【実施例】
【0101】
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0102】
基板表面に保持された液体を、超臨界流体に置換し、又は温度と圧力を臨界点以上とすることにより超臨界流体に相変化し、
その後、該超臨界流体を、液相を経ずに気化することで、基板のパターン倒れを防止する処理技術については、これまで数多く報告され、確立された技術であるので、
本発明では、基板表面に超臨界流体として接触する溶剤中のFe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量と、溶剤を超臨界流体化した際のフッ素原子の放出量について評価した。
【0103】
[Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量の評価]
各金属元素の含有量は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)装置を用いて測定した。
【0104】
[溶剤の超臨界流体処理の際のフッ素原子の放出量の評価]
超臨界流体化した際のフッ素原子の放出量については、イオンクロマトグラフを用いて測定した。ウェハを処理し、チャンバ内の超臨界流体を気化してチャンバから排出された溶剤を液体窒素で冷却した捕集器に深冷捕集し、その捕集した液体のフッ素イオン濃度をイオンクロマトグラフによって測定した。
【0105】
[水系洗浄液]
実施例及び比較例で用いる水系洗浄液として以下のものを用いた。
(水系洗浄液1、表中で「水1」と記載)
水系洗浄液1として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である純水を用いた。
(水系洗浄液2、表中で「水2」と記載)
水系洗浄液2として、90質量%の純水と10質量%のイソプロピルアルコール(以降「IPA」と記載)の混合液であり、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である混合液を用いた。
(水系洗浄液3、表中で「水3」と記載)
水系洗浄液3として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caのうち、Fe元素の含有量が800質量ppbであり、それ以外の各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である純水を用いた。
【0106】
実施例及び比較例で用いる水溶性有機溶剤として以下のものを用いた。
(水溶性有機溶剤1、表中で「IPA1」と記載)
水溶性有機溶剤1として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるIPAを用いた。
(水溶性有機溶剤2、表中で「IPA2」と記載)
水溶性有機溶剤2として、95質量%のIPAと5質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合液であり、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下である混合液を用いた。
(水溶性有機溶剤3、表中で「IPA3」と記載)
水溶性有機溶剤3として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caのうち、Fe元素の含有量が750質量ppbであり、それ以外の各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるIPAを用いた。
【0107】
実施例及び比較例で用いる含フッ素アルコール含有溶剤として以下のものを用いた。
CF
3CH(OH)CF
3(以降、「HFIP」と記載する)
CF
3CH
2OH(以降、「TFEA」と記載する)
CH
2CHCH
2C(CF
3)
2OH(以降、「BTHB」と記載する)
CHF
2CF
2CH
2OH(以降、「TFPA」と記載する)
(CF
3)
3COH(以降、「PFTB」と記載する)
CH
3(CF
3)
2COH(以降、「HFTB」と記載する)
85質量%のHFIPと15質量%のTFEAの混合液(以降、「HFIP混合」と記載する)
なお、上記の、HFIP、HFIP混合で用いたCF
3CH(OH)CF
3とTFEA、TFEA、BTHB、TFPA、PFTB、HFTBは、蒸留やフィルタリングや抽出といった精製操作により、ガスクロマトグラフィー純度が99.5%以上のものを用いた。
【0108】
[基板]
実施例及び比較例で処理対象とする基板として以下のものを用いた。なお、本発明の実施例及び比較例においては、基板表面に超臨界流体として接触する溶剤中のFe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量と、溶剤を超臨界流体化した際のフッ素原子の放出量についてのみ評価するので、擬似的な基板として表面が平滑な基板を用いた。
成膜処理をしていないSi基板(以降、「Si基板」、表中で「Si」と記載する)
、表面にSiO2膜を有するSi基板(以降、「SiO2基板」、表中で「SiO2」と記載する)、表面にTiN膜を有するSi基板(以降、「TiN基板」、表中で「TiN」と記載する)、表面にSiN膜を有するSi基板(以降、「SiN基板」、表中で「SiN」と記載する)、表面にSiC膜を有するSi基板(以降、「SiC基板」、表中で「SiC」と記載する)、表面にSiGe膜を有するSi基板(以降、「SiGe基板」、表中で「SiGe」と記載する)、表面にSiOC膜を有するSi基板(以降、「SiOC基板」、表中で「SiOC」と記載する)
