(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
底面カバーと、天面カバーと、前記底面カバーと前記天面カバーとによって区画された空間内に配置された、平面部と、前記平面部の周縁部に立設された立ち壁部と、前記立ち壁部の周縁部から延伸する接合部と、を有する、または、曲面部と、前記曲面部の周縁部から延伸する接合部と、を有する補強部材と、を備え、前記補強部材の接合部が、前記底面カバーまたは前記天面カバーに接合されている筐体であって、
前記接合部の面積が10cm2以上、100cm2以下の範囲内にあり、前記補強部材の高さの最大値が3mm以上、30mm以下の範囲内にあることを特徴とする筐体。
前記接合部が接合されている底面カバーまたは天面カバーの方向への前記補強部材の投影面積が、前記接合部が接合されている底面カバーまたは天面カバーの面積の60%以上、95%以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の筐体。
前記接合部を前記底面カバーまたは前記天面カバーに接合することによって形成された中空構造の体積が、前記空間の体積の55%以上、95%以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載の筐体。
底面カバーと、天面カバーと、前記底面カバーと前記天面カバーとによって区画された空間内に配置された、開口部を有する補強部材と、を備え、前記補強部材の周縁部が、前記底面カバーまたは前記天面カバーに接合されている筐体であって、
前記補強部材の周縁部が接合されている底面カバーまたは天面カバーの方向への前記補強部材の投影面積が、前記補強部材の周縁部が接合されている底面カバーまたは天面カバーの面積の60%以上、95%以下の範囲内にあることを特徴とする筐体。
前記周縁部を前記底面カバーまたは前記天面カバーに接合することによって形成された中空構造の体積が、前記空間の体積の55%以上、95%以下の範囲内にあることを特徴とする請求項4に記載の筐体。
底面カバーと、天面カバーと、前記底面カバーと前記天面カバーとによって区画された空間内に配置された、開口部を有する補強部材と、を備え、前記補強部材の周縁部が、前記底面カバーまたは前記天面カバーに接合されている筐体であって、
前記補強部材の周縁部を前記底面カバーまたは前記天面カバーに接合することによって形成された中空構造の体積が、前記空間の体積の55%以上、95%以下の範囲内にあることを特徴とする筐体。
前記補強部材および該補強部材が接合されている前記底面カバーまたは前記天面カバーが繊維強化複合材料によって形成され、前記補強部材と底面カバーまたは天面カバーとの少なくとも一方の接合部分に熱可塑性樹脂が設けられ、前記補強部材と底面カバーまたは天面カバーとが前記熱可塑性樹脂を介して接合されていることを特徴とする請求項1〜8のうち、いずれか1項に記載の筐体。
前記補強部材と前記底面カバーまたは前記天面カバーに接合することによって形成された中空構造内の前記補強部材の表面に配設された発熱部材を備えることを特徴とする請求項1〜10のうち、いずれか1項に記載の筐体。
前記補強部材と前記底面カバーまたは前記天面カバーに接合することによって形成された中空構造内において、別の補強部材を備えることを特徴とする請求項1〜11のうち、いずれか1項に記載の筐体。
前記別の補強部材が、前記補強部材の内面と前記補強部材が接合されている前記底面カバーまたは前記天面カバーに接合されていることを特徴とする請求項12に記載の筐体。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の発明者らは、鋭意研究を重ねてきた結果、補強部材を筐体に接合することによって、筐体に補強部材が接合されていない場合と比較して、筐体のねじり剛性を大幅に向上できることを知見した。以下、図面を参照して、上記知見から想到された、本発明の第1から第3の実施形態である筐体について詳細に説明する。なお、本発明の筐体の用途としてはアタッシュケース、キャリーケース、電子機器部品を内蔵する電子機器筐体などを挙げることができ、より具体的にはスピーカー、ディスプレイ、HDD、ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA、プラズマディスプレイ、テレビ、照明、冷蔵庫、およびゲーム機が挙げられ、中でも、ねじり剛性が高く、且つ、軽量および薄肉が要求される、クラムシェル型パソコンやタブレット型パソコンに好ましく用いられる。
【0026】
〔第1の実施形態〕
始めに、
図1から
図7を参照して、本発明の第1の実施形態である筐体について説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態である筐体の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態である筐体1は、平面視矩形形状の底面カバー2、底面カバー2に接合された補強部材3、および平面視矩形形状の天面カバー4と、を主な構成要素として備えている。本発明の底面カバーおよび天面カバーと補強部材とは機能分離されており、目的に応じた形状である。なお、以下では、底面カバー2および天面カバー4の短辺に平行な方向をx方向、底面カバー2および天面カバー4の長辺に平行な方向をy方向、x方向およびy方向に垂直な方向をz方向(鉛直方向)と定義する。
【0028】
図2は、
図1に示す筐体1の分解斜視図である。
図2に示すように、底面カバー2は、xy平面に対して平行な平面視矩形形状の平面部21と、平面部21の周縁部から+z方向に立設された立ち壁部22と、を備えている。なお、底面カバー2を形成する部材の厚みは、0.1mm以上、0.8mm以下の範囲内にあることが望ましい。また、底面カバー2を形成する部材の弾性率は、20GPa以上、120GPa以下の範囲内にあることが望ましい。
【0029】
また、底面カバー2は、金属材料および繊維強化複合材料のうちのいずれかによって形成されていることが望ましく、これらを組み合わせることによって形成されていてもよい。高いねじり剛性を発現する観点からは、底面カバー2は同一材料によって形成された継ぎ目のない部材であることが望ましい。また、生産性の観点からは、形状が単純な平面部21を力学特性の高い金属材料や繊維強化複合材料を用いて形成し、形状が複雑な立ち壁部22や接合部分を成形性に優れた樹脂材料を用いて射出成形などで形成してもよい。
【0030】
金属材料としては、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金などの軽金属材料を用いることが望ましい。アルミニウム合金としては、Al−Cu系のA2017、A2024、Al−Mn系のA3003、A3004、Al−Si系のA4032、Al−Mg系のA5005、A5052、A5083、Al−Mg−Si系のA6061、A6063、Al−Zn系のA7075などを例示できる。マグネシウム合金としては、Mg−Al−Zn系のAZ31やAZ61、AZ91などを例示できる。チタン合金としては、11〜23種のパラジウムを添加した合金やコバルトとパラジウムを添加した合金、50種(α合金)、60種(α−β合金)、80種(β合金)に該当するTi−6Al−4Vなどを例示できる。
