(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及び無機充填材(C)を少なくとも含有し、該無機充填材(C)は、炭化ケイ素粉体の表面の少なくとも一部が無機酸化物で処理された表面処理炭化ケイ素(C−1)と、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種以上である第2の無機充填材(C−2)を含み、
前記表面処理炭化ケイ素(C−1)が、樹脂固形成分の合計100質量部に対し、150〜600質量部含まれ、
前記第2の無機充填材(C−2)が、樹脂固形成分の合計100質量部に対し、150〜500質量部含まれる、
樹脂組成物。
前記エポキシ樹脂(A)が、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂及びナフトールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上である、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記マレイミド化合物(D)が、前記エポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及びマレイミド化合物(D)の合計100質量部に対し、5〜50質量部含まれる、
請求項11又は12に記載の樹脂組成物。
前記エポキシ樹脂(A)が、前記エポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及びマレイミド化合物(D)の合計100質量部に対し、10〜90質量部含まれる、
請求項11〜13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記シアン酸エステル化合物(B)が、前記エポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及びマレイミド化合物(D)の合計100質量部に対し、10〜90質量部含まれる、
請求項11〜14のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の難燃性樹脂組成物は、放熱性が不十分であった。また、特許文献2に記載の電気絶縁性樹脂組成物は、無機充填材の高配合によって電気絶縁性樹脂組成物の吸水率が高くなるため、高放熱性と低吸水性とを両立させることが困難であった。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、放熱性、吸水性、銅箔ピール強度及び吸湿耐熱性に優れるプリント配線板等を実現可能な樹脂組成物、並びに、これを用いたプリプレグ、積層板、金属箔張積層板及びプリント配線板等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる問題点の解決のため鋭意検討した結果、エポキシ樹脂、シアン酸エステル化合物、及び炭化ケイ素粉体の表面の少なくとも一部が無機酸化物で処理された無機充填材を少なくとも含有する樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できるプリント配線板等の金属箔張積層板を得ることができるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下、<1>〜<21>を提供する。
【0010】
〔1〕
エポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及び無機充填材(C)を少なくとも含有し、該無機充填材(C)は、炭化ケイ素粉体の表面の少なくとも一部が無機酸化物で処理された表面処理炭化ケイ素(C−1)と、
アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種以上である第2の無機充填材(C−2)を含み、
前記表面処理炭化ケイ素(C−1)が、樹脂固形成分の合計100質量部に対し、150〜600質量部含まれ、
前記第2の無機充填材(C−2)が、樹脂固形成分の合計100質量部に対し、150〜500質量部含まれる、
樹脂組成物。
〔2〕
前記表面処理炭化ケイ素(C−1)が、前記炭化ケイ素粉体からなるコア粒子と、該コア粒子の表面の少なくとも一部に形成された無機酸化物とを有する、
〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕
前記コア粒子は、0.5〜20μmの平均粒子径を有する、
〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕
前記無機酸化物が、シリカ、チタニア、アルミナ及びジルコニウムオキサイドからなる群から選択される少なくとも1種以上である、
〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔5〕
前記無機酸化物は、10〜70nmの厚みを有する、
〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔6〕
前記無機充填材(C)が、樹脂固形成分の合計100質量部に対し、150〜900質量部含まれる、
〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔7〕
前記エポキシ樹脂(A)が、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂及びナフトールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上である、
〔1〕〜
〔6〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔8〕
前記シアン酸エステル化合物(B)が、下記一般式(1)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、下記一般式(2)で表されるノボラック型シアン酸エステル化合物及び下記一般式(3)で表されるビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種以上である、
〔1〕〜
〔7〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、nは、1以上の整数を示す。)
