(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図7にこの発明の一実施形態を示す。
固定手段aには電動モーターmを固定しているが、この電動モーターmの出力軸1に駆動ギア2を固定している。さらに上記固定手段aには、中央に孔を形成したステンレスなどの導電材料からなるリング状の取り付け板3をねじ部材n1で固定するとともに、この取り付け板3には導電材料からなる筒状のベアリングホルダー4をねじ部材n2で固定している。
上記筒状のベアリングホルダー4には、導電材料からなる円柱状のロータリー本体5を挿入するとともに、このロータリー本体5とベアリングホルダー4との間に、一対のボールベアリング6,7及びベアリングカラー8を介在させて、上記ベアリングホルダー4に対してロータリー本体5を回転自在に支持している。
【0017】
上記ボールベアリング6,7はベアリングホルダー4で囲まれた空間を気密に保持するシール機能を備えている。このようにしたボールベアリング6,7は、ベアリングホルダー4との間で固定されているが、その固定構造は次の通りである。
上記ロータリー本体5であってベアリングホルダー4の先端に対応する位置に、止め用段部5aを形成するとともに、この止め用段部5aに一方のボールベアリング6をとめている。また、他方のボールベアリング7は、ロータリー本体5であって取り付け板3との対向面に固定したベアリング押さえ板9によって固定されている。このベアリング押さえ板9は、その円周方向に複数固定したねじ部材n3で上記ロータリー本体5に固定されている。
【0018】
上記のことから明らかなように、一対のボールベアリング6,7は、ベアリングカラー8で一定の間隔を保ちながら、上記止め用段部5aとベアリング押さえ板9との間でしっかり保持され、ベアリングホルダー4内に形成される空間における圧力流体が、外に漏れないようにしている。
【0019】
さらに、上記ロータリー本体5であって、上記一方のボールベアリング6に隣接する外周に、回転ギア10を固定するとともに、この回転ギア10を上記電動モーターmに固定した駆動ギア2にかみ合わせている。
なお、図中符号n4は、ロータリー本体5に形成したフランジ部5bを貫通して回転ギア10に挿入したねじ部材である。
上記のように構成したので、電動モーターmを駆動して駆動ギア2を回転させれば、この駆動ギア2の回転力が回転ギア10を介してロータリー本体5に伝達され、ロータリー本体5は、ベアリングホルダー4と相対回転することになる。
【0020】
上記ロータリー本体5には流体通路5cを貫通させているが、その一方の開口5dの中心を、ロータリー本体5の回転中心軸と一致させ、他方の開口5eの中心を、ロータリー本体5の回転中心軸に対して偏心させている。したがって、ロータリー本体5が回転すれば、他方の開口5eが、上記回転中心軸を中心にして円運動することになる。
【0021】
また、上記取り付け板3における中央の孔の部分を上記一方の開口5dに連通させるとともに、この取り付け板3の中央の孔には、導電材料からなる第1中空体11の先端部分を挿入している。そして、この第1中空体11の外周にはフランジ部11a形成し、このフランジ部11aを上記取り付け板3に密着させてねじ部材n5で固定している。このようにして取り付け板3に固定された第1中空体11の軸中心線を、ロータリー本体5の回転中心軸と一致させている。
なお、図中符号12は第1中空体11に接続したアース線である。
【0022】
さらに、上記取り付け板3であって、上記第1中空体11の挿入方向とは反対側となる側面に押さえ部材13をねじ部材n6によって固定している。この押さえ部材13は、取り付け板3に挿入された第1中空体11の先端部分との間で、セラミック製の支持板14を保持している。この支持板14は後で説明する第2の導電パイプ15を第1及び第2中空体11,17の中心に支持するための部材である。
上記のようにした第1中空体11は、上記取り付け板3とは反対端にねじ結合させた連結部材16を介して第2中空体17をねじ結合させ、これら第1,2中空体11,17及び連結部材16でこの発明の中空体を構成する。なお、これら連結部材16及び第2中空体17は絶縁材料である樹脂で構成され、上記第1中空体11とは電気的に絶縁されている。
【0023】
