特許第6168175号(P6168175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168175
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】立体投影用の偏光変換システム
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20170713BHJP
   G02B 27/26 20060101ALI20170713BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20170713BHJP
   H04N 13/04 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   G03B21/14 D
   G02B27/26
   H04N5/74 A
   H04N13/04 340
   H04N13/04 590
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-16410(P2016-16410)
(22)【出願日】2016年1月29日
(62)【分割の表示】特願2014-212804(P2014-212804)の分割
【原出願日】2007年9月28日
(65)【公開番号】特開2016-122200(P2016-122200A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2016年2月26日
(31)【優先権主張番号】60/827,657
(32)【優先日】2006年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/911,043
(32)【優先日】2007年4月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/950,652
(32)【優先日】2007年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512176130
【氏名又は名称】リアルディー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シャック、ミラー、エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン、マイケル、ジー.
(72)【発明者】
【氏名】シャープ、ゲイリー、ディ−.
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−333557(JP,A)
【文献】 特開2006−133601(JP,A)
【文献】 特表平11−513504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/14
G02B 27/26
H04N 5/74
H04N 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列の左右ステレオ画像を、投影スクリーンに方向付けるように作動する偏光変換システムであって、
プロジェクタレンズからランダム偏光の発散画像光を受け取り、前記ランダム偏光の発散画像光を第1偏光状態(SOP)を有する第1発散画像光及び第2SOPを有する第2発散画像光に分離し、前記第1発散画像光を第1画像光路へ方向付け、前記第2発散画像光を第2画像光路へ方向付けるように作動する偏光ビームスプリッタ(PBS)と、
前記第1画像光路及び前記第2画像光路の一方の上に位置し、前記第1発散画像光又は前記第2発散画像光の何れか一方を受け取り、前記受け取られた第1発散画像光又は第2発散画像光を、前記投影スクリーンに向かって方向付けるように配置される反射器と、
前記第1画像光路上に配置され、前記第1画像光路から前記第1発散画像光を受け取り、前記第1発散画像光の前記偏光状態を、第1出力回転SOPおよび第2出力回転SOPの一方に選択的に変換するように作動する第1偏光スイッチと、
前記第2画像光路上に配置され、前記第2画像光路から前記第2発散画像光を受け取り、前記第2発散画像光の前記偏光状態を、前記第1出力回転SOPおよび前記第2出力回転SOPの一方に選択的に変換するように作動する第2偏光スイッチと、
を備え、
前記第1偏光スイッチ及び前記第2偏光スイッチは、前記第1偏光スイッチにおいて受け取られる前記第1発散画像光のうち、前記ランダム偏光の発散画像光の第1部分に対応する光と、前記第2偏光スイッチにおいて受け取られる前記第2発散画像光のうち、前記ランダム偏光の発散画像光の第2部分に対応する光とが重ならないように配置され、
