特許第6168186号(P6168186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168186
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】緩衝構造および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/05 20060101AFI20170713BHJP
   G04B 43/00 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   G04B37/05 H
   G04B43/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-69862(P2016-69862)
(22)【出願日】2016年3月31日
(62)【分割の表示】特願2013-961(P2013-961)の分割
【原出願日】2013年1月8日
(65)【公開番号】特開2016-164565(P2016-164565A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-32736(P2012-32736)
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川岡 裕康
(72)【発明者】
【氏名】櫻沢 直彦
(72)【発明者】
【氏名】上野 正人
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−027736(JP,A)
【文献】 特開2005−018835(JP,A)
【文献】 特開2000−258560(JP,A)
【文献】 米国特許第06762976(US,B1)
【文献】 米国特許第07710717(US,B2)
【文献】 特表2011−530711(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0182153(US,A1)
【文献】 特開2011−095025(JP,A)
【文献】 特開昭56−168182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 37/05
37/04
37/10
43/00
G04G 17/00
H05K 5/02
G11B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器ケースとこの機器ケース内に配置されるモジュールとの間に第1緩衝層と第2緩衝層とを備える緩衝部材を配置した緩衝構造において、
前記機器ケースに前記モジュールを操作するための複数の押釦スイッチと、
前記複数の押釦スイッチの対向するそれぞれの位置に、前記緩衝部材に並設された押釦スイッチ受け部材と、を備え、
前記押釦スイッチ受け部材の高さは、前記緩衝部材と同じまたは若干低い高さとし
前記緩衝部材は、前記モジュールの外周面とこれに対面する前記機器ケースの内周面との間に複数配置されていることを特徴とする緩衝構造。
【請求項2】
請求項に記載の緩衝構造において、前記第1緩衝層は低い周波数の振動伝達率が低く形成され、前記第2緩衝層は前記第1緩衝層よりも高い周波数の振動伝達率が低く形成されていることを特徴とする緩衝構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の緩衝構造において、前記緩衝部材は、前記第1緩衝層が短柱の板状に形成され、前記第2緩衝層の前記複数の突起部がそれぞれドーム状に形成されていることを特徴とする緩衝構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項のいずれかに記載の緩衝構造において、前記緩衝部材は、弾性を備える連続シートに複数配列されていることを特徴とする緩衝構造。
【請求項5】
請求項に記載の緩衝構造において、前記モジュールの下面とこれに対面する前記機器ケースの下面との間に前記緩衝部材からなる下部緩衝部材が配置され、前記モジュールの上面とこれに対面する前記機器ケースの上面との間に前記緩衝部材からなる上部緩衝部材が配置されていることを特徴とする緩衝構造。
【請求項6】
押釦スイッチの対向する位置に、機器ケースとモジュールとの間の緩衝部材に並設された押釦スイッチ受け部材を備え、
前記押釦スイッチ受け部材の高さは、前記緩衝部材と同じまたは若干低い高さとし、
前記緩衝部材は、前記モジュールの外周面とこれに対面する前記機器ケースの内周面との間に配置されていることを特徴とする緩衝構造。
【請求項7】
