特許第6168286号(P6168286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6168286結晶性熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168286
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】結晶性熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20170713BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20170713BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20170713BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20170713BHJP
   C08L 59/00 20060101ALI20170713BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20170713BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08L23/00
   C08L67/00
   C08L77/00
   C08L59/00
   C08L93/04
   C08K5/09
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-111377(P2013-111377)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-227547(P2014-227547A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義昌
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭46−035145(JP,B1)
【文献】 特開平07−331081(JP,A)
【文献】 特開2014−227546(JP,A)
【文献】 特開2012−214790(JP,A)
【文献】 特表2007−524749(JP,A)
【文献】 特開平10−025362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドおよびポリアセタールから選ばれる少なくとも1種の結晶性熱可塑性樹脂;100重量部、(B)二量体含有率が60重量%以上である重合ロジン類;0.001〜30重量部、ならびに(C)高級脂肪酸金属塩である金属元素含有化合物;0.01〜2重量部からなることを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記重合ロジン類が二量体含有率80重量%以上のものである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記重合ロジン類が、色調(ガードナー色数)が8以下、酸価が140〜185mgKOH/g、および軟化点(環球法)が145〜200℃であるものである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記金属元素含有化合物(C)がカリウム、ナトリウム、マグネシウムおよびアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
(A)ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドおよびポリアセタールから選ばれる少なくとも1種の結晶性熱可塑性樹脂;100重量部、(B)二量体含有率が60重量%以上である重合ロジン類;0.001〜30重量部、ならびに(C)高級脂肪酸金属塩である金属元素含有化合物;0.01〜2重量部を溶融混練することを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法に関する。本発明は、更に詳しくは、特定の結晶性熱可塑性樹脂、特定の重合ロジン類および金属元素含有化合物からなる結晶性熱可塑性樹脂組成物、ならびに前記各成分を溶融混練する結晶性熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタールなどの結晶性熱可塑性樹脂は、優れた加工性、耐薬品性、電気的性質、機械的性質などを有しているため、射出成形品、中空成形品、フィルム、シート、繊維などに加工され各種用途に用いられている。しかしながら用途によっては、剛性、耐熱剛性、透明性などが充分とはいえない場合がある。
【0003】
このような結晶性熱可塑性樹脂からなる成形体の剛性、耐熱剛性、透明性を向上させるには、成形加工時に微細な結晶を急速に生成させればよいことが知られている。このため従来から結晶性熱可塑性樹脂の結晶化速度を速めるために、該樹脂に結晶核剤を添加することが行われており、たとえばアジピン酸ナトリウム、パラ−t−ブチル安息香酸のアルミニウム塩、ジベンジリデンソルビトール、アルキルフェノールリン酸エステルの金属塩、タルクなどの結晶核剤が用いられている。しかしながら従来の結晶核剤では、結晶化速度の向上効果が必ずしも充分ではなく、得られる成形体の剛性、耐熱剛性などの機械的性質や、透明性、光沢などの光学的性質が必ずしも満足しうるものではなかった。
【0004】
また、天然物由来原料であるロジンの部分金属塩を含有する結晶核剤も知られている(特許文献1、2など参照)。更には、天然物由来原料であるロジン酸やその誘導体を含有する結晶性熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法も開示されている(特許文献3を参照)。
【0005】
特許文献1〜3に記載の該結晶核剤は環境配慮型であり、前記諸物性に優れるものであるが、より低添加率での効果発現が望まれていた。
【0006】
なお、特許文献1および2には、ロジン部分金属塩の構成原料であるロジン酸またはロジン類の1種として重合ロジンが記載されているものの(特許文献1段落[0013]、特許文献2段落[0019]など参照)、該実施例には重合ロジン金属塩に係る一切の記載がない。また、特許文献3においても、ロジン酸の1種として重合ロジンが例示されているが(段落[0016]を参照)、該実施例には一切の記載がない。
【0007】
上記のように、環境配慮型であり、しかも結晶性熱可塑性樹脂に対する優れた結晶核剤効果を低添加率で発現できる結晶核剤の開発や、機械的性能や光学的性能を満足しうる新規な結晶性熱可塑性樹脂の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−331081号公報
【特許文献2】特開平8−277343号公報