前記偏光変換システムは、前記左右ステレオ画像が、前記投影スクリーン上で、4ピクセル以内の精度で重なるように構成される、
偏光変換システム。
【請求項2】
前記偏光変換システムは、前記投影スクリーン上のスポットサイズを、1ピクセルの小数部の桁に維持するように構成される、
請求項1に記載の偏光変換システム。
【請求項3】
前記偏光変換システムは、横方向の色のズレを1ピクセル以内に維持するように構成される、
請求項1又は請求項2に記載の偏光変換システム。
【請求項4】
前記偏光変換システムは、前記左右ステレオ画像が、前記投影スクリーン上で、2ピクセル以内の精度で重なるように構成される、
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の偏光変換システム。
【請求項5】
前記第1偏光スイッチ及び前記第2偏光スイッチは、プロジェクタによる画像フレーム送信に同期して、前記第1出力回転SOPおよび上記第2出力回転SOPの間の選択を行う、
請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の偏光変換システム。
【請求項6】
前記反射器が、プリズムを有する、
請求項1から請求項5までの何れか一項に記載の偏光変換システム。
【請求項7】
前記反射器が、ミラーを有する、
請求項1から請求項5までの何れか一項に記載の偏光変換システム。
【請求項8】
前記反射器は、前記第2画像光路上に配され、
前記反射器は、前記第2画像光路上の画像光を方向付けることができるように傾けることができる、
請求項1から請求項7までの何れか一項に記載の偏光変換システム。
【請求項9】
前記第1画像光路上の、前記第1偏光スイッチの後段に配される望遠レンズ対をさらに備える、
請求項1から請求項8までの何れか一項に記載の偏光変換システム。
【請求項10】
前記第2画像光路上の、前記偏光ビームスプリッタの後段に配される逆望遠レンズ対をさらに備える、
請求項1から請求項8までの何れか一項に記載の偏光変換システム。
【請求項11】
前記第1画像光路上に配されるクリーンアップ偏光子をさらに備える、
請求項1から請求項10までの何れか一項に記載の偏光変換システム。
【請求項12】
前記第2画像光路上に配されるクリーンアップ偏光子をさらに備える、
請求項1から請求項10までの何れか一項に記載の偏光変換システム。
【請求項13】
前記偏光ビームスプリッタは、前記プロジェクタレンズから放出された前記ランダム偏光の発散画像光の経路上に配置される、
請求項1から請求項12までの何れか一項に記載の偏光変換システム。
【請求項14】
前記第1画像光路及び前記第2画像光路の一方の上に配される前記反射器は、前記左右ステレオ画像が前記投影スクリーン上で重なるように傾けられる、
請求項13に記載の偏光変換システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本仮特許出願は、(a)9/29/2006提出の「Polarization Conversion System for Cinematic Projection」なる名称の仮特許出願番号第60/827,657、(b)4/10/2007提出の「Polarization conversion system for 3-D projection」なる名称の仮特許出願番号第60/911,043、および(c)7/19/2007提出の「Polarization conversion system for 3-D projection」なる名称の仮特許出願番号第60/950,652に関しており、それらの優先権を主張しているので、これら全てを参照としてここに組み込む。
【技術分野】
【0002】
開示は、3次元視聴用に画像を投影する投影システムに係り、より具体的には、立体画像のエンコーディングに偏光を利用する偏光変換システムに係る。
【背景技術】
【0003】
3次元(3D)画像は、プロジェクタと偏光制御メガネとに続いて偏光制御することで合成することができる(例えば、Liptonの米国特許番号第4,792,850を参照のこと、これを参照としてここに組み込む)。
【0004】
プロジェクタの偏光制御の従来の実装例を図1に示す。この実装例においては、レンズ10の出力から略平行な光線が生じており、レンズ10内の瞳孔12から生じてスクリーン14のスポットを形成するよう集光されるように見える。図1の光線A、B、およびCは、それぞれスクリーン14の下部、中央部、および上部にスポットを形成する光束である。投影レンズから生じた光20は、図1ではs‐およびp‐偏光両方として示されるよう、ランダム偏光される(s‐偏光は通常「o」と示され、p‐偏光は二重矢印で終わる線で表される)。光20は、直線偏光子22を通過し、偏光子22通過後に単一の偏光状態になる。直交偏光状態が吸収され(または反射され)、偏光子22通過後の光束は、通常、元の光束の半分未満であるので、最終画像はより薄暗くなる。偏光スイッチ30が、画像フレームと同期されて、偏光スイッチが生じる偏光状態24が変換され、スクリーンに交互直交偏光の画像を形成する。偏光選択メガネによって、単一の偏光の画像を左目に通し、直交偏光の画像を右目に通す。左右の目にそれぞれ異なる画像を提示することで、3D画像を合成することができる。
