理対象であるSi基板を他の種類の基板に変えた例であり、いずれも実施例4−1と同様に優れた結果を示した。従って、本発明の第4の態様に係る処理方法は、フッ素原子により悪影響を及ぼされるような材質を表面に有する基板であれば種類を問わずに適用できる。
実施例4−4及び4−5は、実施例4−1の工程(4−1)で用いる水系洗浄液の種類を変えた例であり、いずれも実施例4−1と同様に優れた結果を示した。なお、水系洗浄液としてFe元素の含有量が800質量ppbの水系洗浄液3を用いた実施例4−5は、各元素の含有量が500質量ppb未満の水系洗浄液1や水系洗浄液2を用いた実施例4−1や4−4と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(4−1)で用いる水系洗浄液も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
実施例4−18及び4−19は、実施例4−1の工程(4−2)で用いる水溶性有機溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例4−1と同様に優れた結果を示した。なお、水溶性有機溶剤としてFe元素の含有量が750質量ppbのIPA3を用いた実施例4−19は、各元素の含有量が500質量ppb未満のIPA1やIPA2を用いた実施例4−1や4−18と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(4−2)で用いる水溶性有機溶剤も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
【0125】
[実施例5−1]
工程(5−1)として、Si基板の表面に水系洗浄液1を供給し、
工程(5−2)として、上記水系洗浄液が付着した上記基板をチャンバ内に移し、
該チャンバ内で上記水系洗浄液が付着した上記基板表面にIPA1を供給し、
工程(5−3)として、該チャンバと配管により連結した別の耐圧容器内で、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表5に示すようなHFIPを予め臨界点以上の温度と圧力とすることにより超臨界流体として別途準備し、
該超臨界流体を、上記配管を通して圧送し上記チャンバ内に供給することで、
上記基板に付着したIPA1を、上記超臨界流体に置換し、
工程(5−4)として、チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にし、
工程(5−5)として、上記チャンバから上記基板を取り出した。
なお、上述の超臨界流体化する際の圧力は、二酸化炭素を超臨界流体化する際の圧力よりも低い圧力である。
上記工程(5−3)の超臨界流体で処理する際に放出されたフッ素原子の量は0.5vol.ppm未満であった。結果を表5に示す。
なお、工程(5−4)で、液体状態を経ることなく、超臨界流体を気化したため、表面にパターンを有する基板を処理した場合であっても、パターン倒れを引き起こすことはない。
【0126】
[実施例5−2〜5−19、比較例5−1〜5−7]
表5に示すように、基板、水系洗浄液、水溶性有機溶剤、含フッ素アルコール含有溶剤を変更し、実施例5−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表5に示す。
【0127】
【表5】
【0128】
実施例5−1〜5−3の結果から分かるように、工程(5−3)で別途準備する超臨界流体の溶剤として各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)を用いることで、
工程(5−3)で基板を超臨界流体で処理した際の超臨界流体中でのフッ素原子の放出量はわずかなものであり、上記各元素の含有量が少ないほど、該フッ素原子の放出量も少ない傾向であった。
一方、比較例5−1〜5−7の結果から分かるように、工程(5−3)で超臨界流体の溶剤として用いるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)の上記各元素の含有量が500質量ppbを超えると上記フッ素原子の放出量が顕著に多くなってしまう。
フッ素原子により基板表面がエッチングされてしまうことや、フッ素原子が基板やパターンなどの半導体デバイス中に取り込まれてデバイスの特性を低下させてしまう観点から、当然ながら、上記フッ素原子の放出量は少ないことが望ましい。
実施例5−6〜5−11は、実施例5−1の工程(5−3)で超臨界流体の溶剤として用いる含フッ素アルコール含有溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例5−1と同様に優れた結果を示した。従って、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤はその種類を問わず、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であれば本発明の第5の態様に適用できる。
実施例5−12〜5−17は、実施例5−1の処理対象であるSi基板を他の種類の基板に変えた例であり、いずれも実施例5−1と同様に優れた結果を示した。従って、本発明の第5の態様に係る処理方法は、フッ素原子により悪影響を及ぼされるような材質を表面に有する基板であれば種類を問わずに適用できる。