【特許文献3】特開平10−25362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、環境配慮の観点から天然物由来の原料を使用し、かつ機械的性能や光学的性能を満足しうる成形体を収得するための新規な結晶性熱可塑性樹脂組成物を提供するとともに、該樹脂組成物を比較的安価に提供しうる製造法を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は前記従来技術の課題を解決すべく、結晶性熱可塑性樹脂用結晶核剤として機能しうると思料される重合ロジン類の色調、純度、二量体含有率などの性状・物性値と、目的成形物の前記諸性能との相関に着目して、鋭意検討を重ねた。その結果、特定の二量体含有率である重合ロジンおよび金属元素含有化合物を結晶性熱可塑性樹脂に配合してなる該樹脂組成物を用いることにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、(A)ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドおよびポリアセタールから選ばれる少なくとも1種の結晶性熱可塑性樹脂;100重量部、(B)二量体含有率が60重量%以上である重合ロジン類(該金属塩を除く);0.001〜30重量部、ならびに(C)金属元素含有化合物;0.01〜2重量部からなることを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂組成物に係る。また、本発明は、(A)ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドおよびポリアセタールから選ばれる少なくとも1種の結晶性熱可塑性樹脂;100重量部、(B)二量体含有率が60重量%以上である重合ロジン類(該金属塩を除く);0.001〜30重量部、ならびに(C)金属元素含有化合物;0.01〜2重量部を溶融混練することを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂組成物の製造方法に係る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物によれば、結晶化速度が速く、機械的特性および/または光学的特性に優れる成形体を収得できる。更には、本発明に係る結晶性熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、より短い混練時間で前記のような効果を奏しうる該樹脂組成物や成形体を比較的安価に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物においては、結晶性熱硬化性樹脂として(A)ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドおよびポリアセタールから選ばれる少なくとも1種が必須構成成分として使用される(以下、成分(A)という)。
【0014】
前記ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体などのオレフィン共重合体などを挙げることができ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテンが好ましい。このようなポリオレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのなかでは、特にポリプロピレンを主体とした重合体が好ましい。
【0015】
前記ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートなどを挙げることができ、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このようなポリエステルは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
前記ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46等の脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどを挙げることができ、ナイロン−6が特に好ましい。このようなポリアミドは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
前記ポリアセタールとしては、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒドなどを挙げることができ、ポリホルムアルデヒドが特に好ましい。このようなポリアセタールは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
これらのうちでは、ポリオレフィン、特にポリプロピレンが機械的性質および/または光学的性質の改善効果が大きいため好ましい。
【0019】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物においては、(B)二量体含有率が60重量%以上である重合ロジン類が必須構成成分として使用される(以下、成分(B)という)。成分(B)としては、二量体含有率が80重量%以上であるものが結晶化速度の向上効果や機械的・光学的性能の向上効果により優れるため、より好ましく使用できる。成分(B)の二量体含有率が60重量%未満である場合は、当該効果が不充分となる。なお、成分(B)中の二量体以外の残余成分としては、未反応ロジン、三量体以上の成分および分解物が含まれる。
【0020】
成分(B)としては、色調がガードナー8以下、酸価が140〜185mgKOH/g、軟化点が145〜200℃であることがより好ましい。なお、成分(B)の二量体含有率が前記範囲内にあっても、酸価が前記範囲内を逸脱するようなものは、成分(B)の製造に際して、脱炭酸して生じたモノカルボン酸体を相当量含んでおり、前記効果が低下する傾向がある。成分(B)を得るには、蒸留や再結晶などの方法により得られる精製ロジン類を出発原料として用いたり、こうして得られる重合ロジン類を更に水素化することが好ましい。成分(B)の色調がより厳しく要求される用途に使用する場合は、ガードナー2以下が好ましく、更に好ましくはハーゼン水準(JIS K0071−1による)のものとされる。成分(B)の製造法としては、格別限定されず、公知各種の方法を採用できる。例えば、重合反応触媒として、ペンダントスルホン基を有する高分子を用いる方法(特開2006−45396号公報);ギ酸、p−トルエンスルホン酸、塩化亜鉛などを用いる方法などが挙げられる。
【0021】
