(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168300
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】配管支持用アンカ及び配管支持部構造
(51)【国際特許分類】
F16L 3/12 20060101AFI20170713BHJP
F16L 3/00 20060101ALI20170713BHJP
F16L 13/02 20060101ALI20170713BHJP
F16L 3/08 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
F16L3/12 Z
F16L3/00 H
F16L13/02
F16L3/08 D
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-206359(P2013-206359)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-68497(P2015-68497A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】石山 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】渋鍬 賢一
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
実開平3−44288(JP,U)
【文献】
実開昭56−124375(JP,U)
【文献】
実開平5−47667(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00
F16L 3/08
F16L 13/02
F16L 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を基礎又は躯体に設置される架構に固定するのに用いられる配管支持用アンカであって、
前記配管に溶接により接合される円管部と、
前記架構に溶接により接合されるラグ部を備えた配管支持用アンカにおいて、
前記ラグ部は、該円管部に鍛造により一体で成形され、空間をおいて前記円管部を囲んで同軸に配置されている
ことを特徴とする配管支持用アンカ。
【請求項2】
配管を基礎又は躯体に設置される架構に固定するのに用いられる配管支持部構造であって、
円管部と、前記円管部に鍛造により一体で成形されて空間をおいて該円管部を囲んで同軸に配置されるラグ部を備えた配管支持用アンカが用いられ、
前記配管支持用アンカの前記円管部を前記配管に溶接により接合すると共に、前記配管支持用アンカの前記ラグ部を前記架構に溶接により接合することで、前記配管が前記架構に固定される
ことを特徴とする配管支持部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内部圧力の高い容器に接続されるベント管を基礎や躯体に固定する際に用いられる配管支持用アンカ及び配管支持部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、内部圧力の高い容器に接続されるベント管は、高温高圧の流体を流す都合上、亀裂や割れの発生を抑えるべく、曲げ,移動,回転等の自由度をなくした状態で中間部や端部を支持して固定する必要がある。
【0003】
従来において、このベント管を基礎や躯体に固定する配管支持用アンカは、円管部と、この円管部の周りに溶接により取り付けられたラグ部を備えており、この配管支持用アンカでは、ベント管に対して配管支持用アンカの円管部を溶接により接合したうえで、基礎や躯体に設置される角型の鋼材を枠組みして成る架構にラグ部を溶接により接合することにより、ベント管を基礎や躯体に固定するようになっている。
【0004】
このような配管支持用アンカを用いた配管の支持部構造に類するベント管の支持部構造が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09-068586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した従来の配管支持用アンカにおいて、円管部の周りに溶接により取り付けられるラグ部の肉厚を大きくして耐震性等の強度の向上を図ろうとすると、このラグ部の接合時に円管部に曲げや亀裂が生じてしまう虞があり、結局、ラグの肉厚だけでなく円管部の肉厚も大きくしなければならず、強度の向上及び設計の自由度の拡大をいずれも満足し得る配管支持用アンカを構築することが従来の課題となっていた。
【0007】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、設計の自由度の拡大を実現したうえで、強度の向上をも実現することが可能な配管支持用アンカ及び配管支持部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、配管を基礎又は躯体に設置される架構に固定するのに用いられる配管支持用アンカであって、前記配管に溶接により接合される円管部と、前記架構に溶接により接合されるラグ部を備えた配管支持用アンカにおいて、前記ラグ部は、該円管部に鍛造により一体で成形され、空間をおいて前記円管部を囲んで同軸に配置されている構成としたことを特徴としており、この配管支持用アンカの構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0009】
一方、本発明の請求項2に係る発明は、配管を基礎又は躯体に設置される架構に固定するのに用いられる配管支持部構造であって、円管部と、前記円管部に鍛造により一体で成形されて空間をおいて該円管部を囲んで同軸に配置されるラグ部を備えた配管支持用アンカが用いられ、前記配管支持用アンカの前記円管部を前記配管に溶接により接合すると共に、前記配管支持用アンカの前記ラグ部を前記架構に溶接により接合することで、前記配管が前記架構に固定される構成としている。