請求項1〜請求項のいずれかに記載された緩衝構造を備えたことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腕時計、携帯電話機、携帯情報処理端末機などの電子機器に用いられる緩衝構造およびそれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計の緩衝構造においては、特許文献1に記載されているように、腕時計ケースと、この腕時計ケース内に収納される時計モジュールとの間に、複数の緩衝部材を配置し、この複数の緩衝部材によって外部からの衝撃を緩衝して時計モジュールを保護するように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−95025号公報
【0004】
この種の緩衝構造は、腕時計ケースが外部から衝撃を受けた際に弾性変形して外部衝撃を吸収する第1緩衝部材と、この第1緩衝部材を除く位置に配置されて腕時計ケースが外部から衝撃を受けた際にその衝撃を第1緩衝部材よりも先に受けて、その衝撃力に応じて体積変化して外部衝撃を逃がすように吸収する第2緩衝部材とを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような腕時計の緩衝構造では、第1緩衝部材と第2緩衝部材とがそれぞれ別々に形成されて、腕時計ケースと時計モジュールとの間におけるそれぞれ異なる位置に配置されている構成であるから、腕時計ケースが外部から受ける衝撃などの振動を第1緩衝部材と第2緩衝部材とで個別に緩衝するため、衝撃などの振動を効率良く緩衝することができないという問題がある。
【0006】
すなわち、腕時計ケースが外部から受ける衝撃などの振動のうち、高い周波数の振動が長時間に亘り継続的に加わった際には、その高い周波数の振動を第1緩衝部材と第2緩衝部材とによって確実に且つ良好に緩衝することができず、時計モジュールを十分に保護することができないという問題がある。
【0007】
この場合、腕時計ケースが外部から受ける衝撃などの振動は、低い周波数から高い周波数まで様々な周波数が合成されている。この合成された周波数の振動が例えば500Hzを超える超高い周波数である場合には、この超高い周波数の振動によって時計モジュールの各種の部品が共振し、部品の金属が削れて時計モジュールが損傷する危険性がある。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、外部からの衝撃などの振動を効率良く良好に緩衝することができる緩衝構造および電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、機器ケースとこの機器ケース内に配置されるモジュールとの間に第1緩衝層と第2緩衝層とを備える緩衝部材を配置した緩衝構造において、前記機器ケースに前記モジュールを操作するための複数の押釦スイッチと、前記複数の押釦スイッチの対向するそれぞれの位置に、前記緩衝部材に並設された押釦スイッチ受け部材と、を備え、前記押釦スイッチ受け部材の高さは、前記緩衝部材と同じまたは若干低い高さとし、前記緩衝部材は、前記モジュールの外周面とこれに対面する前記機器ケースの内周面との間に複数配置されていることを特徴とする緩衝構造である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、機器ケースが外部から衝撃などの振動を受けた際に、緩衝部材の複数の緩衝層によって周波数の低い振動と周波数の高い振動とをそれぞれ減衰させて緩衝することができるので、外部からの衝撃など振動を効率良く確実に緩衝してモジュールを良好に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明を腕時計に適用した一実施形態を示した拡大正面図である。
図2図1に示された腕時計のA−A矢視における要部を示した拡大断面図である。
図3図2に示された腕時計ケース内の時計モジュールおよび各種の緩衝部材を拡大して示した要部の分解斜視図である。
図4図3に示された押えリングの外周面に設けられた側部緩衝部材を示した拡大図である。
図5図4に示された側部緩衝部材を示した要部の拡大斜視図である。
図6図5に示された側部緩衝部材の第1〜第5の各変形例を示し、(a)はその第1変形例を示した拡大斜視図、(b)はその第2変形例を示した拡大斜視図、(c)はその第3変形例を示した拡大斜視図、(d)はその第4変形例を示した拡大斜視図、(e)はその第5変形例を示した拡大斜視図、(f)はその第6変形例を示した拡大斜視図である。
