特許第6168273号(P6168273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168273
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 648G
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-229139(P2012-229139)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-82318(P2014-82318A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137062
【弁理士】
【氏名又は名称】五郎丸 正巳
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 彰夫
(72)【発明者】
【氏名】太田 喬
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−219424(JP,A)
【文献】 特開2012−156264(JP,A)
【文献】 特開2005−217226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を用いて基板を処理するための基板処理装置であって、
基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板の表面に、複数種の処理液を選択的に供給するための処理液供給手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板を回転させる基板回転手段と、
前記基板を加熱するためのヒータを、前記基板保持手段から独立して支持するヒータ支持部材と、
前記ヒータと前記基板保持手段に保持されている基板とが接近/離反するように、前記基板保持手段および前記ヒータ支持部材の少なくとも一方を移動させる移動手段と
前記移動手段を制御して、前記基板保持手段に保持されている基板と前記ヒータとの相対位置を、前記基板に供給される処理液の種類に対応して定められた位置に配置する制御部とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記ヒータは、前記基板保持手段に保持されている基板と平行に対向する対向面を有し、その対向面の輻射熱により当該基板を加熱するものであり、
前記対向面は、単位面積当たりの発熱量を互いに異ならせることが可能な複数の対向領域に区分けされている、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記複数の対向領域の単位面積当たりの発熱量は、前記基板回転手段による基板の回転による回転軸線から離れるに従って高くなるように設定されている、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記複数の対向領域は、前記基板回転手段による基板の回転による回転軸線を中心とする円形領域と、円形領域の外周を取り囲む一または複数の環状領域と含む、請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
少なくとも1つの前記環状領域は、周方向に複数の分割領域に分割されており、
前記複数の分割領域は、前記対向面の単位面積当たりの発熱量を互いに異ならせることが可能に設けられている、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板保持手段は、板状のベース部と、前記ベース部に取り付けられ、前記ベース部から離隔した状態で基板を支持する基板支持部とを有し、
前記ヒータは、前記ベース部と、前記基板支持部に支持されている基板とによって区画される空間内に収容配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記ヒータ支持部材は、前記ベース部と接することなく当該ベース部を厚み方向に挿通し、一端が前記ヒータに連結された支持ロッドを含む、請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ヒータの出力を、前記基板に供給される処理液の種類に対応する出力に制御する、請求項1〜のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
基板保持手段に保持されている基板を回転させる基板回転工程と、
前記基板回転工程に並行して、前記基板の表面に第1の処理液を供給する第1の処理液供給工程と、
前記基板回転工程に並行して、前記基板の表面に、前記第1の処理液とは液種の異なる第2の処理液を供給する第2の処理液供給工程と、
前記第1の処理液供給工程に並行して、前記基板と、前記基板を加熱するためのヒータとの相対位置を、第1の処理液に対応して定められた第1の位置に配置する第1の配置工程と、
前記第2の処理液供給工程に並行して、前記基板と前記ヒータとの相対位置を、前記第2の処理液に対応して定められ、かつ前記基板および前記ヒータの間隔が前記第1の位置に比べて狭い第2の位置に配置する第2の配置工程とを含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの基板を処理するための基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板の表面に処理液を供給して、その基板の表面を処理液で洗浄する処理などが行われる。
たとえば、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の洗浄処理を実施する基板処理装置は、基板をほぼ水平に保持しつつ、その基板を回転させるスピンチャックと、このスピンチャックによって回転される基板の表面に処理液を供給するためのノズルとを備えている。
【0003】
基板の処理に際しては、スピンチャックのスピンベースごと基板が回転される。そして、回転中の基板の表面の回転中心付近にノズルから薬液が供給される。基板の表面上に供給された薬液は、基板の回転による遠心力を受けて、基板の表面上を周縁部に向けて流れる。これによって、基板の表面の全域に薬液が行き渡り、基板の表面に対する薬液処理が達成される。
【0004】
そして、この薬液処理後には、基板に付着した薬液を純水で洗い流すためのリンス処理が行われる。すなわち、ノズルからスピンチャックによって回転されている基板の表面に純水が供給されて、その純水が基板の回転による遠心力を受けて拡がることにより、基板の表面に付着している薬液が洗い流される。
このような枚葉式の基板処理装置として、たとえば、スピンチャックのスピンベースにヒータを内蔵させ、スピンベースに載置された基板をヒータによって高温に加熱するものが知られている。そのため、基板の表面に接する部分の薬液が昇温して、当該薬液の処理能力を高めることができ、その結果、薬液処理の処理レートを向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−4879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薬液処理(高温処理)の終了後、低温で行うべき処理(低温処理)を行う必要がある場合には、基板の温度が十分に降温するまでの間、低温処理の開始を待つ必要がある。しかしながら、ヒータはオン(駆動状態)からオフにされた後も直ぐには降温しない。そのため、ヒータがオフにされた後も暫くは、ヒータは基板を加熱し続ける。そのため、ヒータの温度が十分に降温するのに長期間を要し、その結果、全体の処理時間が長くなるおそれがある。
【0007】