【0031】
繊維強化複合材料に用いる強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、PBO繊維、高強力ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、および炭化ケイ素繊維などの繊維を用いることができ、これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。これらの強化繊維は、一方向に引き揃えられた長繊維、単一のトウ、織物、ニット、不織布、マット、組み紐などの繊維構造物として用いることができる。
【0032】
マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリエステルなどのポリエステル系樹脂や、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンなどのポリオレフィンや、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂の他、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂、およびフェノキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。生産性や力学特性の観点からは、熱硬化性樹脂を用いることが望ましく、中でもエポキシ樹脂を用いることが望ましい。成形性の観点からは、熱可塑性樹脂を用いるとよく、中でも、強度の観点からはポリアミド樹脂、耐衝撃性の観点からはポリカーボネート樹脂、軽量性の観点からはポリプロピレン樹脂、耐熱性の観点からはポリフェニレンスルフィド樹脂を用いることが望ましい。また、前記樹脂は、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂としてだけではなく、樹脂そのものからなる底面カバーや天面カバー、補強部材として用いてもよい。
【0033】
本発明において、前述した強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグを各部材の材料として用いることが積層などの取扱い性の観点から望ましい。高い力学特性および設計自由度の観点からは、一方向連続繊維プリプレグを用いることが望ましく、等方性の力学特性や成形性の観点からは、織物プリプレグを用いることが望ましい。また、これらのプリプレグの積層体によって構成されていてもよい。
【0034】
補強部材3は、xy平面に対して平行な平面視矩形形状の平面部31と、平面部31の周縁部から−z方向に立設された立ち壁部32と、立ち壁部32の周縁部からxy平面に対して平行な外方方向に延伸する接合部33と、を備えている。補強部材3は、底面カバー2の平面部21に接合部33を接合することにより、平面部31と底面カバー2の平面部21との間に中空構造S1を形成した状態で底面カバー2に接合されている。この接合部33を有した補強部材3を用いることが、本発明のねじり剛性をさらに高める一因であり、接合部33と底面カバー2および天面カバー4とが接合されていることが望ましい。また、この中空構造S1内に電子部品が装填されていることが望ましく、補強部材3に電子部品が配置されていることが補強部材3と接合されている底面カバー2または天面カバー4との距離を離すことができる点で望ましい。
【0035】
xy平面に対して平行な平面における接合部33の面積は、10cm
2以上、100cm
2以下の範囲内にある。詳しくは、接合部33の面積が10cm
2未満である場合、大きな変形を伴う荷重が筐体1に付与された場合、補強部材3が底面カバー2から剥がれ、本来のねじり剛性を発現できないといった問題が生じる。一方、接合部33の面積が100cm
2より大きい場合には、接合部33の面積の増加に伴う筐体1の重量の増加および中空構造S1の体積の減少といった問題が生じる。このため、接合部33の面積は、10cm
2以上、100cm
2以下の範囲内とする。
【0036】
補強部材3の平面部31と底面カバー2の平面部21との間の距離(平面部21からの補強部材3の高さ)hの最大値は、3mm以上、30mm以下の範囲内にある。本発明において、補強部材3の高さhはねじり剛性を発現する一因である。このため、高さhの最大値が3mm未満である場合、筐体1において立ち壁部32の効果が小さく、本来のねじり剛性を発現できないといった問題が生じる。一方、高さhの最大値が30mmより長い場合には、立ち壁部32の厚みも厚くする必要が生じ、結果として筐体1の重量増加といった問題が生じる。このため、高さhの最大値は、3mm以上、30mm以下の範囲内とする。
【0037】
図3および
図4は、
図2に示す補強部材3の構成の一例を示す断面図である。
図3(a)に示すように、本実施形態では、接合部33は、立ち壁部32の周縁部からxy平面に対して平行な外方方向に延伸するように設けられているが、
図3(b)に示すように、立ち壁部32の周辺部からxy平面に対して平行な内方方向に延伸するように接合部33を設けてもよい。また、
図4(a),(b)に示すように、底面カバー2の平面部21(または補強部材3の接合部33)に対する立ち壁部32の角度αは、45°以上、135°以下の範囲内にあることが望ましい。なお、
図4(a)は立ち壁部32の角度αが鋭角である状態を示し、
図4(b)は立ち壁部32の角度αが鈍角である状態を示している。
【0038】
図5は、筐体の構成の一例を示す断面図である。
図5(a),(b)に示すように補強部材3と底面カバー2または天面カバー4とが接合されることによって形成される中空構造S1内に発熱部材D1,D2が配置されている。発熱部材D1,D2は、補強部材3の中空構造S1側表面に配置されていることが望ましい。このような構成とすることにより、電子機器の使用者が触れる底面カバー2と発熱部材D1,D2との間の距離を離し、底面カバー2の温度上昇を抑制できる。なお、本明細書中において“発熱部材”とは、電子機器の稼動に伴い発熱する部品のことを意味し、特に電子機器の稼働に伴い10℃以上の温度上昇が生じるものを指す。このような発熱部材としては、LED、コンデンサ、インバータ、リアクトル素子、サーミスタ素子、パワートランジスタ素子、モーター、CPU、これらを搭載した電子基板などを例示できる。
【0039】