図7図5に示された側部緩衝部材の第7、第8の各変形例を示し、(a)はその第7変形例を示した拡大斜視図、(b)はその第8変形例を示した拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図5を参照して、この発明を指針式の腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、図1および図2に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の上部開口部には、時計ガラス2がパッキン2aを介して装着されており、腕時計ケース1の下部には、裏蓋3が防水リング3aを介して取り付けられている。
【0013】
また、この腕時計ケース1内には、図2および図3に示すように、時計モジュール4が複数種類の側部緩衝部材5〜7を介して配置されている。この腕時計ケース1は、図1および図2に示すように、硬質の合成樹脂からなるケース本体8と、このケース本体8の外周面に設けられた2層構造のベゼル9とを備えている。
【0014】
この場合、ケース本体8には、図2に示すように、金属製の補強部材8aが内側上部から内部に向けて突出した状態でインサート成形によって設けられている。また、ベゼル9は、ケース本体8の外周面に設けられた軟質の合成樹脂からなる下側ベゼル9aと、この下側ベゼル9aの外表面に設けられて下側ベゼル9aよりも少し硬い軟質の合成樹脂からなる上側ベゼル9bとを備え、この下側ベゼル9aと上側ベゼル9bとがビス9cによってケース本体8に取り付けられている。
【0015】
また、この腕時計ケース1における12時側と6時側との各側部には、図1に示すように、時計バンド10を取り付けるためのバンド取付部11がそれぞれ設けられている。さらに、この腕時計ケース2における3時側および9時側の各側部には、それぞれ押釦スイッチ12が2つずつ設けられている。
【0016】
時計モジュール4は、図2および図3に示すように、硬質の合成樹脂からなるハウジング13を備えている。このハウジング13内には、指針14を運針させるための時計ムーブメントなどの時計機能に必要な各種の電子部品(図示せず)が設けられている。また、このハウジング13の上面には、文字板15が配置されている。この文字板15の周縁部上には、見切り部材16がスペーサ部材17を介して配置されている。
【0017】
見切り部材16は、硬質の合成樹脂からなり、図3に示すように、全体がリング状に形成されている。この場合、見切り部材16の内周面は傾斜面16aに形成されており、この傾斜面16aには時刻目盛などの目盛16bが表示されている。スペーサ部材17は、見切り部材16と同様、硬質の合成樹脂からなり、全体がリング状に形成されている。このスペーサ部材17には、複数の上部緩衝部材7が設けられている。
【0018】
この上部緩衝部材7は、ゴムやエラストマーなどの弾性材料からなり、スペーサ部材17の所定箇所、例えば図3に示すように、12時、4時、8時の3箇所に設けられている。この場合、上部緩衝部材7は、スペーサ部材17の上面のみに設けられていても良く、またスペーサ部材17の上面および下面の両方に設けられていても良く、更にスペーサ部材17の上面から側面を経て下面に亘って設けられていても良い。
【0019】
また、この上部緩衝部材7は、図3に示すように、スペーサ部材17の表面、例えば上面、下面、側面のうち、この実施形態では上面から少し突出した状態で配置されているが、下面および側面から少し突出した状態で配置されていても良い。これにより、この上部緩衝部材7は、腕時計ケース1の時計ガラス2がその上方から衝撃を受けた際に、その衝撃を緩衝するように構成されている。
【0020】
一方、時計モジュール4のハウジング13の下面には、図2および図3に示すように、下部緩衝部材6が押え板18を介して裏蓋3によって腕時計ケース1内に押し付けられた状態で配置されている。この場合、下部緩衝部材6は、ゴムやエラストマーなどの弾性材料、好ましくはシリコーンゲルからなり、平板状に形成されている。これにより、この下部緩衝部材6は、ハウジング13の下面に配置され、この状態で裏蓋3がその下側から衝撃を受けた際に、その衝撃を緩衝するように構成されている。
【0021】
ところで、ハウジング13の外周面には、図2および図3に示すように、押えリング20が配置されており、この押えリング20の外周面には、側部緩衝部材5が配置されている。押えリング20は、ポリアセタール(POM)などの硬質の合成樹脂または金属からなり、ハウジング13の外周面に配置されるほぼ筒状に形成されている。この押えリング20における3時側と9時側とには、複数の押釦スイッチ12の各釦軸部(図示せず)がそれぞれ挿入する複数の切欠部20aが設けられている。
【0022】