また、上記ロータリー本体5であって他方の開口5e側に、導電材料からなるケーシング18を構成する円筒部材19を固定する。すなわち、この円筒部材19の開口の周囲にはフランジ部19aを形成し、このフランジ部19aに貫通させたねじ部材n7によって、上記円筒部材19をロータリー本体5に固定している。円筒部材19を上記のようにロータリー本体5に固定したとき、円筒部材19の開口が上記他方の開口5eと一致する構成にしている。
なお、上記円筒部材19とロータリー本体5との間には、セラミック製の支持板20を挟持させている。この支持板20は、その中心にパイプ支持孔を形成するとともに、このパイプ支持孔の周囲には圧力流体が流通する流通孔を形成している。
【0024】
さらに、上記円筒部材19の先端は、上記ケーシング18を構成する絞り筒部材21をねじ部21aを介してねじ結合している。そして、絞り筒部材21の先端には筒状のキャップ部材22を、ねじ部22aを介してねじ結合している(
図2参照)。
上記円筒部材19、絞り筒部材21及びキャップ部材22で構成されるケーシング18には、第1の導電パイプ23を導いているが、この第1の導電パイプ23は、上記支持板20のパイプ支持孔で支持されるとともに、基端側が、流体通路5cの一方の開口5dにはめ込んで固定されたセラミック製の支持板24の支持孔24aに支持されている(
図4参照)。また、この支持板24には、
図4に示すように、圧力流体を流通させる複数の流通孔24bを形成している。
【0025】
さらに、
図2に示すように、上記円筒部材19には絶縁材料からなる旋回流生成手段25をはめ込み、その外周を上記円筒部材19を貫通するセットビスb1で固定している。そして、この旋回流生成手段25に形成したパイプ支持孔25aで上記第1の導電パイプ23の先端部分が支持されるとともに、第1の導電パイプ23の先端が上記旋回流生成手段25から突出している。
また、上記第1の導電パイプ23と流体通路5cとの間、及び第1の導電パイプ23とケーシング18との間に、圧力流体が流通する空間が形成されるようにしている。ただし、上記旋回流生成手段25には、それを貫通する螺旋孔25bを形成し、上記圧力流体がこの螺旋孔25bを通過したとき、旋回流生成手段25を通過した流体が旋回流になるようにしている。
【0026】
なお、
図2中、符号26は、第1の導電パイプ23の外周に形成した環状凹部23aにはめたOリングで、上記旋回流生成手段25に接触して設けられ、第1の導電パイプ23の外周と旋回流生成手段25のパイプ支持孔25aとの隙間をシールしている。この隙間をシールすることにより、ケーシングに供給された圧力流体が、上記螺旋孔25bを確実に通過するようにしている。
上記のように旋回流生成手段25から突出した第1の導電パイプ23の先端には、タングステンからなる筒状の放電電極27を、ねじ部27aを介してねじ結合している。そして、第1の導電パイプ23と放電電極27とは、ねじを緩めて必要に応じて切り離し可能にしている。そのため、上記放電電極27が放電によって消耗した場合には、新たな放電電極との交換も簡単にできる。
【0027】
さらに、上記絞り筒部材21の先端の内周に形成したねじ部21bには、アース電極を構成するタングステン製のアースリング28をねじによってはめ合わせ、治具用凹部28aに治具を挿入してねじを締めたり、緩めたりして、アースリング28を絞り筒部材21に対して着脱できるようにしている。
上記のようにしたアースリング28は、ケーシング18、ロータリー本体5、ボールベアリング7、ベアリングホルダー4、取り付け板3及び第1中空体11を介して、上記アース線12と電気的に導通している。
【0028】
上記アースリング28にはその中央に、上記放電電極27の外径よりも大きな内径を有する貫通孔28bを形成し、上記放電電極27の先端をこの貫通孔28bに挿入して、放電電極27の先端面27bと、貫通孔28bの開口面28cとを面一にしている。
なお、上記第1の導電パイプ23が上記支持板20及び旋回流生成手段25によってケーシング18の中心位置に保持されているため、これに接続した上記放電電極27もケーシング18の中心に位置し、上記貫通孔28bと放電電極27との間に一定の隙間が保たれるようにしている。
したがって、放電電極27に高電圧が印加されれば、この放電電極27とアースリング28との間で放電が起こる。