本発明は、補強部材3と補強部材3が接合されている底面カバー2または天面カバー4との間に形成されている中空構造S1内において、別の補強部材を備えることが好ましい。この中空構造S1内に備えられる別の補強部材は、底面カバー2または天面カバー4のみと接合していても構わないし、補強部材3のみと接合していても構わない。好ましくは別の補強部材は、補強部材3の内面と接合しており、さらに補強部材3が接合されている底面カバー2または天面カバー4とも接合されている態様である。ここで、補強部材3の内面とは、補強部材3における中空構造S1内側の面を意味する。
【0040】
補強部材3の平面部31と底面カバー2の平面部21との間に形成された中空構造S1内に補強部材3の内面と補強部材3が接合されている底面カバー2または天面カバー4とを接合するように別の補強部材を配置することによって、たわみ剛性を高めるようにしてもよい。
図6(a)は別の補強部材の構成を示す平面図を示し、
図6(b)は
図6(a)のA−A線断面図を示す。
図6(a),(b)に示すように、別の補強部材5は、中空構造S1のy方向中央部においてx方向に延伸するように配置された部材であり、底面カバー2の平面部21と補強部材3の平面部31とに接続されている。別の補強部材5を介して底面カバー2の平面部21と補強部材3の平面部31とを一体化することにより、荷重が加わった時には底面カバー2と補強部材3とが同期して変形するので、筐体1のたわみ剛性を向上できる。また、底面カバー2の立ち壁部22や補強部材3の立ち壁部32と別の補強部材5とが一体化されることによって、底面カバー2および補強部材3の立ち壁部が特に筐体1の内側方向に変形しにくくなり、筐体1のねじり剛性を向上できる。
【0041】
なお、別の補強部材5は、底面カバー2の平面部21と補強部材3の平面部31とに接続されている限り、中空構造S1のx方向中央部においてy方向に延伸するように配置された部材であってもよいし、中空構造S1の対角線方向に延伸するように配置された部材であってもよい。とりわけ、別の補強部材5は、厚み方向に荷重が付与された場合に底面カバー2の平面部21のたわみ量が大きくなる位置を通過するように配置されていることが好ましく、配置される部材が複数配置され、部材同士が交差していてもよい。また、別の補強部材5は、エラストマーやゴム成分を有した樹脂材料、ゲルなどの弾力性に優れた衝撃吸収材料によって形成されていることが望ましく、これにより、たわみ剛性のみならず、衝撃に対しても効果を発現しうる。
【0042】
本実施形態では、補強部材3は、
図7(a)に示すように、平面部31、立ち壁部32、および接合部33によって構成されていることとしたが、
図7(b)に示すように平面部31を曲面形状の部材とし、曲面形状の部材の周縁部に接合部33を形成することによって補強部材3を構成してもよい。すなわち、平面部31を曲面形状の部材とすることによって立ち壁部32を省略してもよい。また、剛性を高める観点や空間を有効に活用する観点から平面部31に凹凸形状が形成されていてもよい。本実施形態では、補強部材3は、底面カバー2に接合されていることとしたが、補強部材3を天面カバー4に接合し、補強部材3の平面部31と天面カバー4との間に中空構造S1を形成してもよい。
【0043】
本実施形態では、平面部31の辺毎に形成された4つの立ち壁部32の全てに接合部33が形成されているが、4つの立ち壁部32のうちの少なくとも一つに接合部33が形成されていればよい。また、4つの立ち壁部32のうち、隣接している2つ以上の立ち壁部32に接合部33が形成されていてもよい。また、1つの立ち壁部32に形成されている接合部33の面積は1cm
2以上であることが望ましい。また、補強部材3を形成する部材の厚みは、筐体の軽量化および薄型化の観点から0.3mm以上、1.0mm以下の範囲内にあることが望ましい。また、補強部材3を形成する部材の弾性率は、20GPa以上、120GPa以下の範囲内にあることが望ましい。
【0044】
また、補強部材3は、上述した金属材料および繊維強化複合材料のうちのいずれかによって形成されていることが望ましく、補強部材3の目的に応じて材料を選択できる。すなわち、高い補強効果を発現させる観点からは、弾性率の高い金属材料や繊維強化複合材料を用いるとよく、放熱性の観点からは、熱伝導率の高い金属材料を用いるとよい。さらに、補強部材3が繊維強化複合材料によって形成されている場合、補強部材3は連続繊維プリプレグの積層体によって構成されていることが望ましい。また、補強部材3が接合されている底面カバー2または底面カバー4の線膨張係数に対する補強部材3の線膨張係数の比が0.1以上、10以下の範囲内にあることが望ましい。
【0045】
また、補強部材3の接合部33は熱溶着によって底面カバー2の平面部21に接着されることが望ましい。また、23℃における引き剥がし荷重は、100N/cm
2以上、5000N/cm
2以下の範囲内にあることがより好ましい。熱溶着方法としては、インサート射出法、アウトサート射出法、振動溶着法、超音波溶着法、レーザ溶着法、熱板溶着法などを例示できる。また、この場合、接合部33と平面部21の接着面は200℃における引き剥がし荷重が60N/cm
2未満であることが望ましい。200℃における引き剥がし荷重は、30N/cm
2以下であることがより望ましい。
【0046】
また、この引き剥がし荷重が、180℃において60N/cm
2未満であることが望ましく、より低い温度領域で容易に引き剥がすことが可能なものであることが解体性接着の観点からよい。しかしながら、解体する温度が低くなると、筐体として用いた際、電子部品の稼動に伴う温度上昇や使用環境の温度によって、補強部材が剥離する可能性がある。従って、筐体を使用する温度領域では高い接着強度で補強部材が接合されており、解体する温度領域では容易に引き剥がし可能なことが望ましい。このため、80℃における引き剥がし荷重が60N/cm
2以上、5000N/cm
2以下の範囲内にあることがより望ましい。
【0047】
なお、200℃における引き剥がし荷重は低いほど望ましく、10N/cm
2以下であることが最も望ましい。そして、200℃における引き剥がし荷重は低いほど好ましいため下限は特に限定されず、0N/cm
2以上であることが好ましいが、低すぎると取扱い性に劣ることもあるため、1N/cm
2以上であることがより好ましい。このような構成とすることにより、補強部材3を容易に取り外し可能な解体接着性を発現することが可能となり、電子機器の修理やリサイクルを容易にすることができる。また、補強部材3および補強部材3が接合されている底面カバー2または天面カバー4が繊維強化複合材料によって形成され、補強部材3および底面カバー2または天面カバー4の少なくとも一方の接合部分に熱可塑性樹脂が設けられ、補強部材3と底面カバー2または天面カバー4とが熱可塑性樹脂を介して接合されていることが望ましい。
【0048】