一方、側部緩衝部材5は、図3に示すように、押えリング20に設けられた複数の切欠部20aを除いて、押えリング20の外周面に設けられ、腕時計ケース1の内周面と時計モジュール4のハウジング13の外周面との間に押えリング20と共に配置されるように構成されている。この側部緩衝部材5は、予め定められた周波数に対する振動伝達率がそれぞれ異なる第1緩衝層21と第2緩衝層22とを積層させて形成されている。
【0023】
この場合、第1緩衝層21は低い周波数の振動伝達率が低く、第2緩衝層22は第1緩衝層21よりも高い周波数の振動伝達率が低く形成されている。すなわち、この第1緩衝層21と第2緩衝層22とは、ゴムやエラストマーなどの弾性材料、好ましくはシリコーンゲルで形成されている。また、第1緩衝層21は、図4および図5(a)に示すように、予め定められた厚みを有する円板状に形成されており、第2緩衝層22は、第1緩衝層21上に配列される第1、第2の各突起部22a、22bによって形成されている。
【0024】
この第2緩衝層22の第1、第2の各突起部22a、22bのうち、第1突起部22aは、図4および図5(a)に示すように、第1緩衝層21の中央部にドーム状に突出して形成されている。また、第2突起部22bは、第1突起部22aの周囲に沿う複数個所、例えば4箇所に、第1突起部22aよりも小さい形状のドーム状に突出してそれぞれ形成されている。この場合、第1、第2の各突起部22a、22bは、その突出した高さがほぼ同じ高さで形成されている。
【0025】
また、押釦スイッチ受け部材37は、図3に示すように、押えリング20の外周面の各押釦スイッチ12に対向する位置に、側部緩衝部材5と並設されている。
さらに、腕時計ケース1の内周面と時計モジュール4のハウジング13の外周面との間に押えリング20と共に配置されている。
図4および図5(b)に示すように、例えば、この押釦スイッチ受け部材37は、側部緩衝部材5と同じ高さ、または若干低い高さで、低い周波数の振動伝達率が低い第1緩衝層37aで形成されている。
この押釦スイッチ受け部材37は、対向する押釦スイッチ12が押された場合に、腕時計ケース1の内周面に対する時計モジュール4の位置を保持するように構成されている。
これにより、押釦スイッチ12の押し込みを、確実に時計モジュール4に伝えることができる。
【0026】
また、この側部緩衝部材5と押釦スイッチ受け部材37とは、図4に示すように、連続シート23に順次連続して設けられている。この連続シート23は、ゴムやエラストマーなどの弾性材料、好ましくはシリコーンゲルで形成され、押えリング20の外周面に設けられている。これにより、側部緩衝部材5と押釦スイッチ受け部材37とは、連続シート23に個別に設けられていても良く、また連続シート23に一体に形成されていても良い。
【0027】
この場合、連続シート23には、図4に示すように、側部緩衝部材5の第1緩衝層21と押釦スイッチ受け部材37の第1緩衝層37aとが設けられている。このため、側部緩衝部材5と押釦スイッチ受け部材37とは、図2および図3に示すように、連続シート23が押えリング20の外周面に設けられてハウジング13の外周面に配置され、この状態で腕時計ケース1内に配置された際に、少なくとも側部緩衝部材5の第1緩衝層21に形成された第2緩衝層22の第1、第2の各突起部22a、22bの各先端部が腕時計ケース1のケース本体8の内周面に接触するように構成されている。
【0028】
これにより、側部緩衝部材5は、腕時計ケース1に外部から衝撃などの振動が加わった際に、第1緩衝層21によって低い周波数の振動を減衰させて緩衝し、第2緩衝層22によって高い周波数の振動を減衰させて緩衝することにより、腕時計ケース1に加わる様々な周波数の振動を第1緩衝層21と第2緩衝層22とによって緩衝するように構成されている。
【0029】
この場合、第1緩衝層21は、円板状に形成されていることにより、振動により加わる力を一極に集中させずに分散させると共に、捩れ方向の振動に対して伸びることで振動を減衰させるように構成されている。また、第2緩衝層22は、第1、第2の各突起部22a、22bを配列させていることにより、高い周波数(例えば100Hz〜300Hz)および超高い周波数(例えば300Hz〜2000Hz)の振動を減衰させて緩衝するように構成されている。
【0030】
次に、このような腕時計の作用について説明する。
この腕時計の腕時計ケース1に衝撃などの振動が加わり、その振動がベゼル9で吸収しきれなかった際には、その吸収しきれなかった衝撃などの振動を腕時計ケース1と時計モジュール4との間に設けられた複数種類の側部緩衝部材5〜7によって効率良く緩衝して、時計モジュール4を良好に保護する。
【0031】