【化2】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、nは、0以上の整数を示す。)
【化3】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、nは、1以上の整数を示す。)
〔9〕
前記エポキシ樹脂(A)が、前記エポキシ樹脂(A)及び前記シアン酸エステル化合物(B)の合計100質量部に対し、10〜90質量部含まれる、
〔1〕〜
〔8〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔10〕
前記シアン酸エステル化合物(B)が、前記エポキシ樹脂(A)及び前記シアン酸エステル化合物(B)の合計100質量部に対し、10〜90質量部含まれる、
〔1〕〜
〔9〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔11〕
マレイミド化合物(D)をさらに含有する、
〔1〕〜
〔10〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔12〕
前記マレイミド化合物(D)が、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル)プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン及び下記一般式(4)で表されるマレイミド化合物からなる群から選択される少なくとも1種以上である、
〔11〕に記載の樹脂組成物。
【化4】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、nは、平均値として1〜10の整数を示す。)
〔13〕
前記マレイミド化合物(D)が、前記エポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及びマレイミド化合物(D)の合計100質量部に対し、5〜50質量部含まれる、
〔11〕又は〔12〕に記載の樹脂組成物。
〔14〕
前記エポキシ樹脂(A)が、前記エポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及びマレイミド化合物(D)の合計100質量部に対し、10〜90質量部含まれる、
〔11〕〜〔13〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔15〕
前記シアン酸エステル化合物(B)が、前記エポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及びマレイミド化合物(D)の合計100質量部に対し、10〜90質量部含まれる、
〔11〕〜〔14〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔16〕
基材と、該基材に含浸又は添着された〔1〕〜
〔15〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物とを含む、
プリプレグ。
〔17〕
絶縁層として
〔16〕に記載のプリプレグと、該プリプレグの片面又は両面に配設された金属箔とを含む、
金属箔張積層板。
〔18〕
絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が
〔1〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、
プリント配線板。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた放熱性、吸水率、銅箔ピール強度及び吸湿耐熱性を有する、プリプレグ、金属箔張積層板及びプリント配線板等を実現し得る、樹脂組成物を提供することができ、その工業的な実用性は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0016】
本実施形態の樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及び無機充填材(C)を少なくとも含有する樹脂組成物であって、その無機充填材(C)として、炭化ケイ素粉体の表面の少なくとも一部が無機酸化物で処理された表面処理炭化ケイ素(C−1)を少なくとも含むものである。
【0017】
本実施形態の樹脂組成物において用いられるエポキシ樹脂(A)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;グリシジルアミン系エポキシ樹脂;グリシジルエステル系エポキシ樹脂;ブタジエンなどの2重結合をエポキシ化した化合物;水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらのエポキシ樹脂(A)は、所望の性能に応じて1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0018】
これらのなかでも、耐熱性、吸水性、吸湿耐熱性等の特性に優れる観点から、上記のエポキシ樹脂(A)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
ここで、アラルキル型エポキシ樹脂の具体例としては、下記一般式(5)で表されるフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、下記一般式(6)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、下記一般式(7)で表されるナフトールアラルキル型エポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(6)で表されるエポキシ樹脂の製品例としては、例えば、日本化薬株式会社製のNC−3000−FHが挙げられる。
【化5】
(式中、R
aは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、nは、1〜50の整数を示す。)
【化6】
(式中、R
aは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、nは、1〜50の整数を示す。)
【化7】
(式中、R
aは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、nは、1〜50の整数を示す。)
【0020】