【0109】
[実施例1−1]
工程(1−1)として、Si基板の表面に水系洗浄液1を供給し、
工程(1−2)として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表1に示すようなHFIPを上記基板に供給し、
工程(1−3)として、上記HFIPが付着した上記基板をチャンバ内に移し、チャンバ内の温度と圧力をHFIPの臨界点以上として超臨界流体化し、
工程(1−4)として、チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にし、
工程(1−5)として、上記チャンバから上記基板を取り出した。
なお、上述の超臨界流体化する際の圧力は、二酸化炭素を超臨界流体化する際の圧力よりも低い圧力である。
上記工程(1−3)の超臨界流体で処理する際に放出されたフッ素原子の量は0.5vol.ppm未満であった。結果を表1に示す。
なお、工程(1−4)で、液体状態を経ることなく、超臨界流体を気化したため、表面にパターンを有する基板を処理した場合であっても、パターン倒れを引き起こすことはない。
【0110】
[実施例1−2〜1−17、比較例1−1〜1−7]
表1に示すように、基板、水系洗浄液、含フッ素アルコール含有溶剤を変更し、実施例1−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
実施例1−1〜1−3の結果から分かるように、工程(1−2)でFe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)を用いることで、工程(1−3)で基板を超臨界流体で処理した際の超臨界流体中でのフッ素原子の放出量はわずかなものであり、上記各元素の含有量が少ないほど、該フッ素原子の放出量も少ない傾向であった。
一方、比較例1−1〜1−7の結果から分かるように、上記各元素の含有量が500質量ppbを超えると上記フッ素原子の放出量が顕著に多くなってしまう。
フッ素原子により基板表面がエッチングされてしまうことや、フッ素原子が基板やパターンなどの半導体デバイス中に取り込まれてデバイスの特性を低下させてしまう観点から、当然ながら、上記フッ素原子の放出量は少ないことが望ましい。
実施例1−6〜1−11は、実施例1−1の工程(1−2)で用いる含フッ素アルコール含有溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例1−1と同様に優れた結果を示した。従って、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤はその種類を問わず、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であれば本発明の第1の態様に適用できる。
実施例1−12〜1−17は、実施例1−1の処理対象であるSi基板を他の種類の基板に変えた例であり、いずれも実施例1−1と同様に優れた結果を示した。従って、本発明の第1の態様に係る処理方法は、フッ素原子により悪影響を及ぼされるような材質を表面に有する基板であれば種類を問わずに適用できる。
実施例1−4及び1−5は、実施例1−1の工程(1−1)で用いる水系洗浄液の種類を変えた例であり、いずれも実施例1−1と同様に優れた結果を示した。なお、水系洗浄液としてFe元素の含有量が800質量ppbの水系洗浄液3を用いた実施例1−5は、各元素の含有量が500質量ppb未満の水系洗浄液1や水系洗浄液2を用いた実施例1−1や1−4と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(1−1)で用いる水系洗浄液も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
【0113】
[実施例2−1]
工程(2−1)として、Si基板の表面に水系洗浄液1を供給し、
工程(2−2)として、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が全て500質量ppb未満であるHFIP(後述の工程(2−3)で別途超臨界流体を得るために用いるHFIPと同じもの)を上記基板に供給し、
工程(2−3)として、上記HFIPが付着した上記基板をチャンバ内に移し、
該チャンバと配管により連結した別の耐圧容器内で、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表2に示すようなHFIPを予め臨界点以上の温度と圧力とすることにより超臨界流体として別途準備し、
該超臨界流体を、上記配管を通して圧送し上記チャンバ内に供給することで、
上記基板に付着したHFIPを、上記超臨界流体に置換し、
工程(2−4)として、チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にし、
工程(2−5)として、上記チャンバから上記基板を取り出した。
なお、上述の超臨界流体化する際の圧力は、二酸化炭素を超臨界流体化する際の圧力よりも低い圧力である。
上記工程(2−3)の超臨界流体で処理する際に放出されたフッ素原子の量は0.5vol.ppm未満であった。結果を表2に示す。
なお、工程(2−4)で、液体状態を経ることなく、超臨界流体を気化したため、表面にパターンを有する基板を処理した場合であっても、パターン倒れを引き起こすことはない。