【0005】
映画館ではこの従来のシステムが利用されてきた。しかし、従来のシステムは、光の50パーセントを超える量が偏光子により吸収される必要があり、結果生じる画像は、典型的な2D映画館のものの50パーセントを超えるほど薄暗いものになる。薄暗い画像は、3D用途に利用できる映画館のサイズを制限する可能性があり、および/または、視聴者の視聴感が今一つなものとなる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
上述の課題を解決することのできる、プロジェクタから受光する偏光変換システムの様々な実施形態を記載する。偏光変換システムは、3次元視聴用に偏光を利用する映画への用途においてより明るいスクリーン画像を提供する。
【0007】
1実施形態においては、偏光変換システムは、偏光ビームスプリッタ(PBS)と、偏光回転子と、偏光スイッチとを含む。PBSは、プロジェクタレンズからランダム偏光光束を受け取り、第1偏光状態(SOP)を有する第1光束を第1光路へ方向付け、第2SOPを有する第2光束を第2光路へ方向付ける。偏光回転子は、第2光路上に配置され、第2SOPを第1SOPに変換する。偏光スイッチは、第1光路および第2光路から、第1光束および第2光束をそれぞれ受け取り、第1光束および第2光束の第1SOPおよび第2SOPを、第1出力SOPおよび第2出力SOPのいずれかに選択的に変換する。第1光束は投影スクリーンへ透過される。反射部材は、第2光路上に配置され、第2光束を、投影スクリーンへ方向付け、第1光束と第2光束とが略重なることで、より明るいスクリーン画像が形成される。
【0008】
本開示の別の側面によると、立体画像投影方法は、プロジェクタからランダム偏光を受け取る段階と、第1偏光状態(SOP)の光を第1光路へ方向付ける段階と、第2SOPの光を第2光路へ方向付ける段階とを含む。方法はさらに、第2光路上の第2SOPの光を第1SOPの光に変換する段階と、第1光路上および第2光路上の第1SOPの光を、第1出力SOPおよび第2出力SOPのいずれかに選択的に変換する段階と、を含む。
【0009】
他の側面および実施形態は、詳細な記載において以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】立体投影用の従来の偏光スイッチの概略図である。
【0011】
図2】本開示による映画投影用の偏光変換システム(PCS)の概略図である。
【0012】
図3】本開示による映画投影用のPCSの別の実施形態の概略図である。
【0013】
図4】本開示による、光路沿いに望遠レンズを含み、視野が光軸上に集まった映画投影用のPCSの別の実施形態の概略図である。
【0014】
図5】本開示による、光路沿いに望遠レンズを含み、視野が光軸上に集まっていない映画投影用のPCSの別の実施形態の概略図である。
【0015】
図6】本開示による、円偏光出力を提供し、光路沿いに望遠レンズを含み、視野が光軸上に集まった映画投影用のPCSの別の実施形態の概略図である。
【0016】
図7】本開示による、直線偏光出力を提供し、光路沿いに望遠レンズを含み、視野が光軸上に集まった映画投影用のPCSの別の実施形態の概略図である。
【0017】
図8】本開示による、映画投影用のPCSの別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
プロジェクタから受光する偏光変換システムの様々な実施形態を記載する。偏光変換システムは、3次元視聴用に偏光を利用する映画への用途においてより明るいスクリーン画像を提供する。
【0019】
図2は、映画投影用の偏光変換システム(PCS)100を示す概略図である。偏光変換システム100の1実施形態は、偏光ビームスプリッタ(PBS)112、偏光回転子114(例えば1/2波長板)、反射部材116(例えばフォールドミラー)、および偏光スイッチ120を、図示の配置で含む。偏光変換システム100は、投影レンズ122を有する従来のプロジェクタから画像を受信してよい。
【0020】
動作において、光束A、B、およびCが、レンズ122からランダム偏光により生じて、スクリーン130へと投影されて画像を形成する。本実施形態においては、PBS112は、図1に示す偏光子22の代わりに挿入される。PBS112はP‐偏光124を透過して、S‐偏光126を反射する。P‐偏光124は、偏光スイッチを透過して(光束A、B、およびC)、図1の光束A、B、およびC同様に、偏光スイッチにより交互フレームで回転される。
