(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168277
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】冷気循環式平型ショーケース
(51)【国際特許分類】
F25D 17/08 20060101AFI20170713BHJP
F25D 21/04 20060101ALI20170713BHJP
A47F 3/04 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
F25D17/08 319F
F25D21/04 T
A47F3/04 H
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-810(P2013-810)
(22)【出願日】2013年1月8日
(65)【公開番号】特開2014-134296(P2014-134296A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】浅田 規
(72)【発明者】
【氏名】前川 勝彦
【審査官】
▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−267322(JP,A)
【文献】
特開2002−188880(JP,A)
【文献】
実開昭60−195567(JP,U)
【文献】
実開昭54−062169(JP,U)
【文献】
特開昭53−080852(JP,A)
【文献】
特開2001−324251(JP,A)
【文献】
特開昭61−083859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/08
A47F 3/04
F25D 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開放形の箱形断熱筐体になる外箱と商品を収納する内箱との間に冷気循環通路を画成して該冷気循環通路に冷却ユニットを設置するとともに、前記冷気循環通路に通じる冷気吹出口,および冷気吸込口を略水平方向に向かい合わせて前記内箱の側壁上端部に開口し、冷気循環通路を経由して冷気吹出口から冷気吸込口に向け内箱の上面側に冷気エアカーテンを吹出し形成し、前記内箱の側壁上端部よりも下方側に規定された商品の積み上げ高さを制限する商品ロードラインに沿って収納された商品を保冷する冷気循環式平型ショーケースにおいて、前記冷気吸込口の開口位置を当該ショーケースに規定した商品ロードライン寄りに下げたうえで前記冷気吸込口に、断面形状がクランク形になり、上下方向に延在するとともに水平方向に多数の冷気吸込穴を形成した垂直板面が内箱の側壁より冷気循環通路側に後退した吸込グリルを設け、前記吸込グリルは、前記垂直板面に形成した冷気吸込穴が内箱を挟んで反対側に開口する冷気吹出口に対峙し、かつ、当該ショーケースに規定した商品ロードラインを挟んでその上下範囲に跨がる態様で敷設してなることを特徴とする冷気循環式平型ショーケース。
【請求項2】
請求項1に記載の平型ショーケースにおいて、吸込グリルにはその垂直板面の冷気吸込穴に加えて、上面の水平板面域にも冷気吸込穴を開口したことを特徴とする冷気循環式平型ショーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷気循環式平型ショーケースに関し、詳しくはそのケース本体の内側に画成した冷気循環通路の冷気吸込口の形状,配置構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
まず、頭記した冷気循環式平型ショーケースの従来構造(例えば、特許文献1参照)を
図3に示す。図において、1は上面開放形の箱形断熱筐体になるケース本体の外箱、2は外箱1の内方に収設した商品陳列用の内箱、2aは内箱2の底部に配したデッキパン、3は外箱1と内箱2との間に画成した冷気循環通路、4は冷気循環通路に設置した冷却器4aと送風ファン4bとからなる冷却ユニットであり、外箱1の上端側には冷気循環通路3の冷気吹出口3a,および冷気吸込口3bが向かい合わせに対峙して略水平方向に開口している。
【0003】
上記の構成で、ショーケースの保冷運転時には、冷却ユニット4を経て冷気が図示矢印のように冷気循環通路3の冷気吹出口3aから冷気吸込口3bに向け内箱2の上面域に冷気エアカーテン
Aを吹き出し形成して内箱2の庫内に積み上げ収納した商品6を保冷することは周知の通りである。
【0004】
なお、図示例はケース本体の上面が開放のオープン平形ショーケースであるが、ケース本体の上面側に透視扉(ハッチ,あるいは引き戸式扉)を備えた扉付き平型ショーケースもある。
【0005】
一方、平型ショーケースには、ユーザーが商品を陳列する際に内箱2に収納する商品6の積み上げ高さを制限するよう“商品ロードライン”を規定しており、図中にはこの商品ロードラインを二点鎖線LLで表している。すなわち、このロードラインLLの高さを超えて内箱2に商品6を積み上げ収納すると、最上位に並ぶ商品が先記した冷気エアカーテン
Aの層流を乱してショーケースの保冷性能が低下するために、メーカーから出荷する平型ショーケースの製品には内箱2の庫内壁面に例えば赤線マークで商品ロードラインLLの位置を表示するようにしている。
【0006】