接合部分に熱可塑性樹脂を設ける方法としては、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた繊維強化シート(プリプレグーシート)を用いて補強部材3および補強部材3が接合されている底面カバー2または天面カバー4を成形して得る方法が挙げられる。この方法で得られた成形体であれば、表面に熱可塑性樹脂が高い割合で存在するため、接合の際に広い接着面積を有することが可能であり、接合箇所の選択自由度が高くなるため好ましい。各部材の力学特性の観点からは、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いた繊維強化複合材料であることが好ましく、このような部材に熱可塑性樹脂を設ける方法としては、熱可塑性樹脂を加熱して溶融させた溶融物や熱可塑性樹脂を溶剤で溶解させた溶液を塗布して繊維強化複合材料に熱可塑性樹脂を設ける方法が挙げられる。また、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いた繊維強化シート(プリプレグシート)を成形、硬化させる際に、繊維強化シート(プリプレグシート)の最外層に熱可塑性樹脂からなるフィルムや不織布を表面に積層した積層体を加熱、加圧成形する方法が例示できる。
【0049】
また、補強部材3と底面カバー2または天面カバー4とが直接接合されていることが望ましい。補強部材3の接合部33および/またはその接合部33と接着する底面カバー2または天面カバー4の接合部に熱可塑性樹脂を有する繊維強化複合材料を用いることで、各部材以外の接着剤を用いる必要がなくなり、各部材を直接接合することが可能となるので、筐体1の重量増加を抑制できる。補強部材3と底面カバー2または天面カバー4とを直接接合するために好適な方法は、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いた繊維強化シート(プリプレグシート)の最外層に熱可塑性樹脂からなるフィルムや不織布を表面に積層した積層体を用いる方法であるが、ここで用いる熱可塑性樹脂としては、前記マトリックス樹脂として例示した熱可塑性樹脂の群から選択することも可能である。
【0050】
好ましくは、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂からなる繊維強化シート(プリプレグシート)を成形、硬化させる成形温度よりも低い融点を有する熱可塑性樹脂を選択することが好ましい。熱可塑性樹脂の融点の下限は特に限定されないが、本発明の筐体を電子機器に適応した際の耐熱性を発現する観点から、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。また、熱可塑性樹脂の形態は特に限定されず、フィルム、連続繊維、織物、粒子、不織布などの形態が例示できるが、成形作業時の取扱い性の観点からフィルム、不織布の形態であることが好ましい。このような樹脂を選択することにより、成形時に、熱可塑性樹脂が溶融し、成形体表面に熱可塑性樹脂が膜のように広がって形成され、接合時に接合面積が広くなることや繊維強化シートの強化繊維に含浸して強固な熱可塑性樹脂層を形成し、高い引き剥がし強度を発現することが可能となる。これらの方法で得られた補強部材3および補強部材3と接合される底面カバー2または天面カバー4の少なくとも一方でもよいが、接合される部材の両方の接合部材に熱可塑性樹脂が設けられていることが好ましい。また、設けられる熱可塑性樹脂は、互いに実質的に同じ熱可塑性樹脂が選択されていることが望ましい。
【0051】
本明細書中において、“解体性接着”とは、補強部材3を容易に取り外し可能である点だけではなく、再接着可能であることも含んでおり、再接着の際、接着性を発現するために熱可塑性樹脂を付与しても良いが、熱可塑性樹脂などの重量増加なしで再接着可能であることが好ましい。また、再接着をした際の引き剥がし荷重が、元の引き剥がし荷重の50%以上であることが望ましく、70%以上であることがさらに望ましい。本発明の解体性接着は、熱可塑性樹脂の特性である、加熱により樹脂が溶融して力学特性が低下する点と、冷却または常温で固化して樹脂本来の高い力学特性を発現する特性を接合技術に適応したことにより成し得たことである。
【0052】
また、補強部材3の平面部31、立ち壁部32、および接合部33に本発明のねじり剛性が向上する範囲において、孔部を形成することができる。このような構造とすることで、中空構造S1に内蔵した電子部品と底面カバー2と天面カバー4とによって区画された中空構造S1以外の空間(後述する空間S3)に配置した電子部品や天面カバー4に該当するディスプレイやキーボードなどとを接続するための配線ケーブルを配置することが可能となる。この孔部は放熱性の観点から空気の流れを良くするための配置、例えば対向する立ち壁部32に形成することがよい。これらの孔部は、補強部材3の表面積に対して30%以下であることが望ましく、ねじり剛性の観点からは15%以下であることがさらに望ましい。
【0053】
天面カバー4は、底面カバー2の立ち壁部22の周縁部に接合されている。
図1においては、天面カバー4は、平滑な板状形状であるが、曲面や凹凸を有した板状形状でもよい。また、天面カバー4は、底面カバー2と同じ材料、形状であってもよく、補強部材3が底面カバー2と天面カバー4とによって区画されて空間内に複数配置、接合されていてもよく、このような構成とすることによってどちらの面に対しても高い剛性を有した筐体1を得ることができる。また、天面カバー4は、液晶ディスプレイやキーボードなどの電子機器部品であってもよく、このような構成とすることによってクラムシェル型パソコンやタブレット型パソコンへの適応が可能となる。
【0054】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態である筐体1は、底面カバー2と、天面カバー4と、底面カバー2と天面カバー4とによって区画された空間内に配置された、平面部31と、平面部31の周縁部に立設された立ち壁部32と、立ち壁部32の周縁部から延伸する接合部33と、を有する補強部材3と、を備え、補強部材3の接合部33が、底面カバー2または天面カバー4に接合されている筐体であって、接合部33の面積が10cm
2以上、100cm
2以下の範囲内にあり、補強部材3の高さhの最大値が3mm以上、30mm以下の範囲内にある。これにより、薄型化および軽量化を実現しつつねじり剛性を向上可能な筐体を提供することができる。
【0055】
〔第2の実施形態〕
次に、
図8から
図10を参照して、本発明の第2の実施形態である筐体について説明する。なお、本発明の第2の実施形態である筐体は、補強部材の構成および補強部材の投影面積に特徴を有している。そこで、以下では、本発明の第2の実施形態である筐体における、補強部材の構成および補強部材の投影面積についてのみ説明し、その他の構成の説明は省略する。
【0056】
図8は、本発明の第2の実施形態である筐体における補強部材の構成を示す断面図である。
図9は、本発明の第2の実施形態である筐体における各部材の投影面積を示す平面図および断面図である。
図10は、本発明の第2の実施形態である筐体における補強部材の配置を示す平面図および断面図である。
