特許第6168214号(P6168214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168214
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】水除去方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/56 20060101AFI20170713BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20170713BHJP
   C07C 69/653 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   C07C67/56
   C07C69/54 Z
   C07C69/653
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-155070(P2016-155070)
(22)【出願日】2016年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-36272(P2017-36272A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2016年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-157786(P2015-157786)
(32)【優先日】2015年8月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 誠
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】吉山 麻子
(72)【発明者】
【氏名】石原 寿美
【審査官】 笠原 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−001340(JP,A)
【文献】 特開平07−133252(JP,A)
【文献】 特開2002−251009(JP,A)
【文献】 特開2006−151923(JP,A)
【文献】 特開2004−307586(JP,A)
【文献】 第5版 実験化学講座26,丸善株式会社,2005年 3月25日,高分子化学,67-68
【文献】 IPCS INCHEM,1997年,Acrylic acid(EHC 191),[online][URL:http://www.inchem.org/documents/ehc/ehc191.htm]2016/10/12検索
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/56
C07C 69/54
C07C 69/653
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
、及びRは、同一又は異なって、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、
は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基を表し、及び
Xは、アルキル基、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、又は水素原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体、及び
アルコール、及びアルデヒドからなる群より選択される1種以上である水溶性の不純物を含有する組成物Bを、水で洗浄すること、及び
当該洗浄により生じた水相を除去すること
によって得られた有機相である、
(A)前記式(I)で表されるアクリル酸誘導体、及び
(B)水
を含有する組成物Aから、水を除去する方法であって、
前記組成物Aをゼオライトと接触させる工程A
を含む方法。
【請求項2】
が、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Xが、炭素数1〜20のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、又は水素原子である請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ゼオライトが合成ゼオライトである請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ゼオライトが3〜5Åの平均細孔径を有する合成ゼオライトである請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水除去方法、特にアクリル酸誘導体、及び水を含有する組成物から水を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸誘導体は、吸水性ポリマーの原料、無機ガラスの代用品として建築や乗物の窓材、照明器具のカバー、提灯看板、道路標識、日用品、事務用品、工芸品、腕時計の風防などに利用されるアクリル樹脂の原料、アクリル樹脂塗料の原料としても広く使用されている。また、含フッ素アクリル誘導体は医薬(例えば、抗生物質)の合成中間体、光学繊維のさや材料用の合成中間体、塗料用材料の合成中間体、半導体レジスト材料の合成中間体、及び機能性高分子の単量体等として有用である。
アクリル酸誘導体の製造方法としては、イソブチレンやプロピレンを酸化することでアクリル酸誘導体を製造する方法やエチレンやプロピン等を原料として遷移金属触媒を用いて製造する方法が知られている。
また、フッ素を含有するアクリル酸誘導体は、例えば、特許文献1には、2−フルオロプロピオン酸エステルをラジカル開始剤の存在下に、窒素−臭素結合を有する臭素化剤と反応させる方法が開示され、及び特許文献2には、3−ハロ−2−フルオロプロピオン酸誘導体を、少なくとも一種の塩基の存在下、及び少なくとも一種の重合禁止剤の存在下で、置換された2−フルオロアクリル酸誘導体へ転化させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−001340号公報
【特許文献2】特表2012−530756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクリル酸誘導体の製造において、目的物であるアクリル酸誘導体を含有する組成物中に、水が混在する場合がある。
アクリル酸誘導体は、水によって加水分解されるので、当該水は、アクリル酸誘導体の安定性に悪影響を与える虞がある。
従って、具体的には、当該水は、微量であっても、アクリル酸誘導体を、前述した、医薬(例えば、抗生物質)の合成中間体、光学繊維のさや材料用の合成中間体、塗料用材料の合成中間体、半導体レジスト材料の合成中間体、及び機能性高分子の単量体等の用途に用いる場合、所望する反応に悪影響を与える虞がある。
また、当該水は、微量であっても、アクリル酸誘導体の保存性に悪影響を与える虞がある。
従って、アクリル酸誘導体、及び水を含有する組成物から水を高度に除去する方法の開発が望まれている。
本発明は、アクリル酸誘導体、及び水を含有する組成物から水を高度に除去する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、
(A)
式(I):
【化1】
[式中、
、及びRは、同一又は異なって、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、
は、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表し、及び
Xは、アルキル基、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、又は水素原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体、及び
(B)水
を含有する組成物Aから、水を除去する方法であって、
前記組成物Aをゼオライトと接触させる工程A
を含む方法。
によって、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、次の態様を含む。
【0007】
項1.