また、薬液処理(高温処理)において、スピンベースの表面温度(ヒータの温度)を極めて高温に昇温させる場合がある。しかしながら、回転可能なスピンベースに内蔵されたヒータへの給電を、回転電気接点を介して行う必要がある関係上、ヒータへの給電量は限られており、そのため、ヒータの設定温度に上限がある。したがって、基板を所望の高温まで加熱できない事態が生じるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ヒータを用いた高温処理後、直ちに低温処理を実行することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、ヒータを用いて基板を所望の高温まで加熱することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、処理液を用いて基板(W)を処理するための基板処理装置(1;100;200;300)であって、基板を保持する基板保持手段(2;301)と、前記基板保持手段に保持されている基板の表面に、複数種の処理液を選択的に供給するための処理液供給手段(4,5,30,35;309)と、前記基板保持手段に保持されている基板を回転させる基板回転手段(14;303,305)と、前記基板を加熱するためのヒータ(3;103;203;311)を、前記基板保持手段から独立して支持するヒータ支持部材(25;313)と、前記ヒータと前記基板保持手段に保持されている基板とが接近/離反するように、前記基板保持手段および前記ヒータ支持部材の少なくとも一方を移動させる移動手段(23;312)と、前記移動手段を制御して、前記基板保持手段に保持されている基板と前記ヒータとの相対位置を、前記基板に供給される処理液の種類に対応して定められた位置に配置する制御部とを含む、基板処理装置である。
【0010】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符合を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。
この構成によれば、ヒータと、基板保持手段に保持されている基板との間隔を変更することができる。ヒータと基板との間隔が狭い状態では、ヒータにより基板が高温に加熱される。そして、この状態から、ヒータと基板との間隔を大きく広げることにより、基板に与える熱量を低減させることができ、これにより、基板を冷却することができる。すなわち、ヒータを用いた高温処理後、短時間のうちに、低温処理を実行することができる。
【0011】
また、ヒータが基板保持手段に支持されていないので、基板の回転中であっても、ヒータは回転せずに静止している。つまり、ヒータを回転可能な構成とする必要はなく、そのため、ヒータへの給電を、回転電気接点を介して行う必要がない。そのため、ヒータへの給電量が制限されないので、基板を所望の高温まで加熱することができる。
請求項2に記載の発明は、前記ヒータは、前記基板保持手段に保持されている基板と平行に対向する対向面(29;129;239)を有し、その対向面の輻射熱により当該基板を加熱するものであり、前記対向面は、単位面積当たりの発熱量を互いに異ならせることが可能な複数の対向領域(29A,29B,29C;104;201)に区分けされている、請求項1に記載の基板処理装置である。
【0012】
たとえば、ヒータの対向面が大面積化すると、対向面の面内全域でヒータの温度を均一に維持することは困難になる。
この構成によれば、ヒータの対向面を複数の対向領域に分割し、対向領域を個別に温度調節する。そのため、例えば複数の対向領域を互いに均一な温度に調整することにより、対向面の全域を均一温度に保つことができる。
【0013】
請求項3に記載のように、前記複数の対向領域の単位面積当たりの発熱量は、前記基板回転手段による基板の回転による回転軸線(A1)から離れるに従って高くなるように設定されていてもよい。
たとえば、処理液供給手段から基板の表面の中央部に、高温の処理液が供給される場合、処理液は基板の表面の中央部に供給された直後は高温であるが、基板の中央部から基板の周縁部に向けて流れる過程で、その液温が低下してしまう。
【0014】
そのため、基板の表面において、その中央部で処理液の温度が相対的に高くなり、周縁部で処理液の温度が相対的に低くなってしまい、処理液と周辺雰囲気等との熱交換により、基板表面の中央部の温度が相対的に高くなり、基板表面の周縁部の温度が相対的に低くなってしまう。その結果、基板の表面の中央部で処理液による処理が速く進み、基板の表面の周縁部で処理液に処理が相対的に遅く進むといった、基板の表面における処理レートのばらつきを生じる。
【0015】
この構成によれば、複数の対向領域の単位面積当たりの発熱量を、基板の回転による回転軸線から離れるに従って高くなるように設定することにより、処理液の温度を基板の全域で等しくさせることができる。これにより、基板の表面の全域に、処理液による均一な処理を施すことが可能である。
この場合、請求項4に記載のように、前記複数の対向領域は、前記回転軸線を中心とする円形領域(29A)と、円形領域の外周を取り囲む一または複数の環状領域(29B,29C;29B,104)と含んでいてもよい。
【0016】
請求項5に記載の発明は、少なくとも1つの前記環状領域は、周方向に複数の分割領域(104)に分割されており、前記複数の分割領域は、前記対向面の単位面積当たりの発熱量を互いに異ならせることが可能に設けられている、請求項4記載の基板処理装置である。
ヒータの対向面が大面積化する場合、対向面の周方向に関し、ヒータの温度を均一に維持することは困難になる。
【0017】
この構成によれば、ヒータの対向面を周方向に複数の対向領域に分割している、また、対向領域を個別に温度調節可能である。これにより、ヒータの対向面が大面積化する場合であっても、対向面を、周方向に関して均一温度に保つことができる。
請求項6に記載のように、前記基板保持手段は、板状のベース部(12)と、前記ベース部に取り付けられ、前記ベース部から離隔した状態で基板を支持する基板支持部(13)とを有し、前記ヒータは、前記ベース部と、前記基板支持部に支持されている基板とによって区画される空間(39)内に収容配置されていてもよい。
【0018】
請求項7に記載の発明は、前記ヒータ支持部材は、前記ベース部と接することなく当該ベース部を厚み方向に挿通し、一端が前記ヒータに連結された支持ロッド(25)を含む、請求項6に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、支持ロッドが、ベース部と接することなく、当該ベース部を厚み方向に挿通している。そのため、ベース部と基板との間の空間に収容配置されたヒータを、基板保持手段から独立した状態で支持することができる。これにより、このようなヒータの支持を比較的簡単な構成で実現することができる
た、請求項に記載のように、前記制御部は、前記ヒータを、前記基板に供給される処理液の種類に対応する出力に制御していてもよい。
前記の目的を達成するための請求項9記載の発明は、基板保持手段(2;301)に保持されている基板(W)を回転させる基板回転工程と、前記基板回転工程に並行して、前記基板の表面に第1の処理液を供給する第1の処理液供給工程と、前記基板回転工程に並行して、前記基板の表面に、前記第1の処理液とは液種の異なる第2の処理液を供給する第2の処理液供給工程と、前記第1の処理液供給工程に並行して、前記基板と、前記基板を加熱するためのヒータ(3;103;203;311)との相対位置を、第1の処理液に対応して定められた第1の位置に配置する第1の配置工程と、前記第2の処理液供給工程に並行して、前記基板と前記ヒータとの相対位置を、前記第2の処理液に対応して定められ、かつ前記基板および前記ヒータの間隔が前記第1の位置に比べて狭い第2の位置に配置する第2の配置工程とを含む、基板処理方法である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2図1に示すヒータの構成を示す斜視図である。
図3図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4図1に示す基板処理装置によって実行されるレジスト除去処理の第1処理例について説明するための工程図である。
図5図4の処理例を説明するためのタイミングチャートである。
図6A-6C】図4の処理例を説明するための模式的な図である。
図6D-6F】図6Cに続く工程を説明するための模式的な図である。
図6G-6I】図6Fに続く工程を説明するための模式的な図である。