【0114】
[実施例2−2〜2−18、比較例2−1〜2−7]
表2に示すように、基板、水系洗浄液、含フッ素アルコール含有溶剤を変更し、実施例2−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表2に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
実施例2−1〜2−3の結果から分かるように、工程(2−2)でFe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)を用い、
工程(2−3)で別途準備する超臨界流体の溶剤として各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)を用いることで、
工程(2−3)で基板を超臨界流体で処理した際の超臨界流体中でのフッ素原子の放出量はわずかなものであり、上記各元素の含有量が少ないほど、該フッ素原子の放出量も少ない傾向であった。
一方、比較例2−1〜2−7の結果から分かるように、工程(2−2)で用いるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)や工程(2−3)で超臨界流体の溶剤として用いるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)の上記各元素の含有量が500質量ppbを超えると上記フッ素原子の放出量が顕著に多くなってしまう。
フッ素原子により基板表面がエッチングされてしまうことや、フッ素原子が基板やパターンなどの半導体デバイス中に取り込まれてデバイスの特性を低下させてしまう観点から、当然ながら、上記フッ素原子の放出量は少ないことが望ましい。
実施例2−6〜2−11は、実施例2−1の工程(2−2)で用いる含フッ素アルコール含有溶剤及び工程(2−3)で超臨界流体の溶剤として用いる含フッ素アルコール含有溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例2−1と同様に優れた結果を示した。従って、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤はその種類を問わず、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であれば本発明の第2の態様に適用できる。
実施例2−12〜2−17は、実施例2−1の処理対象であるSi基板を他の種類の基板に変えた例であり、いずれも実施例2−1と同様に優れた結果を示した。従って、本発明の第2の態様に係る処理方法は、フッ素原子により悪影響を及ぼされるような材質を表面に有する基板であれば種類を問わずに適用できる。
実施例2−4及び2−5は、実施例2−1の工程(2−1)で用いる水系洗浄液の種類を変えた例であり、いずれも実施例2−1と同様に優れた結果を示した。なお、水系洗浄液としてFe元素の含有量が800質量ppbの水系洗浄液3を用いた実施例2−5は、各元素の含有量が500質量ppb未満の水系洗浄液1や水系洗浄液2を用いた実施例2−1や2−4と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(2−1)で用いる水系洗浄液も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
実施例2−18は、工程(2−2)で用いる含フッ素アルコール含有溶剤として、実施例2−7の工程(2−3)で超臨界流体の溶剤として用いるTFEAを用い、それ以外は実施例2−1と同様の実験例である。すなわち、工程(2−2)で用いる含フッ素アルコール含有溶剤と工程(2−3)で超臨界流体の溶剤として用いる含フッ素アルコール含有溶剤の種類が異なる実験例である。このような場合も実施例2−1と同様に優れた結果を示した。
【0117】
[実施例3−1]
工程(3−1)として、Si基板の表面に水系洗浄液1を供給し、
工程(3−2)として、上記水系洗浄液1が付着した上記基板をチャンバ内に移し、
該チャンバと配管により連結した別の耐圧容器内で、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表3に示すようなHFIPを予め臨界点以上の温度と圧力とすることにより超臨界流体として別途準備し、
該超臨界流体を、上記配管を通して圧送し上記チャンバ内に供給することで、
上記基板に付着した水系洗浄液1を、上記超臨界流体に置換し、
工程(3−3)として、チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にし、
工程(3−4)として、上記チャンバから上記基板を取り出した。
なお、上述の超臨界流体化する際の圧力は、二酸化炭素を超臨界流体化する際の圧力よりも低い圧力である。
上記工程(3−2)の超臨界流体で処理する際に放出されたフッ素原子の量は0.5vol.ppm未満であった。結果を表3に示す。
なお、工程(3−3)で、液体状態を経ることなく、超臨界流体を気化したため、表面にパターンを有する基板を処理した場合であっても、パターン倒れを引き起こすことはない。
【0118】
[実施例3−2〜3−17、比較例3−1〜3−7]
表3に示すように、基板、水系洗浄液、含フッ素アルコール含有溶剤を変更し、実施例3−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表3に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