(A)
式(I):
【化2】
[式中、
、及びRは、同一又は異なって、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、
は、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表し、及び
Xは、アルキル基、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、又は水素原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体、及び
(B)水
を含有する組成物Aから、水を除去する方法であって、
前記組成物Aをゼオライトと接触させる工程A
を含む方法。
項2.
が、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基である項1に記載の方法。
項3.
が、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基である項1又は2に記載の方法。
項4.
が、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基である項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
項5.
Xが、炭素数1〜20のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、又は水素原子である項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
項6.
前記ゼオライトが合成ゼオライトである項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
項7.
前記ゼオライトが3〜5Åの平均細孔径を有する合成ゼオライトである項6に記載の方法。
項8.
組成物Aが、
(A)
前記式(I)で表されるアクリル酸誘導体、及び水溶性の不純物を含有する組成物Bを水で洗浄すること、及び
当該洗浄により生じた水相を除去すること
によって得られた有機相である
項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
項9.
前記水溶性の不純物が、アルコール、及びアルデヒドからなる群より選択される1種以上である項8に記載の方法。
項10.
(A)
式(I):
【化3】
[式中、
、及びRは、同一又は異なって、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、
は、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表し、及び
Xは、アルキル基、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、又は水素原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体、及び
(B)水
含有し、水の含有量が1000〜20000ppm(w/w)の範囲内である組成物。
項11.
式(I):
【化4】
[式中、
、及びRは、同一又は異なって、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、
は、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表し、及び
Xは、アルキル基、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、又は水素原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体を含有する組成物を製造する方法であって、
項1〜9のいずれか1項に記載の方法を含む方法。
項12.
式(I):
【化5】
[式中、
、及びRは、同一又は異なって、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、
は、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表し、及び
Xは、アルキル基、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、又は水素原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体を製造する方法であって、
項1〜9のいずれか1項に記載の方法を含む方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アクリル酸誘導体、及び水を含有する組成物から水を高度に除去する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語
本明細書中、室温は、10〜40℃の範囲内の温度であることができる。
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に解される。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0010】
本明細書中、「アルキル基」は、環状、直鎖状、又は分枝鎖状のアルキル基であることができる。
本明細書中、「アルキル基」は、例えば、炭素数1〜20、炭素数1〜12、炭素数1〜6、炭素数1〜4、又は炭素数1〜3のアルキル基であることができる。
本明細書中、「アルキル基」として、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基等の直鎖状、又は分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。
本明細書中、「アルキル基」として、具体的には、また、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシル等の炭素数3〜6の環状のアルキル基(シクロアルキル基)が挙げられる。