図6J図6Iに続く工程を説明するための模式的な図である。
図7図1に示す基板処理装置によって実行されるレジスト除去処理の第2処理例について説明するためのタイミングチャートである。
図8】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す平面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す平面図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の構成を模式的に示す断面図である。基板処理装置1は、たとえば基板の一例としてのシリコンウエハ(以下、「ウエハ」という)Wの表面(主面)に不純物を注入するイオン注入処理やドライエッチング処理の後に、そのウエハWの表面から不要になったレジストを除去するための処理に用いられる枚葉式の装置である。
【0021】
基板処理装置1は、隔壁(図示しない)により区画された処理室6内に、ウエハWを水平に保持して回転させるスピンチャック(基板保持手段)2と、スピンチャック2に保持されているウエハWの下面に対向配置され、ウエハWを下方から加熱するためのヒータ3と、スピンチャック2に保持されているウエハWの表面(上面)に、硫酸過酸化水素水混合液(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:SPM液)を供給するための第1薬液ノズル(処理液供給手段)4と、スピンチャック2に保持されているウエハWの表面(上面)に、SC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)を供給するための第2薬液ノズル(処理液供給手段)5とを備えている。
【0022】
スピンチャック2として、たとえば挟持式のものが採用されている。スピンチャック2は、鉛直に延びる筒状の回転軸11と、回転軸11の上端に水平姿勢に取り付けられた円板状のスピンベース(ベース部)12と、スピンベース12に配置された複数個の挟持部材(基板支持部)13と、回転軸11に連結されたスピンモータ(基板回転手段)14とを備えている。スピンチャック2は、各挟持部材13をウエハWの周端面に接触させることにより、ウエハWを周囲から挟んで保持することができる。そして、ウエハWが複数個の挟持部材13に保持された状態で、スピンモータ14の回転駆動力が回転軸11に入力されることにより、ウエハWの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりにウエハWが回転する。
【0023】
第1薬液ノズル4は、たとえば、連続流の状態でSPM液を吐出するストレートノズルである。第1薬液ノズル4には、SPM液供給源からの所定の高温(たとえば約160℃)のSPM液が供給されるSPM液供給管16が接続されている。SPM液供給管16には、SPM液供給管16を開閉するためのSPM液バルブ17が介装されている。SPM液バルブ17が開かれると、SPM液供給管16から第1薬液ノズル4にSPM液が供給され、また、SPM液バルブ17が閉じられると、SPM液供給管16から第1薬液ノズル4へのSPM液の供給が停止される。第1薬液ノズル4には、第1ノズル移動機構18が結合されている。第1ノズル移動機構18は、スピンチャック2に保持されるウエハWの回転中心の上方(回転軸線A1上)と、スピンチャック2の側方位置に設けられたホームポジションとの間で第1薬液ノズル4を移動させる。
【0024】
第2薬液ノズル5は、たとえば、連続流の状態でSC1を吐出するストレートノズルである。第2薬液ノズル5には、所定の高温(たとえば約60℃)に温度調節されたSC1供給源からのSC1が供給されるSC1供給管19が接続されている。SC1供給管19には、SC1供給管19を開閉するためのSC1バルブ20が介装されている。SC1バルブ20が開かれると、SC1供給管19から第2薬液ノズル5にSC1が供給され、また、SC1バルブ20が閉じられると、SC1供給管19から第2薬液ノズル5へのSC1の供給が停止される。第2薬液ノズル5には、第2ノズル移動機構21が結合されている。第2ノズル移動機構21は、スピンチャック2に保持されるウエハWの回転中心の上方(回転軸線A1上)と、スピンチャック2の側方位置に設けられたホームポジションとの間で第2薬液ノズル5を移動させる。
【0025】
基板処理装置1は、さらに、常温リンス液ノズル(処理液供給手段)30と高温リンス液ノズル(処理液供給手段)35とを備えている。常温リンス液ノズル30は、たとえば、リンス液の一例としてのDIW(脱イオン水)を連続流の状態で吐出するストレートノズルである。常温リンス液ノズル30からは、常温(たとえば約25℃。処理室6の室温(RT)と同じ温度)のDIWが吐出される。常温リンス液ノズル30は、その吐出口を、スピンチャック2に保持されるウエハWの上面中央部に向けた状態で配置されている。常温リンス液ノズル30には、リンス液供給源からのDIWが常温のまま供給される常温リンス液供給管31が接続されている。常温リンス液供給管31には、常温リンス液供給管31を開閉するための常温リンス液バルブ32が介装されている。常温リンス液バルブ32が開かれると、常温リンス液供給管31から常温リンス液ノズル30に常温のDIWが供給され、常温リンス液ノズル30から、ウエハWの上面中央部に向けて常温のDIWが吐出される。
【0026】
高温リンス液ノズル35は、たとえば、リンス液の一例としてのDIW(脱イオン水)を連続流の状態で吐出するストレートノズルである。高温リンス液ノズル35からは、所定の高温(たとえば約80℃)のDIWが吐出される。高温リンス液ノズル35は、その吐出口を、スピンチャック2に保持されるウエハWの上面中央部に向けた状態で配置されている。高温リンス液ノズル35には、リンス液供給源からのDIWが高温に加熱された状態で供給される高温リンス液供給管36が接続されている。高温リンス液供給管36には、高温リンス液供給管36を開閉するための高温リンス液バルブ37が介装されている。高温リンス液バルブ37が開かれると、高温リンス液供給管36から高温リンス液ノズル35に高温のDIWが供給され、高温リンス液ノズル35から、ウエハWの上面中央部に向けて高温のDIWが吐出される。
【0027】
ヒータ3は、ウエハWとほぼ同径またはウエハWよりもやや小径を有する円板状を有し、水平姿勢をなしている。ヒータ3は、回転軸線A1と同心円板状の第1ヒータプレート3Aと、第1ヒータプレート3Aの外周を取り囲む円環状の第2ヒータプレート3Bと、第2ヒータプレート3Bの外周を取り囲む円環状の第3ヒータプレート3Cとを備えている。ヒータ3は、スピンベース12の上面と、スピンチャック2に保持されるウエハWの下面との間の空間39に配置されている。
【0028】
図2は、ヒータ3の構成を示す斜視図である。図1および図2を参照しつつ、ヒータ3について説明する。
第1ヒータプレート3Aは、円板状をなしており、セラミック製の本体に第1抵抗28A(図1参照)が内蔵されている。第1ヒータプレート3Aの上面には、水平平坦な円形の第1対向面(円形領域)29Aが形成されている。
【0029】
第2ヒータプレート3Bは、円環板状をなしており、セラミック製の本体に第2抵抗28B(図1参照)が内蔵されている。第2ヒータプレート3Bの上面には、水平平坦な円環状の第2対向面(環状領域)29Bが形成されている。
第3ヒータプレート3Cは、円環板状をなしており、セラミック製の本体に第3抵抗28C(図1参照)が内蔵されている。第3ヒータプレート3Cの上面には、水平平坦な円環状の第3対向面(環状領域)29Cが形成されている。
【0030】
第2ヒータプレート3Bは、連結具(図示しない)を介して第1ヒータプレート3Aに連結固定されている。その固定状態で、第2ヒータプレート3Bの内周と第1ヒータプレート3Aの外周との間にはほぼ隙間がない。第3ヒータプレート3Cは、連結具(図示しない)を介して第2ヒータプレート3Bに連結固定されている。その固定状態で、第3ヒータプレート3Cの内周と第2ヒータプレート3Bの外周との間にはほぼ隙間がない。
【0031】