例えば、腕時計ケース1が裏蓋3側から衝撃などの振動を受けた際には、時計モジュール4のハウジング13の下面に下部緩衝部材6が押え板18によって配置されていることにより、この下部緩衝部材6によって裏蓋3側からの衝撃などの振動を緩衝し、時計モジュール4を保護することができる。
【0032】
また、腕時計ケース1が時計ガラス2側から衝撃などの振動を受けた際には、時計モジュール4のハウジング13と見切り部材16との間に配置されたスペーサ部材17に上部緩衝部材7が配置されていることにより、この上部緩衝部材7によって時計ガラス2側からの衝撃などの振動を緩衝し、時計モジュール4を保護することができる。
【0033】
さらに、腕時計ケース1が外部から衝撃などの振動を受けてベゼル9で吸収しきれなかった際には、時計モジュール4のハウジング13の外周面に押えリング20によって側部緩衝部材5が配置されていることにより、この側部緩衝部材5によって腕時計ケース1の外部からの衝撃などの振動を緩衝し、時計モジュール4を保護することができる。
【0034】
この場合、腕時計ケース1の外部から加わる衝撃などの振動が低い周波数の振動である場合には、側部緩衝部材5の第1緩衝層21によって低い周波数の振動を減衰させて緩衝することができる。すなわち、この第1緩衝層21は、シリコーンゲルからなり、円板状に形成され、低い周波数の振動伝達率が低く形成されていることにより、低い周波数の振動を第1緩衝層21によって確実に減衰させることができる。
【0035】
また、この第1緩衝層21は、円板状に形成されていることにより、低い周波数の振動により加わる力を一極に集中させずに分散させると共に、捩れ方向の振動に対して伸びることで低い周波数の振動を減衰させて緩衝することができる。これにより、第1緩衝層21によって様々な方向の低い周波数の振動を効率良く減衰させて緩衝することができる。
【0036】
一方、腕時計ケース1の外部から加わる衝撃などの振動が高い周波数の振動である場合には、側部緩衝部材5の第2緩衝層22によって高い周波数の振動を減衰させて緩衝することができる。すなわち、この第2緩衝層22は、シリコーンゲルからなり、第1突起部22aと第2突起部22bとによって形成されて、高い周波数の振動伝達率が低く形成されていることにより、高い周波数の振動を第2緩衝層22によって確実に減衰させることができる。
【0037】
この場合、第2緩衝層22は、第1緩衝層21の中央部にドーム状に突出して形成された第1突起部22aと、この第1突起部22aの周囲に第1突起部22aよりも小さい曲率のドーム状に突出してそれぞれ形成された複数の第2突起部22bとを備えている。すなわち、第2突起部22bは、第1突起部22aよりも小さい曲率のドーム状であるため、高い周波数の中でも特に高い周波数部分の振動伝達率が低く形成される。これにより、腕時計ケース1が高い周波数の振動を受けると、その高い周波数の振動を第1突起部22aと複数の第2突起部22bとによって効率良く減衰させて緩衝することができる。
【0038】
このときには、第1突起部22aと第2突起部22bとは、その突出した高さがほぼ同じ高さで形成され、第1、第2の各突起部22a、22bの各先端部が腕時計ケース1のケース本体8の内周面に均一に接触していることにより、腕時計ケース1が高い周波数の振動を受けた際に、その高い周波数の振動を第1突起部22aと第2突起部22bとによって効率良く減衰させて緩衝することができる。
【0039】
このように、この腕時計の緩衝構造によれば、腕時計ケース1の内周面とこの腕時計ケース1内に配置される時計モジュール4の外周面との間に配置される側部緩衝部材5が、予め定められた周波数に対する振動伝達率がそれぞれ異なる複数の緩衝層21、22を積層させて形成されていることにより、腕時計ケース1が外部から衝撃などの振動を受けた際に、その振動を良好に減衰させて緩衝することができる。
【0040】
すなわち、この腕時計の緩衝構造では、腕時計ケース1が外部から衝撃などの振動を受けた際に、側部緩衝部材5の複数の緩衝層21、22によって周波数の低い振動と周波数の高い振動とをそれぞれ減衰させて緩衝することができるので、外部からの衝撃などの振動を効率良く確実に緩衝して時計モジュール4を良好に保護することができる。
【0041】
この場合、複数の緩衝層21、22は、第1緩衝層21と第2緩衝層22とを備え、第1緩衝層21は低い周波数の振動伝達率が低く形成され、第2緩衝層22は第1緩衝層21よりも高い周波数の振動伝達率が低く形成されているので、第1緩衝層21によって周波数の低い振動を減衰させて緩衝することができる共に、第2緩衝層22によって周波数の高い振動を減衰させて緩衝することができ、これにより効率良く振動を緩衝することができる。
【0042】