【0011】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
本明細書中、「フルオロアルキル基」が有するフッ素原子の数は、1個以上(例、1〜3個、1〜6個、1〜12個、1個から置換可能な最大数)であることができる。
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1〜20、炭素数1〜12、炭素数1〜6、炭素数1〜4、又は炭素数1〜3のフルオロアルキル基であることができる。
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、直鎖状、又は分枝鎖状のフルオロアルキル基であることができる。
本明細書中、「フルオロアルキル基」として、具体的には、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基(例、HCFCFCH−)、ヘキサフルオロプロピル基(例、(CFCH−)、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基(例、HCFCFCFCFCH−)、及びトリデカフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0012】
本明細書中、「アリール基」としては、例えば、フェニル基、及びナフチル基等が挙げられる。
【0013】
本明細書中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0014】
水分除去方法
本発明の水分除去方法は、
(A)
式(I):
【化6】
[式中、
、及びRは、同一又は異なって、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、
は、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表し、及び
Xは、アルキル基、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、又は水素原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体(以下、アクリル酸誘導体(A)と称する場合がある。)、及び
(B)水
を含有する組成物Aから、水を除去する方法であって、
前記組成物Aをゼオライトと接触させる工程A
を含む。
【0015】
本発明の水分除去方法に供される組成物Aは、不純物として水を含有するアクリル酸誘導体(A)であることができる。
すなわち、本発明の一態様は、不純物として水を含有するアクリル酸誘導体(A)の粗精製物をゼオライトと接触させて当該水を除去することを含むアクリル酸誘導体(A)の精製方法である。ここで、アクリル酸誘導体(A)の粗精製物は、組成物Aである。
【0016】
当該アクリル酸誘導体(A)は、本発明の方法を含む精製方法によって精製される化合物であることができる。
【0017】
前記式(I)において、Rは、好ましくは、水素原子、炭素数1〜20(好ましくは、炭素数1〜12、より好ましくは、炭素数1〜6、更に好ましくは、炭素数1〜4、より更に好ましくは、炭素数1〜3、特に好ましくは、炭素数1、又は2)のアルキル基、又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基(好ましくは、炭素数1〜12、より好ましくは、炭素数1〜6、更に好ましくは、炭素数1〜4、より更に好ましくは、炭素数1〜3、特に好ましくは、炭素数1、又は2)であり、更に好ましくは水素原子である。
【0018】
前記式(I)において、Rは、好ましくは、水素原子、炭素数1〜20(好ましくは、炭素数1〜12、より好ましくは、炭素数1〜6、更に好ましくは、炭素数1〜4、より更に好ましくは、炭素数1〜3、特に好ましくは、炭素数1、又は2)のアルキル基、又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基(好ましくは、炭素数1〜12、より好ましくは、炭素数1〜6、更に好ましくは、炭素数1〜4、より更に好ましくは、炭素数1〜3、特に好ましくは、炭素数1、又は2)であり、及び更に好ましくは水素原子である。
【0019】
前記式(I)において、Rは、好ましくは、炭素数1〜20(好ましくは、炭素数1〜12、より好ましくは、炭素数1〜6、更に好ましくは、炭素数1〜4、より更に好ましくは、炭素数1〜3、特に好ましくは、炭素数1、又は2)の直鎖状アルキル基であ、より好ましくはメチル基、又はエチル基であり、及び更に好ましくはメチル基である。
【0020】
前記式(I)において、好ましくは、Xが、炭素数1〜20(好ましくは、炭素数1〜12、より好ましくは、炭素数1〜6、更に好ましくは、炭素数1〜4、より更に好ましくは、炭素数1〜3、特に好ましくは、炭素数1、又は2)のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、又は水素原子であり、及びより好ましくはメチル基、フッ素原子、又は水素原子であり、及び更にり好ましくはフッ素原子である。
【0021】
前記式(I)において、
好ましくは、Rが炭素数1〜20(好ましくは、炭素数1〜12、より好ましくは、炭素数1〜6、更に好ましくは、炭素数1〜4、より更に好ましくは、炭素数1〜3、特に好ましくは、炭素数1、又は2)の直鎖状アルキル基であり、且つXは、好ましくはメチル基、又はフッ素原子であり;
より好ましくはRがメチル基、又はエチル基(更に好ましくはメチル基)であり、且つXは、メチル基、又はフッ素原子である。
【0022】
前記式(I)において、
好ましくは、
は、水素原子であり、
は、水素原子であり、
は、メチル基、又はエチル基(より好ましくはメチル基)であり、且つ
Xは、メチル基、フッ素原子、又は水素原子(より好ましくはフッ素原子)
である。
【0023】