【0021】
PBS112で反射したS‐偏光126は、偏光回転子114(例えば、1/2波長板、幾らかの実施形態では好適にはアクロマートである)を透過して、回転させられてp‐偏光128となる。この新たなp‐偏光128は、フォールドミラー116へと透過する。フォールドミラー116は、この新たなp‐偏光128を反射して、偏光スイッチ120へと透過させる。偏光スイッチ120は、p‐偏光光束A'、B'、およびC'に働きかけ、光束A、B、およびCの回転に同期するよう、光束の偏光を交互フレームで回転させる。光束A'、B'、およびC'のスクリーンでの位置は、光束A、B、およびCのスクリーンの位置と略または正確に同じになるように(例えば、フォールドミラー116の傾きを調節することにより)調節されてよい。投影レンズ122からのランダム偏光106の略全てがスクリーン130上に単一の偏光状態で結像するので、図2のシステムが生じる画像は、図1のシステムのスクリーンに生じる画像よりも約2倍明るいことになる。
【0022】
本例示的な実施形態では、図2のPBS112は平板として描かれている。しかし、様々な種類のPBSを利用することができる。例えば、PBS板は、ガラス上のワイヤグリッド層(例えば、UT、OremのMoxtek社のProflux polarizer)、偏光リサイクルフィルム(例えば、MN、St.Paulの3M社のDouble Brightness Enhancing Film)、ガラス上の偏光リサイクルフィルム(平らにする目的から)、または、ガラス上のマルチ誘電体層を利用して構築されうる。図2のPBS112は、(対角線上にワイヤグリッド、偏光リサイクルフィルム、または誘電体層を有する)ガラス立方体として実装でき、傾斜板を透過した光に関する最終画像の非点収差を低減することができる。この代わりに、図2の傾斜板PBS112は、様々な実施形態においては、球状、非球状、円柱状、または環状の表面を有するよう実装されて、スクリーン130の最終画像の非点収差を低減してよい。板上の偏心した球状、非球状、円柱状、または環状の表面、および/または、板に後続する、光路内のさらなる偏心した球状、非球状、円柱状、または環状の部材が実装されて、最終画像上の非点収差を低減することができる。例えば、V.DohertyおよびD.Shaferによる「Simple method of correcting the aberrations of a beamsplitter in converging light」Proc.SPIE、0237巻、1980年、195〜200ページを参照されたく、これを参照としてここに組み込む。さらにシステムには、傾斜PBS板112の後ろに第2の平板を挿入してその傾きを調整することで、最終画像の非点収差を低減または補正してよい。
【0023】
幾らかの実施形態においては、図2の偏光回転子114は、アクロマートの1/2波長板であってよい。1/2波長板は、ポリマーフィルム(例えば、CO、BoulderのColorLink Inc.社のアクロマートリターダスタック)、クオーツ板、または幾何学的な偏光変質を正すようオプションとしてパターニングされてよい静的液晶デバイス(static liquid crystal device)で実装されてよい。1/2波長板114は、図2に示すように配置されてよく、または他の実施形態においては、フォールドミラー116と偏光スイッチ120との間に、光束A'、B'、およびC'と交差するように配置されてよい。この実装例は望ましいと思われる、というのも、光束A'、B'、およびC'は、フォールドミラー116からs‐偏光状態で反射され、ミラーはしばしばs‐偏光に対して高い反射率を有することがあるからである。しかし、このような実装例においては、1/2波長板114は、光束A'およびCが板で重ならないように配置されねばならない。ここで記載する実施形態の殆どにおいては、偏光回転子114は第2光路に配置されるが、その代わりに第1光路に配置されてもよく、このようにしても、偏光変換システムは、本開示の原理に則って同様の方式で動作することができる。
【0024】
幾らかの実施形態においては、フォールドミラー116を、PBS部材(例えばワイヤグリッド板)で置き換えてもよい。この場合、より純粋な偏光がPBS部材の後で維持されうる。
【0025】