【0010】
本発明に係る配管支持用アンカ及び配管支持部構造では、配管に溶接により接合される配管支持用アンカの円管部と、架構に溶接により接合されるラグ部とが、鍛造により一体で成形されているので、溶接による変形の懸念が払拭されるうえ、強度上の要求に応じた円管部及びラグ部の各肉厚の変更が容易になる、すなわち、設計の自由度を広げつつ強度の向上が図られることとなる。
【0011】
また、本発明に係る配管支持用アンカ及び配管支持部構造では、配管支持用アンカの円管部に鍛造により一体で成形されたラグ部が、空間をおいて円管部を囲んで同軸に配置されているので、円管部から架構までの距離が長くなり、その分だけラグ部を介しての放熱量が多くなり、したがって、配管に高温高圧の流体が流れる場合において、架構側が高温に晒されるのを阻止し得ることとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る配管支持用アンカでは、設計の自由度の拡大を図りつつ、強度の向上をも実現することが可能であり、加えて、架構側が高温に晒されるのを防ぐことができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る配管支持用アンカの使用状態を示す全体斜視説明図である。
【
図2】
図1における配管支持用アンカの平面説明図(a),正面説明図(b)及び
図2(a)のA−A線位置に基づく断面説明図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る配管支持用アンカ及び配管支持部構造を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2は、本発明に係る配管支持用アンカ及び配管支持部構造の一実施形態を示しており、この実施形態では、本発明に係る配管支持用アンカ及び配管支持部構造を内部圧力の高い容器に接続するベント管の支持部に用いた場合を例に挙げて説明する。
【0015】
図1に示すように、この配管支持用アンカ10は、上下方向に沿って配置されるベント管を構成するベント管部1,2の間にあって双方のベント管部1,2に溶接により接合される円管部11と、この円管部11の軸方向中央部分に配置されたラグ部12を備えている。
【0016】
ラグ部12は、円管部11に対して鍛造により一体で成形されており、
図2にも示すように、円管部11の軸方向中央部分において、空間Sを残してこの円管部11を囲むようにして同軸に配置されている。
【0017】
なお、鍛造により一体で成形される円管部11及びラグ部12に採用される材質としては、例えば、SF490Aを用いることができる。
【0018】
また、ラグ部12は、角型の鋼材14〜17(例えば、SGV480)を枠組みして成る架構13に溶接により接合される。この場合、この架構13は、円管部11の下端を囲んで配置されていて、円管部11を囲むラグ部12の開放端が溶接により接合され、この架構13は、基礎Eに設置された複数の支柱3の各上端間に図示しないケミカルアンカボルトにより連結されるようになっている。
【0019】
この実施形態に係る配管支持用アンカ10及び配管支持部構造では、ベント管を構成するベント管部1,2の双方に配管支持用アンカ10の円管部11を溶接により接合する。
【0020】
また、円管部11の下端を囲んで配置されている架構13に配管支持用アンカ10のラグ部12を溶接により接合する。
【0021】
そして、架構13を基礎Eに設置された複数の支柱3の各上端間に図示しないケミカル樹脂ボルトにより連結することで、ベント管を構成するベント管部1,2を基礎Eに固定する。
【0022】
このように、この実施形態に係る配管支持用アンカ10及び配管支持部構造では、ベント管部1,2に溶接により接合される配管支持用アンカ10の円管部11と、架構13に溶接により接合されるラグ部12とを鍛造により一体で成形するようにしているので、円管部11の溶接による変形の懸念が払拭される。
【0023】
加えて、強度上の要求に応じた円管部11及びラグ部12の各肉厚の変更が容易になる、すなわち、設計の自由度を広げつつ強度の向上が図られることとなる。
【0024】
また、この実施形態に係る配管支持用アンカ10及び配管支持部構造では、配管支持用アンカ10の円管部11に鍛造により一体で成形されたラグ部12が、空間Sをおいて円管部11を囲んで同軸に配置されているので、円管部11から架構13までの距離が長くなり、その分だけラグ部12を介しての放熱量が多くなり、したがって、ベント管部1,2に高温高圧の流体が流れる場合には、架構13側のケミカルアンカボルトに熱による悪影響が及ぶのを阻止し得ることとなる。
【0025】
本実施形態では、本発明に係る配管支持用アンカ及び配管支持部構造を内部圧力の高い容器に接続するベント管の支持部に用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0026】
また、本実施形態では、本発明に係る配管支持用アンカ及び配管支持部構造を上下方向に沿って配置されるベント管部1,2の支持固定に採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、本発明に係る配管支持用アンカ及び配管支持部構造を左右方向に配置される配管の支持固定に採用してもよい。
【0027】
さらに、本実施形態では、本発明に係る配管支持用アンカ及び配管支持部構造により、ベント管を構成するベント管部1,2を基礎Eに固定するようにしているが、これに限定されるものではなく、本発明に係る配管支持用アンカ及び配管支持部構造によって、ベント管を構成するベント管部1,2を建物躯体に固定するようにしてもよい。
【0028】
本発明に係る配管支持用アンカ及び配管支持部構造の構成は、上記した実施形態の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0029】
1,2 ベント管部(ベント管;配管)
3 支柱
10 配管支持用アンカ
11 円管部
12 ラグ部
13 架構
E 基礎
S 空間