図8(a),(b)に示すように、本発明の第2の実施形態である筐体では、補強部材3は、開口部を有する補強部材34によって構成され、補強部材34の周縁部が底面カバー2または天面カバー4に接合されることによって中空構造S1が形成されている。ここでいう“開口部を有する補強部材”とは、補強部材の一部に開口部を有する形状を指しており、前述した
図7(a)および(b)に示すような接合部を有した部材でもよい。つまり、開口部を有する補強部材の一例は、第1の実施形態における補強部材である、平面部、平面部の周縁部に立設された立ち壁部、および立ち壁部の周縁部から延伸する接合部を有する、または、曲面部、曲面部の周縁部から延伸する接合部を有する補強部材である。
【0057】
また、本実施形態では、
図9(a),(b)に示すように、周縁部が接合されている底面カバー2または天面カバー4の方向への補強部材3の投影面積Sが、周縁部が接合されている底面カバー2または天面カバー4の投影面積Rの60%以上、95%以下の範囲内に調整されている。なお、
図9(a)は、底面カバー2または天面カバー4の投影面積Rを示しており、
図9(b)は、補強部材3の周縁部が底面カバー2に接合されている場合における補強部材3の投影面積Sを示している。なお、補強部材3の配置位置は特に限定はされないが、
図10(a)に示すように底面カバー2または天面カバー4の中心位置Cから均等な位置にあることが好ましく、このような配置とすることによって、x方向またはy方向へのねじり剛性を等方的にできる。また、空間S3を有効活用する観点からは、
図10(b)に示すように補強部材3を底面カバー2または天面カバー4のどちらか一方に寄せても良い。
【0058】
詳しくは、投影面積Sが補強部材3の接合されている底面カバー2または天面カバー4の面積の60%未満である場合、本発明のねじり剛性を発現する一因である立ち壁部が底面カバー2または天面カバー4の中心位置に近い位置に形成されてしまい、本来のねじり剛性を発現できないといった問題が生じる。一方、投影面積Sが補強部材3の接合されている底面カバー2または天面カバー4の面積の95%より大きい場合には、高いねじり剛性を発現しうるが、空間S3が小さくなるために、電子機器を構成するための電子部品および配線などを配置することが困難となり、筐体として適応することが困難となるといった問題が生じる。このため、周縁部が接合されている底面カバー2または天面カバー4の方向への補強部材3の投影面積Sは、周縁部が接合されている底面カバー2または天面カバー4の面積Rの60%以上、95%以下の範囲内とする。
【0059】
本発明は、接合部が接合されている底面カバー2または天面カバー4の方向への補強部材3の投影面積が、接合部が接合されている底面カバー2または天面カバー4の面積の60%以上95%以下の範囲内であることが好ましいため、本発明では、補強部材3と底面カバー2または天面カバー4とが互いに側面で接合された態様よりも、例えば、補強部材3が平面部、平面部の周縁部に立設された立ち壁部、および立ち壁部の周縁部から延伸する接合部を有し、補強部材3と接合されている底面カバー2または天面カバー4が平面部を有する態様であれば、補強部材3の接合部が底面カバー2または天面カバー4の平面部と接合していることが好ましい。
【0060】
このとき、補強部材3の投影面の形状、すなわち平面部31の形状は特に限定されないが、矩形形状以外にも円形形状や多角形形状でも良く、高いたわみ剛性を発現する観点からは、底面カバー2および/または天面カバー4の形状に即した形状であることが好ましい。具体的には、
図1に示す場合であれば、補強部材3の投影面の形状は矩形形状であることが好ましい。また、中空構造S1および中空構造S1以外の空間を有効に活用する観点からは、補強部材3の投影面の形状は装填される電子部品の形状に合わせた形状であることが好ましい。また、いずれの荷重に対しても等方的な剛性を発現する観点からは、補強部材3の投影面の形状はx方向および/またはy方向の軸に対称な形状であることが好ましい。
【0061】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態である筐体1は、底面カバー2と、天面カバー4と、底面カバー2と天面カバー4とによって区画された空間内に配置された、開口部を有する補強部材3と、を備え、補強部材3の周縁部が、底面カバー2または天面カバー4に接合されている筐体であって、補強部材3の周縁部が接合されている底面カバー2または天面カバー4の方向への補強部材3の投影面積が、補強部材3の周縁部が接合されている底面カバー2または天面カバー4の面積の60%以上、95%以下の範囲内にある。これにより、薄型化および軽量化を実現しつつねじり剛性を向上可能な筐体を提供することができる。
【0062】
〔第3の実施形態〕
最後に、
図11を参照して、本発明の第3の実施形態である筐体について説明する。なお、本発明の第3の実施形態である筐体1は、補強部材の構成および補強部材によって形成される中空構造S1の体積に特徴を有している。そこで、以下では、本発明の第3の実施形態である筐体における、補強部材の構成および補強部材によって形成される中空構造S1の体積についてのみ説明し、その他の構成の説明は省略する。
【0063】
図11は、本発明の第3の実施形態である筐体における各空間を示す断面図である。本発明の第3の実施形態である筐体では、補強部材は、第2の実施形態である筐体と同様、開口部を有する補強部材34によって構成され、補強部材34の周縁部が底面カバー2または天面カバー4に接合されることによって中空構造S1が形成されている。
【0064】
また、本実施形態では、
図11(a)に示す底面カバー2の補強部材3によって形成される中空構造S1の体積が、
図11(b)に示す底面カバー2と天面カバー4とによって区画される空間S2の体積の55%以上、95%以下の範囲内にある。詳しくは、中空構造S1の体積が空間S2の体積の55%未満である場合、本発明のねじり剛性を発現する一因である立ち壁部の高さが低いおよび/または補強部材3の投影面積が小さい場合であり、本来のねじり剛性を発現できないといった問題が生じる。一方、中空構造S1の体積が空間S2の体積の95%より大きい場合には、高いねじり剛性を発現しうるが、
図11(c)に示す空間S3が小さくなり、電子機器を構成するための電子部品および配線などを配置することが困難となり筐体として適応することが困難となるといった問題が生じる。このため、中空構造S1の体積は、底面カバー2と天面カバー4とによって区画される空間S2の体積の55%以上、95%以下の範囲内とする。
【0065】
以上の説明から明らかなように、本発明の第3の実施形態である筐体1は、底面カバー2と、天面カバー4と、底面カバー2と天面カバー4とによって区画された空間内に配置された、開口部を有する補強部材3と、を備え、補強部材3の周縁部が、底面カバー2または天面カバー4に接合されている筐体であって、補強部材3の周縁部を底面カバー2または天面カバー4に接合することによって形成された中空構造S1の体積が、底面カバー2と天面カバー4とによって区画される空間S2の体積の55%以上、95%以下の範囲内にある。これにより、薄型化および軽量化を実現しつつねじり剛性を向上可能な筐体を提供することができる。