アクリル酸誘導体(A)は、公知の製造方法又はこれに準じる方法により製造することができ、或いは商業的に入手可能である。
アクリル酸誘導体(A)は、例えば、国際公開第2014/034906号に記載の製造方法、又はこれに準じる方法により製造することができる。
【0024】
本発明の方法に供される組成物Aは、液体であることが好ましい。
【0025】
本発明の方法に供される組成物Aにおいては、アクリル酸誘導体(A)と水とが混和していることが好ましい。すなわち、本発明の方法に供される組成物Aは、アクリル酸誘導体(A)を含有する層と、水を含有する層とが分離していない、単一層であることが好ましい。
【0026】
本発明の方法に供される組成物Aにおける水の含有量の下限は、好ましくは1000ppm(w/w)、より好ましくは2000ppm(w/w)、及び更に好ましくは3000ppm(w/w)である。
本発明の方法に供される組成物Aにおける水の含有量の上限は、好ましくは20000ppm(w/w)、より好ましくは15000ppm(w/w)、更に好ましくは10000ppm(w/w)、である。
本発明の方法に供される組成物Aにおける水の含有量は、好ましくは1000〜20000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは2000〜15000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは3000〜10000ppm(w/w)の範囲内、の範囲内である。
【0027】
本発明の方法に供される組成物Aにおけるアクリル酸誘導体(A)の含有率の下限は、特に限定されないが、例えば、85%(w/w)、90%(w/w)、95%(w/w)、が例示される。
本発明の方法に供される組成物Aにおけるアクリル酸誘導体(A)の含有率の上限は、特に限定されないが、例えば、90%(w/w)、95%(w/w)、99%(w/w)が例示される。
【0028】
本発明の方法に供される組成物Aにおける水/アクリル酸誘導体(A)の量比の下限は、好ましくは1000ppm(w/w)、より好ましくは1050ppm(w/w)、及び更に好ましくは1100ppm(w/w)、である。
本発明の方法に供される組成物Aにおける水/アクリル酸誘導体(A)の量比の上限は、好ましくは25000ppm(w/w)、より好ましくは18000ppm(w/w)、及び更に好ましくは11000ppm(w/w)、である。
本発明の方法に供される組成物Aにおける水/アクリル酸誘導体(A)量比は、好ましくは1000〜25000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは1050〜18000ppm(w/w)の範囲内、及び更に好ましくは1100〜11000ppm(w/w)の範囲内である。
【0029】
本発明の方法に供される組成物Aは、アクリル酸誘導体(A)、及び水以外に、1種以上のその他の物質を含有していてもよい。
【0030】
本発明の方法で用いられるゼオライトは、天然ゼオライト、又は合成ゼオライトあることができる。
【0031】
本発明の方法で用いられるゼオライトは、好ましくは、例えば、合成ゼオライトである。
本発明の方法で用いられるゼオライトは、好ましくは、一般式:M2/nO・Al・xSiO・yHO(Mは金属カチオンを表し、nはその原子価を表し、xは係数を表し、及びyは係数を表す。)で示されるゼオライトである。Mは、好ましくは、ナトリウムカチオン、及びカリウムカチオンからなる群より選択される1種以上の金属カチオンである。
本発明の方法で用いられるゼオライトは、好ましくは、化学式:Na12[(AlO12(SiO12]・27HOで表されるゼオライトである。
【0032】
本発明の方法で用いられるゼオライトは、好ましくは多孔質である。
【0033】
本発明の方法で用いられるゼオライトは、好ましくは3〜5Å(好ましくは3〜4Å)の平均細孔径を有する。
【0034】
このようなゼオライトは、商業的に入手可能である。その具体例としては、モレキュラーシーブ3A、4A、及び5A(ユニオン昭和社)、並びにゼオラム3Aおよび4A(東ソー社)等が挙げられる。
本発明の方法で用いられるゼオライトは、好ましくは、例えば、モレキュラーシーブ3A、又はモレキュラーシーブ4Aであり、及びより好ましくは、例えば、モレキュラーシーブ4Aである。
【0035】
本発明の方法で用いられるゼオライトの形態は、例えば、粉末、顆粒、又はペレットであることができ、好ましくは粉末、又は顆粒である。
本発明の方法で用いられるゼオライトの重量平均粒径は、好ましくは10μm以下、及びより好ましくは5μm以下である。ここで、粒径は、長径を意味する。本明細書中、ゼオライトの一次粒子が二次粒子を構成している場合、用語「重量平均粒径」は二次粒子の粒径を意味する。
【0036】
本発明の方法においては、ゼオライトは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0037】
本発明の方法において用いられるゼオライトを、その使用前に、活性化処理してもよい。
当該活性化処理の条件としては、例えば、真空中(10-1〜10-3mmHg)、300〜350℃の範囲内の温度で一晩加熱する等の乾燥処理が挙げられる。
本発明の方法においては、このような活性化処理を施していないゼオライトも、好適に使用できる。
【0038】
本発明の方法におけるゼオライトの使用量は、例えば、組成物Aが含有する水の100質量部当たり、好ましくは0.1〜50質量部の範囲内、より好ましくは0.3〜40質量部、更に好ましくは0.5〜30質量部の範囲内であることができる。
【0039】
本発明の方法において、組成物Aをゼオライトと接触させる方法は、組成物Aをゼオライトと接触させることができる限り、特に制限されない。当該方法は、バッチ式の方法であってもよく、又は連続式の方法であってもよい。バッチ式の方法としては、例えば、容器内に収容した組成物A内へゼオライトを投入し、所望により撹拌し、一定時間経過後、濾過等によりゼオライトを除去する方法が例示される。連続式の方法のとしては、例えば、ゼオライトを充填したカラムに組成物Aを通液する方法が例示される。