【0029】
また、ケーシング18を構成する上記キャップ部材22内には環状凸部22bを形成しているが、この環状凸部22bとキャップ部材22の先端開口との間には、
図2に示すように、先端開口から内側に向かって、この発明の噴出口構成部材である、絶縁板29、導電板30及びウェブワッシャ31が順番に設けられている。
そして、上記導電板30と上記放電電極27の先端面27bとの間に所定の間隔を保ち、放電電極27から流出する直進流と上記旋回流生成手段25によって形成される旋回流とを合流させる合流室22cが形成される。
【0030】
上記絶縁板29は、キャップ部材22の先端開口の内側に形成したねじ部とねじ結合して取り付けられ、セラミックなどの絶縁材料からなる。
この絶縁板29には、3個の流通孔29aを貫通させているが、これら流通孔29aは、
図3に示すように、正三角形の頂点位置に配置している。そして、この正三角形の中心は、上記絶縁板29の中心に一致させている。
また、上記各流通孔29aは、
図2及び
図7の模式図に示すように、上記導電板30に密着する側の開口径d2を、上記導電板30とは反対側における開口径d1よりも大きくしている。
【0031】
一方、上記導電板30はタングステン製の円板であり、上記絶縁板29の各流通孔29aに対向する位置に、それぞれ流通孔30aを貫通させている。この導電板30の各流通孔30aの開口径d3は上記開口径d1とほぼ等しく形成され、上記絶縁板29の流通孔29aの開口径d2よりも小さくしている。
上記絶縁板29をキャップ部材22にねじ嵌めすることによって、絶縁板29と上記環状凸部22bとの間に導電板30を固定するとともに、絶縁板29の各流通孔29aと導電板30の各流通孔30aとを連続させている。
なお、この実施形態では、上記導電板30及び絶縁板29の中心に流通孔29a及び30aを形成していない。それは、後で説明するように放電電極27から圧力流体を噴出さえたとき、噴出した圧力流体からなる直線流が中央に形成された流通孔29aから優先的に噴出し、他の流通孔29aとの間で差が出ることがないようにするためである。
【0032】
また、上記導電板30と上記環状凸部22bとの間にはウェブワッシャ31を挟み込んで、そのばね力によって絶縁板29と導電板30との間のガタツキを防止するとともに、導電板30とキャップ部材22との電気的導通も確実にしている。
そして、キャップ部材22は、上記したように第1中空体11に接続した上記アース線12によってアースされた絞り筒部材21に接続しているので、導電板30もアースされ、この導電板30は上記アースリング28とともに、この発明のアース電極を構成する。したがって、上記放電電極27に高電圧が印加されると、上記放電電極27と導電板30との間にも放電が発生する。
なお、
図2中符号32は上記キャップ部材22の位置を調整するためのナットである。
【0033】
また、上記放電電極27にねじ結合した上記第1の導電パイプ23は、
図1に示すようにケーシング18の中心から、流体通路5cの中心を通るように屈曲したパイプである。この第1の導電パイプ23における基端は、後で詳しく説明するように相対回転可能に第2の導電パイプ15と接続している(
図1、4参照)。
【0034】
そして、相対回転可能に連結される第1、第2の導電パイプ23、15の連結構造を拡大して示したのが
図4である。
図4に示すように、上記第2の導電パイプ15の先端に大径部15aを形成するとともに、この大径部15aの外周を、導電材料からなる連結ナット33とねじ結合している。
さらに、上記連結ナット33には第1の導電パイプ23を挿入するとともに、これら第1の導電パイプ23と上記連結ナット33との間に、シール機能を備えたボールベアリング34を介在させている。
【0035】
なお、図中符号35は、第1の導電パイプ23の後端に形成した環状凹部23bにはめたCリングで、このCリング35は、第1の導電パイプ23に形成した止め用段部23cとの間で上記ボールベアリング34を保持するとともに、第1の導電パイプ23がボールベアリング34から抜けるのを防止している。
そして、第1の導電パイプ23と第2の導電パイプ15とは、その回転中心を一致させた状態で相対回転することになる。このとき、第1、2の導電パイプ23,15の開口中心とロータリー本体5の回転中心軸とが一致するようにしている。