成分(B)としては、前記で特定された重合ロジンの他、当該重合ロジンの変性物(エステル化物、アミド化物)が含まれる。該エステル化物としては、特に限定されないが、グリセリンエステル、低級〜高級アルキルエステルなどが挙げられる。また該アミド化物としては、特に限定されないが、低級〜高級のアルキルアミドなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物においては、(C)金属元素含有化合物が必須構成成分として使用される(以下、成分(C)という)。成分(C)としては、少なくとも1種の金属元素を含有する有機化合物(金属元素含有有機化合物)、および少なくとも1種の金属元素を含有する無機化合物(金属元素含有無機化合物)が挙げられる。
【0023】
金属元素含有有機化合物としては、たとえば高級脂肪酸金属塩、芳香族カルボン酸金属塩、アルキルホスホン酸金属塩などが挙げられる。金属元素含有有機化合物が含有する金属元素としては、I族、II族、III族の金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素が好ましく、リチウム、カリウム、ナトリウム、バリウム、マグネシウム、およびアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素がより好ましく、中でもカリウム、ナトリウム、マグネシウムおよびアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素がさらに好ましい。
【0024】
金属元素含有有機化合物として具体的には、ステアリン酸、ラウリン酸、パルチミン酸、モンタン酸、オレイン酸、エルカ酸、12−ヒドロキシステアリン酸、安息香酸、p−t−ブチル−安息香酸のマグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アルミニウム塩、リチウム塩などが挙げられる。これらの中では、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0025】
金属元素含有無機化合物としては、金属単体の他、金属の硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、硫化物、酸化物などが挙げられる。無機金属元素含有化合物が含有する金属元素としては、I族、II族、III族の金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素が好ましく、リチウム、カリウム、ナトリウム、バリウム、マグネシウム、およびアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素がより好ましく、中でもカリウム、ナトリウム、マグネシウムおよびアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素がさらに好ましい。
【0026】
無機金属元素含有化合物として具体的には、ハイドロタルサイト、タルク、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0027】
このような成分(C)は、単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
次に、本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物につき説明する。本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物は、成分(A);100重量部と、成分(B);0.001〜30重量部、好ましくは0.005〜5重量部、より好ましくは0.01〜2重量部と、成分(C)金属元素含有化合物;0.001〜60重量部、好ましくは0.005〜10重量部、より好ましくは0.01〜2重量部とからなる。成分(B)の配合量が0.01〜2重量部の範囲にあり、成分(C)の配合量が0.01〜2重量部の範囲にあると、成形時の結晶化速度の向上が大きく、かつ成形体の物性に影響を与えることが少ない。
【0029】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物を溶融混練すると、溶融樹脂中で成分(B)と、成分(C)との間でイオン交換が起こり、結晶核剤となりうる重合ロジン類の金属塩が生成すると思料される。
【0030】
このような結晶性熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体は、成分(A)が本来有する優れた特性を保持し、かつ結晶化速度が速い。このような結晶性熱可塑性樹脂組成物は、剛性、耐熱剛性などの機械的特性、および/または、透明性、光沢などの光学的性質に優れた成形体を製造することができ、しかも経済的にも有利である。
【0031】
また、本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物は、架橋剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、離型剤、無機充填剤、顔料分散剤、顔料あるいは染料などの各種配合剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有していてもよい。なお、本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物では、本発明の結晶性熱可塑性樹脂用結晶核剤以外の公知結晶核剤の併用を排除するものではなく、本発明の目的を損なわない範囲であれば公知の結晶核剤を含有していてもよい。
【0032】
次いで本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物の製造は、前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の各所定量を用い、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いて溶融混練することにより行われる。溶融混練に先立ち、これら成分を通常のブレンダー又はミキサー等で混合してもよい。
【0033】
結晶性熱可塑性樹脂の製造条件は、成分(A)がポリオレフィンである場合には、溶融混練時の温度は通常170〜300℃、好ましくは180〜250℃の範囲であり、溶融混練時間は通常0.2〜20分、好ましくは0.5〜10分である。
【0034】
成分(A)がポリエステルである場合には、溶融混練時の温度は通常260〜330℃、好ましくは270〜300℃の範囲であり、溶融混練時間は通常0.2〜20分、好ましくは0.5〜10分である。
【0035】
成分(A)がポリアミドである場合には、溶融混練時の温度は通常220〜330℃、好ましくは260〜330℃の範囲であり、溶融混練時間は通常0.2〜20分、好ましくは0.5〜10分である。
【0036】
成分(A)がポリアセタールである場合には、溶融混練時の温度は通常180〜300℃、好ましくは180〜250℃の範囲であり、溶融混練時間は通常0.2〜20分、好ましくは0.5〜10分である。