【0066】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。例えば、本発明に係る筐体は、上記第1、第2、および第3の実施形態である筐体が有する構成を任意に組み合わせることによって構成してもよい。具体的には、第1の実施形態における補強部材が第2および第3の実施形態における補強部材の構成要件の一方または両方を満足してもよいし、第2の実施形態における補強部材が第3の実施形態における補強部材の構成要件を満足してもよい。このように、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施形態、実施例、および運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
<評価・測定方法>
(1)ねじり剛性試験
図12(a)に示すように筐体1の1辺をコの字型の固定治具100で固定し、固定した1辺に対向するもう一方の辺を支持治具101で保持する形で試験機に固定した後、
図12(b)に示すように角度θの変化速度を1°/minとして50Nの荷重を付与した時の筐体1の変位量を測定し、測定値を筐体のねじり剛性値とした。
【0069】
(2)たわみ剛性試験
図13に示すように、補強部材が接合された底面カバー2または天面カバー4側から引張荷重Fを付与できるように筐体を試験機に設置した。試験機として“インストロン”(登録商標)万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。直径20mmの圧子102を用いて筐体1の中心位置をクロスヘッド速度1.0mm/minで押し、100Nの荷重を付与したときの底面カバー2または天面カバー4のたわみ量を測定し、測定値をたわみ剛性値とした。
【0070】
(3)曲げ弾性率の評価
ASTM D−790(1997)の規格に準拠し、補強部材3、底面カバー2、および天面カバー4に用いる材料の曲げ弾性率を評価した。実施例または比較例により得られた各部材からそれぞれ、幅25±0.2mm、厚みDとスパンLの関係がL/D=16となるように、長さをスパンL+20±1mmの曲げ試験片を、任意の方向を0°方向とした場合に、0°、+45°、−45°、90°方向の4方向について切り出して試験片を作製した。それぞれの方向について測定回数nは5回とし、全ての測定値(n=20)の平均値を曲げ弾性率とした。試験機として“インストロン”(登録商標)万能試験機4201型(インストロン社製)を用い、3点曲げ試験冶具(圧子直径10mm、支点直径10mm)を用いて支持スパンを試験片厚みの16倍に設定し、曲げ弾性率を測定した。試験片の水分率0.1質量%以下、雰囲気温度23℃、および湿度50質量%の条件下において試験を行った。
【0071】
(4)補強部材の引き剥がし荷重試験(23℃および200℃)
JIS K6849(1994)に規定される「接着剤の引張接着強さ試験方法」に基づいて補強部材の引き剥がし荷重を評価した。本試験における試験片は、実施例または比較例で得られる筐体を用いた。この時、補強部材の引き剥がし強度を測定するために、補強部材が接合されていない天面カバーまたは底面カバーがない状態(接合される前)で評価を行った。具体的には、
図14に示すように筐体1の底面カバー2または天面カバー4を固定治具103で固定し、補強部材3を引張治具104で固定した。そして、各部材を固定した状態のまま引張荷重Fを付与し、補強部材3が剥がれるまたは引張治具104が補強部材3から外れるまで評価を行った。この時の接着面積は、接合前の補強部材3の接合面の幅や長さを測定して算出した。接合が部分的になされている場合は、それらの面積を測定し、合算して接合面積とした。得られた引張荷重値と接合面積から補強部材3の引き剥がし荷重を算出した。また、200℃における補強部材3の引き剥がし荷重は、筐体1を固定する治具ごと恒温槽内に設置し、恒温槽内の雰囲気温度を200℃まで昇温した。昇温後、10分間その状態を保持した後、補強部材3の引き剥がし荷重試験と同様に引張荷重を付与し、評価を行った。
【0072】
<使用した材料>
評価に用いた材料を以下に示す。
【0073】
[材料1]
東レ(株)製“トレカ”プリプレグP3252S−12を材料1として準備した。材料1の特性は以下の表1に示す。
【0074】
[材料2]
スーパーレジン工業(株)製SCF183 EP−BL3を材料2として準備した。材料2の特性は以下の表1に示す。
【0075】
[材料3]
アルミニウム合金A5052を材料3として準備した。材料3の特性は以下の表1に示す。
【0076】
[材料4]
マグネシウム合金AZ31を材料4として準備した。材料4の特性は以下の表1に示す。
【0077】
[材料5]
チタン合金Ti−6Al−4Vを材料5として準備した。材料5の特性は以下の表1に示す。
【0078】
[材料6]
ポリアミド6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1021T)90質量%と、ポリアミド6/66/610からなる3元共重合ポリアミド樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM4000)10質量%とからなるマスターバッチを用いて、目付124g/m
2の熱可塑性樹脂フィルムを作製し、材料6として準備した。材料6の特性は以下の表1に示す。
【0079】
[材料7]
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製“ユーピロン”(登録商標)H−4000)の樹脂ペレットを材料7として準備した。成形前に庫内温度を120℃に設定した熱風循環式乾燥機で5時間乾燥させた。材料7の特性は以下の表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
(実施例1)
実施例1−(1):底面カバーの作製
材料1から所定の大きさを有するシートを7枚切り出した。このうち4枚は、プリプレグの繊維方向が縦方向(
図1でいうx方向)と平行となるようにしてカットし、残りの3枚は繊維方向が横方向(
図1でいうy方向)と平行となるようにした。本実施例においては、横方向(y方向)を0°とし、
図15に示すように、繊維方向が90°のプリプレグシート105aと繊維方向が0°のプリプレグシート105bとの対称積層となるように7枚のプリプレグシートからなる積層体を得た。
【0082】
ここで、プレス成形装置と
図16(a)に示すような一対の金型106を用い、一対の金型106内に得られた積層体107を配置した。このとき、プレス成形装置の熱盤温度が150℃となるように設定しており、
図16(b)に示すように金型106を移動させ、成形圧力1.0MPaを保持した状態で加圧した。そして、30分後、金型106を開放し、成形品を金型106から取り出した。得られた成形品の立ち壁が所望の高さとなるようにトリミングを行い、底面カバーを得た。