実施例5−4及び5−5は、実施例5−1の工程(5−1)で用いる水系洗浄液の種類を変えた例であり、いずれも実施例5−1と同様に優れた結果を示した。なお、水系洗浄液としてFe元素の含有量が800質量ppbの水系洗浄液3を用いた実施例5−5は、各元素の含有量が500質量ppb未満の水系洗浄液1や水系洗浄液2を用いた実施例5−1や5−4と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(5−1)で用いる水系洗浄液も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
実施例5−18及び5−19は、実施例5−1の工程(5−2)で用いる水溶性有機溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例5−1と同様に優れた結果を示した。なお、水溶性有機溶剤としてFe元素の含有量が750質量ppbのIPA3を用いた実施例5−19は、各元素の含有量が500質量ppb未満のIPA1やIPA2を用いた実施例5−1や5−18と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(5−2)で用いる水溶性有機溶剤も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
【0129】
[実施例3−18]
実施例3−1の工程(3−2)において、水系洗浄液1が付着した上記基板をチャンバ内に移し、上記基板に液体のHFIPを供給し、チャンバ内を該HFIPの臨界点以上に加熱・加圧して、上記含フッ素アルコール含有溶剤を超臨界流体とすることで、上記基板に付着した上記水系洗浄液を、上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換すること以外は、実施例3−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表6に示す。なお、上記液体のHFIPは、実施例3−1の工程(3−2)で超臨界流体を得るために用いられた、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表3に示すようなHFIPである。
【0130】
[実施例3−19〜3−34、比較例3−8〜3−14]
表6に示すような手順で基板を処理し評価を行った。結果を表6に示す。
【0131】
【表6】
【0132】
[実施例4−20]
実施例4−1の工程(4−3)において、IPA1が付着した上記基板をチャンバ内に移し、上記基板に液体のHFIPを供給し、チャンバ内を該HFIPの臨界点以上に加熱・加圧して、上記含フッ素アルコール含有溶剤を超臨界流体とすることで、上記基板に付着した上記水系洗浄液を、上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換すること以外は、実施例4−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表7に示す。なお、上記液体のHFIPは、実施例4−1の工程(4−3)で超臨界流体を得るために用いられた、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表4に示すようなHFIPである。
【0133】
[実施例4−21〜4−38、比較例4−8〜4−14]
表7に示すような手順で基板を処理し評価を行った。結果を表7に示す。
【0134】
【表7】
【0135】
[実施例5−20]
実施例5−1の工程(5−3)において、IPA1が付着した上記基板に液体のHFIPを供給し、チャンバ内を該HFIPの臨界点以上に加熱・加圧して、上記含フッ素アルコール含有溶剤を超臨界流体とすることで、上記基板に付着した上記水系洗浄液を、上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換すること以外は、実施例5−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表8に示す。なお、上記液体のHFIPは、実施例5−1の工程(5−3)で超臨界流体を得るために用いられた、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表5に示すようなHFIPである。
【0136】
[実施例5−21〜5−38、比較例5−8〜5−14]
表8に示すような手順で基板を処理し評価を行った。結果を表8に示す。
【0137】
【表8】
【0138】
実施例3−18〜3−34及び比較例3−8〜3−14の結果から、工程(3−2)において、水系洗浄液を超臨界流体に置換する手段が、実施例3−1とは異なる場合であっても、結果は、実施例3−1〜3−17及び比較例3−1〜3−7と同様であった。
また、実施例4−20〜4−38及び比較例4−8〜4−14の結果から、工程(4−3)において、水溶性有機溶剤を超臨界流体に置換する手段が、実施例4−1とは異なる場合であっても、結果は、実施例4−1〜−19及び比較例4−1〜4−7と同様であった。
また、実施例5−20〜5−38及び比較例5−8〜5−14の結果から、工程(5−3)において、水溶性有機溶剤を超臨界流体に置換する手段が、実施例5−1とは異なる場合であっても、結果は、実施例5−1〜5−19及び比較例5−1〜5−7と同様であった。
図1
図2
図3
図4
図5