上記の構造の基では、第1,2導電パイプ23,15は、連結ナット33及びボールベアリング34を介して電気的に導通している。
【0036】
また、上記連結ナット33の外周にはボールベアリング36を設け、このボールベアリング36の外周に絶縁材料からなるベアリングホルダー37をセットビスb2によって固定し、さらにこのベアリングホルダー37を上記支持板24にねじ部材n8で固定している。
上記のように構成することによって、上記連結ナット33が実質的に支持板24に相対回転自在に支持されることになる。このように連結ナット33が支持板24に支持されることによって、連結ナット33部分の中心が揺れ動いたりしなくなる。
【0037】
また、上記第2の導電パイプ15は、その開口中心を上記ロータリー本体5の回転中心軸と一致させているので、上記ロータリー本体5が回転して第1の導電パイプ23が回転しても、第2の導電パイプ15は円運動したりしない。そのため、上記ロータリー本体が回転したとき、第2の導電パイプ15やこの第2の導電パイプ15に接続した配管が捻じれたりしない。
しかも、上記第2の電動パイプ15は、上記支持板14にも支持されているので、たとえロータリー本体5が回転しても、常に安定した状態を保つことができる。
なお、上記支持板14も、上記支持板20,24と同様にセラミックからなる板部材で、第2の導電パイプを貫通して支持する支持孔と流体を流通させる流通孔とを備えている。
【0038】
一方、上記第2中空体17の底面17aには、
図5に示すように、取付孔17b、17c,17dを形成するとともに、上記取付孔17cには、図示していない圧力流体源に接続したホースニップル38を取り付けている。そして、上記第2の導電パイプ15の後端と、上記ホースニップル38の先端とを、ガラスエポキシなどの絶縁材料で形成された高圧連結ソケット39で連結している。この高圧連結ソケット39は、内壁の筒全長にわたってねじ部39aを形成し、上記第2の導電パイプ15の後端に形成した小径部15bと、上記ホースニップル38の先端とのそれぞれを、ねじ結合している。
【0039】
なお、
図5中、符号40は、上記ホースニップル38と継手41とを接続するホースであり、この継手41はホース42を介して上記圧力流体源に接続している。
また、継手41は、ホース43を介して取付孔17dに取り付けたホースニップル44にも接続している。
このようにした継手41は、上記圧力流体源から導かれた圧力流体を分岐させてホース40に導いたり、ホース43に導いたりできるようにしている。
【0040】
上記ホース40に導かれた圧力流体は、第2の導電パイプ15から、第1の導電パイプ23を介して上記放電電極27に供給され、放電電極27の先端開口から直進流として噴出する。
一方、上記ホース43に導かれた圧力流体は、上記第2中空体17内に供給される。このように、上記第2中空体17内に供給された圧力流体は、上記連結部材16、第1中空体11、ロータリー本体5内の流体通路5cを通過してケーシング18内に供給される。ケーシング18内に供給された圧力流体は上記旋回流生成手段25の螺旋孔25bを通過し、その下流側、すなわち放電電極27の外周で旋回流を形成する。
【0041】
また、第2中空体17内には金属性の高圧給電板45を備え、その中央に中央孔45aを形成し、この中央孔45aに上記第2の導電パイプ15の小径部15bを貫通させている。そして、小径部15bによって形成される段部に上記高圧給電板45を接触させるとともに、上記段部と上記高圧連結ソケット39との間に、上記高圧給電板45を、スプリングワッシャ46とともに挟み込んでいる。
なお、この高圧給電板45は、外径を第2中空体17の内径よりも小さくして、外周が第2中空体17に接触しない大きさにしている。また、この高圧給電板45には流体を通過させる複数の流通孔45bを形成し、この流通孔45bと上記高圧給電板45の外側に形成される空間とが相まって上記第2中空体17内に供給された圧力流体の流路が形成される。
【0042】
さらに、上記取付孔17bには、内周にねじを形成し、図示しない高電圧源と接続する高圧ケーブル47を取り付けるための筒状のコネクタ48をねじ結合している。このコネクタ48は、上記高圧ケーブル47を貫通させる貫通孔を形成した底面48aを備えている。