本実施形態の樹脂組成物におけるエポキシ樹脂(A)の含有量は、所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、前記エポキシ樹脂(A)及びシアン酸エステル化合物(B)の合計100質量部に対し、10〜90質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態の樹脂組成物において用いられるシアン酸エステル化合物(B)としては、一般式R−O−CNで表される化合物(式中、Rは有機基である。)であれば、一般に公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。その具体例としては、上記一般式(1)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、上記一般式(2)で表されるノボラック型シアン酸エステル化合物、上記一般式(3)で表されるビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、ビス(3,5−ジメチル4−シアナトフェニル)メタン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2、7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4、4’−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、2、2’−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(3、5−ジメチル、4−シアナトフェニル)メタン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらのなかでも、難燃性を高める観点から、上記一般式(1)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、上記一般式(2)で表されるノボラック型シアン酸エステル化合物、上記一般式(3)で表されるビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物が好ましい。これらのシアン酸エステル化合物(B)は、所望の性能に応じて1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0022】
上記のシアン酸エステル化合物(B)は、市販品を用いることができ、又は、公知の方法で製造することにより得ることもできる。具体的には、上記一般式(1)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物は、例えば特開2007−277102号公報に記載されている方法によって製造することができる。また、上記一般式(2)で表されるノボラック型シアン酸エステル化合物としては、ロンザジャパン株式会社等から市販されているものを好適に使用することができる。さらに上記一般式(3)で表されるビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物は、例えば特開2010−174242号公報に記載されている方法によって製造することができる。
【0023】
本実施形態の樹脂組成物におけるシアン酸エステル化合物(B)の含有量は、所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、耐熱性と硬化性の観点から、前記エポキシ樹脂(A)及びシアン酸エステル化合物(B)の合計100質量部に対し、10〜90質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましい。
【0024】
本実施形態の樹脂組成物において用いられる無機充填材(C)は、炭化ケイ素粉体の表面の少なくとも一部が無機酸化物で処理された表面処理炭化ケイ素(C−1)を少なくとも含むものである。換言すれば、表面処理炭化ケイ素(C−1)は、炭化ケイ素粉体からなるコア粒子と、このコア粒子の表面の少なくとも一部に形成された無機酸化物とを有するものである。この表面処理炭化ケイ素(C−1)においては、高い熱伝導性を有する炭化ケイ素粉体がコア粒子として用いられており、さらに、そのコア粒子の表面に無機酸化物が形成されていることで粉体表面が絶縁性に改質されている。そのため、この表面処理炭化ケイ素(C−1)を例えば積層板等の充填材として用いることにより、高い放熱性と絶縁性とを両立させることができる。
【0025】
コア粒子として用いる炭化ケイ素粉体の平均粒子径(D50)は、所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。成形性、熱伝導率、分散性等の観点から、平均粒子径は0.5〜20μmであることが好ましく、3.0〜18μmであることがより好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径(D50)とは、メジアン径を意味し、測定した粉体の粒度分布を2つに分けたときの大きい側と小さい側が等量となる値である。この平均粒子径(D50)は、レーザ回折散乱式の粒度分布測定装置により分散媒中に所定量投入された粉体の粒度分布を測定し、小さい粒子から体積積算して全体積の50%に達したときの値を意味する。
【0026】
上記の炭化ケイ素粉体は、粉砕法や造粒法等の各種公知の方法により製造することができ、その製法は特に限定されない。また、その市販品を、商業的に容易に入手可能である。市販品としては、信濃電気製錬(株)製の商品名シナノランダム CP/GPなどが挙げられる。
【0027】
コア粒子となる炭化ケイ素粉体の表面に形成される無機酸化物は、炭化ケイ素粉体の表面の少なくとも一部に付与されていればよい。つまり、無機酸化物は、炭化ケイ素粉体の表面に部分的に付与されていても、炭化ケイ素粉体の表面のすべてを覆うように付与されていてもよい。均一且つ強固な被膜を形成して高い絶縁性を付与する観点から、無機酸化物は、炭化ケイ素粉体の表面のすべてを覆うように略均一に付与されている、すなわち、炭化ケイ素粉体の表面に無機酸化物の被膜が略均一に形成されていることが好ましい。
【0028】