特に、第1緩衝層21は、シリコーンゲルによって予め定められた厚みを有する円板状に形成されていることにより、振動により加わる力を一極に集中させずに分散させることができると共に、捩れ方向の振動に対して伸びるようにバランス良く変形することにより、捩れ方向の振動を効率良く減衰させて緩和することができる。また、第2緩衝層22は、シリコーンゲルによって第1、第2の各突起部22a、22bを配列させていることにより、周波数の高い振動を第1、第2の各突起部22a、22bによって効率良く確実に減衰させて緩衝することができる。
【0043】
このように、この側部緩衝部材5では、第1緩衝層21と第2緩衝層22とを同じ材質のシリコーンゲルで形成しても、第1緩衝層21と第2緩衝層22との形状が異なることにより、第1緩衝層21と第2緩衝層22との振動伝達率をそれぞれ異ならせることができる。このため、第1緩衝層21によって周波数の低い振動を良好に減衰させて緩衝することができ、第2緩衝層22によって周波数の高い振動を良好に減衰させて緩衝することができ、これにより効率良く振動を減衰させて緩衝することができ、時計モジュール4を確実に且つ良好に保護することができる。
【0044】
この場合、第2緩衝層22は、第1緩衝層21の中央部にドーム状に突出して形成された第1突起部22aと、この第1突起部22aの周囲に第1突起部22aよりも小さい形状のドーム状に突出してそれぞれ形成された複数の第2突起部22bとを備えているので、腕時計ケース1が高い周波数の振動を受けた際に、その高い周波数の振動を第1突起部22aと複数の第2突起部22bとによって効率良く減衰させることができ、これにより、より一層、時計モジュール4を確実に且つ良好に保護することができる。
【0045】
また、第1突起部22aと第2突起部22bとは、その突出した高さがほぼ同じ高さで形成され、第1、第2の各突起部22a、22bの各先端部が腕時計ケース1の内周面に接触しているので、これによっても腕時計ケース1が高い周波数の振動を受けた際に、その高い周波数の振動を効率良く減衰させることができる。このため、第2緩衝層22によって、高い周波数(例えば100Hz〜300Hz)および超高い周波数(例えば300Hz〜2000Hz)の振動を良好に減衰させて緩衝することができる。
【0046】
また、この側部緩衝部材5は、弾性を有する連続シート23に複数設けられていることにより、この連続シート23によっても衝撃などの振動を緩衝することができるほか、腕時計ケース1と時計モジュール4との間に複数の側部緩衝部材5を配置する際に、複数の側部緩衝部材5を個別に配置する必要がなく、連続シート23によって複数の側部緩衝部材5を一度に腕時計ケース1と時計モジュール4との間に配置することができる。
【0047】
このため、時計モジュール4に対する複数の側部緩衝部材5の組付け作業性が良い。この場合、複数の側部緩衝部材5を連続シート23に一体に形成した場合には、複数の側部緩衝部材5を個別に製作する必要がないので、複数の側部緩衝部材5および連続シート23の生産性が良く、安価に製作することができる。
【0048】
さらに、この腕時計の緩衝構造では、時計モジュール4の下面とこれに対面する腕時計ケース1の下面との間に下部緩衝部材6が配置され、時計モジュール4の上面とこれに対面する腕時計ケース1の時計ガラス2との間に上部緩衝部材7が配置されていることにより、腕時計ケース1が上下方向からの衝撃を受けた際に、下部緩衝部材6と上部緩衝部材7とによって、腕時計ケース1の上下方向からの衝撃を確実に且つ良好に緩衝することができる。
【0049】
この場合、下部緩衝部材6は、ゴムやエラストマーなどの弾性材料、好ましくはシリコーンゲルからなり、平板状に形成され、時計モジュール4のハウジング13の下面に押え板18によって配置されているので、腕時計ケース1が裏蓋3側から衝撃を受けた際に、下部緩衝部材6によって裏蓋3側からの衝撃を緩衝し、時計モジュール4を良好に保護することができる。
【0050】
また、上部緩衝部材7は、ゴムやエラストマーなどの弾性材料からなり、時計モジュール4のハウジング13と見切り部材16との間に配置されたスペーサ部材17に配置されているので、腕時計ケース1が時計ガラス2側から衝撃を受けた際に、上部緩衝部材7によって時計ガラス2側からの衝撃を緩衝し、時計モジュール4を良好に保護することができる。
【0051】
なお、上述した実施形態では、側部緩衝部材5が円板状の第1緩衝層21と複数のドーム状の突起部22a、22bを有する第2緩衝層22とを積層して形成されている場合について述べたが、これに限らず、例えば図6(a)〜図6(f)に示す第1変形例〜第6変形例の各側部緩衝部材25〜30のように形成しても良い。
【0052】
