(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のアンテナコイルと通信相手の装置とを近づけた場合、通信相手の装置のコイル(以下、相手側コイルと言う)は、アンテナコイルの共振コイルだけでなく、給電コイルとも磁界結合することがある。この場合、給電コイル→共振コイル→相手側コイルの通信経路と、給電コイル→相手側コイルの通信経路との二つの通信経路が形成される。そして、これら二つの通信経路を通る信号が逆位相である場合、信号が打ち消され、相手側コイルは信号を受信できないといった問題がある。また、この問題は、アンテナコイルと相手側コイルとの送受が逆の場合であっても同様である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、相手側コイルと不要な通信経路を形成せず、通信相手と確実に通信できるアンテナ装置及び通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアンテナ装置は、少なくとも磁性体層を有する積層体と、前記積層体に形成された給電コイルと、前記積層体に形成され、かつ、前記給電コイルと磁界結合するアンテナコイルと、を備え、前記給電コイルは、前記給電コイルの巻回軸方向から視て前記アンテナコイルよりも内側に形成されることを特徴とする。
【0007】
この構成では、相手側コイルは、給電コイルの巻回軸方向から視てアンテナコイルよりも内側に形成される給電コイルとは殆ど結合しない。このため、アンテナ装置が通信相手と通信する際、通信経路が複数形成されることを防止できる。その結果、異なる通信経路に逆位相の信号が流れることで、信号が打ち消され、通信ができないといった問題を回避できる。
【0008】
前記給電コイル及び前記アンテナコイルは、前記磁性体層の複数層に亘って形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成では、アンテナコイルのコイル径を一様にできる。また、磁性体層を増やせばコイル巻回数を増やすこともできる。
【0010】
前記給電コイルの一部は、アンテナコイルの少なくとも一方と同一層に形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成では、磁性体層の層数を少なくでき、アンテナ装置の低背化が可能となる。
【0012】
前記アンテナコイルに接続されるコンデンサを備えていてもよい。
【0013】
この構成では、コンデンサとアンテナコイルとで共振回路を形成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アンテナ装置と通信相手との間に複数の通信経路が構成されず、それら異なる通信経路に逆位相の信号が流れることで信号が打ち消されて、通信ができなくなるといった問題を回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係るアンテナ装置1の分解斜視図である。
図2は、
図1に示すアンテナ装置1の配線パターンの接続を示す図である。なお、
図2では、
図1に示す磁性体層101〜112を省略している。
図3は、
図1のIII−III線における断面図である。
図4は、実施形態1に係るアンテナ装置1の回路図である。
【0017】
本実施形態に係るアンテナ装置1は、給電コイル10と、アンテナコイル20,30とを備えている。アンテナ装置1は、通信相手との距離が近くなると、通信相手のコイルとアンテナコイル20又はアンテナコイル30とが磁界結合することで、アンテナ装置1と通信相手との間で通信が行われる。
【0018】
給電コイル10及びアンテナコイル20,30は、コイル巻回軸を積層方向に一致させて磁性体層101〜112に形成されている。なお、機械強度を保つために最外層の磁性体層112を非磁性体層とし、磁性体層101の外側に図示しない非磁性体層を設けてもよい。また磁性体層101〜112の中間層にも同様に非磁性体層を設けてもよい。給電コイル10は、磁性体層101〜112の積層方向におけるほぼ中央部である磁性体層105〜108に形成されている。アンテナコイル20,30は、積層方向において、磁性体層105〜108の外側である磁性体層101〜104,109〜112に形成されている。すなわち、磁性体層101〜112の積層方向において、給電コイル10は、アンテナコイル20,30に挟まれている。なお、本実施形態では、給電コイル10及びアンテナコイル20,30は、コイル巻回軸が同一直線上となるよう形成されている。
【0019】
給電コイル10は、磁性体層105〜108の矩形状の表面に形成された配線パターン11〜14を備えている。配線パターン11〜14は、ビアホール(
図1では不図示)で上下の層の配線パターンと接続し、配線パターン11〜14とビアホールとでコイルを形成している。また、
図2に示すように、配線パターン11,14は、コンデンサC1を介して接続している。このコンデンサC1は、配線パターン11〜14が形成するコイルと共振回路を構成している。この共振回路に対し信号を送受するIC10Aが接続されている。IC10Aは、例えばアンテナ装置1が送信側となる場合には、共振回路に信号を送信し、アンテナ装置1が受信側となる場合には、共振回路から信号を受信する。