そして、上記コネクタ48内には、上記高圧ケーブル47の先端を挿入した絶縁材料からなるケーブルガイド49とOリング50とを挿入している。
【0043】
上記ケーブルガイド49は、先端側に内径を大きくしたばね室49aを備え、この中に金属製の圧縮コイルばね51を組み込んでいる。この圧縮コイルばね51は、一方の端部に上記高圧ケーブル47の先端が接続され、高圧ケーブル47との間で電気的導通を維持したものである。
また、上記圧縮コイルばね51の他方の端部を、上記高圧給電板45であって流通孔45bが形成されていない部分に対向させている。これにより、圧縮コイルばね51の先端は、弾性力によって上記高圧給電板45に押し付けられて接触し、上記高圧ケーブル47と高圧給電板45とは安定して電気的導通状態を保つことができる。
【0044】
上記のように、図示しない高電圧源に接続した高電圧ケーブル47は、高圧給電板45を介して第2の導電パイプ15と導通し、第2の導電パイプ15は
図4に示すように上記連結ソケット33及びボールベアリング34を介して第1の導電パイプ23と導通し、さらに第1の導電パイプ23は
図2に示すようにねじ結合によって放電電極27と電気的に導通する。
したがって、高電圧ケーブル47に接続した高電圧源によって、放電電極27に高電圧が印加されることになる。
【0045】
なお、
図5に示すように、上記高圧ケーブル47はその先端を、圧縮コイルばね51を介して上記高圧給電板45に接触するようにしているため、上記コネクタ48を外すだけで上記第2中空体17から高圧ケーブル47を簡単に取り外すことができる。例えば、高圧ケーブル47の先端を、高圧給電板45や第2の導電パイプ15にハンダ付けしたり、ビス止めしたりしていた場合には、それを取り外したり、取り付けたりする手間がかかるが、この実施形態では高圧ケーブル47の着脱が簡単である。
また、圧力流体供給用のホース40,43も上記ホースニップル38,44の部分で簡単に取り外すことができる。
【0046】
このように、上記高圧ケーブル47やホース40,43の着脱が簡単にできるように構成しているので、高電圧源や圧力流体源から装置本体を簡単に分離できる。特に、この実施形態のイオン生成装置は、ケーシング18を回転させる回転駆動機構を備えているので、回転駆動機構に関連した箇所のメンテナンスが必要になることが考えられるが、そのようなメンテナンスの作業性もよくなる。
【0047】
この実施形態のイオン生成装置は、放電電極27に高電圧が印加されると、放電電極27と上記アースリング28及び導電板30との間で放電が起こり、ケーシング18内でイオンが生成される(
図7参照)。
また、圧力流体源から供給された圧力流体は、放電電極27の先端から噴出する直進流とともに、放電電極27の周囲の旋回流となり、これらが上記合流室22c内で合流して上記キャップ部材22内で生成されたイオンをイオン流として噴出させる。
【0048】
そして、上記圧力流体のうち、上記放電電極27の周囲に形成された旋回流は、放電電極27の先端近傍に生成されたイオンを撹拌して、上記キャップ部材22内で均一なイオン空間を生成する機能を発揮する。
このような旋回流だけでは、従来の装置のように、軸線に沿った直進方向の移送力が小さくなってしまうため、ケーシング18の外部へ十分な量のイオンを放出できないが、この実施形態のイオン生成装置では、上記放電電極27がパイプ状であり、流体通路となっているため、放電電極27の先端から噴出する圧力流体による直進流が、旋回しているイオンを引き込み、軸方向の推進力を付加すると考えられる。
【0049】
その結果、放電電極27の近傍で生成されたイオンをイオン流としてケーシング18から外部へ確実に送り出すことができる。
このイオン生成装置から噴出するイオン流は、上記旋回流と直進流との合流によって、イオン濃度を保ってより遠くまで噴射させることができる。
【0050】
この実施形態のイオン生成装置の性能を確認する実験について、
図6を用いて説明する。
図6(a)は、上記実施形態のイオン生成装置を用い、高電圧源の出力を500Wとするとともに、圧力流体源からは流量150〔L/min〕、圧力0.5〔MPa〕のエアを、ホース42を介して2本のホース40,43(
図5参照)に供給したときの実験結果を示している。つまり、この実験ではキャップ部材22内には、放電電極27から噴出する、矢印αで示す直進方向のエア流と、上記旋回流生成手段25によって形成された矢印βで示した旋回流が発生し、これらが合流している。