偏光スイッチ120は、米国特許番号第4,792,850が教示するスイッチであってよく、本願と同一の出願人による2006年6月14日出願の「Achromatic Polarization Switches」なる名称の米国特許出願番号第11/424,087のスイッチのうちいずれかが教示するスイッチであってよく、これら両方の全体を全目的でここに参照として組み込む。また、偏光スイッチ120は、偏光の入射状態を選択的に変換する任意の他の公知の偏光スイッチであってよい。幾らかの実施形態においては、偏光スイッチ120は、分割されてもよい(デバイスの歩留まり向上目的で)。偏光スイッチ120が分割されている場合、2つのデバイスは、図2の光束A'およびCに重なりがないように配置されることが望ましい。偏光スイッチ120の分割によって、1部を、1/2波長板114およびフォールドミラー116の間のA'、B'、およびC'光路に再配置することができるようになる。偏光スイッチ120をここに配置するには、フォールドミラー116が良好な偏光維持特性を有する必要がある(例えば、CO、GoldenのOerlikon社のSilflexコーティング)、というのも、これが、A'、B'、およびC'光路のスクリーンの前の最後の部材である場合があるからである。
【0026】
図2の偏光変換システム100においては、光束A'の光路は、光束Aのものより長いので、(B'‐Bと、C'‐Cについても同様)、A'、B'、C'およびA、B、Cが生成する画像間には倍率の差異が生じる。この倍率の差異は、広角であり、且つ短い投影距離の(short-throw)投影システムにおける視聴者にとっては許容しがたいであろう。この倍率の差異を補正する技法には、(1)フォールドミラー116上の曲線面に、倍率の差異を補償する光パワーを提供する、この解決法はアクロマートであり、望ましい、(2)光パワーを有するフレネルまたは回折面をフォールドミラー116に与えて、倍率の差異を補償する(これはアクロマートである場合もない場合もある)、(3)屈折部材(レンズ)を、フォールドミラー116と偏光スイッチ120との間に、または、PBS112とフォールドミラー116との間に配設する、この方法では、単線のレンズはアクロマートではない可能性が高いが、複線の解決法はアクロマートでありえる、(4)望遠レンズを図3および4のように追加する、または、(5)上述の4つの技法の少なくとも2つを組み合わせる。
【0027】
上述のようにp‐偏光は偏光スイッチ120に向けて透過され、s‐偏光は1/2波長板114に向けられるが、当業者には、s‐偏光を偏光スイッチ120に向けて透過させ、p‐偏光を1/2波長板114に向ける代替的な構成も明らかである。
【0028】
図3は、映画投影200用のPCSの別の実施形態を示す概略図である。PCS200の部材は、図2のPCS100について示したものと同様の種類と機能を有していてよい。例えば、部材2xxは部材1xxに類似しており、xxはそれぞれの部材の最後の2桁である。本実施形態では、光束A、B、およびCは、図3の光束AおよびA'、およびBおよびB'、CおよびC'の光路長を均等化することのできるさらなる一式のフォールドミラー232、234により方向付けられてよい。注:光束A'およびC'も存在しているが、図示はされていない。それらは、図2に示す光束A'、B'、C'と同様の光路を辿る。ここではPBSとフォールドミラーとが、光軸に対して45度で配向されているとして示されているが、PBS212およびフォールドミラー216、232、236は、本教示に則った他の配向をされてもよい。さらに、A'、B'、C'の光路に対してガラスを挿入して(例えば、フォールドミラー216を直角プリズムで置き換えることで、および/または、平板PBSの代わりにガラス立方体PBSを利用することで)、光束A、B、Cおよび光束A'、B'、C'それぞれの光路間の差異を低減または無くしてもよい。
【0029】
図2および3を参照すると、視聴者に対して見易くするには、光束A'、B'、C'からの画像は、光束A、B、Cからの画像と概ね重なるべきである(といっても、完全な重複は必ずしも必要でないが)。他の画像位置に対する画像位置の調節法の中には以下のようなものがある。(1)ツマミねじまたは他の機械的技法を利用してフォールドミラー、PBS平板、またはPBS立方体を傾ける、(2)光パワーでレンズまたは部材を機械的に偏心させる(例えばカーブミラー)、(3)フィードバックシステムを利用して、前述の画像調節技法のいずれかを利用して画像位置を自動調節する、または(4)上述の3つの技法の少なくとも2つを組み合わせる。
【0030】
光透過および迷光制御を光透過部材で最適化するには、高透過特性および低透過特性を提供する反射保護膜で覆う方法が考えられる。透過部材からの反射により、最終画像におけるコントラストを劣化させたり、および/または邪魔なアーチファクトを生成したりする迷光がシステムに生じることがある。幾らかの実施形態においては、さらに吸収偏光子をA'、B'、C'の光路の1/2波長板114の後、および/または、各光路におけるPBS112の後に配置して、偏光リークを制御し、且つ、最終画像のコントラストを向上させてよい。