炭化ケイ素粉体を被覆する無機酸化物としては、その種類は特に限定されないが、金属酸化物が好ましい。金属酸化物の具体例としては、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニウムオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導性、耐熱性及び絶縁性の観点から、アルミナが特に好ましい。なお、無機酸化物は、所望の性能に応じて1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0029】
また、炭化ケイ素物粉体を被覆する無機酸化物の厚さは、所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。均一且つ強固な被膜を形成して高い絶縁性を付与する観点から、無機酸化物の厚さは10〜70nmであることが好ましく、15〜50nmであることがより好ましい。
【0030】
表面処理炭化ケイ素(C−1)の作製方法は、特に限定されない。例えば、ゾルゲル法、液相析出法、浸漬塗布法、スプレー塗布法、印刷法、無電解メッキ法、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等の各種公知の手法で、無機酸化物又はその前駆体を上述した炭化ケイ素粉体の表面に付与することで、表面処理炭化ケイ素(C−1)を得ることができる。したがって、無機酸化物又はその前駆体を炭化ケイ素粉体の表面に付与する方法は、湿式法或いは乾式法のいずれで構わない。炭化ケイ素粉体の表面を無機酸化物で被覆することにより、半導電性を有する炭化ケイ素が絶縁化されるので、樹脂組成物やプリント配線板等の熱伝導率を向上させることのできる絶縁性複合材料として用いることが可能となる。
【0031】
表面処理炭化ケイ素(C−1)の好適な製造方法としては、ケイ素アルコキシド、アルミニウムアルコキシドなどの金属アルコキシドを溶解したアルコール溶液に、炭化ケイ素粉体を分散し、撹拌させながら水やアルコールや触媒などを滴下し、アルコキシドを加水分解することにより、粉体表面に酸化ケイ素或いは酸化アルミニウム等の絶縁性被膜を形成し、その後、粉体を固液分離し真空乾燥後、熱処理を施す方法が挙げられる。
【0032】
なお、表面処理炭化ケイ素(C−1)は、均一且つ強固な被膜を形成して高い絶縁性を付与する観点から、炭化ケイ素粉体の総量100質量部に対して、無機酸化物を0.5〜15質量部含むことが好ましく、より好ましくは1.0〜10.0質量部、さらに好ましくは1.0〜5.0質量部である。
【0033】
上述した表面処理炭化ケイ素(C−1)は、樹脂との親和性及び絶縁化をより高める観点から、カップリング剤等でさらに処理されたものであることが好ましい。表面処理炭化ケイ素(C−1)をカップリング剤等で処理することにより、その被覆層(無機酸化物)上に表面被覆層がさらに形成されるため、樹脂との親和性及び絶縁化がより高められる。具体的には、表面処理炭化ケイ素(C−1)を溶剤中へ分散してスラリーを作成し、表面被覆層の前駆体となるカップリング剤、例えばシラノール化合物等の加水分解液を添加し、粉体をフィルター等の手法により回収・乾燥することで、無機酸化物上に表面被覆層を有する表面処理炭化ケイ素(C−1)を得ることができる。なお、表面被覆層の形成方法としては、均一被覆及び絶縁化の観点から、湿式法が好適に用いられる。
【0034】
本実施形態の樹脂組成物中の表面処理炭化ケイ素(C−1)の含有量は、所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。放熱性、絶縁性、耐熱性、硬化性及び難燃性等の観点から、表面処理炭化ケイ素(C−1)の含有量は、樹脂固形成分の合計100質量部に対し、150〜600質量部であることが好ましく、より好ましくは200〜500質量部であり、さらに好ましくは250〜400質量部である。なお、本明細書において、樹脂固形成分とは、エポキシ樹脂(A)及びシアン酸エステル化合物を意味し、但し本実施形態の樹脂組成物が後述するマレイミド化合物(D)及び/又はこれら以外の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、エラストマー類などの高分子化合物を含有する場合には、これらすべてを含むものとする。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物は、放熱性及び絶縁性をより向上させる観点から、無機充填材(C)として、前記表面処理炭化ケイ素(C−1)以外の、第2の無機充填材(C−2)を含有していてもよい。第2の無機充填材(C−2)としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。一般に、積層板用或いは電気配線板用樹脂組成物に用いられるものを好適に用いることができる。その具体例としては、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ等のシリカ類、ベーマイト、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成タルク、焼成クレー、焼成カオリン、マイカ、E−ガラス、A−ガラス、NE−ガラス、C−ガラス、L−ガラス、D−ガラス、S−ガラス、M−ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラス、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素などが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの第2の無機充填材(C−2)は、所望の性能に応じて1種を単独で或いは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。これらの中でも、より高い放熱性及び絶縁性を達成する観点から、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムが好ましく、アルミナが特に好ましい。
【0036】
第2の無機充填材(C−2)として好適なアルミナは、市販品を使用することができ、例えば、住友化学(株)製のスミコランダムAA−03、AA−04、AA−05、AA−07、AA−1、AA−2、AA−3、AA−10、AA−18、電気化学工業(株)製のASFP−20、DAW−03、DAW−05、DAW−07、(株)アドマテックス製のAO−502、AO−802、新日鉄マテリアルズ(株)マイクロン社製のAX3−32、AX3−15、AX10−32、昭和電気工業(株)製のCB−P02、CB−P05、CB−P10,CBP−P10、CB−A09S、CB−A10S、CB−A10、CB−P15、CB−A20X等が好適に用いられる。これらは1種を単独で或いは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0037】