【0051】
その結果、
図6(a)のように、3個の流通孔29a全てから同様にイオン流が噴出していることが目視で確認できた。
このイオン生成装置では、上記放電電極の近傍で生成されたイオン空間を旋回流(矢印β)が撹拌することによって、キャップ部材22の合流室22c内にイオンが均一に広がり、放電電極27から噴出する直進流(矢印α)がそれを引き込んで前方へ移送することによって、全ての流通孔29aからイオン流が噴出したものと考えられる。
なお、この実施形態では、上記導電板30及び絶縁板29の中心に流通孔29a及び30aを形成していないため、放電電極27からの直進流が、そのまま流通孔30a及び29aから外部へ放出されることがなく、放電電極27の先端近傍で生成されたイオンを効率的に引き込んで、全ての流通孔29aから均等にイオン流を噴出できたと考えられる。
【0052】
一方、圧力流体を上記ホース40には供給せずに、上記ホース43のみに供給した場合、すなわち旋回流(矢印β)のみ発生させた実験では、イオン流は
図6(b)に示すように、1個の流通孔29aからのみ、僅かに噴出していることを確認できた。なお、この実験においても、高電圧源の出力は500〔W〕、ホース40への供給流量は150〔L/min〕である。
この実験から、上記旋回流(矢印β)のみでは、イオンを前方へ噴出させる直進方向の力が不足してしまうと予想される。
【0053】
また、特定の流通孔29aのみから噴出するイオン流が確認できた理由は、次のように考えられる。
この実験で、旋回流(矢印β)によって旋回するイオンも、その一部は旋回流に乗って流通孔30a及び29aへ向かうが、旋回流のみによって流通孔29aに到達するイオン量は直進流と合流した場合と比べて少ないと考えられる。そのため、上記旋回流において上流側になった
流通孔29aから先にイオン流が噴出すると、他の流通孔29aからはイオンを含まない圧力流体のみが噴出しているものと予想できる。
【0054】
さらに、圧力流体を上記ホース43には供給せずに、上記ホース40のみに供給した場合、すなわち直進流(矢印α)のみ発生させた実験では、
図6(c)に示すように、いずれの流通孔29aからもイオン流の噴出は目視で確認できなかった。なお、この実験においても、高電圧源の出力は500〔W〕、ホース40への供給流量は150〔L/min〕である。
【0055】
上記のように、パイプ状の放電電極27からエア流を噴出させたとしても、放電電極27の周囲の旋回流(矢印β)が無い場合には、イオン流が噴出しなかった理由を次のように考える。
イオンは、放電電極27とアースリング28との間に発生する放電によって生成されるため、放電電極27の周囲にリング状に存在している。一方、放電電極27から噴出するエア流は、上記リング状に分布しているイオン空間の中心を突き抜ける直進流となるため、この直進流だけでは、イオンを巻き込む機能が不十分であったためと推測できる。
【0056】
以上のように、上記実施形態のイオン生成装置は、パイプ状の放電電極27の中心から噴出する直進流と、放電電極27の周囲に形成する旋回流とを合流させることによって、複数の
イオン噴出口から安定的にイオン流を噴出させることができるものである。
また、この実施形態のイオン生成装置は、上記電動モーターmによってロータリー本体5を回転させることができる。ロータリー本体5が回転すれば、このロータリー本体5の回転中心軸から偏心した位置に固定された上記ケーシング18が、上記回転中心軸を中心とする円運動をすることになる。その結果、イオン噴出口が円運動し、実質的にイオン流の噴出範囲を広くすることもできる。
【0057】
また、上記ロータリー本体5に対して、第1、第2中空体11、17を相対回転可能に取り付けているため、上記ロータリー本体5が回転しても、上記第1、第2中空体11.17を回転させず、固定することができる。そのため、上記第2中空体17に取り付けた流体供給用のホース40,43や高圧ケーブル47が捻じれるようなことがない。