実施例3−1〜3−3の結果から分かるように、工程(3−2)で別途準備する超臨界流体の溶剤として各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)を用いることで、
工程(3−2)で基板を超臨界流体で処理した際の超臨界流体中でのフッ素原子の放出量はわずかなものであり、上記各元素の含有量が少ないほど、該フッ素原子の放出量も少ない傾向であった。
一方、比較例3−1〜3−7の結果から分かるように、工程(3−2)で超臨界流体の溶剤として用いるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)の上記各元素の含有量が500質量ppbを超えると上記フッ素原子の放出量が顕著に多くなってしまう。
フッ素原子により基板表面がエッチングされてしまうことや、フッ素原子が基板やパターンなどの半導体デバイス中に取り込まれてデバイスの特性を低下させてしまう観点から、当然ながら、上記フッ素原子の放出量は少ないことが望ましい。
実施例3−6〜3−11は、実施例3−1の工程(3−2)で超臨界流体の溶剤として用いる含フッ素アルコール含有溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例3−1と同様に優れた結果を示した。従って、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤はその種類を問わず、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であれば本発明の第3の態様に適用できる。
実施例3−12〜3−17は、実施例3−1の処理対象であるSi基板を他の種類の基板に変えた例であり、いずれも実施例3−1と同様に優れた結果を示した。従って、本発明の第3の態様に係る処理方法は、フッ素原子により悪影響を及ぼされるような材質を表面に有する基板であれば種類を問わずに適用できる。
実施例3−4及び3−5は、実施例3−1の工程(3−1)で用いる水系洗浄液の種類を変えた例であり、いずれも実施例3−1と同様に優れた結果を示した。なお、水系洗浄液としてFe元素の含有量が800質量ppbの水系洗浄液3を用いた実施例3−5は、各元素の含有量が500質量ppb未満の水系洗浄液1や水系洗浄液2を用いた実施例3−1や3−4と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(3−1)で用いる水系洗浄液も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
【0121】
[実施例4−1]
工程(4−1)として、Si基板の表面に水系洗浄液1を供給し、
工程(4−2)として、上記水系洗浄液が付着した上記基板表面にIPA1を供給し、
工程(4−3)として、上記IPA1が付着した上記基板をチャンバ内に移し、
該チャンバと配管により連結した別の耐圧容器内で、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表4に示すようなHFIPを予め臨界点以上の温度と圧力とすることにより超臨界流体として別途準備し、
該超臨界流体を、上記配管を通して圧送し上記チャンバ内に供給することで、
上記基板に付着したIPA1を、上記超臨界流体に置換し、
工程(4−4)として、チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にし、
工程(4−5)として、上記チャンバから上記基板を取り出した。
なお、上述の超臨界流体化する際の圧力は、二酸化炭素を超臨界流体化する際の圧力よりも低い圧力である。
上記工程(4−3)の超臨界流体で処理する際に放出されたフッ素原子の量は0.5vol.ppm未満であった。結果を表4に示す。
なお、工程(4−4)で、液体状態を経ることなく、超臨界流体を気化したため、表面にパターンを有する基板を処理した場合であっても、パターン倒れを引き起こすことはない。
【0122】
[実施例4−2〜4−19、比較例4−1〜4−7]
表4に示すように、基板、水系洗浄液、水溶性有機溶剤、含フッ素アルコール含有溶剤を変更し、実施例4−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表4に示す。
【0123】
【表4】
【0124】
実施例4−1〜4−3の結果から分かるように、工程(4−3)で別途準備する超臨界流体の溶剤として各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)を用いることで、
工程(4−3)で基板を超臨界流体で処理した際の超臨界流体中でのフッ素原子の放出量はわずかなものであり、上記各元素の含有量が少ないほど、該フッ素原子の放出量も少ない傾向であった。
一方、比較例4−1〜4−7の結果から分かるように、工程(4−3)で超臨界流体の溶剤として用いるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)の上記各元素の含有量が500質量ppbを超えると上記フッ素原子の放出量が顕著に多くなってしまう。
フッ素原子により基板表面がエッチングされてしまうことや、フッ素原子が基板やパターンなどの半導体デバイス中に取り込まれてデバイスの特性を低下させてしまう観点から、当然ながら、上記フッ素原子の放出量は少ないことが望ましい。