第1〜第3ヒータプレート3A〜3Cを互いに連結した状態で、第1〜第3対向面29A〜29Cは同一の水平面に含まれている。第1対向面29Aは、ウエハWの下面における中央領域(ウエハWの回転中心を中心とするウエハ径の約1/3の径を有する円形の領域)に対向している。第2対向面29Bは、ウエハWの下面におけるミドル領域(中央領域と次に述べる外周領域とを除く領域)に対向している。第3対向面29Cは、ウエハWの下面における外周領域(ウエハWの回転中心を中心とする円であって、ウエハW径の約2/3の径を有する円の外側領域)に対向している。ヒータ3は、支持ロッド(ヒータ支持部材)25によって下方から支持されている。
【0032】
支持ロッド25は、スピンベース12および回転軸11を上下方向に貫通する貫通穴24を回転軸線A1に沿って上下方向(スピンベース12の厚み方向)に挿通している。支持ロッド25の上端(一端)は、ヒータ3に固定されている。また、支持ロッド25の下端(他端)が、スピンチャック2の下方の周辺部材に固定されることにより、支持ロッド25が鉛直姿勢に姿勢保持されている。支持ロッド25は貫通穴24においてスピンベース12または回転軸11と接触しておらず、そのため、ヒータ3はスピンチャック2に支持されていない。すなわち、ヒータ3とスピンチャック2とは互いに独立している。したがって、スピンチャック2がウエハWを回転させている場合でも、ヒータ3は回転せずに静止(非回転状態)している。
【0033】
貫通穴24には、第1抵抗28Aへの給電線26A、第2抵抗28Bへの給電線26B、および第3抵抗28Cへの給電線26Cが挿通されている。給電線26A,26B,26Cの上端は、それぞれ、第1、第2および第3抵抗28A,28B,28Cに接続されている。この基板処理装置1では、抵抗28A,28B,28Cへの給電を、回転電気接点を介さずに行っている。
【0034】
仮に、回転可能な構成のヒータを採用する場合、ヒータへの給電を、回転電気接点を介して行う必要がある。この場合、回転電気接点を介在させるためにヒータへの給電量は限られ、その結果、ウエハWを所望の高温まで加熱できないおそれがある。
これに対し、基板処理装置1では、抵抗28A,28B,28Cへの給電を、回転電気接点を介さずに行うので、給電量が制限されない。これにより、ウエハWを所望の高温まで加熱することが可能である。
【0035】
第1抵抗28Aへの給電により、第1抵抗28Aが発熱し、第1ヒータプレート3Aが発熱状態になる。これにより、第1対向面29Aが発熱面として機能する。また、第2抵抗28Bへの給電により、第2抵抗28Bが発熱し、第2ヒータプレート3Bが発熱状態になる。これにより、第2対向面29Bが発熱面として機能する。さらに、第3抵抗28Cへの給電により、第3抵抗28Cが発熱し、第3ヒータプレート3Cが発熱状態になる。これにより、第3対向面29Cが発熱面として機能する。第1対向面29A、第2対向面29Bおよび第3対向面29Cによって対向面29が構成されている。このとき、第1、第2および第3抵抗28A,28B,28Cへの給電はそれぞれ個別に行われており、各抵抗28A,28B,28Cへの給電量も個別に制御されている。そのため、第1、第2および第3ヒータプレート3A,3B,3Cの発熱量(第1対向面29A、第2対向面29Bおよび第3対向面29Cの表面温度)を個別に制御することができる。
【0036】
支持ロッド25には、ヒータ3を水平姿勢のまま昇降させるためのヒータ昇降機構(移動手段)23が結合されている。ヒータ昇降機構23は、たとえばボールねじやモータによって構成されている。ヒータ昇降機構23の駆動により、ヒータ3は、その下面がスピンベース12の上面に所定の微小間隔を隔てた第0高さ位置(離反位置。図6A等参照)HL0と、ヒータ3の対向面29が、ウエハWの下面に微小間隔W3を隔てて対向配置される第3高さ位置(近接位置。図6B等参照)HL3との間で昇降させられる。これにより、ヒータ3とウエハWとの間隔を変更することができる。
【0037】
図3は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御部40を備えている。制御部40は、スピンモータ14ならびに第1および第2ノズル移動機構18,21などの動作を制御する。また、制御部40は、ヒータ3の発熱量を制御する。さらに、制御部40は、SPM液バルブ17、SC1バルブ20、常温リンス液バルブ32、高温リンス液バルブ37の開閉動作を制御する。
【0038】
図4は、基板処理装置1によって実行されるレジスト除去処理の第1処理例について説明するための工程図である。図5は、主として、次に述べるステップS3のSPM液供給工程からステップS7のスピンドライにおける制御部40の制御内容を説明するためのタイミングチャートである。図6A図6Jは、第1処理例について説明するための模式的な図である。なお、図6A図6Jでは、スピンベース12よりも下方の構成の図示を省略している。
【0039】
以下では、図1図5および図6A図6Jを参照して、レジスト除去処理の第1処理例について説明する。
なお、この実施形態では、オン状態におけるヒータ3の第1、第2および第3ヒータプレート3A,3B,3Cに関し、第3対向面29Cの単位面積当たりの発熱量を、第2対向面29Bの単位面積当たりの発熱量よりも多く設定し、また、第2対向面29Bの単位面積当たりの発熱量を、第1対向面29Aの単位面積当たりの発熱量よりも多く設定している。換言すると、第1〜第3対向面29A,29B,29Cの単位面積当たりの発熱量は、回転軸線A1から離れるに従って高くなるように設定されている。また、別の観点からみると、第3対向面29Cの温度TC1を第2対向面29Bの表面温度TB1よりも高く設定するとともに、また第2対向面29Bの表面温度TB1を第1対向面29Aの表面温度TA1よりも高く設定している(TC1>TB1>TA1)。
【0040】
ヒータ3がオンされていると、ヒータ3がウエハWに近接配置されることにより、ウエハWがヒータ3によって加熱される。
レジスト除去処理に際しては、搬送ロボット(図示しない)が制御されて、処理室6(図1参照)内に未処理のウエハWが搬入される(ステップS1)。図6Aに示すように、ウエハWは、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック2に受け渡される。このとき、ヒータ3は、すでにオン(駆動状態)にされており、また、ヒータ3の高さ位置は、第0高さレベルHL0である。さらに、ウエハWの搬入の妨げにならないように、第1および第2薬液ノズル4,5は、それぞれホームポジションに配置されている。また、第1処理例では、レジスト除去処理中において、第1〜第3対向面29A,29B,29Cの単位面積当たりの発熱量は、それぞれ予め定める値のまま変化しない。換言すると、ヒータ3の出力レベルが変化しない。
【0041】
スピンチャック2にウエハWが保持されると、図6Bに示すように、制御部40はヒータ昇降機構23を制御して、ヒータ昇降機構23を制御して、ヒータ3を、最も上方の第3高さレベルHL3に上昇させる。ヒータ3が第3高さレベルHL3にあるとき、スピンチャック2に保持されているウエハWの下面とヒータ3の対向面29との間隔W3はたとえば0.5mmである。
【0042】
ヒータ3が第3高さレベルHL3にある状態で、スピンチャック2に保持されているウエハWは、ヒータ3からの輻射熱により加熱される。ヒータ3の上昇後において、第1、第2および第3対向面29A,29B,29CとウエハWの下面とが平行をなしている。そのため、ウエハWにおける第3対向面29Cに対向する部分にヒータ3から与えられる単位面積当たりの熱量は、ウエハWにおける第2対向面29Bに対向する部分に与えられる単位面積当たりの熱量よりも多い。また、ウエハWにおける第2対向面29Bに対向する部分にヒータ3から与えられる単位面積当たりの熱量は、ウエハWにおける第1対向面29Aに対向する部分に与えられる単位面積当たりの熱量よりも多い。換言すると、ウエハWに与えられる単位面積当たりの熱量は、回転軸線A1から離れるに従って高くなるように設定されている。ヒータ3による加熱により、ウエハWの各所においてばらつきはあるがウエハWの表面温度はおよそ160℃程度に加熱される。