【0020】
アンテナコイル20,30は、磁性体層101〜104,109〜112の矩形状の表面に形成された配線パターン21〜24,31〜34を備えている。配線パターン21〜24,31〜34は、ビアホールで上下の層の配線パターンと接続し、配線パターン21〜24,31〜34とビアホールとでコイルを形成している。また、
図2に示すように、配線パターン21,24は、コンデンサC2を介して接続し、配線パターン31,34は、コンデンサC3を介して接続している。
図4に示すように、このコンデンサC2は配線パターン21〜24が形成するコイルと共に共振回路を構成し、コンデンサC3は配線パターン31〜34が形成するコイルと共に共振回路を構成している。
【0021】
図1〜
図3では、配線パターン11〜14,21〜24,31〜34が、それぞれ巻回方向が同じとなるよう形成されているが、異なる給電コイル又はアンテナコイル間で巻線方向が異なっていてもよい。巻回方向が異なっている場合であっても、磁界結合の強さにはほとんど影響しない。給電コイル10と、アンテナコイル20,30とは、磁性体層101〜112の積層方向をコイル巻回軸方向としているため給電コイル10及びアンテナコイル20、並びに、給電コイル10及びアンテナコイル30はそれぞれ磁界結合する。
【0022】
また、
図3に示すように、給電コイル10の配線パターン11〜14は、アンテナコイル20,30の配線パターン21〜24,31〜34よりも小さいコイル径で形成されている。より詳しくは、アンテナコイル20,30の配線パターン21〜24,31〜34それぞれはコイル径が同じであり、矩形状の磁性体層101〜104,109〜112の表面端部に沿って形成されている。給電コイル10の配線パターン11〜14は、積層方向において、配線パターン21〜24,31〜34と重ならないように形成されている。換言すれば、磁性体層の積層方向から視た場合、配線パターン11〜14は、配線パターン21〜24,31〜34より内側に形成されている。その結果、アンテナコイル20,30では、磁束のループの全てが磁性体内に閉じ込められるということが無いために磁界放射を大きくすることができる。なお、アンテナコイル20,30に閉ループが形成されないため、磁界放射を大きくすることが出来る。なお、アンテナコイル20,30のうちアンテナ装置1の外側に形成されている配線パターン21,34を大きく、磁性体の内層に向かうに従って小さくするものでもよい。ただし、アンテナ装置1を巻回軸方向から平面視した時に、給電コイル10の外形はアンテナコイル20,30の外形の内側となるように配置する。
【0023】
相手側コイル(通信相手のコイル)をアンテナ装置1に近づけた場合、相手側コイルは、磁性体層の積層方向の外側にあるアンテナコイル20,30の一方と磁界結合する。これにより、アンテナ装置1から通信相手への通信経路として、給電コイル→共振コイル→相手側コイルの通信経路が形成される。このとき、給電コイル10は、アンテナコイル20,30よりコイル径が小さく、かつ、磁性体層の最外層から距離があるため、相手側コイルは給電コイル10とは殆ど磁界結合しない。したがって、アンテナ装置1から通信相手への通信経路として、給電コイル→相手側コイルの通信経路は形成されない。
【0024】
アンテナ装置1と通信相手との間に二つの通信経路が形成された場合、各通信経路を通る信号が逆位相である時、互いに信号が打ち消し合い、通信相手は、アンテナ装置1からの信号を受信できない。本実施形態では、上述のように、アンテナ装置1と通信相手との間に複数の通信経路が形成されないため、通信相手は、アンテナ装置1から信号を確実に受信でき、アンテナ装置1と通信相手との間で確実に通信が行われる。
【0025】
以下に、実施形態1に係るアンテナ装置1の別の例について説明する。
【0026】
図5、
図6及び
図7は、アンテナ装置の変形例を示す図である。
図5、
図6及び
図7は、
図1に示すIII−III線における断面図に相当する。
【0027】
図5に示すアンテナ装置1Aは、給電コイル10のコイル巻回軸が、アンテナコイル20,30のコイル巻回軸と一致しない構成である。この場合、アンテナ装置1Aのトータル厚み又はコイル径を変えることなく給電コイル10とアンテナコイル20,30との磁界結合の大きさを変えることが出来る。
【0028】
図6に示すアンテナ装置1Bは、アンテナコイル20の配線パターン24が形成される磁性体層104に、給電コイル10の配線パターン11が形成され、かつ、アンテナコイル30の配線パターン31が形成される磁性体層106に、給電コイル10の配線パターン14が形成された構成である。すなわち、給電コイル10とアンテナコイル20とで一つ磁性体層を共有し、また、給電コイル10とアンテナコイル20とで一つ磁性体層を共有している。この場合、アンテナ装置1Bは、磁性体層の層数を少なくでき、低背化が可能となる。
【0029】
図7に示すアンテナ装置1Cは、給電コイル10及びアンテナコイル20,30それぞれの配線パターンの径が異なっている。例えばアンテナコイル20の場合、配線パターン21,22でコイル径が異なっている。この例では、上下に近い層の配線パターンが対向していないため、配線パターン間に形成される容量を低減できる。