なお、第2の無機充填材(C−2)の平均粒子径(D50)は、所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。成形性、熱伝導率、分散性等を考慮すると、第2の無機充填材(C−2)の平均粒子径は、0.2〜20μmであることが好ましい。また、樹脂組成物への充填率を高め、プリプレグ成形時のボイド発生等の成形不良を低減させる観点から、平均粒子径が異なる2種以上の第2の無機充填材(C−2)を用いることが好ましい。例えば、平均粒子径が異なる2種のアルミナを用いる場合、平均粒子径が0.5〜10μm、より好ましくは1.5〜7μmの第1のアルミナと、平均粒子径が0.01〜2μm、より好ましくは0.1〜1.0μmの第2のアルミナとを、第2の無機充填材(C−2)として使用することが好ましい。
【0038】
本実施形態の樹脂組成物中の第2の無機充填材(C−2)の含有量は、所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。放熱性、絶縁性、耐熱性及び難燃性等の観点から、第2の無機充填材(C−2)の含有量は、前述した樹脂固形成分の合計100質量部に対し、150〜500質量部であることが好ましく、より好ましくは200〜450質量部であり、さらに好ましくは250〜400質量部である。
【0039】
本実施形態の樹脂組成物中の無機充填材(C)の総含有量、すなわち表面処理炭化ケイ素(C−1)及び必要に応じて配合される第2の無機充填材(C−2)の合計の含有量は、所望の性能に応じて適宜設定することができ特に限定されないが、放熱性、絶縁性、耐熱性、硬化性及び難燃性等の観点から、前述した樹脂固形成分の合計100質量部に対し、150〜900質量部であることが好ましく、より好ましくは200〜800質量部、さらに好ましくは250〜750質量部である。
【0040】
なお、無機充填材(C)中の表面処理炭化ケイ素(C−1)の含有量は、所望の性能に応じて適宜設定することができ特に限定されないが、放熱特性の観点から、無機充填材(C)の総量100質量部に対して、30〜100質量部であることが好ましく、50〜100質量部であることがより好ましい。
【0041】
上述した無機充填材(C)を使用するにあたり、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、さらにシランカップリング剤や分散剤を含有していてもよい。シランカップリング剤や分散剤を含有することによって、上述した表面処理炭化ケイ素(C−1)や第2の無機充填材(C−2)の分散性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているものを用いることができ、その種類は特に限定されない。その具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン系、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系、フェニルシラン系などが挙げられるが、これらに特に限定されない。シランカップリング剤は、1種を単独で或いは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。また、分散剤としては、一般に塗料用に使用されているものを用いることができ、その種類は特に限定されない。好ましくは、共重合体ベースの湿潤分散剤が使用され、その具体例としては、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk−110、111、180、161、BYK−W996、BYK−W9010、BYK−W903、BYK−W940等が挙げられる。湿潤分散剤は、1種を単独で或いは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0042】
また、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、さらにマレイミド化合物(D)を含有していてもよい。マレイミド化合物(D)を含有することによって、耐熱性、吸湿耐熱性、耐燃性がより一層高められる傾向にある。このマレイミド化合物(D)としては、マレイミド基を有する化合物であれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。その具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、上記一般式(4)で表されるマレイミド化合物、これらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマー等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、耐熱性、吸湿耐熱性、耐燃性等の観点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、上記一般式(4)で表されるマレイミド化合物が好ましい。なお、これらは、1種を単独で或いは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物中のマレイミド化合物(D)の含有量は、所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。吸湿耐熱性や耐燃性等の観点から、マレイミド化合物(D)の含有量は、エポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及びマレイミド化合物(D)の合計100質量部に対し、5〜50質量部が好ましく、より好ましくは5〜20質量部である。
【0044】
なお、本実施形態の樹脂組成物がマレイミド化合物(D)を含有する場合、エポキシ樹脂(A)の含有量は、エポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及びマレイミド化合物(D)の合計100質量部に対し、10〜90質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましい。