【0043】
また、制御部40は、第1ノズル移動機構18を制御して、第1薬液ノズル4をウエハWの回転中心の上方に移動させる。
ヒータ3の上昇が完了すると、図6Cに示すように、制御部40はスピンモータ14を制御して、ウエハWを回転開始させる(ステップS2)。ウエハWは所定の液処理速度(たとえば、500−1000rpm)まで加速され、その後、その液処理速度に維持される。
【0044】
また、第1薬液ノズル4の移動が完了すると、図6Cに示すように、制御部40は、SPM液バルブ17を開いて、第1薬液ノズル4からたとえば約160℃のSPM液を吐出する。第1薬液ノズル4から吐出されるSPM液は、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される(ステップS3:SPM液供給工程)。ウエハWの表面に供給されたSPM液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁部に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面の全域にSPM液が行き渡り、SPM液に含まれるペルオキソ一硫酸の強酸化力によって、ウエハWの表面に形成されているレジストが剥離される。ウエハWの表面から剥離したレジストは、SPM液により押し流され、ウエハWの表面上から除去される。これにより、ウエハWの表面上のレジストとSPM液との反応が促進し、ウエハWの表面からのレジストの除去が進行する。
【0045】
ウエハWの表面の中央部に供給されたSPM液は、周辺雰囲気等と熱交換を行う。そのため、ウエハWの表面を中央部から周縁部に向けて流れる過程で、SPM液からウエハWから熱が奪われる。そして、SPM液とウエハWとの間で熱交換される結果、ウエハWの周縁部から熱が奪われるおそれがある。ウエハWから奪われる熱量は、ウエハWの表面の周縁部に向かうに従って大きくなる。
【0046】
しかしながら、この実施形態では、ウエハWに、回転軸線A1から離れるに従って、高い単位面積当たりの熱量が与えられるようになっている。より具体的には、このときウエハWの各所において、ウエハWに与えられる熱量からウエハWから奪われる熱量が均一になるように、第1、第2および第3対向面29A,29B,29Cの単位面積当たりの発熱量が設定されている。その結果、ウエハWの表面温度は、その全域において約160℃で均一に分布する。これにより、ウエハWの表面の全域に、SPM液による処理を均一に施すことができる。
【0047】
第1薬液ノズル4からのSPM液の吐出開始から所定のレジスト除去時間が経過すると、制御部40は、SPM液バルブ17を閉じて、第1薬液ノズル4をウエハWの回転中心上からホームポジションに戻す。また、図6Dに示すように、制御部40は、ヒータ昇降機構23を制御して、ヒータ3を第3高さレベルHL3よりも下方の高さ位置である第2高さレベルHL2に下降させる。ヒータ3が第2高さレベルHL2にあるとき、スピンチャック2に保持されているウエハWの下面とヒータ3の対向面29との間隔W2はたとえば10mmである。この状態で、スピンチャック2に保持されているウエハWは、ヒータ3からの輻射熱により、各所においてばらつきはあるがおよそ80℃程度に加熱される。すなわち、ヒータ3の下降により、それまで160℃程度であったウエハWが冷却される。
【0048】
そして、ウエハWの回転速度を液処理速度に維持しつつ、図6Eに示すように、制御部40は、高温リンス液バルブ37を開いて、高温リンス液ノズル35の吐出口からウエハWの回転中心付近に向けて約80℃のDIWを供給する(ステップS4:中間リンス工程)。ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上をウエハWの周縁部に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着しているSPM液がDIWによって洗い流される。このとき、表面上を流れるDIWに、ヒータ3からの熱がウエハWを介して与えられるので、DIWが80℃から温度降下することなく、ウエハWの周縁部まで流れる。
【0049】
それまで160℃の高温に加熱されていたウエハWに、常温のDIWをいきなり供給するとウエハWに損傷が発生するおそれがある。そのため、約80℃に温められたDIWを用いてリンスが行われる。しかしこの場合でも、ウエハWが少なくとも90℃程度に温度降下するまで、ステップS4の中間リンス工程の開始を待つ必要がある。
しかしながら、ヒータ3はオンからオフにされた後も直ぐには降温しない。そのため、ヒータ3を第3高さレベルHL3に配置させていると、ヒータ3がオフにされた後も暫くは、ヒータ3は大きな熱量でウエハWを加熱し続ける。そのため、ヒータ3の温度が十分に降温するのにかなりの長期間を要し、その結果、レジスト除去処理全体の処理時間が長くなるおそれがある。
【0050】
これに対し、この実施形態では、ステップS3のSPM液供給工程の終了後に、ヒータ3とウエハWとの間隔を間隔W3から間隔W2に大きく広げることにより、ウエハWへの加熱量を低減させている。これにより、ウエハWの冷却することができる。その結果、ステップS3のSPM液供給工程での終了後短時間のうちに、ステップS4の中間リンス工程を開始することができる。
【0051】
DIWの供給が所定の中間リンス時間にわたって続けられると、高温リンス液バルブ37が閉じられて、ウエハWの表面へのDIWの供給が停止される。また、図6Fに示すように、制御部40は、ヒータ昇降機構23を制御して、ヒータ3を第2高さレベルHL2よりも下方の高さ位置である第1高さレベルHL1に下降させる。ヒータ3が第1高さレベルHL1にあるとき、スピンチャック2に保持されているウエハWの下面とヒータ3の対向面29との間隔W1はたとえば20mmである。
【0052】
ヒータ3が第1高さレベルHL1にある状態で、スピンチャック2に保持されているウエハWは、ヒータ3からの輻射熱により加熱される。ヒータ3が第1高さレベルHL1まで下降された状態で、第1、第2および第3対向面29A,29B,29CとウエハWの下面とが平行をなしている。そのため、ウエハWにおける第3対向面29Cに対向する部分にヒータ3から与えられる単位面積当たりの熱量は、ウエハWにおける第2対向面29Bに対向する部分に与えられる単位面積当たりの熱量よりも多い。また、ウエハWにおける第2対向面29Bに対向する部分にヒータ3から与えられる単位面積当たりの熱量は、ウエハWにおける第1対向面29Aに対向する部分に与えられる単位面積当たりの熱量よりも多い。換言すると、ウエハWに与えられる単位面積当たりの熱量は、回転軸線A1から離れるに従って高くなるように設定されている。ヒータ3による加熱により、ウエハWの各所においてばらつきはあるがウエハWの表面温度はおよそ60℃程度に加熱される。すなわち、ヒータ3の下降により、ウエハWの表面温度がそれまでの約80℃から約60℃まで下げられる。また、制御部40は、第2ノズル移動機構21を制御して、第2薬液ノズル5をウエハWの上方位置に移動させる。
【0053】
また、第2薬液ノズル5の移動が完了すると、図6Gに示すように、制御部40は、SC1バルブ20を開いて、第2薬液ノズル5からたとえば約60℃のSC1を吐出する。SC1が約60℃の液温を有しているので、当該SC1の処理能力が高い。第2薬液ノズル5から吐出されるSC1は、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される(ステップS5:SC1供給工程)。ウエハWの表面に供給されたSC1は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁部に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面の全域に、SC1がむらなく供給され、SC1の化学的能力により、ウエハWの表面に付着しているレジスト残渣およびパーティクルなどの異物を除去することができる。
【0054】