【0037】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物は一般的な熱可塑性プラスチックと同様に、押出し成形、射出成形、延伸フィルム成形、インフレーション成形、ブロー成形などの成形方法により成形することができ、家庭用品から工業用品に亘る広い用途、例えば、食品容器、電気部品、電子部品、自動車部品、機械機構部品、フィルム、シート、繊維などの素材として好適に使用できる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例および比較例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、部および%は特記しない限り重量基準である。なお、結晶性熱可塑性樹脂組成物の性能評価は次の方法によった。
【0039】
結晶化温度(Tc)
得られたペレットを、示差走査熱量計(DSC)により溶融状態から一定速度(10℃/分)で冷却し、結晶化発熱ピーク温度〔結晶化温度(Tc)〕を測定することにより結晶化速度を評価した。結晶化温度(Tc)の上昇効果の高いものほど結晶化速度が速い。
【0040】
曲げ弾性率(FM)
長さ5インチ、巾1/2インチ、厚み1/8インチの射出成形試験片を用い、ASTM
D638に準拠して曲げ弾性率を測定した。
【0041】
熱変形温度(HDT)
長さ5インチ、巾1/4インチ、厚み1/2インチの射出成形試験片を用い、ASTM
D648に準拠して熱変形温度を測定した。熱変形温度が高い物ほど耐熱性が大きい。
【0042】
透明性(ヘイズ)
厚み1.0mmの圧縮成形試験片を用い、JIS K6714に準拠したヘイズを測定した。ヘイズの低いものは透明性が高い。
【0043】
実施例1
プロピレンホモポリマー(温度230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート:1.2g/10分)100重量部に、イルガノックス1010TM(チバガイギー社製)0.1重量部、重合ロジンA(酸価178mgKOH/g、軟化点150℃、色調ガードナー6、二量体含有率65%)0.35重量部、およびステアリン酸マグネシウム0.1重量部を添加し、20mm一軸押出機により樹脂温度220℃で溶融混練しペレット化した。
【0044】
得られたペレットを用いシリンダ温度230℃、金型温度40℃で射出成形、および溶融温度230℃、冷却温度20℃で圧縮成形し各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0045】
実施例2
ステアリン酸マグネシウムの代わりに、合成ハイドロタルサイト(DHT−4A:協和化学(株)製)を0.1重量部添加した以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0046】
実施例3
ステアリン酸マグネシウムの代わりに、酸化マグネシウムを0.1重量部添加した以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0047】
実施例4
ステアリン酸マグネシウムの代わりに、水酸化マグネシウムを0.1重量部添加した以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0048】
実施例5
重合ロジンAに代えて、重合ロジンB(酸価182mgKOH/g、軟化点171℃、色調ガードナー1、二量体含有率80%)を用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0049】
実施例6
重合ロジンAに代えて、重合ロジンBを用いた以外は実施例2と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例2と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0050】
比較例1
重合ロジンAに代えて、重合ロジンC(酸価135mgKOH/g、軟化点94℃、色調ガードナー7、二量体含有率40%)を用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0051】
比較例2
重合ロジンAに代えて、重合ロジンCを用いた以外は実施例2と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例2と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0052】
比較例3
重合ロジンAに代えて特許文献3の実施例1に記載されたロジン酸を用い、かつその使用量を表1のように変更した以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0053】
比較例4
重合ロジンAに代えて特許文献3の実施例1に記載されたロジン酸を用い、かつその使用量を表1のように変更した以外は実施例2と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例2と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0054】
比較例5
ステアリン酸マグネシウムを用いなかった以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0055】
比較例6
重合ロジンを用いなかった以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0056】
比較例7
重合ロジンを用いなかった以外は実施例2と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0057】
比較例8
重合ロジンおよびステアリン酸マグネシウムを用いなかった以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして各種の試験片を作成した。この試験片を用いて前記の試験方法により各種物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表中、SAMgはステアリン酸マグネシウムを、DHT−4Aは合成ハイドロタルサイト(協和化学(株)製)を、MgOは酸化マグネシウムを、Mg(OH)は水酸化マグネシウムを意味する。
【0060】
表1から、前記特定の重合ロジン類と金属含有化合物を含有してなる本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物および該成形物は、比較例1〜8の結晶性熱可塑性樹脂組成物および該成形物に比べて、優れた機械的性質および光学的性質を示すことが明らかである。また本発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物および該成形物は、比較例3〜4の結晶性熱可塑性樹脂組成物および該成形物に比べて、該重合ロジン類の添加量が少ない場合でも、優れた機械的性質および光学的性質を示すことが明らかである。