【0083】
実施例1−(2):天面カバーの作製
得られる成形品の形状が平滑となる金型を用いること以外は、実施例1−(1)と同様にして成形品を得た。得られた成形品の寸法が所望の大きさとなるようにトリミングを行い、天面カバーを得た。
【0084】
実施例1−(3):補強部材の作製
図17に示すような金型106を用いること以外は、実施例1−(1)と同様にして成形品を得た。得られた成形品の接合面が所望の幅となるようにトリミングを行い、補強部材を得た。
【0085】
実施例1−(4):筐体の作製
実施例1−(1)〜(3)で得た各部材を
図18に示すように接着剤108を用いて接合した。実施例1における成形条件および評価結果は以下の表2に示す。
【0086】
(実施例2,3)
表2に記載の寸法の補強部材を成形して用いること以外は、実施例1−(1)〜(4)と同様にして、筐体を得た。実施例2,3における成形条件および評価結果は以下の表2に示す。
【0087】
(実施例4)
実施例1−(1),(3)と同様にして得られた底面カバーおよび補強部材を、補強部材の接合部の10箇所に各箇所の接合面積が6mm
2となるように接着剤を塗布し、底面カバーと補強部材を接合した。接合の仕方以外は、実施例1−(1)〜(4)と同様にして筐体を得た。実施例4における成形条件および評価結果は以下の表2に示す。
【0088】
(実施例5)
表3に記載の寸法の補強部材を成形して用いること以外は、実施例1−(1)〜(3)と同様にし、底面カバーと補強部材を接合する方法は実施例4と同様にして筐体を得た。実施例5における成形条件および評価結果は以下の表3に示す。
【0089】
(実施例6,7)
表3に記載の寸法の補強部材を成形して用いること以外は、実施例1−(1)〜(4)と同様にして、筐体を得た。実施例6,7における成形条件および評価結果は以下の表3に示す。
【0090】
(実施例8)
別の補強部材として、材料1を厚みが3mmとなるように0°のプリプレグシートと90°のプリプレグシートを交互に対称積層となるように25枚積層した。実施例1−(1)と同様にしてプレス成形装置で加熱・加圧を行い、成形品を得た。得られた成形品を高さ7.2mmとなるように加工を行い、表3に記載の寸法となる別の補強部材を得た。得られた別の補強部材を
図6に示すように配置して接着剤で接合し、その他は実施例1−(1)〜(4)と同様にして、筐体を得た。実施例8における成形条件および評価結果は以下の表3に示す。
【0091】
(実施例9)
別の補強部材として、材料7を厚みが3mmとなる成形金型と射出成形機を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度100℃となるように設定して射出成形を行い、平板を得た。得られた平板より、幅7.2mmとなるように加工を行い、表3に記載の寸法となる別の補強部材を得た。得られた別の補強部材を用いること以外は、実施例8と同様にして、筐体を得た。実施例9における成形条件および評価結果は以下の表4に示す。
【0092】
(実施例10)
表4に記載の寸法の補強部材を成形して用いること以外は、実施例1−(1)〜(4)と同様にして筐体を得た。実施例10における成形条件および評価結果は以下の表4に示す。
【0093】
(実施例11)
実施例1−(1),(3)と同様にして得られた底面カバーと補強部材を、補強部材の接合部に140℃のホットメルトアプリケーターで溶融させたホットメルト樹脂(セメダイン(株)製HM712)を塗布し、補強部材を重ね合わせ上から錘を乗せ、3分間そのままの状態として接合した。接合の仕方以外は、実施例1−(1)〜(4)と同様にして筐体を得た。実施例11における成形条件および評価結果は以下の表4に示す。
【0094】
(実施例12)
実施例12−(1):底面カバーの作製
補強部材との接合面となる側の面に共重合ポリアミド樹脂(東レ(株)製“アミラン(登録商標)”CM8000)からなる厚み50μmとなるフィルムを積層して積層体を得た。得られた積層体を用いること以外は実施例1−(1)と同様にして、底面カバーを得た。
【0095】
実施例12−(2):天面カバーの作製
実施例12−(1)と同様に底面カバーとの接合面となる側の面に共重合ポリアミド樹脂(東レ(株)製“アミラン(登録商標)”CM8000)からなる厚み50μmとなるフィルムを積層して積層体を得た。得られた積層体を用いること以外は実施例1−(2)と同様にして、天面カバーを得た。
【0096】
実施例12−(3):補強部材の作製
実施例12−(1)と同様に底面カバーとの接合面となる側の面に共重合ポリアミド樹脂(東レ(株)製“アミラン(登録商標)”CM8000)からなる厚み50μmとなるフィルムを積層して積層体を得た。得られた積層体を用いること以外は実施例1−(3)と同様にして、補強部材を得た。
【0097】
実施例12−(4):筐体の作製
実施例12−(1)で得た底面カバーの実施例12−(3)で得た補強部材を接合形態に重ね合わせ、
図19に示すような接合用治具109を用い、接合用治具109の表面温度が180℃となるように設定したプレス成形装置の中に配置して加熱・加圧した。1分後、底面カバー2、補強部材3、および接合用治具109をプレス成形装置から取り出し冷却した。5分後、接合用治具109を取り外して底面カバー2と補強部材3の一体化品を得た。その後、実施例1−(4)と同様にして天面カバー4を接着剤を用いて接合した。実施例12における成形条件および評価結果は以下の表4に示す。
【0098】
(実施例13,14)
表5に記載の寸法の補強部材を成形して用いること以外は、実施例12−(1)〜(4)と同様にして、筐体を得た。実施例13,14における成形条件および評価結果は以下の表5に示す。
【0099】
(実施例15)
実施例12−(1),(3)と同様にして得られた底面カバーおよび補強部材を、超音波溶着法で補強部材の接合部を10箇所で接合した。接合の仕方以外は、実施例1−(1)〜(4)と同様にして筐体を得た。実施例15における成形条件および評価結果は以下の表5に示す。
【0100】
(実施例16)
表5に記載の寸法の補強部材を成形して用いること以外は、実施例12−(1)〜(3)と同様にし、底面カバーと補強部材を接合する方法は実施例15と同様にして筐体を得た。実施例16における成形条件および評価結果は以下の表5に示す。
【0101】
(実施例17,18)
表6に記載の寸法の補強部材を成形して用いること以外は、実施例12−(1)〜(4)と同様にして、筐体を得た。実施例17,18における成形条件および評価結果は以下の表6に示す。
【0102】
(実施例19)
実施例8で得た別の補強部材を用い、得られた別の補強部材5と底面カバー2、補強部材4を
図20に示すように配置したこと以外は、実施例12−(4)と同様にして筐体を得た。実施例19における成形条件および評価結果は以下の表6に示す。
【0103】