ウエハWの表面の中央部に供給されたSC1液は、周辺雰囲気等と熱交換を行う。そのため、ウエハWの表面を中央部から周縁部に向けて流れる過程で、SC1からウエハWから熱が奪われる。そして、SC1とウエハWとの間で熱交換される結果、ウエハWの周縁部から熱が奪われるおそれがある。ウエハWから奪われる熱量は、ウエハWの表面の周縁部に向かうに従って大きくなる。
【0055】
しかしながら、この実施形態では、ウエハWに、回転軸線A1から離れるに従って、高い単位面積当たりの熱量が与えられるようになっている。より具体的には、このときウエハWの各所において、ウエハWに与えられる熱量からウエハWから奪われる熱量が均一になるように、第1、第2および第3対向面29A,29B,29Cの単位面積当たりの発熱量が設定されている。その結果、ウエハWの表面温度は、その全域において約60℃で均一に分布する。これにより、ウエハWの表面の全域に、SC1による処理を均一に施すことができる。
【0056】
SC1の供給が所定のSC1供給時間にわたって続けられると、制御部40は、SC1バルブ20を閉じる。また、図6Hに示すように、制御部40は、ヒータ昇降機構23を制御して、ヒータ3を第1高さレベルHL1よりも下方の高さ位置である第0高さレベルHL0に下降させる。ヒータ3が第0高さレベルHL0にあるとき、スピンチャック2に保持されているウエハWの下面とヒータ3の対向面29との間隔W0はたとえば40mmである。この状態では、ヒータ3とスピンチャック2に保持されているウエハWとの間隔が広がり過ぎて、ヒータ3からウエハWに届く輻射熱が少なく、ウエハWに及ぼす影響が小さい。換言すると、ウエハWはヒータ3によっては加熱されない。このとき、ウエハWの表面温度は常温のままである。
【0057】
そして、ウエハWの回転速度が液処理速度に維持された状態で、図6Iに示すように、制御部40は、常温リンス液バルブ32を開いて、常温リンス液ノズル30の吐出口からウエハWの回転中心付近に向けて常温のDIWを供給する(ステップS6:最終リンス工程)。ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上をウエハWの周縁部に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着しているSC1がDIWによって洗い流される。
【0058】
このとき、ウエハWの表面温度が常温であるので、DIWがウエハWを介して加熱されることはない。
なお、ステップS4の中間リンス工程やステップS6の最終リンス工程において、リンス液として、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、還元水(水素水)、磁気水などを採用することもできる。
【0059】
次いで、次に述べるスピンドライ(ステップS7)が実行されるが、スピンドライの実行に先立って、図6Hに示すように、制御部40はヒータ昇降機構23を制御して、ヒータ3を、第0高さレベルHL0から第1高さレベルHL1に上昇させる。
ヒータ3が第1高さレベルHL1に配置された後、図6Jに示すように、制御部40は、スピンモータ14を駆動して、ウエハWの回転速度を所定の高回転速度(たとえば1500−2500rpm)に上げて、ウエハWに付着しているDIWを振り切って乾燥されるスピンドライを行う(ステップS7)。このスピンドライによって、ウエハWに付着しているDIWが除去される。
【0060】
また、第1高さレベルHL1にあるヒータ3からの輻射熱によって、ウエハWの各所においてばらつきはあるがウエハWの表面温度はおよそ60℃程度に加熱される。そのため、ウエハWに付着しているDIWが蒸発し易くなり、これにより、スピンドライの所要時間を短縮することができる。
スピンドライが予め定めるスピンドライ時間にわたって行われると、制御部40は、スピンモータ14を駆動して、スピンチャック2の回転を停止させる。また、制御部40は、ヒータ3をオフ(非駆動状態)とするとともに、ヒータ昇降機構23を制御して、ヒータ3を第0高さレベルHL0に下降させる。これにより、1枚のウエハWに対するレジスト除去処理が終了し、搬送ロボットによって、処理済みのウエハWが処理室6から搬出される(ステップS8)。
【0061】
次に、基板処理装置1によって実行されるレジスト除去処理の第2処理例について説明する。図7は、第2処理例について説明するためのタイミングチャートである。第2処理例でも、第1処理例と同様、図4に示す各工程が実行される。第2処理例が第1処理例と相違する点は、ヒータ3とウエハWとの間隔だけでなく、ヒータ3の出力レベル(各ヒータプレート3A,3B,3Cの出力)をも、工程ごとに異ならせた点である。
【0062】
図7の第2処理例において、ステップS3のSPM液供給工程(図4参照)では、ヒータ3の単位面積当たりの発熱量が最も多い第3出力レベルPL3に設定される。このSPM液供給工程では、第1処理例と同様、ヒータ3は第3高さレベルHL3にある。このヒータ3による加熱により、ウエハWの各所においてばらつきはあるがウエハWの表面温度はおよそ160℃程度に加熱される。
【0063】
また、ステップS4の中間リンス工程(図4参照)では、第3出力レベルPL3の次にヒータ3の単位面積当たりの発熱量が多い第2出力レベルPL2に設定される。この中間リンス工程では、第1処理例と同様、ヒータ3は第2高さレベルHL2にある。このヒータ3による加熱により、ウエハWの各所においてばらつきはあるがウエハWの表面温度はおよそ80℃程度に加熱される。
【0064】
また、ステップS5のSC1供給工程(図4参照)では、第2出力レベルPL2の次にヒータ3の単位面積当たりの発熱量が多い第1出力レベルPL1に設定される。このSC1供給工程では、第1処理例と同様では、ヒータ3は第1高さレベルHL1にある。このヒータ3による加熱により、ウエハWの各所においてばらつきはあるがウエハWの表面温度はおよそ60℃程度に加熱される。
【0065】
また、ステップS6の最終リンス工程(図5参照)では、ヒータ3の発熱がない第0出力レベルPL0に設定される。この最終リンス工程では、第1処理例と同様、ヒータ3は第0高さレベルHL0にある。この状態では、ウエハWはヒータ3によっては加熱されない。そのため、ウエハWの表面温度は常温(たとえば約25℃。処理室6の室温(RT)と同じ温度)のままである。
【0066】
なお、第0出力レベルPL0の場合に、ヒータ3からの発熱量を、第0高さレベルHL0に位置するヒータ3からの輻射熱がウエハWにほとんど影響を与えない程度の大きさになるように小さく設定することもできる。
このように、ウエハWへの非加熱時においてヒータ3の出力レベルを最小限に落とすことにより、ヒータ3をオン状態に維持しつつ、ウエハWへの加熱を停止することができる。ヒータ3が一旦オフになると、ウエハWを再加熱する際にヒータ3を高温に昇温させるのに長期間を要するおそれがある。これに対し、この場合にはヒータ3をオフにしないので、その後、ウエハWを再加熱する際の昇温のために要する時間を短縮することができる。
【0067】
また、ヒータ3の出力レベルが出力レベルPL0,PL1,PL2,PL3のいずれにある場合でも、第3対向面29Cの単位面積当たりの発熱量が、第2対向面29Bの単位面積当たりの発熱量よりも多く設定され、また、第2対向面29Bの単位面積当たりの発熱量を、第1対向面29Aの単位面積当たりの発熱量よりも多く設定されているのはいうまでもない。
【0068】
また、図7に実線に示すように、ヒータ3の出力レベルをなだらかに(時間をかけて)変化させることもできるが、図7に破線で示すように急激に(極めて短時間に)変化させてもよい。
さらに、図7に実線に示すように、ヒータ3の高さ位置の変更を、ヒータ3の出力レベルの変更と同時に行うこともできるが、図7に破線で示すように、ヒータ3の出力レベルの変更に先立って変更してもよい。
【0069】
図8は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置100の構成を模式的に示す平面図である。図8において、前述の第1実施形態に示された各部に対応する部分には、図1図7の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