そして、従来における平型ショーケースでは、前記の商品ロードラインLLを基準に、冷気吹出口3a,冷気吸込口3bの開口高さ位置を前記ロードラインLLの上方に設定して冷気エアカーテン
Aが庫内に収納した商品に当たって気流が乱されないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−188880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記した従来構造の冷気循環式平型ショーケースでは、保冷性,消費電力の面で次記のような課題がある。すなわち、
(1)冷気循環通路3の冷気吹出口3aから冷気吸込口3bに向けて内箱2の上面域に吹き出し形成される冷気エアカーテンAは、その送流経路の途上で上方空間の空気を巻き込むために、冷気吸込口3bに到達したエアカーテンの気流は全て冷気吸込口3bを通じて冷気循環通路3に回収されずに一部は漏れ冷気流Bとなって上方に流れる。これにより、外箱1の側壁上部,ないし側壁の上に立設したフェンスの頂部に形成した手摺り、あるいは上面扉付きのショーケースでは扉面に漏れ冷気流Bが当たってその部分を冷やす。そのために、周囲環境の条件によっては、漏れ冷気流Bが当たった部位の表面温度が露点以下となってその部分に結露が発生して手摺りを濡らしたり、上面扉付きのショーケースでは扉面が結露により曇って庫内が透視しにくくなる問題が発生する。
【0009】
そこで、従来のショーケースでは冷気吸込口3bの内部,外箱1の手摺り,上面扉面などに防露ヒータを布設して結露の発生を防ぐようにしているが、保冷運転中にこの防露ヒータを通電することでショーケースの消費電力が増加する。そのほか、冷気吸込口3bに防露ヒータを設けると、庫内の最前列,最上位に並ぶ商品は防露ヒータの発熱の影響を受けて保冷性が損なわれるおそれもある。
【0010】
なお、外箱1の側壁,ないしフェンスの頂部に形成した手摺りの結露発生を抑えるには、手摺りの位置を高くして冷気吸込口3bとの間の距離を十分離すようにすることも考えられるが、フェンスを高くすると背丈の低い子供などが庫内から商品を取り出しにくくなるので、手摺り位置を高く設定することは実際には難しい。
(2)また、前記のように冷気吸込口3bの近傍に防露ヒータを設置すると、該ヒータの発熱により冷気吸込口
3bを通じて冷気循環通路3に還流する冷気温度が上昇し、このために冷却ユニット4の熱負荷が増して消費電力が増加する問題もある。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は冷気吸込口の開口高さ,および冷気吸込穴に配した吸込グリルの形状を改良して前記課題の解消を図るようにした冷気循環式平型ショーケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、
請求項1にかかる発明は、上面開放形の箱形断熱筐体になる外箱と商品を収納する内箱との間に冷気循環通路を画成して該
冷気循環通路に冷却ユニットを設置するとともに、前記冷気循環通路に通じる冷気吹出口,および冷気吸込口を略水平方向に向かい合わせて前記内箱の側壁上端部に開口し、冷気循環通路を経由して冷気吹出口から冷気吸込口に向け内箱の上面側に冷気エアカーテンを吹出し形成し
、前記内箱の側壁上端部よりも下方側に規定された商品の積み上げ高さを制限する商品ロードラインに沿って収納された商品を保冷する冷気循環式平型ショーケースにおいて、
前記冷気吸込口の開口位置を当該ショーケースに規定した商品ロードライン寄りに下げたうえで前記冷気吸込口に、断面形状がクランク形になり、上下方向に延在するとともに水平方向に多数の冷気吸込穴を形成した垂直板面が内箱の側壁より冷気循環通路側に後退した吸込グリルを設け、前記吸込グリルは、前記垂直板面に形成した冷気吸込穴が内箱を挟んで反対側に開口する冷気吹出口に対峙し、かつ、当該ショーケースに規定した商品ロードラインを挟んでその上下範囲に跨がる態様で敷設してなることを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の平型ショーケースにおいて、吸込グリルにはその垂直板面の冷気吸込穴に加えて、上面の水平板面域にも冷気吸込穴を開口したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記
請求項1にかかる冷気循環式平型ショーケースによれば
、冷気吸込口の開口高さ位置が従来構造と比べて下方側に移動するので、外箱の側壁頂部,ないしは外箱の側壁に立設したフェンスの頂部に形成した手摺りと冷気吸込口との間の距離が相対的に拡大する。したがって、この距離拡大に伴い庫内側に通流する冷気流からの冷熱伝導を受けて外箱の手摺り,ないし上面扉面(庫外側に露呈している)に発生する結露が弱められることになる。これにより、手摺りなどに敷設する防露ヒータの容量を低めて消費電力の低減化が図れるとともに、このヒータ容量の低減化に伴い冷気吸込口を通じて冷気循環通路に還流する循環冷気の温度上昇が抑制されるので、冷凍機の熱負荷が低減できる省エネ効果も得られ
、また、前記の冷気吸込口に敷設した断面クランク形の吸込グリルについては、該吸込グリルの垂直板面を内箱の側壁より冷気循環通路側に後退させて配置したことにより、庫内の最前列に積み上げた最上位の商品が商品ロードラインの高さレベル、ないしロードラインを若干超えていても、冷気吸込口の開口面が商品で塞がれることがなく、これによりに前記商品に阻まれて冷気吸込み量が減少するのを確実に防ぐことかできる