実施例4−6〜4−11は、実施例4−1の工程(4−3)で超臨界流体の溶剤として用いる含フッ素アルコール含有溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例4−1と同様に優れた結果を示した。従って、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤はその種類を問わず、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であれば本発明の第4の態様に適用できる。
実施例4−12〜4−17は、実施例4−1の処理対象であるSi基板を他の種類の基板に変えた例であり、いずれも実施例4−1と同様に優れた結果を示した。従って、本発明の第4の態様に係る処理方法は、フッ素原子により悪影響を及ぼされるような材質を表面に有する基板であれば種類を問わずに適用できる。
実施例4−4及び4−5は、実施例4−1の工程(4−1)で用いる水系洗浄液の種類を変えた例であり、いずれも実施例4−1と同様に優れた結果を示した。なお、水系洗浄液としてFe元素の含有量が800質量ppbの水系洗浄液3を用いた実施例4−5は、各元素の含有量が500質量ppb未満の水系洗浄液1や水系洗浄液2を用いた実施例4−1や4−4と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(4−1)で用いる水系洗浄液も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
実施例4−18及び4−19は、実施例4−1の工程(4−2)で用いる水溶性有機溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例4−1と同様に優れた結果を示した。なお、水溶性有機溶剤としてFe元素の含有量が750質量ppbのIPA3を用いた実施例4−19は、各元素の含有量が500質量ppb未満のIPA1やIPA2を用いた実施例4−1や4−18と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(4−2)で用いる水溶性有機溶剤も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
【0125】
[実施例5−1]
工程(5−1)として、Si基板の表面に水系洗浄液1を供給し、
工程(5−2)として、上記水系洗浄液が付着した上記基板をチャンバ内に移し、
該チャンバ内で上記水系洗浄液が付着した上記基板表面にIPA1を供給し、
工程(5−3)として、該チャンバと配管により連結した別の耐圧容器内で、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表5に示すようなHFIPを予め臨界点以上の温度と圧力とすることにより超臨界流体として別途準備し、
該超臨界流体を、上記配管を通して圧送し上記チャンバ内に供給することで、
上記基板に付着したIPA1を、上記超臨界流体に置換し、
工程(5−4)として、チャンバ内の圧力を低下させて上記超臨界流体を気体にし、
工程(5−5)として、上記チャンバから上記基板を取り出した。
なお、上述の超臨界流体化する際の圧力は、二酸化炭素を超臨界流体化する際の圧力よりも低い圧力である。
上記工程(5−3)の超臨界流体で処理する際に放出されたフッ素原子の量は0.5vol.ppm未満であった。結果を表5に示す。
なお、工程(5−4)で、液体状態を経ることなく、超臨界流体を気化したため、表面にパターンを有する基板を処理した場合であっても、パターン倒れを引き起こすことはない。
【0126】
[実施例5−2〜5−19、比較例5−1〜5−7]
表5に示すように、基板、水系洗浄液、水溶性有機溶剤、含フッ素アルコール含有溶剤を変更し、実施例5−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表5に示す。
【0127】
【表5】
【0128】
実施例5−1〜5−3の結果から分かるように、工程(5−3)で別途準備する超臨界流体の溶剤として各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)を用いることで、
工程(5−3)で基板を超臨界流体で処理した際の超臨界流体中でのフッ素原子の放出量はわずかなものであり、上記各元素の含有量が少ないほど、該フッ素原子の放出量も少ない傾向であった。
一方、比較例5−1〜5−7の結果から分かるように、工程(5−3)で超臨界流体の溶剤として用いるHFIP(含フッ素アルコール含有溶剤)の上記各元素の含有量が500質量ppbを超えると上記フッ素原子の放出量が顕著に多くなってしまう。
フッ素原子により基板表面がエッチングされてしまうことや、フッ素原子が基板やパターンなどの半導体デバイス中に取り込まれてデバイスの特性を低下させてしまう観点から、当然ながら、上記フッ素原子の放出量は少ないことが望ましい。
実施例5−6〜5−11は、実施例5−1の工程(5−3)で超臨界流体の溶剤として用いる含フッ素アルコール含有溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例5−1と同様に優れた結果を示した。従って、炭素数が2〜6の含フッ素アルコールを含有する溶剤はその種類を問わず、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量がそれぞれ500質量ppb以下であれば本発明の第5の態様に適用できる。