同様に、本実施形態の樹脂組成物がマレイミド化合物(D)を含有する場合、シアン酸エステル化合物(B)の含有量は、エポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及びマレイミド化合物(D)の合計100質量部に対し、10〜90質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましい。
【0045】
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化速度を適宜調整するために硬化促進剤を含有していてもよい。この硬化促進剤としては、シアン酸エステル化合物やエポキシ樹脂の硬化促進剤として一般に使用されているものを用いることができ、その種類は特に限定されない。その具体例としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の有機金属塩類、イミダゾール類及びその誘導体、第3級アミン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。硬化促進剤は、1種を単独で或いは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0046】
またさらに、本実施形態の樹脂組成物は、所期の特性が損なわれない範囲において、上記以外の成分を含有していてもよい。このような任意の配合物としては、例えば、上記以外の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマー、エラストマー類などの種々の高分子化合物、上記以外の難燃性化合物、各種添加剤などが挙げられる。これら任意の配合物としては、当業界で一般に使用されているものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。例えば、上記以外の難燃性化合物としては、4,4’−ジブロモビフェニル等の臭素化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素含有化合物、オキサジン環含有化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。また、各種添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これら任意の配合物は、1種を単独で或いは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物は、常法にしたがって調製することができ、その調製方法は、特に限定されない。上述したエポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)及び無機充填材(C)等を攪拌・混合することで、本実施形態の樹脂組成物を容易に調製することができる。なお、この樹脂組成物の調製時には、各成分を均一に混合させるための公知の処理(攪拌、混合、混練処理など)を行うことができる。上記の攪拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミル、ホモミキサーなどの混合を目的とした公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0048】
本実施形態の樹脂組成物は、粘度を下げ、ハンドリング性を向上させるとともにガラスクロスへの含浸性を高める等の観点から、必要に応じて、有機溶剤に溶解した樹脂組成物の溶液として用いることが可能である。すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、上述した各成分の少なくとも一部、好ましくは全部が有機溶剤に溶解或いは相溶した態様(樹脂ワニス)として用いることができる。有機溶剤としては、上述したエポキシ樹脂(A)、シアン酸エステル化合物(B)、マレイミド化合物(D)等の樹脂固形成分の少なくとも一部、好ましくは全部を溶解或いは相溶可能なものであれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。その具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の極性溶剤類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられるが、これらに特に限定されない。有機溶剤は、1種を単独或いは2種以上適宜組み合わせて使用することができる。
【0049】
一方、本実施形態のプリプレグは、上記の樹脂組成物を基材に含浸又は添着させたものである。このプリプレグは常法にしたがって作製することができ、その作製方法は、特に限定されない。例えば、上記樹脂組成物に有機溶剤を加えた樹脂ワニスを基材に含浸又は塗布した後、100〜200℃の乾燥機中で1〜60分加熱する等して半硬化(Bステージ化)させることで、本実施形態のプリプレグを得ることができる。このとき、基材に対する樹脂組成物の付着量、すなわち半硬化後のプリプレグの総量に対する樹脂組成物量(無機充填材(C)を含む。)は、特に限定されないが、20〜95質量%の範囲が好ましい。また、乾燥条件は特に限定されないが、一般には、樹脂組成物中の有機溶剤の含有割合が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることができる。
【0050】
本実施形態のプリプレグにおいて使用される基材は、特に限定されるものではなく、例えば各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。その具体例としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、NEガラス、クォーツ、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、液晶ポリエステル等の織布又は不織布等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で或いは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。基材の厚みは、特に限定されないが、0.01〜0.3mmの範囲が好ましい。これらの中でも、積層板用途においては汎用されている超開繊処理や目詰め処理を施した織布が、寸法安定性の面から好適である。また、エポキシシラン処理、アミノシラン処理などのシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布は、吸湿耐熱性の面から好ましい。さらに、液晶ポリエステル織布は、電気特性の面から好ましい。