、という効果を奏する。
また、
請求項2にかかる冷気循環式平型ショーケースによれば、断面クランク形になる吸込グリルに対し、その垂直板面
の冷気吸込穴に加えて、上面の水平板面に形成した冷気吸込口がショーケースの商品ロードラインを挟んでその上下の範囲に跨がって開口することになる。これにより、内箱の上面域を通流して前記冷気吸込口に吸込み回収される冷気エアカーテンの内層側気流(外層側の気流に比べて冷気温度が低い)が庫内最前列の最上位に並ぶ商品(外気温の影響を最も受け易い)の表面を洗流するので、該商品を効果的に低温保冷できる
、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例による冷気吸込口の構造図であって(a)は冷気吸込口の周辺構造を表すショーケースの要部断面図、(b)は(a)における吸込グリルの外形斜視図である。
【
図2】
図1における吸込グリルについて、
図1(b)と異なる実施例の外形斜視図である。
【
図3】従来における冷気循環式平型ショーケースの縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を
図1(a),(b)に示す実施例に基づいて説明する。なお、図中で
図3に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
図示実施例の冷気循環式平型ショーケースにおいては、外箱1と内箱2との間に画成した冷気循環通路3に連ねて内箱2の側壁上部側に開口した冷気吸込口3bは、その開口位置を当該ショーケースに規定した商品ロードラインLLを挟んでその上下範囲に跨がる高さ位置に設定している。なお、
図1(a)において、1aは外箱1の側壁上部に嵌め込んだ透視窓(内外二重のガラスで構成した断熱窓)、2aは前記透視窓1aに対向して内箱2の側壁に嵌め込んだ透視窓、7は外箱1の上面を覆って開閉自在に設置した上面扉、8は外箱1の側壁上端の手摺り部に配した防露ヒータである。
【0016】
上記の構成で、冷気吸込口3bには次記構成になる吸込グリル5が敷設されている。この吸込グリル5は、例えばステンレスの板材にZ曲げ加工を施して成形した断面クランク形の板金品であり、
図1(b)で示すように吸込グリル5の垂直板面5aにはその長手方向に沿って多数の冷気吸込穴(角穴)5bが打ち抜き加工されており、この冷気吸込穴5bが内箱2を挟んで反対側に対峙開口する冷気吹出口3a(
図3参照)に向けて略水平方向に開口している。
【0017】
また、この吸込グリル5を
図1(a)のように冷気吸込口3bに敷設した組立状態では、前記の垂直板面5aが内箱2の側壁面よりも冷気循環通路3の内側に後退して位置するように設定されている。
【0018】
上記構成によれば、冷気吸込口3bの開口高さ位置が従来構造(
図3参照)と比べて下方に移動するので、この冷気吸込口3bと外箱1の側壁,ないしフェンスの頂部に形成して庫外側に露呈している手摺りとの間の距離が相対的に拡大する。つまり、庫内側に通風する低温の冷気エアカーテンAが当たって直接冷やされる外箱1の内側壁部位から外箱頂部の手摺り、あるいは上面扉7との間の距離が拡大する。これにより、外箱1の壁面を伝わる冷熱の熱伝導を受けて手摺り,扉面に生じる結露が抑制される。その結果、防露ヒータ8の容量を低めて消費電力の低減化が図れるとともに、このヒータ容量の低減化に伴い冷気吸込口3bを通じて冷気循環通路3に回収される循環冷気の温度上昇が抑制されるので、冷凍機の熱負荷が低減する省エネ効果も得られる。
【0019】
また、冷気吸込口3bがショーケースの商品ロードラインLLを挟んでその上下範囲に跨がって開口しているので、内箱2の上面域に沿って冷気吸込口3bに吸込み回収される冷気エアカーテンAのうち、点線矢印で表す内層側気流A’が庫内最前列の最上位に並ぶ図示の商品6(外気温の影響を最も受け易い)の表面を洗流して冷気吸込口3bに吸い込まれるので該商品6を効果的に低温保冷できる。
【0020】
さらに、冷気吸込口3bに敷設した前記吸込グリル5については、前述のように冷気吸込穴5bを開口した吸込グリル5の垂直板面5aを内箱2の側壁より冷気循環通路3側に間隔dだけ後退させた位置に配置,形成したことにより、庫内の最前列に並べて商品ロードラインLLの高さレベル近くに積み上げた最上位の商品6によって冷気吸込口3bの開口面が塞がれることが無く、これにより庫内側から冷気吸込口3bを通じて冷気循環路に回収される冷気の吸込み量を確保できる。
【0021】
次に、先記した吸込グリル5(
図1参照)について、本発明の応用実施例を
図2に示す。すなわち、
図2に示した断面クランク形の吸込グリル5においては、その垂直板面5aに開口した冷気吸込穴5bに追加して、上面の水平板面域にも冷気吸込穴5cを開口している。
【0022】
この構成により、庫内の最前列に積み上げた最上位の商品(
図1(a)参照)が商品ロードラインLLの高さレベルを若干超えている陳列状態でも、商品6の上面側に通流する冷気エアカーテンAは前記冷気吸込穴5b,5cの双方を通じて冷気循環路に回収されるので、庫内の積み上げ商品6に阻まれて冷気吸込み量が減少するのを防ぐことかできる。
【符号の説明】
【0023】
1 ケース本体の外箱
2 内箱
3 冷気循環通路
4 冷却ユニット
5 吸込グリル
5a 垂直板面
5b,5c 冷気吸込穴
6 商品
LL 商品ロードライン