実施例5−12〜5−17は、実施例5−1の処理対象であるSi基板を他の種類の基板に変えた例であり、いずれも実施例5−1と同様に優れた結果を示した。従って、本発明の第5の態様に係る処理方法は、フッ素原子により悪影響を及ぼされるような材質を表面に有する基板であれば種類を問わずに適用できる。
実施例5−4及び5−5は、実施例5−1の工程(5−1)で用いる水系洗浄液の種類を変えた例であり、いずれも実施例5−1と同様に優れた結果を示した。なお、水系洗浄液としてFe元素の含有量が800質量ppbの水系洗浄液3を用いた実施例5−5は、各元素の含有量が500質量ppb未満の水系洗浄液1や水系洗浄液2を用いた実施例5−1や5−4と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(5−1)で用いる水系洗浄液も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
実施例5−18及び5−19は、実施例5−1の工程(5−2)で用いる水溶性有機溶剤の種類を変えた例であり、いずれも実施例5−1と同様に優れた結果を示した。なお、水溶性有機溶剤としてFe元素の含有量が750質量ppbのIPA3を用いた実施例5−19は、各元素の含有量が500質量ppb未満のIPA1やIPA2を用いた実施例5−1や5−18と比べて、上記フッ素原子の放出量がわずかに多い結果であった。従って、工程(5−2)で用いる水溶性有機溶剤も各元素の含有量が500質量ppb以下のものを用いることがより好ましい。
【0129】
[実施例3−18]
実施例3−1の工程(3−2)において、水系洗浄液1が付着した上記基板をチャンバ内に移し、上記基板に液体のHFIPを供給し、チャンバ内を該HFIPの臨界点以上に加熱・加圧して、上記含フッ素アルコール含有溶剤を超臨界流体とすることで、上記基板に付着した上記水系洗浄液を、上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換すること以外は、実施例3−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表6に示す。なお、上記液体のHFIPは、実施例3−1の工程(3−2)で超臨界流体を得るために用いられた、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表3に示すようなHFIPである。
【0130】
[実施例3−19〜3−34、比較例3−8〜3−14]
表6に示すような手順で基板を処理し評価を行った。結果を表6に示す。
【0131】
【表6】
【0132】
[実施例4−20]
実施例4−1の工程(4−3)において、IPA1が付着した上記基板をチャンバ内に移し、上記基板に液体のHFIPを供給し、チャンバ内を該HFIPの臨界点以上に加熱・加圧して、上記含フッ素アルコール含有溶剤を超臨界流体とすることで、上記基板に付着した上記水系洗浄液を、上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換すること以外は、実施例4−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表7に示す。なお、上記液体のHFIPは、実施例4−1の工程(4−3)で超臨界流体を得るために用いられた、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表4に示すようなHFIPである。
【0133】
[実施例4−21〜4−38、比較例4−8〜4−14]
表7に示すような手順で基板を処理し評価を行った。結果を表7に示す。
【0134】
【表7】
【0135】
[実施例5−20]
実施例5−1の工程(5−3)において、IPA1が付着した上記基板に液体のHFIPを供給し、チャンバ内を該HFIPの臨界点以上に加熱・加圧して、上記含フッ素アルコール含有溶剤を超臨界流体とすることで、上記基板に付着した上記水系洗浄液を、上記含フッ素アルコール含有溶剤の超臨界流体に置換すること以外は、実施例5−1と同様の手順で基板を処理し評価を行った。結果を表8に示す。なお、上記液体のHFIPは、実施例5−1の工程(5−3)で超臨界流体を得るために用いられた、Fe、Ni、Cr、Al、Zn、Cu、Mg、Li、K、Na、Caの各元素の含有量が表5に示すようなHFIPである。
【0136】
[実施例5−21〜5−38、比較例5−8〜5−14]
表8に示すような手順で基板を処理し評価を行った。結果を表8に示す。
【0137】
【表8】
【0138】
実施例3−18〜3−34及び比較例3−8〜3−14の結果から、工程(3−2)において、水系洗浄液を超臨界流体に置換する手段が、実施例3−1とは異なる場合であっても、結果は、実施例3−1〜3−17及び比較例3−1〜3−7と同様であった。
また、実施例4−20〜4−38及び比較例4−8〜4−14の結果から、工程(4−3)において、水溶性有機溶剤を超臨界流体に置換する手段が、実施例4−1とは異なる場合であっても、結果は、実施例4−1〜
4−19及び比較例4−1〜4−7と同様であった。
また、実施例5−20〜5−38及び比較例5−8〜5−14の結果から、工程(5−3)において、水溶性有機溶剤を超臨界流体に置換する手段が、実施例5−1とは異なる場合であっても、結果は、実施例5−1〜5−19及び比較例5−1〜5−7と同様であった。