【0031】
図4は、映画投影300用のPCSの別の実施形態を示す概略図である。PCS300の部材は、図2のPCS100について示したものと同様の種類と機能を有していてよい。例えば、部材3xxは部材1xxに類似しており、xxはそれぞれの部材の最後の2桁である。
【0032】
本例示的実施形態では、望遠レンズ対340は、PBS312を光が透過する光路に実装されうる。ここで、望遠レンズ対340は光路沿いに配置され、視野が光軸上に集まっている。通常、望遠レンズ340は、2部材で倍率、歪み、および画像特性を制御して、2画像を比較的近傍で重ならせ(つまり、互いの1‐4ピクセル以内に収まらせ)、スポットサイズを1ピクセルの小数部の桁に維持し、横方向の色を1ピクセルの桁に維持する。この代わりに、逆望遠レンズ(不図示)を、PBS312から光が反射する光路に実装してもよい(偏光スイッチ320とフォールドミラー316との間、またはフォールドミラー316の後ろに配置される)。望遠レンズまたは逆望遠レンズを1光路の倍率制御に利用する場合には、最終画像の径方向の歪みおよびキーストン歪みは、個々の部材または一対の部材を光軸から横方向にずらすことで、調節可能である。
【0033】
図5は、映画投影400用のPCSの別の実施形態を示す概略図である。PCS400の部材は、図2のPCS100について示したものと同様の種類と機能を有していてよい。例えば、部材4xxは部材1xxに類似しており、xxはそれぞれの部材の最後の2桁である。本例示的実施形態では、望遠レンズ対440は、PBS412を光が透過する光路に実装されうる。ここで、望遠レンズ対440は光路沿いに配置され、視野が光軸から分散している。上述したように、最終画像の径方向の歪みおよびキーストン歪みは、個々の部材または一対の部材440を、光軸から横方向にずらすことで、調節可能である。
【0034】
図6は、円偏光出力を提供する映画投影500用のPCSの別の実施形態の概略図である。PCS500は、光路沿いに望遠レンズ対540を含み、視野が光軸上に集まっている。この場合、各偏光スイッチ520は、例えば米国特許番号第4,792,850に記載された円偏光スイッチ(またはZスクリーン)である。各光路のクリーンアップ偏光子542、544は、システムにとって望ましいコントラストレベルに応じてオプションとして設けられる。例えば、クリームアップ偏光子を1または両方設けることで、システムコントラストが向上しうる。
【0035】
図7は、直線偏光出力を提供する映画投影600用のPCSの別の実施形態の概略図である。ここで、各偏光スイッチ620は、2006年6月14日出願の「Achromatic Polarization Switches」なる名称の米国特許出願番号第11/424,087に記載され、ColoradoのBoulderのColorLink,Inc.社も製造しているアクロマートの直線偏光スイッチである。図6の例と同様に、各光路のクリーンアップ偏光子642、644は、システムにとって望ましいコントラストレベルに応じてオプションとして設けられる。例えば、クリームアップ偏光子を1または両方設けることで、システムコントラストが向上しうる。さらに、アクロマート回転子648も、偏光スイッチ620のアクロマート特性に応じてオプションとして設けられる。
【0036】
図8は、映画投影700用のPCSの別の実施形態の概略図であり、偏光子746、アクロマート回転子714、および偏光スイッチ720が他の光学部材の後ろに配置された代替構成を示す。PCS700の部材は、図2のPCS100について示したものと同様の種類と機能を有していてよい。例えば、部材7xxは部材1xxに類似しており、xxはそれぞれの部材の最後の2桁である。
【0037】
動作においては、光は投影レンズ722からPBS712へと出てゆく。P‐偏光はPBS712を透過して望遠レンズ対740へと向かい、その後、偏光スイッチ720へと向かう。オプションであるクリーンアップ偏光子746が望遠レンズ対740と偏光スイッチ720との間に配置されて、コントラストをさらに向上させてよい。PBS712が反射したs‐偏光は、フォールドミラー716へ方向付けられ、そこでアクロマート回転子714へと反射され、アクロマート回転子714で、このs‐偏光がp‐偏光に変換された後、オプションであるクリーンアップ偏光子746を透過する。次に、アクロマート回転子714からのp‐偏光が偏光スイッチ720を透過する。この構成においては、PBS716が反射したs‐偏光は効率良く反射されて、偏光がフォールドミラー716において維持される。これにより、フォールド経路からの偏光保持が欠乏することが少なくなり、輝度が最大化される。アクロマート90度回転子714(大抵、リターダスタックに基づく)を利用して、フォールドミラーからの光を直交状態に変換することもできる。PBS712からのP‐反射をなくすには、クリーンアップ偏光子746が同様に望ましい。これはアクロマート回転子714に後続することが好適であり、これによりシステムレベルのコントラストの一因である偏光変換効率が低減される。