すなわち、図6(a)に示した第1変形例の側部緩衝部材25は、円板状の第1緩衝層25aと、この第1緩衝層25a上に配置される1つのドーム状の突起部からなる第2緩衝層25bとを積層した構成になっている。このような側部緩衝部材25においても、上述した実施形態と同様、第1緩衝層25aと第2緩衝層25bとによって周波数の低い振動と周波数の高い振動とを減衰させて緩衝することができる。
【0053】
また、図6(b)に示した第2変形例の側部緩衝部材26は、円板状の第1緩衝層26aと、この第1緩衝層26aよりも径の小さい円板状の第2緩衝層26bとを積層した構成になっている。このような側部緩衝部材26においても、上述した実施形態と同様、第1緩衝層26aと第2緩衝層26bとによって周波数の低い振動と周波数の高い振動とを減衰させて緩衝することができる。
【0054】
また、図6(c)に示した第3変形例の側部緩衝部材27は、円板状の第1緩衝層31と、この第1緩衝層31上に配列される複数の突起部32a、32bからなる第2緩衝層32とを積層した構成になっている。この場合、第2緩衝層32の第1突起部32aは、第1緩衝層31上の中央部に円板状に形成されている。
【0055】
また、第2緩衝層32の第2突起部32bは、第1突起部32aよりも小さい円板状をなし、第1突起部32aの周囲に沿って複数配列されて形成されている。このような側部緩衝部材27においても、上述した実施形態と同様、第1緩衝層31と第2緩衝層32とによって周波数の低い振動と周波数の高い振動とを良好に減衰させて緩衝することができる。
【0056】
また、図6(d)に示した第4変形例の側部緩衝部材28は、円板状の第1緩衝層28aと、この第1緩衝層28aよりも径の小さいほぼ十字形状の第2緩衝層28bとを積層した構成になっている。このような側部緩衝部材28においても、上述した実施形態と同様、第1緩衝層28aと第2緩衝層28bとによって周波数の低い振動と周波数の高い振動とを減衰させて緩衝することができる。
【0057】
さらに、図6(e)に示した第5変形例の側部緩衝部材29は、円板状の第1緩衝層29aと、この第1緩衝層29aよりも小さい四角形の板状の第2緩衝層29bとを積層した構成になっている。このような側部緩衝部材29においても、上述した実施形態と同様、第1緩衝層29aと第2緩衝層29bとによって周波数の低い振動と周波数の高い振動とを減衰させて緩衝することができる。
【0058】
また、図6(f)に示した第6変形例の側部緩衝部材30は、円板状の第1緩衝層33と、この第1緩衝層33上に配列される複数の突起部34a、34bからなる第2緩衝層34とを積層した構成になっている。この場合、第2緩衝層34の第1突起部34aは、第1緩衝層33上の中央部に四角形の板状に形成されている。
【0059】
また、第2緩衝層34の第2突起部34bは、第1突起部34aよりも小さい四角形の板状をなし、第1突起部34aの周囲に沿って複数配列されて形成されている。このような側部緩衝部材30においても、上述した実施形態と同様、第1緩衝層33と第2緩衝層34とによって周波数の低い振動と周波数の高い振動とを良好に減衰させて緩衝することができる。
【0060】
さらに、上述した実施形態およびその各変形例では、側部緩衝部材5、25〜30の第1緩衝層21、25a、26a、28a、29a、31、33を円板状に形成した場合について述べたが、これに限らず、例えば四角形の板状に形成しても良く、また三角形や五角形などの多角形の板状に形成しても良く、あるいは楕円形などの板状に形成しても良い。
【0061】
なおまた、上述した実施形態およびその各変形例では、側部緩衝部材5が円板状の第1緩衝層21と複数のドーム状の突起部22a、22bを有する第2緩衝層22とを積層して形成されている場合について述べたが、これに限らず、例えば図7(a)に示す第7変形例のように側部緩衝部材35を形成しても良く、また図7(b)に示す第8変形例のように側部緩衝部材36を形成しても良い。
【0062】
すなわち、図7(a)に示す第7変形例の側部緩衝部材35は、低い周波数の振動伝達率が低い第1緩衝層35aと、高い周波数の振動伝達率が低い第2緩衝層35bとを積層したものである。この場合、第1緩衝層35aは硬度の硬いシリコーンゲルで形成されており、第2緩衝層35bは第1緩衝層35aの硬度よりも柔らかいシリコーンゲルで形成されている。このような側部緩衝部材35においても、上述した実施形態と同様、第1緩衝層35aと第2緩衝層35bとによって周波数の低い振動と周波数の高い振動とを確実に且つ良好に減衰させて緩衝することができる。
【0063】