しかも、上記第2の導電パイプ15の開口中心を回転中心軸と一致させて、上記第1の導電パイプ23と連結しているため、第1の導電パイプ23が回転しても、第2の導電パイプ15は円運動しない。このように、第2の導電パイプ15が円運動しないので、この第2の導電パイプ15を設けた第1、第2中空体11,17の内径を円運動の半径に対応させて大きくする必要がなく、装置をコンパクトにすることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、上記キャップ部材22内に絶縁板29と導電板30とを積層して、絶縁板29の流通孔29aと導電板30の流通孔30aとでイオン噴出口を構成している。そして、上記圧力流体の流出方向に対して導電板30の下流側に絶縁板29を位置させている。
このように絶縁板29と導電板30とを配置したことによって
イオン噴出口から噴出されるイオン流を長期にわたってより安定化することができる。
【0059】
その理由を、
図7を用いて説明する。
上記放電電極27に高電圧を印加すると、主な放電は上記アースリング28と放電電極27の先端との間に発生するが、上記導電板30もアースに接続しているので、放電電極27から上記導電板30に向かう放電も発生する。このような導電板30を設けたことによってイオン空間が大きくなって、イオンを効率的に生成することができる。したがって、イオンを効率的に生成するためには、イオン噴出口を構成する導電板30が有効となる。
【0060】
一方、生成されたイオンが、圧力流体によってイオン流として流通孔30aを通過すると、金属製の導電板30はイオンによるダメージを受ける。このようなイオンダメージを受けると、流通孔30aがイオンによって消耗し、流通孔30aの開口径d3が大きくなったり、流通孔30aの方向が曲がってしまったりする。このように流通孔30aが変形すると、そこを通過して噴出する圧力流体の方向や速度が変化する。実際には、流体の方向が変わり、流速が落ちてしまうため、目的のイオン流が噴出されないことになる。
【0061】
しかし、上記実施形態では、
図7に示すように上記流通孔30aの下流側にセラミックなどの絶縁板29を配置し、その流通孔29aを上記流通孔30aに連続させているため、上記流通孔30aから噴出したイオン流は絶縁板29の流通孔29aによって、その方向や流速が修正される。
セラミック製などの絶縁板29は、導電板30のようなイオンダメージを受けないので、流通孔29aはイオン流が通過しても変形することがない。そのため、導電板30の流通孔30aがイオンダメージによって変形し、イオン流の方向などが多少変化したとしても、その流れを上記絶縁板29の流通孔29aによって修正して噴出させることができる。
特に、上記流通孔29aの上流側開口径d2を導電板30の流通孔30aの開口径d3よりも大きくしているので、導電板30の流通孔30aから噴出するイオン流を、確実に絶縁板29の流通孔29aに導くことができる。
【0062】
また、上記導電板30の流通孔30aがイオンダメージによってその変形量が大きくなったときには、導電板30を交換しなければならない。上記導電板30の下流側に上記絶縁板29を設けていないときには、1〜2週間で上記導電板30を交換しなければならなかったが、同様の使用状況においても、上記絶縁板29を設けることによって1年以上の使用が可能になった。つまり、絶縁板29を設けることによって、実質的に導電板30の寿命を延ばすことができる。
なお、上記導電板30を形成するタングステンやモリブデンなどは、ステンレスなどの他の金属と比べるとイオンダメージを受けにくい材料であるが、他の金属材料を比べて高価である。上記絶縁板29を設けることによって、上記のような高価な部品の寿命を延ばせることは有意義である。
【0063】
さらに、上記実施形態では、絶縁板29をキャップ部材22とねじ結合して、上記導電板30を絶縁板29によって環状凸部22bに押し付けているだけなので、キャップ部材22と上記導電板30との間でねじ結合が必要ない。もし、タングステン製の導電板30と、ステンレス製のキャップ部材22とをねじ結合した場合には、導電板30への放電を繰り返すうちに、異金属間である上記ねじ結合した部分が、放電の際の熱で溶着してしまう可能性がある。そうなれば、上記導電板30とキャップ部材22とが一体化して上記導電板30をキャップ部材22から取り外して交換することができなくなるので、キャップ部材22ごと交換しなければならない。上記実施形態の構成では、導電板30のみの交換が可能である。