【0040】
本発明の方法において、組成物Aをゼオライトと接触させるときの温度は、例えば、−10〜50℃の範囲内、又は0〜40℃の範囲内であることができる。
本発明の方法において、組成物Aをゼオライトと接触させるときの温度は、室温であることができる。
【0041】
本発明の方法において、組成物Aをゼオライトと接触させる時間は、所望する水の除去が可能である必要十分な長さに適宜設定すればよい。具体的には、当該時間は、例えば、バッチ式の場合、通常、1分間以上であることができ、及び、例えば、0.1〜5時間の範囲内、又は0.3〜2.5時間の範囲内であることができる。
【0042】
本発明の方法に供される組成物Aは、例えば、
(A)
式(I):
【化7】
[式中、
、及びRは、同一又は異なって、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、
は、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表し、及び
Xは、アルキル基、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、又は水素原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体、及び水溶性の不純物を含有する組成物Bを水で洗浄すること、及び当該洗浄により生じた水相を除去することにより得られた有機相であることができる。
【0043】
ここで、「水溶性の不純物」は、通常採用し得る条件の水洗浄における除去が可能な程度の水への溶解度を有する物質であればよい。
このような水溶性の不純物としては、例えば、メタノール、エタノール、及びプロパノール等のアルコール、並びにホルムアルデヒド等のアルデヒド等が挙げられる。当該不純物は、1種、又は2種以上であることができる。
【0044】
このような水洗浄により得られた有機相である組成物Aにおける、このような水溶性の不純物の含有量の合計は、好ましくは3%(w/w)以下、及びより好ましくは1%(w/w)以下であることができる。
【0045】
本発明の方法で水の全部又は一部を除去された組成物A(これを組成物A’を称する場合がある。)の水含量の上限は、例えば、2000ppm(w/w)、1800ppm(w/w)、1600ppm(w/w)、1400ppm(w/w)、1200ppm(w/w)、1000ppm(w/w)、又は800ppm(w/w)であることができる。
当該組成物A’の水含量の下限は、例えば、100ppm(w/w)、200ppm(w/w)、300ppm、400ppm(w/w)、500ppm(w/w)、又は600ppm(w/w)であることができる。
本発明の一態様においては、当該水含量の数値は、水/組成物A’の量比であることができる。
本発明の一態様においては、当該水含量の数値は、水/アクリル酸誘導体(A)の量比であることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例中の記号及び略号の意味を以下に示す。この他にも、本明細書中、本発明が属する技術分野において、通常用いられる記号及び略号が用いられ得る。
【0047】
以下の実施例において、水含有量の測定はカールフィッシャー水分計により行った。
以下の実施例において、メタノール量の測定は、ガスクロマトグラフィーにより行った。
以下の実施例において、メタクリル酸メチル、及び2−フルオロアクリル酸メチルエステルの量の測定は、ガスクロマトグラフィーにより行った。
【0048】
例A
実施例A1
5100ppm(w/w)の水を含有するメタクリル酸メチルの試料を用意した。当該試料にモレキュラーシーブ(MS4A(粉末)、ユニオン昭和社)を5wt%添加し、0.5h撹拌した。当該撹拌後の試料の水含有量は、1350ppm(w/w)(すなわち、水除去率73.5%)であった。
【0049】
例B
水洗(メタノールを含有する試料からのメタノールの除去[水を含有する試料の用意])
メタノール/2−フルオロアクリル酸メチルエステルの量比が41.5%(w/w)である試料(水洗前の試料)を用意した。
当該試料(水洗前の試料)を、2.0倍質量の水で洗浄した。
当該水洗後の試料におけるメタノールの含有量は、メタノール/2−フルオロアクリル酸メチルエステルの量比として、0.53%(w/w)であった。
2−フルオロアクリル酸メチルエステルの回収率は、67.8%であった。
当該水洗後の試料における水含有量は、4900ppm(w/w)であった。
【0050】
比較例B1、比較例B2、実施例B1、及び実施例B2(水の除去)
前記水洗に準じた方法により、それぞれ表1に示す含有量の水を含有する2−フルオロアクリル酸メチルエステルの試料を用意した。ここで、表1に示すように、各試料間で水含有量に差があるが、これは、調製ロットの違いによって生じ得る通常の差の範囲内である。なお、各試料のメタノールの含有量は、メタノール/2−フルオロアクリル酸メチルエステルの量比として、0.53%(w/w)であった。
当該試料のそれぞれへ、5%(w/w)の量比で、乾燥剤としてMgSO4、モレキュラーシーブ4A(MS-4A(粉末)、ユニオン昭和社)、又はモレキュラーシーブ3A(MS-3A(粉末)、ユニオン昭和社)に添加し、5時間、又は2時間の間、緩やかに撹拌した。その後、濾過により乾燥剤を除去した試料を採取し、その水含有量を測定し、及び水減少率を算出した。表1に結果を示した。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示した結果から明らかなように、モレキュラーシーブスを使用した場合、水を含有する2−フルオロアクリル酸メチルエステルの粗精製物から、高度に水を除去できた。一方、MgSO4は優れた脱水剤として汎用されているが、これを使用した場合、ある程度の効果はあったが、高度に水を除去することはできなかった。