【0051】
他方、本実施形態の金属箔張積層板は、上述のプリプレグと金属箔とを積層成形したものである。具体的には、前述のプリプレグを1枚或いは複数枚重ね、その片面もしくは両面に銅やアルミニウムなどの金属箔を配置して、積層成形することにより作製することができる。成形条件としては、通常のプリント配線板用積層板及び多層板の手法が適用でき、特に限定されない。例えば、多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを使用し、温度180〜220℃、加熱時間100〜300分、面圧20〜40kgf/cm
2で積層成形するのが一般的である。ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔等の銅箔が好ましい。高周波領域における導体損失を考慮すると、マット面の粗さが小さい電解銅箔がより好適である。また、金属箔の厚みは、特に限定されないが、2〜70μmが好ましく、より好ましくは3〜35μmである。
【0052】
また多層板の製造方法としては、例えば、上記のプリプレグ1枚の両面に、35μmの銅箔を配置して、上記条件にて積層形成した後、内層回路を形成し、この回路に黒化処理を実施して、内層回路板を形成する。この内層回路板と上記のプリプレグとを重ね合わせて積層成形することにより、多層板を得ることができる。また、上記のプリプレグと別途作製した内層用の配線板とを重ね合わせて積層成形することにより、多層板を得ることもできる。
【0053】
上記の金属箔張積層板は、所定の配線パターンを形成することにより、プリント配線板として用いることができる。この金属箔張積層板は、放熱性、吸水性、銅箔ピール強度及び吸湿耐熱性等に優れるので、そのような性能が要求される半導体パッケージ用途において、殊に有用なものとなる。
【0054】
上記のプリント配線板は、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、上述した銅張積層板等の金属箔張積層板を用意する。次に、金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に上述したプリプレグを所要枚数重ね、さらにその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び上述した本実施形態の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、さらに外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成し、プリント配線板が製造される。この製造例で示したプリント配線板においては、導体層として内層回路及び外層回路積層を、絶縁層としてプリプレグ(基材及びこれに含浸又は添着された本実施形態の樹脂組成物)及び金属箔張積層板の樹脂組成物層(本実施形態の樹脂組成物の硬化物からなる層)を有するものとなる。
【実施例】
【0055】
以下に合成例、実施例、比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を表す。
【0056】
調製例1 α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物の合成
温度計、攪拌器、滴下漏斗及び還流冷却器を取りつけた反応器を予めブラインにより0〜5℃に冷却しておき、そこへ塩化シアン7.47g(0.122mol)、35%塩酸9.75g(0.0935mol)、水76ml、及び塩化メチレン44mlを仕込んだ。この反応器内の温度を−5〜+5℃、pHを1以下に保ちながら、撹拌下、α−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:214g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製)20g(0.0935mol)、及びトリエチルアミン14.16g(0.14mol)を塩化メチレン92mlに溶解した溶液を滴下漏斗により1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらにトリエチルアミン4.72g(0.047mol)を15分間かけて滴下した。
滴下終了後、同温度で15分間撹拌後、反応液を分液して、有機層を分取した。得られた有機層を水100mlで2回洗浄した後、エバポレーターにより減圧下で塩化メチレンを留去し、最終的に80℃で1時間濃縮乾固させることにより、上記一般式(1)で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂のシアン酸エステル化物(α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、式中のRはすべて水素原子であり、nは1〜5のものが含まれる。)23.5gを得た。
得られたシアン酸エステル化合物を、液体クロマトグラフィー及びIRスペクトルにより分析したところ、原料ピークは検出されず、2264cm
−1付近のシアン酸エステル基の吸収が確認された。また、
13C−NMR及び
1H−NMRにより、構造を同定した。水酸基からシアネート基への転化率は、99%以上であった。
【0057】
製造例1 アルミナ被覆処理炭化ケイ素粉体の製造
イソプロピルアルコール1000mlにアルミニウムジイソプロピレートモノセカンダリブチレート3.5gを溶解した。この溶解液に炭化ケイ素粉体(GP#800、信濃電気製錬(株)製、平均粒子径14μm)100gを投入し、溶液全体に炭化ケイ素粉体が分散するように攪拌しつつ、炭化ケイ素粉体と溶液とを混合して、スラリー状溶液を得た。次に、スラリー状態を維持しつつ、得られたスラリー状溶液へ純水5gを加え、攪拌し、30℃で60分間熟成して加水分解反応を行った。次いで、処理後の炭化ケイ素粉体を取り出し、数10mLのアセトンにより洗浄した。その後、乾燥してアセトンを蒸発させることで、アルミナ被覆層が炭化ケイ素粉体の表面に均一に形成された、アルミナ被覆炭化ケイ素粉体を得た。
【0058】
実施例1