また、図7(b)に示す第8変形例の側部緩衝部材36は、低い周波数の振動伝達率が低い第1緩衝層36aと、中間の周波数の振動伝達率が低い第2緩衝層36bと、高い周波数の振動伝達率が低い第3緩衝層36cとを積層したものである。この場合、第1緩衝層36aは硬度の硬いシリコーンゲルで形成されており、第2緩衝層36bは第1緩衝層36aの硬度よりも柔らかいシリコーンゲルで形成されており、第3緩衝層36cは第2緩衝層36bの硬度よりも更に柔らかいシリコーンゲルで形成されている。
【0064】
このような側部緩衝部材36においても、第1緩衝層36aと第2緩衝層36bと第3緩衝層36cとによって周波数の低い振動から周波数の高い振動までを確実に且つ良好に減衰させて緩衝することができるので、上述した実施形態よりも衝撃などの振動を確実に且つ良好に減衰させて緩衝することができる。
【0065】
さらに、上述した実施形態およびその各変形例では、腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に適用することができるほか、必ずしも時計である必要はなく、例えば携帯電話機、携帯情報処理端末機などの電子機器にも広く適用することができる。
【0066】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0067】
(付記)
請求項1に記載の発明は、機器ケースとこの機器ケース内に配置されるモジュールとの間に緩衝部材を配置した緩衝構造において、前記緩衝部材は、予め定められた周波数に対する振動伝達率がそれぞれ異なる複数の緩衝層を積層させて形成されていることを特徴とする緩衝構造である。
【0068】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の緩衝構造において、前記複数の緩衝層は、少なくとも第1緩衝層と第2緩衝層とを備え、前記第1緩衝層は低い周波数の振動伝達率が低く形成され、前記第2緩衝層は前記第1緩衝層よりも高い周波数の振動伝達率が低く形成されていることを特徴とする緩衝構造である。
【0069】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の緩衝構造において、前記第1緩衝層は予め定められた厚みを有する板状に形成され、前記第2緩衝層は前記第1緩衝層に配列された複数の突起部で形成されていることを特徴とする緩衝構造である。
【0070】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の緩衝構造において、前記緩衝部材は、前記第1衝撃層が短柱の板状に形成され、前記第2緩衝層の前記複数の突起部がそれぞれドーム状に形成されていることを特徴とする緩衝構造である。
【0071】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の緩衝構造において、前記第1緩衝層は硬度の硬いシリコーンゲルで形成され、第2緩衝層は前記第1緩衝層の硬度よりも柔らかいシリコーンゲルで形成されていることを特徴とする緩衝構造である。
【0072】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の緩衝構造において、前記緩衝部材は、弾性を有する連続シートに複数配列されていることを特徴とする緩衝構造である。
【0073】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の緩衝構造において、前記緩衝部材は、前記モジュールの外周面とこれに対面する前記機器ケースの内周面との間に複数配置されていることを特徴とする緩衝構造である。
【0074】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の緩衝構造において、前記モジュールの下面とこれに対面する前記機器ケースの下面との間に下部緩衝部材が配置され、前記モジュールの上面とこれに対面する前記機器ケースの上面との間に上部緩衝部材が配置されていることを特徴とする緩衝構造である。
【0075】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載された緩衝構造を備えたことを特徴とする電子機器である。
【符号の説明】
【0076】
1 腕時計ケース
2 時計ガラス
3 裏蓋
4 時計モジュール
5、26〜30、35、36 側部緩衝部材
6 下部緩衝部材
7 上部緩衝部材
13 ハウジング
20 押えリング
21、26a〜29a、31、33、35a、36a、37a 第1緩衝層
22、26b〜29b、32、34、35b、36b 第2緩衝層
22a、31a、33a 第1突起部
22b、31b、33b 第2突起部
23 連続シート
36c 第3緩衝層
37 押釦スイッチ受け部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7