【0030】
図5〜
図7に示す何れの構成であっても、磁性体層の積層方向から視て、給電コイル10がアンテナコイル20,30の内側に位置し、かつ、積層方向において、給電コイル10の外側にアンテナコイル20,30の一部が形成されていればよい。
【0031】
図8は、
図1に示す構成と異なるアンテナコイル20(又は30)の別の例の分解斜視図である。
図9は、
図8に示すアンテナコイル20A,20Bの回路図である。
【0032】
図1に示すアンテナコイル20は、複数の磁性体層に亘って配線パターンが形成され、最外層の配線パターンがコンデンサを介して接続されている。これに対し、
図8に示すアンテナコイル20A,20Bは、磁性体層120,121に、巻回方向が同じであって、かつ、配線パターンが対向するように配線パターン41,42が巻回されている。この場合、対向する配線パターン41,42の間に、
図9に示すように、コンデンサC41,C42が形成される。これにより、共振回路が構成される。この場合、コンデンサの実部品を必要とせず、部品点数を少なくできる。また、
図1に示すアンテナコイル20と対比して、アンテナコイル20A,20Bを形成するための磁性体層の層数を少なくできるため、アンテナ装置の低背化が可能となる。
【0033】
図10は、二つのアンテナコイル20,30の配線パターン交互に形成されたアンテナ装置1Dの配線パターンの接続例を示す図である。
図1に示すアンテナコイル20,30の各配線パターンは、互いに独立させて巻回されている。これに対し、
図10に示すアンテナ装置1Dは、アンテナコイル20の配線パターン21,22と、アンテナコイル30の配線パターン31,32とが交互に形成され、また、アンテナコイル20の配線パターン23,24と、アンテナコイル30の配線パターン33,34とが交互に形成されている。この場合、アンテナコイル20,30同士は層間距離が小さくなるため、アンテナコイル20とアンテナコイル30との結合が強くなる。これにより給電コイルとアンテナコイル20,30とで複数の共振周波数を持つ構造が形成されるため、広帯域な周波数で使用できる。
【0034】
図11は、給電コイル10と二つのアンテナコイル20,30の配線パターン交互に形成されたアンテナ装置1Eの配線パターンの接続例を示す図である。このアンテナ装置1Eは、
図10に示すアンテナコイル20,30の構成に加え、給電コイル10の配線パターン11が、配線パターン22,32の間に形成され、配線パターン14が配線パターン23,33の間に形成されている。この場合、アンテナコイル20,30と給電コイル10との結合は、
図10のアンテナ装置1Dに比べてさらに強くなる。
【0035】
図12は、三つのアンテナコイルを有するアンテナ装置1Fの分解斜視図である。この例のアンテナ装置1Fは、
図1に示すアンテナ装置1の構成に加え、磁性体層101にさらに積層された磁性体層113〜116を備えている。この磁性体層113〜116には配線パターン51〜54が形成されて、アンテナコイル50を形成している。図示しないが、アンテナコイル20,30と同様に、配線パターン51,54は、共振用のコンデンサを介して接続されている。
【0036】
図12に示すように、アンテナコイルを積み重ねることで、指向性をその積み重ねた方向へ向けることができ、また、近接する複数の周波数で共振を得ることができるため、アンテナ装置1Fは広帯域化を図ることができる。
【0037】
(実施形態2)
以下に、本発明に係るアンテナ装置の実施形態2について説明する。本実施形態では、実施形態1に係るアンテナ装置1を備えた通信装置について説明する。本実施形態に係る通信装置は、例えば携帯電話機、PDA、携帯音楽プレーヤーなどであって、ICタグから情報を読み取るリーダライタ装置として機能する。
【0038】
図13及び
図14は、アンテナ装置を備えた無線通信装置の筐体内部の構造を示す図であり、上部筐体91と下部筐体92とを分離して内部を露出させた状態での平面図である。
【0039】
図13の例では、筐体91の内部には回路基板71,81、バッテリーパック83等が収められている。回路基板71にはアンテナ装置1等が実装されている。回路基板81にはUHF帯アンテナ82等が搭載されている。回路基板71と回路基板81とはケーブル84を介して接続されている。
【0040】
図14の例では、回路基板71にはUHF帯アンテナ72、カメラモジュール76等も搭載されている。また、下部筐体92には、ブースターコイルアンテナ85が設けられている。このブースターコイルアンテナ85は、アンテナ装置1のアンテナコイル20,30の両方と磁界結合する。そして、ブースターコイルアンテナ85が相手側コイルと磁界結合することで、通信装置と通信相手との間で通信が行われる。
【0041】
このように構成された通信装置は、実施形態1と同様に、通信相手となるICタグとの間で、不要な通信経路が形成されることなく、確実な通信が可能となる。
【0042】
なお、実施形態2では、実施形態1に係るアンテナ装置1を備えた通信装置として説明したが、実施形態1に係るアンテナ装置1を備えたタグであってもよい。タグとした場合、そのタグをリーダライタ装置に近づけることで、タグとリーダライタ装置との間で通信が行われる。