(実施例20)
実施例9で得た別の補強部材を用いたこと以外は実施例19と同様にして、筐体を得た。実施例20における成形条件および評価結果は以下の表6に示す。
【0104】
(実施例21)
表7に記載の寸法の補強部材を成形して用いること以外は、実施例12−(1)〜(4)と同様にして筐体を得た。実施例21における成形条件および評価結果は以下の表7に示す。
【0105】
(実施例22)
底面カバーとして、表7に記載の材料を用い、熱盤温度を220℃、成形圧力を10MPaとすること以外は、実施例1と同様にして、筐体を得た。実施例22における成形条件および評価結果は以下の表7に示す。
【0106】
(実施例23)
底面カバーとして、表7に記載の材料を用い、熱盤温度を200℃、成形圧力を10MPaとすること以外は、実施例1と同様にして、筐体を得た。実施例23における成形条件および評価結果は以下の表7に示す。
【0107】
(実施例24)
底面カバーとして、表7に記載の材料を用い、熱盤温度を240℃、成形圧力を10MPaとすること以外は、実施例1と同様にして、筐体を得た。実施例23における成形条件および評価結果は以下の表7に示す。
【0108】
(実施例25)
底面カバーとして、表8に記載の材料を用いること以外は、実施例1と同様にして、筐体を得た。実施例25における成形条件および評価結果は以下の表7に示す。
【0109】
(実施例26)
補強部材として、表8に記載の材料を用いること以外は、実施例1と同様にして、筐体を得た。実施例26における成形条件および評価結果は以下の表8に示す。
【0110】
(実施例27,28)
表8に記載の寸法の補強部材を成形して用いること以外は、実施例1−(1)〜(4)と同様にして筐体を得た。実施例27,28における成形条件および評価結果は以下の表8に示す。
【0111】
(実施例29)
表9に記載の寸法の補強部材を成形して用い、各部材を熱溶着により接合したこと以外は、実施例22と同様にして筐体を得た。実施例29における成形条件および評価結果は以下の表9に示す。
【0112】
(実施例30)
実施例30−(1):底面カバーの作製
材料6を10枚積層した積層体とプレス成形装置と
図16(a)に示すような一対の金型106を用い、一対の金型106内に積層体を配置した。このとき、プレス成形装置の熱盤温度が260℃となるように設定しており、成形圧力1.0MPaを保持した状態で加圧した。そして、10分後、プレス成形装置の熱盤に冷却水を流し、冷却を開始した。金型温度が100℃以下となってから、金型106を開放し、成形品を金型106から取り出した。得られた成形品の立ち壁が所望の高さとなるようにトリミングを行い、底面カバーを得た。
【0113】
実施例30−(2):補強部材および天面カバーの作製
表9に記載の寸法となるように用いる金型を変更した以外は、実施例30−(1)と同様にして、補強部材および天面カバーを得た。
【0114】
実施例30−(3):筐体の作製
得られた底面カバーおよび補強部材を接合形態に重ね合わせ、超音波溶着機を用いて接合を行った。その後、実施例12−(4)と同様にして天面カバーを接着剤を用いて接合した。実施例30における成形条件および評価結果は以下の表9に示す。
【0115】
(参考例1)
表9に記載の寸法とすること以外は実施例12と同様にして、底面カバーと補強部材を得た。底面カバーと補強部材によって形成される中空構造S1,空間S3内に電子部品を配置し、接合部を実施例30と同様に超音波溶着機で接合した。また、天面カバーとして、液晶ディスプレイを準備し、両面テープで底面部材と接合した。参考例1で得られた電子機器における成形条件および評価結果は以下の表9に示す。
【0116】
(比較例1)
補強部材を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、筐体を得た。比較例1における成形条件および評価結果は以下の表10に示す。
【0117】
(比較例2)
材料1と材料2を積層した積層体を底面カバーの材料として用いること以外は、実施例1と同様にして、筐体を得た。比較例1における成形条件および評価結果は以下の表10に示す。
【0118】
(比較例3,4)
表10に記載の寸法とすること以外は、実施例1と同様にして、筐体を得た。比較例3,4における成形条件および評価結果は以下の表10に示す。
【0119】
〔評価〕
実施例で得られた筐体は、高いねじり剛性を発現することが確認された。中でも、実施例1は非常に高いねじり剛性を発現しつつ、中空構造の割合が高いため、中空構造の内部に電子機器などを多く搭載可能な筐体であった。実施例8,9は、別の補強部材の効果もあり、ねじり剛性のみならず、たわみ剛性も発現することが確認された。また、実施例9は、静的な荷重のみならず、動的な荷重(衝撃)にも効果を発現した。実施例11〜21,29,30は熱溶着により天面カバーと補強部材が接合されているため、高いねじり剛性やたわみ剛性を発現しつつ、加熱により接合部を解体することが可能であるため、修理やリサイクルの観点で好ましい。また、実施例10〜21,29,30は、補強部材と底面カバーとが直接接合されているため、接着剤やホットメルト樹脂などを用いた場合と比較して重量の増加が少なく、軽量化の観点から好ましい。
【0120】
実施例22〜25,29は、底面カバーの力学特性の高い金属材料を用いることにより、高いねじり剛性のみならず、たわみ剛性も発現した。また、熱伝導率が高い材料でもあるため、熱特性の観点からも好ましい。実施例26は、底面カバーに電磁波透過性を有する非導電材料を用いているため、高いねじり剛性のみならず、電波通信を可能とする観点から好ましい。実施例27,28は、各部材の薄肉化を図ったものであり、ねじり剛性を維持しつつ、軽量化および筐体の薄肉化にも貢献する。実施例30は、各部材に樹脂材料を用いており、たわみ剛性は劣るが、ねじり剛性を発現することを確認した。また、参考例1は、筐体の活用方法として、中空構造内に電子部品を配置し、天面カバーとして液晶ディスプレイを用いて電子機器を作製した。本発明の要件を満たすことにより、高いねじり剛性とたわみ剛性を発現した電子機器を提供することが可能であることを確認した。
【0121】
一方、比較例1,2は、ねじりに対して非常に弱く、内部の電子部品が破損する可能性のある筐体であった。また、比較例3,4も補強部材を用いているが、本発明の要件を満たしておらず、満足するねじり剛性を発現することは不可能であった。
【0122】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
本発明の第1の実施形態である筐体1は、底面カバー2と、天面カバー4と、底面カバー2と天面カバー4とによって区画された空間内に配置された、平面部31と、平面部31の周縁部に立設された立ち壁部32と、立ち壁部32の周縁部から延伸する接合部33と、を有する補強部材3と、を備え、補強部材3の接合部33が、底面カバー2に接合されている筐体であって、接合部33の面積が10cm