基板処理装置100が、第1実施形態に係る基板処理装置1と相違する点は、ヒータ3に代えてヒータ103を設けた点である。ヒータ103は、ヒータ3と同様、ウエハWとほぼ同径またはウエハWよりもやや小径を有する円板状を有し、水平姿勢をなしている。ヒータ103は、第3ヒータプレート3Aに代えて、複数(図8ではたとえば4つ)の分割体102からなるヒータプレート101を備えている。各分割体102は円弧板状をなし、互いに同じ諸元を有している。複数(4つ)の分割体102が組み合わされることにより、円環状のヒータプレート101が形成されている。各分割体102は、第1ヒータプレート3Aと同様、セラミック製の本体に抵抗が内蔵された抵抗方式のセラミックヒータである。各分割体102の表面には、スピンチャック2に保持されたウエハWの下面と対向する対向領域(分割領域)104が形成されている。複数の対向領域104により、対向面129が構成される。
【0070】
この場合、各分割体102の抵抗への給電はそれぞれ個別に行われており、各抵抗への給電量も個別に制御されている。そのため、各分割体102の対向領域104の発熱量(分割体102の表面温度)を個別に制御することができる。
第2実施形態によれば、ヒータ103の対向面129を、周方向に、複数の対向領域104に分割し、各対向領域104を個別に温度調節する。これにより、ヒータ103のように、対向面129が大面積化している場合であっても、対向面129を、周方向に関して均一温度に保つことができる。ゆえに、対向面129の全域を均一温度に保つことができる。
【0071】
ところで、このような構成を採用しても、対向面129の周方向の各所に微小の温度のずれが生じるおそれがある。しかしながら、ウエハWに対する加熱が行われるSPM液供給工程(S3)、中間リンス工程(S4)、SC1供給工程(S5)およびスピンドライ(S7)では、ヒータ103に対してウエハWが回転し、ウエハWの表面の所定位置と対向する対向領域104が次々に変化する。そのため、各対向領域104が大まかに温度均一されていれば、ウエハWの表面温度の均一性を保つことができる。また、前述のような理由から、各対向領域104の発熱量(ウエハWに付与する熱量)が厳密に揃っている必要がないから、各対向領域104の温度制御を簡素化することができる。
【0072】
なお、ヒータプレート101は、複数の分割体102に分割された構成に限られず、1つの円環状の本体に複数の抵抗が内蔵され、各抵抗への給電量が個別に制御可能な構成を採用することもできる。
図9は、本発明の第3実施形態に係る基板処理装置200の構成を模式的に示す平面図である。
【0073】
基板処理装置200が、第1実施形態に係る基板処理装置1と相違する点は、ヒータ3に代えて、ヒータ203を設けた点である。ヒータ203は、ヒータ3と同様、ウエハWとほぼ同径またはウエハWよりもやや小径を有する円板状を有し、水平姿勢をなしている。ヒータ203の対向面229には、当該対向面229を径方向および周方向に分割し、ハムカム状の多数のヒータ部201が形成されている。各ヒータ部201は互いに同じ諸元を有している。各ヒータ部201には抵抗が配置されている。各ヒータ部201の抵抗への給電はそれぞれ個別に行われており、各抵抗への給電量も個別に制御されている。そのため、各ヒータ部201の発熱量(ヒータ部201の表面温度)を個別に制御することができる。
【0074】
第3実施形態によれば、ヒータ203の対向面229を、周方向および径方向の双方に、複数のヒータ部201に分割し、各ヒータ部201を個別に温度調節する。第3実施形態では、複数のヒータ部201の温度(単位面積当たりの発熱量)は、回転軸線A1から離れるに従って高くなるように設定される。すなわち、第1実施形態の場合と同様、対向面229には、回転軸線A1から離れるに従って高くなるような温度分布が形成されている。そのため、ウエハWの表面を流れる処理液(SPM液やSC1等)の温度を、ウエハWの全域で等しくさせることができ、ウエハWの表面の全域に、処理液による均一な処理を施すことができる。
【0075】
また、複数のヒータ部201の温度(単位面積当たりの発熱量)は、周方向に均一温度に設定される。対向面229の各所を周方向に個別に均一温度に制御するので、これにより、ヒータ203のように、対向面229が大面積化する場合であっても、対向面229を、周方向に関して均一温度に保つことができる。
ところで、このような構成を採用しても、対向面229の各所に微小の温度のずれが生じるおそれがある。しかしながら、ウエハWに対する加熱が行われるSPM液供給工程(S3)、中間リンス工程(S4)、SC1供給工程(S5)およびスピンドライ(S7)では、ヒータ203に対してウエハWが回転し、ウエハWの表面の所定位置と対向するヒータ部201が次々に変化する。そのため、各ヒータ部201が大まかに温度均一されていれば、ウエハWの表面温度の均一性を保つことができる。また、前述のような理由から、各ヒータ部201の発熱量(ウエハWに付与する熱量)が厳密に揃っている必要がないから、各ヒータ部201の温度制御を簡素化することができる。
【0076】
また、基板保持手段は、スピンベース等のスピンベースを備えた構成に限られない。
図10は、本発明の第4実施形態に係る基板処理装置300の構成を模式的に示す断面図である。
基板処理装置300が、第1実施形態に係る基板処理装置1と主として相違する点は、基板保持手段として、スピンベースを有さないスピンチャック(基板保持手段)301を備えた点である。また、スピンチャック301が、密閉された内部空間を有する密閉チャンバ302内に収容されている点も基板処理装置1と大きく相違している。
【0077】
スピンチャック301は、鉛直方向に延びる回転軸線A1を回転中心として回転可能に設けられた円環板状のモータロータ(基板回転手段)303と、モータロータ303の上面に配設された複数個(たとえば6つ)の挟持部材304と、密閉チャンバ302の外方で、モータロータ303の側方を取り囲むように配置された円環状のモータステータ305(基板回転手段)とを備えている。モータステータ305は、回転軸線A1を回転中心とする円環状をなしており、ステータ305の内周はロータ303の外周と微小間隔を隔てて配置されている。
【0078】
モータロータ303は、バックヨーク306と、磁石307とを含んでいる。バックヨーク306は、磁束の漏れを防いで磁石307の磁力を最大限にするための磁性部品である。バックヨーク306は、環状であって、軸方向に所定の厚みを有している。磁石307は、複数設けられており、バックヨーク306の外周面において周方向に並ぶように取り付けられている。
【0079】
モータステータ305は、図示しないコイル等で構成されており、次に述べるカップ306の外周壁を挟んで、モータロータ303を取り囲んでいる。
スピンチャック301は、各挟持部材304をウエハWの周端面に接触させることにより、ウエハWを周囲から挟んで保持することができる。そして、ウエハWが複数個の挟持部材304に保持された状態で、モータロータ303およびモータステータ305に図示しない電源から電力が供給されることにより、モータロータ303ごとウエハWが、ウエハWの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転する。
【0080】
密閉チャンバ302は、基板保持回転機構301を収容する有底円筒状のカップ306と、カップ306の上部開口307を閉塞する蓋部材308とを組み合わせて構成されている。カップ306内には、スピンチャック301のモータロータ303および挟持部材304が収容配置されており、とくに、モータロータ303は、カップ306の底壁およびカップ306の外周壁の双方に近接する位置に配置されている。
【0081】
蓋部材308は、開口を下方に向けた有底円筒状をなしている。蓋部材308には、ウエハWの回転軸線A1上の位置に、処理液ノズル(処理液供給手段)309が挿通されている。処理液ノズル309には、前述のSPM液、高温DIW、SC1、DIWを含む処理液が供給され、その処理液が処理液ノズル309の下端に形成された吐出口から吐出されるようになっている。
【0082】