【0038】
PCS700は、スクリーン上に高コントラスト画像を提供する。本例示的実施形態においては、最終スクリーン画像の中心は、投影レンズの光軸上に位置する。幾らかの他の実施形態においては、最終スクリーン画像は、光軸から中心がずれていてよい、例えば、投影レンズの光軸に対してスクリーンの半分の高さ分だけ下であってよい。このような実施形態においては、偏光ビームスプリッタ712は、投影レンズ722からの全照明を妨害するよう再配置されてよく、フォールドミラー716はスクリーン上の2画像に適切に重なるよう傾けられてよい。本実施形態の偏光スイッチ720は、(各経路に1つずつ存在するよう)2部材に分割されており、これにより製造歩留まりを増加させているが、そうではなくて前述したように単一の部材であってもよい。
【0039】
ここで利用される、「映画投影」という用語は、正面投影法および/または背面投影法を利用する画像投影法のことを示し、映画、ホームシアター、シミュレータ、計測(instrumentation)、ヘッドアップディスプレイ、および立体画像を表示する他の投影環境などを含むが、それらに限られない。
【0040】
本開示の原理に則る様々な実施形態を記載してきたが、これらが例示のみを目的としており、限定的ではないことについて理解されたい。故に、本発明の範囲は、上述の例示的実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、請求項および本開示から生じるそれらの均等物によってのみ定義されるべきである。さらに、実施形態について上述した利点または特徴は、これら利点のいずれかまたは全てを有するプロセスおよび構造に、請求項の適用を制限するものではない。
【0041】
また、本明細書で用いたセクションのタイトルは米国特許法施行規則§1.77に基づく提言を遵守して、もしくはそれ以外では本明細書の構成を分かりやすくするべく設けたものである。これらのタイトルは、本開示に基づく請求項に明記した発明を限定または特徴づけるものではない。具体的に例を挙げると、「技術分野」としてタイトルが設けてあるが、本願請求項は、いわゆる「技術分野」を説明するべくこのタイトル以下の内容に基づき選択される用語によって限定されるべきではない。また、「背景技術」のセクションにおける技術の説明は、当該技術を本明細書で開示された発明に対する先行技術と自認したものと解されるべきではない。同様に、「発明の概要」セクションの内容も本願の請求項に記載する発明を特徴づけるものとして解釈されるべきではない。またさらに、本開示において「発明」と言及しているが、本開示において新規な点が1つしかないと解されるべきではない。本開示内容に対応する複数の請求項の限定に基づき複数の発明が記載されているとしてもよく、このため請求項は1または複数の発明を定義しており、当該発明と同等のものは請求項によって保護される。どのような場合においても、請求項の範囲は明細書に鑑みてそれ自体で解釈されるべきであり、本明細書に記載されたタイトルによって限定されるべきではない。
[項目1]
プロジェクタレンズからランダム偏光光束を受け取り、第1偏光状態(SOP)を有する第1光束を第1光路へ方向付け、第2SOPを有する第2光束を第2光路へ方向付ける、偏光ビームスプリッタ(PBS)と、
上記第1光路上に配置され、上記第1SOPを上記第2SOPに変換する、偏光回転子と、
上記第2光路上であって上記PBSの後ろに配置され、上記PBSからの第2光束を反射する反射器と、
上記第1光路上、および上記第2光路上であって上記反射器の後ろに配置され、上記第1光路から上記第2SOPを有する第1光束を、上記第2光路から上記第2光束を、それぞれ受け取り、上記第2SOPを有する第1光束および上記第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力SOPおよび第2出力SOPのうちのいずれか一方に選択的に変換する偏光スイッチと、
を備え、
上記反射器は、上記第2光束を反射することにより、上記偏光スイッチによって選択的に変換された上記第1光路における第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、当該偏光スイッチによって選択的に変換される上記第2光路における第2光束を方向付ける、
偏光変換システム。
[項目2]