合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物40質量部、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(BMI−70、ケイアイ化成(株)製)20質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000−FH、日本化薬(株)製)40質量部、シランカップリング剤(Z6040、東レダウコーニング(株)製)15質量部、及び、酸基を含む湿潤分散剤(BYK−W903、ビッグケミー・ジャパン(株)製)5質量部を、メチルエチルケトンで溶解混合し、得られた混合液に、製造例1で得たアルミナ被覆炭化ケイ素粉体290質量部、オクチル酸マンガン(ニッカオクチックスMn、日本化学産業(株)製、Mn含有量8%)0.01質量部、2,4,5−トリフェニルイミダゾール(東京化成工業(株)製)0.5質量部を混合して、樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。
得られた樹脂ワニスをメチルエチルケトンで希釈して固形分濃度を65wt%とし、これを厚さ0.1mm及び質量47.2g/m
2のEガラスクロス(旭化成イーマテリアルズ(株)製)に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥することにより、樹脂組成物量が80質量%のプリプレグを得た。次に、このプリプレグを8枚重ね、得られた積層体の両面に厚さ12μmの電解銅箔(3EC−III、三井金属鉱業(株)製)を配置し、圧力30kgf/cm
2、温度220℃、120分間の真空プレスを行い積層成形することで、厚さ0.8mmの金属箔張積層板(両面銅張積層板)を得た。
【0059】
得られた金属箔張積層板を用いて、熱伝導率、ピール強度、吸水率、吸湿耐熱性及び電気抵抗の測定、並びに外観評価を行った。
【0060】
測定方法
1)熱伝導率:得られた金属箔張積層板の密度を測定し、また、比熱をDSC(TA Instrumen Q100型)により測定し、さらに、キセノンフラッシュアナライザ(Bruker:LFA447Nanoflash)により熱拡散率を測定した。そして、熱伝導率を以下の式から算出した。
熱伝導率(W/m・K)=密度(kg/m
3)×比熱(kJ/kg・K)×熱拡散率(m
2/S)×1000
2)銅箔ピール強度:JIS C6481のプリント配線板用銅張積層板試験方法(5.7引き剥がし強さ参照。)に準拠して測定した。
3)吸湿耐熱性:得られた金属箔張積層板をダイシングソーで50mm×50mm×厚さ0.8mmのサイズに切断後、片面の半分以外の銅箔をすべてエッチング除去して、片面にのみ銅箔が半分残された試験片を得た。この試験片を用い、プレシッヤークッカー試験機(平山製作所製、PC−3型)で121℃、2気圧で3時間処理後、260℃の半田槽の中に60秒浸漬した後の外観変化を目視で観察した(フクレ発生数/試験数)。
4)吸水率:プレシッヤークッカー試験機(平山製作所製、PC−3型)で121℃、2気圧で5時間処理し、処理前後における重量変化率を算出した。
5)電気抵抗:JIS K−6911に準拠して、500Vを電極に印加後、1分後の電気抵抗値を絶縁抵抗計により測定した。
6)外観評価:得られた金属張り積層板を520mm×340mm×0.8mmのサイズに切断後、両面の銅箔をすべてエッチング除去して、表面の銅箔がすべて除去されたサンプル(積層板)を得た。この積層板を目視で観察し、外観が良好なものを「○」、色むらが発生したものを「×」と評価した。
【0061】
実施例2
無機充填材として、非球状アルミナ(AA−3、住友化学(株)製、平均粒子径3μm)215質量部と、アルミナ(ASFP−20、電気化学工業(株)製、平均粒子径0.3μm)85質量部と、実施例1で使用したアルミナ被覆処理炭化ケイ素粉体300質量部とを用いること以外は、実施例1と同様に行ない、樹脂組成物及び両面銅張積層板を得た。
【0062】
実施例3
無機充填材として、非球状アルミナ(AA−3)190質量部と、アルミナ(ASFP−20)140質量部と、実施例1で使用したアルミナ被覆処理炭化ケイ素粉体350質量部とを用いること以外は、実施例1と同様に行ない、樹脂組成物及び両面銅張積層板を得た。
【0063】
実施例4
α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物の配合量を50質量部に、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の配合量を50質量部にそれぞれ変更し、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンの配合を省略すること以外は、実施例3と同様に行ない、樹脂組成物及び両面銅張積層板を得た。
【0064】
比較例1
無機充填材として、球状アルミナ(AX3−15、新日鉄マテリアルズ(株)マイクロン社製、平均粒子径3μm)500質量部を用い、シランカップリング剤の配合量を13質量部に変更すること以外は、実施例1と同様に行ない、樹脂組成物及び両面銅張積層板を得た。
【0065】
比較例2
無機充填材として、非球状アルミナ(AA−3)800質量部とアルミナ(ASFP−20)200質量部とを用いること以外は、実施例1と同様に行ない、樹脂組成物及び両面銅張積層板を得た。
【0066】
比較例3
無機充填材として、炭化ケイ素粉体(GP#800、信濃電気製錬(株)製、平均粒子径14μm)290質量部を用いること以外は、実施例1と同様に行ない、樹脂組成物及び両面銅張積層板を得た。
【0067】
比較例4
無機充填材として、非球状アルミナ(AA−3)310質量部と、アルミナ(ASFP−20)125質量部と、凝集窒化ほう素(SGPS、電気化学工業(株)製、12μm)125質量部とを用いること以外は、実施例1と同様に行ない、樹脂組成物及び両面銅張積層板を得た。
【0068】
評価結果を、表1に示す。
【表1】
【0069】
表1から明らかなように、実施例1〜4の積層板は、比較例1〜4の積層板に比して、放熱性、銅箔ピール強度、吸湿耐熱性、吸水性、絶縁抵抗及び成形性のすべての性能を、高いレベルで両立していることが確認された。
【0070】
なお、本出願は、2012年6月12日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2012−132685号)に基づく優先権を主張しており、その内容はここに参照として取り込まれる。