蓋部材308の外周壁の下端には、その全周に渡ってシール環310が配設されている。蓋部材308が閉位置にある状態では、蓋部材308の外周壁の下端と、カップ306の外周壁の上端とが、シール環310を挟んで突き合せられ、蓋部材308とカップ306とによって構成される密閉チャンバ302内が密閉空間に保たれる。
基板処理装置300は、スピンチャック301に保持されているウエハWの下面に対向配置され、ウエハWを下方から加熱するためのヒータ311と、ヒータ311を下方から支持するためのヒータ台313と、ヒータ311を水平姿勢のまま昇降させるためのヒータ昇降機構(移動手段)312とを備えている。ヒータ311は、平面視でモータロータ303の内側の領域に配置されており、第1実施形態のヒータ3と同等の構成である。ヒータ昇降機構312は、たとえばボールねじやモータによって構成されている。ヒータ昇降機構312は、ヒータ台313に結合されて、ヒータ311をヒータ台313ごと昇降させる。
【0083】
この基板処理装置300では、たとえば、前述の第1処理例や第2処理例などを含む種々の処理が実行される。この場合、ヒータ311は、第1実施形態の場合と同様、ヒータ昇降機構312の駆動により、ヒータ311が、第0高さ位置(離反位置。図6A等参照)HL0と、第3高さ位置(近接位置。図6B等参照)HL3との間で昇降させられる。具体的には、ヒータ311の高さ位置は、第0高さレベルHL0、第1高さレベルHL1(図6F等参照)、第2高さレベルHL2(図6D等参照)および第3高さレベルHL3の間で切り換えられる。すなわち、ヒータ311とウエハWとの間隔を変更することができる。
【0084】
この第4実施形態によれば、ヒータ311と基板Wとの間隔が狭い状態では、ヒータ311によりウエハWが高温に加熱される。そして、この状態から、ヒータ311と基板Wとの間隔を大きく広げることにより、ウエハWに与える熱量を低減させることができ、これにより、ウエハWを冷却することができる。その他、第1実施形態に記載した作用効果と同等の作用効果を奏することができる。
【0085】
以上、本発明の4つの実施形態について説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、第4実施形態を、第2実施形態や第3実施形態に組み合わせることができる。すなわち、第4実施形態のヒータ311に代えて、第2実施形態のヒータ103や第3実施形態のヒータ203を採用することができる。
【0086】
また、第1および第2実施形態において、ヒータ3,103が複数のプレートヒータ3A,3B,3C,101によって構成されているものとして説明したが、ヒータが円板状の本体に複数の抵抗が内蔵され、各抵抗への給電量が個別に制御可能な構成であってもよい。
また、第2実施形態において、第3対向面29Cが分割されている構成を例に挙げたが、第1対向面29Aや第2対向面29Bが分割されていてもよい。
【0087】
また、図1に破線で示すように、ヒータ3,103,203,311に温度センサ300を内蔵しておき、温度センサ300の検出温度が予め定める温度まで下がった時に、次の処理(たとえばステップS6の中間リンス処理)が実行されるようにしてもよい。
また、ヒータ3,103,203,311として、抵抗方式のセラミックヒータを例に挙げて説明したが、その他、ハロゲンランプ等の赤外線ヒータを、ヒータとして採用することができる。
【0088】
また、ヒータ3,103,203,311とウエハWとの間隔を変更するために、ヒータ3を昇降させる場合を例に挙げて説明したが、スピンチャック2を昇降させてもよい。また、ヒータ3およびスピンチャック2の双方を昇降させてもよい。
また、第1および第2処理例のステップS3のSPM液供給工程において、第1薬液ノズル4が、ウエハWの回転中心上と周縁部上との間で往復移動され、これによって、第1薬液ノズル4からのSPM液が導かれるウエハWの表面上の供給位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、ウエハWの回転方向と交差する円弧状の軌跡を描きつつ往復移動するようになっていてもよい。この場合、ウエハWの表面の全域に、SPM液をより均一に供給することができる。
【0089】
また、第1および第2処理例のステップS5のSC1供給工程において、第2薬液ノズル5が、ウエハWの回転中心上と周縁部上との間で往復移動され、これによって、第2薬液ノズル5からのSC1が導かれるウエハWの表面上の供給位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、ウエハWの回転方向と交差する円弧状の軌跡を描きつつ往復移動するようになっていてもよい。この場合、ウエハWの表面の全域に、SC1をより均一に供給することができる。
【0090】
また、前述の各実施形態では、第1および第2薬液ノズル4,5としていわゆるスキャンノズルの形態を採用する場合を例に挙げたが、第1および第2薬液ノズル4,5が固定ノズルの形態であってもよい。この場合、第1および第2薬液ノズル4,5が、スピンチャック2の上方において、その吐出口を、スピンチャック2に保持されるウエハWの上面中央部に向けた状態で固定配置される。
【0091】
また、前述の実施形態では、基板処理装置1,100,200,300を用いてウエハWにレジスト除去処理を施す場合を例に挙げて説明したが、他の処理に用いられる基板処理装置にこの発明を適用することができる。その場合、処理に用いられる薬液は、ウエハWの表面に対する処理の内容に応じたものが用いられる。たとえば、ウエハWの表面からパーティクルを除去するための洗浄処理を行うときは、SC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水)などが用いられる。また、ウエハWの表面から酸化膜などをエッチングするための洗浄処理を行うときは、フッ酸やBHF(Bufferd HF)などが用いられ、レジスト剥離後のウエハWの表面にポリマーとなって残留しているレジスト残渣を除去するためのポリマー除去処理を行うときは、SC1などのポリマー除去液が用いられる。金属汚染物を除去する洗浄処理には、フッ酸やSC2(hydrochloric acid/hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水)やSPMW木(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水)などが用いられる。
【0092】
また、この場合、リンス液としてDIWを用いる場合を例に挙げて説明したが、リンス液は、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、希釈濃度(たとえば、10−100ppm程度)の塩酸水、還元水(水素水)などをリンス液として採用することもできる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1,100,200,300 基板処理装置
2,301 スピンチャック(基板保持手段)
3,103,203,311 ヒータ
4 第1薬液ノズル(処理液供給手段)
5 第2薬液ノズル(処理液供給手段)
12 スピンベース(ベース部)
13 挟持部材(基板支持部)
14 スピンモータ(基板回転手段)
23 ヒータ昇降機構(移動手段)
25 支持ロッド(ヒータ支持部材)
29;129;229 対向面
29A 第1対向面(円形領域)
29B 第2対向面(環状領域)
29C 第3対向面(環状領域)
30 常温リンス液ノズル(処理液供給手段)
35 高温リンス液ノズル(処理液供給手段)
39 空間
104 対向領域(分割領域)
303 モータロータ(基板回転手段)
305 モータステータ(基板回転手段)
309 処理液ノズル(処理液供給手段)
312 ヒータ昇降機構(移動手段)
313 ヒータ支持台(ヒータ支持部材)
A1 回転軸線
W ウエハ(基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A-6C】
図6D-6F】
図6G-6I】
図6J
図7
図8
図9
図10