プロジェクタレンズからランダム偏光光束を受け取り、第1偏光状態(SOP)を有する第1光束を第1光路へ方向付け、第2SOPを有する第2光束を第2光路へ方向付ける、偏光ビームスプリッタ(PBS)と、
上記第1光路上に配置され、上記第1SOPを上記第2SOPに変換する、偏光回転子と、
上記第1光路上であって、上記偏光回転子の後ろに配置される第1偏光スイッチパネルと、
上記第2光路上に配置される第2偏光スイッチパネルと、
上記第2光路上であって上記第2偏光スイッチパネルの後ろに配置され、上記第2偏光スイッチパネルからの第2光束を反射する反射器と、
を備え、
上記第1偏光スイッチパネルは上記第1光路から上記第2SOPを有する第1光束を、上記第2偏光スイッチパネルは上記第2光路から上記第2光束を、それぞれ受け取り、上記第1偏光スイッチパネルおよび上記第2偏光スイッチパネルは、上記第2SOPを有する第1光束および上記第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力SOPおよび第2出力SOPのうちのいずれか一方に選択的に変換し、
上記反射器は、上記第1偏光スイッチパネルによって選択的に変換された上記第1光路における第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、上記第2偏光スイッチパネルによって選択的に変換された上記第2光路における第2光束を方向付ける、偏光変換システム。
[項目3]
上記偏光スイッチは、上記第1光路および上記第2光路から受光する単一のパネルを有する、項目1に記載の偏光変換システム。
[項目4]
上記偏光スイッチは、第1偏光スイッチパネルと第2偏光スイッチパネルとを有し、
上記第1偏光スイッチパネルは上記第1光路から受光し、
上記第2偏光スイッチパネルは上記第2光路から受光する、項目1に記載の偏光変換システム。
[項目5]
上記第1光路上であって上記偏光スイッチの前に配置されるレンズをさらに備える、項目1に記載の偏光変換システム。
[項目6]
上記第2光路上であって上記偏光スイッチの前に配置されるレンズをさらに備える、項目1に記載の偏光変換システム。
[項目7]
上記反射器が、プリズムを有する、項目1または2に記載の偏光変換システム。
[項目8]
上記反射器が、ミラーを有する、項目1または2に記載の偏光変換システム。
[項目9]
上記第1出力SOPは上記第2出力SOPと直交する、項目1から8のいずれか1項に記載の偏光変換システム。
[項目10]
上記偏光スイッチは、プロジェクタによる画像フレーム送信に同期して、上記第1出力SOPおよび上記第2出力SOPの間の選択を行う、項目1、3、5、6のいずれか1項に記載の偏光変換システム。
[項目11]
上記第1偏光スイッチパネル及び上記第2偏光スイッチパネルは、プロジェクタによる画像フレーム送信に同期して、上記第1出力SOPおよび上記第2出力SOPの間の選択を行う、項目2または4に記載の偏光変換システム。
[項目12]
上記偏光回転子はリターダスタックを有する、項目1から11のいずれか1項に記載の偏光変換システム。
[項目13]
上記第2光路上に配置された上記反射器は、上記第2光路上の光を方向付けるべく傾けることが可能である、項目1から12のいずれか1項に記載の偏光変換システム。
[項目14]
上記偏光スイッチは、受け取った上記第1光束および上記第2光束の偏光状態を、上記第1出力SOPと上記第2出力SOPとの間で交互に変換する、項目1、3、5、6のいずれか1項に記載の偏光変換システム。
[項目15]
上記第1偏光スイッチパネル及び上記第2偏光スイッチパネルは、受け取った上記第1光束および上記第2光束の偏光状態を、上記第1出力SOPと上記第2出力SOPとの間で交互に変換する、項目2または4に記載の偏光変換システム。
[項目16]
上記第2光路上に配置され、当該第2光路における第2光束によって投影スクリーン上に生成される画像の倍率を、当該投影スクリーン上に上記第1光路の上記第1光束によって生成される画像の倍率と略同一の倍率となるように補正する倍率補正手段と、
上記投影スクリーン上において上記第1光束からの画像と上記第2光束からの画像とを略同様の位置へと調整する位置調整手段と、をさらに備え、
上記位置調整手段は、(i)上記反射器を傾けること、(ii)上記偏光ビームスプリッタを傾けること、(iii)光パワーを用いて上記偏光ビームスプリッタ、上記偏光回転子、上記反射器の少なくとも1つを機械的に偏心させること、の少なくとも1つによって実現される、項目1から15のいずれか1項に記載の偏光変換システム。
[項目17]
上記反射器が、光パワーを有する、項目1または2に記載の偏光変換システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8